説明

コンビネーション型ICカード、及びコンビネーション型ICカードの通信方法

【課題】精度よく安定して接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行い得るコンビネーション型ICカードを提供する。
【解決手段】カードに設けられた接触型通信用端子10を介してデータを読み書きするための接触型のインターフェイスと、無線で送信されてきたデータをアンテナコイル21にて受信して該データを読み書きするための非接触型通信用並列共振回路20からなる非接触型のインターフェイスとの両方を備える。接触型通信用端子10の1つであるクロック(CLK)端子から入力される接触型通信用クロックCLKの周波数と、アンテナコイル21にて受信された非接触型通信用クロックRFCLKの周波数との違いによって、接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行う接触/非接触判別回路80が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば銀行カード等に用いられる金融系の接触方式カードに供される接触型のインターフェイスと、例えば電車やバス等に用いられる交通系の非接触方式カードに供される非接触型のインターフェイスとの両方を備えたコンビネーション型ICカード、及びコンビネーション型ICカードの通信方法に関するものであり、特に、接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードにおける通信インターフェイスの規格として現在多用され、又はこれから多用されようとしているものには2種類のものがある。1つは銀行カード等に用いられる金融系の接触方式カード(クロック:3.5MHz、4.9MHz)であり、他の1つは電車やバス等に用いられる交通系の非接触方式カード(クロック:13.56MHz)である。
【0003】
一方、これら2つの方式のカード機能を1つのカードに集約したコンビネーション型ICカードも開発され、市場に出回っている。この接触/非接触の2つのインターフェイスを内蔵したコンビネーション型ICカードは、既存の接触型インターフェイスを利用した金融系と非接触型インターフェイスを利用した交通系への対応が1枚のカードでできるものとして利用価値が高い。
【0004】
ところで、このコンビネーション型ICカードでは、接触/非接触のいずれのインターフェイスを用いた環境であるかを判別する手段が必要である。従来、この判別は、通信をしようとしている相手側の機械が、接触/非接触のいずれの方式であるかを相手側のクロックを読み取って判定している。すなわち、コンビネーション型ICカードが相手側のクロックを読み取って判定している。
【0005】
具体的には、例えば、特表2001−502456号公報(公表日:平成13(2001)年2月20日)に開示されているように、アンテナコイルからの信号中に含まれているクロックの有無を関数として、クロックがあれば非接触型通信、クロックがなければ接触型通信であるとして判別している。
【0006】
この場合、非接触方式のカードは、相手側から電磁波にて信号及びエネルギーを受け取って動作を開始するものであるため、動作が安定するまでにある程度の時間が必要となる。そのために、方式判定した後でも正常に動作ができるように工夫がされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来のコンビネーション型ICカードでは、アンテナコイルは並列共振回路であるので、非接触通信に用いる13.56MHz以外でも常に発振する。したがって、非接触型通信用クロックの有無の判別では、安定した接触/非接触の判別を行うことができないという問題点を有している。すなわち、上記の技術では、非接触通信に用いる13.56MHz以外で発信された非接触型通信用クロックを検出したときにも、非接触型通信用クロックが有として判別し、結果として誤動作する可能性がある。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、精度よく安定して接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行い得るコンビネーシ
ョン型ICカード、及びコンビネーション型ICカードの通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコンビネーション型ICカードは、上記課題を解決するために、カードに設けられた接触端子を介してデータを読み書きするための接触型のインターフェイスと、無線で送信されてきたデータをアンテナコイルにて受信して該データを読み書きするための非接触型のインターフェイスとの両方を備えたコンビネーション型ICカードにおいて、上記接触端子の1つであるCLK端子から入力される接触型通信用クロックの周波数と、上記アンテナコイルにて受信された非接触型通信用クロックの周波数とのそれぞれについてクロック数をカウントし、接触型通信または非接触型通信の少なくとも一方の開始により上記コンビネーション型ICカードの内部電源がオンとなることによりカウントを開始するそれぞれのカウンタを有し、接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行う判別手段と、上記アンテナコイルにて受信された非接触型通信用クロックの周波数を抽出する非接触型通信用クロック抽出手段とが設けられていると共に、上記判別手段は、初期状態では判別結果を接触型通信状態に保持し、上記接触型通信用クロックのカウンタによるクロック数と非接触型通信用クロックのカウンタによるクロック数との違いによって、最初にオーバーフローしたカウンタが接触型通信用クロックのカウンタの場合、非接触型通信用クロックのカウンタをクリアすることにより接触型通信であるとの判別を行い、最初にオーバーフローしたカウンタが非接触型通信用クロックのカウンタの場合、接触型通信用クロックのカウンタをクリアすることにより非接触型通信であるとの判別を行い、上記非接触型通信用クロック抽出手段は、上記アンテナコイルにて非接触型通信用クロックの周波数が受信された場合には、受信信号に同調して発振する発振回路により当該非接触型通信用クロックの周波数を前記非接触型通信用クロックのカウンタに出力する一方、上記アンテナコイルにて非接触型通信用クロックの周波数が受信されない場合には、上記非接触型通信用クロックの周波数よりも遅いクロックの周波数を上記発振回路により上記非接触型通信用クロックのカウンタに出力する設定手段を備えていることを特徴としている。
【0010】
上記の発明によれば、判別手段は、接触端子の1つであるCLK端子から入力される接触型通信用クロックの周波数と、上記アンテナコイルにて受信された非接触型通信用クロックの周波数との違いによって、接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行う。
【0011】
したがって、入力される接触型通信用クロックの周波数と非接触型通信用クロックの周波数とは明確に異なっているので、この周波数を識別することにより、精度よく安定して接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行い得るコンビネーション型ICカードを提供することができる。
【0012】
ところで、接触型通信用クロックの周波数と非接触型通信クロックの周波数との判別を行うためには、両クロックの周波数が同一では判別できない。
【0013】
そこで、本発明では、非接触型通信用クロック抽出手段は、上記アンテナコイルにて非接触型通信用クロックの周波数が受信された場合には、受信信号に同調して発振する発振回路により当該非接触型通信用クロックの周波数を前記非接触型通信用クロックのカウンタに出力する一方、上記アンテナコイルにて非接触型通信用クロックの周波数が受信されない場合には、上記非接触型通信用クロックの周波数よりも遅いクロックの周波数を上記発振回路により上記非接触型通信用クロックのカウンタに出力する。
【0014】
したがって、非接触型通信中は、CLK端子からの接触型通信用クロックの周波数がア
ンテナコイルからの非接触型通信クロックの周波数よりも遅くなる一方、接触型通信中には、アンテナコイルからの非接触型通信用クロックの周波数がCLK端子からの接触型通信クロックの周波数よりも遅くなるように例えば非接触型通信用クロック抽出回路等の設定手段を設計することができる。
【0015】
この結果、精度よく安定して接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行い得るコンビネーション型ICカードを提供することができる。
【0016】
また、本発明のコンビネーション型ICカードは、上記記載のコンビネーション型ICカードにおいて、前記接触型のインターフェイスを介するデータの非同期通信制御を行う接触型通信用制御手段と、前記非接触型のインターフェイスを介するデータの通信プロトコル制御を行う非接触型通信用制御手段とが個別に設けられていることを特徴としている。
【0017】
したがって、接触型通信及び非接触型通信を実現することができる。
【0018】
また、本発明のコンビネーション型ICカードは、上記記載のコンビネーション型ICカードにおいて、前記判別手段は、上記接触型通信用クロックの周波数が入力されると、上記非接触型通信用クロックのカウンタにおけるフリップフロップのクリア端子に接触型通信用クロックを入力して、当該カウンタの値をクリアすることにより、接触型通信を優先することを特徴としている。
【0019】
上記の発明によれば、上記接触型通信用クロックの周波数が入力されると、接触型通信を優先する。
【0020】
したがって、接触型通信と非接触型通信が混信した場合に、接触通信を優先することにより、混信するような環境下でも安定して通信を行うことができる。
【0021】
また、本発明のコンビネーション型ICカードの通信方法は、カードに設けられた接触端子を介してデータを読み書きするための接触型のインターフェイスと、無線で送信されてきたデータをアンテナコイルにて受信して該データを読み書きするための非接触型のインターフェイスとの両方を備えたコンビネーション型ICカードの通信方法において、上記接触端子の1つであるCLK端子から入力される接触型通信用クロックの周波数と、上記アンテナコイルにて受信された非接触型通信用クロックの周波数とのそれぞれについてクロック数をカウントし、接触型通信または非接触型通信の少なくとも一方の開始により上記コンビネーション型ICカードの内部電源がオンとなることによりカウントを開始するそれぞれのカウンタを用いて、接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行う判別工程と、上記アンテナコイルにて非接触型通信用クロックの周波数が受信された場合には、受信信号に同調して発振する発振回路により当該非接触型通信用クロックの周波数を前記非接触型通信用クロックのカウンタに出力する一方、上記アンテナコイルにて非接触型通信用クロックの周波数が受信されない場合には、上記非接触型通信用クロックの周波数よりも遅いクロックの周波数を上記発振回路により上記非接触型通信用クロックのカウンタに出力する工程と、初期状態では上記判別工程の判別結果を接触型通信状態に保持する一方、非接触型通信用クロックがプロトコルで規定されている周波数になった場合には上記判別工程の判別結果を非接触型通信状態に切り替える切替工程とを含み、上記判別工程では、上記接触型通信用クロックのカウンタによるクロック数と非接触型通信用クロックのカウンタによるクロック数との違いによって、最初にオーバーフローしたカウンタが接触型通信用クロックのカウンタの場合、非接触型通信用クロックのカウンタをクリアすることにより接触型通信であるとの判別を行い、最初にオーバーフローしたカウンタが非接触型通信用クロックのカウンタの場合、接触型通信用クロックのカウンタ
をクリアすることにより非接触型通信であるとの判別を行うことを特徴としている。
【0022】
上記の発明によれば、切替工程では、初期状態では接触型通信状態に保持する一方、非接触型通信用クロックがプロトコルで規定されている周波数になった場合には非接触型通信状態に切り替える。
【0023】
すなわち、非接触型通信の場合は、動作が安定するまでに時間を要する。したがって、機能テストの時等には安定するまでに時間が必要なため、他のコンビネーション型ICカード内部の機能をテストするときには、接触型通信モードにしておく方が効率が良い。この結果、初期状態では接触型通信状態にすることにより、接触型通信を用いたテストを容易に行うことができる。
【0024】
また、非接触型通信用クロックがプロトコルで規定されている周波数になった場合には、切替工程により、非接触型通信状態に切り替えるので、確実に非接触型通信を行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のコンビネーション型ICカードは、以上のように、上記接触端子の1つであるCLK端子から入力される接触型通信用クロックの周波数と、上記アンテナコイルにて受信された非接触型通信用クロックの周波数とのそれぞれについてクロック数をカウントし、接触型通信または非接触型通信の少なくとも一方の開始により上記コンビネーション型ICカードの内部電源がオンとなることによりカウントを開始するそれぞれのカウンタを有し、接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行う判別手段と、
上記アンテナコイルにて受信された非接触型通信用クロックの周波数を抽出する非接触型通信用クロック抽出手段とが設けられていると共に、上記判別手段は、初期状態では判別結果を接触型通信状態に保持し、上記接触型通信用クロックのカウンタによるクロック数と非接触型通信用クロックのカウンタによるクロック数との違いによって、最初にオーバーフローしたカウンタが接触型通信用クロックのカウンタの場合、非接触型通信用クロックのカウンタをクリアすることにより接触型通信であるとの判別を行い、最初にオーバーフローしたカウンタが非接触型通信用クロックのカウンタの場合、接触型通信用クロックのカウンタをクリアすることにより非接触型通信であるとの判別を行い、上記非接触型通信用クロック抽出手段は、上記アンテナコイルにて非接触型通信用クロックの周波数が受信された場合には、受信信号に同調して発振する発振回路により当該非接触型通信用クロックの周波数を前記非接触型通信用クロックのカウンタに出力する一方、上記アンテナコイルにて非接触型通信用クロックの周波数が受信されない場合には、上記非接触型通信用クロックの周波数よりも遅いクロックの周波数を上記発振回路により上記非接触型通信用クロックのカウンタに出力する設定手段を備えているものである。
【0026】
それゆえ、入力される接触型通信用クロックの周波数と非接触型通信用クロックの周波数とは明確に異なっているので、この周波数を識別することにより、精度よく安定して接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行い得るコンビネーション型ICカードを提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の一形態について図1ないし図8に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0028】
本実施の形態のコンビネーション型ICカードは、図1に示すように、接触端子としての接触型通信用端子10と、非接触型通信用並列共振回路20との2つの通信インターフェイスを有している。
【0029】
上記接触型通信用端子10は、電源端子VCC、リセット(RST)端子、クロック(CLK)端子、及びシリアル通信用I/O端子からなっている。上記クロック(CLK)端子には、外部から接触型通信用クロックCLKが入力され、この接触型通信用クロックCLKは後述する判別手段としての接触/非接触判別回路80に出力されるようになっている。上記リセット(RST)端子には、外部から接触型通信用リセット信号RSTBが入力され、この接触型通信用リセット信号RSTBも接触/非接触判別回路80に出力されるようになっている。また、上記シリアル通信用I/O端子は、接触型通信用制御手段としてのUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter:万能非同期受信送信機)1に接続されている。したがって、接触型通信用端子10を介するときには、上記UART1によって接触型通信を行うようになっている。
【0030】
一方、上記非接触型通信用並列共振回路20に設けられたアンテナコイル21は、共振用コンデンサ22とによって並列共振回路を構成する。この非接触型通信用並列共振回路20にて受信した受信信号S1は、ブリッジダイオード2によって半波整流される。半波整流された整流信号S2は、平滑用コンデンサ3を通して電圧発生回路50に入力され、この電圧発生回路50にて内部電源を発生させる。また、半波整流された整流信号S2は、パワーオンリセット回路60にも入力され、このパワーオンリセット回路60は非接触型通信用リセット信号RFRSTBを生成して、接触/非接触判別回路80に出力するようになっている。
【0031】
なお、上記整流信号S2の電圧発生回路50及びパワーオンリセット回路60への入力端子と接触型通信用端子10における電源端子VCCとの間には、ダイオード4が接続されており、このダイオード4は、アンテナコイル21にて励起された電圧が接触型通信用端子10に現れないようにしている。
【0032】
また、非接触型通信用並列共振回路20にて受信した受信信号S1は、検波用ダイオード5を介して復調回路30にて復調され、非接触型通信用制御手段としてのプロトコル制御回路90に入力される。さらに、非接触型通信用並列共振回路20にて受信した受信信号S1は、クロック抽出回路40に入力され、このクロック抽出回路40によって非接触型通信用クロックRFCLKが生成される。
【0033】
上記プロトコル制御回路90は、非接触型通信用並列共振回路20から信号入力される非接触型通信時には、上記復調回路30にて復調された信号を得る一方、変調回路70にて送信を行うようになっている。
【0034】
一方、接触/非接触判別回路80は、クロック抽出回路40から生成される非接触型通信用クロックRFCLKと、接触型通信用端子10におけるクロック(CLK)端子からの接触型通信用クロックCLKとによって、周波数の違いにより接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行って判別信号を出力するとともに、システムリセット信号及びシステムクロック信号を生成する。
【0035】
そして、これらの生成されたシステムリセット信号及びシステムクロック信号によってCPU6及びメモリ7が動作するようになっている。
【0036】
ここで、設定手段としての前記クロック抽出回路40について詳細に説明する。
【0037】
クロック抽出回路40は、図2に示すように、コンデンサ41と、発振器用インバータ43及び帰還抵抗44によって構成される発振回路42と、波形成形用インバータ45とからなっている。
【0038】
このクロック抽出回路40では、コンデンサ41にて直流(DC)成分を遮断し、発振回路42にて信号波形を取り出し、波形成形用インバータ45にて波形成形を行う。
【0039】
上記の発振回路42は、非接型触通信時においては、前記アンテナコイル21からの受信信号S1に同調して13.56MHzにて発振する。すなわち、クロック抽出回路40は、非接触型カード用のものであるため、入力があった場合は13.56MHzの周波数を出力する。また、非接型触通信時以外のときは、発振回路42は、本実施の形態では、1MHz程度にて発振する。すなわち、アクティブな方の周波数がノンアクティブな周波数よりも速くなるように設定されている。
【0040】
なお、発振回路42の発振周波数は、必ずしも1MHz程度に限らず、3.5MHz又は4.9MHz以下の周波数であればよい。
【0041】
次に、接触/非接触判別回路180の他の形態について説明する。
【0042】
すなわち、図4に示すように、接触/非接触判別回路180として、RSフリップフロップ181にリセット入力を設けることにより、初期状態を接触型通信状態に決めることができる。このように初期状態を接触型通信状態とすることによって製品出荷テストを容易にすることができる。
【0043】
次に、接触型通信状態を優先させる場合における接触/非接触判別回路280の構成について、図5に基づいて説明する。
【0044】
すなわち、本実施の形態のコンビネーション型ICカードを使う場合に、接触型通信モードで使おうとしているときに、その近くにたまたま非接触型通信用の機械があった場合には混信等の問題が生ずるおそれがある。
【0045】
そこで、本実施の形態では、同図に示すように、非接触型通信用クロックRFCLKをカウントする非接触型通信用カウンタBの値を、接触型通信用クロックCLKにて定期的にクリアすることにより、混信時つまり接触型通信用クロックの周波数と非接触型通信用クロックの周波数との両方の入力がある場合には、接触型通信を優先させることができる。
【0046】
すなわち、高周波(非接触用、13.56MHz)クロックは、非接触型通信用カウンタBの入力に入っているが、その入り口の所で常に、低周波(接触用、3.5MHzまたは4.9MHz)クロックでリセットが掛かっている。この場合のカウンタ出力は出てこない(出力「0」)ので、その反転出力により接触型通信モードとなる。
【0047】
次に、接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別が終了した後、その接触/非接触判別結果を保持する接触/非接触判別回路480の構成を、図8に基づいて説明する。
【0048】
すなわち、接触/非接触の判定カウンタは、それぞれクロック入力につながっているため、このままでは一度判定結果が出た後も、相手側の機械や外部の電磁波等の影響を受けて、誤動作をする恐れがある。そこで、その対策として、本実施の形態では、一度接触/非接触の判定を行った後では、判定用のカウンタが動作しないようにしている。
【0049】
具体的には、同図に示すように、接触/非接触判別回路480では、判別結果維持手段としてのセレクタ482は、接触/非接触判別結果を用いてシステムクロックを切り替え
る。このシステムクロックにより、カウンタCにてカウントした一定時間後に、接触/非接触判別回路480に入るクロックを遮断することにより、判別結果を保持することが可能となる。
【0050】
このように、本実施の形態のコンビネーション型ICカードでは、接触/非接触判別回路180・280・480は、接触型通信用端子10の1つであるクロック(CLK)端子から入力される接触型通信用クロックCLKの周波数と、アンテナコイル21にて受信された非接触型通信用クロックRFCLKの周波数との違いによって、接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行う。
【0051】
したがって、入力される接触型通信用クロックCLKの周波数と非接触型通信用クロックRFCLKの周波数とは明確に異なっているので、この周波数を識別することにより、精度よく安定して接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行い得るコンビネーション型ICカードを提供することができる。
【0052】
また、本実施の形態のコンビネーション型ICカードでは、クロック抽出回路40は、クロック(CLK)端子からの接触型通信用クロックCLKの周波数とアンテナコイル21からの非接触型通信用クロックRFCLKの周波数との関係として、アクティブな方の周波数がノンアクティブな周波数よりも速くなるように設定する。
【0053】
したがって、非接触型通信中は、クロック(CLK)端子からの接触型通信用クロックCLKの周波数がアンテナコイル21からの非接触型通信用クロックRFCLKの周波数よりも遅くなる一方、接触型通信中には、アンテナコイル21からの非接触型通信用クロックRFCLKの周波数がクロック(CLK)端子からの接触型通信用クロックCLKの周波数よりも遅くなるようにクロック抽出回路40を設計することができる。
【0054】
この結果、精度よく安定して接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行い得るコンビネーション型ICカードを提供することができる。
【0055】
また、本実施の形態のコンビネーション型ICカードは、接触型のインターフェイスである接触型通信用端子10を介するデータの通信制御を行うUART1と、非接触型のインターフェイスである非接触型通信用並列共振回路20を介するデータの通信制御を行うプロトコル制御回路90とが個別に設けられている。
【0056】
したがって、接触型通信及び非接触型通信を実現することができる。
【0057】
また、本実施の形態のコンビネーション型ICカードでは、接触/非接触判別回路180に設けられているRSフリップフロップ181は、初期状態では接触型通信状態に保持する一方、非接触型通信用クロックRFCLKがプロトコルで規定されている周波数になった場合には非接触型通信状態に切り替える。
【0058】
すなわち、非接触型通信の場合は、動作が安定するまでに時間を要する。したがって、機能テストの時等には安定するまでに時間が必要なため、他のコンビネーション型ICカード内部の機能をテストするときには、接触型通信モードにしておく方が効率が良い。この結果、初期状態では接触型通信状態にすることにより、接触型通信を用いたテストを容易に行うことができる。
【0059】
また、非接触型通信用クロックRFCLKがプロトコルで規定されている周波数になった場合には、RSフリップフロップ181が非接触型通信状態に切り替えるので、確実に非接触型通信を行うことができる。
【0060】
また、本実施の形態のコンビネーション型ICカードでは、接触/非接触判別回路280は、接触型通信用クロックCLKの周波数と非接触型通信用クロックRFCLKの周波数との両方の入力がある場合には、接触型通信を優先する。
【0061】
したがって、接触型通信と非接触型通信が混信した場合に、接触通信を優先することにより、混信するような環境下でも安定して通信を行うことができる。
【0062】
また、本実施の形態のコンビネーション型ICカードでは、セレクタ482は、接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別後に、判別結果を維持する。したがって、接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別後には、ノイズ等で判別結果が変わらないように判別結果を維持することにより、ノイズの多い環境でも安定した通信を実現することができる。この結果、方式判定した後でも正常に動作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明におけるコンビネーション型ICカードの実施の一形態を示すブロック図である。
【図2】上記コンビネーション型ICカードにおけるクロック抽出回路の構成を示すブロック図である。
【図3】コンビネーション型ICカードの参考形態における接触/非接触判別回路の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明におけるコンビネーション型ICカードにおける接触/非接触判別回路の構成を示すブロック図である。
【図5】上記コンビネーション型ICカードにおける他の接触/非接触判別回路の構成を示すブロック図である。
【図6】コンビネーション型ICカードの参考形態におけるさらに他の接触/非接触判別回路の構成を示すブロック図である。
【図7】(a)〜(d)は、上記接触/非接触判別回路の動作波形を示す波形図である。
【図8】本発明におけるコンビネーション型ICカードにおけるさらに他の接触/非接触判別回路の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0064】
1 UART(接触型通信用制御手段)
2 ブリッジダイオード
6 CPU
7 メモリ
10 接触型通信用端子(接触端子、接触型のインターフェイス)
20 非接触型通信用並列共振回路(非接触型のインターフェイス)
21 アンテナコイル
30 復調回路
40 クロック抽出回路(設定手段)
42 発振回路
45 波形成形用インバータ
50 電圧発生回路
60 パワーオンリセット回路
70 変調回路
80 接触/非接触判別回路(判別手段)
81 RSフリップフロップ(切替手段)
90 プロトコル制御回路(非接触型通信用制御手段)
180 接触/非接触判別回路
181 RSフリップフロップ(切替手段)
280 接触/非接触判別回路(判別手段)
380 接触/非接触判別回路(判別手段)
381 1ビット(リセット信号発生手段)
480 接触/非接触判別回路(判別手段)
481 RSフリップフロップ(切替手段)
482 セレクタ(判別結果維持手段)
A カウンタ
B カウンタ
C カウンタ
CLK 接触型通信用クロック
RFCLK 非接触型通信用クロック
RFRSTB 非接触型通信用リセット信号
RSTB 接触型通信用リセット信号
S1 受信信号
S2 整流信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードに設けられた接触端子を介してデータを読み書きするための接触型のインターフェイスと、無線で送信されてきたデータをアンテナコイルにて受信して該データを読み書きするための非接触型のインターフェイスとの両方を備えたコンビネーション型ICカードにおいて、
上記接触端子の1つであるCLK端子から入力される接触型通信用クロックの周波数と、上記アンテナコイルにて受信された非接触型通信用クロックの周波数とのそれぞれについてクロック数をカウントし、接触型通信または非接触型通信の少なくとも一方の開始により上記コンビネーション型ICカードの内部電源がオンとなることによりカウントを開始するそれぞれのカウンタを有し、接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行う判別手段と、
上記アンテナコイルにて受信された非接触型通信用クロックの周波数を抽出する非接触型通信用クロック抽出手段とが設けられていると共に、
上記判別手段は、
初期状態では判別結果を接触型通信状態に保持し、
上記接触型通信用クロックのカウンタによるクロック数と非接触型通信用クロックのカウンタによるクロック数との違いによって、最初にオーバーフローしたカウンタが接触型通信用クロックのカウンタの場合、非接触型通信用クロックのカウンタをクリアすることにより接触型通信であるとの判別を行い、最初にオーバーフローしたカウンタが非接触型通信用クロックのカウンタの場合、接触型通信用クロックのカウンタをクリアすることにより非接触型通信であるとの判別を行い、
上記非接触型通信用クロック抽出手段は、
上記アンテナコイルにて非接触型通信用クロックの周波数が受信された場合には、受信信号に同調して発振する発振回路により当該非接触型通信用クロックの周波数を前記非接触型通信用クロックのカウンタに出力する一方、上記アンテナコイルにて非接触型通信用クロックの周波数が受信されない場合には、上記非接触型通信用クロックの周波数よりも遅いクロックの周波数を上記発振回路により上記非接触型通信用クロックのカウンタに出力する設定手段を備えていることを特徴とするコンビネーション型ICカード。
【請求項2】
前記接触型のインターフェイスを介するデータの非同期通信制御を行う接触型通信用制御手段と、
前記非接触型のインターフェイスを介するデータの通信プロトコル制御を行う非接触型通信用制御手段とが個別に設けられていることを特徴とする請求項1記載のコンビネーション型ICカード。
【請求項3】
前記判別手段は、
上記接触型通信用クロックの周波数が入力されると、上記非接触型通信用クロックのカウンタにおけるフリップフロップのクリア端子に接触型通信用クロックを入力して、当該カウンタの値をクリアすることにより、接触型通信を優先することを特徴とする請求項1又は2記載のコンビネーション型ICカード。
【請求項4】
カードに設けられた接触端子を介してデータを読み書きするための接触型のインターフェイスと、無線で送信されてきたデータをアンテナコイルにて受信して該データを読み書きするための非接触型のインターフェイスとの両方を備えたコンビネーション型ICカードの通信方法において、
上記接触端子の1つであるCLK端子から入力される接触型通信用クロックの周波数と、上記アンテナコイルにて受信された非接触型通信用クロックの周波数とのそれぞれについてクロック数をカウントし、接触型通信または非接触型通信の少なくとも一方の開始により上記コンビネーション型ICカードの内部電源がオンとなることによりカウントを開
始するそれぞれのカウンタを用いて、接触型通信又は非接触型通信のいずれの通信であるかの判別を行う判別工程と、
上記アンテナコイルにて非接触型通信用クロックの周波数が受信された場合には、受信信号に同調して発振する発振回路により当該非接触型通信用クロックの周波数を前記非接触型通信用クロックのカウンタに出力する一方、上記アンテナコイルにて非接触型通信用クロックの周波数が受信されない場合には、上記非接触型通信用クロックの周波数よりも遅いクロックの周波数を上記発振回路により上記非接触型通信用クロックのカウンタに出力する工程と、
初期状態では上記判別工程の判別結果を接触型通信状態に保持する一方、非接触型通信用クロックがプロトコルで規定されている周波数になった場合には上記判別工程の判別結果を非接触型通信状態に切り替える切替工程とを含み、
上記判別工程では、
上記接触型通信用クロックのカウンタによるクロック数と非接触型通信用クロックのカウンタによるクロック数との違いによって、最初にオーバーフローしたカウンタが接触型通信用クロックのカウンタの場合、非接触型通信用クロックのカウンタをクリアすることにより接触型通信であるとの判別を行い、最初にオーバーフローしたカウンタが非接触型通信用クロックのカウンタの場合、接触型通信用クロックのカウンタをクリアすることにより非接触型通信であるとの判別を行うことを特徴とするコンビネーション型ICカードの通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−108285(P2008−108285A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6249(P2008−6249)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【分割の表示】特願2002−149360(P2002−149360)の分割
【原出願日】平成14年5月23日(2002.5.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】