説明

コンバイン

【課題】コンバインの刈取装置を弾性的に支持する弾性支持機構を円滑に作動させるものでありながら、機体をコンパクトに構成する。
【解決手段】刈取装置(4)と機体フレーム(1)の間に、刈取装置(17)を昇降させる刈取昇降シリンダ(20)と刈取装置(4)を上昇方向へ付勢する弾性支持機構(21)を設け、刈取装置(4)の下部に設けた橇体(32)が圃場面の凹凸により突き上げ力を受けると、この突き上げ力と弾性支持機構(21)の上方付勢力によって刈取部(4)が上昇退避する構成とし、前記弾性支持機構(21)を穀稈支持板(41)の下方に配置し、該弾性支持機構(21)の基端部を機体フレーム(1)に連結し、該弾性支持機構(21)の先端部を前記縦支持伝動筒体(11)の上部から後方へ延出した連結アーム(27)の後端部に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの刈取装置は、特許文献1に示すように、この刈取装置と機体フレームとの間に油圧式の昇降シリンダを設け、上下昇降可能に構成するとともに、昇降シリンダとは別に設けた弾性支持機構によって刈取装置の接地荷重を軽減し、刈取装置を圃場面の凹凸に接地追従させて、刈取装置によって穀稈を刈取る高さを一定にする技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−131285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、刈取部フレームの上側に設けた搬送装置から落下した藁屑が、弾性支持機構にかかって堆積し、この弾性支持機構が円滑に作動しなくなる虞がある。
【0005】
また、刈取部フレームとミッションケースが側面視重合しており、刈取部を機体左右方向に移動可能な構成としている。これらの事からミッションケースが刈取フレームよりも機体進行方向右側に配置されていると解される。このため、ミッションケースと弾性支持機構とが左右に併設されているために、機体が大型化する問題がある。
【0006】
本発明の課題は、弾性支持機構を円滑に作動させるものでありながら、機体をコンパクトに構成したコンバインを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するために、次の技術的手段を講じる。
すなわち、請求項1記載の発明は、機体フレーム(1)の下側に走行装置(3)を設け、機体フレーム(1)の上側に穀稈供給搬送装置(17)を備えた脱穀装置(2)を設け、機体フレーム(1)の前側に刈取装置(4)を設け、該刈取装置(4)は機体フレーム(1)側の刈取支持軸(10)を支点に縦支持伝動筒体(11)で回動自在に支持し、刈取装置(17)で刈り取った穀稈の株元側を穀稈供給搬送装置(17)に引継ぎ、穂先側は脱穀装置(2)の前方に設けた穀稈支持板(41)により下方から支持して脱穀装置(2)に供給する構成とし、前記刈取装置(4)と機体フレーム(1)の間に、刈取装置(17)を昇降させる刈取昇降シリンダ(20)と刈取装置(4)を上昇方向へ付勢する弾性支持機構(21)を設け、刈取装置(4)の下部に設けた橇体(32)が圃場面の凹凸により突き上げ力を受けると、この突き上げ力と弾性支持機構(21)の上方付勢力によって刈取部(4)が上昇退避する構成とし、前記弾性支持機構(21)を穀稈支持板(41)の下方に配置し、該弾性支持機構(21)の基端部を機体フレーム(1)に連結し、該弾性支持機構(21)の先端部を前記縦支持伝動筒体(11)の上部から後方へ延出した連結アーム(27)の後端部に接続したことを特徴とするコンバインとした。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記走行装置(3)を駆動する走行ミッション(31)を、前記縦支持伝動筒体(11)の下方に設け、前記弾性支持機構(21)を走行ミッション(31)よりも機体外側方へ偏倚した位置に配置し、前記連結アーム(27)の前端部を、走行ミッション(31)の外側方を迂回して縦支持伝動筒体(11)の上部に固定したことを特徴とする請求項1記載のコンバインとした。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記連結アーム(27)の後端部に、機体外側方に向けて突出した取付ピン(28)を設け、弾性支持機構(21)の先端部を該取付ピン(28)回りに回動自在に取り付けたことを特徴とする請求項2記載のコンバインとした。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記弾性支持機構(21)は、前側筒状体(22)と、該前側筒状体(22)の内部に摺動可能に挿入した後側筒状体(23)と、該前側筒状体(22)及び後側筒状体(23)の内部に設けた圧縮スプリング(35)とで構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載のコンバインとした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、脱穀装置(2)の前側に設けた穀稈支持板(41)の下方に弾性支持機構(21)を配置し、この弾性支持機構(21)の基端部を機体フレームに連結し、弾性支持機構(21)の先端部を縦支持伝動筒体(11)の上部から後方に延出した連結アーム(27)の後端部に接続したので、弾性支持機構(21)の前後長を短く形成して、その先端部を縦支持伝動筒体(11)から後方に離れた位置に配置することができるので、刈取装置(4)で発生して下方に落下する藁屑が弾性支持機構(21)にかかり難く、弾性支持機構(21)の作動を円滑な状態に維持することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、前記請求項1記載の発明による効果に加えて、走行ミッション(31)を、縦支持伝動筒体(11)の下方に設けたので、機体幅をコンパクトに構成することができる。
【0013】
その上、弾性支持機構(21)を走行ミッション(31)よりも機体外側方に偏倚した位置に配置し、連結アーム(27)の前端部を走行ミッション(31)の外側方を迂回して縦支持伝動筒体(11)の上部に固定したので、弾性支持機構(21)及び連結アーム(27)と走行ミッション(31)とが干渉せず、弾性支持機構(21)を円滑に作動させることができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、前記請求項2記載の発明の効果に加えて、連結アーム(27)の後端部の機体外側方に向けて突出した取付ピン(28)に弾性支持機構(21)を取り付けたので、弾性支持機構(21)と走行ミッション(31)との間隔を広げて、干渉を更に効果的に防止できる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、前記請求項1又は請求項2又は請求項3記載の発明による効果に加えて、前方から走行風により浮遊してきた塵埃が、前側筒状体(22)と後側筒状体(23)の間から進入し難く、弾性支持機構(21)の作動を更に円滑な状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】コンバインの側面図
【図2】コンバインの平面図
【図3】コンバインの要部平面図
【図4】弾性支持機構の側面図
【図5】弾性支持機構の一部を示す側面図
【図6】連結アームの平面図
【図7】連結アームの側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図面により説明する。
図1及び図2に示すように、本発明を実施するコンバインは、機体フレ−ム1の下側に走行装置3を設け、機体フレーム1の上側に脱穀装置2を設け、脱穀装置2の前側に刈取装置4を設け、脱穀装置2の右側に該脱穀装置2で脱穀された穀物を貯留するグレンタンク5を設け、グレンタンク5の前側に操縦部6を設け、グレンタンク5の後側には穀物を外部へ排出する排出装置7を設ける。
【0018】
操縦部6には、前後傾倒操作によって、出力回転速度を無段階に変速可能な油圧式無段変速装置30の変速比を変更する変速操作レバー18と、前後傾倒操作によって刈取装置4を昇降させ、左右傾倒操作によって機体を操向及び旋回させる複合操作レバー19を備える。
【0019】
操縦部6の座席6a下側には機体フレーム1上にエンジン(図示省略)を設けている。操縦席6前部の下方位置には前記油圧式無段変速装置30を一体で備える走行ミッション31を配置しており、油圧式無段変速装置30によって変速した駆動力を、走行ミッション31を介して走行クローラ3aに伝達して駆動する構成である。
【0020】
前記刈取装置4は機体フレーム1の前端部上方位置で、機体左右方向に沿う刈取支持軸10に支持された縦支持伝動筒体11と、その先端側に設けた横支持伝動筒体12に、引起装置14、分草体13、刈刃15および引継搬送装置16を備えて構成する。
【0021】
引起装置14によって引起された穀稈は刈刃15で株元を切断され、右側搬送装置39及び左側搬送装置40によって各条の穀稈を合流が合流して後方に搬送され、穂先引継搬送装置16a及び株元引継搬送装置16bからなる引継搬送装置16に穀稈を受継ぎ搬送する。引継搬送装置16は刈取支持軸10まわりに前端側を回動自在な構成としており、右側搬送装置39と左側搬送装置40から引継ぐ穀稈の稈身方向の挟持位置を変更することで、脱穀装置2による脱穀扱深さを変更可能としている。
【0022】
脱穀装置2の左横側部には、引継搬送装置16の搬送終端部から引き継いだ穀稈を脱穀装置2の扱胴に供給しながら後方へ搬送する穀稈供給搬送装置17を設ける。この穀稈供給搬送装置17は、供給搬送チェン(フィードチェン)17aと、この搬送供給チェン17aの上側に対向位置に設けた挟扼杆17bを備える。
【0023】
刈取装置4の支持構造について説明する。
刈取装置4は、走行ミッション31の上部に設けた刈取支持軸10に回動自在に支持される縦支持伝動筒体11の中間部位と走行フレーム1との間に設けた単動式の刈取昇降シリンダ20によって上下昇降可能としており、縦支持伝動筒体11の刈取昇降シリンダ20取付部位よりも基部側位置と走行フレーム1との間には、弾性支持機構21を設けている。刈取装置4の自重で下向き回動させる荷重が掛かる縦支持伝動筒体11を弾性支持機構21によって上向き付勢している。
【0024】
刈取作業時には、刈取装置4は横支持伝動筒体12から前側に延出した分草フレーム13aの下側に設けた橇体32を圃場面に接触させて、圃場面の凹凸に追従して前記刈刃15により穀稈を刈取る高さ(刈高さ)を一定に保ちながら前進するが、圃場面の凸部で、橇体32が上方向に押し上げられると、前記弾性支持機構21により常時上向き付勢しているために容易に刈取装置4が上昇する。なお、刈取昇降シリンダ20は単動型の油圧シリンダであるため、伸長方向への動きは許容することができる。
【0025】
図4乃至図7に基づいて弾性支持機構21の詳細を説明する。
この弾性支持機構21は、縦支持伝動筒体11の下側に設けた走行ミッション31よりも機体進行方向左側の位置に、平面視縦支持伝動筒体11よりも機体進行方向左側に偏倚した位置に配置しており、縦支持伝動筒体11に固定の連結アーム27と弾性支持機構21の先端部とを屈折自在に接続し、弾性支持機構21の後端を走行フレーム1に、機体左右方向の軸で回動自在に取付けている。
【0026】
従って、縦支持伝動筒体11に連結フレーム27を介して弾性支持機構21を接続しているので、縦支持伝動筒体11から後方に離して配置でき、刈取装置4で発生する藁屑が縦支持伝動筒体11にかかって堆積することによる弾性支持機構21の作動不良を防止することができる。
【0027】
また、連結フレーム27の前端部を縦支持伝動筒体11に固定しているので、走行ミッション31と連結フレーム27との干渉も起こり難く好適である。
また、弾性支持機構21を連結フレーム27と機体フレーム1との間で、両端を回動可能に接続しているので、縦支持伝動筒体11と共に連結フレーム27が回動すると、連結フレーム27の後端部は、刈取支持軸10を中心とした円弧軌跡を描いて移動するが、この際に、弾性支持機構21はこの動きに合わせて傾斜姿勢が変更されるため、弾性支持機構に曲げ応力等の作動方向(伸縮方向)以外への応力が掛かりにくく、円滑に作動させることができ、耐久性を高めることができる。
【0028】
弾性支持機構21は中空円筒形状の前側筒状体22に後側筒状体23を挿入し、両筒状体22,23を摺動自在な構成としている。筒状体22,23の内部には圧縮スプリング35を備え、筒状体22,23の端面22a,23a間で弾発付勢するべく構成している。前側筒状体22の縦支持伝動筒体11側には取付部材24を一体的に設け、この取付部材24に前記連結アーム27を、中間連結片25を介して取り付ける。後側筒状体23を前側筒状体22の内部に挿入した構成により、前方から浮遊する藁屑が、前側筒状体22と後側筒状体23の間から進入せず、常に弾性支持機構21の作動を円滑に維持することができる。
【0029】
連結アーム27は縦支持伝動筒体11側の基部側部分と先端側部分の軸線同士が略直角を成す、平面視略L字形状の曲げパイプ部材であり、先端側には段付きの取付ピン28を設け、前記中間連結片25に設けたカラー26に小径部28aを挿入し、小径部28aの先端側に設けた孔部28cに所謂割ピン等の抜け止め部材29を取り付ける。取付ピン28の大径部28bの外径はカラー26の内径よりも大きく、カラー26は取付ピン28に対して取付ピン28の軸線方向へ移動不能に取付られる。中間連結片25には長孔25b,25bを設け、前記取付部材24の固定孔24c,24cとボルト等で締結する。長孔25b,25bに取付るため、位置調節自在な構成となっている。固定孔24c,24cの間には、切欠部24bを設けており、この切欠部24bに前記カラー26が入り込むため、取付部材24に対する中間連結片25の取付位置を調節可能としながらコンパクトに構成できる。
【0030】
連結アーム27の基部側は、縦支持伝動筒体11に設けた固定部33の挿入孔33aに連結アーム27の先端を挿入し、螺子孔33bにボルト等を取付て固定する。固定部33は縦支持伝動筒体11の軸方向視コの字形状となっており、この固定部33に連結アーム27の固定部材34を外側に嵌め込むことによって確実に固定し、強度を向上させる。
【符号の説明】
【0031】
1 機体フレーム
2 脱穀装置
3 走行装置
4 刈取装置
10 刈取支持軸
11 縦支持伝動筒体
16 引継搬送装置
17 穀稈供給搬送装置
20 刈取昇降シリンダ
21 弾性支持機構
22 前側筒状体
23 後側筒状体
27 連結アーム
28 取付ピン
31 走行ミッション
32 橇体
35 圧縮スプリング
41 穀稈支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレーム(1)の下側に走行装置(3)を設け、機体フレーム(1)の上側に穀稈供給搬送装置(17)を備えた脱穀装置(2)を設け、機体フレーム(1)の前側に刈取装置(4)を設け、該刈取装置(4)は機体フレーム(1)側の刈取支持軸(10)を支点に縦支持伝動筒体(11)で回動自在に支持し、刈取装置(17)で刈り取った穀稈の株元側を穀稈供給搬送装置(17)に引継ぎ、穂先側は脱穀装置(2)の前方に設けた穀稈支持板(41)により下方から支持して脱穀装置(2)に供給する構成とし、
前記刈取装置(4)と機体フレーム(1)の間に、刈取装置(17)を昇降させる刈取昇降シリンダ(20)と刈取装置(4)を上昇方向へ付勢する弾性支持機構(21)を設け、刈取装置(4)の下部に設けた橇体(32)が圃場面の凹凸により突き上げ力を受けると、この突き上げ力と弾性支持機構(21)の上方付勢力によって刈取部(4)が上昇退避する構成とし、
前記弾性支持機構(21)を穀稈支持板(41)の下方に配置し、該弾性支持機構(21)の基端部を機体フレーム(1)に連結し、該弾性支持機構(21)の先端部を前記縦支持伝動筒体(11)の上部から後方へ延出した連結アーム(27)の後端部に接続したことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記走行装置(3)を駆動する走行ミッション(31)を、前記縦支持伝動筒体(11)の下方に設け、
前記弾性支持機構(21)を走行ミッション(31)よりも機体外側方へ偏倚した位置に配置し、前記連結アーム(27)の前端部を、走行ミッション(31)の外側方を迂回して縦支持伝動筒体(11)の上部に固定したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記連結アーム(27)の後端部に、機体外側方に向けて突出した取付ピン(28)を設け、弾性支持機構(21)の先端部を該取付ピン(28)回りに回動自在に取り付けたことを特徴とする請求項2記載のコンバイン。
【請求項4】
前記弾性支持機構(21)は、前側筒状体(22)と、該前側筒状体(22)の内部に摺動可能に挿入した後側筒状体(23)と、該前側筒状体(22)及び後側筒状体(23)の内部に設けた圧縮スプリング(35)とで構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−115159(P2012−115159A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265315(P2010−265315)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】