説明

コンバインの脱穀装置

【課題】扱室の奥に設ける藁切り刃に多くの藁屑が絡み付ついた時、これらの藁屑を容易に取り除くことができる藁屑除去手段を提供する。
【解決手段】複数の扱歯14a,・・を外周に突設した扱胴14を扱室12内に回転自在に軸支し、該扱室12内の一側に処理物を切断する藁切り刃43,44,45を備えたコンバイン1の脱穀装置4において、前記扱藁切り刃43,44,45に絡み付ついた藁屑を、直接藁切り刃43,44、45に触れることなくむしり取って除去することができる藁屑除去手段Rを設けると共に、この藁屑除去手段Rをコンバイン1の操縦部8から操作できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扱室を備えるコンバインの脱穀装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの脱穀装置においては、扱胴を回転自在に軸支した扱室の側方に、処理胴を回転自在に軸支した処理室を配置し、前記扱室の後側と処理室とを送塵口を介して連通させると共に、扱室における送塵口近傍の扱胴の回転方向下手側に処理物である長藁を切断する藁切り刃を設けることによって、扱室の終端まで達した処理物が送塵口に入りきらなかった場合でも、その直後に藁切り刃で処理物を切断して扱胴の回転負荷を軽減させながら脱穀性能を向上できるように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−185106号公報(第4頁、図2−図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献1のものでは、処理物が水分を多く含んだ湿潤度の高い濡れ材である場合は、処理物の切断手段である藁切り刃に処理物が絡み付き易いことから期待する藁切り刃の効果が得られず、更に藁切り刃に多くの処理物が絡み付くと扱胴の回転負荷が増大して扱室から異音が発生するようになるので、その場合は脱穀作業を停止して扱室の上方を覆う上部枠体を上昇回動させた後、藁切り刃に絡み付いた多くの処理物を手作業で取り除かなければならず作業性が悪かった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、複数の扱歯を外周に突設した扱胴を扱室内に回転自在に軸支すると共に、該扱室内に処理物を切断する藁切り刃を備えたコンバインの脱穀装置において、前記藁切り刃に付着した藁屑を取り除く藁屑除去手段を設けたことを第1の特徴としている。
そして、前記藁屑除去手段を操縦部からから操作できるように構成したことを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明によれば、扱室内において、処理物を切断する藁切り刃に付着した藁屑を取り除く藁屑除去手段を設けたことによって、前記藁屑除去手段を介して藁切り刃に付着した(絡み付いた)藁屑を直接藁切り刃に触れることなく容易に除去することができる。特に、処理物が藁切り刃に絡み付き易い水分を多く含んだ湿潤度の高い濡れ材であっても、藁切り刃に絡み付ついた藁屑を手作業で取り除かなくて済むようになる。
そして、請求項2の発明によれば、前記藁屑除去手段を操縦部から操作できるように構成したことによって、脱穀作業を中断することなく藁屑の除去が行なえるので作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2は、コンバイン1の側面図と平面図であって、コンバイン1は、左右一対のクローラ走行装置2に機体フレーム3を支持すると共に、この機体フレーム3の前方に穀稈を刈取りながら脱穀装置4まで搬送する前処理装置5を備えている。
【0007】
更に詳しくは、脱穀装置4は、機体フレーム3上の左側前部に設けてあり、この脱穀装置4において前処理装置5で刈取った穀稈を脱穀して穀粒を選別すると共に、脱穀装置4で脱穀した後の排稈を機外に排出処理する後処理装置6を当該脱穀装置4の後方に連続して配置している。
【0008】
また、機体フレーム3の右側前部には、オペレータが着座する座席7と各種操作具を備えた操縦部8を配置すると共に、その後方且つ脱穀装置4の右側方には、該脱穀装置4で選別処理した穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク9を設けてあり、この穀粒タンク9内に貯留した穀粒を穀粒排出オーガ11を介して機外に排出できるようになっている。
【0009】
そして、図3は、コンバインに搭載される脱穀装置4の側断面図、図4は、後述する扱室12及び処理室18の斜視図、図5は、扱室12及び処理室18の平面図、図6は、一部を省略した扱室12の背面図であって、脱穀装置4は、前処理装置5で刈取った穀稈を扱室12の前後方向に沿って搬送する脱穀フィードチェン13と、扱室12に回転自在に軸支して穀稈から穀粒を脱穀する扱胴14と、扱胴14で脱穀した穀粒を選別室15に漏下させる当該扱胴14の下側外周に沿って設けた受網16と、扱室12の側方に配設すると共に送塵口17を介して扱室12の後部と連通する処理室18と、処理室18に回転自在に軸支して扱室12から処理室18に流入する処理物を単粒化処理する処理胴19と、処理室18で単粒化した穀粒を選別室15に漏下させる当該処理胴19の外周に沿って設けた受網21と、選別室15に配置した揺動選別体22と、揺動選別体22から漏下する穀粒を風選別する送風ファン23と、揺動選別体22による篩選別と送風ファン23による風選別がなされて一番樋(一番螺旋)24に落下した一番物を穀粒タンク9へ揚上搬送する揚穀筒25と、補助送風ファン26による風選別がなされて二番樋(二番螺旋)27に落下した二番物を揺動選別体22上へ還元する二番還元筒28と、前記風選別と篩選別によって選別分離された切れ藁や塵埃等の夾雑物を機外に排出する横断流(吸引排塵)ファン29等を備えている。
【0010】
尚、脱穀フィードチェン13の終端部には、扱室12で脱穀した後の排稈を搬送チェン31aと挟持レール31bで受け継いで挟持搬送する排稈搬送装置31を連設すると共に、この排稈搬送装置31の後方には、前記排稈を切断処理しながら排藁として機外へ放出するカッタ32を備えた後処理装置6を設けている。
【0011】
また、扱室12の下半分は、扱室フレーム33によって形成される一方、扱室12の上半分は、該扱室12の上方を覆うと共に扱胴14と一体的に開閉させることができる上部枠体34によって形成している。そして、図6に示すように、扱室フレーム33と上部枠体34との間には、前処理装置5で刈取った穀稈の穀稈供給口35が形成してあり、この穀稈供給口35を介して前記穀稈の穂先側を扱室12内に供給する。
【0012】
そして、扱胴14は、その外周に複数の扱歯14a,・・が突設してあり、この扱歯14aでもって穀稈の穂先から穀粒を脱粒する。本実施形態の扱胴14は、所謂下扱ぎ式であり、穀稈供給口35から供給される穀稈の穂先を受網16側へ導きながら、回転駆動する扱胴14の複数の扱歯14a,・・によって穀稈の穂先から穀粒が脱粒される。
【0013】
更に詳しく説明すると、扱室12は、前側から順に脱穀処理部12a、送塵処理部12b、及び刺さり粒処理部12cを構成している。脱穀処理部12aは、通常の脱穀処理を行う部分であり、ここで扱き下ろされた穀粒は受網16を介して選別室15に漏下する。
また、送塵処理部12bは、受網16から漏下せずに扱室12の後部まで達した穂付き粒や藁屑などの処理物を、送塵口17を介して連通する処理室18へ送る部分であり、この
送塵口17は、扱室12の奥側(穀稈供給口35の反対側)に形成されると共に処理室18の前部と連通している。そして、刺さり粒処理部12cは、扱室12内を搬送される穀稈に紛れ込んだ刺さり粒を扱歯14a,・・で落下させる部分であり、扱室12を送塵口17の後方まで延長することにより形成している。
【0014】
また、扱室12の内周部には、仕切板16a,41、処理物ガイド42、及び藁切り刃43,44,45を設けている。更に詳しくは、仕切板16aは、扱胴14の回転方向に沿って受網16に立設した円弧状の板材であり、また仕切板41は、扱室フレーム33に立設した円弧状の板材であって、両仕切板16a,41は、扱室14内を流動する処理物に接触しながら適度な抵抗を与えることにより当該処理物に対する処理作用を高めている。尚、本実施形態では、受網16の略全域(全幅)に仕切板16aを、また送塵口17の前後に仕切板41を立設している。
【0015】
そして、処理物ガイド42は、上部枠体34側に取り付けた円弧状の板材であり、扱胴14の回転方向に対して該扱胴14の前方側に傾斜するように取り付けてある。つまり、処理物ガイド42は、扱室12内における処理物の流れを積極的にガイドするために設けてあり、この処理物ガイド42の扱胴14の回転方向に対する傾斜方向、及びその傾斜角によって扱室14内を流動する処理物の流れが調整される。尚、本実施形態では、少なくとも送塵処理部12bに処理物ガイド42を設けてあり、この処理物ガイド42によって処理物を戻し方向へガイドすることにより、処理物が刺さり粒処理部12cに流れることを抑制している。
【0016】
また、藁切り刃43,44,45は、扱室12内を循環する処理物である長藁を切断すべく扱室12の内周部、即ち扱胴14と一体に開閉する上部枠体34の回動支点P(図6参照)側に設けたものであり、本実施形態では、扱室12の前側を構成する脱穀処理部12aに複数の藁切り刃43を、脱穀処理部12aの後側を順次構成する送塵処理部12bと刺さり粒処理部12cには、藁切り刃44と藁切り刃45を夫々設けている。
【0017】
そして、送塵処理部12bに設けた藁切り刃44は、扱室12における送塵口7近傍の扱胴14の回転方向下手側に設けてあり、この位置に藁切り刃44を設けると、扱室12の終端まで達した処理物が送塵口17に入りきらなかった場合でも、その直後に当該処理物を藁切り刃44で切断することができる。これにより、扱胴14の回転負荷を軽減して脱穀性能を向上させることができるだけでなく、処理物が固まりとなって揺動選別体22上に落下するといった不都合も解消できるようになっている。
【0018】
また、上述した藁切り刃44は、処理物ガイド42に対する扱胴14の回転方向上手側に位置しており、送塵口17に入りきらなかった処理物は、藁切り刃44で切断処理されてから処理物ガイド42のガイド作用を受けるので脱穀性能の向上が図れる。
【0019】
そして、刺さり粒処理部12cの藁切り刃45は、送塵処理部12bの藁切り刃44から後方へ連続して設けてあり、このように藁切り刃44に連続して藁切り刃45を設けることによって、送塵口17に入りきらずに刺さり粒処理部12cに到達した処理物を切断処理することができ、それにより刺さり粒処理部12cに処理物が滞留することを防止して扱胴14の回転負荷を軽減させることができるように構成している。
【0020】
ところが、扱室12における処理物である長藁が、藁切り刃43,44,45に絡み付き易い水分を多く含んだ湿潤度の高い濡れ材である場合は、長藁が藁切り刃43,44,45に絡み付き易いことから期待する藁切り刃43,44,45の切断処理効果が得られない。更に、前記藁切り刃43,44,45に多くの処理物が絡み付くと扱胴14の回転負荷が増大して扱室12から異音が発生するようになるので、その場合は脱穀作業を停止して扱室12の上方を覆う上部枠体34と扱胴14を一体的に上昇回動させた後、扱室12の奥にある藁切り刃43,44,45に絡み付いた多くの処理物を手作業で取り除かなければならず作業性が悪かった。
【0021】
そこで、本発明では、上述の如く藁切り刃45(43,44)に絡み付ついた多くの処理物を容易に取り除くことができる藁屑除去手段Rを設けている。更に詳しく説明すると、図7は、藁屑除去手段Rの第一実施例であって、この屑除去手段Rは、平面視でコの字状に形成されている藁切り刃45(43,44)に外嵌するコの字状のスクレーパ51と、該スクレーパ51に一体的に固設した支持アーム52と、該支持アーム52を介してスクレーパ51を図中A矢印方向に進退自在に操作可能な操作レバー53を備えている。操作レバー53は、支点P1を中心として図中B矢印方向に機外から回動操作可能な操作レバー53であり、該操作レバー53は、常時は引張スプリング54によりスクレーパ51を後退させる方向に付勢されている。
【0022】
つまり、この屑除去手段Rによれば、操作レバー53に連係する進退自在なスクレーパ51によって、藁切り刃45(43,44)に絡み付ついた多くの処理物を容易にむしり取ることができるようになっている。
【0023】
また、図8〜図10は、藁屑除去手段Rの第二実施例であり、この第二実施例では、藁切り刃45(43,44)を、扱室12の上方を覆って扱胴14と一体に開閉する上部枠体34の開閉動作に連係させながら、図中C矢印で示す如く扱室12の内周部(面)eに出入できるように構成している。更に詳しく説明すると、複数の藁切り刃45(43,44)をL字状の断面を有するベース56に取付けて、このベース56に側面視で略L字状の摺動アーム57の基端部を一体的に固設し、該摺動アーム57を扱室フレーム33側のガイド体58に摺動自在に支持すると共に、当該摺動アーム57の先端部を上部枠体34の回動支点Pであるパイプ軸59に固設した揺動アーム59aに連結してある。
【0024】
そして、複数の藁切り刃45(43,44)に対応する扱室12の内周部(面)eには、これらの藁切り刃45(43,44)を自在に出入させることができる細隙Sを設けてあり、通常の脱穀処理では、上部枠体34を閉じて藁切り刃45(43,44)を扱室12の内周部(面)eから突出させた状態で作業がなされ、藁切り刃45(43,44)に多くの処理物が絡み付ついた時は、上部枠体34の開き操作に連係して藁切り刃45(43,44)を扱室12の内周部(面)eから後退させることによって、前記細隙Sの縁部で藁切り刃45(43,44)に絡み付ついた多くの処理物を容易にむしり取ることができるようになっている。
【0025】
また、図11は、藁屑除去手段Rの第三実施例であり、この第三実施例では、藁屑除去手段Rを操縦部8から操作できるように構成している。更に詳しく説明すると、複数の藁切り刃45(43,44)をコの字状の断面を有するベース61に取付けて、このベース61にプレート状の摺動アーム62の基端部を一体的に固設すると共に、図中D矢印方向にベース61を摺動自在に案内する上下のガイド部材63a,63bを扱室フレーム33側に設け、更に摺動アーム62の先端部を上部枠体34の回動支点Pであるパイプ軸59に外嵌する回動パイプ60に固設した揺動アーム60aと連結している。尚、扱室12の内周部(面)には、第二実施例と同様な藁切り刃45(43,44)を自在に出入させることができる図示しない細隙(S)を設けている。
【0026】
一方、各種操作具を備える操縦部8の座席7左側後方のパネル8aには、藁屑除去手段Rを操作する操作レバー64を突設し、該操作レバー64の基部側にロッド65の一端を連結すると共に、このロッド65の他端を上述の回動パイプ60に固設した連係アーム60bと連結し、当該操作レバー64を図中F矢印方向に操作することにより藁切り刃45(43,44)を扱室12の内周部(面)eから進退自在に構成してあり、それによって第二実施例と同様に細隙(S)の縁部で藁切り刃45(43,44)に絡み付ついた多くの処理物を容易にむしり取ることができる。
【0027】
以上説明した藁屑除去手段Rの第一〜第三実施例によれば、藁切り刃43,44、45に付着した(絡み付いた)藁屑を、当該藁屑除去手段Rを介して直接藁切り刃43,44、45に触れることなく容易にむしり取って除去することができる。特に、処理物が藁切り刃43,44、45に絡み付き易い水分を多く含んだ湿潤度の高い濡れ材であっても、藁切り刃43,44、45に絡み付ついた藁屑を手作業で取り除かなくて済むようになる。そして、第三実施例では、藁屑除去手段Rを操縦部8から操作できるように構成したことによって、脱穀作業を中断することなく藁切り刃43,44、45に絡み付ついた藁屑の除去が行なえるので作業性が向上する。
【0028】
尚、上述した藁屑除去手段Rは、扱室12の内周部において扱胴14と一体に開閉する上部枠体34の回動支点P側、即ち扱室12の奥側に設けられる藁切り刃43,44、45に適用した場合を例に説明したが、扱室12の開口側であるフィードチェン13側に設けられる藁切り刃43´に当該藁屑除去手段Rを設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】コンバインの側面図。
【図2】コンバインの平面図。
【図3】脱穀装置の側断面図。
【図4】扱室及び処理室の斜視図。
【図5】扱室及び処理室の平面図。
【図6】扱室の背面図。
【図7】藁屑除去手段の第一実施例を示す要部斜視図。
【図8】藁屑除去手段の第二実施例(上部枠体閉状態)を示す扱室の背面図。
【図9】藁屑除去手段の第二実施例(上部枠体開状態)を示す扱室の背面図。
【図10】藁屑除去手段の第二実施例を示す要部斜視図。
【図11】藁屑除去手段の第三実施例(上部枠体閉状態)を示す扱室の背面図。
【符号の説明】
【0030】
8 操縦部
12 扱室
14 扱胴
14a 扱歯
43 藁切り刃
44 藁切り刃
45 藁切り刃
R 藁屑除去手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の扱歯(14a,・・)を外周に突設した扱胴(14)を扱室(12)内に回転自在に軸支すると共に、該扱室(12)内の一側に処理物を切断する藁切り刃(43,44,45)を備えたコンバインの脱穀装置において、前記藁切り刃(43,44,45)に付着した藁屑を取り除く藁屑除去手段(R)を設けたことを特徴とするコンバインの脱穀装置。
【請求項2】
前記藁屑除去手段(R)を操縦部(8)から操作できるように構成した請求項1に記載のコンバインの脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−100694(P2009−100694A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276492(P2007−276492)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】