説明

コーティングを有する薬学的活性成分含有製剤

本発明は、フィルム形成ポリマーの単一コーティングで被覆されている経口投与のための薬学的活性成分含有製剤であって、コーティングが少なくとも2種の分離剤の混合物を含み、安定剤を含まない製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム形成ポリマーで被覆されている経口投与のための活性成分含有製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
活性成分の経口投与には患者のよい協力が得られる。適切な薬剤、例えば調節放出薬剤形は活性成分の性質および望ましい放出プロフィールに従って開発される。そのような形には遅延(又は抑制)放出製剤がある。
【0003】
遅延放出薬剤形の製造には、錠剤またはペレットを小腸で溶解する腸内分解性フィルムで被覆することが可能である。
【0004】
遅延製剤の場合、マトリックス系間に差異をつくり、活性成分を遅延マトリックス(ポリマー、ワックス)および貯蔵系と混合し、活性成分含有コア(例えば、錠剤またはペレット)をポリマーフィルムで被覆する。遅延コーティングは活性成分を保護し、少しずつ放出させる。
【0005】
遅延製剤として、多数単位投与形が好ましく用いられる。多数単位投与形は、胃で急速に崩壊し、多数の被覆された単位(ペレット)を放出する錠剤でもよい。それはまたペレットで満たされたカプセルの形でもよい。
【0006】
遅延製剤の利点は均一で持続性の有効活性成分レベルである。個々の錠剤摂取間の時間間隔は遅延薬剤形の場合、急速放出製剤の場合よりも大きい。従って、よりよい患者の協力を得ることが可能になる。
【0007】
多数単位投与形の利点は次のとおりである:
− 「投与放棄」のリスクの軽減
− 活性成分投与の分散、すなわち局所的過敏症のリスクの軽減
− 生体内作用において:胃での放出変化がほんのわずかであり、そのため活性成分の再現吸収が保証される
− 小さいペレットを食物と混ぜることができ、特に高齢の患者の摂取を容易にする。
【0008】
これまでのポリマーコーティングはたいていの場合、ペレットまたは錠剤に有機溶液から噴霧してきた。しかしながら、環境のために水ベースフィルム形成ポリマーに切り替える必要がある。
【0009】
ポリアクリレートは水ベースフィルム形成ポリマーとして適している。
用語「ポリアクリレート」は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルに基づくポリマーを示すのに用いられる。ポリアクリレートはローム社から「Eudragit」およびBASF社から「Kollicoat」の登録商標名で得られる。
【0010】
文献では、ペレットまたは錠剤を水性ポリマー分散液で被覆するための次の方法が記載されている。
【0011】
EP 0 403 959 A1および「Glyceryl monostearate as a glidant in aqueous film-coating formulations」, H.-U. Petereit等、Eur. J. Pharm. 41(4) 219-228(1995)によると、コア(ペレット、錠剤)は、ペレットが互いに粘着するのを防ぎ、そしてポリマーと安定な水性分散液を形成する、モノステアリン酸グリセロールのような親油性乳化剤を用いて、水性アクリレートベースポリマー分散液で被覆される。
【0012】
「Coating of Ibuprofen crystals with Eudragit FS30D」,S. Schmid, Arch. Pharm. Med. Chem. 333, Suppl. 1, 2000, 1-40, No.78では、モノステアリン酸グリセリルを分離剤としてそしてポリソルベート80を湿潤剤としてEudragit FS30Dポリマー分散液に加えることによって、粒子が互いに粘着するのを防ぐ。フィルム品質はモノステアリン酸グリセリルおよびポリソルベートの重量割合に左右される。
【0013】
「Microencapsulated Eudragit RS30D coated controlled-release pellets: the influence of dissolution variables and topographical evaluation」, T. Govender, J. Microencapsulation, Vol.14, No.1, 1997, pp.1-13には、コア(直径約1.9mm)のEudragit RS30Dでの被覆にステアリン酸マグネシウムを「粘着防止剤」として使用することが記載されている。活性成分の放出は一次速度論に基づく。
【0014】
米国特許第5,529,790号には、Eudragit NEまたはEudragit RSのような水性ポリマー分散液を添加剤と共に用いることによる、活性成分ペレットの特異的放出速度の成績が開示されている。透過度の調節に用いられる添加剤は、特に、クエン酸またはシメチコンと組み合わせたステアリン酸マグネシウムである。ステアリン酸マグネシウムも被覆時のコア(500〜1500ミクロン)の凝集を防ぐ。
【0015】
「Eudragit RL and RS Pseudolatices: properties and performance in pharmaceutical coating as a controlled release membrane for theophylline pelles」, R.-K. Chang, Drug Development and Industrial Pharmacy, 15(2),1989,pp.187-196では、タルカムおよび二酸化珪素が、テオフィリンペレットをEudragit RLおよび/またはRS疑似ラテックス(pseudolatices)で被覆するための分離剤として用いられる。有機溶媒もEudragit分散液の製造に用いられる。
【0016】
「Effect of application temperature on the dissolution profile of sustained-release theophylline pellets coated with Eudragit RS30D」, P. Schmidt, F. Niemann, Drug Developement and Industrial Pharmacy, 19(13),1603-1612(1993)には、テオフィリンペレット(100〜1400μm)を「小型流動床パン塗布機」中でEudragit RS30D、各種可塑剤(クエン酸トリエチル、フタル酸ジブチル、PEG)およびタルカムで被覆することが記載されている。
【0017】
「Drug release from compressed Eudragit RS30D coated beads」, G. F.Palmieri, S. T. P. Pharma Sciences 6(2),1996,pp.118-121は、テオフィリン含有コア(直径200〜630μm)のEudragit RS30D、20%クエン酸トリエチル(可塑剤)およびEudragit RS30Dの粘着性を減じるのに用いられる50%タルカム(ポリマーの乾燥重量に基づく)での被覆に関する。活性成分顆粒で満たされたカプセルはゼロオーダーの放出を示し、顆粒の圧縮で形成された錠剤は、顆粒含有率によりゼロオーダーないし一次の放出を示す。
【0018】
「Influence of plasticizer concentration and storage condition on the drug release rate from Eudragit RS30D film-coated sustained release theophylline pellets」, K.Amighi, A. Moes, Eur. J. Pharm. Biopharm. 42(1),29-35(1996)には、HPMC、タルカム、クエン酸トリエチル(可塑剤)およびさらにシリコーンエマルジョン(消泡剤)を用いて、テオフィリンペレット(直径1100μm)をEudragit RS30Dで被覆することが記載されている。
【0019】
「Effect of Pectinolytic enzymes on the theophylline release from pellets coated with water insoluble polymers containing pectin HM or calcium pectinate」, R. Semde, Int. J. Pharm., 197,2000,pp169-179および「Influence of curing conditions on the drug release rate from Eudragit NE30D film coated sustained-release theophylline pellets」, K.Amighi, S. T. P. Pharma Sciences 7(2),1997,pp.141-147では、タルカムおよびシリコーンエマルジョン(消泡剤)は、Eudragit NE30Dでのペレット(直径1mm)の被覆の助剤として用いられ、フィルムはまたペクチンを含む。Eudragit RS30Dはシリコーンエマルジョンを用いて処理される。
【0020】
「A pH-dependent colon targeted oral drug delivery system using methacrylic acid copolymers」, M. Z. I. Khan, Journal of Controlled Release 58(1999),215-222には、可塑剤としてのクエン酸トリエチルおよび滑剤としてのタルカムを含有する水性分散液を含むEudragit S100およびEudragit L 100−55またはそれらの混合物での錠剤の被覆が記載されている。
【0021】
「Modifying the release properties of Eudragit L30D」、 N. A. Muhammad等, Drug development and industrial pharmacy, 17(18),2497-2509(1991)には、活性成分含有コアをGlatt GPCG3中のEudragit L30D、クエン酸トリエチルおよびカオリンの水性分散液で被覆し、その後、ペレットを45℃で「硬化」することが記載されている。
【0022】
US20020160046には、オメプラゾールのための遅延製剤が記載されており、オメプラゾール含有コアは、例えば、非腸内分解形のEudragitを含有する、「厚い」遅延コーティング(100〜5000μm)が施されている。オメプラゾールコアは、Eudragit NE30D、タルカム、ステアリン酸マグネシウム、モノステアリン酸グリセロールおよびクエン酸トリエチルの水性分散液で噴霧される。この場合のコーティングはモノステアリン酸グリセロール界面活性剤を含む。
【0023】
WO99/12524には、NSAIDのための多数単位投与形が記載されている。活性成分含有コアは、例えば、Eudragit NE、ハイプロメロース、タルカムおよびステアリン酸マグネシウムの混合物で被覆されている。ペレットが高温で粘着するのを防ぐために、フィルム形成ポリマーを含む第2のコーティングが施される。
【0024】
EP 0 520 119 A1には、Eudragit NE、タルカムおよびステアリン酸マグネシウム、ポリソルベートおよびシリコーン消泡エマルジョンを含む膜層で被覆されたジクロフェンペレットが記載されている。
【0025】
「Aqueous polyacrylate dispersions as coating materials for sustained and enteric release systems」, D. Wouessidjewe, S. T. P. Pharma. Sciences 7(6),1997,pp.469-475には、Eudragit NE30Dでの被覆が記載されている。エブルナモニン含有コア(直径約1000μm)は、Eudragit NE30Dおよび分離剤としての10%タルカムの水性分散液で噴霧される。タルカムの使用にもかかわらず、Eudragit NE30Dは高レベルの粘着性をもつことが観察される。Eudragit分散液での噴霧の間にペレットが互いに粘着するのを防ぐために、ペレットの噴霧および乾燥を交互に行う断続噴霧手順が用いられる。実験室規模での処理時間は9時間を超える。すなわち、非常に時間のかかる手順である。
【0026】
文献では、タルカムは水性ポリ(メタ)アクリレート分散液用の公知の粘着防止剤として記載されている。しかしながら、タルカムは水性懸濁液中で急速に沈降する。すなわち、被覆剤分散液は使用直前に新たに製造し、そして噴霧中は絶えず攪拌し続けなければならない。ステアリン酸マグネシウムは粘着防止剤としてはほとんど用いられていない。ステアリン酸マグネシウムの欠点は、水性分散液に浮くことであり、その結果、噴霧過程は実施が複雑になる。
【0027】
Eudragit NE30Dの処理に、製造業者(ローム社)はモノステアリン酸グリセロールまたはタルカムの使用を薦めており、超微粉砕タルカムはポリマー量に基づいて100%までの量で用いられる。様々な機械形態の流動床装置中で活性成分含有コアをEudragit NE30D/タルカム懸濁液で被覆する試みは失敗した。ほんの20%のポリマーを施した後、マイクロペレットは互いに粘着し、その結果、プロセスは行き詰まる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の問題は、好ましくは処理手順の間、粘着性が低く、機械的強度および再現性が高く、そして加えてさらなるコーティングまたは界面活性剤もしくは消泡剤のような安定剤を必要としない、加工性が改善された、水ベース経口投与用の薬学的活性成分含有製剤を提供することである。別の目的は、製造の費用効率がよく、時間のかからない、ペレットまたは錠剤のような被覆製剤の製造法を提供することである。被覆製剤は活性成分の調節放出プロフィール、特に一定の放出(ゼロオーダー)を有することができる。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の問題は、フィルム形成ポリマーの単一コーティングで被覆された経口投与のための薬学的活性成分含有製剤による態様によって解消され、そのコーティングは少なくとも2種の分離剤の混合物を含み、安定剤は含まない。
【0030】
本発明の製剤では、コーティングは界面活性剤または消泡剤を安定剤として含有する必要はない。
【0031】
さらに、本発明の製剤では、フィルム形成ポリマーは、水ベース分散液の形で提供することができる事実によって特徴づけることができる。
【0032】
さらに、本発明の製剤では、フィルム形成ポリマーは複数のフィルム形成ポリマーの混合物であってもよい。
【0033】
本発明の製剤はまた、ポリアクリレートをフィルム形成ポリマーとして用いてもよい。
【0034】
さらに、本発明の製剤では、ポリアクリレートは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルに基づくポリマー、特にEudragitおよび/またはKollicoatでもよい。
【0035】
さらに、本発明の製剤では、少なくとも2種の分離剤を有する混合物が、
− 純水中で浮く少なくとも1種の分離剤、および
− 純水中で沈むまたはそれに溶解する少なくとも1種の分離剤
を含むことができる。
【0036】
分離剤が純水中で浮くかどうかは、分離剤の密度が水の密度より大きいかどうかのみによる必要はない。例えば、ステアリン酸マグネシウムの真の密度は1.09g/cm3であるが、水に浮く。
【0037】
さらに、本発明の製剤では、少なくとも2種の分離剤を有する混合物は、
− 少なくとも1種の脂肪酸塩を分離剤として、および
− 二重鎖シリケートおよび層状シリケートよりなる群からの少なくとも1種のシリケートを分離剤として
を含むことができる。
【0038】
さらに、本発明の製剤では、混合物は、浮く分離剤または脂肪酸塩として、脂肪酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/またはアルミニウム塩を含むことができる。
【0039】
さらに、本発明の製剤では、混合物は、ベヘン酸ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよび/またはカルシウムを脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩として含むことができる。
【0040】
さらに、本発明の製剤では、混合物は、ステアリン酸ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよび/またはアルミニウムを脂肪酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属またはアルミニウム塩として含むことができる。
【0041】
さらに、本発明の製剤では、混合物は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸および/またはパルミチン酸のマグネシウム塩を脂肪酸のアルカリ土類金属塩として含むことができる。
【0042】
さらに、本発明の製剤では、フィルム形成ポリマーの乾燥重量に基づいて、浮く分離剤または脂肪酸塩の含有率は5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%でありうる。
【0043】
さらに、本発明の製剤では、混合物は層状シリケートを沈む分離剤またはシリケートとして含むことができる。
【0044】
さらに、本発明の製剤では、混合物は、タルカム、カオリナイト、パイロフィライト、アタパルジャイト、セピオライト、白雲母、モンモリロナイト、ベントナイトおよび/またはバーミキュライトを層状シリケートとして含むことができる。
【0045】
さらに、本発明の製剤では、フィルム形成ポリマーの乾燥重量に基づいて、沈む分離剤またはシリケートの含有率は20〜60重量%、好ましくは30〜50重量%でありうる。
【0046】
さらに、本発明の製剤は、カプセル、錠剤、ペレット、顆粒、ミニタブレットまたはマイクロペレットである、コーティングを施された活性成分含有コアの形であってもよい。
【0047】
さらに、本発明の製剤は、活性成分結晶である、コーティングを施されたコアの形であってもよい。
【0048】
さらに、本発明の製剤では、ペレットまたはマイクロペレットの形の活性成分含有コアは不活性コアを含んでいてもよく、活性成分含有コアは活性成分含有コーティングを有する不活性コアで特に構成されている。
【0049】
さらに、本発明の製剤では、マイクロペレットは多数単位投与形として、特に錠剤またはカプセルの形で提供されうる。
【0050】
さらに、本発明の製剤では、ペレット、顆粒またはミニタブレットは多数単位投与形として、特にカプセルの形で提供されうる。
【0051】
さらに、本発明の製剤では、多数単位投与形は本発明のコーティングを施されうる。
【0052】
さらに、本発明の製剤では、多数単位投与形はカプセル、特にソフトゼラチンカプセルでありうる。
【0053】
さらに、本発明の製剤では、活性成分は薬学的に許容される助剤、特に通例の助剤との混合物の形で提供されうる。
【0054】
さらに、本発明の製剤では、活性成分は界面活性剤、特に非イオンまたはイオン界面活性物質との混合物の形、あるいは界面活性剤を含まない形で提供されうる。
【0055】
さらに、本発明の製剤は、好ましくは300g/L水溶液を越える溶解度を有する、易水溶性活性成分を含む状態で提供されることができる。
【0056】
例えば、本発明の製剤は、活性成分としてメトプロロールまたはその塩、特にコハク酸メトプロロールを含む状態で提供されることができる。
【0057】
別の態様では、本発明の問題は、分散液がフィルム形成ポリマーおよび少なくとも2種の分離剤を含み、安定剤を含まない、経口投与用薬学的活性成分含有製剤用のコーティングを製造するための水性分散液であって、ポリマーの乾燥重量に基づいて、
− 純水中で浮く少なくとも1種の分離剤が5〜40重量%の量で存在し、そして
− 純水中で沈む少なくとも1種の分離剤が20〜60重量%の量で存在する、
水性分散液によって本発明に従って解消される。
【0058】
さらに、別の態様では、本発明の問題は、分散液がフィルム形成ポリマーおよび少なくとも2種の分離剤を含み、安定剤を含まない、経口投与用薬学的活性成分含有製剤用のコーティングを製造するための水性分散液であって、ポリマーの乾燥重量に基づいて、
− 少なくとも1種の脂肪酸塩が5〜40重量%の量で分離剤として存在し、および
− 二重鎖シリケートおよび層状シリケートよりなる群からの少なくとも1種のシリケートが20〜60重量%の量で存在する、
水性分散液によって本発明に従って解消される。
【0059】
本発明では、分散液は界面活性剤または消泡剤を安定剤として含まなくともよく、
− 特に非イオン界面活性剤、とりわけポリソルベート、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリルおよび/またはポリビニルアルコール、
− 特に陰イオン界面活性剤、とりわけドキュセートナトリウムおよび/またはラウリル硫酸ナトリウム、
− 特に陽イオン界面活性剤、とりわけ塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムおよび/またはセトリミド、
− 特にシリコーン系消泡剤および/または
− 特に消泡剤としてのグリセロール、ソルビトールおよび/またはPEG誘導体
を含まなくてもよい。
【0060】
最後に、別の態様では、本発明の問題は、まだ被覆されていない製剤が本発明の分散液を用いてコーティングを施される、薬学的活性成分含有製剤の製造方法によって、本発明に従って解消される。
【発明の効果】
【0061】
従って、意外なことに、特に、コア(例えば、ペレットまたは錠剤)のコーティング用水性ポリマー分散液の良好な処理性が、少なくとも2種の分離剤の混合物をポリマーの水性分散液に加えると得られることを見出した。その手順では、少なくとも1種の分離剤は、脂肪酸のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属またはアルミニウム塩であってもよく、少なくとも1種のさらなる分離剤は層状シリケートであってもよい。ポリマーが相互に粘着する傾向は、少なくとも2種の分離剤の混合物を用いることによって減少する。密度が非常に異なる少なくとも2種の分離剤を混合することによって、明らかに水の密度に近い密度となる。水中では、層状シリケートの沈降も、脂肪酸の発泡も生じない。界面活性剤または消泡剤を使用する必要はない。
【0062】
2種の分離剤の使用によって、活性成分含有コアは親油性となり、その結果、放出を遅くすることができ、従って、ほとんどゼロオーダーの速度論を達成することができる。
【0063】
活性成分含有コアが水性ポリマー分散液を用いて本発明に従って被覆されるとき、この方法は、有機溶媒がポリマーの処理に用いられる手順よりも費用効率が高い。有機溶媒を用いて実施する方法の場合のように、活性成分含有コアを被覆するための費用のかかる防爆性の系、並びにそのような溶媒の経費の高い廃棄は不必要である。さらに、活性成分含有コアの被覆は、中間乾燥工程なしで、高い噴霧速度で、少なくとも2種の分離剤の混合物を用いて行うことができるので、本発明の製造法は時間がかからない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
本発明はさらに、特に、単一フルムコーティングを有する錠剤またはペレットのような製剤であって、フィルムコーティングがフィルム形成ポリマーの水性分散液から施される製剤に関する。水性ポリマー分散液での被覆は、少なくとも2種の分離剤の混合物、特に脂肪酸のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属塩および層状シリケートを用いて本発明に従って行われる。フィルムコーティングは界面活性剤または消泡剤のような安定剤を含有しない。
【0065】
本発明はさらに、特に、
− 水ベースポリマー分散液、
− 分離剤としての少なくとも1種の脂肪酸塩、例えば、脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、および
− さらなる分離剤としての少なくとも1種の層状シリケート
を含む単一コーティングを有し、少なくとも2種の分離剤は共に混合され、そして得られる混合物はポリマー分散液に加えられる、調節放出製剤製造用のフィルム形成系に関する。
【0066】
本発明のフィルム形成系を用いて、活性成分含有コアは単一ポリマー含有層で被覆されることができる。コアは薬理学的に活性な物質および任意に1種以上の薬学的に許容される助剤を含んでいてもよい。
【0067】
持続放出は他の方法によると難しいので、水への溶解性が良好な活性成分が特に好ましい。活性成分の水への溶解度は300g/lを越えるのが好ましい。
【0068】
挙げられる水溶性活性成分の例は、β−ブロッカー、例えばメトプロロール、ビソプロロール;オピオイド、例えばトラマドール、モルヒネ、オキシコドンまたはヒドロコドンである。活性成分は立体異性体または薬学的に許容される塩、水和物および溶媒和物の形で、並びに誘導体の形で用いることができる。2種以上の活性成分の組み合わせを用いることも可能である。メトプロロールまたはその塩、例えば酒石酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、安息香酸塩またはソルビン酸塩を用いるのが好ましい。メトプロロールのS−鏡像異性体またはその安息香酸塩もしくはソルビン酸塩を同様に用いることができる。コハク酸メトプロロールが特に好ましい。
【0069】
活性成分含有コアは、錠剤、ペレット、ミニタブレット、顆粒またはマイクロペレットの形にすることができる。被覆ペレットまたはミニタブレットはカプセルに詰めることができる。被覆マイクロペレットはさらに処理して錠剤またはカプセル、すなわち、多数単位投与形にすることができる。活性成分結晶およびカプセル、例えばソフトゼラチンカプセルも、本発明のフィルム形成系で被覆することができる。
【0070】
被覆された活性成分含有コアは調節された放出を示す。活性成分は比較的長時間、例えば10〜24時間にわたって放出されるのが好ましい。
【0071】
〔活性成分含有コア:〕
被覆のための担体およびコアは、カプセル、錠剤、顆粒、ペレットまたは結晶でもよい。顆粒、ペレットまたは結晶の大きさは0.01〜2.5mmであり、錠剤のそれは2.5〜30.0mmである。活性成分含有率は、用いられる活性成分および望ましい放出速度により広い範囲で変化しうる。例えば、活性成分含有率は、コアの総重量に基づいて、0.1〜98重量%、好ましくは50〜80重量%にしうる。
【0072】
活性成分含有コアは活性成分ペレットまたは活性成分顆粒でもよく、これらは活性成分および薬学的に慣例の助剤を含む。そのために、活性成分および助剤は一緒に粒状にされる。
【0073】
ペレットまたはマイクロペレットの形の活性成分含有コアは、活性成分含有層で覆われた「不活性コア」を含んでいてもよい。「不活性コア」は水に不溶性の物質、例えばガラス、セルロース(例えば、微晶質セルロース)、オキシドおよび/または有機ポリマーからなりうる。有機ポリマーとしては、ポリプロピレンまたはポリエチレンが適している。 水溶性物質、例えば無機塩、糖またはノンパレルからなっていてもよい。そのような「不活性コア」の直径は10〜2000μm、好ましくは50〜500μmである。
【0074】
不活性コア物質は、結晶、凝集体等の形の活性成分で被覆されていてもよい。不活性コアの活性成分コーティングは、例えば、顆粒化またはスプレー被覆を用いて行うことができる。活性成分含有コアの大きさは200〜2000μm、好ましくは200〜800μmである。
【0075】
不活性コア物質の被覆の前に、活性成分を助剤、例えば結合剤、界面活性剤、崩壊剤および/または他の薬学的に許容される助剤と混合してもよい。結合剤としては、セルロース、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、糖および/またはデンプンを用いることができる。適した界面活性剤は非イオンまたはイオン界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【0076】
活性成分含有コアは錠剤またはミニタブレット(直径4mm未満)でもよい。そのようなコアは、活性成分の他に、さらに薬学的に許容される助剤、例えば担体物質、充填材、結合剤、保湿剤、崩壊促進剤、崩壊剤、潤滑剤、流動性調節剤、離型剤、防腐剤、風味剤および/または着色顔料を含むことができる。通例の製造法は、直接圧縮または乾式、湿式または焼結顆粒の圧縮である。
【0077】
〔被覆:〕
活性成分含有コアは、1種以上のフィルム形成ポリマーおよび少なくとも2種の分離剤を含む単一層で被覆することができる。
【0078】
ポリアクリレートは水ベースフィルム形成ポリマーとして適している。
「ポリアクリレート」という用語は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、例えば、アミノアルキルエステルまたはアルキルエステル、特にメチル、エチル、プロピルおよびブチルエステル、並びにヒドロキシル化アクリル酸またはメタクリル酸エステルのような2つ以上のモノマーを有するコポリマーを意味する。適したフィルム形成ポリアクリレートの例は、第4アンモニウム基を有するポリ−エチルメチルメタクリレート、ポリ−エチルアクリレートメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルメタクリレートおよび/またはアクリル酸とメタクリル酸エステルとのコポリマーである。
【0079】
ポリアクリレートは「Eudragit」の登録商標名でローム社から得られる。本発明では、Eudragit NE、Eudragit RL、Eudragit RS、Eudragit L、Eudragit S、Eudragit FSまたはそれらの混合物を用いることができる。Eudragit NE30Dを用いるのが好ましい。
【0080】
Eudragit NE30Dは、2:1のコポリマー比を有する30%濃度水性分散液の形のポリ−エチルアクリレート−メチルメタクリレートである。Eudragit NEのフィルム形成温度は5℃(最低)である。このコポリマーは中性の特性を有し、消化管の全pH範囲にわたって水に不溶性である。Eudragit NEはpHの影響を受けない透過性を示す。Eudragitは水中で膨潤するので、Eudragit NEを含む活性成分含有コアのコーティングは従って活性成分放出の拡散調整遅延を生じる。可塑剤の添加はEudragit NE30Dの処理には必要ない。
【0081】
Eudragit NE30Dと似た分散液はBASF社のKollicoat EMM30Dである。
【0082】
Eudragit NE40Dは40%ポリマー含有率の水性分散液である。
【0083】
Eudragit RLおよびRSは第4アンモニウム基の含有率が低いアクリル酸およびメタクリル酸エステルのコポリマー、特にポリ(エチルアクリレート−メチルメタクリレート−トリメチルアンモニウムエチルメチルメタクリレートクロリド)である。コポリマーの比率は、Eudragit RLの場合は1:2:0.2、Eudragit RSの場合は1:2:0.1である。これらのコポリマーは消化管の全pH範囲にわたって水に不溶性であり、pHの影響を受けない透過性を示す。
【0084】
弱い陽イオン親水性ポリメタクリレートであるEudragit RSは、フィルム形成温度を20℃未満に下げるために、10〜20%の可塑剤を加える必要がある。可塑剤として、クエン酸トリエチルアセチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、トリアセチン、1,2−プロピレングリコール、ポリエチレングリコール6000、特にクエン酸トリエチルが適している。Eudragit RS30Dは30%水性分散液の形である。
【0085】
Eudragit RL30Dは約20%の可塑剤を加える必要がある。可塑剤は、クエン酸トリエチルアセチル、セバシン酸ジエチル、トリアセチン、1,2−プロピレングリコール、特にクエン酸トリエチルが適している。
【0086】
Eudragit FS30Dは、65重量%アクリル酸メチル、25重量%メタクリルメチルおよび10重量%メタクリル酸のコポリマーを含む30%濃度分散液である。
【0087】
Eudragit L30D55は、メタクリル酸およびアクリル酸エチルに基づく陰イオン性のコポリマーの30%濃度水性分散液である。遊離カルボキシ基対エステル基の比率は約1:1である。Eudragit L30D55は腸内分解性コーティングに適しており、pH=5.5からの腸液に可溶性である。Eudragit L30D55は10〜15%の可塑剤を加える必要がある。適した可塑剤はクエン酸トリエチルおよびポリエチレングリコールである。
【0088】
Eudragit Sはメタクリル酸およびメタクリル酸メチルに基づく陰イオン性のコポリマーである。遊離カルボキシ基対エステル基の比率は約1:2である。Eudragit Sは腸内分解性コーティングに適しており、pH=7からの腸液に可溶性である。このコポリマーはpH依存性の遅延を示す。Eudragit Sは可塑剤、例えばクエン酸トリエチルまたはポリエチレングリコールを加える必要がある。
【0089】
ポリマーの含有率は、コーティング全体に基づいて、40〜90重量%でありうる。60〜70重量%の含有率が好ましい。ポリマーは、2種以上の分離剤と一緒に用いることができ、少なくとも1種の分離剤は脂肪酸塩であってもよく、少なくとも1種のさらなる分離剤は層状シリケートであってもよい。
【0090】
脂肪酸塩として、例えば、脂肪酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属またはアルミニウム塩、例えばステアリン酸ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたはアルミニウム、あるいはベヘン酸ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたはアルミニウム、あるいはカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸またはパルミチン酸のマグネシウム塩が適している。
【0091】
層状シリケートとして、タルカム、カオリナイト、パイロフィライト、アタパルジャイト、セピオライト、白雲母、モンモリロナイト、ベントナイトおよび/またはバーミキュライトが適している。
【0092】
1種以上の層状シリケートの含有率は、ポリマーの乾燥重量に基づいて、20〜60重量%でありうる。30〜50重量%の含有率が好ましい。
【0093】
1種以上の脂肪酸塩の含有率は、ポリマーの乾燥重量に基づいて、5〜40重量%でありうる。10〜30重量%の含有率が好ましい。
【0094】
さらなる助剤として、例えば、親水性成分(例えば、アエロジルまたはポリエチレングリコール)を用いてもよい。
【0095】
安定剤、例えば、界面活性剤(例えば、非イオン界面活性剤、例えばポリソルベート、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリルもしくはポリビニルアルコール、または陰イオン界面活性剤、例えばドキュセートナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、または陽イオン界面活性剤、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムもしくはセトリミド)あるいは消泡剤(例えば、シリコーン系消泡剤、例えばポリジメチルシロキサン、Simethicone(登録商標)、Dimethicone(登録商標)、シリコーンエマルジョンまたはグリセロール、ソルビトールまたはPEG誘導体を加える必要はない。
【0096】
ポリマーは水性分散液の形で処理することができる。水に混和性の有機溶媒、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノールのような低級アルコールを加える必要はない。
【0097】
ポリマーコーティングの層の厚さは25〜75μmが好ましい。
【0098】
ペレットが本発明のポリマー分散液で被覆されるとき、被覆ペレットの直径は10〜2000μmにしうる。マイクロペレットは、直径が1000μm未満のペレットであるとみなす。本発明の被覆されたマイクロペレットの直径は300〜800μmであるのが好ましい。
【0099】
〔方法:〕
被覆製剤を製造する本発明の方法では、第1工程において、少なくとも1種の脂肪酸塩および少なくとも1種の層状シリケートを共に混合することができる。混合はフリーフォール(free fall)またはプロ−シェア(ploughshare)ミキサーのような混合装置、例えばターブラ(Turbula)またはロッジ(Lodige)ミキサーを用いて、室温にて行うことができる。分離剤混合物は、攪拌しながら、ポリマーの水性懸濁液へ加えることができる。さらに助剤を加えることも可能である。そのようにして得られたポリマー懸濁液は噴霧することによって活性成分含有コアへ施すことができる。水性ポリマー懸濁液の噴霧は「コーティングパン(coating pans)」、流動床、アクセラ−コータ(Accela-cota)、ディップチューブ(dip tube)もしくはディップブレードプロセス(dip blade processes)またはパンコーティング(pan coating)を用いることによって行うことができる。
【0100】
錠剤、ミニタブレットまたはカプセルの噴霧は、穴あきドラム、空気供給/除去手段および噴霧装置を有する流動床装置、糖被覆パンまたはフィルムコーティングシステム中で行うことができる。
【0101】
活性成分結晶、顆粒、ペレットまたはマイクロペレットの噴霧には、「トップスプレー(top spray)」、「ウルスターボトムスプレーWurster bottom spray)」または「接線スプレー(tangential spray)」タイプ(「Air suspension coating for multiparticulates」, D. Jones, Drug DevelopmentおよびIndustrial Pharmacy, 20(20),1994,pp.3175-3206参照)の流動床装置を用いることが可能である。
【0102】
マイクロペレットの場合、ウルスターインサートを有するGlattからの流動床装置の使用が特に好ましい。噴霧手順の間のノズル直径は0.8〜2.0mm、噴霧速度は20〜600ml/分、噴霧圧は1.0〜2.7bar並びに製品温度は22〜26℃であるのが有利である。マイクロペレットの乾燥は、好ましくは25〜30℃の製品温度で、流動床装置内で行うことができる。篩い分けした後、粒子サイズ分布が均一な易流動性マイクロペレットが得られる。
【0103】
〔カプセルを形成するさらなる処理〕
被覆された活性成分含有ペレット、マイクロペレット、顆粒またはミニタブレットはカプセルに詰めることができる。適したカプセルはハードまたはソフトゼラチンカプセルである。
【0104】
〔錠剤を形成するさらなる処理〕
錠剤の形の多数単位投与形を得るには、被覆された活性成分含有マイクロペレットを助剤と混合し、圧縮して錠剤を形成する。
【0105】
錠剤製造に適した助剤は次の成分である:
− 充填材、例えばセルロースおよび/またはセルロース誘導体(例えば、微晶質セルロース)、糖(例えば、ラクトース、グルコース、サッカロース)、糖アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、デンプン(例えば、ジャガイモ、コムギ、トウモロコシおよび/またはコメデンプン)、
− 潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、水素化植物油および/またはタルカム、
− 流動調節剤、例えば高分散二酸化珪素、
− 崩壊剤、例えばデンプンおよびデンプン誘導体(カルボキシメチルスターチナトリウム)、架橋ポリビニルピロリドン、未調整または調整セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋カルボキシメチルセルロース)および/またはアルギネート。
【0106】
錠剤は、滑らかな表面を得るためまたは包装および輸送の際における錠剤の安定性を高めるために、フィルム形成物質で被覆してもよい。そのような錠剤コーティングは、例えば、「粘着防止」物質または着色剤のような添加剤を含んでいてもよい。
【0107】
マイクロペレットの含有率は最大、錠剤重量全体の70%になりうる。25〜55%の含有率が好ましい。
【0108】
〔放出プロフィール〕
記載の製剤の試験管内放出試験は、模擬胃液(pH=1.2)を用いてまたはバッファー媒質(pH=6.8)中でUSP標準装置を使用して行った。
【実施例】
【0109】
次の実施例で本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はそれらによって限定されない。
〔実施例1〕
次の物質を硫酸モルヒネ錠剤の製造に用いる:
【0110】
【表1】

*フィルムコーティング乾燥物質の量を示す
【0111】
製造:
まずセルロースペレットに硫酸モルヒネの水溶液を噴霧する。次に、活性成分含有コアをEudragit NE30D/タルカム/ステアリン酸カルシウムの層で被覆する。被覆されたペレットを次にラクトース(充填材)、ステアリン酸(潤滑剤)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(崩壊剤)および高分散二酸化珪素(流動調節剤)と混合し、圧縮して錠剤を形成する。次に、錠剤を、可塑剤としてPEG8000および着色顔料として酸化鉄を含む水溶性HPMCフィルムコーティングでフィルム被覆する。
【0112】
〔実施例2〕
次の物質をコハク酸メトプロロール錠剤の製造に用いる:
【0113】
【表2】

*フィルムコーティング乾燥物質の量を示す
【0114】
製造:
まず糖ペレットにコハク酸メトプロロールの水溶液を噴霧する。次に、活性成分含有コアをEudragit NE30D/タルカム/ステアリン酸マグネシウムの層で被覆する。被覆されたペレットをさらなる助剤と共に圧縮して錠剤を形成する。
【0115】
〔放出プロフィールの比較〕
Eudragit NE30D、ステアリン酸マグネシウムおよびタルカムで被覆されたコハク酸メトプロロール含有コアを含むコハク酸メトプロロール錠剤と、タルカムのみを分離剤として用いた相当する製剤との放出プロフィールの比較。
【0116】
活性成分放出を測定するための装置:
媒質: KH2PO4バッファー pH6.8、900ml、パドル
温度: 37℃
攪拌速度: 100回転/分
【0117】
【表3】

【0118】
表から分かるように、タルカムおよびステアリン酸マグネシウムが分離剤として用いられるとき、ゼロオーダー放出プロフィールが得られる。タルカムのみが用いられるとき、一次放出プロフィールが得られる。
【0119】
〔実施例3〕
次の物質をフマル酸ビソプロロール錠剤の製造に用いる:
【0120】
【表4】

*フィルムコーティング乾燥物質の量を示す
【0121】
製造:
まずセルロースペレットにフマル酸ビソプロロールの水溶液を噴霧する。次に、活性成分含有コアをEudragit NE30D/ベントナイト/ステアリン酸アルミニウムの層で被覆する。被覆されたペレットをさらなる助剤と共に圧縮して錠剤を形成する。
【0122】
〔実施例4〕
次の物質を塩酸トラマドールカプセルの製造に用いる:
【0123】
【表5】

*フィルムコーティング乾燥物質の量を示す
【0124】
製造:
まず糖ペレットに塩酸トラマドールの水溶液を噴霧する。次に、活性成分含有コアをEudragit NE30D/タルカム/ベヘン酸カルシウムの層で被覆する。被覆されたペレットをハードゼラチンカプセルに詰める。
【0125】
〔実施例5〕
次の物質を塩酸オキシコドンカプセルの製造に用いる:
【0126】
【表6】

*フィルムコーティング乾燥物質の量を示す
【0127】
製造:
塩酸オキシコドンを微晶質セルロース、アエロジルおよびステアリン酸マグネシウムと共に圧縮してミニタブレットを形成する。次に、ミニタブレットをEudragit NE30D/カオリン/ステアリン酸マグネシウムの層で被覆する。被覆されたミニタブレットをハードゼラチンカプセルに詰める。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム形成ポリマーの単一コーティングで被覆された経口投与のための薬学的活性成分含有製剤であって、前記コーティングは少なくとも2種の分離剤の混合物を含み、安定剤は含まない製剤。
【請求項2】
前記コーティングが界面活性剤または消泡剤を安定剤として含まない、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記フィルム形成ポリマーが、水ベース分散液の形で提供されうることを特徴とする、請求項1および/または2に記載の製剤。
【請求項4】
前記フィルム形成ポリマーが複数のフィルム形成ポリマーの混合物である、請求項1〜3の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項5】
ポリアクリレートをフィルム形成ポリマーとして有する、請求項1〜4の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項6】
前記ポリアクリレートがアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルに基づくポリマー、特にEudragitおよび/またはKollicoatである、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
少なくとも2種の分離剤を有する混合物が、
− 純水中で浮く少なくとも1種の分離剤、および
− 純粋中で沈む少なくとも1種の分離剤
を含む、請求項1〜6の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項8】
少なくとも2種の分離剤を有する混合物が、
− 少なくとも1種の脂肪酸塩を分離剤として、および
− 二重鎖シリケートおよび層状シリケートよりなる群からの少なくとも1種のシリケートを分離剤として
を含む、請求項1〜6の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項9】
前記混合物が、浮く分離剤または脂肪酸塩として、脂肪酸のアルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩および/またはアルミニウム塩を含む、請求項7または8に記載の製剤。
【請求項10】
前記混合物が、ベヘン酸ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよび/またはカルシウムを脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩として含む、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記混合物が、ステアリン酸ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムおよび/またはアルミニウムを脂肪酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属またはアルミニウム塩として含む、請求項9に記載の製剤。
【請求項12】
前記混合物が、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸および/またはパルミチン酸のマグネシウム塩を脂肪酸のアルカリ土類金属塩として含む、請求項9に記載の製剤。
【請求項13】
浮く分離剤または脂肪酸塩の含有率が、フィルム形成ポリマーの乾燥重量に基づいて、5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%である、請求項7〜12の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項14】
前記混合物が、層状シリケートを沈む分離剤としてまたはシリケートとして含む、請求項7〜13の少なくとも一項、特に請求項7および/または8に記載の製剤。
【請求項15】
前記混合物が、タルカム、カオリナイト、パイロフィライト、アタパルジャイト、セピオライト、白雲母、モンモリロン石、ベントナイトおよび/またはバーミキュル石を層状シリケートとして含む、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記沈む分離剤または前記シリケートの含有率が、フィルム形成ポリマーの乾燥重量に基づいて、20〜60重量%、好ましくは30〜50重量%である、請求項7〜15の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項17】
コーティングを施された活性成分含有コアの形が、カプセル、錠剤、ペレット、顆粒、ミニタブレットまたはマイクロペレットである、請求項1〜16の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項18】
コーティングを施されたコアの形が、活性成分結晶である、請求項1〜16の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項19】
ペレットまたはマイクロペレットの形の活性成分含有コアが不活性コアを含み、活性成分含有コアが特に活性成分含有コーティングを有する不活性コアで構成されている、請求項17に記載の製剤。
【請求項20】
マイクロペレットが多数単位投与形として、特に錠剤またはカプセルの形で提供される、請求項17および/または19に記載の製剤。
【請求項21】
ペレット、顆粒またはミニタブレットが多数単位投与形として、特にカプセルの形で提供される、請求項17および/または19に記載の製剤。
【請求項22】
多数単位投与形が請求項1〜16の少なくとも一項に記載のコーティングを施される、請求項20および/または21に記載の製剤。
【請求項23】
多数単位投与形がカプセル、特にソフトゼラチンカプセルである、請求項20〜22の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項24】
活性成分が薬学的に許容される助剤、特に通例の助剤との混合物の形で提供される、請求項1〜23の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項25】
活性成分が界面活性剤、特に非イオンまたはイオン界面活性物質との混合物の形、あるいは界面活性剤を含まない形で提供される、請求項1〜24の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項26】
好ましくは300g/L水溶液を越える溶解度を有する、易水溶性活性成分を含む請求項1〜25の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項27】
活性成分としてメトプロロールまたはその塩、特にコハク酸メトプロロールを含む、請求項1〜26の少なくとも一項に記載の製剤。
【請求項28】
分散液がフィルム形成ポリマーおよび少なくとも2種の分離剤を含み、安定剤を含まない、請求項1〜27のいずれか一項に記載の経口投与用薬学的活性成分含有製剤用のコーティングを製造するための水性分散液であって、ポリマーの乾燥重量に基づいて、
− 純水中で浮く少なくとも1種の分離剤が5〜40重量%の量で存在し、そして
− 純水中で沈む少なくとも1種の分離剤が20〜60重量%の量で存在する、
水性分散液。
【請求項29】
分散液がフィルム形成ポリマーおよび少なくとも2種の分離剤を含み、安定剤を含まない、請求項1〜28のいずれか一項に記載の経口投与用薬学的活性成分含有製剤用のコーティングを製造するための水性分散液であって、ポリマーの乾燥重量に基づいて、
− 少なくとも1種の脂肪酸塩が5〜40重量%の量で分離剤として存在し、および
− 二重鎖シリケートおよび層状シリケートよりなる群からの少なくとも1種のシリケートが20〜60重量%の量で存在する、
水性分散液。
【請求項30】
分散液が界面活性剤または消泡剤を安定剤として含まず、
− 特に非イオン界面活性剤、とりわけポリソルベート、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリルおよび/またはポリビニルアルコール、
− 特に陰イオン界面活性剤、とりわけドキュセートナトリウムおよび/またはラウリル硫酸ナトリウム、
− 特に陽イオン界面活性剤、とりわけ塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムおよび/またはセトリミド、
− 特にシリコーン系消泡剤および/または
− 特に消泡剤としてのグリセロール、ソルビトールおよび/またはPEG誘導体
を含まない請求項28または29に記載の分散液。
【請求項31】
まだ被覆されていない製剤が、請求項28,29および30のいずれか一項に記載の分散液を用いてコーティングを施される、請求項1〜30のいずれか一項に記載の薬学的活性成分含有製剤の製造方法。

【公表番号】特表2007−509891(P2007−509891A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537197(P2006−537197)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012230
【国際公開番号】WO2005/041934
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(500085389)ヘキサル アーゲー (7)
【Fターム(参考)】