説明

コントラスト向上フィルタの製造方法

【課題】残留気泡による画面白化や生産性低下につながる暗色条部の凹みを解消した、コントラスト向上フィルタとその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法で得られるコントラスト向上フィルタ10は、透明基材1上に好ましくは特有の厚み形状のプライマ層3を介して、暗色条部の代わりに暗色凸状パターン層2を印刷形成する。透明樹脂層5は従来とは逆に暗色凸状パターン層印刷後に形成する。フィルタの製造方法は、透明基材を連続帯状で、暗色凸状パターン層の印刷工程から透明樹脂層の塗工工程までを同一装置上で巻き取らずに連続的に行う。この際、暗色凸状パターン層印刷後から、またプライマ層を有する場合は印刷前のプライマ層形成後から、透明樹脂層を塗工工程で硬化させるまで、ガイドローラは暗色凸状パターン層形成面側には非接触で、反対側に接触させて搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好適にはディスプレイパネルの前面に配置して外光による画像のコントラスト低下を防ぐコントラスト向上フィルタと、それを用いた画像表示装置、並びにコントラスト向上フィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、各種ディスプレイパネルを用いた、テレビジョン、電子看板などの各種画像表示装置(ディスプレイ装置)が実用されている。ディスプレイパネルの前面(画面側であり、又観察者側でもある)には、通常、画像観察に不要な輻射を遮断するフィルタが配置されている。例えば、画像光の色相を調整する色補正フィルタ、プラズマディスプレイパネルからの電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽フィルタ或いは赤外線を遮蔽しリモートコントローラの誤動作を防ぐ赤外線吸収フィルタ、観察環境下での室内照明や太陽光などの外光の反射を防止する反射防止フィルタ等である。
【0003】
また、ディスプレイパネルの観察者側には、室内照明や太陽等の外光による画像のコントラスト低下を防ぐ為のコントラスト向上フィルタを配置することがある。外光が画像光に混ざると、特に黒画像への影響が大きく黒画像が白けて見える。画像のコントラストは、白画像輝度の黒画像輝度に対する比率である{白画像輝度/黒画像輝度}が、外光混入によって、相対的に小さかった分母の黒画像輝度に対する増加割合が大きくなり、且つ視覚的にも輝度増加(白化)が認識され、一方、白画像の方は輝度が増加しても、既に視覚的には飽和状態である結果、明室下での画像コントラスト(以下、明室コントラストとも呼称する)が低下する。
【0004】
この明室コントラストの低下を防ぐフィルタとして、微小ルーバ構造のコントラスト向上フィルタが知られている。例えば、特許文献1記載のコントラスト向上フィルタでは、紫外線硬化性樹脂組成物を成形型に注入して紫外線硬化させる等して、透明樹脂フィルム上にコントラスト向上層を形成する。コントラスト向上層は、該成形型によって紫外線硬化性樹脂からなる透明樹脂層の表面にストライプ状に多数平行に配列した溝状の凹条部を形成し、その凹条部の内部に紫外線硬化性樹脂液からなる暗色材料を充填し固化させて、横断面形状が楔形の暗色条部を形成することで、透明樹脂層の凹条部内が暗色材料からなる暗色条部となった構成の層である。
【0005】
ここで、図6は、コントラスト向上フィルタの従来の製造法の一例を示す断面図である。先ず、図6(A)の様に、透明樹脂フィルム31上に、成形型によって、表面に凹条部33Aを有する透明樹脂層32を形成する。次に、図6(B)の様に、凹条部33Aの内部に暗色材料を充填し固化させて暗色条部33を形成することで、透明樹脂層32及び暗色条部33からなるコントラスト向上層34を透明樹脂フィルム31上に形成して、コントラスト向上フィルタ30を作製するという方法である。
【0006】
なお、凹条部33Aの形成法としては各種あるが、例えば、特許文献1では、紫外線硬化性樹脂組成物を成形型に注入して紫外線硬化させる方法、つまり未硬化の電離放射線線硬化性樹脂組成物を成形型で成形し電離放射線硬化させる方法である所謂フォトポリマー法と呼ばれている方法(別名2P法)などを開示している。2P法は、紫外線硬化性樹脂組成物を樹脂フィルムらなる連続帯状の透明基材上に施して未硬化の塗膜を形成した後、該塗膜に成形型を押し当てて紫外線硬化させることで、連続的に凹条部を形成できる点で、生産性に優れコスト的にも有利な形成方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−272161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の様に、溝状の凹条部内に暗色材料を充填し固化させて形成した暗色条部33によるコントラスト向上層34には、必然的に、凹条部33A内に充填された暗色材料が固化する過程で紫外線硬化性樹脂の硬化収縮によって、暗色条部33の表面に微妙な凹み35の発生が不可避であった{図6(B)}。
暗色条部33の表面に微妙な凹み35が存在すると、図6(C)で示す様に、暗色条部33の露出面Pe側で他のフィルタ機能等を有する機能層36と粘着剤などの接着剤層37を介して積層する際に、該暗色条部33による露出面Peでの表面凹凸などによって、空気が逃げ切れず残留気泡Aが発生することがある。残留気泡Aが存在すると、そこで光が散乱して透明性が損なわれディスプレイ画面が白化する問題がある。
【0009】
そこで、残留気泡Aを防ぐ為に、粘着剤層37に用いる粘着剤の選定、貼り合わせ方法、貼り合わせ後のオートクレーブ処理等が必要であった。オートクレーブ処理では、粘着剤層37を介して密着積層後に生じた残留気泡Aを、オートクレーブ中で、真空、加圧、加熱操作を適宜加えて、残留気泡Aを粘着剤層37層中に発散乃至は吸収させることを行う。しかし、このオートクレーブ処理は、工程数の増加に繋がり、また、印刷工程や塗工工程の様に短時間で行えず、煩雑且つ長時間の処理を要することから、生産速度が低下し、量産性に優れた対処方法ではなかった。
【0010】
すなわち、本発明の課題は、画面白化や生産性低下につながる暗色条部の凹みを解消した、コントラスト向上フィルタの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるコントラスト向上フィルタの製造方法は、以下の構成とした。
(1)透明基材と、該透明基材上に多数の線条がパターン状に印刷形成された暗色凸状パターン層とを有し、該暗色凸状パターン層が形成された側の面に、該暗色凸状パターン層によるパターン状の凹凸を埋め尽くす透明樹脂層が形成されて成るコントラスト向上フィルタを連続帯状形態で製造する方法であって、
下記の(A)暗色凸状パターン層印刷工程で暗色凸状パターン層を印刷した後、下記の(B)塗工工程で透明樹脂層を塗工し硬化させるまで、ガイドローラは暗色凸状パターン層の印刷面には非接触で該暗色凸状パターン層の非印刷面側に接触させて、同一装置上で前記印刷工程から前記塗工工程まで巻き取らずに連続的に行う、コントラスト向上フィルタの製造方法。
(A)暗色凸状パターン層を透明基材上に印刷形成する暗色凸状パターン層印刷工程、
(B)上記(A)暗色凸状パターン層印刷工程の後に、暗色凸状パターン層が印刷形成された透明基材側の面に、硬化後の表面が非粘着となる透明樹脂組成物を塗工し硬化させて、暗色凸状パターン層によるパターン状の凹凸を埋め尽くす透明樹脂層を塗工形成する、塗工工程。
(2)透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマ層と、該プライマ層上に多数の線条がパターン状に印刷形成された暗色凸状パターン層とを有し、
上記プライマ層のうち上記暗色凸状パターン層が形成されている部分の厚さは、該暗色凸状パターン層が形成されていない部分の厚さよりも厚い、コントラスト向上フィルタを連続帯状形態で製造する(1)の製造方法であって、
(A)暗色凸状パターン層印刷工程が次の(A1)〜(A6)を含み、さらに、下記の(A1)透明基材準備工程で流動状態のプライマ層を形成した段階から、ガイドローラは暗色凸状パターン層の印刷面には非接触で、該暗色凸状パターン層の非印刷面側に接触させて製造する、上記(1)のコントラスト向上フィルタの製造方法。
(A1)樹脂フィルムからなる連続帯状の透明基材の一方の面に、硬化するまで流動性を保持できるプライマ層を形成する透明基材準備工程、
(A2)版面にパターン状に凹部が形成された円筒状の凹版の版面に、硬化後に暗色凸状パターン層を形成できる暗色インクを塗布した後、前記凹部内以外に付着した該暗色インクを掻き取って該凹部内に該暗色インクを充填するインク充填工程、
(A3)前記透明基材準備工程後の透明基材のプライマ層側と上記インク充填工程後の版面とを圧着して、該プライマ層と前記凹部内の暗色インクとを空隙なく密着する圧着工程、
(A4)上記圧着工程後に上記プライマ層を硬化させるプライマ層硬化工程、
(A5)上記プライマ層硬化工程後に前記透明基材及び上記プライマ層を前記版面から離して前記凹部内の暗色インクを該プライマ層上に転移させる暗色凸状パターン層転移工程、
(A6)前記プライマ層硬化工程と同時に、又は上記暗色凸状パターン層転移工程の後に、転移した暗色インクを固化させて暗色凸状パターン層を形成する、暗色凸状パターン層形成工程。
【発明の効果】
【0012】
(1)本発明のコントラスト向上フィルタの製造方法によれば、従来の暗色条部の代わりに、透明基材上に印刷形成された暗色凸状パターン層によって、従来ならば、透明樹脂層表面の凹条部に充填された暗色条部の充填側の表面に存在する凹みが存在しない。従って、該凹みに起因して生じ易かった、粘着剤層を介して他層を積層時の残留気泡の問題も生じない。この為、残留気泡による画面白化や生産性低下の問題を回避できる。また、特有の厚み形状のプライマ層を介して暗色凸状パターン層が印刷形成された構成とすることで、高精細な暗色凸状パターン層が可能となり、かつ暗色凸状パターン層と透明基材との密着性を良くできる。
さらに、暗色凸状パターン層による凹凸を埋め尽くす透明樹脂層が形成された構成により、暗色凸状パターン層が外力で変形、脱落などの損傷するのを防げ、取り扱いが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の製造方法によるコントラスト向上フィルタの1形態を例示する断面図。
【図2】本発明の製造方法によるコントラスト向上フィルタにおけるプライマ層と暗色凸状パターン層とを説明する断面図。
【図3】本発明の製造方法によるコントラスト向上フィルタの別の2形態(機能層あり)を例示する断面図。
【図4】本発明のコントラスト向上フィルタの製造方法の1形態を例示する説明図。
【図5】本発明の製造方法によるコントラスト向上フィルタを用いた画像表示装置の1形態を例示する断面図。
【図6】従来のコントラスト向上フィルタ及び製造方法と、凹み部分での残留気泡の問題を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0015】
先ず、本発明のコントラスト向上フィルタとその製造方法から、その実施形態例を図面を参照して説明し、この次に画像表示装置を説明する。
【0016】
〔A〕コントラスト向上フィルタ:
《基本的な形態》
【0017】
本発明の製造方法によるコントラスト向上フィルタは、透明基材と印刷形成された暗色凸状パターン層との間に特定のプライマ層を有さなくても、残留気泡による画面白化や生産性低下の問題は回避できる。ただ、暗色凸状パターン層をより高精細に容易に形成でき、また暗色凸状パターン層と透明基材との密着性もより良くできる点で、透明基材と暗色凸状パターン層との間には、特有の厚み的特徴を有するプライマ層が介在する形態が、より好ましい。
そこで、本発明によるコントラスト向上フィルタの実施形態について、このプライマ層の有りの形態について、透明樹脂層の有無で大別される基本的な形態で説明する。
【0018】
〔第1の形態〕
先ず、図1(B)に例示する本形態の、本発明の製造方法の結果物としてのコントラスト向上フィルタ10は、透明基材1の片方の面に、多数の線条からなる暗色凸状パターン層2がプライマ層3を介して形成されており、該暗色凸状パターン層2を埋める様に透明樹脂層5が形成されている該暗色凸状パターン層2がコントラスト向上層4に該当する。しかも、プライマ層3は、全面で厚さが均一ではなく、暗色凸状パターン層2が形成されている部分の厚さは、該暗色凸状パターン層2が形成されていない部分の厚さよりも厚い断面形状を有している。
【0019】
透明基材1には、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等が使用される。暗色凸状パターン層2は、樹脂バインダ中にカーボンブラック等の暗色色材を配合した暗色インクで印刷形成される。プライマ層3には、アクリル系紫外線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂が使用される。プライマ層3の上記特有の厚さ形状は、特許第4436441号公報に開示された、印刷時流動状態のプライマ層を介して印刷する引抜プライマ方式凹版印刷法によって、暗色凸状パターン層2を印刷することによって、図1(A)の如く透明基材1上にプライマ層3及び暗色凸状パターン層2が形成される。
暗色凸状パターン層2は、コントラスト向上効果の点で、アスペクト比(線幅に対する厚さ(高さ)の比率である縦横比)が1.0以上であることが好ましく、引抜プライマ方式凹版印刷法でこの様なアスペクト比1.0以上の暗色凸状パターン層を容易に形成できる。
【0020】
この様に、本発明のコントラスト向上フィルタ10では、従来のコントラスト向上フィルタに於ける暗色条部に該当する、暗色凸状パターン層2を印刷法で形成することで、従来のワイピング法を利用して形成していた暗色条部に特有の、露出面での凹みが本質的に生じない。このため、該凹みに起因して発生し易かった、残留気泡の発生や、該発生した残留気泡の消滅の為のオートクレーブ処理による生産性低下といった問題が生じない。
また、、暗色凸状パターン層2を特有の厚み形状を有するプライマ層3を介して印刷形成したものとすることで、高精細で密着性の良いものとできる。
【0021】
次に、図1(B)の断面図で示す様に、図1(A)の中間製品10Aに対して更に、暗色凸状パターン層2が形成された側の面に対して、暗色凸状パターン層2による、該暗色凸状パターン層2の形成部と非形成部に対応したパターン状の表面凹凸を埋め尽くす透明樹脂層5が形成されることによって、本発明のコントラスト向上フィルタ10が得られる。透明樹脂層5には、好適には電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を用いる。透明樹脂層5は、従来とは逆に、暗色条部に該当する暗色凸状パターン層2を形成した後に形成することができる。
【0022】
この様な構成にすることによって、暗色凸状パターン層2が外力で変形、脱落などの損傷するのを防げ、取り扱いが容易となる。
【0023】
《各層の詳細》
以下、コントラスト向上フィルタを構成する各層ついて更に詳述する。
【0024】
〔透明基材〕
透明基材1としては、ガラス、樹脂等からなる透明な基材を使用できる。透明基材1に用いる樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、或いはポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等である。これら樹脂は、フィルム、シート、或いは板の形態で使用される。なお、「フィルム」、「シート」、「板」は通常厚みにより大まかに区別されが、本発明では単に呼称上の違いのみであり、その意味の区別は特にない。透明基材1の厚みは、取扱性、コスト等の点で通常は12〜5000μm、好ましくは25〜200μmだが、特に制限はない。
また、透明基材1としては、生産性に優れたロール・ツー・ロール方式での生産適性の点では、フレキシブルな(可撓性の)材料を選べる樹脂シート好ましい。
なお、ここで、ロール・ツー・ロール方式とは、ロール(巻取)から巻き出して所定の加工を施した後、再度ロールに巻き取る加工方式を言う。
【0025】
〔コントラスト向上層〕
コントラスト向上層4は、少なくとも暗色凸状パターン層2から構成され、透明樹脂層5を有する場合には、暗色凸状パターン層2と透明樹脂層5とから構成される。暗色凸状パターン層2が外光を吸収し、暗色凸状パターン層2の非形成部に対応する部分(透明樹脂層5を有する場合は該透明樹脂層5の部分)が光透過部となり画像光の透過性を確保する部分で、これらにより外光の影響を抑制して、明室コントラストを向上させる。
【0026】
[暗色凸状パターン層]
暗色凸状パターン層2は、透明基材1上に、より好ましくプライマ層3を介する形で該プライマ層3上に、パターン状に印刷形成された、不要な外光を吸収する機能を担う層である。暗色凸状パターン層2は、透明基材1上に、フィルタ面の法線方向(図1〜図3に於ける上下方向)から視た平面視形状において、代表的には、延在方向を互いに平行にして且つ該延在方向と直交する方向に多数の線条が配列した所定の縞状乃至平行線群パターンでパターン状に形成される。この場合、暗色凸状パターン層2の平面視形状は直線状であるが、その他の形状、例えば正方格子、六方格子等の格子状等であっても良い。
暗色凸状パターン層2を印刷形成する印刷法としては、後述する様に、コントラスト向上効果を発揮できる程度のある程度の高さ(厚さ)とアスペクト比を実現できる方法であれば、特に制限はない。例えば、シルクスクリーン印刷法、凹版印刷法等であり、凹版印刷法の一種である、後述する引抜プライマ方式凹版印刷法は好適である。
【0027】
(断面形状)
暗色凸状パターン層2の形成部の主切断面(該パターンの延在方向と直交する断面)の形状は、図1例示の様な台形、或いは三角形等の楔形状が代表的である。暗色凸状パターン層2の断面形状は、この他、長方形、正方形等の四角形でもよく、また、三角形、四角形、台形等に於いてその辺が曲線化など変形した形状でもよい。また、暗色凸状パターン層2は、安価に出来る点で好ましくは印刷法で形成することから、印刷後にインクが固化するまでの過程で、断面形状が崩れで変形することがあるので、三角形、四角形、台形等の正確な形状よりは、これらの辺が変形した形状、或いは全体として変形した形状となることがある。
ただし、この様な変形形状であっても、暗色凸状パターン層2を有する限り、暗色凸状パターン層2に到達する外光がそこで吸収されるので、所定のコントラスト向上効果が得られることになる。
【0028】
暗色凸状パターン層2は、従来のコントラスト向上フィルタの様に、先に形成した透明樹脂層の凹条部内に、暗色材料をワイピング法で充填してするのでは無く印刷して形成できる層である。このため、暗色凸状パターン層2の断面形状に於けるアスペクト比(縦横比)を、ワイピング法では容易であった3.0以上とするには相応の工夫を要する。ただ、コンントラスト向上フィルタ表面に立てた法線方向に対して傾斜して入射する外光は吸収する共に該法線方向に対して平行に入射する画像光は隣接する暗色凸状パターン層2の間で透過させることによるコントラスト向上効果については、アスペクト比は、少なくとも1.0以上であれば効果が得られる。したがって、アスペクト比は1.0以上とするのが好ましい。また、引抜プライマ方式凹版印刷法ではアスペクト比1.0以上が可能である。
【0029】
ここで、具体例を示せば、断面形状が、線幅15μm、高さ20μmで、平面視形状が直線で、直線の配列周期80μmである。
【0030】
なお、これららの断面形状、配列周期(配列周期−線幅=光透過部に於ける配列周期方向での間口幅)は、外光が主として入射する方向、外光の吸収性能、画像光の透過性能、肉眼での不可視性などの要求される光学性能に応じて適宜に設定するとよい。
また、暗色凸状パターン層2が多数の平行線条として形成されるとき、複数配列される個々の線条は断面形状とその大きさは、すべて同一の形状及び大きさとするのが普通だが、これ以外に、断面形状及び大きさの少なくとも一つが異なる複数種類のパターンを有する暗色凸状パターン層2であっても良い。
【0031】
(暗色材料)
暗色凸状パターン層2は、暗色材料によって形成することができる。暗色材料としては、光吸収性色材を樹脂バインダに含有させた暗色樹脂組成物を用いる。暗色樹脂組成物を暗色インクとして印刷し、暗色樹脂組成物を溶剤乾燥、電離放射線照射、加熱などのエネルギー付加、化学反応などの固化手段によって固化させることで、暗色凸状パターン層2が得られる。
【0032】
光吸収性色材は、光吸収性が高く暗色の、つまり低明度の有彩色或いは無彩色を呈する暗色色材を用いることができる。暗色の代表例は黒色であり、無彩色の黒色が画像表示の色に影響を与えず、また外光吸収が大きい点で好ましい。又、低明度の有彩色としては、茶褐色、紺色、臙脂色、深緑色等が挙げられる。なお、暗色色材としては、公知の色材、黒色で言えば、例えば、カーボンブラック、黒色酸化鉄等の黒色顔料、アニリンブラック等の黒色染料などを用いれば良い。また、暗色色材としては、アクリル樹脂粒子等をこれら暗色色材で暗色に着色した暗色の樹脂粒子などでもよい。また、青色、黄色、赤色などの有彩色の色材を複数種類用いて混色により、暗色材料を黒色など無彩色乃至は有彩色の暗色としても良い。
【0033】
樹脂バインダは、暗色凸状パターン層2を形成する為の液状の暗色樹脂組成物から光吸収性色材を除いた残りの成分であり、樹脂バインダの樹脂(バインダ樹脂)としては、特に制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が使用できる。硬化性樹脂の場合はその硬化物の層として暗色凸状パターン層2は形成される。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂などが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂があり、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂としては、(メタ)アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。なお、本明細書で、(メタ)アクリレート系とは、メタクリレート系又はアクリレート系の両方を含み、単にアクリレート系とも呼称する。
(メタ)アクリレート系電離放射線硬化性樹脂の例としては、モノマー(単量体)としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
又、プレポリマー(乃至オリゴマー)としては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、樹脂バインダには、樹脂の他、印刷適性等の物性調整の為に、必要に応じて適宜、公知の溶剤、体質顔料、界面活性剤、その他添加剤等を含み得る。
【0034】
(暗色凸状パターン層の印刷方式)
暗色凸状パターン層2を透明基材1上に印刷形成する方法は、本コントラスト向上フィルタとしては特に限定はない。ただ、暗色凸状パターン層2を特有の断面形状を有するプライマ層3を介して透明基材1上に印刷形成する場合、該特有の断面形状のプライマ層3は、本出願人による特許第4436441号公報に開示された引抜プライマ方式凹版印刷法に特有の層でもある。この引抜プライマ方式凹版印刷法については、後述する、コントラスト向上フィルタの製造方法において説明する。
【0035】
[透明樹脂層]
透明樹脂層5は、暗色凸状パターン層2による、その形成部と非形成部とに対応したパターン状の表面の凹凸を埋め尽くす様に形成され、好ましくは、暗色凸状パターン層2を覆い尽くす様に形成される層である。透明樹脂層5は硬化後の表面が非粘着、言い換えるとタックフリーの層である。
透明樹脂層5が暗色凸状パターン層2による凹凸を埋め尽くす様に形成され、好ましくは、暗色凸状パターン層2を覆い尽くす様に形成される層であることにより、暗色凸状パターン層2が、外力により変形や脱落などの損傷を受けるのを保護することができる。また、透明樹脂層5は、画像光を暗色凸状パターン層2の形成部間であるその非形成部において、コントラスト向上フィルタ10の一方の面から入射した光を、他方の面に通過させる光透過部となる層である。
【0036】
透明樹脂層5は、好ましくは表面が平坦面であることが好ましい。表面が平坦面であることによって、光透過部として機能する透明樹脂層5に於いて、表面凹凸による光の不本意な屈折作用を防げる。この場合の平坦面とは、暗色凸状パターン層2の凹凸に対応した凹凸が存在しないという意味である。また、暗色凸状パターン層2の凹凸に対応した凹凸が存在しないと言う意味での平坦面の場合でも、例えば、防眩機能を付与する為の表面凹凸、反射防止の為の表面凹凸等を有していても良い。この場合は、透明樹脂層5は、後述する機能層の防眩層や反射防止層を兼用する層とも言える。したがって、平坦面の意味は、鏡面でも良いが、防眩機能等の意識的に光線制御する為の表面凹凸など多少の凹凸があっても良い。
【0037】
透明樹脂層5を構成する樹脂としては、透明であれば基本的には特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が使用できる。但し、硬化性樹脂の方が、耐擦傷性等の保護性能が良い点で好ましい。硬化性樹脂の場合はその硬化物の層として透明樹脂層5は形成される。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂などが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂があり、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられ、電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系などの樹脂が挙げられる。これらの樹脂のなかでも、揮発性の溶剤を不要にできるので厚みを稼げる点、固化が迅速である点などで、通常溶剤希釈する熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂に比べて電離放射線硬化性樹脂は好適な樹脂である。
透明樹脂層5の厚さは、暗色凸状パターン層2の厚さ(高さ)に応じたものとなる。厚さは、暗色凸状パターン層2の厚さ以上であり、例えば10〜500μm程度であるが、厚すぎて腰が強くなり過ぎる場合は10〜100μm程度とするのが良い。
【0038】
〔プライマ層〕
プライマ層3は、暗色凸状パターン層2が形成される側の透明基材1の面に形成された透明な層であり、しかもその厚さは、暗色凸状パターン層2が形成されている部分の厚さが、該暗色凸状パターン層2が形成されていない部分の厚さよりも厚くなっている。図2は、プライマ層3の厚さの特徴がより分かり易い様にした、拡大断面図である。
【0039】
この厚さの特徴は、暗色凸状パターン層2が引抜プライマ方式凹版印刷法によって形成された物である時に、特徴的に現れる。
プライマ層3は、引抜プライマ方式凹版印刷法において、暗色凸状パターン層2を印刷時に凹版から透明基材1へのインクの転移性を向上させ、印刷後は、透明基材1と暗色凸状パターン層2との密着性を向上させる。
【0040】
プライマ層3は、透明な樹脂層として形成される。プライマ層3を構成する樹脂には、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用いることができ、硬化性樹脂には熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができる。但し、固化が硬化反応により迅速な点で紫外線照射、電子線照射等で硬化する電離放射線硬化性樹脂が好ましい。これらの樹脂は、暗色凸状パターン層2で列記したバインダ樹脂などを使用できる。
プライマ層3の厚み(固化時)は、通常、暗色凸状パターン層2が形成されていない部分の厚さで、1〜10μm程度である。暗色凸状パターン層2が形成されている部分の厚さは、暗色凸状パターン層2が形成されていない部分の厚さよりも、通常、1〜10μm程度厚い。
【0041】
《変形形態》
本発明のコントラスト向上フィルタ10は、上記した層以外に、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で更にその他の層を備えた形態とすることができる。その他の層としては、コントラスト向上フィルタ10を適用する用途、例えば、ディスプレイパネルや画像表示装置の種類に応じて、ディスプレイパネルの前面フィルタとして各種公知の層を適宜採用することができる。
【0042】
〔機能層〕
その他の層の具体例としては、例えば、各種の機能層を挙げることができる。
図3(A)及び図3(B)の断面図で例示した形態のコントラスト向上フィルタ10は、図1(B)の形態に対して機能層6を追加した例である。
機能層6の位置は任意であり、図3(A)に例示するコントラスト向上フィルタ10は、透明基材1側に機能層6を積層した形態例であり、図3(B)に例示するコントラスト向上フィルタ10は、コントラスト向上層4側の透明樹脂層5上に機能層6を積層した形態例である。また、これらの機能層6は、粘着剤層及び接着剤層は機能層6のうちの下記する非光学機能層の一種であるが、これらを明示的に機能層6とは区別した記述で述べれば、粘着剤層などの接着剤層を介して積層しても良い。
【0043】
機能層6の機能としては、従来からの光学フィルタに於ける各種機能を挙げることができる。機能層6の機能を大別すると、光学的機能を付与する光学機能層と、光学的機能以外の機能を付与する非光学機能層とがある。また、以下に述べる各種機能層は、単層で複数の機能を兼用することもあるし、前記透明基材1や透明樹脂層5を機能層と兼用させることもある。
【0044】
[光学機能層]
光学機能層としては、例えば、近赤外線を吸収する近赤外線吸収層、紫外線を吸収する紫外線吸収層、或いは、視覚上の効果が得られるものとして、PDPのネオン光を吸収するネオン光吸収層、表示画像を好みの色調に補正する色補正機能などの特定光透過層、反射防止層(防眩、反射防止、防眩及び反射防止兼用のいずれか)などがある。具体的には、反射防止機能を実現する反射防止層としては、フッ素系化合物を含む低屈折率物質の層や、中空シリカ等の低屈折粒子と樹脂バインダと含む組成物層を、塗工形成したものを用いることができる。
【0045】
[非光学機能層]
非光学機能層としては、フィルタの表面を保護する表面保護層、ハードコート層、ディスプレイパネルから放出される不要な電磁波を遮蔽する電磁波遮蔽層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、2層間の物質移動を防ぐバリア層、コントラスト向上フィルタを被着体に貼り付ける為の粘着剤層、該粘着剤層を使用時まで一時的に保護しておく剥離シートなどである。
表面保護層やハードコート層としては、硬化性樹脂として2液硬化型ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂等からなる電離放射線硬化性樹脂が好ましくは使用される。なお、表面保護層4としては、透明支持体5自体でその機能を果たすことも可能である。
電磁波遮蔽層は、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の透明な基材の片面に導電体パターン層を形成した構成である。導電体パターン層には、例えば、導電性組成物(例えば銀ペーストなど)をメッシュ状に透明基材面に印刷形成した、導電性粒子と樹脂バインダとを含有する導電性組成物層を用いる。導電体パターン層の平面視形状は代表的には正方格子状のメッシュ形状である。
【0046】
〔B〕コントラスト向上フィルタの製造方法:
本発明によるコントラスト向上フィルタの製造方法には、透明基材1と暗色凸状パターン層2との間にプライマ層3を有さない形態と、プライマ層3を有する形態があった。そこで、以下では、プライマ層が必須ではない形態を先に説明し、その後で、プライマ層を有する形態を説明する。
【0047】
《プライマ層が必須ではない形態の製造方法》
プライマ層が必須ではない形態では、下記の(A)暗色凸状パターン層印刷工程で暗色凸状パターン層を印刷した後、下記の(B)塗工工程で透明樹脂層を塗工し硬化させるまで、ガイドローラは暗色凸状パターン層の印刷面には非接触で該暗色凸状パターン層の非印刷面側に接触させて、同一装置上で前記印刷工程から前記塗工工程まで(連続帯状の透明基材を)巻き取らずに連続的に行う。
(A)暗色凸状パターン層を透明基材上に印刷形成する暗色凸状パターン層印刷工程、
(B)上記(A)暗色凸状パターン層印刷工程の後に、暗色凸状パターン層が印刷形成された透明基材側の面に、硬化後の表面が非粘着となる透明樹脂組成物を塗工し硬化させて、暗色凸状パターン層によるパターン状の凹凸を埋め尽くす透明樹脂層を塗工形成する、塗工工程。
【0048】
この様にして製造することで、図1(A)の如く最初に暗色凸状パターン層2を形成してから、その後で図1(B)の如く透明樹脂層5を形成するときに、暗色凸状パターン層をガイドローラとの接触によって損傷させることなく、連続的かつ効率的に、ロール・ツー・ロール方式で、連続帯状物として、残留気泡による画面白化や生産性低下を来たさないコントラスト向上フィルタを製造できる。
【0049】
《プライマ層を有する形態の製造方法》
プライマ層を有する形態の製造方法、つまりプライマ層が必須の形態の製造方法では、好適には、引抜プライマ方式凹版印刷法によつて、暗色凸状パターン層2が印刷形成される。
【0050】
図4は、この製造方法の一実施形態の説明図である。本製造方法で製造されるコントラスト向上フィルタは、図1(B)で例示したコントラスト向上フィルタ10の様な、透明基材1上にプライマ層3を介して暗色凸状パターン層2が形成され、さらにこの暗色凸状パターン層2の上に透明樹脂層5が形成され、前記暗色凸状パターン層2と該透明樹脂層5とでコントラスト向上層4が構成される、連続帯状形態のフィルタである。
【0051】
本製造方法では、上記した(A)暗色凸状パターン層印刷工程が次の(A1)〜(A6)を含む。さらに、本製造方法では、下記の(A1)透明基材準備工程で流動状態のプライマ層を形成した段階から、ガイドローラは暗色凸状パターン層の印刷面には非接触で、該暗色凸状パターン層の非印刷面側に接触させて製造する。
【0052】
(A1)樹脂フィルムからなる連続帯状の透明基材の一方の面に、硬化するまで流動性を保持できるプライマ層を形成する透明基材準備工程、
(A2)版面にパターン状に凹部が形成された円筒状の凹版の版面に、硬化後に暗色凸状パターン層を形成できる暗色インクを塗布した後、前記凹部内以外に付着した該暗色インクを掻き取って該凹部内に該暗色インクを充填するインク充填工程、
(A3)前記透明基材準備工程後の透明基材のプライマ層側と上記インク充填工程後の版面とを圧着して、該プライマ層と前記凹部内の暗色インクとを空隙なく密着する圧着工程、
(A4)上記圧着工程後に上記プライマ層を硬化させるプライマ層硬化工程、
(A5)上記プライマ層硬化工程後に前記透明基材及び上記プライマ層を前記版面から離して前記凹部内の暗色インクを該プライマ層上に転移させる暗色凸状パターン層転移工程、
(A6)前記プライマ層硬化工程と同時に、又は上記暗色凸状パターン層転移工程の後に、転移した暗色インクを固化させて暗色凸状パターン層を形成する、暗色凸状パターン層形成工程。
【0053】
プライマ層を有する形態では、前記したプライマ層が必須ではない形態の製造方における効果に加えて、より高精細かつ密着性の良い暗色凸状パターン層を有するコントラスト向上フィルタを製造できる。
【0054】
以下、図4で例示するフィルタ製造装置40による形態例を参照して、本製造方法の各工程について説明する。
【0055】
(A)暗色凸状パターン層印刷工程:
暗色凸状パターン層印刷工程では、暗色凸状パターン層2を流動状態のプライマ層3を介して、連続帯状形態の透明基材1上に所定のパターンで印刷形成する、次の(A1)〜(A6)の各工程を有する。
【0056】
(A1)透明基材準備工程:
透明基材準備工程では、樹脂フィルムからなる連続帯状の透明基材1の一方の面に、硬化するまで流動性を保持できるプライマ層を流動状態のプライマ層として形成する。したがって、この段階でのプライマ層は、最終的な固化状態ではないので、正確にはプライマ流動層と呼ぶこともできる。流動状態のプライマ層の形成は、ロールコート法などの公知の塗工法で行うことができる。流動状態のプライマ層は、前記したプライマ層で列記した樹脂を使用すればよく、硬化するまで流動状態とするには、溶剤、モノマー等の反応性希釈溶剤を適宜使用する。
図4では、供給ロールR1から巻き出した、連続帯状の透明基材1を塗工ロール41aと圧胴42間に供給して、塗工ロール41aによりプライマ43を塗工して、流動状態のプライマ層を透明基材1の片面(図面下側の面)に形成する。流動状態のプライマ層が形成された側の面には、ガイドローラは接触させないで、透明基材1を次の(A2)インク充填工程で暗色凸状パターン層2を印刷する凹版44に走行させる。
なお、同図では、プライマ塗工の前段階である供給ロールR1からプライマを塗工する塗工ロール41aまでの間には、プライマ層を形成する側の透明基材1の面にはガイドローラは接触させても良く、その為、当該面に接触させるガイドローラGcを明示的に示してある。
【0057】
(A2)インク充填工程:
次のインク充填工程では、凹版44の版面の凹部に、暗色インク45を充填する。暗色凸状パターン層2を印刷する凹版44としては、その版面にパターン状に凹部が形成された円筒状の凹版を用いる。凹版44の版面に、硬化後に暗色凸状パターン層2を形成できる暗色インク45を塗布した後、前記凹部内以外に付着した該暗色インク45を掻き取って該凹部内に該暗色インクを充填する。暗色インクの掻き取りには、ドクターブレード(不図示)を用いることができる。この工程でのインク充填は、通常の凹版印刷と同様にできる。
【0058】
(A3)圧着工程:
次の圧着工程では、(A1)透明基材準備工程の後の透明基材1の流動状態のプライマ層側と(A2)インク充填工程後の凹版44の版面とを圧着して、該プライマ層と前記凹部内の暗色インクとを空隙なく密着する。
図4では、流動状態のプライマ層形成済みの透明基材1が、インク充填済みの凹版44と、圧胴42との間を走行することで、透明基材1上のプライマ層と凹版44の凹部内の暗色インクとが空隙なく密着される。
【0059】
(A4)プライマ層硬化工程:
次のプライマ層硬化工程では、透明基材1が剥離ローラGrで凹版44の版面から離れるまでの、透明基材1が凹版44の版面上にある間に、透明基材1側から電離放射線照射装置46によって紫外線など電離放射線を照射して、プライマ層を硬化させて固化させる。
【0060】
(A5)暗色凸状パターン層転移工程:
次の暗色凸状パターン層転移工程では、剥離ローラGrで透明基材1を凹版44の版面から離版させ、透明基材1上に硬化し固化したプライマ層上に暗色凸状パターン層2が凹版44から転移し印刷された状態の連続帯状物となる。
【0061】
(A6)暗色凸状パターン層形成工程:
次の暗色凸状パターン層形成工程では、上記連続帯状物を、暗色凸状パターン層2が転移した側の面には、ガイドローラは接触させないで、透明基材1をガイドする全てのガイドローラGnは反対側の透明基材の面に接触させて、透明樹脂層5を塗工形成する(B)塗工工程まで導く。
このとき、(B)塗工工程に至る間に、プライマ層上に転移し印刷された直後の暗色凸状パターン層2を未固化である場合は、インク固化装置47で、インクを固化させて暗色凸状パターン層2を形成する。インク固化装置47は、熱風乾燥炉、電離放射線放射装置などである。プライマ層硬化工程にて、プライマ層と同時に暗色凸状パターン層を固化させている場合は、インク固化装置47の作動は省略できる。このようにして、固化した暗色凸状パターン層2が形成される。
【0062】
(B)塗工工程:
次の塗工工程では、暗色凸状パターン層2が印刷形成された透明基材1側の面に、硬化後の表面が非粘着となる透明樹脂組成物48を塗工し硬化させて、暗色凸状パターン層2によるパターン状の凹凸を埋め尽くす透明樹脂層5を塗工により形成する。透明樹脂組成物の塗工は、ロールコート法などの公知の塗工法を採用することができる。そして、連続帯状のコントラスト向上フィルタ10が得られる。
図4では、(A)印刷工程からの走行してきた連続帯状の、暗色凸状パターン層2形成済みの透明基材1を、塗工ロール41bと圧胴42間に供給して、塗工ロール41bにより透明樹脂組成物48を、暗色凸状パターン層2形成側の面に塗工する。このとき、塗工された側の面には、ガイドローラは接触させないで、透明基材1を搬送し、電離放射線照射装置46で塗工された透明樹脂組成物を硬化させて固化し、表面が非粘着(いわゆるタックフリー)の透明樹脂層5を形成する。
【0063】
以上説明した様に、(A)印刷工程で流動状態のプライマ層が形成された透明基材を準備してから、(B)塗工工程で表面が非粘着の透明樹脂層5が形成されるまで、暗色凸状パターン層及び透明樹脂層の形成面側は、ガイドローラは非接触で、連続帯状の透明基材1が搬送されることで、暗色凸状パターン層2及び透明樹脂層5の形状が崩れたり逸脱することなく形成される。
そして、透明樹脂層5が表面非粘着で形成された後は、透明樹脂層5を形成側の面にはガイドローラを接触させても良い。従って、図4では、明示的に示してある、透明樹脂層5を形成側の面に接触するガイドローラGcによって、透明樹脂層5形成後の連続帯状のコントラスト向上フィルタ10が導かれて巻取ロールR2で巻き取られる。
【0064】
《その他の工程》
本発明によるコントラスト向上フィルタの製造方法では、上記工程以外に、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で更にその他の工程を備えた形態とすることができる。例えば、前記した機能層を形成する工程である。
【0065】
〔C〕画像表示装置:
本発明による画像表示装置は、前記したコントラスト向上フィルタ10が、ディスプレイパネルの観察者側に配置されている構成の装置である。本発明による画像表示装置は、図5に例示する形態の画像表示装置100の様に、少なくとも、ディスプレイパネル7と、該ディスプレイパネル7の観察者V側に配置されるコントラスト向上フィルタ10と、を備える。
ディスプレイパネル7は、公知の各種ディスプレイパネルを用途に応じて採用すれば良く、特に制限はない。従って、ディスプレイパネル7としては、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶パネル、EL(電界発光)パネル等用いることができる。
【0066】
ここで、図5に例示の画像表示装置100は、コントラスト向上フィルタ10として、図1(B)に例示した形態のものである。つまり、プライマ層3を有する形態である。
図5では、透明基材1よりも暗色凸状パターン層2の方をディスプレイパネル7を観察する観察者V側に向けた配置であるが、この逆もあり得る。また、暗色凸状パターン層2は、幅が狭い方の頂部を観察者V側に向けた形態だが、この逆もあり得る。
【0067】
ディスプレイパネル7には、ディスプレイ駆動回路、配線、シャーシ、フレーム等を含んでいても良い。
ディスプレイパネル7とコントラスト向上フィルタ10とは一体化しても良い。従って、コントラスト向上フィルタ10を一体化した構成、或いは一体化しない構成も含めて、これら周辺部材を一体化した構成を「ディスプレイモジュール」乃至は「パネルモジュール」等と呼ぶこともできる。
画像表示装置としては、上記ディスプレイパネル7、コントラスト向上フィルタ10、その他のモジュール組込み部品以外に、筐体(キャビネット)、入出力部品等の他、画像表示装置の用途に応じて、例えば、テレビジョン受像機の場合はチューナ等の、公知の各種部品を備える。これらのその他の要素は、特に制限はなく、用途に応じたものとなる。
【0068】
このような構成の画像表示装置100とすることで、上記したコントラスト向上フィルタ10で述べた各種効果が得られる。その結果、コントラスト向上フィルタ由来の残留気泡による画面白化がなく、画像品質が向上する。
【0069】
〔D〕用途:
本発明によるコントラスト向上フィルタの用途は、各種ディスプレイパネルの観察者側に配置して、ディスプレイパネルの表示画像のコントラスを向上する用途に好適に使用できる。
該コントラスト向上フィルタをディスプレイパネルの観察者側に配置した画像表示装置は、テレビジョン受像装置、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、デジタルフォトフレーム、遊戯機器、携帯情報端末等、或いはこれらのパネルモジュールとして使用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 透明基材
2 暗色凸状パターン層
3 プライマ層
4 コントラスト向上層
5 透明樹脂層
6 機能層
7 ディスプレイパネル
10 コントラスト向上フィルタ
30,30a 従来のコントラスト向上フィルタ
31 透明基材
32 透明樹脂層
33 暗色条部
33A 凹条部
34 コントラスト向上層
35 凹み
36 機能層
37 粘着剤層
40 フィルタ製造装置
41a,41b 塗工ロール
42 圧胴
43 プライマ
44 凹版
45 暗色インク
46 電離放射線照射装置
47 インク固化装置
48 透明樹脂組成物
100 画像表示装置
A 残留気泡
Gc (印刷側面接触の)ガイドローラ
Gn (印刷側面非接触の)ガイドローラ
Gr 剥離ローラ
Pe 露出面
R1 供給ロール
R2 巻取ロール
V 観察者


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、該透明基材上に多数の線条がパターン状に印刷形成された暗色凸状パターン層とを有し、該暗色凸状パターン層が形成された側の面に、該暗色凸状パターン層によるパターン状の凹凸を埋め尽くす透明樹脂層が形成されて成るコントラスト向上フィルタを連続帯状形態で製造する方法であって、
下記の(A)暗色凸状パターン層印刷工程で暗色凸状パターン層を印刷した後、下記の(B)塗工工程で透明樹脂層を塗工し硬化させるまで、ガイドローラは暗色凸状パターン層の印刷面には非接触で該暗色凸状パターン層の非印刷面側に接触させて、同一装置上で前記印刷工程から前記塗工工程まで巻き取らずに連続的に行う、コントラスト向上フィルタの製造方法。
(A)暗色凸状パターン層を透明基材上に印刷形成する暗色凸状パターン層印刷工程、
(B)上記(A)暗色凸状パターン層印刷工程の後に、暗色凸状パターン層が印刷形成された透明基材側の面に、硬化後の表面が非粘着となる透明樹脂組成物を塗工し硬化させて、暗色凸状パターン層によるパターン状の凹凸を埋め尽くす透明樹脂層を塗工形成する、塗工工程。
【請求項2】
透明基材と、該透明基材上に形成されたプライマ層と、該プライマ層上に多数の線条がパターン状に印刷形成された暗色凸状パターン層とを有し、
上記プライマ層のうち上記暗色凸状パターン層が形成されている部分の厚さは、該暗色凸状パターン層が形成されていない部分の厚さよりも厚い、コントラスト向上フィルタを連続帯状形態で製造する請求項1記載の製造方法であって、
(A)暗色凸状パターン層印刷工程が次の(A1)〜(A6)を含み、さらに、下記の(A1)透明基材準備工程で流動状態のプライマ層を形成した段階から、ガイドローラは暗色凸状パターン層の印刷面には非接触で、該暗色凸状パターン層の非印刷面側に接触させて製造する、請求項1記載のコントラスト向上フィルタの製造方法。
(A1)樹脂フィルムからなる連続帯状の透明基材の一方の面に、硬化するまで流動性を保持できるプライマ層を形成する透明基材準備工程、
(A2)版面にパターン状に凹部が形成された円筒状の凹版の版面に、硬化後に暗色凸状パターン層を形成できる暗色インクを塗布した後、前記凹部内以外に付着した該暗色インクを掻き取って該凹部内に該暗色インクを充填するインク充填工程、
(A3)前記透明基材準備工程後の透明基材のプライマ層側と上記インク充填工程後の版面とを圧着して、該プライマ層と前記凹部内の暗色インクとを空隙なく密着する圧着工程、
(A4)上記圧着工程後に上記プライマ層を硬化させるプライマ層硬化工程、
(A5)上記プライマ層硬化工程後に前記透明基材及び上記プライマ層を前記版面から離して前記凹部内の暗色インクを該プライマ層上に転移させる暗色凸状パターン層転移工程、
(A6)前記プライマ層硬化工程と同時に、又は上記暗色凸状パターン層転移工程の後に、転移した暗色インクを固化させて暗色凸状パターン層を形成する、暗色凸状パターン層形成工程。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−168430(P2012−168430A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30577(P2011−30577)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】