説明

コージェネレーション装置

【課題】発電機に生じた余剰電力でヒータに通電して温水を生成することで省エネ効率と負荷変動に対する対応能力とを向上させると共に、ヒータの劣化を可能な限り防止するようにしたコージェネレーション装置を提供する。
【解決手段】発電機(ステータ/ジェネレータ)20に接続、より具体的にはインバータユニット30を介して接続され、通電されるとき発熱するヒータ40と、内燃機関(エンジン)22の潤滑オイルEOを貯留すると共に、冷却水通路36の冷却水と潤滑オイルEOとを熱交換させるオイルタンク22nを少なくとも備えると共に、ヒータ40をオイルタンク22nに配置、より具体的にはその内部に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はコージェネレーション装置に関し、より具体的には余剰電力で通電されるヒータの配置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商用電力系統から電気負荷に至る交流電力の給電路に内燃機関で駆動される発電機を接続し、商用電力系統と連系させて電気負荷に電力を供給すると共に、内燃機関の排熱を利用して加温した温水などを熱負荷に供給するようにした、いわゆるコージェネレーション装置が提案されており、その例として、特許文献1記載の技術を挙げることができる。
【特許文献1】特開平8−4586号公報
【0003】
特許文献1記載の技術においては、余剰電力が生じるとき、貯湯槽内に配置したヒータに通電して温水を加温することで、即ち、発電機で生じる余剰電気を熱エネルギとして貯蔵することで省エネ効率を向上させると共に、貯蔵した熱エネルギを熱負荷が増加したときに利用可能とすることで負荷変動に対する対応能力を向上させている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来技術においてはヒータに通電して温水を加温しているが、水の沸点は100℃強なので、ヒータ通電によって沸騰してヒータの表面が侵食され、ヒータが劣化する恐れがある。
【0005】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、発電機に生じた余剰電力でヒータに通電して温水を生成することで省エネ効率と負荷変動に対する対応能力とを向上させると共に、ヒータの劣化を可能な限り防止するようにしたコージェネレーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、請求項1にあっては、商用電力系統から電気負荷に至る交流電力の給電路に接続可能な発電機と前記発電機を駆動する内燃機関とからなる発電ユニットを備えると共に、前記内燃機関の冷却水を冷却水通路に導き、前記内燃機関の排熱で加温して温水を生成して熱負荷に供給するコージェネレーション装置において、前記発電機に接続され、通電されるとき発熱するヒータ、および前記内燃機関の潤滑オイルを貯留すると共に、前記冷却水通路の冷却水と前記潤滑オイルとを熱交換させるオイルタンクを少なくとも備えると共に、前記ヒータを前記オイルタンクに配置する如く構成した。
【0007】
請求項2に係るコージェネレーション装置にあっては、前記ヒータを前記オイルタンクの内部に配置する如く構成した。
【0008】
請求項3に係るコージェネレーション装置にあっては、前記ヒータを前記オイルタンクのタンク壁の内部に埋設する如く構成した。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係るコージェネレーション装置にあっては、発電機に接続され、通電されるとき発熱するヒータを、内燃機関の潤滑オイルを貯留すると共に、冷却水通路の冷却水と潤滑オイルとを熱交換させるオイルタンクに配置する如く構成したので、発電機に余剰電力が生じたとき、ヒータに通電して温水を生成して熱負荷に供給することで省エネ効率と負荷変動に対する対応能力を向上させると共に、ヒータの劣化を可能な限り防止することができる。
【0010】
即ち、内燃機関の潤滑オイルの沸点は300℃であることから、ヒータ通電によって潤滑オイルをその温度まで昇温することは難しく、従って表面侵食によるヒータの劣化も生じ難いことから、ヒータの劣化を可能な限り防止することができる。
【0011】
また、オイルタンクに配置することで、ヒータの取付スペースを低減できると共に、内燃機関の冷間始動時の暖機に流用することも可能となる。また、内燃機関と発電機をユニット化して発電ユニットケース内に収容する構成としたとき、寒冷時の凍結対策にも流用することができる。
【0012】
請求項2に係るコージェネレーション装置にあっては、ヒータをオイルタンクの内部に配置する如く構成したので、上記した効果に加え、ヒータが潤滑オイルに没することとなり、昇温効率を上げることができて省エネ効率を一層向上させることができる。
【0013】
請求項3に係るコージェネレーション装置にあっては、ヒータをオイルタンクのタンク壁の内部に埋設する如く構成したので、上記した効果に加え、ほぼ同様に昇温効率を上げることができて省エネ効率を一層向上させることができると共に、潤滑オイルに没することがないため、ヒータをシールする必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に即してこの発明に係るコージェネレーション装置を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は、この発明の第1実施例に係るコージェネレーション装置を全体的に示すブロック図である。
【0016】
図示の如く、コージェネレーション装置(符号10で示す)は、商用電源(商用電力系統)12から電気負荷14に至る交流電力の給電路(電力線)16に接続可能な発電機20と、発電機20を駆動する内燃機関22とからなる発電ユニット24を備える。商用電源12は、単相3線からAC100/200Vで50Hz(または60Hz)の交流電力を出力する。
【0017】
発電ユニット24は一体化され、発電ユニットケース(筐体)26の内部に収容される。尚、正確には、コージェネレーション装置10は、発電ユニット24と排熱利用給湯暖房ユニット(熱負荷。図示せず)から構成される。
【0018】
以下、発電ユニット24を構成する各要素について説明すると、内燃機関(以下「エンジン」という)22は都市ガス(あるいはLPガス)を燃料とする、水冷4サイクルの単気筒OHV型の火花点火式のエンジンであり、例えば163ccの排気量を備える。
【0019】
図2は図1に示すエンジン22の構造を模式的に示す説明図であるが、エンジン22が発電ユニットケース26に収容され、発電ユニットケース26が家庭などの使用場所に設置されたときの位置関係を基準とすると、エンジン22のシリンダヘッド22aとシリンダブロック22bは水平方向(横向き)に配置され、その内部で1個のピストン(図示せず)が往復する。ピストンには鉛直方向(縦向き)に配置されるクランクシャフト(図示せず)が連結される。
【0020】
クランクシャフトの上端にはフライホイール(図示せず)が取り付けられると共に、その内側には多極コイルからなる発電機20が配置され、フライホイールとの間で相対回転するとき、交流電力を発電する。発電機20は通電されるとき、エンジン22をクランキングするスタータモータとしても機能することから、図に「スタータ/ジェネレータ」と示す。
【0021】
エンジン22において空気(吸気)は吸気サイレンサ22c、エアクリーナ22dを通ってミキサ22eに入る。ミキサ22eには供給源からガスがガス比例弁ユニット22fを介して供給され、そこで空気と混合させられる。ミキサ22eとガス比例弁ユニット22fからなるガスボックスにおいてミキサ22eは電動モータで駆動されるスロットルバルブと可変ジェットを備える。
【0022】
ミキサ22eで生成された混合気は燃焼室(図示せず)に流れ、イグニションコイル22gと点火プラグ22hからなる点火系で点火されるとき燃焼する。よって生じた排ガスは排気管22k、排気マフラ22mを通って発電ユニットケース26の外(庫外)に排出される。
【0023】
図2に示す如く、エンジン22のシリンダブロック22bの下部(クランクケースの図示省略)にはオイルタンク(オイルパン)22nが形成され、そこにエンジン22の潤滑オイルEOが貯留される。潤滑オイルEOはギヤポンプ(図示せず)で掻き上げられてピストンなどの摺動部分を潤滑した後、コンロッド(図示せず)やシリンダ壁面を伝わって落下し、オイルタンク22nに貯留される。オイルタンク22nは、クランクケースと同様、鋳鉄などの金属材からなるタンク壁22n1で仕切られる。
【0024】
発電機(スタータ/ジェネレータ)20の出力はインバータユニット30に送られる。インバータユニット30はDC−DCコンバータを介して発電機20の出力をAC100/200V(単相)に変換する。インバータユニット30は、マイクロコンピュータからなる電子制御ユニット(Electronic Control Unit。以下「ECU」という)32と共にコントロール部を構成し、ECU32の指令を受けて発電機20の機能をスタータとジェネレータの間で切り換える。
【0025】
インバータユニット30の出力は屋内配電盤34に送られ、そこで商用電源12から電気負荷14に至る交流電力の給電路16に接続可能にされる。発電ユニット26の発電出力は、1.0kW程度である。
【0026】
符号36はエンジン22を冷却する、不凍液からなる冷却水の通路を示す。冷却水通路36はエンジン22のシリンダブロック22bとオイルタンク22nを通り、外部の排熱利用給湯暖房ユニット(熱負荷。図示せず)に接続される。
【0027】
即ち、図1に示す如く、給湯暖房ユニットから送られる低温の冷却水は冷却水通路36の入口側36aに導かれ、オイルタンク22nに形成されるタンク通路を通って潤滑オイルEOと熱交換して潤滑オイルEOを冷却した後、シリンダブロック22b(およびシリンダヘッド22a)に形成されるシリンダ通路を通ってエンジン22と熱交換し、エンジン22を冷却する。
【0028】
潤滑オイルEOとエンジン22との熱交換によって加温されると共に、排気管22kに配置された排気熱交換器22oでさらに加温されて温水となった高温冷却水は、出口側36bから給湯暖房ユニットに戻される。図2において、冷却水通路36は冷却水の流れを示す太線の矢印で示す。尚、排気熱交換器22oは、例えば冷却水通路36を変形させ、排気管22kを覆うような構造としたものである。
【0029】
この実施例に係るコージェネレーション装置は熱主電従型であることから、家庭などの使用先の熱需要に応じて発電するため、電気負荷が低くてコージェネレーション装置の発電出力が余剰となった場合、ヒータ(余剰電力ヒータ)40に通電し、冷却水を加温する。
【0030】
即ち、発電ユニット24で生じる余剰電気を熱エネルギとして貯蔵することで省エネ効率を向上させると共に、貯蔵した熱エネルギを熱負荷が増加したときに利用可能とすることで負荷変動に対する対応能力を向上させることとするが、この実施例に係るコージェネレーション装置10において特徴的なことは、ヒータ40をオイルタンク22nに配置したことにある。
【0031】
図2に示す如く、ヒータ40は具体的には、オイルタンク22nの内部に配置、より具体的には潤滑オイルEOに完全にあるいは部分的に没する(浸漬される)ように配置される。即ち、ヒータ40は、電気抵抗によって発熱するニクロム線などからなるヒータ本体40aと、インバータユニット30に接続されるヒータ電力線40bと、その間にあってヒータ本体40aをオイルタンク22nに液密に保持するヒータフランジ40cからなる。
【0032】
ヒータ40において、ECU32の指令に応じてインバータユニット30を介して発電機20から余剰電力が送られて通電されると、ヒータ本体40aは発熱して潤滑オイルEOを加温し、よって潤滑オイルEOの中を通る冷却水通路36を流れる冷却水を加温する。
【0033】
尚、図1に示す如く、発電ユニット24は多くのセンサを備え、ECU32はそれらの出力に基づいてエンジン22の運転などを制御するが、それは本願と直接の関連を有しないため、説明を省略する。
【0034】
上記した如く、第1実施例に係るコージェネレーション装置10にあっては、発電機20にインバータユニット30を介して接続され、通電されるとき発熱するヒータ40を、エンジン22の潤滑オイルEOを貯留すると共に、冷却水通路36の冷却水と潤滑オイルEOとを熱交換させるオイルタンク22nに配置する如く構成したので、発電機20に余剰電力が生じたとき、ヒータ40に通電して温水を生成して熱負荷に供給することで省エネ効率と負荷変動に対する対応能力を向上させると共に、ヒータ40の劣化を可能な限り防止することができる。
【0035】
即ち、エンジン22の潤滑オイルEOの沸点は300℃であることから、ヒータ40の通電によって潤滑オイルEOをその温度まで昇温することは難しく、従って表面侵食によるヒータ40の劣化も生じ難いことから、ヒータ40の劣化を可能な限り防止することができる。
【0036】
また、オイルタンク22nに配置することで、ヒータ40の取付スペースを低減できると共に、エンジン22の冷間始動時の暖機に流用することも可能となる。また、エンジン22と発電機20を発電ユニット24としてユニット化して発電ユニットケース26の内部に収容する構成としたため、寒冷時の凍結対策にも流用することができる。
【0037】
また、ヒータ40をオイルタンク22nの内部に配置するように構成したので、上記した効果に加え、ヒータ40が潤滑オイルEOに没することとなり、昇温効率を上げることができて省エネ効率を一層向上させることができる。
【実施例2】
【0038】
図3は、この発明の第2実施例に係るコージェネレーション装置のエンジンの構造を模式的に示す、図2と同様の説明図である。
【0039】
第1実施例と相違する点に焦点をおいて説明すると、第2実施例に係るコージェネレーション装置にあっては、ヒータ40、より正確にはそのヒータ本体40aをオイルタンク22nのタンク壁22n1の内部に凹部22n11を穿設し、ヒータ本体40aをそこに埋設する如く構成した。
【0040】
第2実施例に係るコージェネレーション装置は、上記の如く構成したので、第1実施例とほぼ同様に昇温効率を上げることができて省エネ効率を一層向上させることができると共に、ヒータ40のヒータ本体40aが潤滑オイルEOに没することがないため、ヒータ40のヒータ本体40aをシールする必要がない。尚、残余の構成および効果は第1実施例と異ならない。
【0041】
尚、第2実施例においてタンク壁22n1の内側の凹部22n11を浅く穿設し、そこにヒータ本体40aをタンク壁22n1に部分的に埋まると共に、残余の部分を潤滑オイルEO中に露出させるように構成しても良い。
【0042】
第1、第2実施例は上記の如く、商用電力系統(商用電源)12から電気負荷14に至る交流電力の給電路16に接続可能な発電機(スタータ/ジェネレータ)20と前記発電機を駆動する内燃機関(エンジン)22とからなる発電ユニット26を備えると共に、前記内燃機関の冷却水を冷却水通路36に導き、前記内燃機関の排熱で加温して温水を生成して熱負荷(排熱利用給湯暖房ユニット)に供給するコージェネレーション装置10において、前記発電機20に接続、より具体的にはインバータユニット30を介して接続され、通電されるとき発熱するヒータ40、より具体的にはそのヒータ本体40a、および前記内燃機関の潤滑オイルEOを貯留すると共に、前記冷却水通路の冷却水と前記潤滑オイルEOとを熱交換させるオイルタンク22nを少なくとも備えると共に、前記ヒータ40を前記オイルタンク22nに配置する如く構成した。
【0043】
また、前記ヒータ40、より具体的にはそのヒータ本体40aを前記オイルタンク22nの内部に配置する如く構成した。
【0044】
また、前記ヒータ40、より具体的にはそのヒータ本体40aを前記オイルタンク22nのタンク壁22n1の内部に埋設する如く構成した。
【0045】
尚、第1、第2実施例において発電機20の駆動源として都市ガス・LPガスを燃料とするガスエンジンとしたが、ガソリン燃料などを使用するエンジンであっても良い。
【0046】
発電機20の出力およびエンジン22の排気量などを具体的な値で示したが、それらは例示であって限定されるものではないこともいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明の第1実施例に係るコージェネレーション装置を全体的に示すブロック図である。
【図2】図1に示すエンジンの構造を模式的示す説明図である。
【図3】この発明の第2実施例に係るコージェネレーション装置のエンジンの構造を模式的に示す、図2と同様の説明図である。
【符号の説明】
【0048】
10 コージェネレーション装置、12 商用電源(商用電力系統)、14 電気負荷、16 給電路(電力線)、20 発電機(スタータ/ジェネレータ)、22 エンジン(内燃機関)、22a シリンダヘッド、22b シリンダブロック、22n オイルタンク、22n1 タンク壁、24 発電ユニット、26 発電ユニットケース、36 冷却水通路、40 ヒータ、40a ヒータ本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統から電気負荷に至る交流電力の給電路に接続可能な発電機と前記発電機を駆動する内燃機関とからなる発電ユニットを備えると共に、前記内燃機関の冷却水を冷却水通路に導き、前記内燃機関の排熱で加温して温水を生成して熱負荷に供給するコージェネレーション装置において、
a.前記発電機に接続され、通電されるとき発熱するヒータ、
および
b.前記内燃機関の潤滑オイルを貯留すると共に、前記冷却水通路の冷却水と前記潤滑オイルとを熱交換させるオイルタンク、
を少なくとも備えると共に、前記ヒータを前記オイルタンクに配置したことを特徴とするコージェネレーション装置。
【請求項2】
前記ヒータを前記オイルタンクの内部に配置したことを特徴とする請求項1記載のコージェネレーション装置。
【請求項3】
前記ヒータを前記オイルタンクのタンク壁の内部に埋設したことを特徴とする請求項1記載のコージェネレーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−47052(P2009−47052A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212977(P2007−212977)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】