説明

コンバイン

【課題】脱穀クラッチのアクチュエータを回転体から保護し、且つ左右の支持部材間の空間を有効に活用する。
【解決手段】機体フレーム2に、エンジン21と刈取部4の回動支点部を支持する左右一対の支持部材60L・60Rとを左右方向に並設し、該エンジン21とエンジン21側の支持部材60Rとの間に、該エンジン21から脱穀部5への動力伝達を断接するベルトテンション式の脱穀クラッチ55を配設したコンバイン1において、前記左右の支持部材60L・60Rの間に、前記脱穀クラッチ55の入切操作を行うアクチュエータとしての油圧シリンダ77とバッテリ90とを並べて配置し、該油圧シリンダ77をエンジン21側の支持部材60Rに設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体フレームに、エンジンと刈取部の回動支点部を支持する左右一対の支持部材とを左右方向に並設し、該エンジンとエンジン側の支持部材との間に、該エンジンから脱穀部への動力伝達を断接するベルトテンション式の脱穀クラッチを配設したコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンから脱穀部への動力伝達を脱穀クラッチで断接するコンバインは知られている(例えば、特許文献1参照。)。脱穀クラッチとしては、ベルトテンション式のクラッチが用いられ、そのアクチュエータでの入切操作に応じてテンションローラにより、エンジンの出力軸上の駆動プーリと脱穀入力軸上の従動プーリとを巻回するテンションベルトを、押圧して緊張させることで動力の伝達を可能とし、その押圧を解除して弛緩させることで動力の伝達を断つことができるように構成されていた。そして、この脱穀クラッチは、機体フレームの前部に左右方向に並設されたエンジンと、刈取部の回動支点部を支持する左右一対の支持部材との後方に配置されていた。
【特許文献1】特開2005−124415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のコンバインにおいては、脱穀クラッチのアクチュエータがプーリやベルトなどの回転体に近接した位置に配置されていたため、これらの回転体に接触して破損する恐れがあった。また、左右の支持部材の間にはバッテリが配設されているのみであり、その他の部材を配置する余地があった。そこで本発明では、脱穀クラッチのアクチュエータを回転体から保護し、且つ左右の支持部材間の空間を有効に活用することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、機体フレームに、エンジンと刈取部の回動支点部を支持する左右一対の支持部材とを左右方向に並設し、該エンジンとエンジン側の支持部材との間に、該エンジンから脱穀部への動力伝達を断接するベルトテンション式の脱穀クラッチを配設したコンバインにおいて、前記左右の支持部材の間に、前記脱穀クラッチの入切操作を行うアクチュエータとバッテリとを並べて配置し、該アクチュエータをエンジン側の支持部材に設けたものである。
【0006】
請求項2においては、前記アクチュエータとバッテリとの間に、該バッテリをアクチュエータ側側方および上方から覆うバッテリカバーを配設したものである。
【0007】
請求項3においては、前記左右の支持部材の間に、前記油圧シリンダとバッテリとを前方および上方から覆うカバーを配設したものである。
【0008】
請求項4においては、前記脱穀クラッチとエンジン側の支持部材との前方に、前記バッテリから延びるハーネスを案内するハーネスガイドを配設したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0010】
請求項1においては、前記機体フレーム前部の配置構造をコンパクトにして、左右の支持部材間の空間を有効活用できる。また、エンジン側の支持部材でエンジンや脱穀クラッチからアクチュエータを干渉しないように隔離して保護することができる。
【0011】
請求項2においては、前記アクチュエータとバッテリとの間を遮蔽して、油アクチュエータ側から油が漏れた場合の安全性の向上を図ることができる。また、バッテリの接点部分を保護することができ、ショート等を防止することができる。
【0012】
請求項3においては、アクチュエータやバッテリなどの設置部に排藁や塵埃や水などが侵入するのを防止して、これらを保護することができる。
【0013】
請求項4においては、アクチュエータを油圧式としたときの油圧ホースとハーネスを分けて固定することが可能となり、油圧ホースの振動によるハーネスの断線などの問題を防止できる。また、バッテリのハーネスを脱穀クラッチ前方に配置され、動力伝達の一部を構成するベルトから保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0015】
図1はコンバインの全体構成を示す側面図、図2はコンバインの全体構成を示す平面図、図3はコンバインの動力伝達機構の構成を示す図、図4は機体フレーム前部の構成を示す側面図、図5は脱穀クラッチ設置部の構成を示す側面図、図6は機体フレーム前部の構成を示す平面図、図7は機体フレーム前部の構成を示す正面図、図8はハーネスの配線構造を示す模式図、図9は刈取部のロック機構の構成を示す側面図である。
【0016】
まず、本発明の一実施例に係るコンバインの全体構成について説明する。
【0017】
図1、図2に示すように、コンバイン1は機体フレーム2をクローラ式走行装置3で支持し、該クローラ式走行装置3を機体フレーム2上に搭載したエンジン21で駆動させることにより、前進または後進走行可能に構成されている。そして、コンバイン1では、機体フレーム2の前部に穀稈を刈り取って機体後方へ搬送する刈取部4が設けられ、機体フレーム2の左側前後中途部に刈取部4からの刈取穀稈を脱穀する脱穀部5と、該脱穀部5で脱穀された穀粒を選別する選別部6とが上下に配設されている。機体フレーム2の後部には、脱穀部5で脱穀された穀稈を排藁として機外へ排出する排藁処理部7が設けられている。
【0018】
また、前記機体フレーム2の右側後部に選別部6から揚穀筒で搬送される穀粒を貯溜するグレンタンク8が設けられ、該グレンタンク8の後方から上方にかけてグレンタンク8内の穀粒を機体外部に排出する排出オーガ9が配設されている。そして、この排出オーガ9の縦オーガ9aを中心として、グレンタンク8が前部を機体側方へ開放回動できるように構成されている。グレンタンク8の前方で機体フレーム2の右側前部にはキャビン13内に操向ハンドル11や種々の操作レバーなどの操作装置や、運転席12などを備える運転操作部15が設けられ、該運転操作部15の下方にトランスミッション19やエンジン21が配設されている。
【0019】
次に、コンバイン1の動力伝達機構の構成について説明する。
【0020】
図3に示すように、コンバインの動力伝達機構においては、前記トランスミッション19とエンジン21とが機体フレーム2前部に前後方向に並べて配設されて、該エンジン21の出力軸に設けられた駆動プーリ25とトランスミッション19の入力軸に設けられた従動プーリ26とがベルト27で連結されている。これらのプーリ25・26とベルト27により動力がエンジン21からトランスミッション19に伝達されて、該トランスミッション19と連結されるクローラ式走行装置3が駆動可能とされている。
【0021】
前記トランスミッション19から一方向クラッチ29を介して突設された刈取駆動軸にはプーリ31が設けられており、該プーリ31と刈取入力軸に設けた刈取プーリ32とがベルト33で連結され、機体の前進走行時にのみ、これらのプーリ31・32とベルト33から刈取部4に備えられた引起装置や刈取装置、搬送装置などの各装置にエンジン21からの動力が伝達可能とされている。そして、刈取部4の各装置は刈取クラッチ34の入切操作により駆動または停止され、駆動時にはその駆動速度を車速と同調するように構成されている。
【0022】
また、エンジン21の出力軸には駆動プーリ35・41が設けられ、一方の駆動プーリ35から動力伝達機構36を介してグレンタンク8内に備えられた排出コンベア38と、該排出コンベア38に連動連結された排出オーガ9とにエンジン21からの動力が伝達可能とされている。この排出コンベア38及び排出オーガ9は、動力伝達機構36に備えられた排出クラッチ39の入切操作により駆動または停止されるように構成されている。
【0023】
他方の駆動プーリ41と脱穀入力軸上の従動プーリ42とはベルト43で連結され、これらのプーリ41・42とベルト43から動力伝達機構44を介して脱穀部5や選別部6、刈取部4の各装置に動力が伝達可能とされている。例えば、動力伝達機構44の脱穀プーリ45と脱穀部5に備えられた扱胴48のプーリ46とがベルト47で連結され、これらのプーリ45・46やベルト47により扱胴48にエンジン21からの動力が伝達可能とされている。
【0024】
また、前記動力伝達機構44の選別プーリ51から動力伝達機構52を介して選別部6に備えられた唐箕や、1番コンベアなどの搬送用コンベアにエンジン21からの動力が伝達可能とされている。そして、前記脱穀部5の扱胴48や選別部6の唐箕や搬送用コンベアなどは、ベルト43に設けられた脱穀クラッチ55の入切操作により駆動または停止されるように構成されている。
【0025】
さらに、前記従動プーリ42とともに脱穀入力軸に設けたプーリ56と、刈取プーリ32とともに刈取入力軸に設けたプーリ57とがベルト58で連結され、これらのプーリ56・57やベルト58からも刈取部4の各装置にエンジン21からの動力が別途伝達可能とされている。そして、刈取部4の各装置はベルト58に設けられた流込クラッチ59の入切操作により機体の前進走行や後進走行や停止に関係無く駆動または停止され、駆動時にはその駆動速度が一定となるように構成されている。
【0026】
次に、前記コンバイン1の動力伝達機構で、エンジン21から脱穀部5への動力伝達を断接する脱穀クラッチ55の構成について説明する。
【0027】
図4乃至図7に示すように、脱穀クラッチ55は、機体前部でエンジン21と、該エンジン21の左側方に配置された支持部材60L・60Rとの間に配置されている。この支持部材60L・60Rはその上部で刈取部4の回動支点部を支持するためのものであり、左右一対として機体フレーム2の前部上に左右方向に所定の間隔をとって立設され、それぞれの上端部の間に前記刈取入力軸を内装する刈取入力ケース61を横設して回動可能に支持し、該刈取入力ケース61を回動支点部としてこれに連結された刈取フレーム62で刈取部4全体を上下方向に昇降させることができるように構成されている。ここでの支持部材60Lは角管を台形状に連結して枠状に形成され、支持部材60Rは板体状に形成されている。
【0028】
脱穀クラッチ55はベルトテンション式クラッチからなり、エンジン21の出力上の駆動プーリ41と脱穀入力軸上の従動プーリ42とに巻回されるベルト43や、該ベルト43を緊張させるためのテンションローラ71や、該テンションローラ71をベルト43に対して近づくもしくは離れる方向に移動させるテンションアーム72などで構成されている。テンションローラ71は、駆動プーリ41と従動プーリ42との間でベルト43の下方に配置され、テンションアーム72の先端側に回転自在に支持されている。
【0029】
テンションアーム72は基端側で支点軸73の一端側に固設されて、該支点軸73を中心として回動可能とされて、先端側のテンションローラ71を上下方向に移動させることができるように構成されている。支点軸73はエンジン21側の右支持部材60Rを貫通して左右方向に延出されて、左右中央部で右支持部材60Rに軸受部材74を介して回転自在に支持されている。そして、左右の支持部材60L・60Rの間において、支点軸73の他端部に回動アーム75の基端側が固設されて、その先端側がリンク76を介して油圧式アクチュエータに枢結されている。
【0030】
油圧式アクチュエータは、たとえば本実施例のように油圧シリンダ77からなり、左右の支持部材60L・60Rの間で右支持部材60Rの上部に配設され、エンジン21や脱穀クラッチ55とは左右反対側に配置されている。この油圧シリンダ77はテンションアーム72および回動アーム75の支点軸73の上方に取付ステー78を介して取り付けられ、ピストンロッド77aを下方へ向けて上下伸縮可能とし、その先端をリンク76を介して回動アーム75と連結して、伸縮駆動時に回動アーム75を連動させ、その同軸上のテンションアーム72を回動させて脱穀クラッチ55をON/OFFできるように構成されている。
【0031】
また、油圧シリンダ77には電磁弁79が付設されて、該電磁弁79のソレノイドに制御回路を介してスイッチなどの操作手段が電気的に接続されている。操作手段は運転操作部15に配置され、その操作に応じてソレノイドに制御信号を送信して、電磁弁79を切り換えて、ピストンロッド77aを伸長または収縮させて、油圧シリンダ77を伸縮駆動させることができるように構成されている。
【0032】
こうして、脱穀クラッチレバー等の操作手段の操作が行われて、油圧シリンダ77が伸長駆動される場合には、回動アーム75が支点軸73を中心として下方へ回動して、該支点軸73上のテンションアーム72が上方へ回動し、テンションローラ71がベルト43に近づく方向に移動してこれを押圧する。このテンションローラ71の押圧によりベルト43が張力を得て緊張するために、脱穀クラッチ55が入状態となり、駆動プーリ41から従動プーリ42へ動力が伝達されるようになっている。
【0033】
一方、油圧シリンダ77が収縮駆動される場合には、回動アーム75が支点軸73を中心として上方へ回動して、該支点軸73上のテンションアーム72が下方へ回動し、テンションローラ71がベルト43から離れる方向に移動してこれの押圧を解除する。このテンションローラ71の押圧の解除によりベルト43が張力を得ず弛緩するために、脱穀クラッチ55が切状態となり、駆動プーリ41から従動プーリ42へ動力の伝達が断たれるようになっている。このように脱穀クラッチ55によって、エンジン21から脱穀部5への動力の伝達が断接可能となっている。
【0034】
また、前記脱穀クラッチ55は、電気系統の故障などにより操作手段にて電磁弁79の切換を制御できず、アクチュエータである油圧シリンダ77の伸縮駆動、つまり該脱穀クラッチ55の入切操作を行えなくなった場合に備えて、手動で電磁弁79を切り換えて、油圧シリンダ77を伸長または収縮駆動させ、該脱穀クラッチ55の入切操作を行うことができるように構成されている。
【0035】
すなわち、図4乃至図7に示すように、前記電磁弁79のスプールの一端に連結したプッシュピン79aが外部に露出するように設けられ、該プッシュピン79aを手動操作することよって、電磁弁79を切り換えることができるようになっている。なお、プッシュピン79aを設ける代わりに、スプールを外部に延長する構成としてもよい。そして、プッシュピン79aを手動操作するために、その手動操作手段としてロッド81や、該ロッド81の一端に枢結されたアーム82や、該ロッド81の他端に設けられたロッド固定具83などが設けられている。
【0036】
前記アーム82は電磁弁79の下方に配置され、アーム82の中央部が支持部材60Rに固設した取付ステー78より突設した支点軸85に回動自在に支持されている。該アーム82の上側にプッシュピン79aと対向してこれを押圧する押圧部82aが設けられ、下側にはロッド81の後端側と枢結されている。該ロッド81は前後方向に略水平に延設されて、前端側を左右の支持部材60L・60Rの前端部間に横設された支持ステー84の開口部に挿通して、該支持ステー84に前後方向に摺動可能に支持されている。
【0037】
こうして、ロッド81が支持ステー84に対して前方に摺動されると、アーム82が支点軸85を中心として押圧部82aがプッシュピン79aに近づく方向に回動され、ロッド81が支持ステー84に対して後方に摺動されると、アーム82が支点軸85を中心として押圧部82aがプッシュピン79aから離れる方向に回動されるようになっている。そして、ロッド81の前端側に形成されたネジ溝にロッド固定具83としての蝶ナットを螺合することで、該ロッド81を支持ステー84に固定して、その摺動位置、つまりアーム82の回動位置をいずれかの位置で保持することができるように構成されている。
【0038】
このような構成において、脱穀クラッチレバー等の操作手段を用いて、電磁弁79を切り換える場合には、ロッド81は後方側に摺動された位置で支持ステー84にロッド固定具83により固定されて、アーム82の押圧部82aがプッシュピン79aから離間させた位置に保持される。これによって、通常の作業時には電磁弁79は手動操作手段により切り換えられない状態とされる。
【0039】
そして、電気系統の故障などにより電気的に電磁弁79を切り換えることができない場合には、手動操作手段が用いられることになり、ロッド固定具83によるロッド81の固定状態が解除されて、即ち蝶ナットが緩められて、ロッド81が通常時の位置から前方側に摺動され、アーム82が支点軸85を中心としてプッシュピン79aに近づく方向に回動されて、これにより押圧部82aでプッシュピン79aが押圧される。こうして、電磁弁79が切り換えられる。
【0040】
したがって、油圧シリンダ77を手動操作手段の操作前の伸長または収縮駆動状態から反対の状態に駆動させて、脱穀クラッチ55の入切状態を変更することができる。つまり、電磁弁79の切換を電気的に制御することができない場合でも、手動操作手段を用いて電磁弁79を手動で切り換え、油圧シリンダ77を一時的に伸長または収縮駆動させて、脱穀クラッチ55の入切操作を行うことが可能となる。
【0041】
続いて、機体フレーム2前部における配置構造について説明する。
【0042】
図4乃至図7に示すように、脱穀クラッチ55は前述のように構成されて、機体フレーム2前部でエンジン21と、該エンジン21側の右支持部材60Rとの間に設けられている。そして、この脱穀クラッチ55の入切操作を行うアクチュエータとしての油圧シリンダ77が、右支持部材60Rの左支持部材60L側上部に取付ステー78を介して取り付けられて、右支持部材60Rを挟んでエンジン21や脱穀クラッチ55の左右反対側となるように左右の支持部材60L・60Rの間に配置されている。
【0043】
言い換えれば、エンジン21や脱穀クラッチ55と、油圧シリンダ77との間に右支持部材60Rが配置されている。このようにして、右支持部材60Rにてその右側に配置されたエンジン21の出力軸上の駆動プーリ41や脱穀クラッチ55のベルト43などの回転体から、左側に配置された油圧シリンダ77や、該油圧シリンダ77から前下方に延びる油圧ホース87・88などが隔離されている。
【0044】
そして、左右の支持部材60L・60Rの間において、油圧シリンダ77とバッテリ90とが左右に並べて設けられている。すなわち、油圧シリンダ77が右支持部材60R寄りに設けられ、バッテリ90が左支持部材60L寄りに設けられている。バッテリ90は右支持部材60Rに取り付けられた油圧シリンダ77の左下方に所定間隔をとって配置され、左支持部材60Lの下方を通って左右方向に横長に配置されて、機体フレーム2上に固定されている。
【0045】
このように機体フレーム2に、エンジン21と刈取部4の回動支点部を支持する左右一対の支持部材60L・60Rとを左右方向に並設し、該エンジン21とエンジン21側の支持部材60Rとの間に、該エンジン21から脱穀部5への動力伝達を断接するベルトテンション式の脱穀クラッチ55を配設したコンバイン1において、前記左右の支持部材60L・60Rの間に、前記脱穀クラッチ55の入切操作を行うアクチュエータとしての油圧シリンダ77とバッテリ90とを並べて配置し、該油圧シリンダ77をエンジン21側の支持部材60Rに設けたことことにより、機体フレーム2前部の配置構造をコンパクトにして、両支持部材60L・60R間の空間を有効活用できる。また、支持部材60Rでエンジンや脱穀クラッチ55から油圧シリンダ77を干渉しないように隔離して保護することができる。
【0046】
また、油圧シリンダ77とバッテリ90との間には、該バッテリ90を油圧シリンダ77側側方および上方から覆うバッテリカバー91が配設されている。バッテリカバー91は板状の垂直部91aと水平部91bとを備えて正面視略逆L字形状に構成され、垂直部91aをバッテリ90の油圧シリンダ77側である右側に配置し、水平部91bをバッテリ90の上方に配置して、これらにより右上方に配置された油圧シリンダ77側の二方向から覆われている。
【0047】
バッテリカバー91は左右の支持部材60L・60R間で垂直部91aの下端側と、水平部91bの左前側および後端側とで固定されている。すなわち、垂直部91aの下端側を水平に折り曲げて油圧シリンダ77とバッテリ90との間で機体フレーム2上の固定ステー92に固定し、水平部91bの左前側を左フレーム60Lの右支持部材60R側上部に固設された固定ステー93に固定し、水平部91bの後端側を左右の支持部材60L・60Rの上部間に横設された連結フレーム94に固設された固定ステー95に固定することで、カバー全体として固定されている。
【0048】
このように、前記油圧シリンダ77とバッテリ90との間に、該バッテリ90を油圧シリンダ77側側方および上方から覆うバッテリカバー91を配設したことにより、油圧シリンダ77とバッテリ90との間を遮蔽して、油圧シリンダ77側から油が漏れた場合の安全性の向上を図ることができる。また、バッテリ90の接点部分を保護することができ、ショート等を防止することができる。なお、本実施例では左右の支持部材60L・60Rの間において、バッテリ90をバッテリカバー91で油圧シリンダ77側側方と上方からのみ覆うように構成しているが、バッテリカバー91に追加のカバーを取り付けるなどして前方や後方から覆うように構成することもできる。
【0049】
また、前記左右の支持部材60L・60Rの間では、油圧シリンダ77やバッテリ90を前方および上方から覆うカバー98が設けられている。カバー98はゴム製の板材からなり、左右の支持部材60L・60Rの間隔よりも若干大きい程度の横幅をもって構成されている。そして、左右の支持部材60L・60Rの前部および上部の形状に沿ってその前下方から後上方に延出され、後端側を両支持部材60L・60Rの上部間に横設した連結フレーム94に固定する一方、前端側を機体フレーム2付近に配置して、両支持部材60L・60R間の空間を前方および上方から覆うようになっている。
【0050】
このように、前記左右の支持部材60L・60Rの間に、前記油圧シリンダ77とバッテリ90とを前方および上方から覆うカバー98を配設したことにより、油圧シリンダ77やバッテリ90などの設置部に排藁や塵埃や水などが侵入するのを防止して、これらを保護することができる。
【0051】
また、エンジン21側の左支持部材60Lと脱穀クラッチ55との前方に、前記バッテリ90から延びるハーネス100を案内するハーネスガイド99が設けられている。ハーネスガイド99は側面視コ字状に形成されて、開放側が前方を向くように左右方向に配置され、右支持部材60Rの前方付近から脱穀クラッチ55の前方を経由して、エンジン21の出力軸上の駆動プーリ25とトランスミッション19の入力軸上の従動プーリ26とに巻回されるベルト27の下方を通ってエンジン21本体の前方付近まで延出されている。このハーネスガイド99の左端側は右支持部材60Rの前下部に固定され、右端側は機体フレーム2に固定されている。
【0052】
そして、ハーネスガイド99の内側に左右の支持部材60L・60Rの間から右支持部材60Rの前方を通ってエンジン21側へ延出されるバッテリ90に接続されるハーネス100が挿通されている。さらに、ハーネスガイド99の外側下方には油圧シリンダ77の油圧ホース87・88が当該ハーネスガイド99に沿って同じくエンジン21側へ延設されている。こうして、ハーネスガイド99にてハーネス100が案内されつつ、油圧ホース87・88とともにベルト27から隔離され、さらにはハーネス100と油圧ホース87・88とが互いに隔離されている。
【0053】
このように、前記脱穀クラッチ55とエンジン21側の支持部材60Rとの前方に、前記バッテリ90から延びるハーネス100を案内するハーネスガイド99を配設したことにより、バッテリ90のハーネス100と油圧シリンダ77の油圧ホース87・88とを分けて固定することが可能となり、油圧ホース87・88の振動によるハーネス100の断線などの問題を防止することができる。また、バッテリ90のハーネス100や油圧シリンダ77の油圧ホース87・88を脱穀クラッチ55前方に配置されるエンジン21からトランスミッション19へ動力を伝達するためのベルト27から保護することができる。
【0054】
また、図8に示すように、前記バッテリ90から延びるハーネス100は、前述のようにエンジンの前方を通ってトランスミッションに配線されるとともに、脱穀部5の前側を経由して刈取部4や運転操作部15に至るように配線されている。これにより、本実施例のようにエンジン21のマフラ102を上方へ延設した場合に、運転操作部15に延ばすハーネス100を高温となるマフラ102から避けて配置することが可能となり、熱影響によるハーネス100の破損を防止することができる。また、バッテリ90と運転操作部15との間のハーネス100の配線を単純なものにして、組立性能の改善を図ることができる。
【0055】
最後に、左右の支持部材60L・60Rでの刈取部4の支持部の構成について説明する。
【0056】
図6、図7、図9に示すように、左右の支持部材60L・60Rにおいては、一方の左支持部材60L上部に刈取部4の回動支点部となる刈取入力ケース61の左側を支持する左支持部材111が、軸心を鉛直方向に向けた軸部111aで回動自在に設けられ、他方の右支持部材60R上部に刈取入力ケース61の右側を支持する右支持部材115が固設されている。そして、左右の支持部材111・115に支持された刈取入力ケース61のロック機構によるロックが解除されることで、刈取入力ケース61が左支持部材111の軸部111aを中心として左右略水平方向に回動可能とされている。つまり、刈取入力ケース61で支持される刈取部4が機体左側に側方回動可能とされている。
【0057】
ロック機構は右支持部材115に設けられ、刈取入力ケース61の右側をロック部材116で右支持部材115に固定状態にロックすることができるように構成されている。右支持部材115とロック部材116とはそれぞれ刈取入力ケース61の外周形状に沿った凹部115a・116aを有し、互いの凹部115a・116aが対向するように上下に配置されて、その凹部115a・116a間に刈取入力ケース61を挟持することで、右支持部材115に固定するように構成されている。
【0058】
ロック部材116は右支持部材115に支点軸117にて回動自在に支持されて、該支点軸117を中心として上方へ回動する際に、刈取入力ケースを挟持して固定状態から開放することができるようになっている。そして、ロック部材116の回動を操作する操作手段として、ロックレバー120が運転操作部15に設けられている。ロックレバー120は上下方向に延びるように配置され、下端側をロック部材106の支点軸117に固定し、上端側をロック部材106の上方に配置したレバーガイド121から突出して、該レバーガイド121のガイド溝に沿って支点軸117を中心として前後方向に回動可能とされている。
【0059】
このように構成することにより、ロックレバー120が前方へ回動操作されると、ロック部材116が支点軸117を中心として下方へ回動し、右支持部材115とで刈取入力ケース61が挟持されて固定状態にロックされ、刈取入力ケース61の回動が不能となる。一方、ロックレバー120が後方へ回動されると、ロック部材116が支点軸117を中心として上方へ回動し、右支持部材115とで挟持して固定した状態から刈取入力ケース61が開放されて、ロックが解除され、刈取入力ケース61の回動が可能となる。つまり、刈取部4を側方回動させることが可能となる。
【0060】
そしてこのように刈取部4がロック機構をもって側方回動される構成において、前記ロック部材116にトランスミッション19の刈取駆動軸上のプーリ31と、刈取入力ケース61の側方に配置される刈取入力軸上の刈取プーリ32とに巻回されるベルト33が、刈取プーリ32から外れることを防止するためのベルト押え125が設けられている。ベルト押え125は、刈取入力軸の軸心と平行に配置した軸状の押え部125aと、該押え部125aをロック部材116に連結する連結部125bとで構成され、押え部125aを刈取プーリ32の外周部よりもベルト33の略厚さ分外側に、刈取プーリ32およびベルト33に接触しないように配置して、ベルト33を上方から押えることができるようになっている。
【0061】
これにより、刈取入力ケース61がロック部材116でロックされて、刈取部4が機体前部に配置されるときには、ベルト押え125を刈取プーリ32およびベルト33に対して最適な位置に設置して、刈取プーリ32からベルト33が外れることを確実に防止することができる。また、ロックレバー120を回動操作してロック部材116による刈取入力ケース61のロックを解除し、刈取部4を側方回動したときには、ロック部材116の上方への回動にともなってベルト押え125の押え部125aも上方へ移動させることができるため、ベルト押え125が刈取プーリ32の移動の妨げになることがなくなり、刈取部4の側方回動を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】コンバインの全体構成を示す側面図。
【図2】コンバインの全体構成を示す平面図。
【図3】コンバインの動力伝達機構の構成を示す図。
【図4】機体フレーム前部の構成を示す側面図。
【図5】脱穀クラッチ設置部の構成を示す側面図。
【図6】機体フレーム前部の構成を示す平面図。
【図7】機体フレーム前部の構成を示す正面図。
【図8】ハーネスの配線構造を示す模式図。
【図9】刈取部のロック機構の構成を示す側面図。
【符号の説明】
【0063】
1 コンバイン
2 機体フレーム
4 刈取部
21 エンジン
55 脱穀クラッチ
60L 支持部材
60R 支持部材
77 油圧シリンダ(アクチュエータ)
90 バッテリ
91 バッテリカバー
98 カバー
99 ハーネスガイド
100 ハーネス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームに、エンジンと刈取部の回動支点部を支持する左右一対の支持部材とを左右方向に並設し、該エンジンとエンジン側の支持部材との間に、該エンジンから脱穀部への動力伝達を断接するベルトテンション式の脱穀クラッチを配設したコンバインにおいて、前記左右の支持部材の間に、前記脱穀クラッチの入切操作を行うアクチュエータとバッテリとを並べて配置し、該アクチュエータをエンジン側の支持部材に設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記アクチュエータとバッテリとの間に、該バッテリをアクチュエータ側側方および上方から覆うバッテリカバーを配設したことを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記左右の支持部材の間に、前記油圧シリンダとバッテリとを前方および上方から覆うカバーを配設したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記脱穀クラッチとエンジン側の支持部材との前方に、前記バッテリから延びるハーネスを案内するハーネスガイドを配設したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−99593(P2008−99593A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284366(P2006−284366)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】