説明

コンバインの排藁処理装置

【課題】切断部から供給される切藁を下方に落下排出するものと、左側に大きく拡散排出させるものとに分配することにより、株元側の切藁を機体後部の刈取り跡地に均一的に拡散排出させるコンバインの排藁処理装置を提供する。
【解決手段】脱穀済みの排藁をカッタ装置8の切断部27によって切断し、切断された切藁を上記切断部27の下方に設置される株側螺旋羽根42及び穂側螺旋羽根41を有する切藁拡散体36により、左右に横送りしながら拡散排出するコンバインの排藁処理装置であって、前記切藁拡散体36の拡散回転軸40に、前記株側螺旋羽根42の搬送終端側に隣接させて跳出体47を設け、該跳出体47を平板状に構成し、且つ切藁を左方向に跳ね出させるように拡散取付角を有して拡散回転軸40に取付けると共に、側面視において拡散回転軸40の外周の略半分の範囲に亘って設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀済みの排稈を切断部で切断し切藁拡散体で拡散排出するコンバインの排藁処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインは前処理部で刈取った穀稈を後方の脱穀部に搬送して脱穀し、脱穀された穀稈(排稈)を脱穀部の後方に設置されるカッタ装置によって稈身方向に切断すると共に、切断された切藁を機体後部の刈取り跡地に拡散排出するようにしている(例えば特許文献1。)。
上記カッタ装置は、排稈を横軸回転切断型の切断部によって稈身方向に切断した切藁を、株側螺旋羽根及び穂側螺旋羽根を有する切藁拡散体によって左右に横送りしながら拡散排出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−247287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で示されるコンバインの排藁処理装置は、排稈を稈身方向に切断した切藁を株側螺旋羽根と穂側螺旋羽根によって左右に横送りしながら拡散排出するので、6条分の植立穀稈を刈取る刈取幅を有するコンバインの刈取り跡地には切藁を略均一に分散させて落下させることができる。
然しながら、刈取り穀稈が濡れていたり刈取り量が多い場合に、特に株元側の切藁は嵩張るうえに重量が増すことから、株側螺旋羽根及びその下方に設置される板状の拡散ガイドによっては、上記株元側切藁を刈取り跡地の左側(既刈取り地側)に向けて拡散排出することができず、切藁が解されないまま団塊状に放擲されたり、切藁が落下しない跡地が筋状に残る等の欠点がある。
また刈取幅が7条以上の多条刈り前処理部をコンバインの走行機台に装着する場合には、刈取幅が広く当該走行機台の左右に配置されるクローラ走行装置の左側に前処理部の刈取幅が突出することになるため、この突出する刈取り跡地に対しての切藁の拡散排出が十分に行なわれず、切藁が存在しない非切藁落下地が筋状に大きく残り、切藁散布による肥料効果が低減する等の課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によるコンバインの排藁処理装置は係る課題を解決するために、第1に、脱穀済みの排藁をカッタ装置8の切断部27によって切断し、切断された切藁を上記切断部27の下方に設置される株側螺旋羽根42及び穂側螺旋羽根41を有する切藁拡散体36により、左右に横送りしながら拡散排出するコンバインの排藁処理装置において、前記切藁拡散体36の拡散回転軸40に、前記株側螺旋羽根42の搬送終端側に隣接させて跳出体47を設け、該跳出体47を平板状に構成し、且つ切藁を左方向に跳ね出させるように拡散取付角θを有して拡散回転軸40に取付けると共に、側面視において拡散回転軸40の外周の略半分の範囲に亘って設けたことを特徴としている。
【0006】
第2に、跳出体47の外周回転軌跡に臨んで、側面視において該外周回転軌跡の前方から下方に沿って切藁を排出案内する株元切藁ガイド板50を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、切藁拡散体の拡散回転軸に株側螺旋羽根の搬送終端に隣接させて、側面視で拡散回転軸の外周の略半分の範囲に亘って拡散取付角を有して跳出体を取付けることにより、切断部から供給される切藁を下方に落下排出するものと、左側に大きく拡散排出させるものとに分配することができるので、重量があり嵩張る株元側の切藁を機体後部の刈取り跡地の左側方に向けて均一的に拡散排出させることができる。
【0008】
請求項2の発明によれば、跳出体の外周回転軌跡に臨んで、側面視において該外周回転軌跡の前方から下方に沿って切藁を排出案内する株元切藁ガイド板を設けたことにより、切断部から落下する切藁を株元切藁ガイド板で受けて跳出体側に供給案内すると共に、跳出体に接当する切藁を回転により後方下方及び左側に向けて大きく拡散排出することができる。また跳出体に接当しない切藁を、株元切藁ガイド板で均した状態で滑落させることができる。従って、株元側の切藁を株元切藁ガイド板によって、下方と刈取り跡地の左側に向けて広く均一に分散させて落下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明が適用されたコンバインの平面図である。
【図2】脱穀部及び排藁処理装置の要部の構成を示す側断面図である。
【図3】排藁処理装置の背面図である。
【図4】排藁処理装置の要部の構成を一部破断をして示す背面図である。
【図5】跳出体の構成を示す斜視図である。
【図6】排稈集束装置の側面図である。
【図7】排稈集束装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1に示すコンバインは走行機台1の前部に前処理部2を昇降自在に設け、後方左右に脱穀部3と操縦部4を配設し、該操縦部4の後方に穀粒搬送オーガ5aを有するグレンタンク5を載置している。上記走行機台1は左右の下部にクローラ方式の走行装置6を備えている。また脱穀部3は図2で示すように、脱穀機枠7の後部に着脱可能に装着される排藁処理装置として、脱穀済みの排稈(排藁)を稈身方向に細断するカッタ装置8と細断された切断排稈(切藁)を拡散排出する切藁拡散装置9を設けていると共に、必要により後部に図6,図7で示す排稈収束装置8aを着脱可能に装着することができる。
【0011】
コンバインの各部の構成について説明すると、先ず前処理部2は8条分の植立穀稈を刈取ることができる8条刈り用としており、前処理部2は左右で対をなす穀稈引起体10,10で形成される引起し経路11を4列分併設していると共に、各隣接する植立穀稈の条間毎にデバイダ12を設け、右側の未刈地側デバイダ12と左側の既刈地側デバイダ12との間に形成される刈取幅内にある穀稈を引起し後方の刈刃で刈取り、刈取られた穀稈を扱深調整手段等を有する後方搬送部13を介し脱穀部3のフィードチェン15に継送搬送し適正扱深さを以って脱穀部3に供給する。
実施形態の前処理部2は、左右の走行装置6の両外側で形成される機体の走行幅の右側に未刈地側デバイダ12を略一致させた状態で6条分の刈取幅を走行幅に一致させることにより、左側2条分の刈取幅を走行幅の左側に突出させた状態で配置している。
【0012】
脱穀部3は図2に示すように在来のものと同様の構成からなり、フィードチェン15で適正扱深さを以って挟持搬送される穀稈を、扱室16内で回転する扱胴17によって脱穀し、扱室16の受網19等から漏下する脱穀物を選別風路中に設置された揺動選別体20によって揺動選別し、穀粒を一番ラセン21を介してグレンタンク5に収容し、未処理選
別物は二番ラセン22を介し揺動選別体20に還元し、選別分離された藁屑類を吸引排塵ファン23によって機外に吸引排出する。
【0013】
また脱穀済みの排稈は、扱室2の後部で穀粒を回収する4番口25を経てフィードチェーン15から排稈搬送装置26に継送し、該排稈搬送装置26の終端からカッタ装置8に供給し、切断部27で切断した切藁を拡散排出する。尚、上記カッタ装置8はカッタフレーム28の上部に形成する排稈供給口28aの後部に、図2で示す実線位置(排稈切断姿勢)と点線(排稈非切断姿勢)とに排稈経路を切換える板状の切換部材28bを回動自在に設けている。これにより切換部材28bは、排稈切断姿勢において排稈をカッタ装置8内に供給し、排稈非切断姿勢においてカッタ装置8の後部に対し、必要によって装着される図6,図7で示す排稈集束装置8aに供給することができる。
【0014】
上記排稈搬送装置26は、始端部をフィードチェン15の終端部に臨ませた状態で、平面視において搬送終端を機体内側に向けて傾斜させカッタ装置8の排稈切断長の略中央部に臨ませるようにしている。これにより排稈搬送装置26は、フィードチェン15で挟持搬送され扱室16から送り出される排稈を4番口25部分で引き継ぎ、順次内側に向けて後方挟持搬送しながら、カッタ装置8の切断部27に対し横向の適正姿勢で供給する。
【0015】
カッタ装置8は図2,図4で示すように、平面視で方形状のカッタフレーム28内に、切断部27を横軸回転可能に軸支される受刃輪体29と切断輪体30とによって形成されるディスク型カッタとして、脱穀機枠7の後部に着脱可能に装着している。
これによりカッタ装置8は、排稈搬送装置26から横向姿勢で切断部27に供給される排稈を、互いに内向き回転する受刃輪体29と切断輪体30とによって稈身方向に細断する。そして、所定の切断長に切断された切藁を下方に排出落下させ、切断部27の下方に構成される切藁拡散装置9によって拡散排出する。
【0016】
図2〜図5を参照し上記切藁拡散装置9について詳述する。この切藁拡散装置9は、方形状に形成されたカッタフレーム28の前後左右の側壁下部に、それぞれ前カバー31と後カバー32と左カバー33と右カバー34とを一体的に又は着脱可能に連設することにより、下部に切藁の拡散排出口35を開口形成している。上記左カバー33は中途部を屈曲させて下部を外側に向け拡開傾斜させた左ガイド板33aを形成し、また右カバー34も同様に下部を外側に向けて拡開傾斜させた右ガイド板34aを形成することにより、拡散排出口35の左右を拡開している。
【0017】
そして、左カバー33と右カバー34の間に、切断部27から排出落下する切藁を左デバイダ12と右デバイダ12間の刈取幅内の刈取り跡地内に拡散排出落下させる切藁拡散体36を回転駆動可能に軸支している。
またカッタ装置8の伝動は、先ず受刃輪体29が有する受刃輪軸に設けた入力プーリ37を、脱穀部3側からベルト伝動によって駆動し、受刃輪体29の軸他端からギヤ伝動機構39を介して、切断輪体30及び切藁拡散体36を図2で示す矢印方向に回転伝動するようにしている。
【0018】
切藁拡散体36は、切断部27が排藁を細断する長さと略同等の長さを有し、矢印方向に回転可能に軸支される拡散回転軸40の、左右中央部から右側(穂側)と左側(株側)に、それぞれ螺旋板の捻り方向を逆向きにした穂側螺旋羽根41と株側螺旋羽根42を設けることにより、排稈を右側と左側に振り分けて拡散排出させると共に、該株側螺旋羽根42の左端(株元側)に株元拡散羽根板43を設けることにより、株側切藁を側方及び後方に向けて大きく拡散排出することができるようにしている。
上記穂側螺旋羽根41は矢印方向に回転する拡散回転軸40に対し、従来のものと同様な右螺旋形状の径大な螺旋板を所定ピッチで軸装しており、これによりカッタ装置8で切
断された穂側の切藁を、該穂側螺旋羽根41の直下位置から右カバー34の右ガイド板34aで拡開案内規制して、未刈地側の左デバイダ12に至らせる位置まで拡散排出することができる。
【0019】
また上記株側螺旋羽根42と株元拡散羽根板43とは、拡散回転軸40の左側の軸長さに対しそれぞれ略等しい長さとして設けており、株側螺旋羽根42は前記穂側螺旋羽根41と逆向きの左回り方向の径小な螺旋板を1.5ピッチ程度(略1周半)として軸着し、これにより切断部27から落下してくる切藁を、株側螺旋羽根42と株元拡散羽根板43とによって、該株側螺旋羽根42の直下位置から株元拡散羽根板43の下方及び左側に向かう広い範囲に均等的に拡散排出させるようにしている。
【0020】
即ち、図5で示すように株元拡散羽根板43は、拡散回転軸40に装着された状態で側面視において、拡散回転軸40に直線状の中央部が取付けられる直径辺45と、該直径辺45の両端を半円弧状の外周縁46とで結んだ半周盤の平板状をなすように形成される跳出体47と、該跳出体47の直径辺45の中央部に切欠した軸取付部48を有し、該軸取付部48を拡散回転軸40に切藁を左方向に跳ね出させるように所定の拡散取付角θを有して取付け、側面視において跳出体47が拡散回転軸40の外周の略半分の範囲に亘って設けられる構成にしている。
【0021】
また図示例の株元拡散羽根板43は、直径辺45の両側に三角形状の取付片49を逆向き対称形状をなして形成しており、該両取付片49の側辺を拡散回転軸40に沿って固定することにより、跳出体47を補強支持し上記拡散取付角θを保持するようにしている。これにより株元拡散羽根板43は、図2で示すように側面視で半周盤状をなして回転することができる。また取付片49は、拡散回転軸40と跳出体47との間を塞ぐので、切藁を回転時に掬うように受けながら跳ね出し漏れを抑制して拡散を促進する。尚、上記跳出体47の外周縁46は円弧状に限ることなく、多角形でもよく又板の中途部にスリットを設けてもよい。また平板状の跳出体47は平坦面板の他に大きな湾曲面を有する湾曲板にすることもできる。
【0022】
そして、切藁拡散装置9は、カッタフレーム28の前壁に後方傾斜角を有して接続する前カバー31に、切断部27から落下する切藁を跳出体47側に案内する株元拡散ガイド板50を、着脱及び取付け位置調節可能に取付けている。この株元拡散ガイド板50は、株元拡散羽根板43の回転軌跡幅に沿って湾曲するガイド面を形成しており、その下端辺を拡散回転軸40の下方で鉛直線の近傍に臨ませている。即ち、株元切藁ガイド板50は跳出体47の外周回転軌跡に臨み、側面視において該外周回転軌跡の前方から下方に沿って切藁を排出案内することができる。
また後カバー32は、株元拡散ガイド板50に対向する部位に後方に拡開状に膨出する拡散ガイド部32aを設けており、該拡散ガイド部32aと株元拡散ガイド板50との間に、切藁を後方及び左側方に大きく放擲させる拡散路51を形成している。
【0023】
この構成により切藁拡散装置9は、回転する跳出体47が拡散取付角θを有する板面に接当した切藁を接当分力によって左側(株元側)に跳ね飛ばすと共に、その回転起風によっても拡散路51を介し後方及び左側に広く拡散させて放擲する。このとき切藁拡散装置9は前記左カバー33のガイドカバー33aによって、点線Aで示すように切藁の左側への拡散を規制案内しながら、左デバイダ12の直近まで均一的に落下させことができる。
また株元拡散羽根板43に接当しないで落下する切藁は、株側螺旋羽根42によって左側に送られる切藁と合流することにより、その送り力によって左側に向け図4の点線Bで示すように拡散落下する。また株元拡散羽根板43に接当しないで株元切藁ガイド板50上を滑落する切藁は、該株元切藁ガイド板50を滑落する際に板面上で解れて均された状態となって自重で落下排出される。
【0024】
以上のように構成される排藁処理装置を備えたコンバインは、前処理部2によって左右のデバイダ12,12間で刈取幅内にある植立穀稈を刈取り、刈取った穀稈を後方の脱穀部3に搬送供給して脱穀し、排稈を脱穀部3の後方に設置されるカッタ装置8に供給し、横軸回転切断型の切断部27によって稈身方向に切断し、切藁を切藁拡散装置9を介して機体後方の既の刈取幅内に拡散排出する。
このようなコンバイン作業において、切断部27を通過し稈身方向に切断され落下する切藁のうち、穂先側のものが穂側螺旋羽根41によって右側に拡散移動させられながら落下し、右カバー34で案内規制される切藁が右側の未刈地側近傍位置に拡散排出される。
【0025】
また株元側の切藁は、株側螺旋羽根42と株元拡散羽根板43とによって左側に拡散移動させられながら落下し、左カバー33で案内規制される切藁は刈取り跡地側の左デバイダ12の近傍位置まで拡散排出される。このとき重量があり嵩張る最株元側の切藁は、株側螺旋羽根42に隣接し側面視で拡散回転軸40の外周の略半分の範囲に亘る跳出体47を拡散回転軸40に設けた株元拡散羽根板43によって、下方に向け跳出体47に接当させずそのまま自重落下させるものと、跳出体47に接当させて株元側に大きく拡散排出するものとに均等的に分配しながら分配排出をスムーズに行なう。
【0026】
また株元拡散ガイド板50を介して後方に向けて拡開する拡散路51を形成しているので、跳出体47に接当した切藁の一部を後方及び後方側方に向け大きく分散させながら放擲落下させることができるため、水分を多く含んだ切藁が団塊状になったまま落下する等の不具合を抑制しながら、左側への拡散放擲もスムーズにすることができる。
従って、切断部27から落下する切藁は、回転する切藁拡散体36を通過する際に下方及び左右側に向けて拡散排出されるので、刈取り跡地の幅内に広く均一的に分散落下することができて、切藁の散布による施肥効果の均質化を図ることができる。
尚、実施形態の排藁処理装置は、8条刈り用の前処理部2を装着したコンバインについて説明したが、例えば7条刈りの前処理部2を装着したコンバインにも適用することができる。
【0027】
次に、図6,図7を参照しカッタ装置8の後部に着脱可能に装着される排稈集束装置8aについて説明する。この排稈収束装置8aは前記カッタ装置8の切換部材28bを、図2の実線位置から点線の排稈非切断姿勢に切換えると、排稈を排稈搬送装置26から切換部材28bを介してカッタフレーム28を越えて落下させることができ、落下排稈を前記後カバー32と開閉作動可能な集束杆56とによって形成される集束部57で集束し、集束された集束排稈を集束作動機構58の開閉作動によって落下放出することができる。
【0028】
図示例における後カバー32は平断面視でコ字状に形成しており、上辺部を軸支部59を支点に回動可能に軸支していると共に、両側壁に形成した長孔状の調節孔60を左カバー33と右カバー34に対し摘み付きボルト61によって取付けている。これにより後カバー32は軸支部59を支点に、図6に実線で示す排稈の集束姿勢と、点線で示す非収束姿勢に切換えて保持することができる。また後カバー32はその下辺に、前記左右の集束杆56を入り込ませて係止する複数のストッパ部62を、V字状の凹溝形状となして形成している。尚、上記後カバー32は切藁拡散装置9の下部カバーを兼用しており、後方に広げた排稈集束姿勢において、切藁の拡散排出をスムーズに行うことができる。
【0029】
集束作動機構58は、カッタ装置8の上方で門型をなして排稈搬送装置26の終端部を覆うように構成される、上部カバー63の上部に着脱可能に設置している。この集束作動機構58はユニットベース65に、左右一対の集束杆56を備える回動軸66を軸支していると共に、軸端側の一側に作動モータ67を取付け、該作動モータ67の駆動軸と回動軸66とをロッド及びリンク杆等を連結してなるリンク機構69を構成している。
【0030】
上記作動モータ67はタイマ機構による間歇正逆回転手段或いは集束杆56が受ける排稈が一定量集束されたことを感知したとき正逆回転駆動する制御手段等によって正逆回転駆動することができる。これにより作動モータ67は、リンク機構69及び回動軸66を介し、正転時に集束杆56を図6に実線で示す集束姿勢から後方上方に開動させた排稈の放出姿勢に切換え、且つ逆転時に放出姿勢にある集束杆56を集束姿勢に復帰回動させることができる。尚、リンク機構69が集束杆56を往復動させるクランク運動機構である場合は、作動モータ67は正逆回転させることなく一定方向の回転によって集束杆56の往復動制御を行うことができる。
【0031】
集束杆56は、回動軸66に取付けた基部側から後方に向けて側面視で逆く字形状となしカッタ装置8の後壁に対向させることにより、落下経路の上方に排稈の落下を自由に行わせる大きな自由落下スペース70と、集束杆56の下端部を後カバー32のストッパ部62内に接当させた集束姿勢で、徐々に狭窄する経路となる集束スペースを有する集束部57を形成している。
【0032】
以上のように構成される排稈収束装置8aは、排稈搬送装置26から切換部材28bを介して集束部57に至る排稈を所定量集束した時点で、集束作動機構58の作動に伴い集束杆56を開動させて、集束排稈を速やかに落下させることができる。
このとき集束排稈は集束部57の狭窄経路によって所定量毎に強く集束することができるため、集束単位毎の集束排稈を後続の排稈との分離(束離れ)をよくして放出させ地上に整然と落下させることができる。
【0033】
また放出姿勢にある集束杆56が集束姿勢に復帰する際には、後続して落下する排稈を集束姿勢の後カバー32の傾斜面で受けている状態で、集束杆56が集束作動機構58によって速やかに閉動させるので、集束杆56が復帰作動している間における排稈の流れ落ちを抑制することができる。従って、排稈収束装置8aは集束杆56の開閉作動スピードを上げることができ、且つこの場合でも適正集束量の集束排稈を能率よく整然と連続的に放出することができ、多量の穀稈を刈取り処理する多条刈りコンバインに好適に装着することができる等の特徴がある。
【符号の説明】
【0034】
1 コンバイン
2 前処理部
3 脱穀部
8 カッタ装置
9 切藁拡散装置
27 切断部
36 切藁拡散体
40 拡散回転軸
41 穂側螺旋羽根
42 株側螺旋羽根
47 跳出体
50 株元切藁ガイド板
θ 拡散取付角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀済みの排藁をカッタ装置(8)の切断部(27)によって切断し、切断された切藁を上記切断部(27)の下方に設置される株側螺旋羽根(42)及び穂側螺旋羽根(41)を有する切藁拡散体(36)により、左右に横送りしながら拡散排出するコンバインの排藁処理装置において、前記切藁拡散体(36)の拡散回転軸(40)に、前記株側螺旋羽根(42)の搬送終端側に隣接させて跳出体(47)を設け、該跳出体(47)を平板状に構成し、且つ切藁を左方向に跳ね出させるように拡散取付角(θ)を有して拡散回転軸(40)に取付けると共に、側面視において拡散回転軸(40)の外周の略半分の範囲に亘って設けたことを特徴とするコンバインの排藁処理装置。
【請求項2】
跳出体(47)の外周回転軌跡に臨んで、側面視において該外周回転軌跡の前方から下方に沿って切藁を排出案内する株元切藁ガイド板(50)を設けた請求項1記載のコンバインの排藁処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−147406(P2011−147406A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12472(P2010−12472)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】