説明

コンバインの刈取装置

【課題】畦超え時や畦際での回行時に、刈刃駆動機構が直接畦畔に衝突して破損するのを回避する。
【解決手段】刈取部(4)を支持する前後方向の縦伝動ケース(11)の先端部に左右方向の横伝動ケース(13)を設け、該横伝動ケース(13)の前方にバリカン式の刈刃装置(9)を設け、横伝動ケース(13)の左右端部側には該横伝動ケース(13)に内蔵された横伝動軸(12)から刈刃装置(9)の可動刈刃を左右往復摺動自在に連動する刈刃駆動機構(14)を設け、横伝動ケース(13)の左右端部と刈刃装置(9)の左右端部を連結するガード部材(20)を刈刃駆動機構(14)の下方に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインの刈取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインの刈取装置として、例えば特許文献1に開示されているように、前側にバリカン式刈刃装置を備えた刈取横伝動ケースの左右端部側に、横伝動軸から刈刃装置の可動刈刃を左右方向に往復動させる刈刃駆動機構を配備した構成のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−17830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来構成では、畦超え時や畦際での回行時に刈刃駆動機構が畦畔に接触、或は衝突したりすることがあり、刈刃駆動機構のクランク部や軸部等の不慮の破損を招く問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の発明は、刈取部(4)を支持する前後方向の縦伝動ケース(11)の先端部に左右方向の横伝動ケース(13)を設け、該横伝動ケース(13)の前方にバリカン式の刈刃装置(9)を設け、横伝動ケース(13)の左右端部側には該横伝動ケース(13)に内蔵された横伝動軸(12)から刈刃装置(9)の可動刈刃を左右往復摺動自在に連動する刈刃駆動機構(14)を設け、横伝動ケース(13)の左右端部と刈刃装置(9)の左右端部を連結するガード部材(20)を刈刃駆動機構(14)の下方に配置したことを特徴とするコンバインの刈取装置とする。
【0006】
刈刃駆動機構(14)は、この下方に配置されたガード部材(20)によって防護されるので、畦超え時や畦際での回行時などにおいて、刈刃駆動機構(14)が直接畦畔に接触したり衝突したりすることが回避される。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記ガード部材(20)を、後方側ほど高くなるように傾斜させたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取装置とする。
機体を後進する際、ガード部材(20)への藁屑や雑草などの引っ掛りが防止される。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記ガード部材(20)の後端部を、刈刃駆動機構(14)の後端部近傍まで延出したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバインの刈取装置とする。
【0009】
湿田走行時に、クローラに付着した泥土が落下するが、上方から落下した泥土がガード部材(20)の後端部にひっかかって刈刃駆動機構(14)に影響を及ぼすことが無い。
請求項4記載の発明は、前記ガード部材(20)の後端部を、該ガード部材(20)の前端部よりも内側に偏倚させて配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載のコンバインの刈取装置とする。
【0010】
機体を後進する際に、泥土や藁はガード部材(20)によって刈刃駆動機構(14)の外側へ案内される。
請求項5記載の発明は、前記ガード部材(20)の中間部と横伝動ケース(13)とを連結する連結部材(21)を、刈刃駆動機構(14)のクランク部(15)よりも前側に配置したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項記載のコンバインの刈取装置とする。
【0011】
連結部材(21)によってガード部材(20)の強度を充分に確保することができるものでありながら、連結部材(21)が駆動クランク部(15)の前側に位置するため、クランク部(15)前側からの防護機能をも兼ね備える。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、刈刃駆動機構(14)が下方に配置されたガード部材(20)によって防護されるため、畦超え時や畦際での回行時に、刈刃駆動機構(14)が直接畦畔に衝突するようなことがなく、不慮の破損を防止することができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、請求項1の効果を奏するものでありながら、ガード部材(20)が後方側ほど高くなるように傾斜しているので、機体を後進する際、ガード部材(20)への藁屑や雑草などの引っ掛りを防止することができ、刈取作業を円滑に行なうことができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は請求項2の効果を奏するものでありがら、ガード部材(20)の後端部が刈刃駆動機構(14)の後端部近くまで延出しているため、上方から落下してくる泥土がガード部材(20)の後端部にひっかかって刈刃駆動機構(14)に影響を及ぼすことが少なくなり、刈取作業を円滑に行なうことができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は請求項2又は請求項3の効果を奏するものでありがら、ガード部材(20)の後端部が前端側よりも内側に偏倚しているので、機体が後進する際に、泥土や藁をガード部材(20)によって刈刃駆動機構(14)の外側へ案内することができ、この泥土や藁が刈取穀稈と共に収穫されにくくなり、刈取脱穀作業を円滑に行なうことができる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、請求項1から請求項4のいずれか一項記載の発明の効果に加えて、ガード部材(20)の連結部材(21)が刈刃駆動機構(14)のクランク部(15)よりも前側に位置しているので、ガード部材(20)を強度アップしながら、クランク部(15)前側からの防護機能をも同時に果たすことができ、刈刃駆動機構(14)等の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの側面図
【図2】刈取部の要部の側面図
【図3】同上要部の平面図
【図4】燃料タンクの実施例を示すコンバイン要部の背面図
【図5】同上一部の背面図
【図6】籾収容ホッパと袋ホルダの関係を示す側面図
【図7】コンバインの概略側面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、コンバインの側面図を示すものであり、この走行車体1には、左右一対の走行クローラ2,2を備え、後部に搭載した脱穀装置(脱穀部)3の前方部に刈取部4を設置し、刈取部4の横側部には運転席5や操作ボックス6等の運転操作部を備え、更に、その運転操作部後方には脱穀粒を一時的に貯留するグレンタンクGを装備している。
【0019】
刈取部4は、植立する穀稈を左右に分草する分草体7と、分草後の穀稈を引き起す穀稈引起し装置8と、引起し後の穀稈を切断するバリカン式の刈刃装置9と、刈取後の穀稈を掻込搬送する掻込搬送装置と、掻込搬送後の穀稈を引き継いで後方の脱穀部3に向けて揚上搬送する刈取穀稈搬送装置10等からなり、車体に対して上下に昇降可能で前後方向に沿わせて設けた縦伝動軸11aを内装した縦伝動ケース11及び該縦伝動ケースの先端に左右横方向に沿わせて設けた横伝動軸12を内装した横伝動ケース13に装備している。
【0020】
刈刃装置9は、横伝動ケース13の前側に設置してあり、横伝動ケース13の端部側には、横伝動軸12から刈刃装置9の可動刈刃を左右に往復動させる刈刃駆動機構14を備えている。刈刃駆動機構14は、横伝動軸12と一体回転する駆動クランク15と、前後方向に往復動する往復ロッド16と、軸芯Q回りに揺動するベルクランク17と、該ベルクランク17に係合して可動刈刃を左右に往復動させるナイフヘッド18等からなる。
【0021】
刈刃駆動機構14の下側には、前記横伝動ケース13の端部側と刈刃装置9の側端部とにわたって連結保持するガード部材20を備えている。ガード部材20はクランク部15の回転軌跡より下方に配置している。
【0022】
また、ガード部材20は、後方側ほど上方に高くなるように傾斜させてあり、そして、その後端部は、刈刃駆動機構14の後端部近くまで延出させている。更に、ガード部材20の後端部は、前端部よりも内側に偏倚させた構成としてあり、機体後進の際、藁や泥土などを刈刃駆動機構14より外側方へ案内しながら刈取範囲圏外へ押し出すようになっている。また、この構成において、ガード部材の後端部が平面視で駆動クランク部15とオーバラップするように配置することにより、下方からの突き上げに対して1本のガード部材でガードすることが可能となる。
【0023】
ガード部材20の中間部と横伝動ケース13とは、横方向の連結部材21を介して連結保持させてあり、これによりガイド部材の強度アップを図ると共に、連結部材21は刈刃駆動機構の駆動クランク部より前側に位置させることによって、駆動クランク部の前側への防護を図るようにしている。また、この連結部材21は、横伝動ケース13側の取付プレート22からガード部材20側に向かって下方向きに傾斜させることによって藁等の引っ掛りを防止するようにしている。なお、前記取付プレート22はL字型に折り曲げることによって強度アップを図っている。
【0024】
前記ガード部材20は、実施例では丸パイプによって構成しているが、特に、左右側のガード部材(パイプ)20の先端(前端)部を、平たく押し潰して取付平坦部20aとする形状とし、刈刃支持フレーム23の側端部に接当させてボルト24によって締付固定する構成としている。これによると、取付部への藁の引っ掛りを防止でき、むしろ、前方からの穀稈の流れを連続して案内することができる。
【0025】
なお、ガード部材先端の取付平坦部20aの前面を円弧R状に形成しておくと、藁や雑草等の引っ掛りを確実に防止することができる。
また、ガード部材20の後端部20bにおいては、前記の前端部と同じように平たく押し潰して水や泥の浸入を防止するようにし、しかも、その部分を上向きに折り曲げることによって後進の際に地面や畦などへの引っ掛かりを防ぐようにしている。また、この部材20の後端面を円弧状に形成しておくと藁や雑草類の引っ掛かりを防止することができる。
【0026】
刈刃駆動機構14の駆動クランク部15には、前方と下方が大きく開放するクランクカバー25が設けられていて、このクランクカバー内に泥が入ってきても下方に抜け易くしている。
【0027】
前記連結部材21上には、ガード部材が下方から突き上げられた時、横伝動ケース13に接当してガード部材が持ち上がらないように阻止するストッパプレート26を設けている。
【0028】
次に、図4に示す実施例について説明する。コンバインの車体上に搭載した燃料タンクにおいて、本例は、現行の燃料タンクに対してオプションとして増量タンクを後付けできるように構成することにある。すなわち、現行の燃料タンク30と増量タンク32を連絡するために現行タンク30に連結用パイプ31を取り付け、オプションの増量タンク32を取り付ける時に、現行タンク30の連結用パイプ31と増量タンク32の連絡用パイプ33を連継ホース34で連通することで、燃料タンク容量の増量が容易に行える。
【0029】
また、図5に示すように、現行燃料タンク30の連結用パイプ31の出口側内径部にネジ35を切り、Oリング36を有するキャップネジ37を締め付けることによって完全に燃料を止めることができ、増量タンクを取り付けない場合、現行タンク単独で使用することができる。
【0030】
図6に示す実施例は、籾収容ホッパ38の下方に配設した棒状の袋ホルダー40において、袋外れ防止用突起41を側面視でホッパ出口39の下方位置に配置することによって、籾袋の外れを防止するだけでなく、籾を受ける位置が安定し、籾こぼれがなくなる。また、この袋外れ防止用突起41は、籾袋補給の際に引っ掛りなくスムースに供給できるように差込方向の段差をなくした構成としている。
【0031】
図7に示す実施例は、コンバインの走行クローラにおいて、前側クローラ2Fと後側クローラ2Rを前後に分離させて設け、前側クローラ又は後側クローラを上下方向に可動できる構成としておけば、圃場から段差のある道路へ脱出する場合等には、例えば、油圧操作等で、油圧昇降機構を介して前側又は後側クローラを下げて機体を上昇させることにより、アユミなしで容易に脱出することができる。
【符号の説明】
【0032】
4 刈取部
9 刈刃装置
11 縦伝動ケース
12 横伝動軸
13 横伝動ケース
14 刈刃駆動機構
15 駆動クランク部
20 ガード部材
21 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部(4)を支持する前後方向の縦伝動ケース(11)の先端部に左右方向の横伝動ケース(13)を設け、該横伝動ケース(13)の前方にバリカン式の刈刃装置(9)を設け、横伝動ケース(13)の左右端部側には該横伝動ケース(13)に内蔵された横伝動軸(12)から刈刃装置(9)の可動刈刃を左右往復摺動自在に連動する刈刃駆動機構(14)を設け、横伝動ケース(13)の左右端部と刈刃装置(9)の左右端部を連結するガード部材(20)を刈刃駆動機構(14)の下方に配置したことを特徴とするコンバインの刈取装置。
【請求項2】
前記ガード部材(20)を、後方側ほど高くなるように傾斜させたことを特徴とする請求項1記載のコンバインの刈取装置。
【請求項3】
前記ガード部材(20)の後端部を、刈刃駆動機構(14)の後端部近傍まで延出したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のコンバインの刈取装置。
【請求項4】
前記ガード部材(20)の後端部を、該ガード部材(20)の前端部よりも内側に偏倚させて配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載のコンバインの刈取装置。
【請求項5】
前記ガード部材(20)の中間部と横伝動ケース(13)とを連結する連結部材(21)を、刈刃駆動機構(14)のクランク部(15)よりも前側に配置したことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項記載のコンバインの刈取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−115160(P2012−115160A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265316(P2010−265316)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】