説明

コンベヤベルトの異常検出装置

【課題】コンベヤベルトの縦裂の検出精度を向上すると共に、縦裂に起因するコンベヤベルトの焼損や火災発生を防止することができるコンベヤベルトの異常検出装置を提供する。
【解決手段】コンベヤベルト6の縦裂による共振回路8の断線を検出器9で検出すると共に、コンベヤベルト6の共振回路8間の部分における縦裂の発生を温度計10により検出する。縦裂に起因してコンベヤベルト6が加熱して、コンベヤベルト6が焼損又は発火するような場合には、制御部12により消火設備11を起動して、コンベヤベルト6の冷却又は消火を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンベヤベルトの異常検出装置に関し、更に詳しくは、コンベヤベルトの縦裂の検出精度を向上し、かつその縦裂による焼損や火災発生を防止することができるコンベヤベルトの異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒体物や粉体物などの搬送に用いられるコンベヤにおいては、往路側のコンベヤベルトに搬送物を投入落下した際に、搬送物自体の突起や搬送物に混在する異物などにより、コンベヤベルトに縦裂が生じることがある。コンベヤベルトに縦裂が生じた場合には、縦裂の拡大や搬送物の落下などを防ぐために、直ちにコンベヤの運転を停止する必要がある。
【0003】
コンベヤベルトに発生した縦裂の検出方法としては、特許文献1や特許文献2に示すように、ベルト幅方向に延びるループコイルを、ベルト走行方向に沿って所定の間隔でコンベヤベルトに埋設し、ベルト外部に設置したセンサーにより縦裂に伴うループコイルの破損を検出する方法が提案されている。
【0004】
しかし、コンベヤベルトが長尺となる大規模なコンベヤでは、ループコイルを埋設する間隔が数十メートルから数百メートルにもなるため、上記の検出方法では、ループコイルが埋設されていないベルト部分で縦裂が発生すると、縦裂がループコイルに拡大するまで検出することができないため、コンベヤを直ちに停止することができないという問題があった。また、コンベヤベルトに縦裂が発生したまま運転を継続すると、コンベヤベルトと支持ローラとの接触が不安定となり、両者の間に発生する摩擦熱によりコンベヤベルトが過熱し、最悪の場合には発火して火災に至るおそれがある。
【特許文献1】特開昭58−220012号公報
【特許文献2】特開2005−162430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、コンベヤベルトの縦裂の検出精度を向上すると共に、縦裂に起因するコンベヤベルトの焼損や火災発生を防止することができるコンベヤベルトの異常検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明のコンベヤベルトの異常検出装置は、駆動源により回転駆動される駆動プーリと従動プーリとの間に掛け回されたコンベヤベルトに、ベルト幅方向に延びる電気回路をベルト長手方向に沿って間欠的に埋設し、前記コンベヤベルトの縦裂による前記電気回路の断線を該コンベヤベルトの近傍に設置した検出器で検出するコンベヤベルトの異常検出装置において、前記検出器の前記コンベヤベルトの走行方向側に、該コンベヤベルトの温度を測定する温度計と、該コンベヤベルトの消火設備とを設置すると共に、前記検出器、温度計、消火設備及び駆動源に接続し、かつ警報手段を備えた制御部を設け、前記制御部は、前記検出器が前記電気回路の断線を検知したときには前記駆動源を停止し、前記検出器が前記電気回路の断線を検知せずに前記温度計の測定値が第1所定値を超えたときには前記警報手段を起動し、更に前記測定値が第2所定値を超えたときには前記消火設備を起動し、かつ駆動源を停止することを特徴とするものである。
【0007】
上記の第1所定値をコンベヤベルトの周辺温度とし、かつ第2所定値をゴムの発火温度とすることが望ましい。
【0008】
電気回路は共振回路とし、検出器はその共振回路の共振周波数の電磁波を放射するアンテナを備えていることが望ましい。また、警報手段としては、ランプ及び/又はサイレンを用いるのがよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のコンベヤベルトの異常検出装置によれば、コンベヤベルトに埋設された共振回路の断線によりコンベヤベルトの縦裂を検出すると共に、コンベヤベルトの共振回路間の部分における縦裂も温度計により検出するようにしたので、コンベヤベルトの縦裂の検出精度を向上することができる。また、縦裂に起因してコンベヤベルトが過熱して、コンベヤベルトが焼損又は発火するような場合でも、消火設備によりコンベヤベルトの冷却又は消火を行うようにしたので、コンベヤベルトの焼損や火災発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態からなるコンベヤベルトの異常検出装置を示す。
【0012】
このコンベヤベルトの異常検出装置(以下、単に「異常検出装置」という。)は、電動機1により回転駆動される駆動プーリ2と従動プーリ3との間に掛け回され、ホッパ4から供給された搬送物を複数の支持ローラ5に支持されながら搬送するコンベヤベルト6を備えたコンベヤ7に対して設置されており、コンベヤベルト6に埋設された複数の共振回路8、コンベヤベルト6の近傍に設置された検出器9及び温度計10、消火設備11、それらに接続する制御部12並びに警報手段13から主に構成されている。
【0013】
共振回路8は、図2に示すように、ベルト幅方向に延びる導線14により接続されたコイル15及びコンデンサ16から構成され、コンベヤベルト6のベルト長手方向に間欠的に複数埋設されている。それら共振回路8を埋設する間隔は、互いに等間隔となるようにすることが好ましい。コイル15及びコンデンサ16は、共振回路8が所定の共振周波数(例えば、650kHz)を有するように設定される。
【0014】
検出器9は、往路側のコンベヤベルト6の裏面に向けて近接して設置されており、図3に示すように、交流電流が供給され所定の周波数(例えば、650kHz)を発生する発振回路17と、所定の周波数の電磁波をアンテナ18を通じて放射する送信回路19と、交流電流の電圧を整流して直流電圧に変換する電圧検出回路20、その直流電圧をデジタル値に変換するA/D変換回路21とから主に構成されている。直流電圧のデジタル値は、出力端子22を通じて制御部12に伝えられる。
【0015】
このような検出器9の上方を共振回路8が通過すると、共振回路8が健全な場合には、検出器9のアンテナ18から放射された電磁波により共振回路8に誘導起電力が発生するため、検出器9の電力が低下して交流電圧が低下する。しかし、導線14が切断されるなどして共振回路8が断線している場合には、共振回路8には誘導起電力が発生しないため、検出器9の交流電圧は変化しない。従って、出力端子22から出力される直流電圧の変化を確認することにより、共振回路8の断線を検出することができる。
【0016】
温度計10は、検出器9のコンベヤベルト6の走行方向側に設置されており、コンベヤベルト6の裏面の温度を測定するものである。この温度計10としては熱電対などが例示されるが、コンベヤベルト6に物理的な影響を与えないという点からは、赤外線放射温度計のような非接触式の温度計を用いることが望ましい。
【0017】
上記の検出器9及び温度計10は、コンベヤベルト6の縦裂が発生しやすい箇所であるホッパ4に対して、コンベヤベルト6の走行方向側の近傍に設置することが望ましい。
【0018】
消火設備11は、コンベヤベルト6の冷却又はコンベヤベルト6の発火の消火を行うものである。この消火設備11としては、電磁弁を備えたスプリンクラーや、消火薬剤が封入された圧力容器などが例示される。
【0019】
制御部12は、検出器9及び温度計10の測定値に基づいて、電動機1、消火設備11及び警報手段13の動作を制御するものである。この制御部12は、中央演算処理装置(CPU)を備えたパソコンなどにより構成することができる。
【0020】
警報手段13は、コンベヤ7の管理者に警告を与えるためのものであり、点滅するランプ若しくはサイレンなどの警告音、又はそれらの組合せから構成することができる。
【0021】
このような異常検出装置における制御部12の機能を、図4を用いて以下に説明する。
【0022】
まず、コンベヤ7の運転を開始し、検出器9の上方を次々に通過する共振回路8が断線していないかを調べる(S10)。共振回路8の断線を検出した場合には、コンベヤベルト6に縦裂が発生したものと判断し、電動機1を停止(S15)してコンベヤ7の運転を止める。
【0023】
共振回路8の断線を検出しない場合には、温度計10の温度測定値が、第1所定値を超えているかを確認する(S11)。第1所定値を超えている場合には、コンベヤベルト6の共振回路8間の部分において縦裂が発生したため、コンベヤベルト6と支持ローラ5との間の接触が不安定となってコンベヤベルト6が過熱した可能性があると判断し、警報手段13を起動してコンベヤ7の管理者に警告を与える(S12)。この第1所定値には、コンベヤ7の周辺温度、より好ましくはコンベヤ7運転中におけるコンベヤベルト6周辺の平均外気温を用いるのがよい。警告を受けた管理者は、コンベヤベルト6の過熱が縦裂に起因するものかについて調査を行うことになる。なお、温度測定値が第1所定値以下であるときは、コンベヤベルト6に異常はないものと判断として、再び共振回路8の断線の有無を確認する(S10)。
【0024】
警報手段13を起動した後は、温度測定値が第2所定値を超えているかを更に確認する(S13)。第2所定値を超えている場合には、コンベヤベルト6が過熱したため、焼損又は発火したものと判断し、消火設備11を起動(S14)させてコンベヤベルト6の冷却又は消火を行うと共に、電動機1を停止する(S15)。この第2所定値には、ゴムの発火温度(例えば、385℃)を用いることが望ましい。
【0025】
このように、共振回路8の断線によりコンベヤベルト6の縦裂を検出すると共に、コンベヤベルト6の共振回路8間の部分における縦裂も温度計10により検出するようにしたので、コンベヤベルト6の縦裂発生の検出精度を向上することができる。また、縦裂に起因してコンベヤベルト6が過熱し、コンベヤベルトが焼損又は発火するような場合でも、消火設備11によりコンベヤベルト6の冷却又は消火を行うようにしたので、コンベヤベルト6の焼損や火災発生を防止することができる。
【0026】
駆動プーリ2又は従動プーリ3のいずれかに、プーリの回転数を示すエンコーダを設置することで、異常検出装置がコンベヤベルト6の縦裂を検出してからコンベヤ7が停止するまでのプーリの回転数から、縦裂が発生した箇所を容易に特定することができるようになる。
【0027】
なお、上記の実施形態においては検出器9を1台としているが、複数台を設けることにより共振回路8の断線の誤検出を防止するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態からなるコンベヤベルトの異常検出装置の構成図である。
【図2】コンベヤベルトに埋設された共振回路を示す平面図である。
【図3】検出器の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】制御部の機能を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0029】
1 電動機
2 駆動プーリ
3 従動プーリ
4 ホッパ
5 支持ローラ
6 コンベヤベルト
7 コンベヤ
8 共振回路
9 検出器
10 温度計
11 消火設備
12 制御部
13 警報手段
14 導線
15 コイル
16 コンデンサ
17 発振回路
18 アンテナ
19 送信回路
20 電圧検出回路
21 A/D変換回路
22 出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源により回転駆動される駆動プーリと従動プーリとの間に掛け回されたコンベヤベルトに、ベルト幅方向に延びる電気回路をベルト長手方向に沿って間欠的に埋設し、前記コンベヤベルトの縦裂による前記電気回路の断線を該コンベヤベルトの近傍に設置した検出器で検出するコンベヤベルトの異常検出装置において、
前記検出器の前記コンベヤベルトの走行方向側に、該コンベヤベルトの温度を測定する温度計と、該コンベヤベルトの消火設備とを設置すると共に、前記検出器、温度計、消火設備及び駆動源に接続し、かつ警報手段を備えた制御部を設け、
前記制御部は、
前記検出器が前記電気回路の断線を検知したときには前記駆動源を停止し、
前記検出器が前記電気回路の断線を検知せずに前記温度計の測定値が第1所定値を超えたときには前記警報手段を起動し、更に前記測定値が第2所定値を超えたときには前記消火設備を起動し、かつ前記駆動源を停止する
コンベヤベルトの異常検出装置。
【請求項2】
前記第1所定値が前記コンベヤベルトの周辺温度であり、かつ前記第2所定値がゴムの発火温度である請求項1に記載のコンベヤベルトの異常検出装置。
【請求項3】
前記電気回路が共振回路であって、前記検出器が前記共振回路の共振周波数の電磁波を放射するアンテナを備えている請求項1又は2に記載のコンベヤベルトの異常検出装置。
【請求項4】
前記警報手段がランプ及び/又はサイレンである請求項1〜3のいずれかに記載のコンベヤベルトの異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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