説明

コントローラの冷却構造

【課題】 耳障りな音が発生しない状態で電子素子を冷却して、電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できるコントローラの冷却構造を提供する。
【解決手段】 コントローラC1の樹脂製の筐体20を、分割面20Aを介して上体部20aと下体部20bが互いに対向して分割可能に構成し、その内部には、成形品取出機1の運転制御用の複数の電子素子21を実装したプリント基板22を格納する。そして、複数本のヒートパイプ23によってサイレント冷却手段24を構成し、これらヒートパイプ23を上体部20a下面と下体部20b上面に分割して取付けるとともに、各ヒートパイプ23の入熱部23aを筐体20の内部に位置決めし、放熱部23bを筐体20の外部に臨ませている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントローラの冷却構造に係り、詳しくは、生産機器と、この生産機器に付設される付設機器の少なくとも1つの機器に制御信号を出力して該少なくとも1つの機器の運転を制御するコントローラの冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、図8に示す成形機Sに付設した成形品取出機1は、生産機器である成形機Sによって成形された成形品を取り出す付設機器として機能する。この成形品取出機1の運転は、成形機S近傍の床面に配置した床置き式のコントローラCから出力される信号によって制御される(たとえば特許文献1)。また、図9に示す携行可能な第1のハンディ式コントローラ100あるいは該コントローラ100よりも大きい外形寸法を有した投影平面形状が正方形あるいは長方形を呈する第2のハンディ式コントローラ(図示省略)から制御信号を出力して成形品取出機1の運転を制御する方式も周知である。
【0003】
特許文献1に記載されている図8の成形品取出機1は、成形機Sの固定プラテン2に基部が固定されて成形機Sの幅方向(矢印W)にのびる横行フレーム3と、該横行フレーム3に支持されて、たとえばサーボモータなどの電動モータからなる第1駆動源4により前記幅方向(矢印W)に進退する第1走行体5と、この第1走行体5に設けられて成形機Sの長手方向(矢印L)にのびる引抜きフレーム6と、該引抜きフレーム6に支持されて、たとえばサーボモータなどの電動モータからなる第2駆動源7により前記長手方向(矢印L)に進退する第2走行体8と、この第2走行体8に支持されて、たとえばサーボモータなどの電動モータまたはエアーシリンダー装置からなる第3駆動源9により昇降(矢印Z)するヘッド昇降ユニット10と、該ヘッド昇降ユニット10に設けられて成形品を把持する成形品把持ヘッド11とを備えている。
【0004】
前記構成の成形品取出機1によれば、固定プラテン2に取付けられている固定金型K1と、可動プラテン2aに取付けられている可動金型(図示省略)の型開時に、第2駆動源7と第3駆動源9との複合作動によって、ヘッド昇降ユニット10および成形品把持ヘッド11を金型間に進入下降させ、前記可動金型に保持されている樹脂成形品(図示省略)を成形品把持ヘッド11で把持したのち、第3駆動源9によってヘッド昇降ユニット10および成形品把持ヘッド11を上昇させながら、横行フレーム3基部側基準位置にある第1走行体5を、第1駆動源4により横行フレーム3先端側の成形品解放位置まで前進させ、ここでは第3駆動源9によってヘッド昇降ユニット10および成形品把持ヘッド11を下降させ、その下限位置で成形品把持ヘッド11を水平な成形品解放姿勢に反転して樹脂成形品を解放する。成形品把持ヘッド11が樹脂成形品を解放すると、第3駆動源9の作動によってヘッド昇降ユニット10および成形品把持ヘッド11を上限位置まで上昇させながら第1駆動源4によって第1走行体5を成形品解放位置から前記基準位置に後退復帰させる動作を繰り返して樹脂成形品を順次取り出す。そして、前述した一連の動作およびティーチングなどは、図8に示した床置き式のコントローラC、図9示した第1のハンディ式コントローラ100あるいは図示していない前記第2のハンディ式コントローラから出力される制御信号によって制御される。
【0005】
図8に示した床置き式のコントローラCおよび図9示した第1のハンディ式コントローラ100あるいは図示していない前記第2のハンディ式コントローラは、たとえば図10に示すように、樹脂製の筐体20の内部に、CPUと、プログラムを記憶するROMと、作業データを記憶しているRAMなどを主とした成形品取出機1運転制御用の複数の電子素子21と、この電子素子21を実装したプリント基板22が格納され、筐体20の表面には、たとえば、図9のように、複数個(一例として9個)のアイコン(図示省略)を成形品取出機1の操作メニューとして表示する液晶表示部110と、4方向走査を行う4つの走査キー111A〜111Dを周囲に配置し、その中心部にエンターキー(確定キー)111Eを配置したスクロールキー111と、0〜9の数字を表示した10個の数字キー112とを備え、表示部には、前記図示されていない一例として9個のアイコンを個別に取り囲む表示枠(図示省略)が表示されている。131は操作体系特定キーであり、たとえば、モニターメニュー、ティーチングメニュー、金型読出しメニューおよび全メニューの4つの操作体系に分類して特定するモニターキー131A,ティーチングメニューを特定するティーチングキー131B,金型読出しメニューを特定する金型読出しキー131および全メニューを特定する全メニューキー131Dを備えている。図中、113は非常停止ボタンを示し、200は電源スイッチを示す。
【0006】
【特許文献1】特開2002−326258公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載の床置き式コントローラC、第1のハンディ式コントローラ100および第2のハンディ式コントローラでは、筐体20に格納されている各電子素子が発熱する。しかも、各電子素子の高性能化に伴って発熱量が増大する傾向にある。各電子素子が発熱するにもかかわらず、筐体20は、一般に、熱伝導率の低い樹脂によって成形されているため筐体20からの放熱が期待できない。したがって、経時により内部が高温化されて各電子素子に悪影響をおよぼす。そのため、前記特許文献1に記載のコントローラC、図示していない前記第2のハンディ式コントローラでは、筐体20の適所に冷却用フアンを取付けて排熱することで、筐体20内部の高温化を抑制して各電子素子への熱的な悪影響を回避するようにしている。
【0008】
ところで、クリーンルームは、室内空気の浄化は勿論、僅かな音でもその発生を避けることが望まれる空間である。そのため、クリーンルームに成形品取出機1を付設した成形機Sを設置して、成形品取出機1の運転制御を前記筐体20の適所に冷却用フアンを取付けたコントローラCまたは筐体20の適所に冷却用フアンを取付けた図示していない前記第2のハンディ式コントローラによって行うと、冷却用フアンの音が耳障りになって好ましくない。一方、冷却用フアンの取付けが困難な小型の前記第2のハンディ式コントローラ100は、耳障りな冷却用フアンの音が発生しない反面、電子素子に熱的な悪影響をおよぼすおそれがある。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するものであって、その目的とするところは、耳障りな音が発生しない状態で電子素子を冷却して、電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できるコントローラの冷却構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明に係るコントローラの冷却構造は、生産機器と、この生産機器に付設される付設機器の少なくとも1つの機器に制御信号を出力して該少なくとも1つの機器の運転を制御するとともに、前記少なくとも一つの機器の運転制御用の電子素子が実装されたプリント基板を格納する筐体を有するコントローラの冷却構造において、
前記筐体にサイレント冷却手段が装備されていることを特徴としている。
【0011】
これによれば、サイレント冷却手段の熱輸送作用により各電子素子を無音または略無音で冷却して、各電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。そのため、前記生産機器と付設機器とが、たとえクリーンルームに設置されていても、耳障りな音の発生を回避できる。
【0012】
本発明に係るコントローラの冷却構造は、前記サイレント冷却手段が、入熱部と放熱部とを有し、入熱部が前記筐体の内部に臨むように該筐体に装着されていることを特徴としている。これによると、入熱部を入熱効率の高い位置に設定して筐体に装着できるので、各電子素子の冷却効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るコントローラの冷却構造によれば、耳障りな音が発生しない状態で電子素子を冷却して、電子素子に熱的な悪影響がおよぶのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1実施形態を示し、液晶表示部、スクロールキー、数字キーおよび操作体系特定キーなどを省略した概略平面図、図2は図1のII−II線に沿う概略断面図である。なお、図8〜図10で説明した従来例と同一もしくは相当部分には同一符号を付して、重複した構造および作用の説明は省略する。
【0015】
図1,図2において、コントローラC1の樹脂製の筐体20は、分割面20Aを介して上体部20aと下体部20bが互いに対向して分割可能に結合され、その内部には、成形品取出機1(図8参照)の運転制御用の複数の電子素子21と、この電子素子21を実装したプリント基板22が2段格納されている。そして、複数本(実施形態では10本)のヒートパイプ23によってサイレント冷却手段24を構成し、5本のヒートパイプ23を上体部20a下面に取付け、残る5本のヒートパイプ23を下体部20b上面に取付けるとともに、各ヒートパイプ23の入熱部23aを筐体20の内部に位置決めし、放熱部23bを筐体20の外部に臨ませている。
【0016】
前構成のコントローラC1によれば、サイレント冷却手段24の熱輸送作用、つまり、各ヒートパイプ23内で発生する作動液体の入熱部23a側での蒸発と放熱部23b側での凝縮に伴う潜熱移動によって、各電子素子21を無音または略無音で冷却して、各電子素子21に熱的な悪影響がおよぶのを抑制できる。そのため、図8に示す成形機Sと、成形品取出機1がたとえクリーンルームに設置されていても、耳障りな音の発生を回避できる。図8に示す床置き式のコントローラCを、図1,図2で説明したサイレント冷却手段24を備えているコントローラC1に交換するか、あるいは床置き式のコントローラCに前記サイレント冷却手段24を後着けによって装着することにより、このコントローラCを無音または略無音状態で冷却することができる。
【0017】
また、サイレント冷却手段24を構成しているヒートパイプ23は、入熱部23aと放熱部23bとを有し、入熱部23aが筐体20の内部に臨むように該筐体20に装着されているので、入熱部23aを入熱効率の高い位置に設定して筐体に装着できる。これにより、小型化と構造の簡素化を図るとともに、冷却効率の高いサイレント冷却手段24を実現できる。
【0018】
サイレント冷却手段24が小型化されることで、該サイレント冷却手段24を装着した携行可能な第1のハンディ式コントローラ100の製作が可能になる。また、既存の第1のハンディ式コントローラ100に前記サイレント冷却手段24を後着けによって装着することもできる。
【0019】
さらに、サイレント冷却手段24を装着した携行可能な前記第2のハンディ式コントローラ(図示省略)を製作しても、あるいは既存の前記第2のハンディ式コントローラにサイレント冷却手段24を後着けによって装着することもできる。
【0020】
一方、図3に示すように、5本のヒートパイプ23をインサート成形によって上体部20aに設け、残る5本のヒートパイプ23をインサート成形によって下体部20bに設けるとともに、各ヒートパイプ23の入熱部(図3には図示していない)を筐体20の上体部20a内または下体部20b内に位置決めし、各ヒートパイプ23の放熱部(図3には図示していない)を筐体20の上体部20aまたは下体部20bの外部に臨ませてサイレント冷却手段24を構成してもよい。これによれば、筐体20の内面に冷却手段24を装着する手間が省ける。
【0021】
つぎに、本発明の好ましい第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一または相当部分には同一符号を付して、重複する構造および作用の説明は省略する。図4は第2実施形態を示し、液晶表示部、スクロールキー、数字キーおよび操作体系特定キーなどを省略した概略平面図、図5は図4のV−V線に沿う概略断面図である。
【0022】
図4,図5に示すコントローラC1の筐体20に取付られるサイレント冷却手段24は、入熱部23aと、この入熱部23aから複数のフインを突出させて放熱面積を大きくした放熱部23bとを備えて、熱伝導率が高いアルミ材の押出しにより成形されたヒートシンク23によって構成されている。そして、ビスやボルトなどの締結手段25により、筐体20における下体部20bの下面に入熱部23aを締結することで筐体20に取付けられている。
【0023】
このように構成されたコントローラC1であっても、前記第1実施形態で説明したコントローラC1と同様の作用効果を奏する。
【0024】
一方、図6に示すように、筐体20の内部に入熱部23aの一部を臨ませた状態で、ビスやボルトなどの締結手段25によりヒートシンク23を筐体20に取り着けることで、ヒートシンク23による各電子素子21の冷却効率を高めることができる。
【0025】
また、図7に示すように、ヒートシンク23の入熱部23aを部分的なインサート成形によって筐体20に一体に結合すれば、前述のビスやボルトなどの締結手段25により入熱部23aを筐体20に取付ける手間が省ける。
【0026】
前記第1および第2実施形態では、コントローラC1によって成形機Sの後工程機器として付設される付設機器である成形品取出機1の運転を制御しているが、生産機器として機能する成形機Sのコントローラ(図示省略)に、前記第1,第2実施形態で説明したヒートパイプ23またはヒートシンク23からなるサイレント冷却手段24を装備して成形機Sの運転を制御してもよい。また、成形機Sの前工程機器として付設される付設機器であるインサトワーク供給機(図示省略)のコントローラ(図示省略)に、前記第1,第2実施形態で説明したヒートパイプ23またはヒートシンク23からなるサイレント冷却手段24を装備して、インサトワーク供給機の運転を制御してもよい。なお、ヒートパイプ23およびヒートシンク23の使用数量や配置パターンなどは任意である
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、液晶表示部、スクロールキー、数字キーおよび操作体系特定キーなどを省略した概略平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う概略断面図である。
【図3】第1実施形態の変形例を示す図2に相当する概略断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示し、液晶表示部、スクロールキー、数字キーおよび操作体系特定キーなどを省略した概略平面図である。
【図5】図4のV−V線に沿う概略断面図である。
【図6】第2実施形態の第1変形例を示す図5に相当する概略断面図である。
【図7】第2実施形態の第2変形例を示す図5に相当する概略断面図である。
【図8】従来例の斜視図である。
【図9】他の従来例の説明平面図である。
【図10】筐体の内部を示す図9の概略横断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 成形品取出機(後工程機器)
20 筐体
21 電子素子
22 プリント基板
C1 コントローラ
S 成形機(生産機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産機器と、この生産機器に付設される付設機器の少なくとも1つの機器に制御信号を出力して該少なくとも1つの機器の運転を制御するとともに、前記少なくとも一つの機器の運転制御用の電子素子が実装されたプリント基板を格納する筐体を有するコントローラの冷却構造において、
前記筐体にサイレント冷却手段が装備されていることを特徴とするコントローラの冷却構造。
【請求項2】
請求項1に記載のコントローラの冷却構造において、
前記サイレント冷却手段は、入熱部と放熱部とを有し、入熱部が前記筐体の内部に臨むように該筐体に装着されていることを特徴とするコントローラの冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−272353(P2009−272353A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119382(P2008−119382)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000138473)株式会社ユーシン精機 (117)
【Fターム(参考)】