説明

コンバイン

【課題】エンジンルームから機体の外方に排出される熱風の一部が機体の隙間や運転席側方の操縦用のサイドパネル等から運転席側に流入し、オペレータに不快感を与えるといった作業環境の面での不具合を改善する。
【解決手段】エンジン4を覆うエンジンカバー24を構成する前面カバー24aに連続する排風部材28,29を、運転席6の左側方に備える操縦用のサイドパネル18の下方に設けることによって、エンジンルーム25内の熱風が操縦用のサイドパネル18の側方にスムーズに排出案内されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席の下方にラジエータと冷却ファンを備えるエンジンを搭載すると共に、該エンジンを覆うエンジンカバーを備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインでは、運転席の下方に搭載したエンジンを覆うエンジンカバーによりエンジンルームを形成し、このエンジンルームの左右一側に配設したラジエータに冷却ファンが吸入する冷却風を供給すると共に、ラジエータを通過して熱せられた排風、即ち熱風をエンジンルームの他側から排出するように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−287332号公報(第3頁、図2−図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した特許文献1のものは、エンジンルームの他側から機体の外方に排出される熱風の一部が、機体の隙間や運転席側方の操縦用のサイドパネル等から運転席側に流入し、それによってオペレータに不快感を与えることがあり、作業環境の面で改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、走行機体の前部右側に配置した運転席の下方に、ラジエータと冷却ファンを備えるエンジンを搭載すると共に、該エンジンを覆うエンジンカバーによりエンジンルームを形成し、前記ラジエータを通過して熱せられた排風を、エンジンルームの左側に備える前処理部の穀稈搬送装置の方向に排出するように構成したコンバインにおいて、前記エンジンカバーを構成する前面カバーに連続する排風部材を、運転席の左側方に備える操縦用のサイドパネルの下方に設けたことを第1の特徴としている。
そして、前記排風部材が可撓性材料からなることを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、エンジンカバーを構成する前面カバーに連続する排風部材を、運転席の左側方に備える操縦用のサイドパネルの下方に設けたことによって、前記排風部材に沿ってエンジンルーム内の熱風が操縦用のサイドパネルの側方にスムーズに排出案内されるようになり、当該熱風が機体の隙間や運転席側方の操縦用のサイドパネル等から運転席側に流入し難くなるので、オペレータに対する作業環境が改善される。
そして、請求項2の発明によれば、排風部材が可撓性材料からなるので、サイドパネル下方の保守点検や掃除を行なう際は、前記排風部材を脱着することなく捲り上げて容易に作業することができる
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】コンバインの平面図。
【図2】一部を省略したコンバインの左側面図。
【図3】操縦部周辺の透視平面図。
【図4】操縦部及び脱穀部周辺の斜視図。
【図5】排風部材の装着方法を示す斜視図。
【図6】排風部材を装着した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明を適用するコンバインの平面図、図2は、一部を省略したコンバインの左側面図、図3は、操縦部周辺の透視平面図、図4は、操縦部及び脱穀部周辺の斜視図であって、コンバイン1は、走行部である左右のクローラ走行装置2に支持した走行機体3を有しており、該走行機体3の前部右側にエンジン4を搭載し、このエンジン4の上方にコンバインの操縦部5を構成する運転席6を配置している。
【0010】
一方、走行機体3の前部左側には、穀稈の刈取りと搬送を行なう前処理部7を昇降自在に架設し、この前処理部7の後方には、刈取った穀稈を脱穀する脱穀部8と、該脱穀部8で脱穀された後の排稈を後方に搬送する排藁搬送装置9と、該排藁搬送装置9を介して搬送される排藁を切断処理するカッタ装置11を備えている。
【0011】
また、運転席6の後方には、脱穀部8の図示しない選別部で選別された穀粒を揚穀筒12により揚上搬送して一時的に貯留するグレンタンク13が設けてあり、このグレンタンク13内に一時的に貯留された穀粒は、図示しない縦搬送パイプを経て起伏及び回動動作自在な穀粒排出オーガ14の排出口から機外に排出できるようになっている。
【0012】
そして、運転席6前方の床面を形成する搭乗ステップ15の前側には、走行機体3の操向及び前処理部7の昇降操作を行うマルチステアリングレバー16を備えた操縦塔17を立設している。また、運転席6の左側には、操縦用のサイドパネル18が設けてあり、該サイドパネル18には、主変速レバー19や副変速レバー21等のコンバインの操縦に必要な各種操作具と、機体の左右傾斜角を一定の角度に設定する図示しない水平ダイヤルや、扱ぎ深さ自動制御を実行可能状態または実行不能状態に切替える図示しない切替えスイッチ等を配置している。
【0013】
また、運転席6の下方に搭載されているエンジン4は、ラジエータ22と冷却(吸引)ファン23を備えており、これらエンジン4、ラジエータ22、及び冷却ファン23は、箱状のエンジンカバー24により覆われており、このエンジンカバー24によって運転席6の下方にエンジンルーム25を形成している。そして、エンジンルーム25の外側(右側)には、図示しない防塵網を張設した吸風口を有する側方カバー26を設けてあり、この側方カバー26の吸風口から冷却ファン23により冷却風を吸入して、図3及び図4にA矢印で示す如くラジエータ22に供給すると共に、該ラジエータ22を通過して熱せられた排風(熱風)が、図3及び図4にB矢印で示すように、エンジンルーム25の左側(機体中心側)から前処理部7の扱深さ搬送装置(穀稈搬送装置)27の方向に排出されるようになっている。
【0014】
ところが、上述の如くエンジンルーム25の左側から機体の外方に排出される排風(熱風)の一部が機体の隙間や運転席6側方の操縦用のサイドパネル18等から運転席6側に流入し、それによってコンバイン1のオペレータに不快感を与えることがあり、その対策としてエンジンカバー24を構成する前面カバー24aの前処理部7側の端部から、運転席6の左側方に備える操縦用のサイドパネル18の下方に連続する内側の排風部材28と外側の排風部材29とを設けている。
【0015】
更に詳しく説明すると、図5及び図6は、前記排風部材28,29の装着方法を示す斜視図と排風部材28,29をサイドパネル18の下方に装着した状態を示す斜視図であって、機体フレーム31に下端部(基端部)が装着される支持ステー32の上端部にサイドパネル18の前側部分を片持ち状に固設している。
【0016】
そして、内側の排風部材28は、樹脂製のプレートからなり、上下方向中央部に図示しない配索物を通過させるための切欠き28aを設けると共に、その上部を支持ステー32の上部にボルト33を用いて螺設している。また、外側の排風部材29は、可撓性材料である塩化ビニル製のシートからなり、その基端部側を排風部材28の外側端部に樹脂製クリップ(連結用ファスナー)34を用いて固定する一方、先端部側は、サイドパネル18の側方から前処理部7の穀稈搬送装置方向に下がり傾斜で延出した仕切り板35の前端部に樹脂製クリップ34を用いて固定されている(図2及び図4参照)。
【0017】
尚、外側の排風部材29の前面側には、トランスミッション36の主変速機を構成する静油圧式無段変速装置37にエンジン4の動力を伝達する伝動ベルト38との干渉を回避すべく切欠き29aを設けている。また、図2における符号39は、サイドパネル18の左前側(機体中心側)下方を覆う外側カバーであって、この外側カバー39により外側の排風部材29の大半が覆われている。
【0018】
以上説明したように、走行機体3の前部右側に配置した運転席6の下方に、ラジエータ22と冷却ファン23を備えるエンジン4を搭載すると共に、該エンジン4を覆うエンジンカバー24によりエンジンルーム25を形成し、前記ラジエータ22を通過して熱せられた排風を、エンジンルーム25の左側に備える前処理部7の穀稈搬送装置27の方向に排出するように構成したコンバインにおいて、前記エンジンカバー24を構成する前面カバー24aに連続する排風部材28,29を、運転席6の左側方に備える操縦用のサイドパネル18の下方に設けたことによって、前記排風部材28,29に沿ってエンジンルーム25内の熱風が操縦用のサイドパネル18の側方にスムーズに排出案内されるようになり、当該熱風が機体の隙間や運転席6側方の操縦用のサイドパネル18等から運転席6側に流入し難くなるので、オペレータに対する作業環境が改善される。
そして、外側の排風部材29が可撓性材料からなるので、サイドパネル18下方の保守点検や掃除を行なう際は、前記排風部材29を脱着することなく捲り上げて容易に作業することができる。
【符号の説明】
【0019】
3 走行機体
4 エンジン
6 運転席
18 サイドパネル
22 ラジエータ
23 冷却ファン
24 エンジンカバー
24a 前面カバー
25 エンジンルーム
28 排風部材(内側)
29 排風部材(外側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(3)の前部右側に配置した運転席(6)の下方に、ラジエータ(22)と冷却ファン(23)を備えるエンジン(4)を搭載すると共に、該エンジン(4)を覆うエンジンカバー(24)によりエンジンルーム(25)を形成し、前記ラジエータ(22)を通過して熱せられた排風を、エンジンルーム(25)の左側に備える前処理部(7)の穀稈搬送装置(27)の方向に排出するように構成したコンバインにおいて、前記エンジンカバー(24)を構成する前面カバー(24a)に連続する排風部材(28,29)を、運転席(6)の左側方に備える操縦用のサイドパネル(18)の下方に設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記排風部材(29)が可撓性材料からなる請求項1に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−36173(P2011−36173A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186178(P2009−186178)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】