説明

コンバイン

【課題】コンバインにおいて、エンジンやその付近を楽に、大きく開放操作することができるようにする。
【解決手段】エンジンボンネット23、運転座席11、運転部床12及び操縦塔13を、エンジン21よりも自走機体前方側で、かつ、エンジン21よりも自走機体横方向での自走機体外方側に配置した自走機体上下向きの運転部開放軸芯P2まわりに一体に、エンジンボンネット23がエンジン10を覆い、かつ、運転部床12が機体フレーム2の上側に位置した閉じ状態と、エンジンボンネット23及び運転座席11がエンジン21を開放し、かつ、運転部床12が自走機体平面視での自走機体外に位置した開き状態とに回動切り換え自在に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンボンネットの上方に位置した運転座席を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記コンバインにおいて、従来、たとえば特許文献1,2に示されるものがあった。
すなわち、特許文献1に示されるものは、運転座席12がエンジンカバー11(エンジンボンネットに相当)の上面に装着され、ハンドル塔9(操縦塔に相当)、ステップ8(運転部床に相当)、エンジンカバー11、側板14(側壁に相当)を一体化したカバー体Aが支点金具35を介して機体フレーム34に支持され、カバー体Aが支点金具35の縦向き支点yを中心にして少し横外方に揺動されるとともに支点金具35の横向き支点xを中心にして上方に揺動されることにより、エンジンカバー11と運転座席12が一体に機体フレーム34に対して上昇回動してエンジン10が開放される。このとき、エンジンカバー11と共に側板14、ステップ8及びハンドル塔9も回動して、エンジン10の前方側で自走機体も開放されるものである。
【0003】
特許文献2に示されるものは、運転座席2aがエンジンボンネット9に支持され、エンジンボンネット9がボンネット支持部50に起伏開閉自在に支持され、ボンネット支持部50が運転部2の床板2b前端側の下方で機体上下向きの旋回軸芯Yまわりで回動自在に機体フレーム4に連結され、エンジンボンネット9が倒伏開放されるとともにボンネット支持部50が旋回軸芯Yまわりで回動されることにより、エンジンボンネット9と運転座席2aが旋回軸芯Yまわりで機体フレーム4に対して自走機体横外側に旋回移動してエンジン8が開放されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−136823号(段落〔0041〕、〔0053〕−〔0055〕、図2,3,7)
【特許文献2】特開2004−34780号(段落〔0013〕、〔0017〕、〔0018〕、〔0023〕、図11,14)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されるものでは、エンジンボンネットや運転部床が自走機体横向きの軸芯まわりで回動することから、殊にエンジンの前方側を上方に作業障害物がない状態に開放することができるようにすると、エンジンボンネットや運転座席などを閉じ状態から高所まで上昇させる必要が生じ、開閉操作が重くなりがちであった。
【0006】
特許文献2に示されるものでは、運転部床が開放されず、エンジンの前方側で自走機体内を開放することができなかった。
【0007】
本発明の目的は、エンジンも、エンジン前方側での自走機体も一挙に開放することができるのみならず、それらの上方を広く開放することも楽に行うことができるコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第1発明にあっては、エンジンボンネットの上方に位置した運転座席を備えたコンバインにおいて、
前記エンジンボンネット、前記運転座席、前記運転座席の前方に位置した運転部床及び操縦塔、前記運転部床の横側方で運転部の内外を仕切る横側壁を、エンジンよりも自走機体後方側で、かつ、エンジンよりも自走機体横方向での自走機体外方側に配置した自走機体上下向きの運転部開放軸芯まわりに一体に、エンジンボンネットがエンジンを覆い、かつ、運転部床及び横側壁が自走機体フレームの上側に位置した閉じ状態と、エンジンボンネット及び運転座席がエンジンを開放し、かつ、運転部床、横側壁、操縦塔が自走機体平面視での自走機体外に位置した開き状態とに回動切り換え自在に構成してある。
【0009】
コンバインにあっては、運転部の後方に穀粒回収部を設けられ、運転部の前方に刈取り前処理部が位置する状態になる。本第1発明にあっては、エンジンボンネットなどを前記運転部開放軸芯まわりで回動させて開き状態に切り換えてエンジンを開放させるものだから、穀粒回収部の穀粒タンクを回動開放するなど、エンジンボンネットなどと穀粒回収部とが干渉することを回避する対策や、刈取り前処理部を回動開放するなど、エンジンボンネットなどと刈取り前処理部とが干渉することを回避する対策をしなくとも、エンジンボンネットや運転座席を回動開放してエンジンを開放することできる。また、エンジンボンネットなどを自走機体上下向きの運転部開放軸芯まわりで回動させるものだから、エンジンボンネットや運転部床などを閉じ状態での配置高さと同一又はほぼ同一の配置高さのままで移動させて開き状態に切り換えることができる。エンジンボンネットを開き状態に切り換えると、運転部床も操縦塔も横側壁もエンジンボンネットと共に回動して自走機体平面視での自走機体外に位置して、エンジン前方側での自走機体が開放される。
【0010】
これにより、エンジンボンネットなどが穀粒回収部や刈取り前処理部に干渉することを回避する対策をしなくとも、エンジンボンネット、運転座席、操縦塔、運転部床、横側壁を一挙に移動させて、かつ、エンジンボンネットや運転部床などを閉じ状態での配置高さと同一又はほぼ同一の配置高さのままで移動させて、エンジン、及び、エンジン前方での自走機体をエンジンボンネットや運転部床が上方に位置したり、横側壁が残っていない状態に開放することができる。
【0011】
従って、本第1発明によると、エンジンボンネット、運転座席、操縦塔、運転部床、横側壁を一挙に移動させて、エンジン、及びエンジン前方での自走機体を速やかに開放することができるものでありながら、エンジン及びエンジン前方側を、エンジンボンネットなどが上方に位置したり、横側壁が残っていないなど障害物がない状態に開放して、点検作業などを能率よく行うことができる。しかも、穀粒回収部や刈取り前処理部とエンジンボンネットなどとの干渉を回避するための手間を掛ける必要がなくて、かつ、エンジンボンネットや運転部床などを閉じ状態での配置高さと同一又はほぼ同一の配置高さのままで移動させて楽に開放操作して、この面からも有利に点検作業を行うことができる。
【0012】
本第2発明にあっては、エンジンボンネットの上方に位置した運転座席を備えたコンバインにおいて、
前記エンジンボンネット、前記運転座席、前記運転座席の前方に位置した運転部床を、エンジンよりも自走機体前方側で、かつ、エンジンよりも自走機体横方向での自走機体外方側に配置した自走機体上下向きの運転部開放軸芯まわりに一体に、エンジンボンネットがエンジンを覆い、かつ、運転部床が自走機体フレームの上側に位置した閉じ状態と、エンジンボンネット及び運転座席がエンジンを開放し、かつ、運転部床が自走機体平面視での自走機体外に位置した開き状態とに回動切り換え自在に構成し、
穀粒タンクを、穀粒タンク後方側に配置した自走機体上下向きのタンク開放軸芯まわりに開閉自在に支持させてある。
【0013】
すなわち、穀粒タンクをタンク開放軸芯まわりで開き操作して穀粒回収部の前端側にエンジンボンネットなどが移動する経路を確保し、エンジンボンネットなどが穀粒タンクと干渉しないで回動するようにしてエンジンボンネット及び運転座席などを前記運転部開放軸芯まわりで回動させて開き状態に切り換えてエンジンを開放する。このとき、運転部床もエンジンボンネットと共に開き状態になって自走機体外に位置し、エンジン前方側での自走機体が開放される。
これにより、エンジンボンネットなどが刈取り前処理部に干渉することを回避する対策を行わなくとも、エンジンボンネット、運転座席、運転部床を一挙に移動させて、かつ、エンジンボンネットや運転部床などを閉じ状態での配置高さと同一又はほぼ同一の配置高さのままで移動させて、エンジン、及び、エンジン前方での自走機体を、エンジンボンネットや運転部床が上方に存在しない状態に開放することができる。
【0014】
従って、本第2発明によると、エンジンボンネット、運転座席、運転部床を一挙に移動させて、エンジン、及びエンジン前方での自走機体を速やかに開放することができるものでありながら、エンジン及びエンジン前方側を、エンジンボンネットや運転部床などが上方に位置しないなど障害物がない状態に開放して、点検作業などを能率よく行うことができる。しかも、刈取り前処理部とエンジンボンネットなどとの干渉を回避するための手間を掛ける必要がなくて、かつ、エンジンボンネットや運転部床などを閉じ状態での配置高さと同一又はほぼ同一の配置高さのままで移動させて楽に開放操作して、この面からも有利に点検作業を行うことができる。
【0015】
本第3発明にあっては、エンジンボンネットの上方に位置した運転座席を備えたコンバインにおいて、
前記エンジンボンネット、前記運転座席、前記運転座席の前方に位置した運転部床及び操縦塔を、エンジンよりも自走機体前方側で、かつ、エンジンよりも自走機体横方向での自走機体内方側に配置した自走機体上下向きの運転部開放軸芯まわりに一体に、エンジンボンネットがエンジンを覆い、かつ、運転部床が自走機体フレームの上側に位置した閉じ状態と、エンジンボンネット及び運転座席がエンジンを開放し、かつ、運転部床が自走機体平面視での自走機体外に位置した開き状態とに回動切り換え自在に構成し、
刈取り前処理部を、この刈取り前処理部の運転部側とは反対側に位置した自走機体上下向きの刈取り部開放軸芯まわりに開閉自在に支持させてある。
【0016】
すなわち、刈取り前処理部を刈取り部開放軸芯まわりで開き操作して運転部の前方にエンジンボンネットなどを収容するためのスペースを確保し、エンジンボンネット及び運転座席などを前記運転部開放軸芯まわりで回動させて開き状態に切り換えてエンジンを開放する。このとき、運転部床、操縦塔もエンジンボンネットと共に開き状態になって自走機体外に位置し、エンジン前方側での自走機体が開放される。
これにより、エンジンボンネットなどが穀粒回収部に干渉することを回避する対策を行わなくとも、エンジンボンネット、運転座席、運転部床、操縦塔を一挙に移動させて、かつ、エンジンボンネットや運転部床などを閉じ状態での配置高さと同一又はほぼ同一の配置高さのままで移動させて、エンジン、及び、エンジン前方での自走機体をエンジンボンネットや運転部床が上方に位置しない状態に開放することができる。
【0017】
従って、本第3発明によると、エンジンボンネット、運転座席、運転部床、操縦塔を一挙に移動させて、エンジン、及びエンジン前方での自走機体を速やかに開放することができるものでありながら、エンジン及びエンジン前方側を、エンジンボンネットや運転部床などが上方に位置しないなど障害物がない状態に開放して、点検作業などを能率よく行うことができる。しかも、穀粒回収部とエンジンボンネットなどとの干渉を回避するための手間を掛ける必要がなくて、かつ、エンジンボンネットや運転部床などを閉じ状態での配置高さと同一又はほぼ同一の配置高さのままで移動させて楽に開放操作して、この面からも有利に点検作業を行うことができる。
【0018】
本第4発明にあっては、本第2又は3発明の構成において、前記運転部床の横側方で運転部の内外を仕切る横側壁が前記エンジンボンネットと一体回動自在に支持されている。
【0019】
すなわち、エンジンボンネットなどを回動させた開き状態に切り換えると、横側壁もエンジンボンネットと共に回動して開き状態になり、開放状態になったエンジン前方側での自走機体が横側壁も残っていない開放状態になる。
【0020】
従って、本第4発明によると、エンジン前方側の自走機体を、運転部床が上方に位置しないのみならず、横側壁も存在しなくなった開放状態になり、エンジンから走行装置や刈取り前処理部に動力伝達される伝動系が開放されて、この伝動系の点検や修理などの作業が行いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】コンバインの全体側面図
【図2】コンバインの全体平面図
【図3】運転部、原動部の一部断面状態での平面図
【図4】運転部、原動部の一部断面状態での側面図
【図5】(イ)は、運転部、原動部のエンジン閉じ状態での平面図、(ロ)は、運転部、原動部のエンジン開放状態での平面図
【図6】主変速レバーと変速装置の連動構造の分離状態での斜視図
【図7】別の実施構造を備えたコンバインの平面図で、(イ)は、運転部、原動部のエンジン閉じ状態での平面図、(ロ)は、運転部、原動部のエンジン開放状態での平面図
【図8】さらに別の実施構造を備えたコンバインの平面図で、(イ)は、運転部、原動部のエンジン閉じ状態での平面図、(ロ)は、運転部、原動部のエンジン開放状態での平面図
【図9】別の実施構造を有した横スクリューコンベヤを備えたコンバインの前部の側面図
【図10】横スクリューコンベヤのフック装着部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
〔第1実施例〕
図1,2に示すように、左右一対のクローラ式走行装置1によって自走するように構成し、かつ、運転座席11が装備された運転部10、運転座席11の下方に配置したエンジン21が装備された原動部20を備えた自走機体の機体フレーム2の前部に、刈取り前処理部30の前処理部フレーム31の基端部を回動自在に連結し、刈取り前処理部30の自走機体後方側に配置した脱穀装置4を機体フレーム2の後部上に設け、運転部10の自走機体後方側に配置した穀粒タンク5を備えた穀粒回収部Aを機体フレーム2上に設けて、コンバインを構成してある。
【0023】
このコンバインは、稲、麦、大豆などを収穫するものであり、前処理部フレーム31に連動された昇降シリンダ(図示せず)を操作すると、この昇降シリンダが前処理部フレーム31を機体フレーム2に対して上下揺動操作することにより、刈取り前処理部30を引起し装置32の下端部などが地面上近くに位置した下降作業状態と、引起し装置32などが地面上から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。刈取り前処理部30を下降作業状態にして自走機体を走行させると、刈取り前処理部30は、自走機体横方向に並ぶ複数の前記引起し装置32によって植立穀稈を引起し処理し、この植立穀稈の株元側をバリカン形の刈取り装置33によって刈取り処理し、刈取り装置33からの刈取り穀稈を供給装置34によって自走機体後方向きに搬送して脱穀装置4に供給する。脱穀装置4は、脱穀フィードチェーン(図示せず)によって刈取り穀稈の株元側を自走機体後方向きに挟持搬送しながら穂先側を扱室(図示せず)に供給して脱穀処理する。穀粒回収部Aは、脱穀装置4からの脱穀粒を穀粒タンク5に回収して貯留していき、穀粒タンク5に貯留された脱穀粒を、穀粒タンク5の底部内に位置する底スクリュー6、穀粒タンク5の後側に位置する自走機体上下向きの縦スクリューコンベヤ7、この縦スクリューコンベヤ7の上端部に旋回及び上下駆動自在に連結された横スクリューコンベヤ8によって穀粒タンク5から取り出すようになっている。
【0024】
図3,4に示すように、前記原動部20に、前記エンジン21、及び、エンジン21の自走機体横外方側に位置するエンジン冷却用ラジエータ22などを覆うエンジンボンネット23、このエンジンボンネット23の天板23aの上面上に設けた吸気ケース24を設けてある。
【0025】
図3,4に示すように、エンジンボンネット23は、エンジン21の自走機体前方側に位置する前壁23b、エンジン21の自走機体後方側に位置する後壁23c、エンジン21の自走機体横外側に位置する横壁23e、エンジン21の上方に位置する前記天板23aを備えて構成してある。
【0026】
エンジンボンネット23の自走機体横方向での自走機体内側に、エンジン21の出力を走行用ミッション(図示せず)、刈取り前処理部30、脱穀装置4に伝達するように自走機体横方向での機体内側に向いた伝動用開口25を設けてある。エンジンボンネット23の前記横壁23eに、除塵網が付いた自走機体横外向きの吸気口26、エンジン冷却用ラジエータ22に冷却風を供給する送風口27、前記吸気口26、及び前記吸気ケース24の内部を前記送風口27に連通させている内部空間S1を設けてある。エンジンボンネット23の前記前壁23bに、除塵網が付いた自走機体前向きの吸気口28、この吸気口28を前記横壁23eの内部空間S1に連通させている内部空間S2を設けてある。
【0027】
図1〜4に示すように、前記運転部10は、前記エンジンボンネット23の上方に配置してエンジンボンネット23の天板23aに支持させた前記運転座席11、運転座席11の前方で、かつエンジンボンネット23の前壁23bの前方に配置した運転部床12、運転座席11の前方で、かつ運転部床12の前端部に配置した操縦塔13、運転部床12の乗降口側とは反対側の横側方に、エンジンボンネット23と操縦塔13の間で運転部10の内外を仕切るように設けた横側壁14、運転座席11の前記横側壁14が位置する側の横側方に設けた横操作盤15を備えて構成してある。
【0028】
前記操縦塔13には、操向レバー16を設け、前記横操作盤15には、主変速レバー17、副変速レバー18、クラッチレバー19を設けてある。操向レバー16は、自走機体横方向に揺動操作して左右のクローラ走行装置1を各別に変速及び停止操作することによって自走機体の操向操作を行うものである。この操向レバー16は、刈取り前処理部30を昇降操作するレバーに兼用されており、自走機体前後方向に揺動操作することによって昇降シリンダを操作できるようなっている。主変速レバー17は、左右の走行装置1の前後進切り換え、無段変速、停止操作を行うものである。副変速レバー18は、左右のクローラ走行装置1を低速状態と高速状態に副変速するものである。クラッチレバー19は、刈取り前処理部30を入り切り操作する刈取りクラッチ(図示せず)、及び、脱穀装置4を入り切り操作する脱穀クラッチ(図示せず)を切り換え操作するものである。
【0029】
前記エンジンボンネット23、前記運転部床12、前記操縦塔13、前記横側壁14、前記横操作盤15は、一つの運転部フレームFに支持されており、前記運転部フレームFは、エンジン21よりも自走機体後方側の穀粒タンク5よりも自走機体前方側で、かつ、エンジン21よりも自走機体横方向での自走機体外方側に配置した自走機体上下方向の運転部開放軸芯P1まわりで回動自在に機体フレーム2に支持されている。運転座席11はエンジンボンネット23の天板23aに支持されており、エンジンボンネット23、運転座席11、運転部床12、操縦塔13、横側壁14、横操作盤15は、一体に前記運転部開放軸芯P1まわりで機体フレーム2に対して回動するよう支持されており、図6(イ)に示す如く機体フレーム2の上側の原動部20や運転部10に位置した閉じ状態と、図6(ロ)に示す如く自走機体平面視での自走機体外としての穀粒タンク5の横側に位置した開き状態とに回動切り換えできるようになっている。
【0030】
つまり、作業や移動走行を行うなどの通常時は、前記運転部フレームFを前記運転部開放軸芯P1まわりで機体内側に閉じ回動させる。すると、エンジンボンネット23などが前記閉じ状態になり、エンジン21及びエンジン冷却用ラジエータ22がエンジンボンネット23によって覆われた状態になり、運転座席11がエンジンボンネット23の上側で前向きに支持された状態になる。そして、運転部床12及び操縦塔13が機体フレーム2の上側の運転座席11の前方に、横側壁14が機体フレーム2の上側の運転部床12の横側方に、横操作盤15が機体フレーム2の上側の運転座席11の横側方にそれぞれ位置した状態になり、運転部10に搭乗して自走機体や刈取り前処理部30を運転や操作することが可能になる。
【0031】
エンジン21を点検するなどの管理や修理作業を行うに当たり、運転部フレームFを運転部開放軸芯P1まわりで閉じ位置から自走機体横外方側に90度以上、開き回動させる。すると、エンジンボンネット23が前記伝動用開口25や、後壁23cのエンジン通過孔29(図3参照)のためにエンジン21に当たらないで機体外側に移動し、エンジンボンネット23などが前記開き状態になり、エンジンボンネット23及び運転座席11がエンジン21やエンジン冷却用ラジエータ22を開放して、エンジン21、及び、エンジン冷却用ラジエータ22などのエンジン付属装置を点検や修理しやすくなる。また、運転部床12、操縦塔13、横側壁14、横操作盤15がエンジン前付近での自走機体内を開放した状態になり、エンジン21から走行装置1や刈取り前処理部30に動力伝達する伝動系などをエンジン21の前方側から点検や修理しやすくなる。
【0032】
前記操向レバー16、副変速レバー18、クラッチレバー19は、エンジンボンネット23などが開閉操作される際、操縦塔13や横操作盤15に付いて移動するように、かつ、操向クラッチ、副変速装置、各クラッチとの連動を絶つ必要がないように操向クラッチ、副変速装置、各クラッチに操作ケーブル(図示せず)を介して連動されている。
【0033】
図6に示すように、前記主変速レバー17と、静油圧式無段変速装置で成る走行変速装置40の操作軸40aとは、主変速レバー17に付設された揺動アーム41などを備えたレバー側連動機構LRと、走行変速装置40の前記操作軸40aに付設された操作アーム50などを備えた変速装置側連動機構HRとを介して連動されるように構成してある。
【0034】
レバー側連動機構LRは、主変速レバー17の基部17aに一体回動自在に連結された前記揺動アーム41、この揺動アーム41に上端部が相対回動自在に連結された自走機体上下向きの連動杆42、この連動杆42の下端部に連結ピン43を介して連動された第1揺動リンク44、この第1揺動リンク44の回転支軸45に一体回転自在に連結された第2揺動リンク46を備えて構成してある。
【0035】
変速装置側連動機構HRは、走行変速装置40の前記操作軸40aに一体回動自在に連結された前記操作アーム50、この操作アーム50に一端側が相対回動自在に連結された連動ロッド51、この連動ロッド51の他端側が相対回動自在に連結された揺動リンク52、この揺動リンク52に一端側が相対回動自在に連結された連動ロッド53、この連動ロッド53の他端側に先端部が相対回動自在に連結された第1揺動リンク54、この第1揺動リンク54の回転支軸55に一体回動自在に連結された第2揺動リンク56を備えて構成してある。
【0036】
レバー側連動機構LRは、横操作盤15がエンジンボンネット23などと共に開閉されると、エンジンボンネット23などを備える構造体に付いて移動するように前記運転部フレームFなどに支持されている。変速装置側連動機構HRは、機体フレーム2に支持されている。これにより、横操作盤15がエンジンボンネット23などと共に開閉されると、レバー側連動機構LRの前記第2揺動リンク46に設けてある連動ピン47が、変速装置側連動機構HRの第2揺動リンク56に設けてある切り欠き部57に係入して、第2揺動リンク46の揺動力が連動ピン47を介して第2揺動リンク56に伝達されるように両第2揺動リンク46,56が連動状態に切り換わったり、前記連動ピン47が前記切り欠き部57から離脱して、両第2揺動リンク46,56が分離状態に切り換わったりするように構成してある。
【0037】
つまり、エンジンボンネット23などが前記開き状態に切り換えられる際、主変速レバー17と走行変速装置40との連動が前記両第2揺動リンク46,56の間で自ずと絶たれて、主変速レバー17が横操作盤15に付いて移動していき、エンジンボンネット23などが前記閉じ状態に戻されると、主変速レバー17が走行変速装置40に連動された状態に自ずと復帰するようになっている。
【0038】
図1に示すように、前記横スクリューコンベヤ8の搬送筒内に、横スクリュー軸芯8aが水平になった状態において搬送始端側から吐出筒8bに至るほど低くなる状態に傾斜した傾斜底部8cを設けてある。
すなわち、大豆が傾斜底部8cに沿って転げて吐出筒8bに移動しやすくなって、横スクリュー8dのスクリューピッチを大にしても排出することができ、横スクリュー8dが大豆に及ぼす搬送作用が少なくなって大豆を損傷しにくくしながら搬送することを可能にしてある。
【0039】
〔第2実施例〕
図7は、別の実施構造を備えたコンバインを示し、このコンバインにあっては、穀粒タンク5の支持構造、及び、運転部10の構造体の支持構造について、第1実施例のコンバインのそれと相違した実施構造を備えている。
【0040】
すなわち、エンジンボンネット23、運転部床12、操縦塔13、横側壁14、横操作盤15が一つ運転部フレームFに支持されており、この運転部フレームFは、エンジン21よりも自走機体前方側で、かつ、エンジン21よりも自走機体横方向での自走機体外方側に配置した自走機体上下向きの運転部開放軸芯P2まわりで回動自在に機体フレーム2に支持されている。
【0041】
穀粒タンク5は、この穀粒タンク5の後方側に前記縦スクリューコンベヤ7のスクリュー軸芯と同一軸芯になるように配置した自走機体上下向きのタンク開放軸芯Tまわりで開閉回動自在に、かつ、縦スクリューコンベヤ7と共に回動するように機体フレーム2に支持されている。
【0042】
つまり、作業や移動走行を行うなどの通常時は、図7(イ)に示すように、前記運転部フレームFを前記運転部開放軸芯P2まわりで機体内側に閉じ回動させる。すると、エンジンボンネット23、運転座席11、運転部床12、操縦塔13、横側壁14、横操作盤15が機体フレーム2の上側の原動部20や運転部10に位置した閉じ状態になり、エンジン21及びエンジン冷却用ラジエータ22がエンジンボンネット23によって覆われた状態になり、運転座席11がエンジンボンネット23の上側で前向きに支持された状態になる。そして、運転部床12及び操縦塔13が機体フレーム2の上側の運転座席11の前方に、横側壁14が機体フレーム2の上側の運転部床12の横側方に、横操作盤15が機体フレーム2の上側の運転座席11の横側方にそれぞれ位置した状態になり、運転部10に搭乗して自走機体や刈取り前処理部30を運転や操作することが可能になる。
このとき、穀粒タンク5をタンク開放軸芯Tまわりで自走機体内方側に回動させて、運転部10の後方の脱穀装置4の横側に穀粒タンク5の前後向きが自走機体の前後向きになって位置した閉じ状態にしておく。
【0043】
エンジン21を点検するなどの管理や修理作業を行うに当たり、図7(ロ)に示すように、穀粒タンク5をタンク開放軸芯Tまわりで閉じ状態から自走機体横外方側に回動させて穀粒タンク5の前端側が自走機体横外側に位置した開き状態にし、これによって穀粒回収部Aの前端部にエンジンボンネット23などが移動するスペースを確保し、運転部フレームFを運転部回動軸芯P2まわりで閉じ位置から自走機体横外方側に約90度、開き回動させる。すると、エンジンボンネット23が前記伝動用開口25のためにエンジン21に当たらないで機体外側に移動し、エンジンボンネット23及び運転座席11が自走機体平面視での自走機体外としての運転部10の横側に位置した開き状態になってエンジン21やエンジン冷却用ラジエータ22を開放し、エンジン21、及び、エンジン冷却用ラジエータ22などのエンジン付属装置を点検や修理しやすくなる。また、運転部床12、操縦塔13、横側壁14、横操作盤15もエンジンボンネット23と共に自走機体平面視での自走機体外としての運転部10の横外側に位置した開き状態になってエンジン前付近での自走機体内を開放し、エンジン21から走行装置1や刈取り前処理部30に動力伝達する伝動系などをエンジン21の前方側から点検や修理しやすくなる。
【0044】
〔第3実施例〕
図8は、さらに別の実施構造を備えたコンバインを示し、このコンバインにあっては、刈取り前処理部30の支持構造、及び、運転部10の構造体の支持構造について、第1,2実施例のコンバインのそれと相違した実施構造を備えている。
【0045】
すなわち、エンジンボンネット23、運転部床12、操縦塔13、横側壁14、横操作盤15が一つの運転部フレームFに支持されており、この運転部フレームFは、エンジン21よりも自走機体前方側で、かつ、エンジン21よりも自走機体横方向での自走機体内方側に配置した自走機体上下向きの運転部開放軸芯P3まわりで回動自在に機体フレーム2に支持されている。
【0046】
刈取り前処理部30は、この刈取り前処理部30の運転部側の横端側とは反対側の横端側に伝動ケース35の横端部に位置する伝動軸芯と同一軸芯になるように配置した自走機体上下向きの刈取り部開放軸芯Kまわりで開閉回動自在に機体フレーム2に支持されている。
【0047】
つまり、作業や移動走行を行うなどの通常時は、図8(イ)に示すように、前記運転部フレームFを前記運転部開放軸芯P3まわりで機体内側に閉じ回動させる。すると、エンジンボンネット23、運転座席11、運転部床12、操縦塔13、横側壁14、横操作盤15が機体フレーム2の上側の原動部20や運転部10に位置した閉じ状態になり、エンジン21及びエンジン冷却用ラジエータ22がエンジンボンネット23によって覆われた状態になり、運転座席11がエンジンボンネット23の上側で前向きに支持された状態になる。そして、運転部床12及び操縦塔13が機体フレーム2の上側の運転座席11の前方に、横側壁14が機体フレーム2の上側の運転部床10の横側方に、横操作盤15が機体フレーム2の上側の運転座席11の横側方にそれぞれ位置した状態になり、運転部10に搭乗して自走機体や刈取り前処理部30を運転や操作することが可能になる。
このとき、刈取り前処理部30を刈取り部開放軸芯Kまわりで自走機体後方側に回動させて、刈取り前処理部30の遊端部30aが運転部10の前方近くに位置した閉じ状態にしておく。
【0048】
エンジン21を点検するなどの管理や修理作業を行うに当たり、図8(ロ)に示すように、刈取り前処理部30を前処理部開放軸芯Kまわりで自走機体前方側に回動させて刈取り前処理部30の遊端部30aが運転部10から離れた開き状態にし、これによって運転部10の自走機体前方側にエンジンボンネット23などが位置するスペースを確保し、運転部フレームFを運転部回動軸芯P3まわりで閉じ位置から自走機体前外方側に約90度、開き回動させる。すると、エンジンボンネット23が前記伝動開口25のためにエンジン23に当たらないで機体外側に移動し、エンジンボンネット23及び運転座席11が自走機体平面視での自走機体外としての運転部10の前側に位置した開き状態になってエンジン21やエンジン冷却用ラジエータ22を開放し、エンジン21、及び、エンジン冷却用ラジエータ21などのエンジン付属装置を点検や修理しやすくなる。また、運転部床12、操縦塔13、横側壁14、横操作盤15もエンジンボンネット23と共に自走機体平面視での自走機体外としての運転部10の前側に位置した開き状態になってエンジン前付近での自走機体内を開放し、エンジン21から走行装置1や刈取り前処理部30に動力伝達する伝動系などをエンジン21の前方側から点検や修理しやすくなる。
【0049】
〔第4実施例〕
図9は、さらに別の実施構造を備えたコンバインを示し、このコンバインにあっては、横スクリューコンベヤ8の先端側にフック60を設けてある。
【0050】
前記フック60は、エンジンボンネット23を開閉操作する際、エンジンボンネット23などを備えた前記構造体を吊り下げ支持し、エンジンボンネット23などの重量のために運転部フレームFに掛かる荷重の軽減を図りながら開閉操作するものである。図10に示すように、また、このフック60は、フック60の基部に設けたベヤリング61を介して横スクリューコンベヤ8の支持レール62に位置調節自在に支持されており、刈取り前処理部30を開閉操作する際、エンジンボンネット23などを吊り下げ支持する場合よりも横スクリューコンベヤ8の先端側に位置変更して刈取り前処理部30の吊り下げ支持にも使用することができるようになっている。
【0051】
〔別実施例〕
運転キャビンを備えたコンバインの場合、前記横側壁14として運転キャビンの横側壁が備えられ、操縦塔13として運転キャビンの操作盤付きの前側壁が備えられるのであり、本発明は、運転キャビン付きのコンバインにも適用できる。
【符号の説明】
【0052】
2 機体フレーム
5 穀粒タンク
11 運転座席
12 運転部床
13 操縦塔
14 横側壁
21 エンジン
23 エンジンボンネット
30 刈取り前処理部
P2,P3 運転部開放軸芯
T タンク開放軸芯
K 刈取り部開放軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンボンネットの上方に位置した運転座席を備えたコンバインであって、
前記エンジンボンネット、前記運転座席、前記運転座席の前方に位置した運転部床及び操縦塔を、エンジンよりも自走機体前方側で、かつ、エンジンよりも自走機体横方向での自走機体外方側又は自走機体内方側に配置した自走機体上下向きの運転部開放軸芯まわりに一体に、エンジンボンネットがエンジンを覆い、かつ、運転部床が機体フレームの上側に位置した閉じ状態と、エンジンボンネット及び運転座席がエンジンを開放し、かつ、運転部床が自走機体平面視での自走機体外に位置した開き状態とに回動切り換え自在に構成してあるコンバイン。
【請求項2】
前記エンジンボンネット、前記運転座席、前記運転部床及び前記操縦塔を、エンジンよりも自走機体横方向での自走機体外方側に配置した自走機体上下向きの運転部開放軸芯まわりに一体に、前記閉じ状態と、前記開き状態とに回動切り換え自在に構成し、
穀粒タンクを、穀粒タンク後方側に配置した自走機体上下向きのタンク開放軸芯まわりに開閉自在に支持させてある請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記エンジンボンネット、前記運転座席、前記運転部床及び前記操縦塔を、エンジンよりも自走機体横方向での自走機体内方側に配置した自走機体上下向きの運転部開放軸芯まわりに一体に、前記閉じ状態と、前記開き状態とに回動切り換え自在に構成し、
刈取り前処理部を、この刈取り前処理部の運転部側とは反対側に位置した自走機体上下向きの刈取り部開放軸芯まわりに開閉自在に支持させてある請求項1記載のコンバイン。
【請求項4】
前記運転部床の横側方で運転部の内外を仕切る横側壁が前記エンジンボンネットと一体回動自在に支持されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−42031(P2010−42031A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266708(P2009−266708)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【分割の表示】特願2005−225402(P2005−225402)の分割
【原出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】