説明

コンバイン

【課題】適切な冷却風の流れを形成して熱交換器の冷却効率を向上させ、エンジンの冷却効率の低下を抑制するコンバインの提供を目的とする。
【解決手段】熱交換器であるラジエータ192と、オイルクーラー194と、インタークーラー195と、を収容する冷却風ダクト193と、冷却風を冷却風ダクト193内に吸引しながら、ラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195およびその周囲を通過した冷却風を冷却風ダクト193外へ排出する送風装置としての冷却ファン191と、冷却風ダクト193内に収容されて、冷却ファン191により冷却風ダクト193内に吸入された冷却風をラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195に案内する冷却風吸引ガイド196と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインに関し、特にインタークーラー、オイルクーラーなどの熱交換器の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンが収納されているエンジンルームの上方に、冷却ファン、冷却風ダクト、およびエンジンの冷却水を冷却するラジエータを配置したコンバインが知られている。このようなコンバインにおいて、冷却風ダクト内には、エンジンの吸気を冷却するインタークーラーや、油圧機器用の作動油を冷却するオイルクーラー等の熱交換器が収容されている。
【0003】
そして、冷却ファンが、冷却風を機外から冷却風ダクト内に吸引して、熱交換器およびその周囲を通過させた後、ダクト外へ排出するように構成されている。これにより、熱交換器が、冷却風ダクト内において、冷却ファンにより吸引された冷却風により冷却されるようになっている。例えば特許文献1の如くである。
【0004】
しかし、特許文献1の技術においては、熱交換器と冷却風ダクトの内壁との間に隙間があったため、冷却風ダクト内に吸引された冷却風の多くが、熱交換器を通過せずに、前記隙間(熱交換器の周囲)を通過して、ダクト外へ排出されやすくなっていた。そのため、冷却風ダクト内において、熱交換器を効率よく冷却することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−81437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は係る課題を鑑みてなされたものであり、適切な冷却風の流れを形成して熱交換器の冷却効率を向上させ、エンジンの冷却効率の低下を抑制するコンバインの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、熱交換器を収容する冷却風ダクトと、冷却風を前記冷却風ダクト内に吸引しながら、前記熱交換器およびその周囲を通過した冷却風を前記冷却風ダクト外へ排出する送風装置と、前記冷却風ダクト内に収容されて、前記送風装置により前記冷却風ダクト内に吸入された冷却風を前記熱交換器に案内する冷却風吸引ガイドと、を備えるものである。
【0009】
請求項2においては、前記冷却風吸引ガイドは、前記冷却風ダクト内における冷却風の流れ方向において、前記熱交換器と重複しないように配置されるものである。
【0010】
請求項3においては、前記熱交換器を複数備え、前記複数の熱交換器は、前記冷却風ダクト内における冷却風の流れ方向において、それぞれ重複しないように並置されるものである。
【0011】
請求項4においては、前記冷却風ダクトの冷却風排出側から当該冷却風ダクトに対して離間する方向へ延出されて、前記冷却風ダクトから排出された冷却風を前記冷却風ダクトの下方に配置されたエンジンに向かって流れないように案内する冷却風排出ガイドを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、送風装置により冷却風ダクト内に吸引された冷却風が、熱交換器を通過せずにその周囲を通って、即ち熱交換器と冷却風ダクトの内壁との隙間を通って、冷却風ダクトから排出されにくくなる。したがって、熱交換器を通過する冷却風の風量を増大させて、熱交換器の冷却効率を向上させることができる。
【0014】
請求項2においては、送風装置により冷却風ダクト内に吸引された冷却風が、熱交換器に効率よく案内されることになる。したがって、熱交換器を通過する冷却風の風量を増大させて、熱交換器の冷却効率を向上させることができる。
【0015】
請求項3においては、送風装置により冷却風ダクト内に吸引された冷却風が、一つの熱交換器を通過して熱交換した後、冷却風ダクトから排出されることになる。したがって、冷却風と熱交換器との熱交換を効率よく行って、熱交換器の冷却効率を向上させることができる。
【0016】
請求項4においては、熱交換器との熱交換で暖められた冷却風が、冷却風排出ガイドにより案内されて、冷却風ダクトから円滑に排出されることになる。したがって、冷却風ダクト内における冷却風の抜けをよくして、熱交換器の冷却効率を向上させることができる。また、熱交換器との熱交換で暖められた冷却風が、エンジンに向かって流れなくなる。したがって、エンジンが熱交換器との熱交換で暖められた冷却風により暖められることを防止して、エンジンの冷却効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示した右側面図。
【図2】本発明の一実施形態に係るコンバインの平面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るコンバインの左側面図。
【図4】本発明の一実施形態に係るコンバインのエンジン部の構成を示した右側面図。
【図5】本発明の一実施形態に係る冷却構造を示す斜視図。
【図6】(a)本発明の一実施形態に係る冷却構造の接続の構成を示す右側面図。(b)本発明の一実施形態に係る冷却構造の冷却風の流れを示す斜視図。
【図7】本発明の一実施形態に係る冷却構造の冷却風の流れを示す後側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、図1から図4を用いて、本発明の一実施形態に係るコンバイン100の全体構成について説明する。なお、以下では矢印A方向を前方向として前後左右上下方向を規定する。
【0019】
コンバイン100は、機体フレーム110に対して、走行部120と、刈取部130と、脱穀部140と、選別部150と、穀粒貯溜部160と、排藁処理部170と、エンジン部180と、操縦部200とを備える。
【0020】
図1に示すように、走行部120は、機体フレーム110の下部に設けられる。走行部120は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置121等を有して、機体をクローラ式走行装置121により前進または後進方向に走行させることができるように構成される。
【0021】
刈取部130は、機体フレーム110の前端部に機体に対して昇降可能に設けられる。刈取部130は、圃場の穀稈を分草、掻込み、切断した後に、脱穀部140側へ搬送するように構成される。
【0022】
図2、および図3に示すように、脱穀部140は、機体フレーム110の進行方向左側部に設けられ、刈取部130の後方に配置される。脱穀部140は、刈取部130から搬送される穀稈を後方へ送りながら脱穀し、その脱穀物を漏下させることができるように構成される。
【0023】
選別部150は、機体フレーム110の左側部に設けられ、脱穀部140の下方に配置される。選別部150は、脱穀部140から落下する脱穀物を穀粒や藁屑等に揺動選別し、選別後の穀粒を穀粒貯溜部160側へ搬送するように構成される。
【0024】
穀粒貯溜部160は、機体フレーム110の右側前後中央部に設けられ、脱穀部140および選別部150の右側方に配置される。穀粒貯溜部160は、穀粒タンク161等を有して、選別部150から搬送される穀粒を穀粒タンク161により貯溜することができるように構成される。穀粒タンク161には、穀粒排出装置162が接続され、これにより穀粒タンク161に貯溜中の穀粒が機体に対して任意の方向に排出可能とされる。
【0025】
排藁処理部170は、機体フレーム110の左側後端部に設けられ、脱穀部140の下方、かつ選別部150の後方に配置される。排藁処理部170は、脱穀部140からの脱穀済みの穀稈を排藁として外部へ排出するように構成される。
【0026】
図1、および図4に示すように、エンジン部180は、機体フレーム110の右側後部に設けられ、穀粒貯溜部160の穀粒タンク161の後方であって、穀粒排出装置162の基部を収納する収納室163の前方に配置される。エンジン部180は、エンジン181の動力を各部の各装置に適宜の伝動機構を介して供給し、エンジン181により各部の装置を駆動させることができるように構成される。
【0027】
エンジン部180においては、エンジンフレーム182が、機体フレーム110の右側後部から立設される。エンジンフレーム182は、穀粒タンク161と同程度の上下高さの四辺枠体に構成される。エンジンフレーム182の内部空間のうち下側には、エンジンルーム182aが形成される。エンジン181は、エンジンルーム182aに収容されて、機体フレーム110に支持される。エンジンルーム182aの上方であって、エンジンフレーム182の内部空間のうち上側には、後述の冷却構造190が設けられる。
【0028】
図1、および図2に示すように、操縦部200は、機体フレーム110の右側前部に設けられ、穀粒貯溜部160の前方に配置される。操縦部200は、ステアリングハンドル201および変速レバーを含む各種の操作具202、操縦席203、およびキャビン204等を有して、各部の装置等を操作具202により操作し、操縦者を操縦席203に着座させ、操作具202や操縦席203をキャビン204により覆うことができるように構成される。
【0029】
このようにして、コンバイン100は、操縦部200での操作具202の操作に応じて、エンジン部180からエンジン181の動力を各部の各装置に供給して、走行部120で機体を走行させながら、刈取部130で圃場の穀稈を刈り取り、脱穀部140で刈取部130からの穀稈を脱穀し、選別部150で脱穀部140からの脱穀物を選別して、穀粒貯溜部160で選別部150からの穀粒を貯溜するように構成される。
【0030】
次に、図4から図7を用いて、冷却構造190の構成について説明する。
【0031】
図4、および図5に示すように、冷却構造190は、エンジン部180において、エンジンルーム182aの上方に構成される。冷却構造190は、送風装置としての冷却ファン191と、冷却風ダクト193と、冷却風吸引ガイド196と、冷却風排出ガイド197とを備える。冷却構造190は、熱交換器として、ラジエータ192と、オイルクーラー194と、インタークーラー195と、を備える。
【0032】
冷却ファン191は、冷却風を機外から防塵装置を介して冷却風ダクト193内に吸引しながら、オイルクーラー194、およびインタークーラー195、並びにその周囲を通過した冷却風を前記ダクト外へ排出するものである。冷却ファン191は、エンジンフレーム182の左側面に設けられた図示しない梁部に回転自在に支持され、駆動時に発生させる冷却風がエンジンフレーム182の内部空間上側を右方の機外から左方の脱穀部140側へ通り抜けるように配置される。冷却ファン191は、エンジン181からの回転動力により回転可能に構成される。
【0033】
ラジエータ192は、エンジン181の循環式冷却水を冷却するものであり、略直方体状に構成される。ラジエータ192は、エンジンフレーム182の内部空間上側に左寄りに収容される。ラジエータ192は、放熱面が冷却ファン191と対向するように、冷却ファン191の右側方に配置される。ラジエータ192は、その下方に配置されたエンジン181のウォータージャケット181aと冷却水配管192aを介して接続され、冷却水をエンジン181との間で循環させることができるように構成される(図6(a)参照)。
【0034】
冷却風ダクト193は、冷却ファン191によって吸引される機外からの冷却風をラジエータ192に案内するものである。冷却風ダクト193は、左右両端部に開口部を有する略筒状に形成され、左側の開口部の外周形状がラジエータ192の右側の放熱面の外周形状と略同一形状に構成される。冷却風ダクト193は、両端部の開口部がそれぞれ機体左右方向に臨むように、エンジンフレーム182の内部空間上側に右寄りに収容される。冷却風ダクト193は、ラジエータ192の右側方に配置されて、左側の開口部が右側の放熱面に臨むようにラジエータ192と接続される(図7参照)。また、冷却風ダクト193は、その右側の開口部に取り付けられた防塵装置を介して機外と連通される。こうして、冷却風ダクト193は、その内部に冷却ファン191の駆動により発生する冷却風の流路を形成し、冷却風を機外から内部に右側の開口部を通じて取り入れて、流路を流れる冷却風をラジエータ192に案内しつつ左側の開口部を通じて送り出すことができるように構成される。
【0035】
図5、および図6(a)に示すように、オイルクーラー194は、図示しない油圧シリンダ等の油圧機器の作動油を冷却するものである。オイルクーラー194は、略直方体状に構成されて、コンバイン100の油圧機器に接続された油圧回路111と給油管194aを介して接続される。オイルクーラー194の上下方向幅は、ラジエータ192の上下方向幅の略半分に設定される。オイルクーラー194の前後方向幅は、冷却風ダクト193の右側開口部の前後方向幅と略同一に構成される。オイルクーラー194は、左側放熱面がラジエータ192の右側放熱面と対向するように、冷却風ダクト193に収容される。そして、オイルクーラー194は、前後両端部および上端部が冷却風ダクト193の内壁との間に略隙間が生じないように、冷却風ダクト193内(冷却風の流路)の上側に配置される(図7参照)。
【0036】
インタークーラー195は、エンジン181に付設された過給機181cにより圧縮された外気を冷却するものである。インタークーラー195は、略直方体状に構成され、エンジン181の給気マニホールド181b、および過給機181cと給気管195aを介して接続される。インタークーラー195の上下方向幅は、ラジエータ192の上下方向幅の略半分に設定される。インタークーラー195の前後方向幅はラジエータ192の前後方向幅の略半分に設定される。インタークーラー195は、左側放熱面がラジエータ192の右側放熱面と対向するように、冷却風ダクト193に収容される。
【0037】
そして、インタークーラー195は、前端部および下端部が冷却風ダクト193の内壁との間に略隙間が生じないように、オイルクーラー194の右側方であって冷却風ダクト193内の前側下方に配置される(図7参照)。この際、インタークーラー195は、その左側放熱面とオイルクーラー194の右側放熱面との間を冷却風が容易に通過できない程度にオイルクーラー194に近接して配置される。さらに、インタークーラー195は、冷却風ダクト193内における冷却風の流れ方向において(冷却風ダクト193の側面視において)、他の熱交換器であるオイルクーラー194と重複しないように配置される。厳密に言えば、インタークーラー195は、その冷却風の通過部分がオイルクーラー194の冷却風の通過部分と重複しないように配置される。
【0038】
以上のように、オイルクーラー194およびインタークーラー195を冷却風ダクト193内に配置することによって、ラジエータ192には、冷却風の流れ方向(冷却風ダクト193を側面)からみてラジエータ192の放熱面にオイルクーラー194が投影された投影部分(以下、単に「オイルクーラー投影部分」と記す)と、ラジエータ192の放熱面にインタークーラー195が投影された投影部分(以下、単に「インタークーラー投影部分」と記す)と、が形成される。
【0039】
オイルクーラー194の後部下方、かつインタークーラー195の後方において、オイルクーラー194およびインタークーラー195と、冷却風ダクト193の内壁との間に間隙が形成される。そのため、冷却風の流れ方向からみて冷却風ダクト193内の後側下方には、オイルクーラー投影部分、およびインタークーラー投影部分に含まれないラジエータ192の放熱面(以下、単に「未投影部分」と記す)が表れる。オイルクーラー194およびインタークーラー195の容量は、エンジンの出力や作動油の使用量等によって決定されるが、大きさが定められている既製品または規格品を用いることによりコストの低減化が図られる。
【0040】
図6(b)に示すように、冷却風吸引ガイド196は、冷却風を冷却風ダクト193内においてオイルクーラー194およびインタークーラー195の少なくともいずれか一方に案内するものである。冷却風吸引ガイド196は、冷却風の流れ方向においてオイルクーラー194およびインタークーラー195と、冷却風ダクト193の内壁との間に形成される間隙の部分、本実施形態においてはオイルクーラー194の後部下方、かつインタークーラー195の後方となる冷却風ダクト193内の後下側の未投影部分に配置される。また、冷却風吸引ガイド196は、冷却風ダクト193内において、冷却風の流れ方向において(冷却風ダクト193の側面視において)、オイルクーラー194およびインタークーラー195と重複せず、しかもこれらのオイルクーラー194およびインタークーラー195で冷却風の流路を略塞ぐように配置される。
【0041】
冷却風吸引ガイド196は、冷却風ダクト193の内壁との間に隙間が生じないよう、冷却風ダクト193と一体的に形成される。冷却風吸引ガイド196は、平面視において、オイルクーラー194と冷却風ダクト193の右側開口部との間に延在し、冷却風ダクト193の右側開口部の後側縁部から左前方へ向かってインタークーラー195の後側端部付近まで傾斜する略直角三角形の三角柱状に形成される。冷却風吸引ガイド196の上下方向幅は、インタークーラー195の上下方向幅と同程度に設定される。こうして、冷却風の流れ方向からみて未投影部分に冷却風吸引ガイド196の投影部分が投影されるように構成される(図6(a)参照)。
【0042】
図5に示すように、冷却風排出ガイド197は、冷却風ダクト193から排出されてラジエータ192を通過した冷却風がエンジンルーム182aへ流入するのを防止するものである。冷却風排出ガイド197は板状部材から形成される。冷却風排出ガイド197の前後方向幅は、ラジエータ192の前後方向幅と同程度に設定される。冷却風排出ガイド197は、その板面を上下に向けてエンジンルーム182aの左上方に配置され、冷却風ダクト193の冷却風排出側である冷却ファン191の真下付近から冷却風ダクト193に対して離間するように左方向へ延出される。この際、冷却風排出ガイド197は、エンジンフレーム182左側の上下方向略中央部分と脱穀部140の脱穀部フレーム141との間に略水平方向に横設された補強パイプ183上に積載固定される。そして、冷却ファン191の左側方であって、エンジンフレーム182と脱穀部140との間に、冷却風排出口198が設けられる。
【0043】
次に、図5、図6(b)、および図7を用いて、冷却風の流れの態様について説明する。
【0044】
図5に示すように、冷却ファン191がエンジン181からの回転動力により回転駆動されると、冷却ファン191によって、冷却風が機外から冷却風ダクト193内に右側開口部を通じて吸引される(白矢印参照)。冷却風ダクト193内に吸引された冷却風は、左側開口部に向かって流路を流れる。
【0045】
図6(b)に示すように、冷却風ダクト193内において、冷却風の一部は、右側開口部から直進して、オイルクーラー194を通過し(白矢印B参照)、その後にラジエータ192のオイルクーラー投影部分を通過する。冷却風の一部は、右側開口部から直進して、インタークーラー195を通過し(白矢印C参照)、その後にラジエータ192のインタークーラー投影部分を通過する。また、冷却風の一部は、右側開口部から直進して冷却風吸引ガイド196にあたって、インタークーラー195およびオイルクーラー194の少なくとも一方(本実施形態においては、主にインタークーラー195)に案内される(白矢印D参照)。そして、この冷却風の一部は、オイルクーラー194、またはインタークーラー195を通過し、その後にラジエータ192のオイルクーラー投影部分またはインタークーラー投影部分を通過する。
【0046】
この際、前述のように、オイルクーラー194およびインタークーラー195が冷却風ダクト193との間に略隙間が生じないように配置されるとともに、冷却風吸引ガイド196が冷却風の流れ方向においてオイルクーラー194およびインタークーラー195とで冷却風の流路を略塞ぐように配置されているため、冷却風ダクト193内に吸引された冷却風の大部分は、オイルクーラー194またはインタークーラー195を通過せずに、ラジエータ192を通過することがない。言い換えれば、冷却風ダクト193内に吸引された冷却風は、オイルクーラー194またはインタークーラー195と冷却風ダクト193との隙間や、インタークーラー195とオイルクーラー194との隙間を通過して、ラジエータ192に至りにくくなる。つまり、冷却風ダクト193内に吸引された冷却風は、概ね直接または冷却風吸引ガイド196に案内されてオイルクーラー194またはインタークーラー195を通過することとなる。
【0047】
そのうえ、オイルクーラー194およびインタークーラー195が、冷却風の流れ方向において、それぞれ重複しないように配置されているため、冷却風ダクト193内を通過する冷却風の通過抵抗が冷却風ダクト193内の位置によらず略同一であり、冷却風の流れが特定の部分に集中することがない。また、冷却風ダクト193内において、一つの熱交換器を通過して熱交換により暖められた冷却風が、別の熱交換器を通過して熱交換によりさらに暖められたあと、ラジエータ192を通過することがない。
【0048】
図7に示すように、冷却風ダクト193内でオイルクーラー194またはインタークーラー195を通過し、冷却風ダクト193から排出されてラジエータ192を通過することにより高温に暖められた冷却風(黒矢印E参照)は、ラジエータ192の左側方へ流れて、冷却風排出口198から機体左上方へ排出される。この際、暖められた冷却風は、ラジエータ192の通過後に、エンジンルーム182aに連通するラジエータ192の左下方の空間に流れようとしても、その空間の手前で冷却風排出ガイド197にあたり、これにより冷却風排出口198に案内される。このように冷却風排出ガイド197により案内されることによって、暖められた冷却風は、エンジンルーム182aに流入せず、エンジン181に向かって流れなくなって、冷却風排出口198から機外へ排出されることとなる。
【0049】
以上の如く、本実施形態のコンバイン100は、熱交換器であるラジエータ192と、オイルクーラー194と、インタークーラー195と、を収容する冷却風ダクト193と、冷却風を冷却風ダクト193内に吸引しながら、ラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195およびその周囲を通過した冷却風を冷却風ダクト193外へ排出する送風装置としての冷却ファン191と、冷却風ダクト193内に収容されて、冷却ファン191により冷却風ダクト193内に吸入された冷却風をラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195に案内する冷却風吸引ガイド196と、を備えるものである。
【0050】
このように構成することにより、冷却ファン191により冷却風ダクト193内に吸引された冷却風が、ラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195を通過せずにその周囲を通って、即ちラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195と冷却風ダクト193の内壁との隙間を通って、冷却風ダクト193から排出されにくくなる。したがって、ラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195を通過する冷却風の風量を増大させて、ラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195の冷却効率を向上させることができる。
【0051】
また、冷却風吸引ガイド196は、冷却風ダクト193内における冷却風の流れ方向において、ラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195と重複しないように配置されるものである。
【0052】
このように構成することにより、前述の効果に加え、冷却ファン191により冷却風ダクト193内に吸引された冷却風が、ラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195に効率よく案内されることになる。したがって、ラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195を通過する冷却風の風量を増大させて、ラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195の冷却効率を向上させることができる。
【0053】
また、ラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195は、冷却風ダクト193内における冷却風の流れ方向において、それぞれ重複しないように並置されるものである。
【0054】
このように構成することにより、前述の効果に加え、冷却ファン191により冷却風ダクト193内に吸引された冷却風が、ラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195のうち一つの熱交換器を通過して熱交換した後、冷却風ダクト193から排出されることになる。したがって、冷却風とラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195との熱交換を効率よく行って、ラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195の冷却効率を向上させることができる。
【0055】
また、冷却風ダクト193の冷却風排出側から冷却風ダクト193に対して離間する方向へ延出されて、冷却風ダクト193から排出された冷却風を冷却風ダクト193の下方に配置されたエンジン181に向かって流れないように案内する冷却風排出ガイド197を備えるものである。
【0056】
このように構成することにより、ラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195との熱交換で暖められた冷却風が、冷却風排出ガイド197により案内されて、冷却風ダクト193から円滑に排出されることになる。したがって、冷却風ダクト193内における冷却風の抜けをよくして、ラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195の冷却効率を向上させることができる。また、ラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195との熱交換で暖められた冷却風が、エンジン181に向かって流れなくなる。したがって、エンジン181がラジエータ192、オイルクーラー194、インタークーラー195の熱交換で暖められた冷却風により暖められることを防止して、エンジン181の冷却効率の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0057】
100 コンバイン
181 エンジン
182a エンジンルーム
190 冷却構造
191 冷却ファン
192 ラジエータ
193 冷却風ダクト
194 オイルクーラー
195 インタークーラー
196 冷却風吸引ガイド
197 冷却風排出ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器を収容する冷却風ダクトと、
冷却風を前記冷却風ダクト内に吸引しながら、前記熱交換器およびその周囲を通過した冷却風を前記冷却風ダクト外へ排出する送風装置と、
前記冷却風ダクト内に収容されて、前記送風装置により前記冷却風ダクト内に吸入された冷却風を前記熱交換器に案内する冷却風吸引ガイドと、を備えるコンバイン。
【請求項2】
前記冷却風吸引ガイドは、前記冷却風ダクト内における冷却風の流れ方向において、前記熱交換器と重複しないように配置される請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記熱交換器を複数備え、
前記複数の熱交換器は、前記冷却風ダクト内における冷却風の流れ方向において、それぞれ重複しないように並置される請求項1または請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記冷却風ダクトの冷却風排出側から当該冷却風ダクトに対して離間する方向へ延出されて、前記冷却風ダクトから排出された冷却風を前記冷却風ダクトの下方に配置されたエンジンに向かって流れないように案内する冷却風排出ガイドを備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−168105(P2011−168105A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31872(P2010−31872)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】