説明

コンデンサマイクロホン

【課題】 複数のコンデンサマイクロホンユニットの感度の調節を単純な構成で容易にすることができ、特に感度にバラツキが大きいコンデンサマイクロホンユニットを複数使用する場合においても感度調節が容易なコンデンサマイクロホンを提供する。
【解決手段】 複数のコンデンサマイクロホンユニット10、20は、各コンデンサマイクロホンユニット10、20の感度を変化させる感度調節手段1を有し、感度調節手段1は、電源と接地の間に接続された可変抵抗器104、105で構成され、各コンデンサマイクロホンユニットの振動板11、21と固定電極12、22のうちエレクトレット層に対向する側には、各コンデンサマイクロホンユニットに対応する可変抵抗器の摺動端子が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感度を調節できるコンデンサマイクロホンであって、より詳しくは、複数のコンデンサマイクロホンユニット間の感度のバラツキを調整できるコンデンサマイクロホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレクトレット型コンデンサマイクロホンユニットは、対向配置された振動板と固定電極の少なくとも片方に、フロロエチレンポリマー(FEP)等のエレクトレット材料を有していて、これをエレクトレット化して用いる。エレクトレット材料をエレクトレット化する方法として、例えば、特許文献1に示すように、コロナ放電を用いる方法が知られている。コロナ放電を発生させる装置として、一般的にコロトロンやスコロトロンが用いられている。これらの装置内で不平等電界が形成されることでコロナ放電が生じ負イオンが発生し、エレクトレット材料がこの負イオンにさらされることによってエレクトレット化が行われる。このようにしてエレクトレット化されたエレクトレット材料は、放電による表面電位のばらつきが生じるため、エレクトレット材料を使用するエレクトレットコンデンサマイクロホンユニットにおいては、感度が10%程度ばらつく。
【0003】
一方、ステレオコンデンサマイクロホンや、可変指向性コンデンサマイクロホンなど、複数のコンデンサマイクロホンユニットによって構成されるコンデンサマイクロホンがある。こうしたコンデンサマイクロホンは、それぞれのコンデンサマイクロホンユニットの感度の設定が一定になされる必要があり、各コンデンサマイクロホンユニットの感度にバラツキがあると不都合が生じる。したがって、例えば、こうしたマイクロホンに、上述のエレクトレットコンデンサマイクロホンを適用する場合には、感度のばらつきの少ないユニット同士を選択し組み合わせるか、感度を調節する必要がある。しかし、多くのユニットの中から感度のばらつきの少ない複数のユニットを探すには多大な時間とコストがかかり、感度を調節するにしても、従来、簡易な調節手法は提案されていない。
【0004】
また、コンデンサマイクロホンユニットの感度のバラツキの原因は、エレクトレット層の表面電位のばらつきのみが原因ではない。例えば、コンデンサマイクロホンユニットに用いる部材相互間の関係によって生ずる場合がある。従って、コンデンサマイクロホンユニットとして組立てた後に感度調整ができることがより望ましい。
【0005】
そこで、特許文献2に記載の発明では、エレクトレットコンデンサマイクロホンユニットの固定極の背面近傍に先端側がある針状電極を有していて、この針状電極に印加される電圧によってエレクトレットを中和するイオンを発生させ、コンデンサマイクロホンユニットの感度を調節するコンデンサマイクロホンが開示されている。特許文献2によると、このコンデンサマイクロホンユニットは、エレクトレットを中和するイオンによって、マイクロホンユニットを組み立てた後でもコンデンサマイクロホンユニットの感度の調節を行うことができるとされている。
【0006】
しかしながら、複数のコンデンサマイクロホンユニットに用いる場合において、特許文献2に記載のコンデンサマイクロホンユニットは、それぞれの感度の調節をそれぞれに針状電極を設けて行わなければならないため、構成が複雑になる。また、針状電極を複数設ける必要があるため、コンデンサマイクロホンユニットの製造コストが上昇する問題がある。さらに、複数のコンデンサマイクロホンユニットの感度を調節することは想定されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−117172号公報
【特許文献2】特開2008−131160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、複数のコンデンサマイクロホンユニットの感度の調節を単純な構成で容易にすることができ、特に感度のバラツキが大きいコンデンサマイクロホンユニットを使用する場合においても調節を容易にすることができるコンデンサマイクロホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコンデンサマイクロホンは、振動板と、この振動板に対向する固定電極を有し、振動板と固定電極の片方にエレクトレット層を有するエレクトレット型コンデンサマイクロホンユニットを複数有するコンデンサマイクロホン、であって、複数のコンデンサマイクロホンユニットは、それぞれのコンデンサマイクロホンユニットの感度を変化させる感度調節手段を個別に有し、各感度調節手段は、電源と接地の間に接続された可変抵抗器で構成され、コンデンサマイクロホンユニットの振動板と固定電極のうちエレクトレット層に対向する側には、各コンデンサマイクロホンユニットに対応する可変抵抗器の摺動端子が接続されていることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るコンデンサマイクロホンは、複数のコンデンサマイクロホンユニットが個別に有している感度調節手段としての可変抵抗器を調整することにより、各コンデンサマイクロホンユニットの振動板と固定電極のうちエレクトレット層に対向する側の電圧が変化して成極電圧が変化するため、各コンデンサマイクロホンユニットの感度を調節することができる。このように、可変抵抗器という簡単な構成部品によりかつ簡単な操作で、複数のコンデンサマイクロホンユニットの感度の調節を行うことができ、感度のばらつきが大きい複数のコンデンサマイクロホンユニットであっても、容易に感度調節を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るコンデンサマイクロホンの実施例を示す断面図である。
【図2】本発明に係るコンデンサマイクロホンに適用可能な回路の一例を示す回路図である。
【図3】本発明に係るコンデンサマイクロホンに適用可能な回路の別の例を示す回路図である。
【図4】本発明に係るコンデンサマイクロホンに適用可能な回路のさらに別の例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るコンデンサマイクロホンの実施例について、図を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1に示すように、コンデンサマイクロホン1001は、有底円筒状のコンデンサマイクロホンユニット10、20と、円筒状の筐体103の内部にある感度調節手段1、回路基板101と、円筒状の周壁に保護されたコネクタ部102を有している。図1において下から順に、コネクタ部102、回路基板101及び感度調節手段1、コンデンサマイクロホンユニット10、20が配置されている。コンデンサマイクロホンユニット10、20は、円筒状かつ音声を取り込むために網目状になっているマイクロホンカバー100の中に収納されている。図示のようにマイクロホンカバー100の上端(図1における上側)には、強化のための固定部材が設けていてもよい。感度調節手段1は、コンデンサマイクロホンユニット10、20の内部にある振動板11、21に配線30によって電気的に接続されている。なお、感度調節手段1は、上述の位置に限らず、適宜の設計思想に基づいて配置することができる。また、マイクロホンカバー100、筐体103、コネクタ部102の周壁の形状は、上述のものに限らず適宜の設計思想に基づいて設計することが可能である。
【0014】
筐体103の内部にある回路基板101には、例えば、電源回路や、図2に示すように、FETあるいは真空管などを含むインピーダンス変換器13、23、バッファアンプ15、25などが組み込まれている。回路基板101の下方には、コンデンサマイクロンユニット10、20から得られる音声信号を外部に引き出し、電圧をコンデンサマイクロホンユニット10、20に印加することが可能になるようにコネクタ部102が設けられている。なお、後述するように、コンデンサマイクロホンユニット10、20と、感度調節手段1、回路基板101と、コネクタ部102は、それぞれ図2乃至4のように配線30によって電気的に接続されている。
【0015】
図1は、コンデンサマイクロホンユニット10、20を背中合わせに配置することによって、指向性を可変としたマイクロホンの例を示しているが、上記ユニット10、20を平行にまたは適宜の開き角度を持って左右に配置して、ステレオマイクロホンを構成してもよい。コンデンサマイクロホンユニット1001の構成は、上述のものに限らず適宜の設計思想に基づいて構成可能である。例えば、各構成部品は、外部の電磁波からシールドされるように、シールド材で仕切られて配置されていると好ましい。また、コネクタ部102は図示のように、周囲をカバーされていると好ましい。
【0016】
次に、本発明に用いられる回路の例について説明する。図2において、符号10、20は、それぞれコンデンサマイクロホンユニットを示している。コンデンサマイクロホンユニット10は、振動板11とこれに対向する固定電極12を有し、振動板11と固定電極12でコンデンサを構成している。音波を受けて振動板11が振動すると、上記コンデンサの容量が変化し、振動板11と固定電極12との間で電気音響変換されて音声信号が出力される。この出力信号は、FETなどを含むインピーダンス変換器13、バッファアンプ15を経て、図1におけるコネクタ部102から外部へ出力されるようになっている。コンデンサマイクロホンユニット20も同様に、振動板21とこれに対向する固定電極22を有し、音波を受けて振動板21が振動すると、振動板21と固定電極22で構成されるコンデンサの容量が変化し、振動板11と固定電極12との間で電気音響変換されて音声信号が出力される。この出力信号は、FETなどを含むインピーダンス変換器23、バッファアンプ25を経て、図1におけるコネクタ部102から外部へ出力されるようになっている。
【0017】
一方のコンデンサマイクロホンユニット10側のバッファアンプ15の出力信号は、バランス出力される信号のホット側信号とされ、他方のコンデンサマイクロホンユニット20側のバッファアンプ25の出力信号は、バランス出力される信号のコールド側信号とされる。図1に示すコネクタ部102は、いわゆるXLRとして規格化された3ピンのコネクタで、1番ピンはアース端子、2番ピンは上記ホット側信号端子、3番ピンは上記コールド側信号端子となっている。なお、ステレオマイクロホンの場合は、例えば左右チャンネルの信号を分けて平衡信号にし、いわゆるXLRとして規格化された5ピンのコネクタで、1番ピンをアース、2番ピンをL(左)側ホット、3番ピンをL側コールド、4番ピンをR(右)側ホット、5番ピンをR側コールドとして出力されるように構成することができる。
【0018】
2つのコンデンサマイクロホンユニット10、20は、それぞれのコンデンサマイクロホンユニット10、20の感度を変化させる感度調節手段1を有している。感度調節手段1は、電源Vccと接地の間に接続された可変抵抗器104、105によって構成されている。上記二つの可変抵抗104、105は電源Vccと接地の間に並列に接続され、コンデンサマイクロホンユニット10の振動板11には、可変抵抗器104の摺動端子が、コンデンサマイクロホンユニット20の振動板21には、可変抵抗器105の摺動端子が接続されている。各可変抵抗器104、105は、それらの摺動端子の位置に応じて電源Vccの電圧を分圧し、これらの分圧された電圧を各振動板11、21に印加するように接続されている。なお、電源Vccからの電圧は、回路基板101上の電源回路から供給され、電源Vccは、インピーダンス変換器13、23、バッファアンプ15、25の電源と共通である。すなわち、電源Vccは、図1に示すコネクタ102から、回路基板101上の電源回路を経て、感度調節手段1である可変抵抗器104、105に電圧を印加している。また、本実施例では感度調節手段1である可変抵抗器は2つ設けられているが、図1では1つに省略して図示している。
【0019】
このように、この実施例では、各コンデンサマイクロホンユニット10、20の振動板11、21、固定電極12、22のうち、固定電極12、22がエレクトレット層を有していて、このエレクトレット層に対向する側、すなわち振動板11、21に、可変抵抗器104、105の摺動端子が接続されている。そして、可変抵抗器104、105は、それぞれの摺動端子が同じ向きに移動すると、振動板11、21に印加される電圧が同じ向きに上昇下降するように接続されている。
【0020】
このように構成された図2に示す回路例において、2つのコンデンサマイクロホンユニット10、20相互間に感度差がある場合は、可変抵抗器104、105のうち少なくとも片方の可変抵抗器を調整することによって感度差をなくすことができる。例えば、コンデンサマイクロホンユニット10側の感度がコンデンサマイクロホンユニット20側よりも高い場合は、コンデンサマイクロホンユニット10側の成極電圧が低くなるように可変抵抗器104を調節し、または、コンデンサマイクロホンユニット20側の成極電圧が高くなるように可変抵抗器105を調節する。
【0021】
ここで、具体的な電圧値を示して各コンデンサマイクロホンユニット10、20の感度調節の例を説明する。各コンデンサマイクロホンユニット10、20において、目指すエレクトレット層の表面電位が−100Vとし、電源Vccの電圧が30Vであるとすると、各コンデンサマイクロホンユニット10、20のエレクトレットと対をなす側、すなわち本実施例では振動板11、21側の電位を0〜30Vの間で可変することができる。したがって、成極電圧を±15%の範囲で調整することができる。
【0022】
本実施例によれば、各コンデンサマイクロホンユニット10、20に可変抵抗器104、105を設け、エレクトレット層に対向する側に電圧を印加するとともに、この印加電圧を調整して各コンデンサマイクロホンユニット10、20の成極電圧を調整することができるようになっている。成極電圧を調整することにより、各コンデンサマイクロホンユニット10、20の感度を調整することができる。よって、可変抵抗器104、105を付加し、これらの可変抵抗器104、105の調節のみで感度調節が可能なため、簡単な構成で、かつ、簡単な操作で各コンデンサマイクロホンユニット10、20の感度を調整することができる。特に、複数のコンデンサマイクロホンユニットを備え、各コンデンサマイクロホンユニットの感度のばらつきをなるべく小さくする必要があるステレオマイクロホンや可変指向性マイクロホンなどにおいて有効である。
【0023】
本発明に係るコンデンサマイクロホンにおいてコンデンサマイクロホンユニットの感度調節は、主としてマイクロホン製造工程中の調整工程で行うことを想定している。例えば、図1に示すコンデンサマイクロホン1001の例のように、筐体103以外のコンデンサマイクロホン1001を組み立たてた後、計測装置でマイクロホンユニット10、20の感度を計りつつ感度調節手段1を調整することで各コンデンサマイクロホンユニット10、20の感度を調整する。その後筐体103を取り付ける。あるいは、筐体103に孔を設けておき、その孔から治具によって上述のように感度調節手段1を用いて各コンデンサマイクロホンユニット10、20の感度を調整した後、筐体103に孔に蓋をする。このようにすることにより、コンデンサマイクロホンユニット10、20の感度の調整やその後のコンデンサマイクロホンの製品の出荷がスムーズになる。
【0024】
なお、2つのコンデンサマイクロホンユニット10、20は、固定極12がエレクトレット化されているエレクトレット型のものを用いてもよく、他のコンデンサマイクロホンユニットであってもよい。エレクトレット型のコンデンサマイクロホンは上述のように特に感度がばらつく傾向があるため、本発明のコンデンサマイクロホンの構成を適用すると好ましい。また、一つのコンデンサマイクロホン1001に用いるコンデンサマイクロホンユニットは複数あればよく、数は任意である。
【実施例2】
【0025】
次に、図3に示す第2の実施例について説明する。図3に示す実施例は、図2に示す実施例における可変抵抗器104、105として、2連可変抵抗器を用いている。可変抵抗器104、105は、電源Vccと接地との間に並列に接続されているが、各可変抵抗器104、105の接地と電源に対する接続の向きを互いにそれぞれ逆にしている。その他の回路構成は図2に示す実施例と同じであるから、説明は省略する。
【0026】
図3に示す実施例によれば、2連可変抵抗器からなる可変抵抗器104、105の共通軸を操作すると、片方のマイクロホンユニットの振動板への印加電圧は上昇するのに対して他方のマイクロホンユニットの振動板への印加電圧は降下する。これに応じて、片方のマイクロホンユニットの成極電圧が上昇してそのユニットの感度が上昇するに対し、他方のマイクロホンユニットの成極電圧が降下してそのユニットの感度が低下する。したがって、2連可変抵抗器の調整軸を操作すると、必ず1点で双方のマイクロホンユニットの感度が一致し、1回の調節で双方のコンデンサマイクロホンユニットの感度差をなくすことができる。
【実施例3】
【0027】
次に、図4に示す第3の実施例について説明する。この実施例は、可変指向性コンデンサマイクロホンに本願発明の特徴である感度調節手段1を設けた例である。感度調節手段1の構成は、図2に示す感度調節手段1と同様の構成であり、各コンデンサマイクロホンユニット10、20に対応して設けられた可変抵抗器104、105を有している。マイクロホンユニット10側は前側エレメント、マイクロホンユニット20は後側エレメントになっていて、マイクロホンユニット20には、インピーダンス変換器23とバッファアンプ25の間に、以下のような反転増幅器24を含む指向性切り換え回路が組み込まれている。反転増幅器24の反転入力端子にはインピーダンス変換器23の出力信号が入力抵抗を介して入力されるが、上記入力抵抗は直列接続された二つの入力抵抗Rs1,Rs2からなる。反転増幅器24の非反転入力端子は接地されている。反転増幅器24の出力端子と反転入力端子の間には帰還抵抗が接続されているが、この帰還抵抗は直列接続された二つの帰還抵抗Rf1,Rf2からなる。反転増幅器24のゲインは帰還抵抗と入力抵抗の比率で決まる。上記のように入力抵抗を二つの抵抗Rs1,Rs2で分割し、帰還抵抗を二つの抵抗Rf1,Rf2で分割し、これらの分割点及び非分割点を切り替え手段である切り換えスイッチ30で切り換えることにより、平衡出力の片側の出力を切り換えて平衡出力信号の指向性を可変としている。上記二つの入力抵抗Rs1,Rs2と二つの帰還抵抗Rf1,Rf2の値はすべて同一であるとして説明するが、設計思想に応じて異なった値に設定しても差し支えない。
【0028】
切り換えスイッチ30は5個の切り換え接点(固定接点)を有していて、可動接点はバッファアンプ25の入力端子に接続されている。切り換えスイッチ30の第1の切り換え接点201はインピーダンス変換器23の出力端子に接続されている。切り換えスイッチ30の第2の切り換え接点202は上記入力抵抗Rs1,Rs2の接続点に接続されている。切り換えスイッチ30の第3の切り換え接点203は反転増幅器24の反転入力端子に接続されている。切り換えスイッチ30の第4の切り換え接点204は上記帰還抵抗Rf1,Rf2の接続点に接続されている。切り換えスイッチ30の第5の切り換え接点205は反転増幅器24の出力端子に接続されている。
【0029】
このように、図4に示す実施例は、平衡出力の一方側の出力信号系に、入力抵抗と帰還抵抗を分割した反転増幅器24と、この反転増幅器24の上記入力抵抗と帰還抵抗の分割点を任意に選択して信号取り出し点を切り換える切り換え手段を設けたため、平衡出力信号の指向性を可変とすることができる。図4に示す実施例では、反転増幅器24の入力抵抗と帰還抵抗の両方とも分割し、入力抵抗と帰還抵抗の分割点の全体の中から1点を選択して指向性を切り換えるようになっていたが、入力抵抗のみを分割してこれらの分割点の1点を選択するようにしても良いし、帰還抵抗のみを分割してこれらの分割点の1点を選択するようにしても良い。
【0030】
しかしながら、入力抵抗のみあるいは帰還抵抗のみを分割し、分割点を選択するようにした場合、指向性の切り換え範囲が制限されるので、指向性の切り換えの範囲をより広くするのであれば、入力抵抗と帰還抵抗の両方とも分割して、分割点の1点を選択するようにすることが望ましい。また、上述の切り換え手段を、センタータップ付き可変抵抗器とし、この可変抵抗器のセンタータップより一方側が反転増幅器の入力抵抗、センタータップより他方側が反転増幅器の帰還抵抗にして、可変抵抗器のスライダが平衡出力の一方側の出力信号とすることでも平衡出力信号の指向性を可変とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係るコンデンサマイクロホンの技術思想は、エレクトレットコンデンサマイクロホン以外にも適用可能であり、例えば、DCバイアスコンデンサマイクロホンにも利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 感度調節手段
10 マイクロホンユニット
11 振動板
13 インピーダンス変換器
15 バッファアンプ
20 マイクロホンユニット
22 振動板
23 インピーダンス変換器
1001 コンデンサマイクロホン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、この振動板に対向する固定電極を有し、上記振動板と固定電極の片方にエレクトレット層を有するエレクトレット型コンデンサマイクロホンユニットを複数有するコンデンサマイクロホン、であって、
上記複数のコンデンサマイクロホンユニットは、それぞれのコンデンサマイクロホンユニットの感度を変化させる感度調節手段を個別に有し、
上記各感度調節手段は、電源と接地の間に接続された可変抵抗器で構成され、
上記各コンデンサマイクロホンユニットの振動板と固定電極のうち上記エレクトレット層に対向する側には、各コンデンサマイクロホンユニットに対応する上記可変抵抗器の摺動端子が接続されていることを特徴とするコンデンサマイクロホン。
【請求項2】
各コンデンサマイクロホンユニットの固定電極がエレクトレット層を有し、各コンデンサマイクロホンユニットに対応する可変抵抗器の摺動端子は上記各コンデンサマイクロホンユニットの振動板に接続されている請求項1に記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項3】
各コンデンサマイクロホンユニットの振動板がエレクトレット層を有し、各コンデンサマイクロホンユニットに対応する可変抵抗器の摺動端子は上記各コンデンサマイクロホンユニットの固定電極に接続されている請求項1に記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項4】
上記複数のコンデンサマイクロホンユニットが左右のチャンネルを受け持つように配置されてステレオマイクロホンを構成している請求項1、2または3に記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項5】
上記複数のコンデンサマイクロホンユニットが背中合わせに配置されて各コンデンサマイクロホンユニットから平衡出力されるように接続され、切り換え手段により平衡出力を可変とすることによって可変指向性とした請求項1、2または3に記載のコンデンサマイクロホン。
【請求項6】
上記可変抵抗器は、2連可変抵抗器であり、
上記2連可変抵抗器の上記接地と上記電源に対する接続の向きを互いに逆にしている請求項1乃至5のいずれかに記載のコンデンサマイクロホン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−104906(P2012−104906A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249384(P2010−249384)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000128566)株式会社オーディオテクニカ (787)
【Fターム(参考)】