説明

コーティング用組成物、ハードコートフィルムおよび光記録媒体

【課題】 指紋跡拭き取り性および帯電防止性の両方に優れたハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】 無機酸化物粒子に、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物が化学的に結合してなる反応性粒子(A)と、分子内にポリエチレンオキシド鎖(分子中の含有率:50%以上100%未満)および2個以上の重合性不飽和基を有し、かつ、芳香環および炭素数7個以上のアルキル鎖を有しない有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)と、分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物のモノマーまたはオリゴマーであって、上記有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)以外の有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(C)と、ジアルキルシロキサン骨格を有するシロキサン系化合物(D)とを含有するコーティング用組成物を、基材フィルム11の一方の面に塗布し、電離放射線の照射によって硬化させ、厚さ0.1〜20μmのハードコート層12を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング用組成物、ハードコートフィルムおよび光記録媒体に関するものであり、特に、指紋跡拭き取り性および帯電防止性の両方に優れたコーティング用組成物、ハードコートフィルムおよび光記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年開発されたブルーレイディスク(Blu−ray Disc)においては、25GBという高記録容量を実現するために、短波長レーザおよび高開口率のレンズを使用して記録密度を向上させている。
【0003】
ブルーレイディスクも、既存の光ディスク(CD,DVD等)と同様に、情報記録層を保護するためにポリカーボネートからなる保護フィルムが情報記録層に接着されているが、上記のようにブルーレイディスクの記録情報は極めて大容量・高密度であり、保護フィルムに僅かな傷が付いただけであっても、情報の読出または書込にエラーが生じるおそれがあるため、表面保護用のハードコート層が必要不可欠になっている。
【0004】
また、ブルーレイディスクにおいては、傷と同様に、指紋の跡や静電気により付着する塵埃によっても信号特性が低下してエラーが発生するため、ハードコート層には指紋跡拭き取り性および帯電防止性の付与が必要とされる。
【0005】
ハードコート層に指紋跡拭き取り性を付与するには、ハードコート層形成用の組成物に、ジメチルシロキサン化合物、フッ素系界面活性剤、防汚剤等を添加して撥水性・撥油性を与える方法がある。
【0006】
一方、ハードコート層に帯電防止性を付与するには、ハードコート層形成用の組成物に、金属酸化物や、帯電防止剤を添加して親水性を与える方法がある。しかし、前者の方法は、得られるハードコート層の透過率の低下を招くため、光ディスク用途として不適であり、後者の方法は、経時により性能が低下するという問題がある。
【0007】
また、指紋跡拭き取り性と帯電防止性との関係は、上記のように撥水性の付与・親水性の付与という相反する関係であり、ハードコート層一層に両方の性能を付与することは困難とされてきた。
【0008】
ここで一例として、特許文献1には、高い帯電防止性と良好な表面外観を保持したまま、表面塵埃拭き取り性と耐擦傷性を改善するために、帯電防止剤およびスリップ剤を含有する紫外線硬化型樹脂組成物を硬化させたハードコート層を有する光ディスクが開示されている。
【特許文献1】特開平6−195749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の発明における帯電防止剤としては、その分子中に親水性部分と疎水性部分を共に有する化合物が使用され、具体的には、エチレンオキシド変性リン酸メタクリレート(大八化学工業社製,MR−200,ポリエチレンオキシドの含有率:21.0〜27.3%)が使用されている。しかしながら、かかる帯電防止剤を使用した場合の帯電防止効果は十分なものではなかった。
【0010】
また、特許文献1に記載の発明では、帯電防止剤とスリップ剤との相溶性が悪く、樹脂組成物に濁りが生じることがあることから、スリップ剤の添加量が制限されており、そのためスリップ剤添加による指紋跡拭き取り効果は必ずしも十分なものではなかった。
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、指紋跡拭き取り性および帯電防止性の両方に優れたコーティング用組成物、ハードコートフィルムおよび光記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、無機酸化物粒子に、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物が化学的に結合してなる反応性粒子(A)と、分子内にポリエチレンオキシド鎖および2個以上の重合性不飽和基を有し、かつ、芳香環および炭素数7個以上のアルキル鎖を有しない有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)と、分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物のモノマーまたはオリゴマーであって、前記有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)以外の有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(C)と、ジアルキルシロキサン骨格を有するシロキサン系化合物(D)とを含有し、前記有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)の含有量が20〜80質量%であり、下記式により導き出される、前記有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)中のポリエチレンオキシドの含有率が50%以上100%未満であることを特徴とするコーティング用組成物を提供する(請求項1)。
ポリエチレンオキシドの含有率=(CO部位の原子量の合計/有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)の分子量)×100
【0013】
上記発明(請求項1)に係るコーティング用組成物を硬化して得られるコート層においては、コーティング用組成物が、親水性を付与し得る第1の有機化合物(B)を含有することにより帯電防止性に優れたものとなり、撥水性・撥油性を付与し得るシロキサン系化合物(D)を含有することにより指紋跡拭き取り性に優れたものとなる。なお、第1の有機化合物(B)は、シロキサン系化合物(D)との相溶性に優れるため、シロキサン系化合物(D)の含有量を低く抑える必要はない。このように、上記発明(請求項1)によれば、指紋跡拭き取り性および帯電防止性の各性能を両立させることができる。
【0014】
上記発明(請求項1)に係るコーティング用組成物において、前記シロキサン系化合物(D)は、ジアルキルシロキサン骨格を有するシロキサン系化合物であって、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有するシロキサン系化合物(D1)であり、かつ、前記コーティング用組成物は、ジアルキルシロキサン骨格を有するシロキサン系化合物であって、分子内に重合性不飽和基を有しないシロキサン系化合物(D2)を実質的に含有しないことが好ましい(請求項2)。
【0015】
上記発明(請求項2)によれば、コート層において遊離したシロキサン系化合物を排除することができるため、指紋跡を形成する指の油脂成分とシロキサン系化合物との混合によって生じる白い拭き跡を防止することができる。
【0016】
上記発明(請求項1,2)に係るコーティング用組成物は、フッ素系化合物(E)をさらに含有してもよい(請求項3)。フッ素系化合物(E)によれば、上記シロキサン系化合物(D)による効果をさらに向上させることができる。
【0017】
上記発明(請求項1〜3)においては、ジアルキルシロキサン骨格を有するシロキサン系化合物(D)の含有量およびフッ素系化合物(E)の含有量の合計(固形分換算)が、2〜80質量%であることが好ましい(請求項4)。第1の有機化合物(B)は、シロキサン系化合物(D)やフッ素系化合物(E)との相溶性に優れるため、本コーティング用組成物は、それら撥水性・撥油性成分を上記範囲で含有することができ、それにより、非常に優れた指紋跡拭き取り性を発揮することができる。
【0018】
第2に本発明は、基材フィルムと、前記基材フィルムの少なくとも一方の面に、前記コーティング用組成物(請求項1〜4)を塗布し硬化させてなる、厚さ0.1〜20μmのハードコート層とを備えたことを特徴とするハードコートフィルムを提供する(請求項5)。
【0019】
上記発明(請求項5)に係るハードコートフィルムは、上記コーティング用組成物を使用しているため、指紋跡拭き取り性および帯電防止性の両方に優れている。
【0020】
上記発明(請求項5)において、本ハードコートフィルムを光学用フィルムとして使用する場合には、当該ハードコートフィルムの400nmの分光透過率が85%以上であることが好ましい(請求項6)。
【0021】
第3に本発明は、前記ハードコートフィルム(請求項5,6)を備えたことを特徴とする光記録媒体を提供する(請求項7)。
【0022】
上記発明(請求項8)に係る光記録媒体は、上記ハードコートフィルムを使用しているため、その表面において指紋跡拭き取り性および帯電防止性の両方に優れている。したがって、指紋跡や静電気により付着する塵埃に起因するエラーレートが低いものとなる。
【0023】
なお、本明細書における「光記録媒体」とは、光学的に情報を記録・再生することのできる媒体をいい、主として再生専用型、追記型または書換え型のディスク状の媒体(例えば、CD、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、LD、Blu−ray Disc、MO等;いわゆる光ディスク(光磁気ディスクを含む))が該当するが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、指紋跡拭き取り性および帯電防止性の各性能を両立させたコーティング用組成物、ハードコートフィルムおよび光記録媒体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔コーティング用組成物〕
本実施形態に係るコーティング用組成物は、無機酸化物粒子に、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物が化学的に結合してなる反応性粒子(A)と、分子内にポリエチレンオキシド鎖および2個以上の重合性不飽和基を有し、かつ、芳香環および炭素数7個以上のアルキル鎖を有しない有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(以下「第1の有機化合物」という場合がある。)(B)と、分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物のモノマーまたはオリゴマーであって、上記第1の有機化合物(B)以外のもの(以下「第2の有機化合物」という場合がある。)(C)と、ジアルキルシロキサン骨格を有するシロキサン系化合物(D)と、所望によりさらにフッ素系化合物(E)とを含有するものである。
【0026】
A.反応性粒子
反応性粒子(A)は、無機酸化物粒子に、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物が化学的に結合してなるものである。本実施形態に係るコーティング用組成物においては、反応性粒子(A)を含有することにより、本コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層の耐摩耗性を向上させることができるとともに、コーティング用組成物の硬化収縮率を小さくし、得られるハードコートフィルムの反りを抑制することができる。
【0027】
反応性粒子(A)としては、例えば、特開2000−273272号公報に記載の反応性粒子(A)を使用することができるが、以下に具体的に説明する。
【0028】
反応性粒子(A)の無機酸化物粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化セリウム等の粒子が挙げられ、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0029】
本コーティング用組成物を光学用フィルムや光学製品等のコーティング層(ハードコート層)の形成に使用する場合には、無機酸化物粒子として、光の吸収が少なく、光透過性の高いシリカ粒子を使用するのが好ましい。
【0030】
無機酸化物粒子の平均粒径は、0.001〜2μmであるのが好ましく、特に0.001〜0.2μmであるのが好ましく、さらに0.001〜0.1μmであるのが好ましい。無機酸化物粒子の平均粒径が2μmを超えると、本コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層の光透過性が低下したり、当該コート層の表面平滑性が悪くなるおそれがある。
【0031】
無機酸化物粒子の形状は、球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、不定形状等のいずれであってもよいが、特に球状であるのが好ましい。
【0032】
反応性粒子(A)においては、上記無機酸化物粒子に、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物(a)が化学的に結合している。有機化合物(a)が有する重合性不飽和基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基等が挙げられる。
【0033】
有機化合物(a)中における重合性不飽和基の個数は、分子内に1個以上であれば特に限定されないが、通常は1〜4個である。
【0034】
有機化合物(a)は、上記重合性不飽和基以外に、式[−X−C(=Y)−NH−](式中、Xは、NH、OまたはSであり、Yは、OまたはSである。)で表される基を含むのが好ましい。また、有機化合物(a)は、分子内にシラノール基を有する化合物、または加水分解によってシラノール基を生成する化合物であるのが好ましい。
【0035】
反応性粒子(A)は、上記無機酸化物粒子と有機化合物(a)とを反応させることにより製造することができる。上記無機酸化物粒子の表面には、有機化合物(a)と反応し得る成分が存在すると考えられており、粉末状の無機酸化物粒子または無機酸化物粒子の溶剤分散ゾルと有機化合物(a)とを、水分の存在下または不存在下で混合し、加熱、攪拌処理することにより、無機酸化物粒子の表面成分と有機化合物(a)とが反応し、反応性粒子(A)が得られる。
【0036】
コーティング用組成物中における反応性粒子(A)の含有量(固形分換算)は、5〜80質量%であるのが好ましく、特に10〜70質量%であるのが好ましい。反応性粒子(A)の含有量が5質量%未満では、得られるコート層の硬度が十分でない場合があり、反応性粒子(A)の含有量が80質量%を超えると、十分な帯電防止性が得られず、またコーティング用組成物の硬化性が悪くなる場合もある。
【0037】
B.第1の有機化合物
第1の有機化合物(B)は、分子内にポリエチレンオキシド鎖および2個以上の重合性不飽和基を有し、かつ、芳香環および炭素数7個以上のアルキル鎖を有しない有機化合物のモノマーまたはオリゴマーである。
【0038】
本実施形態に係るコーティング用組成物においては、第1の有機化合物(B)が有するポリエチレンオキシド鎖により親水性が向上するため、本コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層を帯電防止性に優れたものにすることができる。また、第1の有機化合物(B)は、シロキサン系化合物(D)やフッ素系化合物(E)との相溶性に優れるため、本コーティング用組成物は、それら撥水性・撥油性成分を十分に含有することができる。
【0039】
第1の有機化合物(B)は、分子内に芳香環および炭素数7個以上のアルキル鎖を有しないが、その理由は、芳香環および炭素数7個以上のアルキル鎖は親油性を示すため、それらの骨格が含まれていると、本コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層の親水性、そして帯電防止性が低下してしまうからである。
【0040】
第1の有機化合物(B)中のポリエチレンオキシド(以下「EO」という場合がある。)の含有率は、50%以上100%未満であり、好ましくは70〜95%である。EO含有率が50%未満では、第1の有機化合物による親水性、ひいては帯電防止性の向上が十分なものとならず、また、ハードコートフィルムを製造した場合には当該ハードコートフィルムのカール量が大きくなることがある。特に、EO含有率が70〜95%であると、硬度と帯電防止性の両方がより優れたコート層が得られる。
なお、EO含有率は、下記式により導き出される。
EO含有率=(CO部位の原子量の合計/第1の有機化合物の分子量)×100
【0041】
第1の有機化合物(B)が有する重合性不飽和基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、エポキシ基等が挙げられるが、これらの中でも、特にアクリロイル基およびメタクリロイル基が好ましい。
【0042】
第1の有機化合物(B)中における重合性不飽和基の個数は、分子内に2個以上であれば特に限定されないが、通常は2〜6個である。
【0043】
また、第1の有機化合物(B)は、非イオン性のものであることが好ましく、それにより、シロキサン系化合物(D)やフッ素系化合物(E)との相溶性がより高くなる。
【0044】
第1の有機化合物(B)としては、EO含有率が50%以上の多官能(メタ)アクリレートのモノマーまたはオリゴマーであるのが好ましい。そのような第1の有機化合物としては、例えば、EO含有率が50%以上の、EO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等を使用することができる。これらの多官能(メタ)アクリレートは、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0045】
なお、第1の有機化合物(B)をオリゴマーとして使用する場合、その重量平均分子量は約10000程度以下とするのが好ましい。重量平均分子量が約10000を超えると、コート層の硬度が十分でなくなる場合がある。
【0046】
コーティング用組成物中における第1の有機化合物(B)の含有量(固形分換算)は、20〜80質量%であり、好ましくは30〜70質量%である。第1の有機化合物(B)の含有量が20質量%未満では、本コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層の帯電防止性が十分でなくなり、第1の有機化合物(B)の含有量が80質量%を超えると、得られるコート層の硬度が十分でなくなる。
【0047】
C.第2の有機化合物
第2の有機化合物(C)は、分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物のモノマーまたはオリゴマーであって、上記第1の有機化合物(B)以外のものである。
【0048】
本実施形態に係るコーティング用組成物は、第2の有機化合物(C)を含有することにより、本コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層に傷防止性能を付与し、当該コート層の耐擦傷性を向上させることができる。
【0049】
第2の有機化合物(C)が有する重合性不飽和基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、エポキシ基等が挙げられるが、これらの中でも、特にアクリロイル基およびメタクリロイル基が好ましい。すなわち、第2の有機化合物(C)は、(メタ)アクリル酸エステルのモノマーまたはオリゴマーであるのが好ましい。
【0050】
第2の有機化合物(C)中における重合性不飽和基の個数は、分子内に2個以上であれば特に限定されないが、通常は2〜6個である。
【0051】
第2の有機化合物(C)は、特に限定されるものではないが、第1の有機化合物(B)が本コーティング用組成物に付与し得る親水性を阻害しないためにも、分子中に芳香環および炭素数7個以上のアルキル鎖を有しないことが好ましい。
【0052】
第2の有機化合物(C)としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートを使用することができる。これらの多官能アクリレートは、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0053】
なお、第2の有機化合物(C)をオリゴマーとして使用する場合、その重量平均分子量は約1000程度以下とするのが好ましい。重量平均分子量が約1000を超えると、コート層の硬化密度が低下し、十分な表面硬度が得られない場合がある。
【0054】
コーティング用組成物中における第2の有機化合物(C)の含有量(固形分換算)は、10〜70質量%であるのが好ましく、特に15〜50質量%であるのが好ましい。第2の有機化合物(C)の含有量が10質量%未満では、本コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層の傷防止性能が十分でない場合があり、第2の有機化合物(C)の含有量が70質量%を超えると、相対的に他の成分の含有量が少なくなり、帯電防止性等の効果が十分に得られない場合がある。
【0055】
D.シロキサン系化合物
シロキサン系化合物(D)は、ジアルキルシロキサン骨格を有する化合物である。かかるシロキサン系化合物(D)は、本コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層に撥水性・撥油性を付与することができるため、本実施形態に係るコーティング用組成物においては、シロキサン系化合物(D)を含有することにより、得られるコート層を指紋跡拭き取り性に優れたものにすることができる。
【0056】
シロキサン系化合物(D)は、ジアルキルシロキサン骨格を有するシロキサン系化合物であって、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有するシロキサン系化合物(D1)であることが好ましく、かつ、本実施形態に係るコーティング用組成物は、ジアルキルシロキサン骨格を有するシロキサン系化合物であって、分子内に重合性不飽和基を有しないシロキサン系化合物(D2)を実質的に含有しないことが好ましい。
【0057】
シロキサン系化合物(D2)は、コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層において遊離した状態で存在するが、コート層の表面に指紋跡を形成する指の油脂成分が付着すると、その油脂成分とシロキサン系化合物(D2)との混合物が白くなり、指紋跡を拭き取ったときに、コート層表面に白い跡が残ることがあるからである。ただし、コート層の表面に滑り性が要求される場合には、コーティング用組成物はシロキサン系化合物(D2)を含有してもよい。
【0058】
ここで、シロキサン系化合物(D)の骨格に含まれるアルキルとしては、メチル、エチル、プロピル、ブチル等の炭素数1〜4のものが好ましい。シロキサン系化合物(D)の骨格には、フェニル、メチルフェニル等のアリールがさらに含まれていてもよいし、異なる種類のアルキルまたはアリールが同じ骨格に含まれていてもよいが、特に、1つ以上のメチルが含まれていることが好ましい。メチルが含まれると、優れた撥油性が発揮される。
【0059】
なお、シロキサン系化合物(D)には、分子中にフッ素原子を有するものも含まれるものとする。
【0060】
シロキサン系化合物(D1)が有する重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基等が挙げられる。シロキサン系化合物(D1)の具体例としては、ジアルキルシロキサンでは、(メタ)アクリロイル基末端ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン社製,BYK−UV3570;チッソ社製,サイラプレーンFM−0711,サイラプレーンFM−7711)、ビニル基末端ポリジメチルシロキサン(チッソ社製,サイラプレーンFM−2231)、エポキシ基末端ポリジメチルシロキサン(チッソ社製,サイラプレーンFM−0511,サイラプレーンFM−5511)等が挙げられる。
【0061】
シロキサン系化合物(D2)としては、ポリアルキルシロキサンの他、ポリアルキルシロキサンの両末端、片末端または側鎖のアルキル基を他の官能基で置換した変性ポリアルキルシロキサンが挙げられる。ポリアルキルシロキサンまたは変性ポリアルキルシロキサンは、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0062】
上記変性ポリアルキルシロキサンの具体例としては、ポリジメチルシロキサン(チッソ社製,PS040;東レ・ダウ・コーニング・シリコーン社製,SH28PA)、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン社製,BYK−300)、片末端シラノール変性ポリジメチルシロキサン、両末端シラノール変性ポリジメチルシロキサン(チッソ社製,PS340.5/PS−341)、側鎖アミノ変性ポリジメチルシロキサン(信越シリコーン社製,KF−859/KF−865)、側鎖カルビノール変性ポリシロキサン(東レシリコーン社製,SF8428)、側鎖カルボキシ変性ポリジメチルシロキサン(信越シリコーン社製,X−22−3710)、両末端カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン(東レシリコーン社製,BY16−750)等が挙げられる。
【0063】
シロキサン系化合物(D)の重量平均分子量は、300〜200000であるのが好ましく、特に500〜20000であるのが好ましい。
【0064】
コーティング用組成物中におけるシロキサン系化合物(D)の含有量(固形分換算)は、0.1〜80質量%であるのが好ましく、特に2〜80質量%であるのが好ましく、さらに2〜50質量%であるのが好ましい。シロキサン系化合物(D)の含有量が0.1質量%未満では、本コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層の指紋跡拭き取り性が十分でない場合がある。また、特にシロキサン系化合物(D)の含有量が2質量%以上であると、得られるコート層の指紋跡拭き取り性が非常に優れたものとなる。一方、シロキサン系化合物(D)の含有量が80質量%を超えると、十分な帯電防止性が得られない。
【0065】
E.フッ素系化合物
フッ素系化合物(E)は、本コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層の接触角を著しく大きくすることができるため、本実施形態に係るコーティング用組成物においては、フッ素系化合物(E)を含有することにより、得られるコート層をさらに指紋跡拭き取り性に優れたものにすることができる。
【0066】
フッ素系化合物(E)は、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有するフッ素系化合物(E1)であることが好ましく、かつ、本実施形態に係るコーティング用組成物は、分子内に重合性不飽和基を有しないフッ素系化合物(E2)を実質的に含有しないことが好ましい。重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基等が挙げられる。
【0067】
フッ素系化合物(E2)は、コーティング用組成物を硬化させて得られるコート層において遊離した状態で存在するが、コート層の表面に指紋の油脂成分が付着すると、その油脂成分とフッ素系化合物(E2)との混合物が白くなり、指紋跡を拭き取ったときに、コート層表面に白い跡が残ることがあるからである。ただし、コート層の表面に滑り性が要求される場合には、コーティング用組成物はフッ素系化合物(E2)を含有してもよい。
【0068】
コーティング用組成物中におけるフッ素系化合物(E)の含有量は、シロキサン系化合物(D)の含有量との合計(固形分換算)で、前述した範囲内、すなわち0.1〜80質量%であるのが好ましく、特に2〜80質量%であるのが好ましく、さらに2〜50質量%であるのが好ましい。
【0069】
F.第三成分
本コーティング用組成物は、上記(A)〜(E)以外の成分を含有してもよい。そのような第三成分としては、例えば、重合開始剤、増感剤、溶剤、反応性粒子(A)以外の粒子、各種添加剤等が挙げられる。
【0070】
重合開始剤としては、電離放射線重合開始剤を用いるのが好ましく、電離放射線として紫外線を使用する場合には、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、(2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメート、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−プロペニル)フェニル]プロパノン}等の光重合開始剤を用いるのが好ましい。
【0071】
コーティング用組成物中における重合開始剤の含有量(固形分換算)は、0.1〜20質量%であるのが好ましく、特に0.5〜10質量%であるのが好ましい。
【0072】
溶剤としては、塗工性の改良、粘度調整、固形分濃度の調整等のために使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソロブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソロブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソロブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類などを使用することができる。
【0073】
反応性粒子(A)以外の粒子としては、例えば、反応性粒子(A)の原料としての無機酸化物粒子を使用することができる。
【0074】
各種添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、老化防止剤、熱重合禁止剤、着色剤、レベリング剤、界面活性剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、無機系充填材、有機系充填材、フィラー、濡れ性改良剤、塗面改良剤等が挙げられる。
【0075】
以上説明したコーティング用組成物は、所望の基材に対して塗布し、硬化させることにより、基材の表面にハードコート層を形成することができる。コーティング対象の基材としては、例えば、プラスチック製品、金属製品、ガラス製品、石製品等が挙げられる。
【0076】
本コーティング用組成物の塗布は、常法によって行えばよく、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法によって行えばよい。コーティング用組成物を塗布したら、塗膜を50〜120℃程度で乾燥させるのが好ましい。
【0077】
本コーティング用組成物の硬化は、本コーティング用組成物の塗膜に対して電離放射線を照射することによって行うことができる。電離放射線としては、通常、紫外線、電子線等が用いられる。電離放射線の照射量は、電離放射線の種類によって異なるが、例えば紫外線の場合には、光量で100〜500mJ/cm程度が好ましく、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
【0078】
硬化後のハードコート層の厚さは、0.1〜20μmであるのが好ましく、特に1〜10μmであるのが好ましい。また、ハードコート層の効果をより向上させるには、ハードコート層の厚さは特に2〜10μmであるのが好ましい。ハードコート層の厚さが0.1μm未満では、所望の表面硬度が得られ難く、ハードコート層の厚さが20μmを超えると、ハードコート層にクラックが発生するおそれがある。ハードコート層の厚さが10μmを超えると、プラスチックフィルムにハードコート層を設けた場合に、当該プラスチックフィルムの反りが大きくなるおそれがある。
【0079】
また、ハードコート層表面のn−ドデカンでの接触角は、優れた指紋跡拭き取り性を発揮するためにも、20°以上であることが好ましく、特に25°以上であることが好ましい。
【0080】
上記ハードコート層は、反応性粒子(A)および第2の有機化合物(C)の作用によって、硬度が高いものとなり、優れた傷防止性能・耐擦傷性を発揮する。また、第1の有機化合物(B)の作用によって、優れた帯電防止性、そしてシロキサン系化合物(D)の作用によって、優れた指紋跡拭き取り性を発揮する。さらに、コーティング対象がプラスチックフィルムであっても、主に反応性粒子(A)の硬化収縮低減作用により、プラスチックフィルムの反りは抑制される。
【0081】
〔ハードコートフィルム〕
本実施形態では、光ディスクの情報記録層を保護するためのハードコートフィルムを一例に挙げて説明するが、本発明のハードコートフィルムは、かかる用途に限定されるものではない。
【0082】
本実施形態に係るハードコートフィルム1は、図1に示すように、基材フィルム11と、基材フィルム11の一方の面に形成されたハードコート層12とからなる。
【0083】
基材フィルム11は、情報の読出または書込のための光の波長域に対し十分な光透過性を有するとともに、光ディスクを容易に製造するために、剛性や柔軟性が適度にあり、なおかつ、光ディスクの保管のために、温度に対して安定なものであるのが好ましい。このような基材フィルム11としては、ポリカーボネート、シクロオレフィン系ポリマーまたはポリメチルメタクリレートからなる光透過性フィルムが好ましく、特に、後述するハードコート層12との密着性の高いポリカーボネートからなるフィルムが好ましい。なお、シクロオレフィン系ポリマーからなるフィルムを使用する場合には、ハードコート層12との密着性を高めるために、ハードコート層12を形成する面に対して、コロナ放電処理を施すのが好ましい。
【0084】
基材フィルム11の厚さは、光ディスクの種類や光ディスクのその他の構成部位の厚みに応じて決定されるが、通常は10〜300μm程度であり、好ましくは20〜150μm程度であり、さらに好ましくは25〜100μm程度である。
【0085】
ハードコート層12は、前述したコーティング用組成物、好ましくは反応性粒子(A)の無機酸化物粒子がシリカ粒子であるコーティング用組成物を塗布し、硬化させることにより形成される。コーティング用組成物の塗布方法および硬化方法は前述した通りである。
【0086】
ハードコートフィルム1の表面抵抗値は、ハードコートフィルム1が使用される用途にて要求される帯電防止性により異なるが、23℃の温度、50%の湿度下で、1×1015Ω/□以下であることが好ましく、特に1×1014Ω/□以下であることが好ましい。
【0087】
ハードコートフィルム1の400nmの分光透過率は85%以上であることが好ましく、特に88%以上であることが好ましい。ハードコートフィルム1は、上記透過率を有することにより、光ディスク用途として好適なものとなる。
【0088】
本実施形態に係るハードコートフィルム1は、前述したコーティング用組成物を硬化させてなるハードコート層12を備えているため、優れた傷防止性能・耐擦傷性を有するとともに、指紋跡拭き取り性および帯電防止性の両方に優れており、さらには反りも抑制されている。
【0089】
なお、本実施形態に係るハードコートフィルム1は、基材フィルム11とハードコート層12とからなるものであるが、基材フィルム11のハードコート層12の反対面には、接着剤層が形成されていてもよいし、さらには接着剤層に剥離シートが積層されていてもよい。
【0090】
〔光ディスク〕
本実施形態に係る光ディスク2は、図2に示すように、凹凸パターン(ピットまたはグルーブ/ランド)を有する光ディスク基板21と、光ディスク基板21の凹凸面上に形成された情報記録層22と、情報記録層22上に積層された接着剤層23と、接着剤層23上に積層された、基材フィルム11およびハードコート層12からなるハードコートフィルム1(上記実施形態に係るハードコートフィルム1)とからなる。
【0091】
このような光ディスク2の製造においては、ハードコートフィルム1は接着剤層23を介して光ディスク2の情報記録層22に接着されるが、ハードコートフィルム1の反りは抑制されているため、ハードコートフィルム1の接着作業は容易に行うことができ、また、ハードコートフィルム1の情報記録層22に対する密着性は高いものとなる。さらには、得られる光ディスク2において、ハードコートフィルム1に起因する反りも抑制される。
【0092】
ハードコートフィルム1と情報記録層22との接着方法としては、ハードコートフィルム1の裏面(ハードコート層12が存在しない側の面。以下同じ。)または情報記録層22に、電離放射線硬化性接着剤等の接着剤(粘着剤の概念を含む。以下同じ。)を塗工して、ハードコートフィルム1と情報記録層22とを接着する方法や、剥離シートを有するアクリル系、ウレタン系またはシリコーン系の粘着剤からなる粘着剤層(粘着シート)をハードコートフィルム1の裏面または情報記録層22に貼り付け、剥離シートを剥離して露出した粘着剤層を介して、ハードコートフィルム1と情報記録層22とを接着する方法や、上記ハードコートフィルム1の裏面にあらかじめ接着剤層および剥離シートを積層しておき、剥離シートを剥離して露出した接着剤層を介して、ハードコートフィルム1と情報記録層22とを接着する方法を採用することができる。
【0093】
本実施形態に係る光ディスク2は、ハードコートフィルム1のハードコート層12によって十分な表面硬度を有するため傷が付き難く、また指紋跡拭き取り性および帯電防止性の両方に優れるため表面をクリーンに維持し易く、さらには反りが抑制されている。したがって、本実施形態に係る光ディスク2は、傷、指紋跡、静電気により付着する塵埃、または反りに起因するエラーレートが低いものとなる。
【0094】
なお、本実施形態に係る光ディスク2は片面1層式のものであるが、片面2層式のものであってもよく、その形態は特に限定されるものではない。
【実施例】
【0095】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0096】
〔実施例1〕
反応性粒子(A)(無機酸化物粒子としてシリカ微粒子を使用)および第2の有機化合物(C)の混合物としてのハードコート剤(JSR社製,デソライトZ7524,重合開始剤含有,固形分濃度:75質量%)53.3質量部と、第1の有機化合物(B)としてのEO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業社製,NKエステル ATM−35E,分子量:1892,固形分濃度:100質量%,4官能,EO含有率:81.4%)60質量部と、シロキサン系化合物(D1)としての(メタ)アクリロイル基末端ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン社製,BYK−UV3570,固形分濃度:70質量%)6.0質量部とを混合し、さらに固形分濃度が35質量%になるように希釈溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて、これをコーティング用組成物とした(D1の含有量(固形分換算):4.0質量%)。なお、使用したハードコート剤(デソライトZ7524)中の固形分の質量比は、反応性粒子(A):有機化合物(C)=39:61(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法による測定値,測定装置:東ソー社製HLC−8020,カラム:ガードナーカラムHXL−H,TSKゲルG2500HXL,TSKゲルG2000HXL,TSKゲルG1000HXL)であった。
【0097】
得られたコーティング用組成物を、基材フィルムとしてのポリカーボネートフィルム(帝人化成社製,ピュアエースC110−78,厚さ:78μm)の一方の面に、バーコーター#8によって乾燥膜厚が2μmになるように塗布し、70℃で1分間乾燥させた後、窒素雰囲気下で紫外線を照射し(照射条件:照度310mW/cm2,光量300mJ/cm2)、ハードコートフィルムを得た。
【0098】
〔実施例2〕
第1の有機化合物(B)として、EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートの替わりにポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製,NKエステル A−400,分子量:508,固形分濃度:100質量%,2官能,EO含有率:78.0%)60質量部を使用する以外、実施例1と同様にしてコーティング用組成物を調製し(D1の含有量(固形分換算):4.0質量%)、得られたコーティング用組成物を用いて、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0099】
〔実施例3〕
シロキサン系化合物(D1)の替わりに、シロキサン系化合物(D2)としてのポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(ビックケミー・ジャパン社製,BYK−300,固形分濃度:52質量%)8.0質量部を使用する以外、実施例1と同様にしてコーティング用組成物を調製し(D2の含有量(固形分換算):4.0質量%)、得られたコーティング用組成物を用いて、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0100】
〔実施例4〕
シロキサン系化合物(D1)の含有量を4.0質量部とし、さらにフッ素系化合物(E2)としてパーフルオロアクリル基含有オリゴマー(大日本インキ化学工業社製,ディフェンサMCF−350SF,固形分濃度:100質量%)3.0質量部を加える以外、実施例1と同様にしてコーティング用組成物を調製し(D1+E2の含有量(固形分換算):5.5質量%)、得られたコーティング用組成物を用いて、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0101】
〔比較例1〕
第1の有機化合物(B)として、EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートの替わりにトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業社製,NKエステル A−TMPT−6EO,固形分濃度:100質量%,3官能,EO含有率:47.1%)60質量部を使用する以外、実施例1と同様にしてコーティング用組成物を調製し(D1の含有量(固形分換算):4.0質量%)、得られたコーティング用組成物を用いて、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0102】
〔比較例2〕
第1の有機化合物(B)として、EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレートの替わりに芳香環を有するEO変性ビスフェノールAジアクリレート(新中村化学工業社製,NKエステル A−BPE−20,固形分濃度:100質量%,2官能,EO含有率:72.4%)60質量部を使用する以外、実施例1と同様にしてコーティング用組成物を調製し(D1の含有量(固形分換算):4.0質量%)、得られたコーティング用組成物を用いて、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0103】
〔比較例3〕
第1の有機化合物(B)としてのEO変性リン酸メタクリレート(大八化学工業社製,MR−200,EO含有率:21.0〜27.3%)40質量部と、第2の有機化合物(C)としてのN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート(共栄社油脂化学工業社製,DE)20質量部およびペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社油脂化学工業社製,PE−4A)35質量部と、シロキサン系化合物(D2)としてのポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン(ビックケミー・ジャパン社製,BYK325)0.1質量部と、光重合開始剤(メルク社製,ダロキュア1173)5質量部とを混合し、これをコーティング用組成物とした。得られたコーティング用組成物を用いて、実施例1と同様にしてハードコートフィルムを作製した。
【0104】
〔試験例〕
1.指紋跡拭き取り性の試験
実施例または比較例にて作製したハードコートフィルムの表面に指紋跡を付け、ティッシュペーパーで5往復して当該指紋跡を拭き取るようにした。その後のハードコートフィルムの表面状態を、目視により下記の判断基準で評価した。結果を表1に示す。
◎:拭き取り跡がない
○:微かに拭き取り跡あり
×:拭き取り跡あり
【0105】
2.帯電防止性の試験(表面抵抗値の測定)
実施例または比較例にて作製したハードコートフィルムを100mm×100mmの大きさに切断し、得られたサンプルを23℃の温度、50%の湿度下に1時間放置した。その後、デジタルエレクトロメータ(アドバンテスト社製,R8252)を使用して、JIS K6911に準じて表面抵抗値(Ω/□)を測定した。結果を表1に示す。
【0106】
3.400nm分光透過率の測定
実施例または比較例にて作製したハードコートフィルムの400nm分光透過率を、分光光度計(島津製作所社製,UV−3101PC)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0107】
4.全光線透過率およびヘイズ値の測定
実施例または比較例にて作製したハードコートフィルムの全光線透過率およびヘイズ値を、ヘイズメーター(日本電色工業社製,NDH2000)を用いて、JIS K7105に準じて測定した。結果を表1に示す。
【0108】
5.テーバー摩耗量の測定
実施例または比較例にて作製したハードコートフィルムのハードコート層のテーバー摩耗量を、250g荷重(摩耗輪:CS−10F)にて、JIS K7204に準じて測定した。結果を表1に示す。
【0109】
6.接触角の測定
実施例または比較例にて作製したハードコートフィルムの表面にn−ドデカンを滴下し、表面接触角計(協和界面科学社製,CA−D型)を使用して、ハードコート層表面の接触角を測定した。結果を表1に示す。
【0110】
7.油性ペンはじき性の試験
実施例または比較例にて作製したハードコートフィルムの表面に、油性ペン(ゼブラ社製,マッキー極細・黒)にて線を引き、その線の状態を目視により下記の判断基準で評価した。結果を表1に示す。
○:はじく
×:殆どはじかない
【0111】
8.カール量の測定
実施例または比較例にて作製したハードコートフィルムを100mm×100mmの正方形にカットし、これをサンプルとした。このサンプルを、ハードコート層側を上にして水平な台の上に置き、サンプルの各角(4点)の台からの浮き量を測定し、各角の浮き量を合計したものをカール量とした。結果を表1に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
表1から明らかなように、実施例にて作製したハードコートフィルムは、指紋拭き取り性に優れるとともに、表面抵抗値が小さく、したがって帯電防止性にも優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明のコーティング用組成物は、所望の基材、特に基材フィルムにハードコート層を形成するのに好適であり、本発明のハードコートフィルムは、光学製品、特に光ディスクの保護フィルムとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の一実施形態に係るハードコートフィルムの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る光ディスクの断面図である。
【符号の説明】
【0116】
1…ハードコートフィルム
11…基材フィルム
12…ハードコート層
2…光ディスク
21…光ディスク基板
22…情報記録層
23…接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物粒子に、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物が化学的に結合してなる反応性粒子(A)と、
分子内にポリエチレンオキシド鎖および2個以上の重合性不飽和基を有し、かつ、芳香環および炭素数7個以上のアルキル鎖を有しない有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)と、
分子内に2個以上の重合性不飽和基を有する有機化合物のモノマーまたはオリゴマーであって、前記有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)以外の有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(C)と、
ジアルキルシロキサン骨格を有するシロキサン系化合物(D)とを含有し、
前記有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)の含有量が20〜80質量%であり、
下記式により導き出される、前記有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)中のポリエチレンオキシドの含有率が50%以上100%未満である
ことを特徴とするコーティング用組成物。
ポリエチレンオキシドの含有率=(CO部位の原子量の合計/有機化合物のモノマーまたはオリゴマー(B)の分子量)×100
【請求項2】
前記シロキサン系化合物(D)は、ジアルキルシロキサン骨格を有するシロキサン系化合物であって、分子内に1個以上の重合性不飽和基を有するシロキサン系化合物(D1)であり、かつ、
前記コーティング用組成物は、ジアルキルシロキサン骨格を有するシロキサン系化合物であって、分子内に重合性不飽和基を有しないシロキサン系化合物(D2)を実質的に含有しない
ことを特徴とする請求項1に記載のコーティング用組成物。
【請求項3】
フッ素系化合物(E)をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング用組成物。
【請求項4】
ジアルキルシロキサン骨格を有するシロキサン系化合物(D)の含有量およびフッ素系化合物(E)の含有量の合計が、2〜80質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング用組成物。
【請求項5】
基材フィルムと、
前記基材フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1〜4のいずれかに記載のコーティング用組成物を塗布し硬化させてなる、厚さ0.1〜20μmのハードコート層と
を備えたことを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項6】
400nmの分光透過率が85%以上であることを特徴とする請求項5に記載のハードコートフィルム。
【請求項7】
請求項5または6に記載のハードコートフィルムを備えたことを特徴とする光記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−188557(P2006−188557A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−382026(P2004−382026)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】