説明

コンバイン

【課題】ノッタ装置による結束作業時は、ノッタ能力限界警報を行うことにより、ノッタ装置の過負荷を事前に防ぎ、安全機構におけるシャーピンの破断を回避し、また、過負荷の惧れがないバラ落し作業時には、不要な警報による作業性の低下を回避する。
【解決手段】排藁搬送経路の終端部にノッタ装置10を備え、該ノッタ装置10に供給される排藁を結束して放出する結束作業と、ノッタ装置10に供給される排藁を結束せずに放出するバラ落し作業とを選択可能なコンバイン1において、排藁搬送経路から供給される排藁の量がノッタ装置10の結束処理能力を超える可能性がある場合に警報を行うと共に、ノッタ装置10がバラ落し作業状態であると判断したとき、ノッタ能力限界警報を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排藁搬送経路の終端部にノッタ装置を備えるコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンバインは、圃場を走行しながら穀稈を刈り取り、刈り取った穀稈から穀粒を脱穀する収穫作業に使用される。脱穀済みの排藁は、排藁搬送装置によって機体後部まで搬送されると共に、機体後部に設けられる排藁処理装置で後処理された後に機外に放出される。排藁処理装置としては、排藁を細断するカッタ装置や、排藁を結束するノッタ装置が知られている。
【0003】
一般的なコンバインでは、カッタ装置が標準装備されており、オプションであるノッタ装置をカッタ装置の後部に選択的に装着できるようになっている。また、カッタ装置及びノッタ装置を備えるコンバインでは、カッタ装置の上部に設けられる排藁切換板の姿勢切換にもとづいて、カッタ装置による細断作業と、ノッタ装置による結束作業との切換えが行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ノッタ装置は、排藁搬送装置から供給される排藁を掻き込むパッカと、掻き込まれた排藁が所定量になったことを感知するドアと、ドアの感知に応じて排藁を結束するニードル及び結節機構と、結束された排藁束を機外に放出するスイーパとを備えて構成されている。また、この種のノッタ装置では、排藁を結束せずに放出するバラ落し作業も可能である。例えば、ノッタ装置のドアを外すと、ニードル、結節機構及びスイーパが休止状態となるので、ノッタ装置に供給される排藁は、パッカの掻き込み作用のみで後方に送られ、後部の放出口からバラの状態で放出される。
【0005】
排藁処理装置は、通常、コンバインのエンジンから供給される動力で動作するようになっている。排藁処理装置には、処理能力以上の排藁が供給された際の過負荷を避けるために、各種の安全機構が設けられており、例えば、排藁処理装置に動力を伝動する伝動軸の下手側と上手側とをシャーピンにより連結し、排藁処理装置に規定以上の駆動トルクが発生した際にはシャーピンを破断することにより動力を遮断して、排藁処理装置の過負荷を防いでいる(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献l】特開平7−246019号公報
【特許文献2】実用新案登録第2596195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年のコンバインでは、刈取り及び脱穀作業の高速化が図られており、排藁も高速に処理されるようになってきている。例えば、カッタ装置による細断作業時や、ノッタ装置によるバラ落し作業時は、最高速で刈取り作業を行った場合でも、過負荷を生じることなく排藁処理を継続可能であるが、ノッタ装置による結束作業時は、多量の排藁が搬送された場合、排藁の結束が正常にできなくなくなり、ノッタ装置が過負荷になる場合がある。そして、ノッタ装置が過負荷になった際には、安全機構が作動してノッタ装置を停止させることになるが、安全機構が作動した場合には、刈取り作業を中断して安全機構の復帰、すなわち、破損したシャーピンを交換しなければならないため、刈取り作業を大幅に遅延させるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、排藁搬送経路の終端部にノッタ装置を備え、該ノッタ装置に供給される排藁を結束して放出する結束作業と、ノッタ装置に供給される排藁を結束せずに放出するバラ落し作業とを選択可能なコンバインにおいて、前記排藁搬送経路から供給される排藁の量がノッタ装置の結束処理能力を超える可能性がある場合に警報を行うノッタ能力限界警報手段と、ノッタ装置がバラ落し作業状態であると判断したとき、ノッタ能力限界警報手段による警報を解除するノッタ能力限界警報解除手段と、を備えることを特徴とする。このようにすると、ノッタ装置による結束作業時は、排藁搬送経路から供給される排藁の量がノッタ装置の結束処理能力を超える可能性がある場合に警報が発せられるので、ノッタ装置の過負荷を事前に防ぎ、安全機構におけるシャーピンの破断を回避できる。しかも、過負荷の惧れがないバラ落し作業時には、上記の警報が解除されるので、不要な警報による作業性の低下も回避することができる。
また、前記ノッタ装置による結束作業に際し、根揃え板の自動スライド制御により排藁の根揃えを行う根揃え装置と、前記根揃え板の自動スライド制御をON/OFFする自動切換スイッチとを備え、前記ノッタ能力限界警報解除手段は、自動切換スイッチがOFFのとき、バラ落し作業状態であると判断することを特徴とする。このようにすると、センサなどを追加しなくても、バラ落し作業状態を正確に判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1はコンバインであって、該コンバイン1は、穀稈を刈取る前処理部2と、刈り取った穀稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部3と、選別した穀粒を貯留する穀粒タンク4と、脱穀済みの排藁を機体後部の後処理部5まで搬送する排藁搬送装置6と、運転席や各種の操作具が配置される操縦部7と、クローラ式の走行部8とを備えて構成されている。
【0009】
図2〜図5に示すように、後処理部5には、排藁を細断するカッタ装置9と、排藁を結束又はバラ落しするノッタ装置10とが前後に並ぶ状態で設けられている。カッタ装置9の上方開口部には、開閉自在な排藁切換板11が設けられている。図2に示すように、排藁切換板11を上げて上方開口部が開いた状態では、排藁搬送装置6から供給される排藁をカッタ装置9内に導入して細断することができ、また、図3及び図4に示すように、排藁切換板11を下げて上方開口部が閉じた状態では、排藁搬送装置6から供給される排藁をノッタ装置10に導くことができる。
【0010】
図6に示すように、排藁切換板11には、リンク機構12を介してノッタクラッチ13が連動連結されており、排藁切換板11を上げて上方開口部が開いた状態では、ノッタクラッチ13が切られるが、排藁切換板11を下げて上方開口部が閉じた状態では、ノッタクラッチ13が入りとなり、ノッタ装置10に対する動力供給が行われるようになっている。また、リンク機構12の近傍には、藁作業切換スイッチ14が配置されており、排藁切換板11の姿勢切換に応じてON/OFFされる。
【0011】
ノッタ装置10は、排藁搬送装置6から供給される排藁を掻き込むパッカ15と、掻き込まれた排藁が所定量になったことを感知するドア16と、ドア16の感知に応じて排藁を結束するニードル17及び結節機構18と、結束された排藁束を機外に放出するスイーパ19とを備えて構成されている。このノッタ装置10では、排藁を結束せずに放出するバラ落し作業も可能である。例えば、図4に示すように、ノッタ装置10のドア16を外すと、ニードル17、結節機構18及びスイーパ19が休止状態となるので、ノッタ装置10に供給される排藁は、パッカ15の掻き込み作用のみで後方に送られ、後部の放出口からバラの状態で放出される。
【0012】
図5及び図7に示すように、ノッタ装置10には、結束作業に際して排藁の根揃えを行う根揃え装置20が設けられている。根揃え装置20は、ノッタ装置10のフレーム21に左右スライド自在に設けられる根揃え装置本体22と、根揃え装置本体22を左右移動させる移動モータ23と、根揃え装置本体22の左右スライドを許容しつつ、根揃え装置本体22に動力を伝動する伝動軸(六角軸)24と、根揃え装置本体22に揺動自在に設けられ、伝動軸24の動力で揺動される根揃え板25と、根揃え装置本体22に設けられるメインセンサ26と、根揃え装置本体22に設けられる左右一対の株元位置検出センサ27L、27Rと、排藁の株元位置に応じて根揃え板25(根揃え装置本体22)を自動的にスライド制御する根揃え制御部28と、根揃え板25の自動スライド制御をON/OFFする自動切換スイッチ29と、根揃え板25(根揃え装置本体22)を手動でスライド操作する手動操作用スイッチ30L、30Rとを備えて構成されている。
【0013】
根揃え制御部28は、藁作業切換スイッチ14がノッタ側で、かつ、自動切換スイッチ29がONの場合、排藁供給に伴うメインセンサ26のONに応じて、根揃え板25の自動スライド制御を開始する。自動スライド制御は、株元位置検出センサ27L、27Rの検出信号にもとづいて行われるものであり、左右の株元位置検出センサ27L、27R間に排藁の株元が位置するように、移動モータ23を正逆駆動制御し、根揃え板25を排藁の株元に接触させる。具体的には、左右の株元位置検出センサ27L、27RがOFFのときは、根揃え板25を右側に移動させ、左右の株元位置検出センサ27L、27RがONのときは、根揃え板25を左側に移動させ、右側の株元位置検出センサ27RのみがONのときは、根揃え板25の左右移動を停止させる。
【0014】
根揃え制御部28は、自動切換スイッチ29がOFFの場合、根揃え板25を左側のリミット位置に移動させる。その理由は、ノッタ装置10によるバラ落し作業に際し、根揃え板25が排藁に抵抗を与えないようにするためである。これにより、バラ落し作業に際して排藁を平行に落下させることが可能になる。
【0015】
図7に示すように、コンバイン1には、本機制御部31が設けられている。本機制御部31の入力側には、コンバイン1の車速を検出する車速センサ32と、排藁搬送装置6やノッタ装置10への動力伝動状態を検出する作業機クラッチスイッチ33と、主変速レバー(図示せず)の変速操作位置を検出する主変速レバーポテンショ34と、前述した藁作業切換スイッチ14及び自動切換スイッチ29が接続されており、出力側には、ホーン35と、排藁詰まりランプ36とが接続されている。
【0016】
図8に示すように、本機制御部31では、排藁搬送装置6から供給される排藁の量がノッタ装置10の結束処理能力を超える可能性がある場合に警報を行うノッタ能力限界警報制御(ノッタ能力限界警報手段)が実行される。具体的には、排藁搬送装置6からノッタ装置10に供給される排藁の量を車速にもとづいて判断するとともに、車速が所定の警報速度を超えた場合に、ホーン35の断続音や、排藁詰まりランプ36の点滅によって、その旨をオペレータに報知するものである。このような警報を行うにあたり、本発明のコンバイン1では、ノッタ装置10がバラ落し作業状態であるか否かを判断し、該判断結果がYESの場合、ノッタ能力限界警報を解除するようになっている(ノッタ能力限界警報解除手段)。このようにすると、ノッタ装置10による結束作業時は、排藁搬送装置6から供給される排藁の量がノッタ装置10の結束処理能力を超える可能性がある場合に警報が発せられるので、ノッタ装置10の過負荷を事前に防ぎ、安全機構におけるシャーピンの破断を回避できる一方で、過負荷の惧れがないバラ落し作業時には、上記の警報を解除し、不要な警報による作業性の低下を回避することができる。
【0017】
本実施形態のコンバイン1のように、ノッタ装置10による結束作業に際し、根揃え板25の自動スライド制御により排藁の根揃えを行う根揃え装置20と、根揃え板25の自動スライド制御をON/OFFする自動切換スイッチ29とを備える場合は、自動切換スイッチ29のOFFにもとづいてバラ落し作業状態を判断し、ノッタ能力限界警報を解除することが好ましい。その理由は、センサなどを追加しなくても、バラ落し作業状態を正確に判断することができるからである。
【0018】
次に、ノッタ能力限界警報制御の具体的な制御手順について、図8を参照して説明する。この図に示すように、ノッタ能力限界警報制御では、まず、排藁処理がカッタ装置9、ノッタ装置10のいずれで行われるかを判断する(S1)。この判断は、排藁切換板11の姿勢切換を検出する藁作業切換スイッチ14のON/OFFにもとづいて行うことができる。そして、藁作業切換スイッチ14のON/OFFにもとづいてカッタ装置9が使用されると判断した場合は、警報を行うことなく上位ルーチンへ復帰する。
【0019】
一方、藁作業切換スイッチ14のON/OFFにもとづいてノッタ装置10が使用されると判断した場合は、結束作業、バラ落し作業のいずれが行われるかを判断する(S2:ノッタ能力限界警報解除手段)。この判断は、前述したように、根揃え板25の自動スライド制御をON/OFFする自動切換スイッチ29の切換状態にもとづいて行うことができる。そして、バラ落し作業状態であると判断した場合は、警報を行うことなく上位ルーチンへ復帰する。
【0020】
一方、結束作業状態であると判断した場合は、ノッタ装置10が作動状態であるか否かを判断する(S3、S4)。この判断は、作業機クラッチスイッチ33及び主変速レバーポテンショ34の検出信号にもとづいて行うことができる。つまり、作業機クラッチスイッチ33がONで、かつ、主変速レバーが前進領域である場合に、ノッタ装置10が作動状態であると判断でき、それ以外の場合は、ノッタ装置10が非作動状態であると判断することができる。そして、ノッタ装置10が非作動状態であると判断した場合は、警報を行うことなく上位ルーチンへ復帰する。
【0021】
一方、ノッタ装置10が作動状態であると判断した場合は、現在の車速をチェックし(S5)、現在の車速が前述した警報速度を超えると判断した場合は、排藁搬送装置6から供給される排藁の量がノッタ装置10の結束処理能力を超える可能性があることを所定の警報によってオペレータに報知する(S6、S7:ノッタ能力限界警報手段)。具体的には、排藁詰まりランプ36の点滅と、ホーン35の断続音によって、その旨をオペレータに報知する。
【0022】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、排藁搬送経路の終端部にノッタ装置10を備え、該ノッタ装置10に供給される排藁を結束して放出する結束作業と、ノッタ装置10に供給される排藁を結束せずに放出するバラ落し作業とを選択可能なコンバイン1において、排藁搬送経路から供給される排藁の量がノッタ装置10の結束処理能力を超える可能性がある場合に警報を行うと共に、ノッタ装置10がバラ落し作業状態であると判断したとき、ノッタ能力限界警報を解除するようにしたので、結束作業時には、ノッタ装置10の過負荷を事前に防ぎ、安全機構におけるシャーピンの破断を回避できる一方で、過負荷の惧れがないバラ落し作業時には、不要な警報による作業性の低下を回避することができる。
【0023】
また、本実施形態のコンバイン1は、ノッタ装置10による結束作業に際し、根揃え板25の自動スライド制御により排藁の根揃えを行う根揃え装置20と、根揃え板25の自動スライド制御をON/OFFする自動切換スイッチ29とを備えており、自動切換スイッチがOFFのとき、バラ落し作業状態であると判断するので、センサなどを追加しなくても、バラ落し作業状態を正確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】カッタ装置による細断作業状態を示す後処理部の側面図である。
【図3】ノッタ装置による結束作業状態を示す後処理部の側面図である。
【図4】ノッタ装置によるバラ落し作業状態を示す後処理部の側面図である。
【図5】ノッタ装置の背面図である。
【図6】排藁切換板、ノッタクラッチ及び排藁切換スイッチの連繋構造を示す平面図である。
【図7】制御部の入出力を示すブロック図である。
【図8】ノッタ能力限界警報制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
1 コンバイン
5 後処理部
6 排藁搬送装置
9 カッタ装置
10 ノッタ装置
11 排藁切換板
14 藁作業切換スイッチ
15 パッカ
16 ドア
20 根揃え装置
25 根揃え板
26 メインセンサ
27L 株元位置検出センサ
27R 株元位置検出センサ
28 根揃え制御部
29 自動切換スイッチ
31 本機制御部
32 車速センサ
35 ホーン
36 排藁詰まりランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排藁搬送経路の終端部にノッタ装置を備え、該ノッタ装置に供給される排藁を結束して放出する結束作業と、ノッタ装置に供給される排藁を結束せずに放出するバラ落し作業とを選択可能なコンバインにおいて、
前記排藁搬送経路から供給される排藁の量がノッタ装置の結束処理能力を超える可能性がある場合に警報を行うノッタ能力限界警報手段と、
ノッタ装置がバラ落し作業状態であると判断したとき、ノッタ能力限界警報手段による警報を解除するノッタ能力限界警報解除手段と、を備える
ことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記ノッタ装置による結束作業に際し、根揃え板の自動スライド制御により排藁の根揃えを行う根揃え装置と、
前記根揃え板の自動スライド制御をON/OFFする自動切換スイッチとを備え、
前記ノッタ能力限界警報解除手段は、自動切換スイッチがOFFのとき、バラ落し作業状態であると判断する
ことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−22243(P2009−22243A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190760(P2007−190760)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】