説明

コンバイン

【課題】脱穀部入口部を照らす作業灯が備えられたコンバインにおいて、排出オーガ(横オーガ筒)の位置に拘わらず、脱穀入口部周辺を広範囲に照らすことができるようにする。
【解決手段】機体の前部で茎稈を刈り取る前処理部2と、脱穀入口部3aを介して導入される茎稈から穀粒を脱穀する脱穀部3と、脱穀部3の右側に配置される運転部7と、運転部7を覆うキャビン10とを備えるコンバイン1において、キャビン10の左側上部に、脱穀入口部3aの周辺を照らすための作業灯26を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀入口部周辺を照らす作業灯が備えられたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
早朝、夕暮れ時、夜間などにおける刈り取り作業や手扱作業を考慮し、脱穀入口部周辺を照らす作業灯が備えられたコンバインが知られている。例えば、特許文献1に記載されるコンバインでは、運転部の左側に収納される排出オーガ(横オーガ筒)に作業灯を設けて、脱穀入口部周辺を照らすようにしており、また、特許文献2に記載されるコンバインでは、脱穀入口部の上方近傍に作業灯を設けて、脱穀入口部周辺を照らすようにしている。
【特許文献1】特開平8−256578号公報
【特許文献2】特開2006−25750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に示されるように、排出オーガ(横オーガ筒)に作業灯を設けた場合には、特許文献2に示されるように、脱穀入口部の上方近傍に作業灯を設ける場合に比べ、作業灯を高い位置に設置できるので、脱穀入口部周辺を広範囲に照らすことができるという利点がある反面、排出オーガ(横オーガ筒)を収納させた状態でなければ、脱穀入口部を照らすことができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、機体の前部で茎稈を刈り取る前処理部と、脱穀入口部を介して導入される茎稈から穀粒を脱穀する脱穀部と、脱穀部の右側に配置される運転部と、運転部を覆うキャビンとを備えるコンバインにおいて、前記キャビンの左側上部に、脱穀入口部周辺を照らすための作業灯を設けたことを特徴とする。このようにすると、排出オーガ(横オーガ筒)の位置に拘わらず、脱穀入口部周辺を広範囲に照らすことができる。
また、前記キャビンの上部を樹脂製のルーフ部材で形成すると共に、該ルーフ部材の左側面部に前記作業灯を内装したことを特徴とする。このようにすると、ルーフ部材を利用して作業灯を保護できるだけでなく、作業灯を露出状態で設ける場合に比べて外観品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1〜図4において、1は自脱型のコンバインであって、該コンバイン1は、機体の前部で茎稈を刈り取る前処理部2と、刈り取った茎稈から穀粒を脱穀して選別する脱穀部3と、選別した穀粒を貯留する穀粒タンク4と、穀粒タンク4内の穀粒を機外に排出する排出オーガ5と、脱穀済みの排稈を後処理する後処理部6と、オペレータが搭乗する運転部7と、クローラ式の走行部8とを備えて構成されている。
【0006】
自脱型である本実施形態のコンバイン1では、脱穀部3が機体の左側オフセット位置に配置されており、機体の左側部に沿って設けられる脱穀フィードチェン9によって茎稈の株元側を挟持搬送しながら、茎稈の穂先側のみを脱穀部3の内部(扱室)に供給して脱穀を行うようになっている。そして、脱穀部3が機体の左側オフセット位置に配置されることから、運転部7は、機体の左右中央位置ではなく、機体の右側オフセット位置、つまり脱穀部3の右側位置に配置されている。
【0007】
運転部7には、オペレータの搭乗空間を覆うキャビン10が設けられている。キャビン10は、その骨格を形成するキャビンフレーム11と、該キャビンフレーム11の上部に設けられる樹脂製のルーフ部材12と、キャビンフレーム11の正面窓開口部13に嵌め込まれるフロントガラス14と、キャビンフレーム11の左側面窓開口部15に嵌め込まれる左側サイドガラス16と、キャビンフレーム11の後部に設けられるリヤパネル(図示せず)と、キャビンフレーム11の右側面に形成される搭乗口17を開閉するスライドドア18とを備えて構成されている。
【0008】
搭乗口17の上部や下部には、図示しない複数のガイドレールが設けられており、これらのガイドレールによってスライドドア18が前後方向スライド自在に支持されている。そして、スライドドア18は、キャビン10の右側面の前半部に形成される搭乗口17を覆う閉姿勢と、該姿勢から後方にスライドして搭乗口17を開く開姿勢とにスライド変姿される。ここで、スライドドア18は、図1〜図3に示すように、前後方向に一直線状にスライド案内されるのではなく、後方スライド位置では、キャビン10の右側面外方に重合すべく、機体外側方へ突出状にスライド案内される。従って、スライドドア18による搭乗口17の開閉に際しては、キャビン10の右外側方にある程度の空間を確保する必要がある。
【0009】
排出オーガ5は、穀粒タンク4の後方右端位置に立設され、穀粒タンク4内の穀粒を縦搬送(ラセン搬送)する縦オーガ筒19と、縦オーガ筒19の上端部に昇降及び旋回自在に連結され、縦オーガ筒19の上端部まで達した穀粒を引き継いで、先端の排出口20aまで横搬送(ラセン搬送)する横オーガ筒20と、横オーガ筒20を昇降させる昇降シリンダ21と、横オーガ筒20を旋回させる旋回モータ(図示せず)とを備えて構成されており、排出オーガ5を使用しないときは、横オーガ筒20を所定位置に収納するようになっている。
【0010】
従来の自脱型コンバインでは、排出オーガ5の横オーガ筒20を運転部7の左側に収納されるようになっている。しかしながら、このような自脱型コンバインでは、穀粒タンク4内の穀粒を排出する際、運転部7の上方を通過させるために、一旦横オーガ筒20を最上昇位置まで上昇させた後に、右方向に旋回させる必要があるので、横オーガ筒20を収納位置から排出位置(例えば、機体右側90°位置)まで移動させるのに時間がかかり、また、穀粒を排出した後に横オーガ筒20を収納する際にも、横オーガ筒20を最上昇位置まで上昇させる必要があるので、排出時と同様に時間がかかるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明の実施形態に係る自脱型のコンバイン1では、排出オーガ5の横オーガ筒20を運転部7の右側空間に収納している。このように、排出オーガ5の横オーガ筒20を運転部7の右側空間に配置すると、穀粒タンク4内の穀粒を排出する際、最上昇位置まで上昇させなくても横オーガ筒20を収納位置から排出位置(例えば、機体右側90°位置)まで移動させることができ、また、穀粒を排出した後に横オーガ筒20を収納する際にも、横オーガ筒20を最上昇位置まで上昇させる必要がないので、横オーガ筒20の移動に要する時間を削減できる。
【0012】
しかも、本発明の実施形態に係る自脱型のコンバイン1では、排出オーガ5の横オーガ筒20を運転部7の右側空間に収納するにあたり、前処理部2の右端を、機体の右側オフセット位置に配置される運転部7の右端よりも右側に突出させると共に、排出オーガ5の横オーガ筒20を、正面視において前処理部2の上方で、かつ、運転部7の右側空間に収納している。このようにすると、機体の右側オフセット位置に運転部7が配置される自脱型のコンバイン1でありながら、排出オーガ5の横オーガ筒20を運転部7の右側空間に収納しても、横オーガ筒20のみが機体の右側に突出することなく、収納された横オーガ筒20よりも右側に前処理部2の右端が位置することになり、その結果、機体走行に際して車幅感覚を誤り難くし、横オーガ筒20の接触による破損を防止することができる。
【0013】
また、本実施形態では、穀粒タンク4の右端を、機体の右側オフセット位置に配置される運転部7の右端よりも右側に突出させると共に、排出オーガ5の横オーガ筒20を、正面視において穀粒タンク4の上方に収納しているので、横オーガ筒20のみが機体の右側に突出することを確実に回避できるだけでなく、穀粒タンク4の容量を増やすことができる。
【0014】
また、本実施形態のコンバイン1では、キャビン10の右側部に形成される搭乗口17をスライドドア18で開閉自在に覆うにあたり、図1及び図2に示すように、スライドドア18を、収納状態の横オーガ筒20とキャビン10との間でスライド可能としている。このようにすると、キャビン10を備える運転部7の右側空間に排出オーガ5の横オーガ筒20を収納しても、横オーガ筒20に邪魔されることなく、スライドドア18をスライド操作し、キャビン10の搭乗口17を開閉することができる。
【0015】
横オーガ筒20の収納位置には、収納された横オーガ筒20の揺れなどを防止するために、横オーガ筒20を下方から受け止め支持するオーガ受け22が設けられる。従来のコンバインでは、横オーガ筒20の収納位置に専用の支柱を立設し、該支柱の上端部にオーガ受け22を設けていたので、コストアップとなっていた。また、オーガ受け20には、通常、横オーガ筒20を収納位置に固定するロック装置(図示せず)が設けられるが、オーガ受け20が運転部7から離れていると、運転部7からロック装置を操作することが難しく、特に、キャビン10を備えるコンバイン1では、窓を介した操作になるため、窓の大きさや位置に影響を受け、ロック装置を運転部7から操作できない場合があった。
【0016】
そこで、本発明の実施形態に係るコンバイン1では、排出オーガ5の横オーガ筒20を運転部7の右側空間に収納すると共に、キャビン10の右前フレーム11aにオーガ受け22を設け、該オーガ受け22で収納された横オーガ筒20を支持するようにしてある。具体的には、キャビン10の右前フレーム11aから外側方にオーガ受け22を突設し、該オーガ受け22で横オーガ筒20を下方から受け止め支持する。このようにすると、収納された横オーガ筒20をオーガ受け22で支持するにあたり、キャビン10の右前フレーム11aを利用してオーガ受け22が設けられるので、専用の支柱にオーガ受け22を設けていた従来のコンバインに比してコストダウンが図れる。また、運転部7における搭乗口17の近くにオーガ受け22が配置されることになるので、オーガ受け22にロック装置を設ける場合、当該ロック装置の操作性も向上させることができる。
【0017】
さらに、キャビン10の右前フレーム11aには、キャビン搭乗用グリップ23や後方視認用ミラー24が設けられる。本実施形態では、キャビン10の右前フレーム11aにオーガ受け22を設けるにあたり、キャビン搭乗用グリップ23と、後方視認用ミラー24の支持部24aをオーガ受け22と一体的に構成している。具体的には、キャビン10の右前フレーム11aに突設したオーガ受け22の中間部から下方に向けてキャビン搭乗用グリップ23を延出させると共に、キャビン搭乗用グリップ23の上端部から外側方に向けて支持部24aを突設し、その先端に後方視認用ミラー24を角度調整自在に取付けてある。このようにすると、キャビン搭乗用グリップ23や、後方視認用ミラー24の支持部24aを別々に構成する場合に比べ、構造の簡略化、コストダウン、外観品質の向上などが図れる。
【0018】
また、本実施形態では、キャビン10に対する乗降を一層容易にするために、搭乗口17の下側位置に階段状のキャビン搭乗用ステップ25を設けている。このようなキャビン搭乗用ステップ25は、キャビン10の右端から外側方に大きく突出してしまうが、本実施形態では、運転部7の右端よりも右側に突出している前処理部2の右端後方空間にキャビン搭乗用ステップ25を配置することにより、キャビン搭乗用ステップ25のみが機体の右側に突出することを回避している。
【0019】
さらに、コンバイン1には、早朝、夕暮れ時、夜間などにおける刈り取り作業や手扱作業を考慮し、脱穀入口部3aの周辺を照らす作業灯26が備えられている。従来のコンバインでは、運転部7の左側に収納される排出オーガ5の横オーガ筒20に作業灯26を設けて、脱穀入口部3aの周辺を照らすようにしていたが、このようなコンバインでは、横オーガ筒20を収納させた状態でなければ、脱穀入口部3aを照らすことができないという問題がある。
【0020】
そこで、本発明の実施形態に係るコンバイン1では、キャビン10の左側上部に、脱穀入口部3aの周辺を照らすための作業灯26を設けている。具体的には、キャビン10の上部を形成するルーフ部材12の左側面部に作業灯26を設けて、左斜め下方の脱穀入口部3a及びその周辺を照らしている。このようにすると、排出オーガ5の横オーガ筒20の位置に拘わらず、脱穀入口部3aの周辺を広範囲に照らすことができる。
【0021】
また、キャビン10の上部を形成するルーフ部材12の左側面部に作業灯26を設けるにあたり、本実施形態では、作業灯26をルーフ部材12の左側面部に内装している。具体的には、ルーフ部材12の左側面部に膨出部12aを形成し、その内部に作業灯26を組み込んでいる。このようにすると、ルーフ部材12を利用して作業灯26を保護できるだけでなく、作業灯26を露出状態で設ける場合に比べて外観品質を向上させることができる。
【0022】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、機体の前部で茎稈を刈り取る前処理部2と、脱穀入口部3aを介して導入される茎稈から穀粒を脱穀する脱穀部3と、脱穀部3の右側に配置される運転部7と、運転部7を覆うキャビン10とを備えるコンバイン1において、キャビン10の左側上部に、脱穀入口部3aの周辺を照らすための作業灯26を設けたので、排出オーガ5(横オーガ筒20)の位置に拘わらず、脱穀入口部3aの周辺を広範囲に照らすことができる。
【0023】
また、本実施形態では、キャビン10の上部を樹脂製のルーフ部材12で形成すると共に、該ルーフ部材12の左側面部に作業灯26を内装したので、ルーフ部材12を利用して作業灯26を保護できるだけでなく、作業灯26を露出状態で設ける場合に比べて外観品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】コンバインの正面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの右側面図である。
【図4】コンバインの左側面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 コンバイン
2 前処理部
3 脱穀部
3a 脱穀入口部
4 穀粒タンク
5 排出オーガ
7 運転部
10 キャビン
11 キャビンフレーム
12 ルーフ部材
17 搭乗口
18 スライドドア
19 縦オーガ筒
20 横オーガ筒
26 作業灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部で茎稈を刈り取る前処理部と、
脱穀入口部を介して導入される茎稈から穀粒を脱穀する脱穀部と、
脱穀部の右側に配置される運転部と、
運転部を覆うキャビンと
を備えるコンバインにおいて、
前記キャビンの左側上部に、脱穀入口部周辺を照らすための作業灯を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記キャビンの上部を樹脂製のルーフ部材で形成すると共に、該ルーフ部材の左側面部に前記作業灯を内装したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−50181(P2009−50181A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218022(P2007−218022)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】