説明

コンプレッションリング及び内燃機関

【課題】ピストン下降時においてリングが捩れ変形することによって燃焼室側へのオイルの漏出を抑制しつつ、当該捩れ変形に起因したリングの耐久性の低下についてもこれを好適に抑制することのできるコンプレッションリング及び内燃機関を提供する。
【解決手段】トップリング4はピストンの外周面に形成された第1リング溝に装着されている。また、トップリング4は、リング本体40と、リング本体40の内周側に位置してリング本体40を外周側に付勢するエキスパンダ51〜53とを備えている。また、リング上面41には、トップリング4の径方向に沿って延びる基部42と、基部42の内周側に位置する部位であって内周側ほど軸線方向Cにおいてクランクケース側に位置するように傾斜した傾斜部43とが形成されている。また、傾斜部43は基部42に対して曲面状にて接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機関ピストンの外周面に形成されたリング溝に装着されるコンプレッションリング及び同コンプレッションリングを備える内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のシリンダボア内にはピストンが往復動可能に設けられており、このピストンの外周面に形成された複数のリング溝にはそれぞれピストンリングが装着されている。具体的には、ピストンの軸線方向において燃焼室に近い順に、トップリング、セカンドリング、及びオイルリングが装着されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
トップリング及びセカンドリングは、燃焼室で生じた燃焼ガスがピストンとシリンダのボア壁面との間から漏れないようにこれらの間をシールする機能を有している。尚、一般に、トップリング及びセカンドリングはコンプレッションリングと総称される。また、オイルリングは、エンジンオイルを必要最小限の量だけシリンダのボア壁面に供給するとともに、余剰のオイルを掻き落とす機能を有している。
【0004】
図8(a)に示すように、トップリング104は略円環状をなしており、その軸線方向Cにおいて燃焼室側の面(以下、リング上面141)及びクランクケース側の面(以下、リング下面144)は径方向に沿って延びている。また、リング上面141において径方向に延びる基部142の内周側には傾斜部143が形成されている。傾斜部143は、内周側ほど軸線方向Cにおいてクランクケース側に位置するように傾斜している。ちなみに、従来、傾斜部143と基部142との接続部位は角形状とされている。
【0005】
こうしたトップリング104を備える内燃機関では、ピストン2が上死点から下死点に向けて移動するときに、図8(b)に示すように、トップリング104のリング上面141がリング溝3の上側対向面31の外周側端部に押し付けられ、トップリング104の外周面145がボア壁面1に押し付けられる。このとき、リング上面141に傾斜部143が形成されているため、トップリング104の内周部に対して外周部が上方に位置するように変形する捩れ変形が許容される。これにより、トップリング104のリング下面144がリング溝3の下側対向面32に押し付けられることで、これらリング下面144と下側対向面32との間を通じてオイルが燃焼室側に漏出することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006―322390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上述した傾斜部143を有する従来のトップリング104にあっては、傾斜部143と基部142との接続部位Aが角形状とされているため、上述した捩れ変形が生じる際に同接続部位に対して応力が集中しやすい。そのため、トップリングの耐久性の低下を回避するためにトップリングの厚さをある程度、大きくしなければならなず、トップリングの捩れ変形量が自ずと制限されるものとなっている。従って、トップリングの捩れ変形を利用してオイルの漏出を好適に抑制する上では尚、改善の余地を残すものとなっている。
【0008】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ピストン下降時においてリングが捩れ変形することによって燃焼室側へのオイルの漏出を抑制しつつ、当該捩れ変形に起因したリングの耐久性の低下についてもこれを好適に抑制することのできるコンプレッションリング及び内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、機関ピストンの外周面に形成されたリング溝に装着されるコンプレッションリングであって、コンプレッションリングにおいてその軸線方向における燃焼室側の面を上面とするとともに同軸線方向におけるクランクケース側の面を下面とするとき、前記上面には、コンプレッションリングの径方向に沿って延びる基部と、同基部の内周側に位置する部位であって内周側ほど前記軸線方向においてクランクケース側に位置するように傾斜した傾斜部とが形成され、前記傾斜部は前記基部に対して曲面状にて接続されてなることをその要旨としている。
【0010】
ピストンが上死点から下死点に向けて移動するときに、コンプレッションリングの上面がリング溝の上側対向面の外周側端部に押し付けられ、コンプレッションリングの外周面がボア壁面に押し付けられる。ここで、上記構成によれば、コンプレッションリングの上面に傾斜部が形成されているため、コンプレッションリングの内周部に対して外周部が上方に位置するように変形する捩れ変形が許容される。これにより、コンプレッションリングの下面がリング溝の下側対向面に押し付けられることで、これらの間を通じてオイルが燃焼室側に漏出することが抑制される。
【0011】
しかも、傾斜部は基部に対して曲面状にて接続されているため、傾斜部と基部との接続部位に応力が集中することを抑制することができる。
従って、ピストン下降時においてリングが捩れ変形することによって燃焼室側へのオイルの漏出を抑制しつつ、当該捩れ変形に起因したリングの耐久性の低下についてもこれを好適に抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のコンプレッションリングにおいて、コンプレッションリングは、前記基部及び前記傾斜部を有するリング本体と、同リング本体の内周側に位置して同リング本体を外周側に付勢するエキスパンダとを備えてなることをその要旨としている。
【0013】
同構成によれば、エキスパンダによりリング本体が外周側に付勢されるため、リング本体の外周面がボア壁面に対して一層大きな力で押し付けられる。このため、ピストンが上死点から下死点に向けて移動するときに、ピストンの外周面においてコンプレッションリングよりも燃焼室側に位置する部位がボア壁面に最初に衝突する際の衝撃力を小さくすることができ、当該衝突に伴う振動を低減することができる。
【0014】
また、リング本体が一層大きく捩れ変形することによってリング本体の下面とこれに対向するリング溝の下側対向面との間が好適にシールされ、これらの間を通じた燃焼室側へのオイルの漏出が好適に抑制されるようになる。
【0015】
一方、このようにエキスパンダによって付勢され、リング本体が大きく捩れ変形することによって傾斜部と基部との接続部位に応力が一層集中するおそれがある。この点、請求項1に記載の発明が適用されるため、上記接続部位に対して応力が集中することを好適に抑制することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のコンプレッションリングにおいて、前記傾斜部は、前記径方向における同傾斜部の外周側端と内周側端とを最短距離で結ぶ仮想面に対して前記外周側端を含む部位が同仮想面よりも燃焼室側に位置する一方、前記内周側端を含む部位が同仮想面よりもクランクケース側に位置するように曲面状に形成されてなることをその要旨としている。
【0017】
同構成によれば、コンプレッションリングの径方向における傾斜部の内周側端部を含む部位が仮想面よりもクランクケース側に位置しているため、コンプレッションリングの捩れ変形が好適に促進されるようになる。また、傾斜部の外周側端部を含む部位が仮想面よりも燃焼室側に位置しているため、傾斜部と基部との接続部位に応力が集中することを好適に抑制することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のコンプレッションリングにおいて、コンプレッションリングは、前記基部及び前記傾斜部を有するリング本体と、同リング本体の内周側に位置して同リング本体を外周側に付勢するエキスパンダとを備え、前記エキスパンダは開放端を有するプレートエキスパンダとされてなることをその要旨としている。
【0019】
同構成によれば、エキスパンダが開口端、すなわち合口を有しているため、こうしたエキスパンダを通じて径方向におけるリング本体の振動を吸収する効果、所謂ダンピング効果を好適に奏することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のコンプレッションリングを備える内燃機関をその要旨としている。
同構成によれば、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明の作用効果に準じた作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態について、ピストンを中心とした正面構造を示す正面図。
【図2】同実施形態におけるトップリングを構成するリング本体及びエキスパンダの配置態様を説明するための平面図。
【図3】同実施形態におけるトップリングの断面構造を示す断面図。
【図4】同実施形態におけるリング本体の上面を拡大して示す断面図。
【図5】同実施形態における作用を説明するための断面図であって、上死点から下死点に向けて移動する際のリング本体の姿勢を示す断面図。
【図6】(a)上死点におけるピストンの姿勢を示す略図、(b)上死点から下死点に向けてピストンが移動する際にトップランドがボア壁面に最初に衝突する際の姿勢を示す略図。
【図7】同実施形態におけるクランク角とシリンダライナの振動エネルギとの関係を示すグラフ。
【図8】(a)従来のトップリングの断面構造を示す断面図、(b)上死点から下死点に向けて移動する際のトップリングの姿勢を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るコンプレッションリング及び内燃機関をトップリング及び内燃機関として具体化した一実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
尚、以降において、トップリング4(ピストン2)の軸線方向Cにおいて燃焼室に近接する方向を単に上方と称し、軸線方向Cにおいて燃焼室から離間する方向、すなわちクランクケースに近接する方向を単に下方と称する。
【0023】
図1に示すように、内燃機関のシリンダボア内にはピストン2が往復動可能に設けられている。ピストン2の外周面には、軸線方向Cにおいて燃焼室に近い順に、第1リング溝3、第2リング溝6、及び第3リング溝8が形成されている。
【0024】
第1リング溝3、第2リング溝6には、コンプレッションリングとして機能するトップリング4、セカンドリング7がそれぞれ装着されている。トップリング4及びセカンドリング7は、燃焼室で生じた燃焼ガスがピストン2とボア壁面1との間から漏れないようにこれらの間をシールする機能を有する。
【0025】
第3リング溝8にはオイルリング9が装着されている。オイルリング9は、エンジンオイルを必要最小限の量だけボア壁面1に供給するとともに、余剰のオイルを掻き落とす機能を有する。
【0026】
図2に示すように、本実施形態のトップリング4は、略円環状をなすリング本体40と、リング本体40の内周側に位置してリング本体40を外周側に付勢する3つのエキスパンダ51〜53とを備えている。ここで、リング本体40及びエキスパンダ51〜53は、リング本体40の開放端40aの位相と、エキスパンダ51〜53の開放端51a〜53aの位相とが180度異なるように第1リング溝3に対して装着されている。
【0027】
第1リング溝3は、ピストン2の径方向に沿って延びる一対の対向面(上側対向面31,下側対向面32)と、これら対向面31,32の内周側端部の間に形成されて軸線方向Cに沿って延びる底面33とによって形成されている(図5参照)。
【0028】
次に、本実施形態のトップリング4について更に詳細に説明する。尚、以降において、トップリング4の軸線方向Cにおける燃焼室側の面をリング上面41とするとともに軸線方向Cにおけるクランクケース側の面をリング下面44とする。
【0029】
図3に示すように、リング本体40のリング上面41及びリング下面44は基本的にはトップリング4の径方向に沿って延びている。ただし、リング上面41には、トップリング4の径方向に沿って延びる基部42と、基部42の内周側に位置する部位であって内周側ほど軸線方向Cにおいてクランクケース側に位置するように傾斜した曲面状の傾斜部43とが形成されている。また、傾斜部43は基部42に対して曲面状にて接続されている。
【0030】
リング本体40の外周面45は軸線方向Cにおける中央位置ほど外径が大きくされた曲面形状、所謂バレル形状をなしている。
リング本体40の内周面46には内周側に突出する2つの突部(上側突部47、下側突部48)が軸線方向Cにおいて互いに離間して形成されている。上側突部47の上面及び下側突部48の下面はそれぞれトップリング4の径方向に沿って延びている。
【0031】
エキスパンダ51〜53は、プレートエキスパンダであり、詳しくは、軸線方向Cにおいてリング本体40の2つの突部47,48にそれぞれ対応する部位が内周側に突出するとともに、エキスパンダ51〜53の上端部、下端部、及び上記内周側に突出している部位の間に位置する部位が外周側に突出した断面波型形状を有している。
【0032】
ここで、図4を参照して、傾斜部43の形状について詳細に説明する。
図4に示すように、リング本体40の径方向における傾斜部43の外周側端P1と内周側端P2とを最短距離で結ぶ仮想的な面(図4では線)を仮想面Sとする。このとき、傾斜部43は、仮想面Sに対して外周側端P1を含む部位43Aが仮想面Sよりも燃焼室側に位置している。また、傾斜部43は、仮想面Sに対して内周側端P2を含む部位43Bが仮想面Sよりもクランクケース側に位置している。すなわち、傾斜部43の上面はS字状をなしている。
【0033】
次に、図5〜図7を参照して、本実施形態の作用について説明する。
エキスパンダ51〜53によりリング本体40が外周側に付勢されるため、リング本体40の外周面45がボア壁面1に対して大きな力で押し付けられる。このため、ピストン2が上死点から下死点に向けて移動するときに、図5に示すように、リング本体40のリング上面41が第1リング溝3の上側対向面31の外周側端部に押し付けられ、トップリング4の外周面45がボア壁面1に押し付けられる。ここで、リング本体40のリング上面41に傾斜部43が形成されているため、リング本体40の内周部に対して外周部が上方に位置するように変形する捩れ変形が許容され、大きく捩れ変形する。これにより、リング本体40のリング下面44が第1リング溝3の下側対向面32に押し付けられることで、これらの間を通じてオイルが燃焼室側に漏出することが抑制される。
【0034】
また、エキスパンダ51〜53によりリング本体40の外周面45がボア壁面1に対して大きな力で押し付けられる。このため、ピストン2が上死点(図6(a))から下死点に向けて移動するときに、図6(b)に示すように、ピストン2のトップランド(ピストン2の外周面においてトップリング4の上方に位置する部位)がボア壁面1に最初に衝突する際の衝撃力が小さくなり、当該衝突に伴う振動が低減されるようになる。その結果、例えば図7に示すように、上死点から10°CAまでの範囲においてシリンダライナの振動エネルギの最大値が大きく低下するようになる。
【0035】
一方、このようにエキスパンダ51〜53によって付勢され、リング本体40が大きく捩れ変形することによって傾斜部43と基部42との接続部位に応力が集中するおそれがある。
【0036】
この点、本実施形態によれば、傾斜部43は基部42に対して曲面状にて接続されているため、傾斜部43と基部42との接続部位に応力が集中することが好適に抑制される。 以上説明した本実施形態に係るコンプレッションリング及び内燃機関によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
【0037】
(1)トップリング4は、リング本体40と、リング本体40の内周側に位置してリング本体40を外周側に付勢するエキスパンダ51〜53とを備えている。また、リング上面41には、トップリング4の径方向に沿って延びる基部42と、基部42の内周側に位置する部位であって内周側ほど軸線方向Cにおいてクランクケース側に位置するように傾斜した傾斜部43とが形成されている。また、傾斜部43は基部42に対して曲面状にて接続されている。
【0038】
こうした構成によれば、エキスパンダ51〜53によりリング本体40が外周側に付勢されるため、リング本体40の外周面45がボア壁面1に対して大きな力で押し付けられる。このため、ピストン2が上死点から下死点に向けて移動するときに、トップリング4のリング上面41が第1リング溝3の上側対向面31の外周側端部に押し付けられ、トップリング4の外周面45がボア壁面1に押し付けられる。ここで、トップリング4のリング上面41に傾斜部43が形成されているため、トップリング4の捩れ変形が許容され、大きく捩れ変形する。これにより、トップリング4のリング下面44が第1リング溝3の下側対向面32に押し付けられることで、これらの間を通じてオイルが燃焼室側に漏出することが抑制される。
【0039】
また、ピストン2が上死点から下死点に向けて移動するときに、ピストン2のトップランドがボア壁面1に最初に衝突する際の衝撃力を小さくすることができ、当該衝突に伴う振動を低減することができる。
【0040】
一方、このようにエキスパンダ51〜53によって付勢され、リング本体40が大きく捩れ変形することによって傾斜部43と基部42との接続部位に応力が一層集中するおそれがある。
【0041】
この点、上記構成によれば、傾斜部43は基部42に対して曲面状にて接続されているため、傾斜部43と基部42との接続部位に応力が集中することを好適に抑制することができる。
【0042】
従って、ピストン下降時において捩れ変形することによって燃焼室側へのオイルの漏出を抑制しつつ、当該捩れ変形に起因した耐久性の低下についてもこれを好適に抑制することができる。
【0043】
(2)傾斜部43は、径方向における傾斜部43の外周側端P1と内周側端P2とを最短距離で結ぶ仮想面Sに対して外周側端P1を含む部位が同仮想面よりも燃焼室側に位置する一方、内周側端P2を含む部位が同仮想面Sよりもクランクケース側に位置するように曲面状に形成されている。こうした構成によれば、トップリング4の径方向における傾斜部43の内周側端P2を含む部位43Bが仮想面Sよりもクランクケース側に位置しているため、トップリング4の捩れ変形が好適に促進されるようになる。また、傾斜部43の外周側端P1を含む部位43Aが仮想面Sよりも燃焼室側に位置しているため、傾斜部43と基部42との接続部位に応力が集中することを好適に抑制することができる。
【0044】
(3)エキスパンダ51〜53は開放端51a〜53aを有するプレートエキスパンダとされている。こうした構成によれば、エキスパンダ51〜53が合口を有しているため、径方向におけるリング本体40の振動を吸収する効果、所謂ダンピング効果を好適に奏することができる。しかも、エキスパンダ51〜53は断面波型形状を有しているため、大きなダンピング効果を発揮することができる。
【0045】
尚、本発明に係るコンプレッションリング及び内燃機関は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0046】
・上記実施形態によるようにエキスパンダ51〜53を断面波型形状とすることが、大きなダンピング効果を得る上では望ましい。しかしながら、本発明のエキスパンダはこうした形状をなすものに限定されない。他に例えば、こうした波型形状をなさない断面直線状のエキスパンダであってもよい。
【0047】
・上記実施形態では、3つのエキスパンダを備えるトップリング4を採用することにより、シリンダライナの振動エネルギの最大値を好適に低下させることができた。しかしながら、本発明に係るエキスパンダは3つに限定されるものではない。他に例えば、2つ以下のエキスパンダを有するものであっても良いし、4つ以上のエキスパンダを有するものであってもよい。また、エキスパンダを有しないものであってもよい。すなわち、リング本体のみからなるトップリングであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…ボア壁面、2……ピストン、3…第1リング溝、31…上側対向面、32…下側対向面、33…底面、4,104…トップリング(コンプレッションリング)、40…リング本体、40a…開放端、41,141…リング上面、42,142…基部、43,143…傾斜部、44,144…リング下面、45,145…外周面、46…内周面、47…上側突部、48…下側突部、51,52,53…エキスパンダ、51a,52a,53a…開放端、6…第2リング溝、7…セカンドリング、8…第3リング溝、9…オイルリング、C…軸線方向、S…仮想面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関ピストンの外周面に形成されたリング溝に装着されるコンプレッションリングであって、
コンプレッションリングにおいてその軸線方向における燃焼室側の面を上面とするとともに同軸線方向におけるクランクケース側の面を下面とするとき、
前記上面には、コンプレッションリングの径方向に沿って延びる基部と、同基部の内周側に位置する部位であって内周側ほど前記軸線方向においてクランクケース側に位置するように傾斜した傾斜部とが形成され、
前記傾斜部は前記基部に対して曲面状にて接続されてなる
ことを特徴とするコンプレッションリング。
【請求項2】
請求項1に記載のコンプレッションリングにおいて、
コンプレッションリングは、前記基部及び前記傾斜部を有するリング本体と、同リング本体の内周側に位置して同リング本体を外周側に付勢するエキスパンダとを備えてなる
ことを特徴とするコンプレッションリング。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコンプレッションリングにおいて、
前記傾斜部は、前記径方向における同傾斜部の外周側端と内周側端とを最短距離で結ぶ仮想面に対して前記外周側端を含む部位が同仮想面よりも燃焼室側に位置する一方、前記内周側端を含む部位が同仮想面よりもクランクケース側に位置するように曲面状に形成されてなる
ことを特徴とするコンプレッションリング。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のコンプレッションリングにおいて、
コンプレッションリングは、前記基部及び前記傾斜部を有するリング本体と、同リング本体の内周側に位置して同リング本体を外周側に付勢するエキスパンダとを備え、
前記エキスパンダは開放端を有するプレートエキスパンダとされてなる
ことを特徴とするコンプレッションリング。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のコンプレッションリングを備える内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−251441(P2012−251441A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122818(P2011−122818)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】