説明

コンパニオン動物における騒音恐怖症の処置のための方法

本発明は、コンパニオン動物(特に、イヌ)における、騒音恐怖症の非鎮痛性処置のための方法を提供し、この方法は、治療有効量のN−メチル−N−[3−(3−メチル−1,2,4−トリアゾロ−[4,3−b]ピリダジン−6−イル)フェニル]アセトアミドまたは7−(3−ピリジル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリルをこの動物に提供する工程を包含する。本発明は、獣医薬学的に受容可能なキャリアと、有効量のN−メチル−N−[3−(3−メチル−1,2,4−トリアゾロ−[4,3−b]ピリダジン−6−イル)フェニル]アセトアミドまたは7−(3−ピリジル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリルとを含む、獣医学的組成物もまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
本願は、35 U.S.C. §119(e)の下、2005年5月26日に出願された、同時継続中の米国仮特許出願第60/684,669号に対する利益を主張する。米国仮特許出願第60/684,669号は、その全体が、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
ノイズおよび雷への恐怖症はとりわけ、コンパニオン動物(例えば、イヌ、ネコまたはウマ、特にイヌ)におけるパニック応答または恐怖応答に関連する、最も一般的に認識されている障害である。雷、花火、発砲、車のバックファイアなどが、しばしば、望ましくない非特異的な臨床的症状(例えば、流涎、排便、排尿、破壊、逃避、隠匿、振戦、むだ吼えなど)を、コンパニオン動物(特に、イヌ)において引き起こす。コンパニオン動物における一般的な不安行動のための公知の処置は、一般的に、長期間(すなわち、3〜4週間)の徴候か、またはすぐに作用する場合には、鎮静および/または運動失調を引き起こすかのいずれかを包含する。しかしながら、ほとんどのコンパニオン動物のオーナーおよび獣医は、鎮静または運動失調を促進せず、かつ投与から1〜2時間のうちに効果的である方法によって、騒音恐怖症に罹患しているその動物を処置することを望んでいる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、コンパニオン動物における騒音恐怖症を処置するための、鎮静性ではない治療的に有効な方法を提供することが、本発明の目的である。
【0004】
コンパニオン動物における騒音恐怖症を処置するために有用な、獣医学的組成物を提供することもまた、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
迅速に作用し、かつ運動失調を引き起こさない、コンパニオン動物(特に、イヌ)における騒音恐怖症の効果的な処置のための方法が、本発明の特徴である。
【0006】
本発明の他の目的および特徴は、本明細書中以下に記載される詳細な説明から、より明らかになる。
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、コンパニオン動物における騒音恐怖症の処置および予防のための方法を提供し、この方法は、この動物に、治療有効量のN−メチル−N−[3−(3−メチル−1,2,4−トリアゾロ−[4,3−b]ピリダジン−6−イル)フェニル]アセトアミドまたは7−(3−ピリジル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリルを提供する工程を包含する。
【0008】
コンパニオン動物における騒音恐怖症の効果的な処置のための獣医学的組成物もまた、提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
コンパニオン動物のオーナーおよび獣医は、彼らの動物(例えば、イヌ、ネコ、およびウマ、特に、イヌ)における騒音恐怖症を制御するための手段を見つけようと努力している。騒音恐怖症の行動としては、隠匿、走査、排尿、排便、あえぎ、咀嚼、行ったり来たりする、逃避、振戦、むだ吼えなどが挙げられ得る。騒音恐怖症のために使用される公知の治療法としては、効果が現れるまで3〜4週間以上を要し得る、クロミプラミン、アミトリプチリンおよびブスピロンのような認可されていない治療、またはより迅速に作用するが、鎮静および運動失調をしばしば引き起こす、ベンゾジアゼピン、アセプロマジン、または抗欝剤の使用が挙げられる。
【0010】
驚くべきことに、今回、N−メチル−N−[3−(3−メチル−1,2,4−トリアゾロ−[4,3−b]ピリダジン−6−イル)フェニル]アセトアミド(アセトアミド)または7−(3−ピリジル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリル(カルボニトリル)が、鎮静または運動失調を引き起こすことなく、かつ短い徴候期間で、コンパニオン動物における騒音恐怖症の治療的処置および予防のために有用であることが見出された。従って、本発明は、コンパニオン動物における騒音恐怖症の処置および予防のための方法を提供し、この方法は、この動物に、治療有効量のN−メチル−N−[3−(3−メチル−1,2,4−トリアゾロ−[4,3−b]ピリダジン−6−イル)フェニル]アセトアミドまたは7−(3−ピリジル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリルを提供する工程を包含する。有利なことに、本発明の方法は、1〜2時間で効果的であり、そして非鎮静性かつ非消耗性である。
【0011】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、用語「アセトアミド」は、N−メチル−N−[3−(3−メチル−1,2,4−トリアゾロ−[4,3−b]ピリダジン−6−イル)フェニル]アセトアミドを示し、そして用語「カルボニトリル」は、7−(3−ピリジル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリルを示す。
【0012】
本発明によって包含される化合物または物質の提供に関する、本明細書中で使用される用語「提供する」とは、そのような化合物または物質を直接的に投与することか、あるいは等価な量のその化合物または物質を身体中で形成するプロドラッグ、誘導体またはアナログを投与することかのいずれかを示す。
【0013】
騒音恐怖症の処置において提供される治療有効量は、処置される具体的な状態、サイズ、年齢、およびコンパニオン動物の応答パターン、障害の重篤度、担当獣医の判断などに従って変動し得る。一般的に、毎日の経口投与のための有効量は、約0.01mg/kg〜1,000mg/kg、好ましくは約0.5mg/kg〜500mg/kgであり得、そして非経口投与のための有効量は、約0.1mg/kg〜100mg/kg、好ましくは約0.5mg/kg〜50mg/kgであり得る。
【0014】
本発明の方法における使用に適したコンパニオン動物としては、イヌ、ネコ、ウマ、ハムスター、モルモット、または任意の家畜化されたペットが挙げられるが、好ましくはイヌである。
【0015】
化合物N−メチル−N−[3−(3−メチル−1,2,4−トリアゾロ−[4,3−b]ピリダジン−6−イル)フェニル]アセトアミドおよびこの化合物を調製する方法は、米国特許第4,767,765号において記載されている。化合物7−(3−ピリジル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリルおよびこの化合物を調製する方法は、米国特許第4,2281,000号に記載されている。
【0016】
実際の実施において、上記化合物は、固体形態または液体形態の化合物またはその前駆体を、単独でかまたは慣習的な獣医薬学的キャリアもしくは賦形剤と組み合わせてかのいずれかで投与することによって提供される。従って、本発明は、獣医薬学的に受容可能なキャリアと、有効量のN−メチル−N−[3−(3−メチル−1,2,4−トリアゾロ−[4,3−b]ピリダジン−6−イル)フェニル]アセトアミドまたは7−(3−ピリジル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリルとを含む獣医学的組成物を提供する。
【0017】
本発明の組成物における使用に適した固体キャリアとしては、芳香剤、潤滑剤、可溶化剤、懸濁剤、充填剤、潤滑剤(glidant)、圧縮補助剤、結合剤、錠剤崩壊剤、または封入物質としても作用し得る、1つ以上の物質が挙げられる。粉末において、このキャリアは、微細に分割されたアセトアミドまたはカルボニトリル活性成分との混合物である、微細に分割された固体であり得る。錠剤において、このアセトアミドまたはカルボニトリル化合物は、適した割合で必要な圧縮特性を有するキャリアと混合され得、所望される形状およびサイズに圧縮され得る。この粉末および錠剤は、99重量%までの式Iの化合物を含有し得る。本発明の組成物における使用に適した固体キャリアとしては、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、低融点ワックス、およびイオン交換樹脂が挙げられる。
【0018】
溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、およびエリキシルの調製に適した、任意の獣医薬学的に受容可能な液体キャリアが、本発明の組成物において使用され得る。このアセトアミドまたはカルボニトリル化合物は、獣医薬学的に受容可能なキャリア(例えば、水、有機溶媒)または獣医薬学的に受容可能なオイルまたは脂肪、またはそれらの混合物に、溶解または懸濁され得る。この液体組成物は、他の適した獣医薬学的添加物(例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝液、保存剤、甘味料、芳香剤、懸濁剤、濃化剤、着色剤、粘度調整剤、安定剤、浸透圧調整剤など)を含み得る。経口投与および非経口投与のための適した液体キャリアの例としては、水(特に、上述の添加物(例えば、セルロース誘導体を含むもの、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液))、アルコール(一水酸化アルコールおよび多水酸化アルコール、例えば、グリコール)、またはそれらの誘導体、またはオイル(例えば、分別されたココナッツオイルおよび落花生油)が挙げられる。非経口投与のためには、上記キャリアは、油性エステル(オレイン酸エチル、またはミリスチン酸イソプロピル)であり得る。
【0019】
滅菌溶液または懸濁液である、本発明の組成物は、筋肉内注射、腹腔内注射、または皮下注射に適している。滅菌溶液は、静脈内投与され得る。経口投与に適した本発明の組成物は、液体形態であっても、固体組成物形態であってもよい。
【0020】
本発明のより明確な理解のために、以下の実施例が本明細書中に記載される。これらの実施例は、単に例示であり、本発明の範囲または根底にある原理を制限するものとは決して理解されない。実際に、本明細書中に示され、記載されたものに加えて、本発明の種々の改変が、本明細書中に記載された実施例および上述の説明から、当業者に明らかになる。そのような改変もまた、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。そうでないと述べられない限り、全ての部は、重量部である。用語mg/kgは、試験動物の体重1kg当たりの、試験化合物のmgを示す。用語ml/kgは、試験動物の体重1kg当たりの、ビヒクルまたは試験懸濁液のmlを示す。
【実施例】
【0021】
(実施例1 試験化合物の血漿濃度プロフィールの評価)
この評価において、8匹の雄性ビーグル血統のイヌ(6ヶ月齢〜2年齢、少なくとも体重10kg)を使用した。イヌは、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals of the Institute of Laboratory Animal resources(National Research Council)にまとめられている基準に適合する、個々の室内ケージに収容した。このイヌに、1日1回、適切な量の標準的な市販の乾燥食糧を給餌した。ウォーターボウル中の新鮮な水道水を、随意に与えた。試験化合物を投与する日の前日に、食餌を、4:00pmにイヌから片付けた。試験物質の投与後4時間時点において、血液サンプルを採取する後まで、食物を差し控えた。イヌの体重を量り、体重が少ない順にランク付けし、獣医によって身体検査を行った。2匹の最も重いイヌを、グループ1またはグループ2に無作為に割り当てた。2匹のその次に最も重いイヌを、グループ1またはグループ2に無作為に割り当て、8匹全てがその2つのグループのいずれかに割り当てられるまで続けた。4匹/グループのグループ1を、15mg/kgのアセトアミド試験化合物で経口的に処置し、グループ2を、15mg/kgのカルボニトリル試験化合物で経口的に処置した。処置の1週間後、全てのイヌを再び計量し、投薬が正確であることを確かめた。処置の2週間後、グループ1を、30mg/kgのアセトアミド試験化合物で経口的に処置し、グループ2を、30mg/kgのカルボニトリル試験化合物で経口的に処置した。適量の試験化合物を含む処置バイアルを、各イヌに与えた。適量のビヒクル(0.5% Methocel A4Mと0.01%ポリソルベート80とを含む水)をそのバイアルに加え、そのバイアルの含有物を完全に混合した。得られた懸濁液を、何も付けていない(unarmed)使い捨ての12mlプラスチックシリンジで回収し、イヌに投与した。試験懸濁液を、それがイヌによって確かに完全にのみこまれることを保証するために、のどの後ろに投与した。このバイアルを、体重1kg当たり0.5mlのビヒクルでリンスし、そのリンスしたものをイヌに投与した。血液サンプルを、規則的な時間間隔において収集し、試験化合物の濃度について分析した。Cmax値(血漿中の最大化合物濃度)およびTmax値(ピーク化合物濃度が得られた、投薬後の時間)を、観察して決定した。4つの処置の各々に対する、算出された平均Cmax値およびTmax値を、以下の表1に示す。表Iについて、用語「アセトアミド」とは、N−メチル−N−[3−(3−メチル−1,2,4−トリアゾロ−[4,3−b]ピリダジン−6−イル)フェニル]アセトアミドを示し;そして用語「カルボニトリル」とは、7−(3−ピリジル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリルを示す。
【0022】
【表1】

(実施例2 試験化合物の有効性の評価)
この評価では、イヌを、騒音恐怖行動についてスクリーニングし、40匹を試験のために選択した。雄性および雌性のビーグルおよび雑種(1〜4.5年齢、体重6.4〜18.4kg)を使用した。イヌを体重および性別によってブロック分けし、5つの処置グループの各々に無作為に割り当てた。イヌは、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals of the Institute of Laboratory Animal Resources(National Research Council)にまとめられている基準に適合する施設において、個々の室内ケージに収容した。この研究は、4つのフェーズにおいて実施し、各フェーズは、各々2匹のイヌの5つの処置グループから構成された。従って、5つの処置グループの各々は、8連であった。イヌを個々の犬舎に収容し、随意に水にアクセスさせた。食餌は、処置(活性因子およびプラセボ)の前の夕方に、イヌから片付けた。イヌを騒音刺激に曝露した日に、このイヌに、観察期間が終了した後に食餌を与えた。騒音刺激および観察期間の間、イヌと観察者との間の接触は最小にした。研究のモニターは除いて、この試験に関する全ての人員は、この5つの処置に対して盲検とした。
【0023】
スクリーニング;
試験の16日〜26日前、計144匹のイヌを、騒音刺激に対するその応答についてスクリーニングした。この騒音刺激は、CD「Electrifying Thunderstorms」の10分のトラックから構成された。全てのイヌは、CDの雷音に曝されたとき、驚愕することが予測された。特定の行動を示し、この驚愕から迅速には回復しないイヌを、この研究の候補とみなした。目的の行動としては、以下:あえぎ、行ったり来たりする、流涎、排泄(排尿または排便)、後退、振戦、半狂乱しての走り回り、むだ吼え、掘ることおよび掻爬、立ちすくみ、および走査が挙げられる。試験化合物の有効性は、騒音刺激への曝露の際の、これらの行動の数および/または強度における処置後の低減によって決定した。
【0024】
(行動の定義)
あえぎ−急速に、または苦しそうな様式で呼吸する
行ったり来たりすること−犬舎に沿って、リズミカルに繰り返し前後に歩く
流涎−イヌの舌、口唇または口から唾液が過剰に流れる
排泄−排尿または排便
後退−角に退却するかまたは戻り、イヌが警戒し、眠らない
振戦−(恐怖により)無意識に揺れ動く
狂乱しての走り回り−早くて神経質に、混乱した走りまたは旋回
むだ吼え−ほえる、鳴く、またはくんくん鳴く
掘ることおよび掻爬−爪で掻くまたは掘る
立ちすくみ−固くなるまたは動かなくなる
走査−前後または左右に頭を動かす
(試験手順)
この手順における処置グループA〜Eに対して、用語「アセトアミド」とは、N−メチル−N−[3−(3−メチル−1,2,4−トリアゾロ−[4,3−b]ピリダジン−6−イル)フェニル]アセトアミドを示し;そして用語「カルボニトリル」とは、7−(3−ピリジル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリルを示す。
【0025】
試験の11日〜15日前に、イヌの騒音恐怖症スクリーニングのフォームおよびビデオテープをレビューし、この研究のために40匹のイヌを選択した。試験の9日〜10日前に、獣医が身体検査をし、これらのイヌが健常である(例えば、評価される非特異的な徴候を生じ得ない)ことを確かめた。試験の5日前、40匹のイヌを計量し、体重および性別によってブロック分けし、処置グループA〜Eに無作為に群別した。
【0026】
処置グループA〜E:
グループA:15mg/kg アセトアミド
グループB:5mg/kg アセトアミド
グループC:15mg/kg カルボニトリル
グループD:5mg/kg カルボニトリル
グループE:0.5% Methocel A4Mおよび0.01% polysorbate 80を含む、ビヒクル(プラセボ)水。
【0027】
フェーズ1は、10匹のイヌ(5つの処置グループの各々から無作為に選択された2匹)から構成された。3日間、10匹のイヌを、その環境に順応させた(ビデオモニターして試行した)。0日目に、この10匹のイヌに、0.5ml/kgのビヒクルを強制投与(gavage)した。1日目に、この10匹のイヌに、0.5ml/kgのビヒクルを強制投与した。2日目に、この10匹のイヌに、0.5ml/kgのビヒクルを強制投与し、1時間後に、30分間の騒音刺激に曝露した(「Electrifying Thunderstorms」CD)。イヌを、上記に列挙された特異的行動、ならびに副作用(鎮静、運動失調、嘔吐、見当識障害、および下痢)について、強制投与後3時間、ビデオおよび観察者によって綿密にモニタリングした。睡眠時間の量もまた記録した。なぜなら、寝ていること(リラックスした状態)と、不安行動(例えば、後ずさり)とを区別することが重要だからである。格付けシステム(0〜3)を、各行動について使用した。排泄は、各々5分間の間に動物が排尿または排便した回数を計数することによって、スコア付けした。3日目、上記10匹のイヌに、0.5ml/kgのビヒクルを強制投与した。4日目に、この10匹のイヌに、0.5ml/kgのビヒクルを強制投与した。5日目に、このイヌに、処置(2匹のイヌに、処置A〜Eの各々)を強制投与した。上記試験化合物を、実施例1において記載したようにビヒクルに懸濁した。この試験化合物の濃度は、各動物に与えられる容量が0.5ml/kgになるように調製した。処置の1時間後、上記30分間の騒音刺激を与えた。イヌを、上記に列挙された特定行動、ならびに副作用(鎮静、運動失調、嘔吐、見当識障害、および下痢)について、強制投与後3時間、ビデオおよび観察者によって綿密にモニタリングした。なぜなら、寝ていること(リラックスした状態)と、不安行動(例えば、後退)とを区別することが重要だからである。格付けシステム(0〜3)を、各行動について使用した。排泄は、各々5分間の間に動物が排尿または排便した回数を計数することによって、スコア付けした。全ての観察者は、処置に関して盲検とした。フェーズ2、フェーズ3、およびフェーズ4(前のフェーズで使用しなかった10匹のイヌ(5つの処置グループの各々から2匹)から構成された)を、その後の週に試行した。
【0028】
(結果および考察)
行動を、片側Fisherの正確検定およびANOVA手順によって、各動物について処置前対処置後のスコアを比較し、そして全ての処置グループを互いに対して比較(「処置後のみ」)して、分析した。これらの分析に基づくと、有意な処置効果が観察され、特に15mg/kgの各試験化合物において顕著な処置効果が観察された。統計学的有意性を示した行動としては、あえぎ、振戦、後退、走査、およびむだ吼えが挙げられる。未処置のコントロール動物と比較して、15mg/kgの試験化合物で処置されたイヌは、有意に低い震えスコア(上記CDを演奏した)を有したことが、特に注目される。鎮静、運動失調および見当識障害は、処置されたイヌにおいては何ら観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンパニオン動物における騒音恐怖症を処置および予防するための方法であって、該方法は、該動物に、治療有効量のN−メチル−N−[3−(3−メチル−1,2,4−トリアゾロ−[4,3−b]ピリダジン−6−イル)フェニル]アセトアミドまたは7−(3−ピリジル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリルを提供する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記コンパニオン動物が、本質的にイヌ;ネコ;ウマ;ハムスター;およびモルモットからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コンパニオン動物がイヌである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記動物に、治療有効量のN−メチル−N−[3−(3−メチル−1,2,4−トリアゾロ−[4,3−b]ピリダジン−6−イル)フェニル]アセトアミドを提供する工程を包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有効量は、約0.5mg/kg〜約50mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記有効量は、約5.0mg/kg〜約40mg/kgである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記アセトアミドまたはカルボニトリルが経口的に提供される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
獣医薬学的に受容可能なキャリアと、有効量のN−メチル−N−[3−(3−メチル−1,2,4−トリアゾロ−[4,3−b]ピリダジン−6−イル)フェニル]アセトアミドまたは7−(3−ピリジル)ピラゾロ[1,5−a]ピリミジン−3−カルボニトリルとを含む、獣医学的組成物。
【請求項9】
有効量のN−メチル−N−[3−(3−メチル−1,2,4−トリアゾロ−[4,3−b]ピリダジン−6−イル)フェニル]アセトアミドを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記獣医薬学的に受容可能なキャリアが液体キャリアである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記獣医薬学的に受容可能なキャリアが固形キャリアである、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記有効量が、約0.5mg/kg〜約50mg/kgの活性成分を提供するのに十分である、請求項8に記載の組成物。
【請求項13】
前記有効量が、約5.0mg/kg〜40mg/kgの活性成分を提供するのに十分である、請求項9に記載の組成物。

【公表番号】特表2008−542277(P2008−542277A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−513574(P2008−513574)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/019685
【国際公開番号】WO2006/127574
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】