コンバインのカバー取り付け構造
【課題】生産性の低下を招くことなく、製作誤差や組み付け誤差に起因してカバー部材と搭乗運転部との間で発生する不具合を解消できるようにする。
【解決手段】カバー部材45の穀粒タンク9への取り付けを、カバー部材45の下部に備えた前後の係合片48,49と穀粒タンク9に前後向きに配備した前後の支軸46,47との係合、及び、カバー部材45の上部に備えた前後の係止具50と穀粒タンク9に前後向きに配備した前後の係止軸36Aとの係止で行うように構成し、前側の支軸46を、係合片48が係合する環状の係合溝を端部に形成した螺軸46で構成し、螺軸46の螺進による係合溝の前後方向での位置調節を可能にする螺合部を穀粒タンク9に装備し、螺軸46及び螺合部により、カバー部材45の穀粒タンク9に対する前後方向での取り付け位置の調整を可能にする調整機構55を構成する。
【解決手段】カバー部材45の穀粒タンク9への取り付けを、カバー部材45の下部に備えた前後の係合片48,49と穀粒タンク9に前後向きに配備した前後の支軸46,47との係合、及び、カバー部材45の上部に備えた前後の係止具50と穀粒タンク9に前後向きに配備した前後の係止軸36Aとの係止で行うように構成し、前側の支軸46を、係合片48が係合する環状の係合溝を端部に形成した螺軸46で構成し、螺軸46の螺進による係合溝の前後方向での位置調節を可能にする螺合部を穀粒タンク9に装備し、螺軸46及び螺合部により、カバー部材45の穀粒タンク9に対する前後方向での取り付け位置の調整を可能にする調整機構55を構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレームにおける搭乗運転部の後方の位置に、穀粒タンクを、前記穀粒タンクの後端部に備えた上下向きの支軸を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように配備し、前記穀粒タンクの揺動操作を許容するために前記搭乗運転部と前記穀粒タンクとの間に確保した空間のうちの下側空間部分を覆い隠すカバー部材を前記穀粒タンクの下部に着脱可能に取り付けてあるコンバインのカバー取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなコンバインのカバー取り付け構造としては、グレンタンク(穀粒タンク)の側板傾斜部にグレンタンクの回動用把手を前後一対設け、グレンタンクの前板及び後板の下部補強板に下部係合部を夫々設け、下側空間カバーを備えたタンク下側カバー(カバー部材に相当)の前後両側の下方部分に下部係合部に係合するカバー側下部係合部を夫々設け、タンク下側カバーの前後両側の回動用把手に対応する部分に回動用把手に係合するカバー側上部係合部の操作ハンドルを夫々設けて、カバー側下部係合部を下部係合部に、カバー側上部係合部を回動用把手に夫々係合させることで、タンク下側カバーに備えた下側空間カバーによりグレンタンクと操縦部(搭乗運転部に相当)との間のグレンタンク回動用の空間のうちの下側部分を包囲するようにタンク下側カバーをグレンタンクの下部に取り付けるように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−281819号公報(段落番号0007〜0009、図2〜5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、タンク下側カバーや下側空間カバーなどの製作誤差、あるいは、グレンタンクに対する回動用把手の組み付け誤差やタンク下側カバーに対するカバー側上部係合部の組み付け誤差、などに起因して、タンク下側カバーをグレンタンクの下部に取り付けた場合に、下側空間カバーと操縦部との間に大きな隙間が発生する、あるいは、下側空間カバーの前端部が操縦部に重合する不具合を招くことがあり、このような不具合が生じた場合には、このような不具合を解消するための修正作業にかなりの労力と時間を費やすことになる。
【0005】
又、このような不具合の発生を未然に回避するためには製作精度や組み付け精度を向上させる必要があり、精度を向上させるためには時間を費やす必要があることから、生産性の面で改善の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、生産性の低下を招くことなく、製作誤差や組み付け誤差に起因してカバー部材と搭乗運転部との間で発生する不具合を解消できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の課題解決手段では、
車体フレームにおける搭乗運転部の後方の位置に、穀粒タンクを、前記穀粒タンクの後端部に備えた上下向きの支軸を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように配備し、前記穀粒タンクの揺動操作を許容するために前記搭乗運転部と前記穀粒タンクとの間に確保した空間のうちの下側空間部分を覆い隠すカバー部材を前記穀粒タンクの下部に着脱可能に取り付けてあるコンバインのカバー取り付け構造において、
前記カバー部材の前記穀粒タンクに対する取り付けを、前記カバー部材の下部に備えた前後の係合片と前記穀粒タンクにおける前記係合片の対向箇所に前後向きに配備した前後の支軸との係合、又は、前記カバー部材の下部に前後向きに配備した前後の支軸と前記穀粒タンクにおける前記支軸の対向箇所に備えた前後の係合片との係合、及び、前記カバー部材の上部に備えた前後の係止具と前記穀粒タンクにおける前記係止具の対向箇所に前後向きに配備した前後の係止軸との係止で行うように構成し、
前記前後の支軸のうちのいずれか一方を、前記係合片が係合する環状の係合溝を端部に形成した螺軸で構成し、前記螺軸の螺進による前記係合溝の前後方向での位置調節を可能にする螺合部を前記穀粒タンク又は前記カバー部材に装備し、前記螺軸及び前記螺合部により、前記カバー部材の前記穀粒タンクに対する前後方向での取り付け位置の調整を可能にする調整機構を構成してある。
【0008】
この課題解決手段によると、カバー部材を穀粒タンクの下部に取り付ける際に、カバー部材と搭乗運転部との間に大きな隙間が発生する、あるいは、カバー部材の前端部が搭乗運転部に重合する、などの製作誤差や組み付け誤差に起因した不具合が生じる場合には、調節機構を利用して螺合部に対する螺軸の螺進状態を調節することにより、カバー部材の穀粒タンクに対する前後方向での取り付け位置を簡単に微調整することができ、カバー部材と搭乗運転部との間に大きな隙間が発生する、あるいは、カバー部材の前端部が搭乗運転部に重合する、などの不具合を簡単に解消することができる。
【0009】
そして、調節機構を利用してカバー部材の穀粒タンクに対する前後方向での取り付け位置を適切に調節した後は、メンテナンスなどのために再びカバー部材を穀粒タンクから取り外しても、螺合部に対する螺軸の螺進状態は変化しないことから、カバー部材を穀粒タンクに取り付ける場合には、調節機構による微調整を行うことなく、カバー部材と搭乗運転部との間に大きな隙間が発生する、あるいは、カバー部材の前端部が搭乗運転部に重合する、などの不具合を招くことのない適正な位置にカバー部材を簡単に取り付けることができる。
【0010】
従って、製作誤差や組み付け誤差に起因してカバー部材と搭乗運転部との間で発生する不具合を、生産性の低下を招くことなく簡単に解消することができ、解消後は、メンテナンスなどのためにカバー部材を取り外しても、カバー部材と搭乗運転部との間に発生する隙間を十分に小さくした適正な位置にカバー部材を簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0011】
本発明の第2の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記調整機構を前記カバー部材の前部側に配備してある。
【0012】
この課題解決手段によると、製作誤差や組み付け誤差に起因して発生するカバー部材と搭乗運転部との間での不具合の発生箇所に近い位置に調整機構が位置することから、調節機構による穀粒タンクに対するカバー部材の前後方向での取り付け位置の調整を、カバー部材と搭乗運転部との位置関係を視認しながら行うことができる。
【0013】
従って、製作誤差や組み付け誤差に起因してカバー部材と搭乗運転部との間で発生する不具合の解消をより迅速かつ適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】自脱型コンバインの全体右側面図である。
【図2】自脱型コンバインの全体平面図である。
【図3】穀粒タンク周り構成を示す要部の右側面図である。
【図4】穀粒タンクの構成を示す要部の正面図である。
【図5】穀粒タンクの背面図である。
【図6】穀粒タンクの左側面図である。
【図7】穀粒タンクの右側面図である。
【図8】穀粒タンクの平面図である。
【図9】カバー部材の取り付け構造を示す要部の縦断正面図である。
【図10】カバー部材の取り付け構造を示す要部の縦断背面図である。
【図11】調整機構の構成を示す要部の縦断右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係るコンバインのカバー取り付け構造を、コンバインの一例である自脱型コンバインに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施形態で例示する自脱型コンバインは、角パイプ材などの複数の鋼材を連結して車体フレーム1を構成してある。車体フレーム1の下部には左右一対のクローラ2を装備してある。車体フレーム1の右前部には、ディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)3を搭載するとともに搭乗運転部4を形成してある。車体フレーム1の左前端部には、作業走行時に車体の前方に位置する収穫対象の作物穀稈を刈り取って搬送する刈取搬送部5を、左右向きの軸心周りに昇降揺動可能に連結装備してある。車体フレーム1の左半部には、刈取搬送部5が搬送する刈り取り後の穀稈(以下、刈取穀稈と称する)を受け取って後方に搬送しながら刈取穀稈における穂先側の着粒部に脱穀処理を施し、この脱穀処理で得た処理物に選別処理を施す脱穀装置6を搭載してある。脱穀装置6の後部には、脱穀処理後の刈取穀稈である排ワラの細断排出を可能にする排ワラ処理装置7を連結してある。車体フレーム1の右後部には、脱穀装置6から揚送スクリュ8により搬出した単粒化穀粒を貯留する穀粒タンク9を搭載してある。穀粒タンク9には、穀粒タンク9に貯留した単粒化穀粒の車外への搬出を可能にするスクリュ搬送式の穀粒排出装置10を装備してある。
【0017】
図示は省略するが、エンジン3からの動力は、走行用の伝動系を介して左右のクローラ2に伝達し、脱穀選別用の伝動系を介して脱穀装置6に伝達し、穀粒排出用の伝動系を介して穀粒排出装置10に伝達する。そして、走行用の伝動系から分岐した動力を刈り取り搬送用の伝動系を介して刈取搬送部5に伝達する。又、脱穀選別用の伝動系から分岐した動力を排ワラ処理装置7に伝達する。
【0018】
図1〜3に示すように、搭乗運転部4の後部にはエンジン3などを覆うエンジンカバー11を配備してある。エンジンカバー11の上部には運転座席12を装備してある。エンジンカバー11は、その右下端部の前後両端を前後向きに備えた前後の連結ピン13を介して車体フレーム1に、各連結ピン13を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように連結してある。つまり、エンジンカバー11は、エンジン3などを覆って運転座席12への着座を可能にする着座位置と、エンジン3などの周囲を開放してエンジン3などに対するメンテナンスを行い易くするメンテナンス位置とにわたって左右方向に揺動変位可能に装備してある。
【0019】
図1〜10に示すように、穀粒タンク9は、穀粒タンク9の底面を形成する板金製の底板部材14、穀粒タンク9の正面を形成する板金製の前板部材15、穀粒タンク9の背面を形成する板金製の後板部材16、脱穀装置6に隣接する穀粒タンク9の左側面を形成する板金製の前側左板部材17と後側左板部材18、穀粒タンク9の右側面を形成する板金製の右板部材19、及び、穀粒タンク9の上面を形成する板金製の上板部材20、などをボルト連結して構成してある。符号の付設は省略するが、各板部材14〜20には帯鋼板などの補強部材を取り付けて剛性を高めてある。
【0020】
底板部材14は、安息角よりも大きい角度で傾斜する左右の傾斜面14A,14Bを備えた前後方向視で略V字状に形成してある。又、前側左板部材17の下部及び後側左板部材18の下部には、底板部材14の左側の傾斜面14Aと同じ角度で傾斜して底板部材14の左側の傾斜面14Aに連なる傾斜面17A,18Aを備えてある。これにより、穀粒タンク9に貯留した単粒化穀粒を穀粒タンク9の底部に円滑に流下させることができる。
【0021】
前板部材15及び後板部材16は、それらの下部に板金材などから穀粒タンク9の脚部として機能するように構成した支持部材21,22をボルト連結してある。そして、これらの支持部材21,22を車体フレーム1により下方から受け止め支持するように構成してある。
【0022】
前側左板部材17の後上部及び後側左板部材18の前上部には、揚送スクリュ8の上端部に形成した穀粒放出口8Aに連通する穀粒タンク9の穀粒受入口9Aを穀粒タンク9の左上部に形成するための切欠部17B,18Bを形成してある。前側左板部材17の後端部には、揚送スクリュ8を穀粒タンク9に入り込ませるための縦長の凹部17Cを形成してある。これにより、脱穀装置6と穀粒タンク9との間に揚送スクリュ8を配備しながらも、穀粒タンク9の左側面を脱穀装置6に接近させることができ、穀粒タンク9の容量を大きくすることができる。
【0023】
図1及び図3に示すように、穀粒タンク9の底部には、穀粒タンク9に貯留した単粒化穀粒を穀粒タンク9の後方に搬出する底スクリュ23を前後向きに配備してある。後板部材16の下部には、穀粒タンク9から後方に食み出して露出する底スクリュ23の後端部を覆う底部ケース24を前述した支持部材22とともにボルト連結してある。
【0024】
底部ケース24には、その底部から下方に向けて延出する円筒状の支軸部24Aを一体形成してある。車体フレーム1の右後端部には、底部ケース24の支軸部24Aを相対回転可能に支持する軸支部1Aを備えてある。そして、穀粒タンク9は、上下向きの支軸となる底部ケース24の支軸部24Aを支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように車体フレーム1に搭載してある。
【0025】
この構成から、穀粒タンク9は、その後端に位置する底部ケース24の支軸部24Aを支点にして、穀粒タンク9の左側面が脱穀装置6に隣接して穀粒タンク9の穀粒受入口9Aを揚送スクリュ8の穀粒放出口8Aに連通させる作業位置と、穀粒タンク9の前部側が脱穀装置6から離間してエンジン3の後方及び脱穀装置6の右側方を開放するメンテナンス位置とにわたって、左右方向に揺動変位させることができる(図2参照)。
【0026】
図9及び図11に示すように、前側の支持部材21には、横向きの把持部25Aを上部に備える逆さL字状のロックピン25を上下摺動可能に装備してある。ロックピン25は、圧縮バネ26により下降付勢してある。そして、穀粒タンク9を作業位置に位置させた場合に、ロックピン25の下部に備えた挿通部25Bが車体フレーム1に形成した係合孔1Bに挿通するように配置してある。
【0027】
この構成から、穀粒タンク9を作業位置に位置させた後、ロックピン25の挿通部25Bを圧縮バネ26の付勢力で車体フレーム1の係合孔1Bに挿通させることにより、穀粒タンク9を作業位置に固定することができる。又、ロックピン25の挿通部25Bを圧縮バネ26の付勢力に抗して車体フレーム1の係合孔1Bから抜き出すことにより、穀粒タンク9の作業位置での固定を解除することができ、底部ケース24の支軸部24Aを支点にした穀粒タンク9の左右方向への揺動操作を可能にすることができる。
【0028】
前側の支持部材21には、引き上げ操作したロックピン25の把持部25Aを下方から受け止めることにより、ロックピン25を、その挿通部25Bが車体フレーム1の係合孔1Bから抜き出たロック解除位置に保持するピン受部21Aを備えてある。
【0029】
図1〜3に示すように、底部ケース24には、底スクリュ23が搬出した単粒化穀粒を揚送するスクリュ搬送式の揚送コンベヤ27を立設してある。揚送コンベヤ27の上端部には、揚送コンベヤ27が揚送した単粒化穀粒を搬送して外部に排出するスクリュ搬送式の排出コンベヤ28を接続してある。
【0030】
図示は省略するが、揚送コンベヤ27は底スクリュ23にベベルギアを介して連動連結してある。排出コンベヤ28は、揚送コンベヤ27にベベルギア及び横向きの連動軸を介して連動連結してある。又、揚送コンベヤ27は、減速機付きの電動モータの作動による揚送コンベヤ27のスクリュ軸心を中心にした回動操作が可能となるように構成してある。
【0031】
図1〜3に示すように、排出コンベヤ28は、揚送コンベヤ27の回動操作で揚送コンベヤ27のスクリュ軸心を中心にして左右方向に旋回揺動する。又、油圧シリンダ29の伸縮作動による横向きの連動軸を支点にした起伏揺動操作が可能となるように構成してある。排出コンベヤ28の搬送終端部には、搬送した単粒化穀粒の外部への排出を可能にする排出口28Aを形成してある。
【0032】
つまり、底スクリュ23、底部ケース24、揚送コンベヤ27、排出コンベヤ28、電動モータ、及び油圧シリンダ29、などにより穀粒排出装置10を構成してある。そして、電動モータ及び油圧シリンダ29の作動により、単粒化穀粒の排出位置を任意に変更することができる。
【0033】
図4〜6及び図8に示すように、前側左板部材17及び後側左板部材18には、穀粒タンク9の内部への作業者の入り込みや覗き込みを可能にする矩形の点検口17D,18Cを形成してある。又、これらの点検口17D,18Cを塞ぐ板金製の蓋部材30,31を着脱可能にボルト連結してある。
【0034】
つまり、蓋部材30,31を取り外すことにより、各点検口17D,18Cから穀粒タンク9の内部に入り込むことや穀粒タンク9の内部を除き込むことが可能になり、各板部材14〜20のボルト連結で発生した各板部材14〜20の接合箇所での隙間をシリコーンなどの材料で埋めるコーキング処理や、穀粒タンク9の内面に錆止め剤や塗料などを塗布する塗装作業などを容易に行うことができる。又、穀粒タンク9の内部清掃などのメンテナンス作業も容易に行うことができる。そして、前側左板部材17及び後側左板部材18に点検口17D,18Cを形成したことにより、穀粒タンク9を作業位置に位置させた状態では蓋部材30,31を隠すことができる。
【0035】
図2及び図4〜8に示すように、上板部材20には矩形の点検口20Aを形成し、この点検口20Aを開閉する板金材などからなる把手付きの蓋部材32を前後のヒンジ33を介して連結してある。つまり、蓋部材32を開き操作することにより、穀粒タンク9での穀粒貯留量の視認などを容易に行うことができる。
【0036】
図5、図6及び図8に示すように、穀粒タンク9における穀粒受入口9Aの周縁部には、穀粒タンク9の穀粒受入口9Aを揚送スクリュ8の穀粒放出口8Aに連通させた場合に、穀粒タンク9における穀粒受入口9Aの周縁部と揚送スクリュ8における穀粒放出口8Aの周縁部との間に発生する隙間を埋めるスポンジ製のシール部材34を貼り付けてある。つまり、穀粒タンク9の内部に向けて凹入する穀粒受入口9Aの周縁部にシール部材34を貼り付けることにより、穀粒タンク9の内部に向けて膨出する穀粒放出口8Aの周縁部にシール部材34を貼り付ける場合に比較して、シール部材34が直線状に復元しようとする復元力に起因したシール部材34の剥がれを防止することができる。
【0037】
図3〜5、図7及び図9〜10に示すように、穀粒タンク9の下部における右側の傾斜面14Bの前後中間位置には、残留穀粒の取り出しを可能にする矩形の穀粒取出口9Bを形成してある。又、この穀粒取出口9Bを開閉する板金製の開閉部材35を上下摺動による着脱が可能となるように装備してある。右側の傾斜面14Bにおける上部側の前後両端部には、穀粒タンク9を揺動変位させる際に使用する把手36を備えてある。各把手36は、前後向きの把持部36Aを備えるコの字状に屈曲形成した丸棒鋼材により構成してある。
【0038】
図1〜4及び図6〜11に示すように、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間には、支軸部24Aを支点にした穀粒タンク9の左右方向への揺動変位を許容する空間37を確保してある。そして、この空間37には、穀粒排出用の伝動系におけるベルトテンション式の排出クラッチ38、及び、排出クラッチ38とエンジンカバー11の後上部に備えた排出クラッチレバー39とにわたる排出クラッチ操作用の連係機構40、などを配備してある。
【0039】
穀粒タンク9の右板部材19は、その前端部19Aを前板部材15よりも前方に位置するように延長させてある。延長した前端部19Aの上下長さは、右板部材19の上端部から下端部にわたる長さに設定してある。これにより、右板部材19の前端部19Aは、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37のうちの右板部材19とエンジンカバー11との間に位置する上側空間部分37Aの一部(後側部分)を横外側から覆うカバーとして機能する。
【0040】
右板部材19の前端部19Aには、右板部材19の前端部19Aからエンジンカバー11に向けて延出する板金製の上側カバー部材41を取り付けてある。上側カバー部材41は、エンジンカバー11の上端部から右板部材19の下端部にわたる縦長に形成してある。つまり、上側カバー部材41により、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37における上側空間部分37Aの一部(前側部分)を横外側から覆うように構成してある。
【0041】
この構成から、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37の上側空間部分37A、及び、この上側空間部分37Aに位置する排出クラッチ操作用の連係機構40などを、右板部材19の前端部19Aと上側カバー部材41により覆い隠すことができる。
【0042】
上側カバー部材41は、右板部材19における前端部19Aの内面側に上下方向に所定間隔をあけて左右向きに固定した複数(例示は4本)のボルト42、対応するボルト42に螺合する複数(例示は4個)のナット43、及び、上側カバー部材41の後部に上下方向に所定間隔をあけて穿設した複数(例示は4つ)の前後向きの長孔41Aにより、右板部材19から前方への延出長さの調整が可能となるように右板部材19の前端部19Aに取り付けてある。
【0043】
これにより、製作誤差や組み付け誤差などにかかわらず、穀粒タンク9の右板部材19とエンジンカバー11との間を、上側カバー部材41により、エンジンカバー11と上側カバー部材41とに間に穀粒タンク9及びエンジンカバー11の揺動変位を許容する僅かな隙間を確保した状態で塞ぐことができる。その結果、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間の空間37のうちの上側空間部分37A、及び、この上側空間部分37Aに位置する排出クラッチ操作用の連係機構40などを見栄え良く覆い隠すことができる。
【0044】
図1、図3及び図9〜11に示すように、穀粒タンク9の下部における右側方の位置には、穀粒タンク9の下部における右側の傾斜面14Bと車体フレーム1との間の空間44、右側の傾斜面14Bに備えた開閉部材35や前後の把手36、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37のうちの穀粒タンク9の底板部材14とエンジンカバー11との間に位置する下側空間部分37B、及び、この下側空間部分37Bに位置するロックピン25や排出クラッチ38、などを覆い隠す横長に形成した板金製の下側カバー部材45を取り付けてある。
【0045】
下側カバー部材45は、穀粒タンク9の下部における右側の傾斜面14Bと車体フレーム1との間の前後の支持部材21,22にわたる空間44を横外側から覆うカバー本体部45Aと、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37の下側空間部分37Bを横外側から覆うようにカバー本体部45Aから前方に延長した前側カバー部45Bと、穀粒タンク9の後下部に連結した底部ケース24を横外側から覆うようにカバー本体部45Aから後方に延長した後側カバー部45Cとが連続的に繋がる前後に長い一枚板状に形成してある。
【0046】
下側カバー部材45の下部には、穀粒タンク9における各支持部材21,22の右下部に備えた前後向きの支軸46,47に係合する凹部48A,49Aを形成した前後の係合片48,49を備えてある。下側カバー部材45の上部には、右側の傾斜面14Bの上部側に備えた各把手36の把持部36Aに係止する前後の係止具50を取り付けてある。つまり、各把手36の把持部36Aを、下側カバー部材取り付け用の係止軸に兼用してある。
【0047】
各係止具50は、把手36の把持部36Aに係合する凹部51Aを形成した樹脂製の係合部材51に、樹脂製のフック部材52を上下揺動可能に嵌合装備して構成してある。係合部材51は、下側カバー部材45に形成した矩形の取付孔(図示せず)に係止固定してある。係合部材51には、弾性変形可能な舌片(図示せず)を形成してある。フック部材52は、舌片の弾性により係合部材51の凹部51Aを閉じる閉じ位置に自動復帰する。そして、係合部材51の凹部51Aに把手36の把持部36Aが係入する場合には、凹部51Aに係入する把持部36Aとの接触により係合部材51の凹部51Aを開く開き位置まで揺動変位し、把持部36Aが凹部51Aの凹入端に到達するのに伴って閉じ位置に自動復帰して把持部36Aの凹部51Aからの離脱を阻止する。又、手動操作による係合部材51の凹部51Aを開く開き位置への揺動変位が可能となるように構成してある。
【0048】
この構成から、下側カバー部材45は、その下部の前後に備えた係合片48,49を穀粒タンク9の各支持部材21,22に備えた前後向きの支軸46,47に係合した後、各支軸46,47を支点にして下側カバー部材45を穀粒タンク側に揺動操作して下側カバー部材45の上部に備えた前後の係止具50を穀粒タンク9の右側の傾斜面14Bに備えた前後の把手36に係止することにより、穀粒タンク9の下部における右側方の位置に、右側の傾斜面14Bと車体フレーム1との間の空間44、右側の傾斜面14Bに備えた開閉部材35や前後の把手36、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37のうちの下側空間部分37B、及び、この下側空間部分37Bに位置するロックピン25や排出クラッチ38、などを覆い隠すように取り付けることができる。又、各係止具50のフック部材52を手動で開き位置に揺動操作した後に、各支軸46,47を支点にして下側カバー部材45を穀粒タンク9から離れる側に揺動操作して各係止具50の凹部51Aから把手36の把持部36Aを離脱させた後、各係合片48,49と各支軸46,47との係合を解除することにより、穀粒タンク9の下部における右側方の位置から取り外すことができる。
【0049】
図3及び図9〜11に示すように、前側の支軸46には、下側カバー部材45の前側の係合片48が係合する環状の係合溝46Aを後端部に形成した螺軸を採用してある。そして、前側の支軸46は、係合溝46Aの前後方向での位置調節が可能となるように、前側の支持部材21に螺合部として溶接した溶接ナット53に螺合してある。又、前側の支軸46に螺合したナット54により任意の調節状態で固定することができる。
【0050】
つまり、前側の支軸46、溶接ナット53、及びナット54により、下側カバー部材45の前側の係合片48が係合する係合溝46Aの位置を前後方向に調節することで、下側カバー部材45の穀粒タンク9に対する前後方向での取り付け位置を調整する調整機構55を構成してある。
【0051】
後側の支軸47は、調整機構55による下側カバー部材45の前後方向での取り付け位置の調整に伴う後側の支軸47に対する後側の係合片49の前後方向での位置ズレを許容する前後長さを備えて、後側の支持部材22から前方に向けて延出するように後側の支持部材22に溶接してある。
【0052】
各把手36の把持部36Aは、調整機構55による下側カバー部材45の前後方向での取り付け位置の調整に伴う把持部36Aに対する係止具50の前後方向での位置ズレを許容する前後長さを有するように形成してある。
【0053】
この構成から、製作誤差や組み付け誤差などにかかわらず、穀粒タンク9の右側下部の傾斜面14Bと車体フレーム1との間、及び、穀粒タンク9の底板部材14とエンジンカバー11との間を、下側カバー部材45により、エンジンカバー11と下側カバー部材45との間にエンジンカバー11の揺動変位を許容する僅かな隙間を確保した状態、言い換えると、エンジンカバー11と下側カバー部材45との間に形成する隙間を十分に小さくした状態で塞ぐことができる。その結果、穀粒タンク9の右側下部の傾斜面14Bと車体フレーム1との間の空間44、右側の傾斜面14Bに備えた開閉部材35や前後の把手36、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間の空間37のうちの下側空間部分37B、及び、この下側空間部分37Bに位置するロックピン25や排出クラッチ38、などを見栄え良く覆い隠すことができる。
【0054】
そして、調整機構55における係合溝46Aの位置調節操作は、穀粒タンク9から下側カバー部材45を取り外すことにより、穀粒タンク9の右側方の位置から係合溝46Aの調節量を視認しながら容易に行うことができる。
【0055】
尚、図1〜3に示す符号56は、揚送コンベヤ27の周辺に配備した電動モータなどを覆い隠すようにコンバインの右後部に配備した後側カバー部材である。
【0056】
〔別実施形態〕
【0057】
〔1〕コンバインとしては、刈取穀稈の全体を脱穀装置6の内部に投入する全稈投入型に構成したものであってもよい。又、搭乗運転部4をキャビンで覆うように構成したものであってもよい。
【0058】
〔2〕穀粒タンク9としては、各板部材14〜20を溶接して構成したものであってもよい。又、板金製の底部に樹脂製のタンク本体部を接続して構成したものであってもよい。
【0059】
〔3〕調整機構55をカバー部材45の後部側に配備するようにしてもよい。
【0060】
〔4〕カバー部材45の穀粒タンク9に対する取り付けを、カバー部材45の下部に前後向きに配備した前後の支軸46,47と穀粒タンク9における支軸46,47の対向箇所に備えた前後の係合片48,49との係合、及び、カバー部材45の上部に備えた前後の係止具50と穀粒タンク9における係止具50の対向箇所に前後向きに配備した前後の係止軸36Aとの係止で行うように構成してもよい。この場合、カバー部材45に備えた前後の支軸46,47のいずれか一方に螺軸を採用し、螺軸46,47の螺進による係合溝46A,47Aの前後方向での位置調節を可能にする螺合部53をカバー部材45に装備して、調整機構55を構成することになる。
【0061】
〔5〕カバー部材45としては、穀粒タンク9の揺動操作を許容するために搭乗運転部4と穀粒タンク9との間に確保した空間37のうちの下側空間部分37Bのみを覆い隠すように形成したものであってもよい。
【0062】
〔6〕コンバインのカバー取り付け構造としては、前端部19Aを前板部材15よりも前方に位置するように延長させて、その前端部19Aを、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37のうちの右板部材19とエンジンカバー11との間に位置する上側空間部分37Aの一部(後側部分)を横外側から覆うカバーとして機能するように形成した右板部材19を備えた穀粒タンク9の下部に、穀粒タンク9の下部における右側の傾斜面14Bと車体フレーム1との間の前後の支持部材21,22にわたる空間44を横外側から覆うカバー本体部45Aと、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37の下側空間部分37Bを横外側から覆うようにカバー本体部45Aから前方に延長した前側カバー部45Bとを備えた下側カバー部材45を、調整機構55を備えずに着脱可能に取り付けるように構成したものであってもよい。又、この構成に加えて、右板部材19の前端部19Aに、右板部材19の前端部19Aからエンジンカバー11に向けて延出する板金製の上側カバー部材41を取り付けるように構成したものであってもよい。更に、これらの構成に加えて、下側カバー部材45に、穀粒タンク9の後下部に連結した底部ケース24を横外側から覆う後側カバー部45Cをカバー本体部45Aから後方に延長形成するようにしたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るコンバインのカバー取り付け構造は、車体フレームにおける搭乗運転部の後方の位置に、穀粒タンクを、穀粒タンクの後端部に備えた上下向きの支軸を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように配備し、穀粒タンクの揺動操作を許容するために搭乗運転部と穀粒タンクとの間に確保した空間のうちの下側空間部分を覆い隠すカバー部材を穀粒タンクの下部に着脱可能に取り付けた自脱型コンバイン及び全稈投入型コンバインに適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 車体フレーム
4 搭乗運転部
9 穀粒タンク
24A 支軸
36A 係止軸
37 空間
37B 下側空間部分
45 カバー部材
46 支軸(螺軸)
46A 係合溝
47 支軸
48 係合片
49 係合片
50 係止具
53 螺合部
55 調整機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレームにおける搭乗運転部の後方の位置に、穀粒タンクを、前記穀粒タンクの後端部に備えた上下向きの支軸を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように配備し、前記穀粒タンクの揺動操作を許容するために前記搭乗運転部と前記穀粒タンクとの間に確保した空間のうちの下側空間部分を覆い隠すカバー部材を前記穀粒タンクの下部に着脱可能に取り付けてあるコンバインのカバー取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなコンバインのカバー取り付け構造としては、グレンタンク(穀粒タンク)の側板傾斜部にグレンタンクの回動用把手を前後一対設け、グレンタンクの前板及び後板の下部補強板に下部係合部を夫々設け、下側空間カバーを備えたタンク下側カバー(カバー部材に相当)の前後両側の下方部分に下部係合部に係合するカバー側下部係合部を夫々設け、タンク下側カバーの前後両側の回動用把手に対応する部分に回動用把手に係合するカバー側上部係合部の操作ハンドルを夫々設けて、カバー側下部係合部を下部係合部に、カバー側上部係合部を回動用把手に夫々係合させることで、タンク下側カバーに備えた下側空間カバーによりグレンタンクと操縦部(搭乗運転部に相当)との間のグレンタンク回動用の空間のうちの下側部分を包囲するようにタンク下側カバーをグレンタンクの下部に取り付けるように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−281819号公報(段落番号0007〜0009、図2〜5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、タンク下側カバーや下側空間カバーなどの製作誤差、あるいは、グレンタンクに対する回動用把手の組み付け誤差やタンク下側カバーに対するカバー側上部係合部の組み付け誤差、などに起因して、タンク下側カバーをグレンタンクの下部に取り付けた場合に、下側空間カバーと操縦部との間に大きな隙間が発生する、あるいは、下側空間カバーの前端部が操縦部に重合する不具合を招くことがあり、このような不具合が生じた場合には、このような不具合を解消するための修正作業にかなりの労力と時間を費やすことになる。
【0005】
又、このような不具合の発生を未然に回避するためには製作精度や組み付け精度を向上させる必要があり、精度を向上させるためには時間を費やす必要があることから、生産性の面で改善の余地がある。
【0006】
本発明の目的は、生産性の低下を招くことなく、製作誤差や組み付け誤差に起因してカバー部材と搭乗運転部との間で発生する不具合を解消できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の課題解決手段では、
車体フレームにおける搭乗運転部の後方の位置に、穀粒タンクを、前記穀粒タンクの後端部に備えた上下向きの支軸を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように配備し、前記穀粒タンクの揺動操作を許容するために前記搭乗運転部と前記穀粒タンクとの間に確保した空間のうちの下側空間部分を覆い隠すカバー部材を前記穀粒タンクの下部に着脱可能に取り付けてあるコンバインのカバー取り付け構造において、
前記カバー部材の前記穀粒タンクに対する取り付けを、前記カバー部材の下部に備えた前後の係合片と前記穀粒タンクにおける前記係合片の対向箇所に前後向きに配備した前後の支軸との係合、又は、前記カバー部材の下部に前後向きに配備した前後の支軸と前記穀粒タンクにおける前記支軸の対向箇所に備えた前後の係合片との係合、及び、前記カバー部材の上部に備えた前後の係止具と前記穀粒タンクにおける前記係止具の対向箇所に前後向きに配備した前後の係止軸との係止で行うように構成し、
前記前後の支軸のうちのいずれか一方を、前記係合片が係合する環状の係合溝を端部に形成した螺軸で構成し、前記螺軸の螺進による前記係合溝の前後方向での位置調節を可能にする螺合部を前記穀粒タンク又は前記カバー部材に装備し、前記螺軸及び前記螺合部により、前記カバー部材の前記穀粒タンクに対する前後方向での取り付け位置の調整を可能にする調整機構を構成してある。
【0008】
この課題解決手段によると、カバー部材を穀粒タンクの下部に取り付ける際に、カバー部材と搭乗運転部との間に大きな隙間が発生する、あるいは、カバー部材の前端部が搭乗運転部に重合する、などの製作誤差や組み付け誤差に起因した不具合が生じる場合には、調節機構を利用して螺合部に対する螺軸の螺進状態を調節することにより、カバー部材の穀粒タンクに対する前後方向での取り付け位置を簡単に微調整することができ、カバー部材と搭乗運転部との間に大きな隙間が発生する、あるいは、カバー部材の前端部が搭乗運転部に重合する、などの不具合を簡単に解消することができる。
【0009】
そして、調節機構を利用してカバー部材の穀粒タンクに対する前後方向での取り付け位置を適切に調節した後は、メンテナンスなどのために再びカバー部材を穀粒タンクから取り外しても、螺合部に対する螺軸の螺進状態は変化しないことから、カバー部材を穀粒タンクに取り付ける場合には、調節機構による微調整を行うことなく、カバー部材と搭乗運転部との間に大きな隙間が発生する、あるいは、カバー部材の前端部が搭乗運転部に重合する、などの不具合を招くことのない適正な位置にカバー部材を簡単に取り付けることができる。
【0010】
従って、製作誤差や組み付け誤差に起因してカバー部材と搭乗運転部との間で発生する不具合を、生産性の低下を招くことなく簡単に解消することができ、解消後は、メンテナンスなどのためにカバー部材を取り外しても、カバー部材と搭乗運転部との間に発生する隙間を十分に小さくした適正な位置にカバー部材を簡単かつ確実に取り付けることができる。
【0011】
本発明の第2の課題解決手段では、上記第1の課題解決手段において、
前記調整機構を前記カバー部材の前部側に配備してある。
【0012】
この課題解決手段によると、製作誤差や組み付け誤差に起因して発生するカバー部材と搭乗運転部との間での不具合の発生箇所に近い位置に調整機構が位置することから、調節機構による穀粒タンクに対するカバー部材の前後方向での取り付け位置の調整を、カバー部材と搭乗運転部との位置関係を視認しながら行うことができる。
【0013】
従って、製作誤差や組み付け誤差に起因してカバー部材と搭乗運転部との間で発生する不具合の解消をより迅速かつ適正に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】自脱型コンバインの全体右側面図である。
【図2】自脱型コンバインの全体平面図である。
【図3】穀粒タンク周り構成を示す要部の右側面図である。
【図4】穀粒タンクの構成を示す要部の正面図である。
【図5】穀粒タンクの背面図である。
【図6】穀粒タンクの左側面図である。
【図7】穀粒タンクの右側面図である。
【図8】穀粒タンクの平面図である。
【図9】カバー部材の取り付け構造を示す要部の縦断正面図である。
【図10】カバー部材の取り付け構造を示す要部の縦断背面図である。
【図11】調整機構の構成を示す要部の縦断右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係るコンバインのカバー取り付け構造を、コンバインの一例である自脱型コンバインに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施形態で例示する自脱型コンバインは、角パイプ材などの複数の鋼材を連結して車体フレーム1を構成してある。車体フレーム1の下部には左右一対のクローラ2を装備してある。車体フレーム1の右前部には、ディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)3を搭載するとともに搭乗運転部4を形成してある。車体フレーム1の左前端部には、作業走行時に車体の前方に位置する収穫対象の作物穀稈を刈り取って搬送する刈取搬送部5を、左右向きの軸心周りに昇降揺動可能に連結装備してある。車体フレーム1の左半部には、刈取搬送部5が搬送する刈り取り後の穀稈(以下、刈取穀稈と称する)を受け取って後方に搬送しながら刈取穀稈における穂先側の着粒部に脱穀処理を施し、この脱穀処理で得た処理物に選別処理を施す脱穀装置6を搭載してある。脱穀装置6の後部には、脱穀処理後の刈取穀稈である排ワラの細断排出を可能にする排ワラ処理装置7を連結してある。車体フレーム1の右後部には、脱穀装置6から揚送スクリュ8により搬出した単粒化穀粒を貯留する穀粒タンク9を搭載してある。穀粒タンク9には、穀粒タンク9に貯留した単粒化穀粒の車外への搬出を可能にするスクリュ搬送式の穀粒排出装置10を装備してある。
【0017】
図示は省略するが、エンジン3からの動力は、走行用の伝動系を介して左右のクローラ2に伝達し、脱穀選別用の伝動系を介して脱穀装置6に伝達し、穀粒排出用の伝動系を介して穀粒排出装置10に伝達する。そして、走行用の伝動系から分岐した動力を刈り取り搬送用の伝動系を介して刈取搬送部5に伝達する。又、脱穀選別用の伝動系から分岐した動力を排ワラ処理装置7に伝達する。
【0018】
図1〜3に示すように、搭乗運転部4の後部にはエンジン3などを覆うエンジンカバー11を配備してある。エンジンカバー11の上部には運転座席12を装備してある。エンジンカバー11は、その右下端部の前後両端を前後向きに備えた前後の連結ピン13を介して車体フレーム1に、各連結ピン13を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように連結してある。つまり、エンジンカバー11は、エンジン3などを覆って運転座席12への着座を可能にする着座位置と、エンジン3などの周囲を開放してエンジン3などに対するメンテナンスを行い易くするメンテナンス位置とにわたって左右方向に揺動変位可能に装備してある。
【0019】
図1〜10に示すように、穀粒タンク9は、穀粒タンク9の底面を形成する板金製の底板部材14、穀粒タンク9の正面を形成する板金製の前板部材15、穀粒タンク9の背面を形成する板金製の後板部材16、脱穀装置6に隣接する穀粒タンク9の左側面を形成する板金製の前側左板部材17と後側左板部材18、穀粒タンク9の右側面を形成する板金製の右板部材19、及び、穀粒タンク9の上面を形成する板金製の上板部材20、などをボルト連結して構成してある。符号の付設は省略するが、各板部材14〜20には帯鋼板などの補強部材を取り付けて剛性を高めてある。
【0020】
底板部材14は、安息角よりも大きい角度で傾斜する左右の傾斜面14A,14Bを備えた前後方向視で略V字状に形成してある。又、前側左板部材17の下部及び後側左板部材18の下部には、底板部材14の左側の傾斜面14Aと同じ角度で傾斜して底板部材14の左側の傾斜面14Aに連なる傾斜面17A,18Aを備えてある。これにより、穀粒タンク9に貯留した単粒化穀粒を穀粒タンク9の底部に円滑に流下させることができる。
【0021】
前板部材15及び後板部材16は、それらの下部に板金材などから穀粒タンク9の脚部として機能するように構成した支持部材21,22をボルト連結してある。そして、これらの支持部材21,22を車体フレーム1により下方から受け止め支持するように構成してある。
【0022】
前側左板部材17の後上部及び後側左板部材18の前上部には、揚送スクリュ8の上端部に形成した穀粒放出口8Aに連通する穀粒タンク9の穀粒受入口9Aを穀粒タンク9の左上部に形成するための切欠部17B,18Bを形成してある。前側左板部材17の後端部には、揚送スクリュ8を穀粒タンク9に入り込ませるための縦長の凹部17Cを形成してある。これにより、脱穀装置6と穀粒タンク9との間に揚送スクリュ8を配備しながらも、穀粒タンク9の左側面を脱穀装置6に接近させることができ、穀粒タンク9の容量を大きくすることができる。
【0023】
図1及び図3に示すように、穀粒タンク9の底部には、穀粒タンク9に貯留した単粒化穀粒を穀粒タンク9の後方に搬出する底スクリュ23を前後向きに配備してある。後板部材16の下部には、穀粒タンク9から後方に食み出して露出する底スクリュ23の後端部を覆う底部ケース24を前述した支持部材22とともにボルト連結してある。
【0024】
底部ケース24には、その底部から下方に向けて延出する円筒状の支軸部24Aを一体形成してある。車体フレーム1の右後端部には、底部ケース24の支軸部24Aを相対回転可能に支持する軸支部1Aを備えてある。そして、穀粒タンク9は、上下向きの支軸となる底部ケース24の支軸部24Aを支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように車体フレーム1に搭載してある。
【0025】
この構成から、穀粒タンク9は、その後端に位置する底部ケース24の支軸部24Aを支点にして、穀粒タンク9の左側面が脱穀装置6に隣接して穀粒タンク9の穀粒受入口9Aを揚送スクリュ8の穀粒放出口8Aに連通させる作業位置と、穀粒タンク9の前部側が脱穀装置6から離間してエンジン3の後方及び脱穀装置6の右側方を開放するメンテナンス位置とにわたって、左右方向に揺動変位させることができる(図2参照)。
【0026】
図9及び図11に示すように、前側の支持部材21には、横向きの把持部25Aを上部に備える逆さL字状のロックピン25を上下摺動可能に装備してある。ロックピン25は、圧縮バネ26により下降付勢してある。そして、穀粒タンク9を作業位置に位置させた場合に、ロックピン25の下部に備えた挿通部25Bが車体フレーム1に形成した係合孔1Bに挿通するように配置してある。
【0027】
この構成から、穀粒タンク9を作業位置に位置させた後、ロックピン25の挿通部25Bを圧縮バネ26の付勢力で車体フレーム1の係合孔1Bに挿通させることにより、穀粒タンク9を作業位置に固定することができる。又、ロックピン25の挿通部25Bを圧縮バネ26の付勢力に抗して車体フレーム1の係合孔1Bから抜き出すことにより、穀粒タンク9の作業位置での固定を解除することができ、底部ケース24の支軸部24Aを支点にした穀粒タンク9の左右方向への揺動操作を可能にすることができる。
【0028】
前側の支持部材21には、引き上げ操作したロックピン25の把持部25Aを下方から受け止めることにより、ロックピン25を、その挿通部25Bが車体フレーム1の係合孔1Bから抜き出たロック解除位置に保持するピン受部21Aを備えてある。
【0029】
図1〜3に示すように、底部ケース24には、底スクリュ23が搬出した単粒化穀粒を揚送するスクリュ搬送式の揚送コンベヤ27を立設してある。揚送コンベヤ27の上端部には、揚送コンベヤ27が揚送した単粒化穀粒を搬送して外部に排出するスクリュ搬送式の排出コンベヤ28を接続してある。
【0030】
図示は省略するが、揚送コンベヤ27は底スクリュ23にベベルギアを介して連動連結してある。排出コンベヤ28は、揚送コンベヤ27にベベルギア及び横向きの連動軸を介して連動連結してある。又、揚送コンベヤ27は、減速機付きの電動モータの作動による揚送コンベヤ27のスクリュ軸心を中心にした回動操作が可能となるように構成してある。
【0031】
図1〜3に示すように、排出コンベヤ28は、揚送コンベヤ27の回動操作で揚送コンベヤ27のスクリュ軸心を中心にして左右方向に旋回揺動する。又、油圧シリンダ29の伸縮作動による横向きの連動軸を支点にした起伏揺動操作が可能となるように構成してある。排出コンベヤ28の搬送終端部には、搬送した単粒化穀粒の外部への排出を可能にする排出口28Aを形成してある。
【0032】
つまり、底スクリュ23、底部ケース24、揚送コンベヤ27、排出コンベヤ28、電動モータ、及び油圧シリンダ29、などにより穀粒排出装置10を構成してある。そして、電動モータ及び油圧シリンダ29の作動により、単粒化穀粒の排出位置を任意に変更することができる。
【0033】
図4〜6及び図8に示すように、前側左板部材17及び後側左板部材18には、穀粒タンク9の内部への作業者の入り込みや覗き込みを可能にする矩形の点検口17D,18Cを形成してある。又、これらの点検口17D,18Cを塞ぐ板金製の蓋部材30,31を着脱可能にボルト連結してある。
【0034】
つまり、蓋部材30,31を取り外すことにより、各点検口17D,18Cから穀粒タンク9の内部に入り込むことや穀粒タンク9の内部を除き込むことが可能になり、各板部材14〜20のボルト連結で発生した各板部材14〜20の接合箇所での隙間をシリコーンなどの材料で埋めるコーキング処理や、穀粒タンク9の内面に錆止め剤や塗料などを塗布する塗装作業などを容易に行うことができる。又、穀粒タンク9の内部清掃などのメンテナンス作業も容易に行うことができる。そして、前側左板部材17及び後側左板部材18に点検口17D,18Cを形成したことにより、穀粒タンク9を作業位置に位置させた状態では蓋部材30,31を隠すことができる。
【0035】
図2及び図4〜8に示すように、上板部材20には矩形の点検口20Aを形成し、この点検口20Aを開閉する板金材などからなる把手付きの蓋部材32を前後のヒンジ33を介して連結してある。つまり、蓋部材32を開き操作することにより、穀粒タンク9での穀粒貯留量の視認などを容易に行うことができる。
【0036】
図5、図6及び図8に示すように、穀粒タンク9における穀粒受入口9Aの周縁部には、穀粒タンク9の穀粒受入口9Aを揚送スクリュ8の穀粒放出口8Aに連通させた場合に、穀粒タンク9における穀粒受入口9Aの周縁部と揚送スクリュ8における穀粒放出口8Aの周縁部との間に発生する隙間を埋めるスポンジ製のシール部材34を貼り付けてある。つまり、穀粒タンク9の内部に向けて凹入する穀粒受入口9Aの周縁部にシール部材34を貼り付けることにより、穀粒タンク9の内部に向けて膨出する穀粒放出口8Aの周縁部にシール部材34を貼り付ける場合に比較して、シール部材34が直線状に復元しようとする復元力に起因したシール部材34の剥がれを防止することができる。
【0037】
図3〜5、図7及び図9〜10に示すように、穀粒タンク9の下部における右側の傾斜面14Bの前後中間位置には、残留穀粒の取り出しを可能にする矩形の穀粒取出口9Bを形成してある。又、この穀粒取出口9Bを開閉する板金製の開閉部材35を上下摺動による着脱が可能となるように装備してある。右側の傾斜面14Bにおける上部側の前後両端部には、穀粒タンク9を揺動変位させる際に使用する把手36を備えてある。各把手36は、前後向きの把持部36Aを備えるコの字状に屈曲形成した丸棒鋼材により構成してある。
【0038】
図1〜4及び図6〜11に示すように、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間には、支軸部24Aを支点にした穀粒タンク9の左右方向への揺動変位を許容する空間37を確保してある。そして、この空間37には、穀粒排出用の伝動系におけるベルトテンション式の排出クラッチ38、及び、排出クラッチ38とエンジンカバー11の後上部に備えた排出クラッチレバー39とにわたる排出クラッチ操作用の連係機構40、などを配備してある。
【0039】
穀粒タンク9の右板部材19は、その前端部19Aを前板部材15よりも前方に位置するように延長させてある。延長した前端部19Aの上下長さは、右板部材19の上端部から下端部にわたる長さに設定してある。これにより、右板部材19の前端部19Aは、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37のうちの右板部材19とエンジンカバー11との間に位置する上側空間部分37Aの一部(後側部分)を横外側から覆うカバーとして機能する。
【0040】
右板部材19の前端部19Aには、右板部材19の前端部19Aからエンジンカバー11に向けて延出する板金製の上側カバー部材41を取り付けてある。上側カバー部材41は、エンジンカバー11の上端部から右板部材19の下端部にわたる縦長に形成してある。つまり、上側カバー部材41により、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37における上側空間部分37Aの一部(前側部分)を横外側から覆うように構成してある。
【0041】
この構成から、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37の上側空間部分37A、及び、この上側空間部分37Aに位置する排出クラッチ操作用の連係機構40などを、右板部材19の前端部19Aと上側カバー部材41により覆い隠すことができる。
【0042】
上側カバー部材41は、右板部材19における前端部19Aの内面側に上下方向に所定間隔をあけて左右向きに固定した複数(例示は4本)のボルト42、対応するボルト42に螺合する複数(例示は4個)のナット43、及び、上側カバー部材41の後部に上下方向に所定間隔をあけて穿設した複数(例示は4つ)の前後向きの長孔41Aにより、右板部材19から前方への延出長さの調整が可能となるように右板部材19の前端部19Aに取り付けてある。
【0043】
これにより、製作誤差や組み付け誤差などにかかわらず、穀粒タンク9の右板部材19とエンジンカバー11との間を、上側カバー部材41により、エンジンカバー11と上側カバー部材41とに間に穀粒タンク9及びエンジンカバー11の揺動変位を許容する僅かな隙間を確保した状態で塞ぐことができる。その結果、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間の空間37のうちの上側空間部分37A、及び、この上側空間部分37Aに位置する排出クラッチ操作用の連係機構40などを見栄え良く覆い隠すことができる。
【0044】
図1、図3及び図9〜11に示すように、穀粒タンク9の下部における右側方の位置には、穀粒タンク9の下部における右側の傾斜面14Bと車体フレーム1との間の空間44、右側の傾斜面14Bに備えた開閉部材35や前後の把手36、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37のうちの穀粒タンク9の底板部材14とエンジンカバー11との間に位置する下側空間部分37B、及び、この下側空間部分37Bに位置するロックピン25や排出クラッチ38、などを覆い隠す横長に形成した板金製の下側カバー部材45を取り付けてある。
【0045】
下側カバー部材45は、穀粒タンク9の下部における右側の傾斜面14Bと車体フレーム1との間の前後の支持部材21,22にわたる空間44を横外側から覆うカバー本体部45Aと、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37の下側空間部分37Bを横外側から覆うようにカバー本体部45Aから前方に延長した前側カバー部45Bと、穀粒タンク9の後下部に連結した底部ケース24を横外側から覆うようにカバー本体部45Aから後方に延長した後側カバー部45Cとが連続的に繋がる前後に長い一枚板状に形成してある。
【0046】
下側カバー部材45の下部には、穀粒タンク9における各支持部材21,22の右下部に備えた前後向きの支軸46,47に係合する凹部48A,49Aを形成した前後の係合片48,49を備えてある。下側カバー部材45の上部には、右側の傾斜面14Bの上部側に備えた各把手36の把持部36Aに係止する前後の係止具50を取り付けてある。つまり、各把手36の把持部36Aを、下側カバー部材取り付け用の係止軸に兼用してある。
【0047】
各係止具50は、把手36の把持部36Aに係合する凹部51Aを形成した樹脂製の係合部材51に、樹脂製のフック部材52を上下揺動可能に嵌合装備して構成してある。係合部材51は、下側カバー部材45に形成した矩形の取付孔(図示せず)に係止固定してある。係合部材51には、弾性変形可能な舌片(図示せず)を形成してある。フック部材52は、舌片の弾性により係合部材51の凹部51Aを閉じる閉じ位置に自動復帰する。そして、係合部材51の凹部51Aに把手36の把持部36Aが係入する場合には、凹部51Aに係入する把持部36Aとの接触により係合部材51の凹部51Aを開く開き位置まで揺動変位し、把持部36Aが凹部51Aの凹入端に到達するのに伴って閉じ位置に自動復帰して把持部36Aの凹部51Aからの離脱を阻止する。又、手動操作による係合部材51の凹部51Aを開く開き位置への揺動変位が可能となるように構成してある。
【0048】
この構成から、下側カバー部材45は、その下部の前後に備えた係合片48,49を穀粒タンク9の各支持部材21,22に備えた前後向きの支軸46,47に係合した後、各支軸46,47を支点にして下側カバー部材45を穀粒タンク側に揺動操作して下側カバー部材45の上部に備えた前後の係止具50を穀粒タンク9の右側の傾斜面14Bに備えた前後の把手36に係止することにより、穀粒タンク9の下部における右側方の位置に、右側の傾斜面14Bと車体フレーム1との間の空間44、右側の傾斜面14Bに備えた開閉部材35や前後の把手36、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37のうちの下側空間部分37B、及び、この下側空間部分37Bに位置するロックピン25や排出クラッチ38、などを覆い隠すように取り付けることができる。又、各係止具50のフック部材52を手動で開き位置に揺動操作した後に、各支軸46,47を支点にして下側カバー部材45を穀粒タンク9から離れる側に揺動操作して各係止具50の凹部51Aから把手36の把持部36Aを離脱させた後、各係合片48,49と各支軸46,47との係合を解除することにより、穀粒タンク9の下部における右側方の位置から取り外すことができる。
【0049】
図3及び図9〜11に示すように、前側の支軸46には、下側カバー部材45の前側の係合片48が係合する環状の係合溝46Aを後端部に形成した螺軸を採用してある。そして、前側の支軸46は、係合溝46Aの前後方向での位置調節が可能となるように、前側の支持部材21に螺合部として溶接した溶接ナット53に螺合してある。又、前側の支軸46に螺合したナット54により任意の調節状態で固定することができる。
【0050】
つまり、前側の支軸46、溶接ナット53、及びナット54により、下側カバー部材45の前側の係合片48が係合する係合溝46Aの位置を前後方向に調節することで、下側カバー部材45の穀粒タンク9に対する前後方向での取り付け位置を調整する調整機構55を構成してある。
【0051】
後側の支軸47は、調整機構55による下側カバー部材45の前後方向での取り付け位置の調整に伴う後側の支軸47に対する後側の係合片49の前後方向での位置ズレを許容する前後長さを備えて、後側の支持部材22から前方に向けて延出するように後側の支持部材22に溶接してある。
【0052】
各把手36の把持部36Aは、調整機構55による下側カバー部材45の前後方向での取り付け位置の調整に伴う把持部36Aに対する係止具50の前後方向での位置ズレを許容する前後長さを有するように形成してある。
【0053】
この構成から、製作誤差や組み付け誤差などにかかわらず、穀粒タンク9の右側下部の傾斜面14Bと車体フレーム1との間、及び、穀粒タンク9の底板部材14とエンジンカバー11との間を、下側カバー部材45により、エンジンカバー11と下側カバー部材45との間にエンジンカバー11の揺動変位を許容する僅かな隙間を確保した状態、言い換えると、エンジンカバー11と下側カバー部材45との間に形成する隙間を十分に小さくした状態で塞ぐことができる。その結果、穀粒タンク9の右側下部の傾斜面14Bと車体フレーム1との間の空間44、右側の傾斜面14Bに備えた開閉部材35や前後の把手36、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間の空間37のうちの下側空間部分37B、及び、この下側空間部分37Bに位置するロックピン25や排出クラッチ38、などを見栄え良く覆い隠すことができる。
【0054】
そして、調整機構55における係合溝46Aの位置調節操作は、穀粒タンク9から下側カバー部材45を取り外すことにより、穀粒タンク9の右側方の位置から係合溝46Aの調節量を視認しながら容易に行うことができる。
【0055】
尚、図1〜3に示す符号56は、揚送コンベヤ27の周辺に配備した電動モータなどを覆い隠すようにコンバインの右後部に配備した後側カバー部材である。
【0056】
〔別実施形態〕
【0057】
〔1〕コンバインとしては、刈取穀稈の全体を脱穀装置6の内部に投入する全稈投入型に構成したものであってもよい。又、搭乗運転部4をキャビンで覆うように構成したものであってもよい。
【0058】
〔2〕穀粒タンク9としては、各板部材14〜20を溶接して構成したものであってもよい。又、板金製の底部に樹脂製のタンク本体部を接続して構成したものであってもよい。
【0059】
〔3〕調整機構55をカバー部材45の後部側に配備するようにしてもよい。
【0060】
〔4〕カバー部材45の穀粒タンク9に対する取り付けを、カバー部材45の下部に前後向きに配備した前後の支軸46,47と穀粒タンク9における支軸46,47の対向箇所に備えた前後の係合片48,49との係合、及び、カバー部材45の上部に備えた前後の係止具50と穀粒タンク9における係止具50の対向箇所に前後向きに配備した前後の係止軸36Aとの係止で行うように構成してもよい。この場合、カバー部材45に備えた前後の支軸46,47のいずれか一方に螺軸を採用し、螺軸46,47の螺進による係合溝46A,47Aの前後方向での位置調節を可能にする螺合部53をカバー部材45に装備して、調整機構55を構成することになる。
【0061】
〔5〕カバー部材45としては、穀粒タンク9の揺動操作を許容するために搭乗運転部4と穀粒タンク9との間に確保した空間37のうちの下側空間部分37Bのみを覆い隠すように形成したものであってもよい。
【0062】
〔6〕コンバインのカバー取り付け構造としては、前端部19Aを前板部材15よりも前方に位置するように延長させて、その前端部19Aを、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37のうちの右板部材19とエンジンカバー11との間に位置する上側空間部分37Aの一部(後側部分)を横外側から覆うカバーとして機能するように形成した右板部材19を備えた穀粒タンク9の下部に、穀粒タンク9の下部における右側の傾斜面14Bと車体フレーム1との間の前後の支持部材21,22にわたる空間44を横外側から覆うカバー本体部45Aと、穀粒タンク9とエンジンカバー11との間に確保した空間37の下側空間部分37Bを横外側から覆うようにカバー本体部45Aから前方に延長した前側カバー部45Bとを備えた下側カバー部材45を、調整機構55を備えずに着脱可能に取り付けるように構成したものであってもよい。又、この構成に加えて、右板部材19の前端部19Aに、右板部材19の前端部19Aからエンジンカバー11に向けて延出する板金製の上側カバー部材41を取り付けるように構成したものであってもよい。更に、これらの構成に加えて、下側カバー部材45に、穀粒タンク9の後下部に連結した底部ケース24を横外側から覆う後側カバー部45Cをカバー本体部45Aから後方に延長形成するようにしたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係るコンバインのカバー取り付け構造は、車体フレームにおける搭乗運転部の後方の位置に、穀粒タンクを、穀粒タンクの後端部に備えた上下向きの支軸を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように配備し、穀粒タンクの揺動操作を許容するために搭乗運転部と穀粒タンクとの間に確保した空間のうちの下側空間部分を覆い隠すカバー部材を穀粒タンクの下部に着脱可能に取り付けた自脱型コンバイン及び全稈投入型コンバインに適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 車体フレーム
4 搭乗運転部
9 穀粒タンク
24A 支軸
36A 係止軸
37 空間
37B 下側空間部分
45 カバー部材
46 支軸(螺軸)
46A 係合溝
47 支軸
48 係合片
49 係合片
50 係止具
53 螺合部
55 調整機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームにおける搭乗運転部の後方の位置に、穀粒タンクを、前記穀粒タンクの後端部に備えた上下向きの支軸を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように配備し、前記穀粒タンクの揺動操作を許容するために前記搭乗運転部と前記穀粒タンクとの間に確保した空間のうちの下側空間部分を覆い隠すカバー部材を前記穀粒タンクの下部に着脱可能に取り付けてあるコンバインのカバー取り付け構造であって、
前記カバー部材の前記穀粒タンクに対する取り付けを、前記カバー部材の下部に備えた前後の係合片と前記穀粒タンクにおける前記係合片の対向箇所に前後向きに配備した前後の支軸との係合、又は、前記カバー部材の下部に前後向きに配備した前後の支軸と前記穀粒タンクにおける前記支軸の対向箇所に備えた前後の係合片との係合、及び、前記カバー部材の上部に備えた前後の係止具と前記穀粒タンクにおける前記係止具の対向箇所に前後向きに配備した前後の係止軸との係止で行うように構成し、
前記前後の支軸のうちのいずれか一方を、前記係合片が係合する環状の係合溝を端部に形成した螺軸で構成し、前記螺軸の螺進による前記係合溝の前後方向での位置調節を可能にする螺合部を前記穀粒タンク又は前記カバー部材に装備し、前記螺軸及び前記螺合部により、前記カバー部材の前記穀粒タンクに対する前後方向での取り付け位置の調整を可能にする調整機構を構成してあるコンバインのカバー取り付け構造。
【請求項2】
前記調整機構を前記カバー部材の前部側に配備してある請求項1に記載のコンバインのカバー取り付け構造。
【請求項1】
車体フレームにおける搭乗運転部の後方の位置に、穀粒タンクを、前記穀粒タンクの後端部に備えた上下向きの支軸を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように配備し、前記穀粒タンクの揺動操作を許容するために前記搭乗運転部と前記穀粒タンクとの間に確保した空間のうちの下側空間部分を覆い隠すカバー部材を前記穀粒タンクの下部に着脱可能に取り付けてあるコンバインのカバー取り付け構造であって、
前記カバー部材の前記穀粒タンクに対する取り付けを、前記カバー部材の下部に備えた前後の係合片と前記穀粒タンクにおける前記係合片の対向箇所に前後向きに配備した前後の支軸との係合、又は、前記カバー部材の下部に前後向きに配備した前後の支軸と前記穀粒タンクにおける前記支軸の対向箇所に備えた前後の係合片との係合、及び、前記カバー部材の上部に備えた前後の係止具と前記穀粒タンクにおける前記係止具の対向箇所に前後向きに配備した前後の係止軸との係止で行うように構成し、
前記前後の支軸のうちのいずれか一方を、前記係合片が係合する環状の係合溝を端部に形成した螺軸で構成し、前記螺軸の螺進による前記係合溝の前後方向での位置調節を可能にする螺合部を前記穀粒タンク又は前記カバー部材に装備し、前記螺軸及び前記螺合部により、前記カバー部材の前記穀粒タンクに対する前後方向での取り付け位置の調整を可能にする調整機構を構成してあるコンバインのカバー取り付け構造。
【請求項2】
前記調整機構を前記カバー部材の前部側に配備してある請求項1に記載のコンバインのカバー取り付け構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−234653(P2011−234653A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107618(P2010−107618)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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