説明

コンベヤベルトの評価装置および評価方法

【課題】複雑な装置を使用せず、実機ラインに近似した条件および促進劣化させるより過酷な条件で、コンベヤベルトの耐外傷性と耐温度性を予め把握できるコンベヤベルトの評価装置および評価方法を提供する。
【解決手段】コンベヤベルトの評価サンプル14を恒温ケース6内で一対のプーリ3、4に架け回し、この評価サンプル14を予め設定された所定のテンションで張設するとともに、予め設定された所定の速度で走行させた状態にして、この状態の評価サンプル14の搬送面15aに対して、錘9を有して先端に落下アタッチメント7を取り付けた外力付与体8を、その先端から繰り返し自由落下させ、かつ、温度コントローラ13により、恒温ケース6の内部温度および落下アタッチメント7の温度を予め設定された温度に調整して、評価サンプル14の耐外傷性および耐温度性を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトの評価装置および評価方法に関し、さらに詳しくは、複雑な装置を用いることなく、実機ラインに近似した条件および促進劣化させるより過酷な条件で、コンベヤベルトの耐温度性および耐外傷性を把握できる評価装置および評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高温の焼結鉱などを運搬するコンベヤベルトでは耐熱性を考慮する必要があり、氷点下の低温の運搬物を運搬するコンベヤベルトでは耐寒性(耐脆性)を考慮する必要がある。このようにコンベヤベルトには、運搬物の温度条件や使用現場の温度条件下において実用に耐え得る性能(耐温度性)が求められる。例えば、加熱されたブロックを使用したコンベヤベルトの耐熱性評価方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、コンベヤベルトには通常、シュートを通じて運搬物が投入されるので衝撃力が作用し、また、搬送物によってはコンベヤベルトに顕著な摩耗や傷を発生させる。そのため、使用現場で付与される外力に対して実用に耐え得る性能(耐外傷性)が求められる。
【0004】
ここで、例えば、100℃以上の高温の運搬物や0℃以下の低温の搬送物を運搬する場合は、運搬物の温度がコンベヤベルトに与える影響がより大きくなるので、耐外傷性に加えて耐温度性を一段と考慮する必要がある。また、搬送物の温度や雰囲気温度によってもコンベヤベルトの耐外傷性は変化する。そのため、コンベヤベルトを実機ラインに実装した際の性能を予め評価するには、使用現場の温度条件と使用現場で付与される外力とを同時に考慮しなければならない。しかしながら、従来のコンベヤベルトの評価方法では、温度条件と外力(衝撃力等)とを同時に十分考慮していないため、実機ラインに近似した条件でコンベヤベルトの耐温度性および耐外傷性を予め把握することができなかった。さらに実機ラインに近似した条件でコンベヤベルトの耐温度性および耐外傷性を予め把握することができないため、より過酷な環境条件での促進劣化の評価も不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−230520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、複雑な装置を用いることなく、実機ラインに近似した条件および促進劣化させるより過酷な条件でのコンベヤベルトの耐外傷性および耐温度性を予め把握できるコンベヤベルトの評価装置および評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のコンベヤベルトの評価装置は、コンベヤベルトの評価サンプルが架け回される一対のプーリと、前記評価サンプルのテンションを調整するテンション調整部と、前記評価サンプルの走行速度を調整する速度調整部と、前記評価サンプルが収容される恒温ケースと、前記評価サンプルの搬送面に外力付与体を繰り返し接触させる外力付与手段と、前記恒温ケースの内部温度および前記外力付与体の温度を調整する温度コントローラとを備えて、前記評価サンプルの耐外傷性および耐温度性を評価することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のコンベヤベルトの評価方法は、コンベヤベルトの評価サンプルを恒温ケース内で一対のプーリに架け回し、この評価サンプルを予め設定された所定のテンションで張設するとともに、予め設定された所定の速度で走行させた状態にして、この状態の評価サンプルの搬送面に外力付与体を繰り返し接触させ、かつ、前記恒温ケースの内部温度および外力付与体の温度を、温度コントローラにより予め設定された温度に調整して、前記評価サンプルの耐外傷性および耐温度性を評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、評価サンプルを恒温ケース内で、使用現場に応じた所定のテンションで一対のプーリに架け回して、使用現場に応じた所定の走行速度で走行させることができる。そして、走行している状態の評価サンプルの搬送面に外力付与体を繰り返し接触させることにより、評価サンプルに所望の外力を付与することができる。しかも、その際に、恒温ケースの内部温度および外力付与体の温度を、温度コントローラによって、使用現場に応じた予め設定された温度に調整できる。これにより、複雑な装置を用いることなく、実機ラインに近似した条件で評価サンプルの耐外傷性および耐温度性を予め把握できる。また、恒温ケースの内部温度を適切に設定することで、評価サンプルの耐外傷性を、より過酷な条件で促進評価することも可能になり、評価時間の短縮化に寄与する。
【0010】
本発明の評価装置では、前記外力付与手段が、任意の質量に調整できる錘を有して、先端形状が可変である外力付与体と、この外力付与体を繰り返し自由落下させる落下機構とからなり、この外力付与体を先端から前記評価サンプルの搬送面に繰り返し落下させる構成にすることもできる。この構成では、先端形状をベルト搬送物に応じた形状にして、その外力付与体を先端から、走行している評価サンプルの搬送面に対して、使用現場と同様に繰り返し自由落下させて衝撃を与えることができる。これにより、評価サンプルの耐衝撃性および耐温度性を把握できる。
【0011】
前記外力付与手段が、外周面形状が可変である転動ローラからなる外力付与体と、この外力付与体を独立して回転させる回転部とからなり、この外力付与体の外周面を前記評価サンプルの搬送面に接触させつつ転動させる構成にすることもできる。この構成では、転動ローラの外周面形状をベルト搬送物に応じた形状にして、この転動ローラの外周面を走行している評価サンプルの搬送面に対して、使用現場と同様に繰り返し接触させて外力を与えることができる。これにより、評価サンプルの耐摩耗性および耐温度性を把握できる。
【0012】
本発明の評価方法では、前記外力付与体は、任意の質量に調整できる錘を有して先端形状が可変であり、この外力付与体を先端から前記評価サンプルの搬送面に繰り返し自由落下させることもできる。この場合、先端形状をベルト搬送物に応じた形状にして、その外力付与体を先端から、走行している評価サンプルの搬送面に対して、使用現場と同様に繰り返し自由落下させて衝撃を与えることができる。これにより、評価サンプルの耐衝撃性および耐温度性を把握できる。
【0013】
前記外力付与体は、外周面形状が可変である転動ローラであり、この外力付与体を独立して回転させて、その外周面を前記評価サンプルの搬送面に接触させつつ転動させることもできる。この場合、転動ローラの外周面形状をベルト搬送物に応じた形状にして、この転動ローラの外周面を走行している評価サンプルの搬送面に対して、使用現場と同様に繰り返し接触させて外力を与えることができる。これにより、評価サンプルの耐摩耗性および耐温度性を把握できる。
【0014】
前記評価サンプルの搬送面に複数の凹部を設け、これら凹部に異なる仕様の評価ゴムを嵌め込むことにより、複数の異なる仕様の評価ゴムの耐外傷性および耐温度性を同時に評価することもできる。この場合、複数種類の仕様の評価ゴムを、一度に評価できるので評価時間の短縮化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のコンベヤベルトの評価装置を例示する全体概要図である。
【図2】別の評価装置を例示する全体概要図である。
【図3】コンベヤベルトの評価サンプルを例示する長手方向断面図である。
【図4】コンベヤベルトの評価サンプルの変形例を示す平面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のコンベヤベルトの評価装置および方法を図に示した実施形態を参照しながら説明する。
【0017】
図1に例示する本発明のコンベヤベルトの評価装置1(以下、評価装置1という)は、コンベヤベルトの評価サンプル14の耐衝撃性および耐温度性を動的に評価するものであり、ベース2上に配置された支柱3a、4aによって支持された一対のプーリ3、4を有している。一方は駆動プーリ3であり、他方は従動プーリ4である。一対のプーリ3、4には評価サンプル14が架け回される。
【0018】
評価サンプル14は図3に例示するように、帆布やスチールコード等からなる心体17と、この心体17上下に積層された上カバーゴム15および下カバーゴム16とを加硫して一体化したものであり、環状に形成されている。コンベヤベルトの仕様に応じて、評価サンプル14には補強層などのその他の構成部材が埋設される。
【0019】
駆動プーリ3を支持する支柱3aはベース2に固定されている。駆動プーリ3の回転駆動速度は速度調整部3bによって、使用現場に応じた予め設定された所定の速度に調整される。即ち、この速度調整部3bにより、一対のプーリ3、4に架け回される評価サンプル14の走行速度が調整される。
【0020】
従動プーリ4を支持する支柱4aは、ベース2上に固定されたスライドレール4bの上に配置されている。支柱4aは、スライドレール4bの上をレール長手方向(図1では左右方向)に自由にスライドでき、所望の位置で固定できるようになっている。即ち、このスライドレール4bが、一対のプーリ3、4に架け回される評価サンプル14のテンションを調整するテンション調整部として機能する。評価サンプル14は、使用現場に応じた予め設定された所定のテンションで張設され、そのテンションは、支柱4aに接続されたロードセル5により検知される。
【0021】
尚、従動プーリ4と駆動プーリ3とを入れ替えて、従動プーリ4を支持する支柱4aをベース2に固定して、駆動プーリ3を支持する支柱3aを、ベース2上にスライド可能に設置してもよい。
【0022】
さらに、評価装置1は、評価サンプル14が収容される恒温ケース6と、評価サンプル14の搬送面15aに外力付与体8を繰り返し接触させる外力付与手段と、恒温ケース6の内部温度および外力付与体8の温度を任意に調整できる温度コントローラ13とを備えている。恒温ケース6の内部温度および外力付与体8の温度は温度コントローラ13により、使用現場に応じた予め設定された温度に調整される。例えば、電熱体により外力付与体8および恒温ケース6内部を加温する。また、冷媒を流通させることにより外力付与体8および恒温ケース6内部を冷却する。
【0023】
この実施形態では、質量を任意に調整できる錘9を有し、先端形状の異なる複数の落下アタッチメント7a〜7eを着脱できる外力付与体8を備えている。外力付与手段は、この外力付与体8と、外力付与体8を繰り返し自由落下させるカムシャフト10とで構成されている。錘9(外力付与体8)の質量は、ベルト搬送物の実機でのシュート落差より計算される衝撃性に応じて予め設定された質量に調整される。
【0024】
落下アタッチメント7の先端形状は、使用現場の搬送物の形状に近似したものを用いる。例示した落下アタッチメント7a、7bの先端は三角形状であり、落下アタッチメント7aの方がより先端が鋭角になっている。落下アタッチメント7c、7d、7eの先端はそれぞれ、凹凸形状、円弧状、平面状である。このようにベルト搬送物に応じて、落下アタッチメント7の先端は種々の形状にすることができる。
【0025】
落下アタッチメント7は耐久性等を考慮して、例えば、鋼等の金属製にする。或いは、落下アタッチメント7の搬送面15aに接触する部分を、搬送物と同じ材質にすることもできる。例えば、搬送物が鉱石の場合は、落下アタッチメント7の先端を鉱石で形成する。
【0026】
回転駆動されるカムシャフト10の外周面には係合突起10aが突設されている。外力付与体8のシャフト外周面には係合突起8aが突設されている。カムシャフト10が回転して、互いの係合突起8a、10aが係合すると外力付与体8が上方移動し、互いの係合が解除されると、外力付与体8は自由落下する。したがって、カムシャフト10の回転が続くことにより、外力付与体8がその先端から評価サンプル14の搬送面15aに繰り返し自由落下する。
【0027】
評価サンプル14の耐衝撃性および耐温度性を評価する際には、恒温ケース6内で一対のプーリ3、4に架け回す。そして、評価サンプル14と同じ仕様のコンベヤベルトが使用される使用現場と同じテンションで張設する。
【0028】
次いで、使用現場と同じ速度で走行させた評価サンプル14の搬送面15aに対して、外力付与体8を先端の落下アタッチメント7から、繰り返し自由落下させて衝突させる。落下アタッチメント7の先端形状は、使用現場で搬送する搬送物と近似したものを使用し、外力付与体8の質量、落下高さおよび落下サイクルは、使用現場と同じ条件または計算される負荷条件に応じて任意に設定する。
【0029】
自由落下して搬送面15aに接触した外力付与体8は、カムシャフト10によって上方移動されるまでの間、評価サンプル14とともに走行方向に移動する。そのため、この走行方向に移動した距離だけ、外力付与体8を落下前の位置に戻す復元機構を設けるとよい。この実施形態では、回転するカムシャフト10によって、搬送面15aに自由落下した外力付与体8が、上方向および評価サンプル14の反走行方向に移動させられて落下前の位置に戻るようになっている。
【0030】
評価の際には、恒温ケース6の内部温度および落下アタッチメント7の温度を温度コントローラ13により、使用現場と同じ条件に設定する。即ち、恒温ケース6の温度は使用現場の雰囲気温度と同じ温度、落下アタッチメント7は使用現場で搬送する搬送物と同じ温度に、それぞれ別個に温度調整する。恒温ケース6の内部温度は例えばマイナス70℃〜プラス300℃程度、落下アタッチメント7の温度は例えばマイナス70℃〜プラス600℃程度に設定される。
【0031】
この動的評価を所定時間行なった後に、評価サンプル14の状態を把握する。例えば、上カバーゴム15、心体17の損傷状態、物性(残留強度、伸び等)を把握する。
【0032】
この実施形態では、複雑な装置を用いることなく、実機ラインに近似した条件で、評価サンプル14の上カバーゴム15、心体17等の耐衝撃性および耐温度性を把握、評価できる。このように本発明では、コンベヤベルトの使用現場の温度条件と使用現場で付与される外力とを同時に考慮して、評価サンプル14を用いてコンベヤベルトを実機ラインに実装した際の性能を予め評価することができる。
【0033】
また、恒温ケース6の内部温度を適切に設定することで、評価サンプル14の耐外傷性を、より過酷な条件で促進評価することも可能になる。例えば、雰囲気温度の違いによる評価サンプル14の耐外傷性の変化具合(温度依存性)を把握しておく。この把握したデータに基づいて、恒温ケース6の温度を、使用現場の雰囲気温度よりも高く設定して評価を行なうことで評価時間を短縮できる。
【0034】
また、外力付与体8を繰り返し上下動させて用いるので、実際の搬送物を投入して評価する場合と異なり、多数(多量)の搬送物を用意する必要がない。また、搬送物によって評価装置1の周辺が汚れることもない。
【0035】
種々の条件で評価を行なってデータを蓄積することにより、搬送面15aに投入される搬送物によって評価サンプル14に付与される動的面圧と、耐衝撃性や耐温度性との関係、評価サンプル14に生じた損傷の進行具合と、雰囲気温度や搬送物の温度との関係などを把握することが可能になる。
【0036】
図2に例示する評価装置1の別の実施形態は、評価サンプル14の耐摩耗性および耐温度性を動的に評価するものであり、先の実施形態に対して外力付与手段を異ならせている。その他の構成は先の実施形態と同じである。
【0037】
この外力付与手段は、外周面形状が可変である転動ローラ11からなる外力付与体と、この転動ローラ11を独立して回転させる回転部12とを有している。そして、転動ローラ11の外周面を評価サンプル14の搬送面15aに接触させつつ転動させる構成になっている。
【0038】
転動ローラ11の外周面形状は、使用現場の搬送物の形状に近似したものを用いる。図2で評価サンプル14の搬送面15aに接触して転動している転動ローラ11aの外周面は、微小な凹凸が多数設けられている円周面である。回転部12に着脱される転動ローラ11b、11c、11dの外周面はそれぞれ、四角状の突起、円弧状の突起、三角状の突起を有する形状になっている。
【0039】
このようにベルト搬送物の形状に応じて、転動ローラ11の外周面には種々の形状を採用することができる。この実施形態では、外周面形状の異なる複数の転動ローラ11a〜11dを備えているが、形状の異なる複数の外周面を備えて、1つの転動ローラ11に対して形状の異なる外周面を付け替え可能な構造にすることもできる。
【0040】
転動ローラ11は、は耐久性等を考慮して、例えば、鋼等の金属製にする。或いは、搬送面15aに接触する転動ローラ11の外周面を、搬送物と同じ材質にすることもできる。例えば、搬送物が砂の場合は、転動ローラ11の外周面を砂で形成する(砂を付着させる)。
【0041】
評価サンプル14の耐摩耗性および耐温度性を評価する際には、恒温ケース6内で一対のプーリ3、4に架け回す。そして、評価サンプル14と同じ仕様のコンベヤベルトが使用される使用現場と同じテンションで張設する。
【0042】
次いで、転動ローラ11を回転部12によって回転駆動させて、その外周面を評価サンプル14の搬送面15aに接触させつつ、評価サンプル14の走行方向とは反対方向に転動させる。或いは、評価サンプル14の走行方向に転動させる。場合によっては、回転自在に軸支された転動ローラ11を回転部12によってブレーキをかけつつ、評価サンプル14の走行方向に転動させる。
【0043】
転動ローラ11の外周面形状は、使用現場で搬送する搬送物と近似したものを使用する。転動ローラ11の回転速度は、搬送物により生じる摩耗を再現するように設定する。転動ローラ11を搬送面15aに接触させる面圧も、使用現場を再現するように設定する。
【0044】
評価をする際には、恒温ケース6の内部温度および転動ローラ11の外周面の温度を温度コントローラ13により、使用現場と同じ条件に設定する。即ち、恒温ケース6の温度は使用現場の雰囲気温度と同じ温度、転動ローラ11の外周面の温度は使用現場で搬送する搬送物と同じ温度に、それぞれ別個に温度調整する。
【0045】
この動的評価を所定時間行なった後に、評価サンプル14の状態を把握する。例えば、上カバーゴム15、心体17の損傷状態、物性(残留強度、伸び等)を把握する。
【0046】
この実施形態では、複雑な装置を用いることなく、実機ラインに近似した条件で、評価サンプル14の上カバーゴム15、心体17等の耐摩耗性および耐温度性を把握、評価できる。
【0047】
また、転動ローラ11を用いるので、実際の搬送物を投入して評価する場合と異なり、多数(多量)の搬送物を用意する必要がない。また、搬送物によって評価装置1の周辺が汚れることもない。
【0048】
種々の条件で評価を行なってデータを蓄積することにより、搬送面15aに投入される搬送物によって評価サンプル14に付与される動的摩擦力と、耐摩耗性や耐温度性との関係、評価サンプル14に生じた摩耗の進行具合と、雰囲気温度や搬送物の温度との関係などを把握することが可能になる。
【0049】
評価サンプル14は、上述した実施形態のように、上カバーゴム15、下カバーゴム16や心体17等の構成部材を一体化したものだけでなく、図4、5に例示する仕様にすることもできる。
【0050】
この評価サンプル14は、上カバーゴム15の搬送面15aに複数の凹部15bを有している。これら凹部15bには、加硫された異なる仕様の評価ゴム18a、18b、18c、18d、18e、18fを嵌め込むことができるようになっている。これにより、複数の異なる仕様の評価ゴム18a〜18fの耐外傷性(耐衝撃性や耐摩耗性)および耐温度性を同時に評価することができる。即ち、複数種類の仕様の評価ゴム18a〜18fを、一度に評価できるので評価時間の短縮化を図ることが可能になる。
【0051】
恒温ケース6の内部温度を、使用現場の雰囲気温度よりも高く設定して評価ゴム18a〜18fを評価促進することと組み合わせることにより、一段と評価時間を短縮して効率化を図ることができる。
【0052】
尚、上カバーゴム15についてのみ、耐外傷性および耐温度性を評価するならば、図4、5に例示した評価サンプル14を変形させたものを用いることができる。即ち、金属ベルトチェーン等のベースベルトの外周面に、種々の評価ゴム18a等を取り付けて評価を行なえばよい。
【符号の説明】
【0053】
1 評価装置
2 ベース
3 駆動プーリ
3a 支柱
3b 速度調整部
4 従動プーリ
4a 支柱
4b スライドレール
5 ロードセル
6 恒温ケース
7、7a、7b、7c、7d、7e 落下アタッチメント
8 外力付与体
8a 係合突起
9 錘
10 カムシャフト(落下機構)
10a 係合突起
11、11a、11b、11c、11d 転動ローラ(外力付与体)
12 回転部
13 温度コントローラ
14 評価サンプル
15 上カバーゴム
15a 搬送面
15b 凹部
16 下カバーゴム
17 心体
18a、18b、18c、18d、18e、18f 評価ゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベヤベルトの評価サンプルが架け回される一対のプーリと、前記評価サンプルのテンションを調整するテンション調整部と、前記評価サンプルの走行速度を調整する速度調整部と、前記評価サンプルが収容される恒温ケースと、前記評価サンプルの搬送面に外力付与体を繰り返し接触させる外力付与手段と、前記恒温ケースの内部温度および前記外力付与体の温度を調整する温度コントローラとを備えて、前記評価サンプルの耐外傷性および耐温度性を評価することを特徴とするコンベヤベルトの評価装置。
【請求項2】
前記外力付与手段が、任意の質量に調整できる錘を有して、先端形状が可変である外力付与体と、この外力付与体を繰り返し自由落下させる落下機構とからなり、この外力付与体を先端から前記評価サンプルの搬送面に繰り返し落下させる構成にした請求項1に記載のコンベヤベルトの評価装置。
【請求項3】
前記外力付与手段が、外周面形状が可変である転動ローラからなる外力付与体と、この外力付与体を独立して回転させる回転部とからなり、この外力付与体の外周面を前記評価サンプルの搬送面に接触させつつ転動させる構成にした請求項1に記載のコンベヤベルトの評価装置。
【請求項4】
コンベヤベルトの評価サンプルを恒温ケース内で一対のプーリに架け回し、この評価サンプルを予め設定された所定のテンションで張設するとともに、予め設定された所定の速度で走行させた状態にして、この状態の評価サンプルの搬送面に外力付与体を繰り返し接触させ、かつ、前記恒温ケースの内部温度および外力付与体の温度を温度コントローラにより予め設定された温度に調整して、前記評価サンプルの耐外傷性および耐温度性を評価することを特徴とするコンベヤベルトの評価方法。
【請求項5】
前記外力付与体は、任意の質量に調整できる錘を有して先端形状が可変であり、この外力付与体を先端から前記評価サンプルの搬送面に繰り返し自由落下させる請求項4に記載のコンベヤベルトの評価方法。
【請求項6】
前記外力付与体は、外周面形状が可変である転動ローラであり、この外力付与体を独立して回転させて、その外周面を前記評価サンプルの搬送面に接触させつつ転動させる請求項4に記載のコンベヤベルトの評価方法。
【請求項7】
前記評価サンプルの搬送面に複数の凹部を設け、これら凹部に異なる仕様の評価ゴムを嵌め込むことにより、複数の異なる仕様の評価ゴムの耐外傷性および耐温度性を同時に評価する請求項4〜6のいずれかに記載のコンベヤベルトの評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−242200(P2012−242200A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111133(P2011−111133)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】