説明

コージェネシステム

【課題】冬期または寒冷地等においても、エンジンの始動時においてエンジンの始動性を向上させるコージェネシステムを提供する。
【解決手段】システムは、エンジン3と、発電機39と、エンジン冷却水循環系と、暖房機器75に供給される水を加熱させる熱源機7と、排熱回収回路60と排熱ポンプ62とをもつ排熱回収系と、熱交換器59とを有する。制御装置100は、エンジン3を始動させるに先立って、排熱ポンプ62を作動させ、排熱回収回路60の水で、熱交換器59を介して、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水を予備暖機終了温度以上に暖める予備暖機処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジンで発電機を作動させて発電させると共にエンジンの排熱を利用するコージェネシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コージェネシステムは、燃料により作動するエンジンと、エンジンで作動されて発電する発電機と、作動するエンジンから受熱して加熱されるエンジン冷却水が流れるエンジン冷却水回路とエンジン冷却水回路のエンジン冷却水を循環させるエンジン冷却水ポンプとをもつエンジン冷却水循環系と、暖房機器に供給される水を加熱させる熱源機と、暖房機器から熱源機に帰還する水が流れる排熱回収回路と排熱回収回路の水を循環させる排熱ポンプとをもつ排熱回収系と、エンジン冷却水回路のエンジン冷却水と排熱回収回路の水とを熱交換させる熱交換器と、制御装置とを有する。
【0003】
コージェネシステムにおいて特許文献1〜3が知られている。特許文献1は、エンジンの暖機促進のため、冷却水回路を切り替えるコージェネシステムを開示する。特許文献2は、エンジンの暖機促進のため、冷却水回路中に設けた電気ヒータを作動させるコージェネシステムを開示する。特許文献3は、小型のタンクを用いて、暖房端末の負荷変動を吸収して発電ユニットの排熱を好適に利用するコージェネシステムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−146676号公報
【特許文献2】特開2006−283579号公報
【特許文献3】特開2010−7950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、外気温が低い(例えば0℃未満)場合には、エンジンをコールドスタートさせるとき、エンジンオイルの粘性が高いことや金属の熱収縮によりピストンや各軸受けなどのメタルクリアランスが極小化しているなどの理由により、エンジンの始動トルクが大きくなり、スターターを駆動しようとしても大きな始動エネルギーが必要となる不具合がある。また、スターターが回転したとしてもエンジンの周囲温度が低いため、エンジンにおける燃料の着火性ひいては始動性が充分ではない。
【0006】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、冬期または寒冷地等においても、エンジンの始動時においてエンジンの始動性を向上させるコージェネシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコージェネシステムは、燃料により作動するエンジンと、エンジンで作動されて発電する発電機と、作動するエンジンから受熱して加熱されるエンジン冷却水が流れるエンジン冷却水回路とエンジン冷却水回路のエンジン冷却水を循環させるエンジン冷却水ポンプとをもつエンジン冷却水循環系と、暖房機器に供給される水を加熱させる熱源機と、暖房機器から熱源機に帰還する水または熱源機から吐出される水が流れる排熱回収回路と排熱回収回路の水を循環させる排熱ポンプとをもつ排熱回収系と、エンジン冷却水回路のエンジン冷却水と排熱回収回路の水とを熱交換させ、エンジンの排熱を回収可能なときエンジン冷却水の熱を排熱回収回路の水に伝熱させて排熱回収する熱交換器と、少なくとも排熱ポンプを制御する制御装置とを具備しており、
制御装置は、エンジン冷却水回路のエンジン冷却水が所定温度よりも低温であるとき、エンジンを始動させるに先立って、(i)排熱ポンプを作動させ、排熱回収回路の水で熱交換器を介してエンジン冷却水回路のエンジン冷却水を暖める予備暖機処理を実行し、(ii)予備暖機処理後にエンジンを始動させるエンジン始動処理を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冬期または寒冷地等において、外気温度が低温であるときであっても、エンジンの始動時においてエンジンの始動性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1に係り、コージェネシステムを示すシステム図である。
【図2】実施形態1と比較例1〜3との暖機時間を比較して示すグラフである。
【図3】制御装置が実行する制御則の一例を示すフローチャートである。
【図4】制御装置が実行する制御則の一例を示すフローチャートである。
【図5】他の実施形態に係り、制御装置が実行する制御則の一例を示すフローチャートである。
【図6】別の実施形態に係り、コージェネシステムを示すシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1を説明する。コージェネシステムは、燃料により作動するエンジン3により発電させるとともにエンジン3の排熱を利用するシステムである。このシステムは、発電ユニット1と、床暖房機器や室内設置暖房機器等の暖房機器75に使用される水を加熱させる熱源となる熱源機7とを有する。発電ユニット1は、ハウジング2と、駆動軸3aをもつエンジン3と、エンジン3の駆動軸3aで回転作動されて発電する発電機39と、エンジン冷却水を循環させるエンジン冷却水循環系5と、エンジン3が高温となったときエンジン冷却水の排熱を回収させて熱源機7をアシストする排熱回収系6と、エンジン冷却水循環系5と排熱回収系6とを熱交換させる熱交換器59と、制御装置100とを有する。エンジン3は、油圧スイッチ30と、エンジン3回転数を検知する回転センサ31とを有する。発電機39は、基本的には、エンジン3の作動が安定する定常運転において発電するものであり、エンジン3の作動の安定性が必ずしも充分ではない暖機促進制御においては発電しない。
【0011】
図1に示すように、燃料としての燃料ガスをエンジン3に供給させる燃料通路8がハウジング2内に設けられている。燃料通路8には、電磁弁80a,80b、ガバナ81、サージタンク82、燃料弁83、スロットル弁84が設けられている。エンジン3に空気を供給させる空気通路85がハウジング2内に設けられている。空気通路85は、エアクリーナ86、スロットル弁84を介してエンジン3の吸気ポートに繋がる。燃料ガスと空気との混合気はスロットル弁84およびエンジン3の吸気ポートを介してエンジン3の燃焼室に供給され、燃焼によりピストンの作動に使用される。エンジン3の排気ポートには、エンジン3の排気ポートから排出される高温の排気ガスを外気に放出させる排気通路90が連通されている。排気通路90は、排気ガスの熱をエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水に与える排気熱交換器91、排気サイレンサー92、ドレントラッパ93を介して、エンジン3の排気ガスをハウジング2の外部に排気させる。
【0012】
図1に示すように、エンジン冷却水循環系5は発電ユニット1に内蔵されており、作動するエンジン3から受熱して加熱されるエンジン冷却水が流れるエンドレス状のエンジン冷却水回路50と、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水を循環させるエンジン冷却水ポンプ51とをもつ。エンジン冷却水回路50は、通路50a〜50cと、エンジン冷却水を溜める容量をもつバッファタンク52と、バッファタンク52を迂回するバイパス通路53と、エンジン冷却水の温度に応じてポート54a〜54cを開閉させることによりバイパス通路53およびバッファタンク52の切り替えを行うバルブとしてのサーモバルブ54とを有する。エンジン3の始動時において、エンジン冷却水を早期に暖めるためには、バッファタンク52を迂回させるようにエンジン冷却水をバイパス通路53に流すことが好ましい。通路50aは排気熱交換器91に連通しており、排気通路90を流れる高温のエンジン3の排気ポートから排出された排気ガスにより加熱される。ひいてはエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水は排気熱交換器91により加熱される。なお、発電ユニット1のハウジング2内にはインバータ201および制御基板202が設けられている。
【0013】
熱源機7は、室内または室外の暖房機器75に供給される水を加熱させるものであり、燃料ガス等の燃料を燃焼させて水を加熱させる燃焼式の加熱部7aと、加熱部7aで加熱した水を暖房機器75に向けて搬送させるポンプ7bとを有する。熱源機7は、ポート70a,70bをもつ中間吐出部として機能する暖房吐出ヘッダ70と、ポート72a,72b,72c,72dをもつ中間戻り部として機能する暖房戻りヘッダ72とを有する。熱源機7の加熱部7aで加熱された水は、ポンプ7bにより、第1給湯通路73、ポート70aから暖房吐出ヘッダ70に至り、ポート70bから吐出され、第2給湯通路74を介して暖房機器75に供給されて暖房に使用される。暖房機器75から帰還した水は、第1帰還通路76、ポート72aを介して暖房戻りヘッダ72に至り、ポート72bから第2帰還通路77を介して帰還ポート7cから熱源機7に帰還する。熱源機7に帰還した水は熱源機7の加熱部7aで再び加熱され、ポンプ7bにより、第1給湯通路73、暖房吐出ヘッダ70および第2給湯通路74を介して暖房機器75に再び供給され、暖房に使用される。
【0014】
図1に示すように、排熱回収系6は発電ユニット1と熱源機7とに繋がる、排熱回収系6は、通常運転時においてエンジン3の排熱をエス回路50および熱交換器59を介して回収するための排熱回収回路60と、エンジン3の排熱を排熱回収回路60の水に回収させるために循環させる排熱ポンプ62とをもつ。排熱回収回路60は、暖房戻りヘッダ72のポート72cに繋がる往路60aと、暖房戻りヘッダ72のポート72dに繋がる復路60cとをもつ。熱交換器59は発電ユニット1に内蔵されており、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水と排熱回収回路60の水とを熱交換させる。熱交換器59は、エンジン冷却水回路50において逆潮防止ヒータ55の下流に配置されており、且つ、バッファタンク52およびバイパス通路53の上流に配置されている。逆潮防止ヒータ55は電気ヒータであり、電力負荷で消費される電力が急激に低下して発電機39が発電した電力の一部が余剰になるとき、余剰の電力を消費させるために発熱するヒータである。
【0015】
図1に示すように、システムは、エンジン冷却水回路50においてエンジン3の出口側のエンジン冷却水の温度Toutを検知する出口温度センサ104と、エンジン冷却水回路50においてエンジン3の入口側のエンジン冷却水の温度Tinを検知する入口温度センサ105と、排熱回収回路60において熱交換器59の出口側の温度Texを検知する排熱回収温度センサ106とを有する。出口温度センサ104はエンジン冷却水回路50においてヒータ55の上流に位置する。入口温度センサ105はエンジン冷却水回路50においてエンジン冷却水ポンプ51の下流に位置する。
【0016】
制御装置100は、発電ユニット1の機器を制御するための第1制御部101と、熱源機7を制御するための第2制御部102とをもつ。第2制御部102は信号を第1制御部101に出力する。
【0017】
ところで、冬期や寒冷地などにおいて熱源機7が作動して熱源機7で発生させた温水により暖房機器75で暖房が実行されている。熱源機7から暖房機器75に供給される水の温度は、暖房に適するように高温である。暖房機器75から熱源機7に帰還される水は、熱エネルギが暖房機器75で消費されているといえども、外気温度よりも高い。このように暖房機器75で使用された水(外気温度よりも高温)が暖房戻りヘッダ72のポート72a,72bを介して帰還ポート7cを介して熱源機7に帰還する。帰還した水は再び熱源機7の加熱部7aにより加熱されて、ポンプ7bにより第1給湯通路73、暖房吐出ヘッダ70および第2給湯通路74から暖房機器75に向けて搬送される。ここで、エンジン3が作動していないときには、エンジン3およびエンジン冷却水の温度は低く、エンジン3の排熱を利用できないため、排熱ポンプ62はオフとされており、排熱回収回路60の水は往路60aおよび復路60cを循環していない。
【0018】
さて、冬期または寒冷地では、外気温度が低いため、エンジン3の始動時においてエンジン3が始動しにくい傾向がある。この場合、エンジン3の始動前において、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水は低温(一段的には0℃未満、例えば、零下40℃〜零下10℃といった低温)とされている。ここで、暖房機器75から暖房戻りヘッダ72に帰還した水は、前述したように暖房機器75で熱エネルギが消費されているといえども、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水および外気温度よりも高温(例えば2〜常温域)である。そこで本実施形態によれば、エンジン3が停止しており、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水が低温である場合、制御装置100は、エンジン3が停止しているとき、エンジン3を始動させるに先立って、まず、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水ポンプ51をオンさせてエンジン冷却水回路50の水温の均一化を図った状態で、排熱回収回路60の排熱ポンプ62をオンさせて作動させる予備暖機処理を実行する。これにより、暖房戻りヘッダ72内の水(暖房機器75から暖房戻りヘッダ72内に帰還した水)は、暖房戻りヘッダ72のポート72cから排熱回収回路60の往路60aに流れ、熱交換器59の通路を介して復路60cに流れ、ポート72dから暖房戻りヘッダ72に戻る。このときエンジン3は始動前でありエンジン冷却水は低温であるため、排熱回収回路60の水の温度はエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水よりも高温である。このため、排熱回収回路60の水の熱エネルギは、熱交換器59を介して、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水に伝達され、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水を暖める。このとき、エンジン冷却水ポンプ51がオンしてエンジン冷却水はエンジン冷却水回路50を循環しているため、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水が昇温され、エンジン3が昇温される。このようにして排熱ポンプ62の作動によりエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水を予備暖機終了温度Tpre(例えば0℃)以上に暖める予備暖機処理を実行する。これによりエンジン3の始動前において、エンジン3が暖まり、エンジン3の始動性が向上する。なお、上記した予備暖機処理においてヒータ55をオンすることが好ましい。予備暖機処理においてヒータ55をオンすれば、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の昇温速度を更に速めることができる。
【0019】
そして、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水を予備暖機終了温度Tpre(例えば0℃)以上に暖めた後、制御装置100はエンジン始動処理を実行する。この場合、制御装置100は、エンジン3を始動させるために、電磁弁80a,80b、燃料弁83、スロットル弁84、点火プラグ87を制御する。これにより燃料ガスおよび空気の混合気をスロットル弁84を介してエンジン3に供給し、点火プラグ87を点火させる。これによりエンジン3が良好に始動される。
【0020】
以上説明したように本実施形態によれば、冬期または寒冷地等において外気温度が低いときであっても、エンジン3の始動直前において、排熱ポンプ62をオンさせてエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水を暖める予備暖機処理を実行するため、エンジン3が暖まり、エンジン3の始動性を向上させることができる。このように本実施形態によれば、エンジン始動前において予備暖機処理が実行され、エンジン3が始動した後においてもエンジン3の暖機時間を短縮させることができ、エンジンオイルの劣化(水分吸着等)を抑制できる。またエンジン3の始動後の暖機時間を短縮できることにより、短時間でエンジン3を定常運転に移行させることができ、エンジン3の効率が良い状態で発電機39の発電運転を行うことができる。
【0021】
(実施形態2)
本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図1を準用する。エンジン3の始動前であり、エンジン3は停止している。エンジン3を始動させる条件が成立したとき、制御装置100は、まず、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水ポンプ51を作動させ、エンジン冷却水回路50の水を移動させて、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度をセンサ104,105により確認する。この場合、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水を移動させるため、エンジン冷却水の温度を正確に検知させるのに有利である。
【0022】
上記したエンジン3が停止しており発電機39が作動していない場合、冬期や寒冷地などのように外気温度が低温であり、エンジン3が低温であり、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度が所定温度(例えば0℃、予備暖機開始温度)未満のときには、実施形態1と同様に、エンジン3を始動させるに先立って、予備暖機処理を実行する。予備暖機処理では、ヒータ55をオンさせてヒータ55を発熱させてエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水を加熱させると共に、排熱回収回路60の排熱ポンプ62をオンさせて作動させる。排熱ポンプ62のオンにより、暖房戻りヘッダ72内の水(暖房機器75から帰還した水であり、エンジン冷却水および外気温度よりも高温)は、排熱回収回路60の往路60aに流れ、熱交換器59を介して復路60cに流れ、ポート72dから暖房戻りヘッダ72に戻る。このとき排熱回収回路60の水は、熱交換器59を介して、エンジン冷却水回路50の低温のエンジン冷却水を暖める。これによりエンジン3の始動前において、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水をヒータ55および排熱ポンプ62の双方により暖めて昇温させる。このようにしてエンジン3が停止しているとき、エンジン3を始動させるに先立って、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水を予備暖機終了温度Tpre(例えば0℃)以上に暖める予備暖機処理を実行する。これによりエンジン3の始動直前において、エンジン3が暖まり、エンジン3の始動性が向上する。なお、エンジン3の始動性を考慮すると、エンジン冷却水の温度としては、ToutおよびTinのうち低温側を採用することが好ましい。但し場合によっては、エンジン冷却水の温度として、ToutおよびTinのうち高温側を採用しても良いし、あるいは、ToutおよびTinの平均値を採用しても良い。なお、予備暖機処理において排熱ポンプ62の作動により排熱回収回路60の水も移動するため、排熱回収回路60の水の温度をセンサ106により正確に検知することができる。更に、上記したエンジン3の始動前の予備暖機処理においては、エンジン冷却水回路50のうちエンジン3の出口側の温度Toutが排熱回収回路60における温度Texよりも高温となったときには(Tout>Tex、または、Tout≧Tex)、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の熱が排熱回収回路60の水に奪われるおそれがあるため、排熱ポンプ62をオフとさせて停止させることが好ましい。
【0023】
次に、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度が予備暖機終了温度Tpre(例えば0℃)以上になったら、制御装置100は予備暖機処理を終了させる。この場合、ヒータ55および排熱ポンプ62をオフとさせる。但し、場合によっては、ヒータ55のオンを継続させても良い。この場合、エンジン3が始動前であり、発電機39は発電していないため、ヒータ55のオンは商用電源の電力を消費する要因となり、コスト高を誘発させるおそれがある。これを考慮すると、エンジン冷却水の温度が予備暖機終了温度Tpre(例えば0℃)以上になったら、ヒータ55をオフとさせることが好ましい。
【0024】
上記したようにエンジン3の始動直前において、予備暖機処理によりエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水を暖めてエンジン3を昇温させた後、制御装置100はエンジン3の始動処理を実行する。この場合、制御装置100は、エンジン3を始動させるために、電磁弁80a,80b、燃料弁83、スロットル弁84、点火プラグ87を制御し、燃料ガスおよび空気の混合気をスロットル弁84を介してエンジン3に供給し、点火プラグ87を点火させる。これによりエンジン3が良好に始動される。エンジン3が始動した後には、制御装置100は暖機促進制御を行う。この場合、ヒータ55をオフとさせつつ、排熱ポンプ62をオンさせて作動させ、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水を排熱回収回路60の水により熱交換器59を介して加熱させる。但し、エンジン冷却水回路50のうちエンジン3の出口側のエンジン冷却水の温度Tout排熱回収回路60における温度Texよりも高温となったときには(Tout>Tex、または、Tout≧Tex)、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の熱が排熱回収回路60の水に奪われるおそれがあるため、排熱ポンプ62をオフとさせて停止させることが好ましい。
【0025】
エンジン3が始動したら、エンジン3は次第に昇温される。更に、エンジン3からの排熱によりエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水は次第に昇温される。そして、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度が暖機促進制御終了温度(例えば60℃)以上になったら、制御装置100は暖機促進制御を終了させ、通常制御に移行する。通常制御では、エンジン冷却水回路50のうちエンジン3の出口側のエンジン冷却水の温度Toutが排熱回収可能温度(例えば65℃)以上になったら、排熱ポンプ62をオンとさせて作動させる。これによりエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の高温の熱を熱交換器59を介して排熱回収回路60の水に伝熱させ、排熱回収回路60の水を加熱させる。これにより熱源機7の燃焼器の燃焼量および発熱量を抑えることができ、熱源機7の暖房時における燃料コストを低減させるのに貢献できる。また、通常制御では、エンジン冷却水回路50のうちエンジン3の出口側のエンジン冷却水の温度Toutが排熱回収不能温度(例えば60℃)未満になったら、排熱ポンプ62をオフとさせて停止させる。これによりエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の熱が排熱回収回路60の水に伝熱されることを抑制させ、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度を維持させる。ここで、上記した排熱回収可能温度とは、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の熱を熱交換器59を介して排熱回収回路60の水に回収できるエンジン冷却水の温度をいう。排熱回収不能温度とは、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の熱を熱交換器59を介して排熱回収回路60の水に回収できないエンジン冷却水の温度をいう。
【0026】
以上説明したように本実施形態によれば、冬期または寒冷地等において外気温度が低いときであっても、エンジン3の始動直前において、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水を暖める予備暖機処理を実行するため、エンジン3の始動性を向上させることができる。本実施形態によれば、エンジン3の始動前間の予備暖機処理が実行されるため、エンジン3が始動した後においても、エンジン3の昇温が速くなり、エンジン3の暖機時間を短縮させることができ、エンジンオイルの劣化(水分吸着等)を抑制できる。またエンジン3の始動後の暖機時間を短縮できることにより、短時間でエンジン3を定常運転に移行させることができ、効率が良い発電運転を行うことができる。
【0027】
なお、エンジン3が停止しており発電機39が作動していない場合であっても、夏期や酷暑地などのように外気温度が高温であり、エンジン3およびエンジン冷却水が高温であり、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度が所定温度(例えば0℃、予備暖機開始温度)を高温側に超えるときには、エンジン3の始動時において予備暖機処理を実行せず、ヒータ55および排熱ポンプ62をオフとする。そしてエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度が排熱回収回路60に排熱回収可能とされた場合には、排熱ポンプ62をオンさせることによりエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度を排熱回収回路60の水に排熱回収させる。
【0028】
さて、図2は、エンジン3の始動直前において、エンジン冷却水を昇温させてエンジン3の始動性を高める状態を模式的に示すグラフをあらわす。図2の横軸は時間を示し、縦軸はセンサ104が検知するエンジン冷却水の温度(Tout)を示す。特性線W1は本実施形態を示す。図2に示すように、エンジン3を始動させる前においては、エンジン冷却水の温度は例えば零下20℃とされている。エンジン3を始動させる直前において予備暖機処理が実行されると、特性線W1の線部分W11として示すように、エンジン3の始動前であっても、エンジン冷却水の温度が零下20℃から昇温する。時刻tstartにおいてエンジン冷却水の温度が予備暖機終了温度(例えば0℃)に昇温すると、制御装置100はエンジン3を始動させる。従って、時刻tstartはエンジン3を始動させる時刻となる。特性線W1の線部分W11として示すように、エンジン3を始動させる前の時刻tから時刻tstartにおいて、制御装置100はヒータ55および排熱ポンプ62をオンさせることにより予備暖機処理を実行させるため、エンジン3の始動後においても、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度の昇温は速い。エンジン3が始動した時刻tstart後においても、特性線W1の線部分W12として示すように、エンジン3の昇温速度は速いため、エンジン冷却水の温度は短時間で排熱回収可能温度Tcに到達できる。
【0029】
なお、特性線W1の線部分W13として示すように、エンジン冷却水が上昇して排熱回収可能温度Tcに到達すると、温度応答型のバルブ54が制御され、バルブ54とバイパス通路53との連通が閉鎖され、バルブ54とバッファタンク52とが連通されるため、エンジン冷却水の温度が降下する。またエンジン冷却水の温度が降下して排熱回収不能温度Taに到達すると、バルブ54が制御され、バルブ54とバイパス通路53との連通が開放され、バルブ54とバッファタンク52とが非連通とされる。このためエンジン冷却水の温度が排熱回収不能温度Taと排熱回収可能温度Tcとの間においてハンチングする。
【0030】
図2の特性線X1〜X3は、エンジン3の始動前に排熱ポンプ62をオフとさせている比較例1〜3を示す。比較例1〜3では、特性線X1〜X3に示すように、エンジン3を始動させる直前の時刻t〜時刻tstartにおいて、ヒータ55および排熱ポンプ62がオフであり、予備暖機処理を実行せず、更にエンジン3も始動していないため、エンジン冷却水の昇温はなく、低温のまま維持される。ここで、比較例3では、エンジン3を始動させる前において予備暖機処理を実行せず、更にエンジン3を始動させた後においても、ヒータ55および排熱ポンプ62がオフであり、更にバイパス通路53を用いることなくエンジン冷却水をバッファタンク52に供給させる。このため比較例3では特性線X3として示すように、エンジン3を始動させる前の時刻t〜時刻tstartにおいてエンジン冷却水は昇温せず、更に、エンジン3が始動された時刻tstart後においても、エンジン3の排熱のみでエンジン冷却水は加熱され、バッファタンク52の容量の影響もあり、エンジン冷却水の温度の昇温はかなりゆっくりである。この場合、エンジン3の始動時においてエンジン3の異常摩耗やエンジンオイルの劣化を発生させるおそれがある。
【0031】
比較例2では、エンジン3を始動させる前において、ヒータ55および排熱ポンプ62がオフであり予備暖機処理を実行しないため、特性線X2として示すように、エンジン3を始動させる前の時刻t〜時刻tstartにおいてはエンジン冷却水は昇温せず、更に、エンジン3を始動させた時刻tstart後においてもヒータ55をオンさせるものの、排熱ポンプ62をオフとし、更にバイパス通路53を用いることなくエンジン冷却水をバッファタンク52に供給させる。このような比較例2では、特性線X2として示すように、エンジン3が始動された時刻tstart後においても、エンジン冷却水の昇温は、比較例3に係る特性線X3よりも昇温するものの、まだゆっくりである。この場合、エンジン3の始動時においてエンジン3の異常摩耗やエンジン3オイルの劣化を発生させるおそれがある。
【0032】
比較例1では、エンジン3を始動させる前において、ヒータ55および排熱ポンプ62がオフであり、予備暖機処理を実行せず、更に、エンジン冷却水をバッファタンク52に流すことなくバイパス通路53に流し、更に、エンジン3を始動させた時刻tstart後において排熱ポンプ62をオンとさせて作動させる(ヒータ55はオフ)。このような比較例1では、特性線X1として示すように、エンジン3を始動させる前の時刻t〜時刻tstartにおいてはエンジン冷却水は昇温せず、更に、エンジン3を始動させた時刻tstart後においては、排熱ポンプ62をオンとさせているため、昇温速度は比較的速い。但し比較例1といえども、エンジン3の始動前において予備暖機処理を実行していないため、全体としてみると、昇温速度はまだゆっくりである。
【0033】
図2の特性線W1と特性線X1,X2,X3との比較から理解できるように、エンジン3の始動前に、ヒータ55および排熱ポンプ62をオンとさせれば、エンジン3に対する暖機時間が短縮され、エンジン3の異常摩耗やエンジン3オイルの劣化を防止でき、エンジン3の運転時間について効率が良い定常運転時間の割合を増加させることが可能となる。
【0034】
(実施形態3)
本実施形態は実施形態1,2と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有するため、図1を準用する。図3は、冬期や寒冷地などにおいて、エンジン3を始動させるにあたり制御装置100が実行するエンジン3の始動処理のフローチャートを示す。まず、制御装置100はエンジン3が停止中か否か判定する(ステップS12)。エンジン3が停止中であれば(ステップS12のYES)、制御装置100はエンジン3の始動要求があるか否か判定する(ステップS14)。エンジン3の始動要求があると(ステップS14のYES)、制御装置100はエンジン冷却水ポンプ51をオンさせて作動させる(ステップS16)。これによりエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水が移動するため、エンジン冷却水の温度(Tout,Tin)を精度よく検知できる。次に、制御装置100は予備暖機処理が必要か否か判定する(ステップS18)。具体的には、制御装置100は、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度が所定温度(0℃)以上か判定する。エンジン冷却水の温度としては温度Toutおよび温度Tinのうち低い方を採用することが好ましい。エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度が所定温度(0℃)以上でなければ、エンジン冷却水の温度が低温であり、制御装置100は予備暖機処理する必要があると判定する(ステップS18のYES)。従って、冬期や寒冷地などにおいては外気温度が低く、エンジン冷却水の温度が低温であり、制御装置100は予備暖機処理する必要があると判定する。夏期や酷暑などにおいては外気温度が高く、エンジン冷却水の温度が高めであり、制御装置100は予備暖機処理する必要がないと判定する。ここで、予備暖機処理は、エンジン3が停止しているとき、エンジン3を始動させる直前において、排熱ポンプ62を作動させる処理を意味し、ヒータ55もオンさせて発熱させることが好ましい。
【0035】
上記したように予備暖機処理する必要があると判定すると(ステップS18のYES)、制御装置100は予備暖機処理する(ステップS20)。具体的にはヒータ55および排熱ポンプ62をオンとさせる。ステップS18において判定した結果、予備暖機処理の必要がなければ(ステップS18のNO)、即ち、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度が所定温度(0℃)以上であれば、エンジン冷却水の温度が過剰に低温ではないため、予備暖機処理する必要がない。そこで制御装置100は予備暖機処理終了フラグを立て、ヒータ55をオフとさせてヒータ55の発熱を停止させる(ステップS24)。更に、制御装置100はエンジン3を始動させる指令を出力し(ステップS26)、暖機促進制御フラグを立てると共に、排熱ポンプ62の作動により暖機促進処理を開始させる(ステップS28)。暖機促進処理は、エンジン3が作動しているとき、排熱ポンプ62を作動させる処理を意味する。暖機促進処理ではヒータ55をオフとさせる。
【0036】
ステップS12において判定した結果、エンジン3が停止中でなければ(ステップS12のNO)、即ちエンジン3が作動していれば、制御装置100は暖機促進処理中か否かを判定する(ステップS32)。更に暖機促進終了の条件が満たされていなければ(ステップS34のNO)、つまり、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度が所定温度(例えば60℃)未満であれば、制御装置100は暖機促進処理を継続させる(ステップS36)。具体的には、暖機促進処理では、排熱ポンプ62をオンさせて排熱回収回路60の水の熱を熱交換器59を介してエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水に伝達させてエンジン冷却水を加熱させる。ステップS34において判定した結果、暖機促進終了の条件が満足されていれば(ステップS34のYES)、即ち、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度が所定温度(例えば60℃)以上であれば、暖機促進制御を終了するフラグを立て(ステップS38)、通常制御を移行する(ステップS40)。
【0037】
図4は、暖機促進制御の一例を示すフローチャートを表す。暖機促進制御においては、制御装置100は、排熱ポンプ62を所定の運転時間(例えば5〜300秒のうちの任意時間)オンさせて作動させる操作と、所定の停止時間(例えば5〜300秒のうちの任意時間)排熱ポンプ62をオフとさせて停止させる操作とを併有する間欠運転を連続的に行う。これにより排熱回収回路60の水の温度のばらつきが低減され、排熱回収温度センサ106は排熱回収回路60の水の温度を正確に検知できる。
【0038】
図4に示すように、そして、暖機促進制御フラグが立っていれば(ステップS64のYES)、制御装置100は排熱ポンプ62が運転中か否かを判定する(ステップS66)。排熱ポンプ62が運転中であれば(ステップS66のYES)、制御装置100は排熱ポンプ62の運転時間が経過したか否かを判定する(ステップS68)。排熱ポンプ62の運転時間が経過していなければ(ステップS68のNO)、排熱ポンプ62の運転を継続させたまま、リターンする。排熱ポンプ62の運転時間が経過しているとき(ステップS68のYES)、制御装置100は、エンジン冷却水回路50においてエンジン3の出口側のエンジン冷却水の温度Toutと、エンジン冷却水回路50においてエンジン3の入口側のエンジン冷却水の温度Tinとを比較し、Tout<Tinの関係が成立するか否かを判定する(ステップS70)。Tout<Tinの関係が成立するとき(ステップS70のYES)、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度は排熱回収回路60の水の温度よりも低い。このため排熱ポンプ62の運転時間が既に経過しているときであっても、排熱回収回路60の水からエンジン冷却水回路50に熱交換器59を介して伝熱させることが可能である。そこで、排熱ポンプ62の運転時間が経過しているときであっても(ステップS68のYES)、制御装置100は排熱ポンプ62をオフとさせることなく、排熱ポンプ62の作動を延長させる。この結果、排熱回収回路60の水から熱交換器59を介してエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水への伝熱を継続させ、エンジン3の始動後においてエンジン冷却水の昇温性をできるだけ高める。
【0039】
out<Tinが成立しないとき(ステップS70のNO)、即ち、Tout≧Tinが成立するときには、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水が排熱回収回路60の水に対して高温または等温である。この場合、エンジン3の作動の安定性が必ずしも充分ではないエンジン始動直後において、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の熱が排熱回収回路60の水に奪われるおそれがある。このため、制御装置100は排熱ポンプ62をオフとさせて停止させ、エンジン冷却水の温度の低温化を抑制させる(ステップS72)。従って、本実施形態によれば、エンジン3の始動後の暖機促進制御において、次の(i)および(ii)の双方の条件が満たされたとき、制御装置100は排熱ポンプ62をオンからオフに移行させる。この場合、エンジン始動直後においてエンジン3の作動の安定性が図られる。
(i)排熱ポンプ62の運転時間が経過していること
(ii)エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度が排熱回収回路60の水の温度以上(高温側に超えているとき)
ステップS66における判定の結果、排熱ポンプ62が停止中であれば(ステップS66のNO)、制御装置100は、排熱ポンプ62の停止時間が経過したか否かを判定する(ステップS74)。排熱ポンプ62の停止時間が経過していれば(ステップS74のYES)、排熱ポンプ62をオンさせて作動させる(ステップS76)。これにより排熱回収回路60の水を移動させ、水温の検知精度を高める。排熱ポンプ62の停止時間が経過していなければ(ステップS74のNO)、排熱ポンプ62をオフを継続させる(ステップS74のNO)。
【0040】
(実施形態5)
図5は実施形態4を示す。本実施形態は実施形態1〜3と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。図5は、暖機促進制御の一例を示すフローチャートを表す。このフローチャートは図4に示すフローチャートと基本的には共通する。従って、エンジン3の始動後に実行される暖機促進制御においては、排熱ポンプ62の運転時間が経過しているとき(ステップS68BのYES)、制御装置100は、エンジン冷却水回路50においてエンジン3の出口側のエンジン冷却水の温度Toutと、排熱回収回路60の水の温度Texとを比較し、Tout<Texの関係が成立するか否かを判定する(ステップS70B)。Tout<Texの関係が成立するとき(ステップS70BのYES)、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の温度は排熱回収回路60の水の温度よりも低い。このため排熱ポンプ62の運転時間が既に経過しているときであっても、排熱回収回路60の水からエンジン冷却水回路50に熱交換器59を介して伝熱させることが可能である。そこで、排熱ポンプ62の運転時間が経過しているときであっても(ステップS68BのYES)、制御装置100は排熱ポンプ62をオフとさせることなく、排熱ポンプ62の作動を延長させる。この結果、排熱回収回路60の水から熱交換器59を介してエンジン冷却水回路50のエンジン冷却水への伝熱を継続させ、エンジン3の始動後においてエンジン冷却水の昇温性をできるだけ高める。
【0041】
out<Texが成立しないとき(ステップS70BのNO)、即ち、Tout≧Texが成立するときには、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水が排熱回収回路60の水に対して高温または等温である。この場合、エンジン3の作動の安定性が必ずしも充分ではないエンジン始動直後において、エンジン冷却水回路50のエンジン冷却水の熱が排熱回収回路60の水に奪われるおそれがある。このため、制御装置100は排熱ポンプ62をオフとさせて停止させ、エンジン冷却水の温度の低温化を抑制させる(ステップS72B)。
【0042】
(実施形態5)
図6は実施形態5を示す。本実施形態は実施形態1〜4と基本的には同様の構成および同様の作用効果を有する。図6に示すように、暖房機器75で熱エネルギを消費した水を熱源機7の帰還ポート7cに帰還させる帰還通路78が設けられている。帰還通路78と排熱回収回路60とは、熱交換器79を介して熱交換可能とされている。帰還通路78の水は、暖房機器75で熱エネルギを消費したもののまだ熱エネルギをもつ水であり、暖かい。従ってエンジン始動時において帰還通路78の水は排熱回収回路60の水を暖めることができる。エンジン始動後においてエンジン冷却水が高温となり、熱交換器59を介して排熱回収回路60の水が帰還通路78の水よりも高温となったときには、排熱回収回路60の水は熱交換器79を介して帰還通路78の水を暖めることができ、熱源機7の暖房コストを低減させ得る。
【0043】
(その他)本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。燃料ガスで作動するエンジンに適用されているが、液体燃料で作動するエンジンに適用することもできる。上記した実施形態では、排熱回収系6の排熱回収回路60は、暖房機器75から熱源機7に帰還する水を流すが、これに限らず、熱源機7から暖房機器75に向けて吐出される水が流れる方式としても良い。
【符号の説明】
【0044】
1は発電ユニット、2はハウジング、3はエンジン、39は発電機、5はエンジン冷却水循環系、50はエンジン冷却水回路、51はエンジン冷却水ポンプ、55は逆潮防止ヒータ、6は排熱回収系、60は排熱回収回路、62は排熱ポンプ、7は熱源機、70は暖房吐出ヘッダ、72は暖房戻りヘッダ、75は暖房機器、104は出口温度センサ、105は入口温度センサ、106は排熱回収温度センサを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料により作動するエンジンと、
前記エンジンで作動されて発電する発電機と、
作動する前記エンジンから受熱して加熱されるエンジン冷却水が流れるエンジン冷却水回路と前記エンジン冷却水回路のエンジン冷却水を循環させるエンジン冷却水ポンプとをもつエンジン冷却水循環系と、
前記暖房機器に供給される水を加熱させる熱源機と、
前記暖房機器から前記熱源機に帰還する水または前記熱源機から吐出される水が流れる排熱回収回路と前記排熱回収回路の水を循環させる排熱ポンプとをもつ排熱回収系と、
前記エンジン冷却水回路のエンジン冷却水と前記排熱回収回路の水とを熱交換させ、前記エンジンの排熱を回収可能なときエンジン冷却水の熱を前記排熱回収回路の水に伝熱させて排熱回収する熱交換器と、
少なくとも前記排熱ポンプを制御する制御装置とを具備しており、
前記制御装置は、前記エンジン冷却水回路のエンジン冷却水が所定温度よりも低温であるとき、
前記エンジンを始動させるに先立って、前記排熱ポンプを作動させ、前記排熱回収回路の水で前記熱交換器を介してエンジン冷却水回路のエンジン冷却水を暖める予備暖機処理を実行し、
前記予備暖機処理後にエンジンを始動させるエンジン始動処理を実行するコージェネシステム。
【請求項2】
請求項1において、前記エンジン冷却水回路において前記エンジンの出口側のエンジン冷却水の温度Toutを検知する出口温度センサと、前記エンジン冷却水回路において前記エンジンの入口側のエンジン冷却水の温度Tinを検知する入口温度センサと、前記排熱回収回路において前記熱交換器の出口側の温度Texを検知する排熱回収温度センサとが設けられており、
前記制御装置は、前記予備暖機処理において、前記排熱ポンプの作動及び停止を交互に繰り返す間欠運転を前記排熱ポンプに対して実行し、前記排熱ポンプが作動しているときにおいて温度Toutが温度Tin以上であるとき、前記排熱ポンプの作動を停止させるコージェネシステム。
【請求項3】
請求項1または2において、前記エンジン冷却水回路のエンジン冷却水を加熱するヒータが設けられており、前記制御装置は、前記予備暖機処理において前記ヒータを発熱させて前記エンジン冷却水回路のエンジン冷却水を加熱させるコージェネシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記制御装置は、前記予備暖機処理において温度Toutが温度Texよりも高温であるとき、前記排熱ポンプの出力を停止または減少させるコージェネシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−231680(P2011−231680A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102378(P2010−102378)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】