説明

コンデンサ用両面金属化フィルムの製造方法

【課題】電気的特性に優れ且つ金属蒸着膜の付着力が大きな両面金属化フィルムを効率的に製造可能な方法を提供する。
【解決手段】一方の面13aに表面改質処理を予め施したポリプロピレンフィルム12のロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12の他方に面13bに対して、表面濡れ性を高める表面改質処理を施した後、該他方の面13bに金属蒸着膜を形成する一方、かかる他方の面13bに対する表面改質処理工程の実施前か、又は該表面改質処理工程と該他方の面13bに対する金属蒸着膜形成工程の間か、或いはかかる金属蒸着膜形成工程の実施後に、前記予め表面処理された一方の面13aに対して金属蒸着膜を形成し、その後、該ポリプロピレンフィルムを巻き取るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ用両面金属化フィルムの製造方法に係り、特に、樹脂フィルムの両面に金属蒸着膜が積層形成されて構成された、フィルムコンデンサの作製に用いられるコンデンサ用両面金属化フィルムの有利な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器に使用されるフィルムコンデンサとして、例えば、特開平10−208972号公報(特許文献1)や特開2007−220720号公報(特許文献2)等に記載される如き積層タイプや巻回タイプのフィルムコンデンサが知られている。これら積層タイプや巻回タイプのフィルムコンデンサは、何れも、樹脂フィルムに金属蒸着膜が積層形成されてなる金属化フィルムを用いて、作製されている。
【0003】
そのようなフィルムコンデンサの作製に用いられる金属化フィルム、所謂コンデンサ用金属化フィルムには、樹脂フィルムの片面のみに金属蒸着膜が形成されてなる片面金属化フィルムと、樹脂フィルムの両面に金属蒸着膜が形成されてなる両面金属化フィルムとがある。両面金属化フィルムを用いる場合、二つの片面金属化フィルムを必要するところが、一つの両面金属化フィルムで済むため、フィルムコンデンサの作製に掛かる工数の削減が図られる等の利点がある。
【0004】
両面金属化フィルムとしては、現在のところ、ポリエステルフィルムの両面に金属蒸着膜が形成されてなるものが、一般的に使用されている。ポリエステルフィルムは、良好なアンチブロッキング性を有し、しかも、高い表面濡れ性を有しているため、金属化フィルムとして構成した際に、金属蒸着膜の付着力が大きく、金属蒸着膜の剥離が効果的に防止され得るといった優れた特徴が発揮される。しかしながら、その反面、誘電正接や絶縁破壊電圧等の電気的特性を十分に確保することが難しいといった欠点を有していた。
【0005】
一方、ポリプロピレンフィルムに金属蒸着膜を積層形成してなる金属化フィルムを用いたフィルムコンデンサも、知られている。ポリプロピレンフィルムは、例えば、誘電損失が小さい、耐電圧が高い、誘電率の温度変化や周波数変化が小さい等の優れた電気的特性を有している。しかしながら、ポリプロピレンフィルムは、表面濡れ性が低いため、金属化フィルムとして構成した場合、金属蒸着膜の付着力が小さく、そのために、金属蒸着膜が剥離し易いといった欠点を有していた。そこで、ポリプロピレンの金属化フィルムを製造する際には、従来、ポリプロピレンフィルムの表面に対して、コロナ放電処理等による表面改質処理を施すことにより、表面濡れ性を改善した上で、かかる表面改質部分に金属蒸着膜が積層形成されていた。
【0006】
ところが、よく知られているように、コロナ放電処理等による表面改質処理が両面に施されたポリプロピレンフィルムを巻回して、ロールを形成した場合、ブロッキングの発生により、かかるロールからのポリプロピレンフィルムの巻出しが困難となったり、或いはポリプロピレンフィルムを巻き出す際にフィルム切れが生じたりする恐れがあった。
【0007】
それ故、ポリプロピレンフィルムは、今まで、コロナ放電処理が施された片面にのみ金属蒸着膜が形成されてなる片面金属化フィルムのベースフィルム(金属蒸着膜が形成されるべき樹脂フィルム)として使用されているに過ぎなかった。従って、現状では、十分な電気的特性を備えた両面金属化フィルムが得られておらず、そのような両面金属化フィルムの製造手法の確立が、強く望まれているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−208972号公報
【特許文献2】特開2007−220720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、優れた電気的特性を有すると共に、金属蒸着膜の付着力が大きな両面金属化フィルムが、樹脂フィルムの両面に対する金属蒸着膜の形成時にブロッキングを発生させることなく、有利に製造され得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明にあっては、上記の課題の解決のために、樹脂フィルムの両面に金属蒸着膜が積層形成されてなるコンデンサ用両面金属化フィルムを製造する方法であって、一方の面に対してコロナ放電処理による表面改質処理が予め施されたポリプロピレンフィルムを巻回してなるロールを用いて、該ロールから、該ポリプロピレンフィルムを前記樹脂フィルムとして巻き出した後、該ロールから巻き出されたポリプロピレンフィルムの他方の面に対して、表面濡れ性を高める表面改質処理を施す第一の表面改質処理工程を実施し、更に、該ポリプロピレンフィルムを該ロールから巻き出したままの状態で、該ポリプロピレンフィルムの他方の面の表面改質処理が施された部分に対して、金属蒸着膜を積層形成する第一の金属蒸着膜形成工程を実施する一方、前記ポリプロピレンフィルムを前記ロールから巻き出したままの状態で、該ポリプロピレンフィルムの前記一方の面の表面改質処理が予め施された部分に対して、金属蒸着膜を積層形成する第二の金属蒸着膜形成工程を、前記第一の表面改質処理工程の実施前か、又は該第一の表面改質処理工程の実施後で且つ前記第一の金属蒸着膜形成工程の実施前か、或いは該第一の金属蒸着膜形成工程の実施後に行い、その後、かかる巻き出されたポリプロピレンフィルムを再び巻回することを特徴とするコンデンサ用両面金属化フィルムの製造方法を、その要旨とするものである。
【0011】
なお、このような本発明の好ましい態様の一つによれば、前記第一の表面改質処理工程が、前記ロールから巻き出されたポリプロピレンフィルムの他方の面に対してコロナ放電処理を施すか、又は該他方の面に対して、極性基を有する樹脂の蒸着膜を形成することによって実施される。
【0012】
また、本発明の望ましい態様の一つによれば、前記ポリプロピレンフィルムの一方の面に積層形成された前記金属蒸着膜と、その他方の面に積層形成された前記金属蒸着膜のうちの少なくとも何れか一方に対して、ポリフッ化ビニリデンよりなる薄膜を更に積層形成する工程が実施される。
【0013】
さらに、本発明の有利な態様の一つによれば、内部を真空状態と為し得る真空槽を用い、該真空槽内で、前記ロールから巻き出された前記ポリプロピレンフィルムに対して、前記第一の表面改質処理工程と前記第一の金属蒸着膜形成工程と前記第二の金属蒸着膜形成工程とが、それぞれ実施される。
【0014】
なお、樹脂フィルムの両面に金属蒸着膜が積層形成されてなるコンデンサ用両面金属化フィルムを製造するための装置であって、(a)一方の面に対してコロナ放電処理による表面改質処理が予め施されて、巻回された、前記樹脂フィルムとして用いられるポリプロピレンフィルムのロールからポリプロピレンフィルムを巻き出す巻出し機と、(b)該ロールから巻き出されたポリプロピレンフィルムを巻き取る巻取り機とが内部に設置された真空槽と、(c)該真空槽内の空気を排出して、該真空槽内を真空状態とする排気手段と、(d)前記真空槽内に設置されており、前記巻出し機にて前記ロールから巻き出された前記ポリプロピレンフィルムが、前記巻取り機に巻き取られる前に、該ポリプロピレンフィルムの他方の面に対して、濡れ性を高める表面改質処理を施す表面改質処理手段と、(e)前記真空槽内に設置されており、前記巻出し機にて前記ロールから巻き出された前記ポリプロピレンフィルムが、前記巻取り機に巻き取られる前に、前記予め表面改質処理された一方の面を外側にして巻き掛けられる第一のローラと、(f)前記真空槽内に設置されており、該第一のローラに巻き掛けられた前記ポリプロピレンフィルムの一方の面の前記予め表面改質処理が施された部分に対して金属蒸着膜を形成する第一の金属蒸着膜形成手段と、(g)前記真空槽内に設置されており、前記第一のローラから送り出された前記ポリプロピレンフィルムが、前記巻取り機に巻き取られる前に、前記表面改質処理手段にて表面改質処理が施された前記他方の面を外側にして巻き掛けられる第二のローラと、(h)前記真空槽内に設置されており、該第二のローラに巻き掛けられた前記ポリプロピレンフィルムの他方の面の、前記表面改質処理手段にて表面改質処理が施された部分に対して金属蒸着膜を形成する第二の金属蒸着膜形成手段とを有して構成されていることを特徴とするコンデンサ用両面金属化フィルムの製造装置が、コンデンサ用両面金属化フィルムの製造に際して、有利に用いられる。
【0015】
また、樹脂フィルムの両面に金属蒸着膜が積層形成されてなるコンデンサ用両面金属化フィルムは、樹脂フィルムの少なくとも一方の面に積層形成された金属蒸着膜に対して、ポリフッ化ビニリデンよりなる薄膜が、更に積層形成されて構成されることとなる。
【発明の効果】
【0016】
要するに、本発明に従うコンデンサ用両面金属化フィルムの製造方法は、金属蒸着膜が積層形成されるべき樹脂フィルムとして、ポリプロピレンフィルムを用いているところから、最終的に得られる金属化フィルムにおいて、優れた電気的特性が確保され得る。また、使用されるポリプロピレンフィルムの一方の面に対して、予め、コロナ放電処理が施されているため、かかるポリプロピレンフィルムの一方の面において、高い表面濡れ性が確保されている。そして、ポリプロピレンフィルムの他方の面に対しても、表面濡れ性を高める表面改質処理が施されるため、かかる他方の面の表面濡れ性の向上も有利に図られ得る。
【0017】
しかも、本発明手法は、一旦、ロールから巻き出されたポリプロピレンフィルムを再び巻回する前に、かかるポリプロピレンフィルムの予めコロナ放電処理された一方の面と、巻き出されてから表面改質処理が施された他方の面とに対して、金属蒸着膜をそれぞれ形成し、その後、両面に金属蒸着膜が形成されたポリプロピレンフィルムが再び巻回するものである。それ故、本発明手法では、例えば、両面に表面改質処理が施されたポリプロピレンフィルムを巻回してなるロールからポリプロピレンフィルムを巻き出して、かかるポリプロピレンフィルムの両面に金属蒸着膜を形成する場合とは異なって、金属蒸着膜の形成時にブロッキングが発生して、ロールからのポリプロピレンフィルムの巻出しが困難となったり、或いはポリプロピレンフィルムを巻き出す際にフィルム切れが生じたりすることが、全くない。
【0018】
従って、かくの如き本発明に従うコンデンサ用両面金属化フィルムの製造方法によれば、優れた電気的特性を有すると共に、金属蒸着膜の付着力が大きな両面金属化フィルムが、樹脂フィルムの両面に対する金属蒸着膜の形成時にブロッキングを発生させることなく、極めて有利に製造され得るのである。そして、その結果として、電気的特性に優れるだけでなく、金属蒸着膜の剥離のない耐久性に富み、しかもフィルム欠陥のない安定した品質のフィルムコンデンサの提供が可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明手法に従って製造されたコンデンサ用金属化フィルムの一実施形態を示す断面説明図である。
【図2】図1に示されたコンデンサ用両面金属化フィルムを製造する際に用いられる両面金属化フィルム製造装置の一例を概略的に示す説明図である。
【図3】図2に示された両面金属化フィルム製造装置を用いて製造された両面金属化フィルムの金属蒸着膜上に、ポリフッ化ビニリデンの薄膜を更に積層形成する際に用いられる薄膜形成装置の一例を概略的に示す説明図である。
【図4】図3に示された薄膜形成装置が有するコーティング装置の一例を概略的に示す説明図である。
【図5】図1に示されたコンデンサ用両面金属化フィルムを製造する際に用いられる両面金属化フィルム製造装置の別の例を概略的に示す説明図である。
【図6】図1に示されたコンデンサ用両面金属化フィルムを製造する際に用いられる両面金属化フィルム製造装置の更に別の例を概略的に示す説明図である。
【図7】本発明手法に従って製造されたコンデンサ用金属化フィルムの別の実施形態を示す、図1に対応する図である。
【図8】図7に示されたコンデンサ用両面金属化フィルムを製造する際に用いられる両面金属化フィルム製造装置の他の例を概略的に示す説明図である。
【図9】図3に示された薄膜形成装置が有するコーティング装置の別の例を概略的に示す説明図である。
【図10】図3に示された薄膜形成装置が有するコーティング装置の更に別の例を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0021】
先ず、図1には、本発明手法に従って製造されたコンデンサ用両面金属化フィルムの一例が、その縦断面形態において示されている。かかる図1から明らかなように、コンデンサ用両面金属化フィルム10(以下、両面金属化フィルム10と略称する)は、樹脂フィルムとしてのポリプロピレンフィルム12の厚さ方向一方の面たる第一の表面13aに、第一金属蒸着膜14aが、その厚さ方向他方の面たる第二の表面13bに、第二金属蒸着膜14bが、それぞれ積層形成されて、構成されている。
【0022】
ポリプロピレンフィルム12は、両面金属化フィルム10のベースとなるもので、ここでは、延伸フィルムからなり、1〜10μm程度の薄い厚さを有している。また、かかるポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aと第二の表面13bの両面には、コロナ放電処理が、それぞれ施されている。これにより、ポリプロピレンフィルム12の第一及び第二の表面13a,13bに極性基が発生させられて、それら第一及び第二の表面13a,13bの表面濡れ性の向上がそれぞれ図られ、以て、第一及び第二金属蒸着膜14a,14bの第一及び第二表面13a,13bに対する付着性が、十分に大きくされている。
【0023】
そのようなポリプロピレンフィルム12の第一及び第二の表面13a,13bにそれぞれ積層形成される第一及び第二金属蒸着膜14a,14bは、ここでは、何れも、アルミニウムからなっている。それら第一及び第二金属蒸着膜14a,14bは、両面金属化フィルム10を用いて作製されるフィルムコンデンサの内部電極として、公知の手法に従って、ポリプロピレンフィルム12のコロナ放電処理された第一及び第二の表面13a,13bの両方に積層形成されるものである。つまり、第一及び第二金属蒸着膜14a,14bは、従来品と同様に、フィルムコンデンサの内部電極を形成する公知の金属材料(例えば、アルミニウムや亜鉛等)を蒸着材として用いて、PVDやCVDの範疇に属する、従来から公知の真空蒸着法を実施することにより、ポリプロピレンフィルム12の両方の面(第一及び第二の表面13a,13b)上に成膜される。このような第一及び第二金属蒸着膜14a,14bの抵抗値は1〜50Ω/cm2 程度とされ、また、その膜厚は、抵抗値等によって、適宜に決定される。
【0024】
なお、ポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aの幅方向一端部(図1での左側端部)と、第二の表面13bの幅方向他端部(図1での下面の右側端部)には、第一及び第二金属蒸着膜14a,14bが形成されていない金属非蒸着部分が、存在している。そして、そのようなポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aにおける金属非蒸着部分が、第一端部マージン16aとされ、また、第二の表面13bにおける金属非蒸着部分が、第二端部マージン16bとされている。これにより、それら第一及び第二端部マージン16a,16bが、ポリプロピレンフィルム12の第一及び第二の表面13a,13bにおける幅方向の互いに異なる端部に対して、全長に亘って連続して延びる狭幅の帯状形態をもって、それぞれ形成されている。これら第一及び第二端部マージン16a,16bは、両面金属化フィルム10を用いて作製されたフィルムコンデンサの第一及び第二金属蒸着膜14a,14bと、かかるフィルムコンデンサの互いに対向する一対の端面(両面金属化フィルム10の幅方向両側に位置して、第一及び第二の表面13a,13bと隣り合う幅面であって、積層形フィルムコンデンサでは、両面金属化フィルム10の幅方向両側に位置する一対の側面に相当する面で、巻回形フィルムコンデンサでは、軸方向両側に位置する一対の端面に相当する面)に形成される一対のメタリコン電極との非接続部として、それぞれ構成されるものである。
【0025】
また、ポリプロピレンフィルム12の第一及び第二の表面13a,13bに形成された第一及び第二金属蒸着膜14a,14b上には、それぞれ、第一及び第二亜鉛蒸着膜18a,18bが、更に積層形成されている。それら第一及び第二亜鉛蒸着膜18a,18bは、各第一及び第二金属蒸着膜14a,14bにおける第一及び第二端部マージン16a,16b側とは反対側の端部上において、ポリプロピレンフィルム12の全長に亘って、長さ方向に連続して延びる狭幅の帯状形態を有している。これら第一及び第二亜鉛蒸着膜18a,18bは、ポリプロピレンフィルム12における前記一対のメタリコン電極との接続側となる幅方向両端側に位置する第一金属蒸着膜14a部分上や第二金属蒸着膜14b部分上に形成されることで、両面金属化フィルム10を用いて作製されるフィルムコンデンサの一対の端面へのメタリコン電極の付着性向上を図るものである。このような第一及び第二亜鉛蒸着膜18a,18bの形成に際しては、亜鉛を蒸着材として用いた、PVDやCVDの範疇に属する、従来から公知の真空蒸着法が、何れも採用可能である。また、第一及び第二亜鉛蒸着膜18a,18bの抵抗値は、特に限定されるものではないものの、一般には、2.5〜5.5Ω/cm2 程度とされる。また、それらの膜厚は、抵抗値等によって、適宜に決定される。
【0026】
そして、ここでは、ポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aに形成された第一金属蒸着膜14aのポリプロピレンフィルム12側とは反対側の面に対して、ポリフッ化ビニリデンからなる樹脂薄膜層20が、更に積層形成されている。この樹脂薄膜層20は、ポリプロピレンフィルム12の幅方向両端部を除く部位に配置されている。即ち、樹脂薄膜層20は、第一金属蒸着膜14aの幅方向一端部に形成された第一亜鉛蒸着膜18a上と、その他端部に形成された第一端部マージン16a上とには形成されることなく、ポリプロピレンフィルム12の幅方向の中間部に位置するように形成されている。
【0027】
そのような樹脂薄膜層20を構成するポリフッ化ビニリデンは、ポリプロピレンよりも誘電率が高く且つ安価であるといった特徴を有している。そして、かかるポリフッ化ビニリデンからなる薄膜樹脂層20は、後述するように、両面金属化フィルム10の一つを巻回して、又は複数の両面金属化フィルム10を互いに積層した積層体を巻回して得られる巻回形のコンデンサ素子において、或いはかかる積層体からなる積層形のコンデンサ素子において、ポリプロピレンフィルム12と共に、誘電体として機能する。なお、複数の両面金属化フィルム10を積層する際には、互いに積層されるべき両面金属化フィルム10のうちの一方のものの樹脂薄膜層20と、それらのうちの他方のものの第二金属蒸着膜14bとが互いに重ね合わされるように配置されることとなる。
【0028】
かくして、金属蒸着膜16a上にポリフッ化ビニリデンからなる樹脂薄膜層20が積層形成された両面金属化フィルム10を用いて得られるコンデンサ端子においては、例えば、ポリプロピレンフィルム12の第一及び第二の表面13a,13bに第一及び第二金属蒸着膜14a,14bが積層形成されるものの、ポリフッ化ビニリデンからなる樹脂薄膜層20が形成されていない金属化フィルムとポリプロピレンフィルム12とを互いに積層した積層体を用いて得られるコンデンサ素子、つまり、誘電体がポリプロピレンフィルム12のみにて構成されたコンデンサ素子に比して、ポリフッ化ビニリデンからなる樹脂薄膜層20において高い誘電率が確保されて、静電容量の増大が有利に図られ、また、誘電体の半分が安価なポリフッ化ビニリデンからなる樹脂薄膜層20にて構成されることにより、低コスト化が効果的に図られるといった利点が得られる。
【0029】
このようなポリフッ化ビニリデンからなる樹脂薄膜層20の第一金属蒸着膜14a上への形成に際しては、公知のコーティング法の従来手法が、適宜に採用される。また、かかる樹脂薄膜層20の厚さは、何等限定されるものではないものの、好ましくは5μm以下とされる。何故なら、樹脂薄膜層20が5μmを超える厚さであると、乾燥時間が長くなり、設備サイズも大きくなるといった問題が生ずるからである。
【0030】
そして、かくの如き構造を有する両面金属化フィルム10は、図示されてはいないものの、上記のように、一つのものが、或いは互いに積層された複数のものが、巻回されることにより、巻回形のコンデンサ素子として、構成される。また、複数の両面金属化フィルム10が互いに積層されることにより、積層形のコンデンサ素子として、構成される。そして、それら巻回形或いは積層形のコンデンサ素子に対して、一対のメタリコン電極が形成されることにより、フィルムコンデンサとして構成されるのである。なお、このようなフィルムコンデンサは、必要に応じて、コンデンサケース内に収容され、非導電性の封止材にて封止されることにより、ケースモールド型のフィルムコンデンサとして使用されることとなる。
【0031】
ところで、上記の如き構造の両面金属化フィルム10は、例えば、図2に示される構造を有する両面金属化フィルム製造装置22を用いて、樹脂薄膜層20が未形成の金属化フィルムを作製した後、図3に示される構造を備えた薄膜形成装置23を用いて、かかる金属化フィルムに樹脂薄膜層20を形成することにより、製造される。
【0032】
図2から明らかなように、両面金属化フィルム製造装置22は、所定大きさの真空槽24を有している。この真空槽24内には、その内側空間を三つに仕切る仕切壁26が、複数個設けられている。そして、かかる真空槽24内に仕切壁26にて画成された三つの空間のうちの一つが、第一真空室28とされている一方、それらのうちの二つが、第一真空室28よりも容積の小さな第二真空室30a,30bとされている。
【0033】
また、第一真空室28と第二真空室30a,30bとには、それら各真空室28,30a,30bの内側空間を外部に連通させる排気パイプ32,32,32が、それぞれ接続されている。そして、それら各排気パイプ32,32,32上には、排気手段としての真空ポンプ34,34,34が、各々設けられている。かくして、第一真空室28内の空気と第二真空室30a,30b内の空気とが、三つの真空ポンプ34,34,34の作動により、排気パイプ32,32,32を通じて外部に排出されて、それら第一及び第二真空室28,30a,30b内が、それぞれ真空状態とされるようになっている。また、ここでは、それら三つの真空ポンプ34,34,34の作動が、互いに独立して制御されるようになっており、それによって、二つの第二真空室30a,30bを同じ真空度で、且つ第一真空室28を、それら二つの第二真空室30a,30bとは異なる真空度で、それぞれ真空状態とすることが可能となっている。これらのことから明らかなように、本実施形態では、排気パイプ32と真空ポンプ34とにて、排気手段が構成されている。
【0034】
真空槽24の第一真空室28内には、巻出し機としての巻出しローラ36と、巻取り機としての巻取りローラ38とが、所定距離を隔てた位置に、互いに平行な回転軸回りに回転可能に設置されている。巻出しローラ36は、ポリプロピレンフィルム12が巻回されてなるフィルムロール40が取り付けられるようになっており、巻取りローラ38は、巻出しローラ36に取り付けられたフィルムロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12の先端部分が取り外し可能に取り付けられるようになっている。また、巻取りローラ38は、例えば、図示しない電動モータ等によって回転駆動するようになっている。これにより、フィルムロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12が、巻取りローラ38の回転駆動に伴って、巻取りローラ38にて巻き取られるようになっている。
【0035】
なお、ここでは、フィルムロール40を形成するポリプロピレンフィルム12として、厚さ方向の一方の面たる第一の表面13aに対して、コロナ放電処理が、巻回される前に、予め施されて、かかる第一の表面13aの表面濡れ性が高められてなるものが用いられる。そして、そのようなポリプロピレンフィルム12が、コロナ放電処理された第一の表面13aを外側面とするように巻回されて、フィルムロール40が形成されている。
【0036】
また、第一真空室28内には、第一のローラとしての第一キャンローラ42aと、第二のローラとしての第二キャンローラ42bとが、巻出しローラ36や巻取りローラ38の回転軸と平行な回転軸回りに回転可能に設置されている。第一キャンローラ42aは、巻出しローラ36の設置個所の近傍に配置されており、第二キャンローラ42bは、巻取りローラ38の設置個所の近傍に配置されている。
【0037】
それら第一及び第二キャンローラ42a,42bは、何れも、鉄等の金属製で、互いに同一径の円筒体からなり、図示しない電動モータ等により、同期して、回転駆動するようになっている。また、第一キャンローラ42aは、その外周部の一部分が、二つの第二真空室30a,30bのうちの一方の第二真空室30aと第一真空室28とを仕切る仕切壁26に設けられた窓部44aを通じて、第二真空室30a内に突入している。一方、第二キャンローラ42bも、その外周部の一部分が、他方の第二真空室30bと第一真空室28とを仕切る仕切壁26に設けられた窓部44bを通じて、第二真空室30b内に突入している。これにより、第一及び第二キャンローラ42a,42bの各外周面の一部が、第二真空室30a,30b内にそれぞれ露呈して、配置されるようになっている。
【0038】
第一及び第二キャンローラ42a,42bの内部には、冷却機構46が、それぞれ設けられている。それらの冷却機構46,46は、何れも、例えば、冷却媒体の循環等によって、第一及び第二キャンローラ42a,42bの筒部の外周面を冷却する公知の構造を有している。
【0039】
そして、巻出しローラ36に取り付けられたフィルムロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12が、巻取りローラ38に巻き取られる前に、第一及び第二キャンローラ42a,42bの両方に対して、それぞれ巻き掛けられている。即ち、フィルムロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12が、第一キャンローラ42aに巻き掛けられた後、第二キャンローラ42bに巻き掛けられ、その後、巻取りローラ38に取り付けられるようになっているのである。
【0040】
また、ここでは、フィルムロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12が、フィルムロール40において外側面とされた、予めコロナ放電処理されたポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aを外側にして、第一キャンローラ42aに巻き掛けられるようになっている。そして、第一キャンローラ42aから送り出されたポリプロピレンフィルム12は、第一キャンローラ42aの設置個所と第二キャンローラ42bの設置個所との間に設置された複数のエキスパンダロール48と、後述するコロナ放電処理装置70の誘電体ロール74に巻き掛けられており、それによって、予めコロナ放電処理された第一の表面13aとは反対の第二の表面13bを外側にして、第二キャンローラ42bに巻き掛けられるようになっている。
【0041】
さらに、真空槽24の第一真空室28内には、第一の端部マスク部形成装置50aと第二の端部マスク部形成装置50bとが設置されている。それら第一及び第二の端部マスク部形成装置50a,50bは、何れも、オイル蒸発源52とノズル54とバックアップロール56とを備えた、互いに同一の構造を有している。オイル蒸発源52は、ヒータ等の加熱装置を内蔵し、かかる加熱装置にて、金属付着防止剤としてのオイルを加熱して、蒸発させるようになっている。ノズル54は、オイル蒸発源52にて蒸発させられたオイルの蒸気を、一方向に狭い範囲で吹き出し得るように構成されている。バックアップロール56は、ノズル54によるオイルの吹出方向の前方側に配置されて、ポリプロピレンフィルム12が巻き掛けられ得るように構成されている。また、このバックアップロール56には、その外周面を冷却するための冷却機構58が内蔵されている。
【0042】
そして、第一の端部マスク部形成装置50aは、巻出しローラ36の設置個所と第一キャンローラ42aの設置個所との間において、第一キャンローラ42aに巻き掛けられる前のポリプロピレンフィルム12が、第一の表面13aを外側にしてバックアップロール56に巻き掛けられるように配置されている。これにより、取出しローラ36にてフィルムロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12が第一キャンローラ42aに巻き掛けられる前に、かかるポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aの幅方向一端部に対して、第一の端部マスク部形成装置50aのノズル54から吹き出されたオイルの蒸気が吹き付けられて、付着させられようになっている。
【0043】
一方、第二の端部マスク部形成装置50bは、第一キャンローラ42aの設置個所と第二キャンローラ42bの設置個所との間において、第二キャンローラ42bに巻き掛けられる前のポリプロピレンフィルム12が、第二の表面13bを外側にしてバックアップロール56に巻き掛けられるように配置されている。これにより、第一キャンローラ42aから送り出されたポリプロピレンフィルム12が第二キャンローラ42bに巻き掛けられる前に、かかるポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bの幅方向他端部(ポリプロピレンフィルム12の幅方向において、第一の端部マスク部形成装置50aのノズル54にて蒸気が噴き出される端部側とは反対側の端部)に対して、第二のマスク部形成装置50bのノズル54から吹き出されたオイルの蒸気が吹き付けられて、付着させられるようになっている。
【0044】
かくして、第一の端部マスク部形成装置50aが、第一キャンローラ42aに巻き掛けられる前のポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aの幅方向一端部に対して、第一金属蒸着膜14aの形成を阻止するオイルマスク(オイル蒸着膜)からなる第一端部マスク部を、ポリプロピレンフィルム12の長さ方向に連続形成するように構成されている。また、この第一端部マスク部のポリプロピレンフィルム12への形成位置が、前記した第一端部マージン16aのポリプロピレンフィルム12への形成位置と対応した位置と為し得るようになっている。
【0045】
一方、第二の端部マスク部形成装置50bは、第二キャンローラ42bに巻き掛けられる前のポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bの幅方向他端部に対して、金属蒸着膜16bの形成を阻止するオイルマスク(オイル蒸着膜)からなる第二端部マスク部を、ポリプロピレンフィルム12の長さ方向に連続形成するように構成されている。そして、この第二端部マスク部のポリプロピレンフィルム12への形成位置が、前記した第二端部マージン16bのポリプロピレンフィルム12への形成位置と対応した位置と為し得るようになっている。
【0046】
また、真空槽26の第二真空室30a内における第一キャンローラ42aの周囲には、第一の金属蒸着電極形成手段としての第一の金属蒸着電極形成装置60aと、亜鉛蒸着膜形成手段としての第一の亜鉛蒸着膜形成装置62aとが、第一キャンローラ42aに巻き掛けられるポリプロピレンフィルム12の走向方向の上流側から下流側に向かって、上記の順番で、第一キャンローラ42aの周方向に、所定の間隔を隔てて並んで設置されている。更に、真空槽26の第二真空室30b内における第二キャンローラ42bの周囲にも、第二の金属蒸着電極形成手段としての第二の金属蒸着電極形成装置60bと、第二の亜鉛蒸着膜形成装置62bとが、第二キャンローラ42bに巻き掛けられるポリプロピレンフィルム12の走向方向の上流側から下流側に向かって、上記の順番で、第二キャンローラ42bの周方向に、所定の間隔を隔てて並んで設置されている。
【0047】
第一の金属蒸着電極形成装置60aと第二の金属蒸着膜形成装置60bは、何れも、アルミニウムを蒸発させる金属蒸発源64を備えた、互いに同一の構造を有している。この金属蒸発源64は、ヒータ等の加熱装置を内蔵し、かかる加熱装置にてアルミニウムを加熱し、蒸発させて、第一キャンローラ42aや第二キャンローラ42bに巻き掛けられたポリプロピレンフィルム12の外側面に、かかるアルミニウムの蒸気を付着させ得る構造を有している。
【0048】
かくして、第一の金属蒸着電極形成装置60aにあっては、第一キャンローラ42aに巻き掛けられたポリプロピレンフィルム12の外側面となる第一の表面13aにおける第一端部マスク部の形成部位を除く部分に、第一金属蒸着電極14aを形成し得るようになっている。また、そのような第一金属蒸着膜14aの形成と同時に、ポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aにおける第一端部マスク部の形成部位を、第一端部マージン16aと為し得るようになっている。一方、第二の金属蒸着電極形成装置60bは、第二キャンローラ42bに巻き掛けられたポリプロピレンフィルム12の外側面となる第二の表面13bにおける第二端部マスク部の形成部位を除く部分に、第二金属蒸着電極14bを形成し得るようになっている。また、そのような第二金属蒸着膜14bの形成と同時に、ポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bにおける第二端部マスク部の形成部位を、第二端部マージン16bと為し得るように構成されている。
【0049】
第一の亜鉛蒸着膜形成装置62aと第二の亜鉛蒸着膜形成装置62bは、何れも、亜鉛蒸発源66とノズル68とを備えた同一の構造を有している。亜鉛蒸発源66は、ヒータ等の加熱装置を内蔵し、かかる加熱装置にて亜鉛を加熱して、蒸発させるようになっている。そして、第一の亜鉛蒸着膜形成装置62aのノズル68は、第一の亜鉛蒸着膜形成装置62aの亜鉛蒸発源66にて蒸発した亜鉛の蒸気を、第一キャンローラ42aに巻き掛けられるポリプロピレンフィルム12の外側面の幅方向における第一端部マージン16a側とは反対側の端部に向かって吹き出して、付着させるようになっている。また、第二の亜鉛蒸着膜形成装置62bのノズル68は、第二の亜鉛蒸着膜形成装置62bの亜鉛蒸発源66にて蒸発した亜鉛の蒸気を、第二キャンローラ42bに巻き掛けられるポリプロピレンフィルム12の外側面の幅方向における第二端部マージン16b側とは反対側の端部に向かって吹き出して、付着させるようになっている。
【0050】
かくして、第一の亜鉛蒸着膜形成装置62aが、第一キャンローラ42aに巻き掛けられるポリプロピレンフィルム12に形成された第一金属蒸着電極14aの第一端部マージン16a側とは反対側の端部に、ポリプロピレンフィルム12の長さ方向に連続して延びる第一亜鉛蒸着膜18aを形成し得るようになっている。また、第二の亜鉛蒸着膜形成装置62bが、第二キャンローラ42bに巻き掛けられるポリプロピレンフィルム12に形成された第二金属蒸着電極14bの第二端部マージン16b側とは反対側の端部に、ポリプロピレンフィルム12の長さ方向に連続して延びる第二亜鉛蒸着膜18bを形成し得るようになっている。
【0051】
さらに、真空槽24の第一真空室28内における第一キャンローラ42aの設置個所と第二の端部マスク部形成装置50bの設置個所との間には、表面改質処理手段としてのコロナ放電処理装置70が、設置されている。コロナ放電処理装置70は、コロナ放電電極(図示せず)を内蔵した装置本体72と、この装置本体72に内蔵のコロナ放電電極との間に微細な隙間を開けて、かかるコロナ放電電極に対応配置された誘電体ロール74とを有し、それら装置本体72内のコロナ放電電極と誘電体ロール74との間でコロナ放電を生じさせる公知の構造を有している。そして、第一キャンローラ42aから送り出されたポリプロピレンフィルム12が、かかるコロナ放電処理装置70の誘電体ロール74に、第二の表面13bを外側にして巻き掛けられるようになっている。また、誘電体ロール74は、図示しない電動モータ等によって回転駆動させられるようになっている。
【0052】
かくして、コロナ放電処理装置70が、第一キャンローラ42aにて送り出されてから、第二の端部マスク部形成装置50bのバックアップロール56bに巻き掛けられる前に、誘電体ロール74に巻き掛けられたポリプロピレンフィルム12を第二の端部マスク部形成装置50b側に徐々に送り出しつつ、ポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bに対してコロナ放電処理を施すようになっている。また、それにより、かかる第二の表面13bの全面の表面濡れ性を高め得るように構成されている。
【0053】
そして、かくの如き構造とされた両面金属化フィルム製造装置22を用いて、両面金属化フィルム10の製造工程を実施する際には、例えば、先ず、第一の表面13aに対してコロナ放電処理が予め施されたポリプロピレンフィルム12を巻回してなるフィルムロール40を巻出しローラ36に取り付けて、フィルムロール40からポリプロピレンフィルム12の一部を巻き出す。
【0054】
次に、フィルムロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12を、第一の表面13aを外側にして、第一の端部マスク部形成装置50aのバックアップロール56に巻き掛けた後、第一キャンローラ42aに、第一の表面13aを外側にして巻き掛ける。更に、かかるポリプロピレンフィルム12を幾つかのエキスパンダロール48と巻き掛けた後、コロナ放電処理装置70の誘電体ロール74に、第二の表面13bを外側にして巻き掛ける。次いで、かかるポリプロピレンフィルム12をエキスパンダロール48に巻き掛けた後、第二の端部マスク部形成装置50bのバックアップロール56に、第二の表面13bを外側にして巻き掛け、更に、それを第二キャンローラ42bに、第二の表面13bを外側にして巻き掛ける。そして、かかるポリプロピレンフィルム12をエキスパンダロール48に巻き掛けた後、ポリプロピレンフィルム12の端部を巻取りローラ38に取り付ける。
【0055】
また、そのようなポリプロピレンフィルム12の巻き掛け操作を行う一方で、第一及び第二キャンローラ42a,42bに内蔵の冷却機構46,46や第一及び第二の端部マスク部形成装置50a,50bの各バックアップロール56に内蔵された冷却機構58,58を作動させて、第一及び第二キャンローラ42a,42bや各バックアップロール56の外周面を冷却する。それらの冷却機構46,46,58,58による冷却温度は、特に限定されるものではないものの、一般に、−15〜−5℃程度とされる。
【0056】
次に、真空槽24の第一真空室28と第二真空室30a,30bとにそれぞれ接続された排気パイプ32,32,32上の真空ポンプ34,34,34を各々作動させる。これにより、第一真空室28内と第二真空室30a,30b内の空気を排出して、それら第一及び第二真空室28,30a,30b内を真空状態とする。このとき、好適には、第一真空室28の内圧が、10-1〜1Pa程度とされ、また、第二真空室30a,30bの内圧が、第一真空室28の内圧よりも低い5×10-2Pa程度とされる。
【0057】
その後、巻取りローラ40と第一及び第二キャンローラ42a,42bとコロナ放電処理装置70の誘電体ロール74とをそれぞれ回転駆動させて、フィルムロール40からポリプロピレンフィルム12を次々と巻き出しながら、かかるポリプロピレンフィルム12を、第一及び第二キャンローラ42a,42bや誘電体ロール74の周方向一方側(図2の矢印方向)に向かって走向させる。また、その一方で、第一及び第二の端部マスク部形成装置50a,50bと、第一及び第二の金属蒸着膜形成装置60a,60bと第一及び第二の亜鉛蒸着膜形成装置62a,62bとコロナ放電処理装置70の装置本体72とを作動させる。
【0058】
これにより、フィルムロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12が第一キャンローラ42aに巻き掛けられる前に、第一真空室28内において、先ず、かかるポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aに対して、第一端部マスク部を、第一の端部マスク部形成装置50aにて形成する。
【0059】
次に、第二真空室30a内において、第一キャンローラ42aに巻き掛けられたポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aに対して、第一金属蒸着膜14aを、第一の金属蒸着膜形成装置60aにて形成すると同時に、第一端部マスク部を第一端部マージン16aと為す。その後、かかる第一金属蒸着膜14aの幅方向における第一端部マージン16a側とは反対の端部側に、第一亜鉛蒸着膜18aを積層形成する。
【0060】
このとき、第二真空室30aの内圧が、第一真空室28の内圧よりも低くされているため、第一金属蒸着膜14aや第一亜鉛蒸着膜18aを形成するアルミニウムの蒸気や亜鉛の蒸気が、第二真空室30aから第一真空室28内に侵入することが有利に防止される。また、第一の端部マスク部形成装置50aのバックアップロール56と第一キャンローラ42aの外周面が、それらに内蔵された冷却機構58,46にて冷却されていることで、バックアップロール56と第一キャンローラ42aに巻き掛けられたポリプロピレンフィルム12が冷却されるようになっている。これにより、第一端部マスク部と第一金属蒸着膜14aと第一亜鉛蒸着膜18aの形成時において、ポリプロピレンフィルム12のオイル蒸気やアルミニウム蒸気、亜鉛蒸気との接触による熱ダメージの発生が、有利に防止される。
【0061】
次いで、第一金属蒸着膜14aと第一端部マージン16aと第一亜鉛蒸着膜18aとが第一の表面13aに形成されたポリプロピレンフィルム12が第二のキャンローラ42bに巻き掛けられる前に、第一真空室28内において、かかるポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bの全面に対して、コロナ放電処理装置70によるコロナ放電処理を実施する。これにより、ポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bの全面を改質して、その表面濡れ性を向上させる。そして、それに引き続いて、ポリプロピレンフィルム12が第二のキャンローラ42bに巻き掛けられる前に、第一真空室28内において、ポリプロピレンフィルム12のコロナ放電処理された第二の表面13bに対して、第二端部マスク部を、第二の端部マスク部形成装置50bにて形成する。
【0062】
その後、第二真空室30a内において、第二キャンローラ42bに巻き掛けられたポリプロピレンフィルム12のコロナ放電処理された第二の表面13bに対して、第二金属蒸着膜14bを、第二の金属蒸着膜形成装置60bにて形成すると同時に、第二端部マスク部を第二端部マージン16bと為す。引き続き、かかる第二金属蒸着膜14bの幅方向における第二端部マージン16b側とは反対の端部側に、第二亜鉛蒸着膜18bを積層形成する。
【0063】
このとき、第二真空室30bの内圧が、第一真空室28の内圧よりも低くされているため、第二金属蒸着膜14bや第二亜鉛蒸着膜18bを形成するアルミニウムの蒸気や亜鉛の蒸気が、第二真空室30bから第一真空室28内に侵入することが有利に防止される。また、第二の端部マスク部形成装置50bのバックアップロール56と第二キャンローラ42bの外周面が、それらに内蔵された冷却機構58,46にて冷却されていることで、バックアップロール56と第二キャンローラ42bに巻き掛けられたポリプロピレンフィルム12が冷却されるようになっている。これにより、第二端部マスク部と第二金属蒸着膜14bと第二亜鉛蒸着膜18bの形成時において、ポリプロピレンフィルム12のオイル蒸気やアルミニウム蒸気、亜鉛蒸気との接触による熱ダメージの発生が、有利に防止される。
【0064】
かくして、予めコロナ放電処理された第一の表面13aに、第一金属蒸着膜14aと第一端部マージン16aと第一亜鉛蒸着膜18aとが形成される一方、コロナ放電処理装置70にてコロナ放電処理された第二の表面13bに、第二金属蒸着膜14bと第二端部マージン16bと第二亜鉛蒸着膜18bとが形成されたポリプロピレンフィルム12、即ち、樹脂薄膜層20が未形成である両面金属化フィルム76を作製する。そして、そのような樹脂薄膜層20が未形成の両面金属化フィルム76を巻取りローラ38にて巻き取って、樹脂薄膜層20が未形成の両面金属化フィルムロール78を得る。
【0065】
一方、薄膜形成装置23は、図3に示されるように、巻出し機としての巻出しローラ80と、巻取り機としての巻取りローラ82とを有している。それら巻出しローラ80と巻取りローラ82は、所定距離を隔てた箇所において、互いに平行な回転軸回りに回転可能に配置されている。また、巻出しローラ80の設置個所と巻取りローラ82の設置個所との間には、複数のエキスパンダロール84が設置されている。
【0066】
巻出しローラ80は、前記した両面金属化フィルム製造装置22にて製造された樹脂薄膜層20が未形成の両面金属化フィルムロール78が取り付けられるようになっており、巻取りローラ82は、巻出しローラ80に取り付けられた両面金属化フィルムロール78から巻き出された両面金属化フィルム76の先端部分が取り外し可能に取り付けられるようになっている。また、巻取りローラ82は、例えば、図示しない電動モータ等によって回転駆動するようになっている。更に、複数のエキスパンダロール84は、何れも、両面金属化フィルムロール78から巻き出された両面金属化フィルム76が巻き掛けられて、かかる両面金属化フィルム76に対して、適当なテンションを加え得るようになっている。これにより、両面金属化フィルムロール78から巻き出された両面金属化フィルム76が、巻取りローラ82の回転駆動に伴って、複数のエキスパンダロール84に巻き掛けられた状態で、一方向(図3の矢印方向)に走向し、巻取りローラ82にて巻き取られるようになっている。
【0067】
また、薄膜形成装置23は、コーティング装置86と乾燥装置88とを有している。それらコーティング装置86と乾燥装置88は、巻出しローラ80の設置個所と巻取りローラ82の設置個所との間に、両面金属化フィルム76の走向方向の上流側から下流側に向かって、その順番に並んで配置されている。
【0068】
コーティング装置86は、従来のコーティング方式を実施可能な公知の構造を有し、ここでは、キス・リバースグラビア方式を実施可能な構造を有している。即ち、図4に示されるように、コーティング装置86は、メッシュ状の外周面を有する転写ロール90と、ポリフッ化ビニリデン溶液92が収容される溶液槽94とを備えている。転写ロール90は、溶液槽94内のポリフッ化ビニリデン溶液92中に、外周面の一部を浸漬する一方、外周面の別の一部を、二つのエキスパンダローラ84間を走向する両面金属化フィルム76の第一の表面13aに接触させた状態で、配置されている。
【0069】
そして、かかるコーティング装置86にあっては、両面金属化フィルム76の走向に伴って、転写ロール90の外周面に付着したポリフッ化ビニリデン溶液92を、両面金属化フィルム76の第一の表面13aに積層形成された第一金属蒸着膜14a上に転写し、それによって、ポリフッ化ビニリデン溶液92のコーティング層を、第一金属蒸着膜14a上に形成し得るように構成されている。なお、転写ロール90は、そのロール長さが、両面金属化フィルム76の幅よりも所定寸法だけ短い長さとされている。一方、乾燥装置88は、ヒータ等の加熱装置を有する公知の構造とされている。
【0070】
そして、このような薄膜形成装置23を用いて、両面金属化フィルム76に樹脂薄膜層20を形成する工程を実施する際には、例えば、先ず、両面金属化フィルムロール78を巻出しローラ80に取り付けて、両面金属化フィルムロール78から、樹脂薄膜層20が未形成の両面金属化フィルム76の一部を巻き出す。
【0071】
次に、両面金属化フィルムロール78から巻き出された両面金属化フィルム76を、第一金属蒸着膜14aの形成面たる第一の表面13aがコーティング装置86の転写ロール90と接触するようにコーティング装置86内を通過させて、セットすると共に、複数のエキスパンダロール84に巻き掛け、更に、乾燥装置88内を一方向に走向するようにセットする。そして、乾燥装置88内から送り出された両面金属化フィルム76を、巻取りローラ82に取り付ける。また、そのような両面金属化フィルム76の巻き掛け操作を行う一方で、乾燥装置88を作動させて、乾燥装置88内の温度を予め設定された温度にまで加熱する。
【0072】
その後、巻取りローラ82を回転駆動させて、両面金属化フィルムロール78から巻き出される両面金属化フィルム76を、巻出しローラ80側から、コーティング装置86内と乾燥装置88内とを通過させつつ、巻取りローラ82側の一方向に走向させる。
【0073】
かくして、両面金属化フィルムロール78から巻き出される両面金属化フィルム76の第一の表面13aに積層された第一金属蒸着膜14a上に、ポリフッ化ビニリデンのコーティング層を、コーティング装置86にて、必要な厚さで形成した後、このコーティング層を乾燥装置88にて乾燥、固化させる。これにより、かかる第一金属蒸着膜14a上に、ポリフッ化ビニリデンからなる樹脂薄膜層20を形成して、図1に示される如き構造を有する、目的とする両面金属化フィルム10を得る。その後、かくして得られた両面金属化フィルム10を巻取りローラ82にて巻き取って、両面金属化フィルム10のロールを得るのである。
【0074】
このように、本実施形態では、ポリプロピレンフィルム12をベースフィルムとして用いて、両面金属化フィルム10が形成されるようになっているところから、かかる両面金属化フィルム10において、ポリプロピレンフィルム12特有の優れた電気的特性、例えば、誘電損失が小さい、耐電圧が高い、誘電率の温度変化や周波数変化が小さい等の優れた電気的特性が十分に確保され得る。
【0075】
また、そのようなポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aと第二の表面13bの両面に対してコロナ放電処理されて、それらの表面濡れ性が高められた上で、第一及び第二の表面13a,13b上に、第一及び第二金属蒸着膜14a,14bがそれぞれ形成されている。それによって、ポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aと第二の表面13bの両面に対する第一及び第二金属蒸着膜14a,14bの付着力の増大が効果的に図られている。
【0076】
そして、本実施形態では、第一の表面13aに予めコロナ放電処理されたポリプロピレンフィルム12が、フィルムロール40から巻き出された後、巻取りローラ40にて巻き取られる前に、かかる巻出し状態において、ポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aに第一金属蒸着膜14aが形成される一方、第二の表面13bに対して、コロナ放電処理を施した上で、第二金属蒸着膜14bが形成されるようになっている。それ故、例えば、両面にコロナ放電処理が予め施されたポリプロピレンフィルムを巻回してなるロールからポリプロピレンフィルムを巻き出して、かかるポリプロピレンフィルムの両面に金属蒸着膜を形成する場合とは異なって、第一及び第二金属蒸着膜14a,14bの形成時にブロッキングが発生して、フィルムロール40からのポリプロピレンフィルム12の巻出しが困難となったり、或いはポリプロピレンフィルム12を巻き出す際にフィルム切れが生じたりすることが、全くない。
【0077】
しかも、本実施形態では、第一の表面13aに対してコロナ放電処理が予め施されてなるポリプロピレンフィルム12のフィルムロール40が用いられているため、ポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aに対するコロナ放電処理を行う手間が有利に省かれ得る。それによって、第一の表面13aと第二の表面13bの両面に対してコロナ放電処理等の表面改質処理が何等施されていないポリプロピレンフィルムを用いて、目的とする両面金属化フィルム10を製造する場合に比して、製造サイクルの短縮化と生産効率の向上とが、有利に図られ得る。
【0078】
従って、かくの如き本実施形態によれば、優れた電気的特性を有すると共に、ポリプロピレンフィルム12に対する第一金属蒸着膜14a,14の付着力が大きな両面金属化フィルム10を、ポリプロピレンフィルム12の第一及び第二の表面13a,13bの両面に対する第一及び第二金属蒸着膜14a,14bの形成時にブロッキングを発生させることなしに、極めて有利に且つ効率的に製造することができる。そして、その結果として、電気的特性に優れるだけでなく、金属蒸着膜の剥離のない耐久性に富み、しかもフィルム欠陥のない安定した品質のフィルムコンデンサの提供が可能となるのである。
【0079】
また、本実施形態では、ポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aに積層された第一金属蒸着膜14a上に、ポリプロピレンフィルム12よりも誘電率が高く且つ安価なポリフッ化ビニリデンからなる樹脂薄膜層20を更に積層形成している。それ故、目的とする両面金属化フィルム10、更にはそれを用いて得られるフィルムコンデンサの静電容量を、低いコストで、より効果的に且つ十分に高めることができるのである。
【0080】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0081】
例えば、前記第一の実施形態では、フィルムロール40からポリプロピレンフィルム12を巻き出した後、先ず、かかるポリプロピレンフィルム12のコロナ放電処理が予め施された第一の表面13aに対して、第一金属蒸着膜14aと第一端部マージン16aと第一亜鉛蒸着膜18aとを形成し、その後、第二の表面13bに対して、コロナ放電処理を施し、更に、第二金属蒸着膜14bと第二端部マージン16bと第二亜鉛蒸着膜18bとを、第二の表面13bに形成していた。しかしながら、第二の表面13bに対する第二金属蒸着膜14bと第二端部マージン16bと第二亜鉛蒸着膜18bの形成工程は、第二の表面13bに対するコロナ放電処理工程を実施した後に行う必要があるものの、第一の表面13aに対する第一金属蒸着膜14aと第一端部マージン16aと第一亜鉛蒸着膜18aの形成工程は、第二の表面13bに対するコロナ放電処理工程と、第二の表面13bに対する第二金属蒸着膜14bと第二端部マージン16bと第二亜鉛蒸着膜18bの形成工程の間に行っても良く、或いは第二の表面13bに対する第二金属蒸着膜14bと第二端部マージン16bと第二亜鉛蒸着膜18bの形成工程の実施後に行っても良い。
【0082】
第一の表面13aに対する第一金属蒸着膜14aと第一端部マージン16aと第一亜鉛蒸着膜18aの形成工程を、第二の表面13bに対するコロナ放電処理工程と、第二の表面13bに対する第二金属蒸着膜14bと第二端部マージン16bと第二亜鉛蒸着膜18bの形成工程の間に行う場合には、例えば、図5に示される如き構造を有する両面金属化フィルム製造装置96が、好適に用いられる。なお、この両面金属化フィルム製造装置96は、前記第一の実施形態において用いられる両面金属化フィルム製造装置22に対して、真空槽24内でのコロナ放電処理装置70の設置位置のみが異なる構造を有している。それ故、図5に示される両面金属化フィルム製造装置96に関しては、図2に示される両面金属化フィルム製造装置22と同様な構造とされた部材及び部位について、図2と同一の符号を付すことにより、詳細な説明を省略する。また、後述する図6や図8に示される両面金属化フィルム製造装置に関しても、同様とする。
【0083】
図5から明らかなように、両面金属化フィルム製造装置96においては、真空槽24の第一真空室28内での巻出しローラ36の設置個所と第一の端部マスク部形成装置50aの設置個所との間に、コロナ放電処理装置70が設置されている。そして、フィルムロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12が、第一の端部マスク部形成装置50aのバックアップロール56に巻き掛けられる前に、コロナ放電処理装置70の誘電体ロール74に対して、第二の表面13bを外側にして、巻き掛けられるようになっている。また、第一キャンローラ42aから送り出されたポリプロピレンフィルム12が、第二の端部マスク部形成装置50bのバックアップロール56と第二キャンローラ42bとに対して、第二の表面13bを外側にして巻き掛けられるようになっている。
【0084】
このような構造の両面金属化フィルム製造装置96を用いて、樹脂薄膜層20が未形成の両面金属化フィルム76を製造する工程を実施する際には、第一真空室28内において、先ず、フィルムロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bに対して、コロナ放電処理を、コロナ放電処理装置70にて実施する。これにより、かかる第二の表面13bの全面を表面改質して、その表面濡れ性を高める。次いで、第一の端部マスク部形成装置50aと第一の金属蒸着膜形成装置60aと第一の亜鉛蒸着膜形成装置62aとよって、フィルムロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aに対して、第一金属蒸着膜14aと第一端部マージン16aと第一亜鉛蒸着膜18aとを形成する。その後、第二の端部マスク部形成装置50bと第二の金属蒸着膜形成装置60bと第二の亜鉛蒸着膜形成装置62bとよって、フィルムロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bに対して、第二金属蒸着膜14bと第二端部マージン16bと第二亜鉛蒸着膜18bとを形成する。これによって、樹脂薄膜層20が未形成の両面金属化フィルム76を得るのである。
【0085】
本実施形態においても、第一の表面13aに対するコロナ放電処理が予め施されたポリプロピレンフィルム12のフィルムロール40が用いられていると共に、そのようなフィルムロール40からポリプロピレンフィルム12を巻き出して、それを巻き取る前に、第一の表面13aに対する第一金属蒸着膜14aの形成工程と、第二の表面13bに対するコロナ放電処理工程及び第二金属蒸着膜14bの形成工程とが実施されるようになっている。従って、本実施形態によっても、前記第一の実施形態において奏される作用・効果と実質的に同一の作用・効果が、有効に享受され得る。
【0086】
また、第一の表面13aに対する第一金属蒸着膜14aと第一端部マージン16aと第一亜鉛蒸着膜18aの形成工程を、第二の表面13bに対する第二金属蒸着膜14bと第二端部マージン16bと第二亜鉛蒸着膜18bの形成工程の実施後に行う場合には、例えば、図6に示される如き構造を有する両面金属化フィルム製造装置98が、好適に用いられる。
【0087】
図6から明らかなように、両面金属化フィルム製造装置98においては、真空槽24の第一真空室28内での巻出しローラ36の設置個所と第二の端部マスク部形成装置50bの設置個所との間に、コロナ放電処理装置70が設置されている。また、第二キャンローラ42bとその周囲に配置された第二の金属蒸着膜形成装置60b及び第二の亜鉛蒸着膜形成装置62bとが、第一キャンローラ42aの設置個所と巻取りローラ38の設置個所の間に設置されている。更に、第二の端部マスク部形成装置50bが、第一キャンローラ42aの設置個所と第二キャンローラ42bの設置個所の間に設置されている。
【0088】
そして、フィルムロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12が、第一の端部マスク部形成装置50aのバックアップロール56に巻き掛けられる前に、コロナ放電処理装置70の誘電体ロール74と、第二の端部マスク部形成装置50bのバックアップロール56と、第二キャンローラ42bとに対して、その順番で、第二の表面13bを外側にした状態で、順次、巻き掛けられるようになっている。また、第二キャンローラ42bから送り出されたポリプロピレンフィルム12が、第一の端部マスク部形成装置50aのバックアップロール56と第一キャンローラ42aとに対して、第一の表面13aを外側にして巻き掛けられるようになっている。
【0089】
このような構造の両面金属化フィルム製造装置98を用いて、樹脂薄膜層20が未形成の両面金属化フィルム76を製造する工程を実施する際には、第一真空室28内において、先ず、フィルムロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bに対して、コロナ放電処理をコロナ放電処理装置70にて実施する。その後、コロナ放電処理されたポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bに対して、第二金属蒸着膜14bと第二端部マージン16bと第二亜鉛蒸着膜18bとを、第二の端部マスク部形成装置50bと第二の金属蒸着膜形成装置60bと第二の亜鉛蒸着膜形成装置62bとにて、形成する。その後、第二キャンローラ42bから送り出されたポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aに対して、第一金属蒸着膜14aと第一端部マージン16aと第一亜鉛蒸着膜18aとを、第一の端部マスク部形成装置50aと第一の金属蒸着膜形成装置60aと第一の亜鉛蒸着膜形成装置62aとにて形成する。これによって、樹脂薄膜層20が未形成の両面金属化フィルム76を得るのである。
【0090】
本実施形態においても、第一の表面13aに対するコロナ放電処理が予め施されたポリプロピレンフィルム12のフィルムロール40が用いられていると共に、そのようなフィルムロール40からポリプロピレンフィルム12を巻き出して、それを巻き取る前に、第一の表面13aに対する第一金属蒸着膜14aの形成工程と、第二の表面13bに対するコロナ放電処理工程及び第二金属蒸着膜14bの形成工程とが実施されるようになっている。従って、本実施形態によっても、前記第一の実施形態において奏される作用・効果と実質的に同一の作用・効果が、有効に享受され得る。
【0091】
また、ポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bに対する表面改質処理工程は、第二の表面13bの表面濡れ性を向上させ得るものであれば、前記第一の実施形態において採用されるコロナ放電処理工程以外の処理工程を採用することもできる。そのような表面改質処理には、例えば、プラズマ処理や、グロー放電処理、紫外線照射処理、或いは極性基を有する樹脂(ポリマー)の蒸着膜を形成する処理等が、挙げられる。
【0092】
上記に例示された幾つかの表面改質処理のうち、極性基を有する樹脂の蒸着膜を形成する処理を実施する場合には、両面金属化フィルム10が、例えば、図7に示される如き構造とされる。即ち、図7から明らかなように、かかる両面金属化フィルム10は、ポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bに対して、極性基を有する樹脂の蒸着膜からなる被覆樹脂層100が、第二の表面13bの全面を被覆するように積層形成されて、構成される。これにより、ポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bに極性基が存在させられて、かかる第二の表面13bの表面濡れ性の向上が図られる。
【0093】
被覆樹脂層100を構成する樹脂材料の種類は、ポリプロピレンフィルム12の第二の表面13b上に積層形成された状態で、極性基を有するものであれば、何等限定されない。また、かかる被覆樹脂層100の形成方法も、特に限定されるものではない。例えば、ジヒドロシクロペンタジエチルアクリレート(DCPA)のモノマーに公知の重合開始剤を混合した混合物を蒸発させて、ポリプロピレンフィルム12の第二の表面13b上に付着させ、それを加熱により重合させることにより、被覆樹脂層100を形成する方法や、極性基を有する樹脂の溶液をポリプロピレンフィルム12の第二の表面13b上に吹き付ける等して、付着させ、その後、それを乾燥、固化させることによって、被覆樹脂層100を形成する方法等が、適宜に採用される。
【0094】
ポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bに被覆樹脂層100が積層形成されてなる両面金属化フィルム100を製造する場合には、例えば、図8に示される如き構造を有する両面金属化フィルム製造装置102が、好適に用いられる。
【0095】
図8から明らかなように、両面金属化フィルム製造装置102は、真空槽24の第一真空室28内に、コロナ放電処理装置(70)に代えて、被覆樹脂層形成装置104が設置されている。この被覆樹脂層形成装置104は、ヒータ等の加熱装置を内蔵し、かかる加熱装置にて、DCPAと重合開始剤の混合物を蒸発させる蒸発源106と、電子ビーム照射器108と、冷却機構110を内蔵したバックアップロール112とを有している。そして、第一キャンローラ42aから送り出されたポリプロピレンフィルム12が、バックアップロール112に対して、第二の表面13bを外側にして巻き掛けられるようになっている。
【0096】
このような構造の両面金属化フィルム製造装置102を用いて、樹脂薄膜層20が未形成の両面金属化フィルム76を製造する工程を実施する際には、先ず、フィルムロール40から巻き出されたポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aに対して、第一金属蒸着膜14aと第一端部マージン16aと第一亜鉛蒸着膜18aとを、第一の端部マスク部形成装置50aと第一の金属蒸着膜形成装置60aと第一の亜鉛蒸着膜形成装置62aとにて形成する。
【0097】
次いで、第一キャンローラ42aから送り出されて、被覆樹脂層形成装置104のバックアップロール112に巻き掛けられたポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bに対して、被覆樹脂層形成装置104の蒸発源106にて蒸発させられたDCPAと重合開始剤の混合物の蒸気を付着させる。その後、第二の表面13bに付着したDCPAと重合開始剤の混合物に対して、電子ビーム照射器108からの電子ビームを照射する。それにより、DCPAを重合して、第二の表面13bに被覆樹脂層100を形成する。そうして、第二の表面13bの表面改質処理を行って、その表面濡れ性を向上させる。このとき、バックアップロール112に巻き掛けられたポリプロピレンフィルム12は、バックアップロール112に内蔵の冷却機構110にて冷却されるため、熱ダメージを受けることがない。
【0098】
引き続き、被覆樹脂層100が形成されたポリプロピレンフィルム12の第二の表面13bに対して、第二金属蒸着膜14bと第二端部マージン16bと第二亜鉛蒸着膜18bとを、第二の端部マスク部形成装置50bと第二の金属蒸着膜形成装置60bと第二の亜鉛蒸着膜形成装置62bとにて形成する。
【0099】
なお、真空槽24内に、被覆樹脂層形成装置104をコロナ放電処理装置70に代えて設置する場合には、前記幾つかの実施形態において用いられる両面金属化フィルム製造装置96,98におけるコロナ放電処理装置70の設置箇所に、かかるコロナ放電処理装置70の代わりに被覆樹脂層形成装置104を設置しても良い。
【0100】
また、薄膜形成装置23が有するコーティング装置86の構造も、適宜に変更可能である。例えば、図9に示される如きバー方式のコーティングが可能な構造や、図10に示される如き減圧付ダイ方式のコーティングが可能な構造も採用可能である。なお、図9及び図10に示されるコーティング装置114,116に関しては、図4に示されるコーティング装置86と同様な構造とされた部材及び部位について、図4と同一の符号を付すことにより、その詳細な説明を省略する。
【0101】
すなわち、図9に示されるコーティング装置114は、外周面にピアノ線等の線材が巻き付けられてなる転写ロール90と、ポリフッ化ビニリデン溶液92が収容される溶液槽94と、ブレード118とを備えている。かかるコーティング装置86にあっては、両面金属化フィルム76の走向に伴って、転写ロール90の外周面に付着したポリフッ化ビニリデン溶液92を、両面金属化フィルム76の第一の表面13aに積層形成された第一金属蒸着膜14a上に転写し、そして、第一の表面13aに付着したポリフッ化ビニリデン溶液92の余剰量をブレード118にて掻き取るようになっている。これにより、第一金属蒸着膜14a上に、ポリフッ化ビニリデン溶液92のコーティング層を必要な厚さで形成し得るように構成されている。
【0102】
また、図10に示されるコーティング装置116は、図示しない真空ポンプ等にて減圧される減圧室120と、この減圧室120内に外周面の一部を露呈させて、配置されたバックアップロール122と、かかるバックアップロール122の外周面に向かってポリフッ化ビニリデン溶液92を吐出させる吐出装置124とを有している。そして、このようなコーティング装置116においては、減圧室120内を所定の減圧状態とした上で、バックアップロール122に巻き掛けられた両面金属化フィルム76の第一金属蒸着膜14a上に、ポリフッ化ビニリデン溶液92を吹き付け、これにより、第一金属蒸着膜14a上に、ポリフッ化ビニリデン溶液92のコーティング層を必要な厚さで形成し得るようになっている。このとき、減圧室120内が減圧されているため、吐出装置124から吐出したポリフッ化ビニリデン溶液92は、減圧室120の外部に飛散することがない。
【0103】
なお、上記のようにして、ポリプロピレンフィルム12(両面金属化フィルム76)に形成される、ポリフッ化ビニリデンからなる樹脂薄膜層20は、ポリプロピレンフィルム12の第一の表面13aに積層形成された第一金属蒸着膜14a上のみだけでなく、かかる第一の金属蒸着膜14a上と、第二の表面13b上に積層形成された第二金属蒸着膜14b上の両方に設けても良い。
【0104】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0105】
10 コンデンサ用両面金属化フィルム 12 ポリプロピレンフィルム
13a 第一の表面 13b 第二の表面
14a 第一金属蒸着膜 14b 第二金属蒸着膜
20 樹脂薄膜層
22,96,98,102 両面金属化フィルム製造装置
23 薄膜形成装置 40 フィルムロール
60a 第一の金属蒸着膜形成装置 60b 第二の金属蒸着膜形成装置
70 コロナ放電処理装置 100 被覆樹脂層
104 被覆樹脂層形成装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムの両面に金属蒸着膜が積層形成されてなるコンデンサ用両面金属化フィルムを製造する方法であって、
一方の面に対してコロナ放電処理による表面改質処理が予め施されたポリプロピレンフィルムを巻回してなるロールを用いて、該ロールから、該ポリプロピレンフィルムを前記樹脂フィルムとして巻き出した後、
該ロールから巻き出されたポリプロピレンフィルムの他方の面に対して、表面濡れ性を高める表面改質処理を施す第一の表面改質処理工程を実施し、更に、該ポリプロピレンフィルムを該ロールから巻き出したままの状態で、該ポリプロピレンフィルムの他方の面の表面改質処理が施された部分に対して、金属蒸着膜を積層形成する第一の金属蒸着膜形成工程を実施する一方、
前記ポリプロピレンフィルムを前記ロールから巻き出したままの状態で、該ポリプロピレンフィルムの前記一方の面の表面改質処理が予め施された部分に対して、金属蒸着膜を積層形成する第二の金属蒸着膜形成工程を、前記第一の表面改質処理工程の実施前か、又は該第一の表面改質処理工程の実施後で且つ前記第一の金属蒸着膜形成工程の実施前か、或いは該第一の金属蒸着膜形成工程の実施後に行い、
その後、かかる巻き出されたポリプロピレンフィルムを再び巻回することを特徴とするコンデンサ用両面金属化フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記第一の表面改質処理工程が、前記ロールから巻き出されたポリプロピレンフィルムの他方の面に対してコロナ放電処理を施すか、又は該他方の面に対して、極性基を有する樹脂の蒸着膜を形成することによって実施される請求項1に記載のコンデンサ用両面金属化フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ポリプロピレンフィルムの一方の面に積層形成された前記金属蒸着膜と、その他方の面に積層形成された前記金属蒸着膜のうちの少なくとも何れか一方に対して、ポリフッ化ビニリデンよりなる薄膜を更に積層形成する工程が実施される請求項1又は請求項2に記載のコンデンサ用両面金属化フィルムの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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