説明

コーティング用組成物および複合構造

【課題】屈折率1.52以上の塗膜において、その透明性および各種耐久性(特に耐候性)を飛躍的に向上させることを目的とする。同時に、塗液の室温保存でのポットライフを3週間以上と長くすることを可能とする。
【解決手段】(A)酸化錫、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから構成される複合酸化物微粒子および(B)特定の有機ケイ素化合物に、硬化触媒として、(C)Fe、Al、Sn若しくはTiを中心金属とするアセチルアセトネート、過塩素酸類、カルボン酸またはその無水物、およびこれらの混合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物、および(D)Li、CuまたはMnを中心金属とするアセチルアセトネートを併用添加したコーティング用組成物を用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製レンズ表面に、耐摩耗性、耐薬品性、耐温水性、耐熱性、耐候性等の耐久性および染色性に優れた透明被膜を形成するためのコーティング用組成物に関する。さらに本発明は、その透明被膜上に、無機物質からなる反射防止膜(以下、「無機蒸着膜」とも呼ぶ)を設けてなる複合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製レンズ、特にジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR−39)樹脂レンズは、ガラスレンズと比較し、安全性、易加工性、ファッション性などにおいて優れている。さらに近年、反射防止技術およびハードコート技術の開発により、これら合成樹脂製レンズが急速に普及してきた。
【0003】
ハードコート組成物としては、シリコン系のハードコート被膜をプラスチックレンズ表面に設ける方法が一般的に行われている。その硬化触媒として、特許文献1、2等にAl(III)中心金属原子とするアセチルアセトネートを用いるハードコート組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、アミン化合物、多価カルボン酸、数々のアセチルアセトン金属塩化合物、フェノール化合物、三フッ化ホウ素含有化合物等を添加するハードコート組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、過酸素酸アンモニウムを用いるハードコート組成物が、特許文献5には、過酸素酸マグネシウムを用いるハードコート組成物が開示されている。
【0006】
また、高屈折率のハードコート被膜としては、特許文献6、7には高屈折率を有するAl、Ti、Zr、Sn、Sbの酸化物微粒子のコロイド状分散体を用いたコーティング技術が開示されている。また、特許文献8では、二酸化チタンと二酸化セリウムの複合系ゾルの製造方法が開示されており、特許文献9ではTiとCeの複合酸化物微粒子、特許文献10ではTi、CeおよびSiの複合酸化物を有機ケイ素化合物で処理した微粒子をコーティング組成物に用いる技術が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特公昭60−111727号公報
【特許文献2】特公昭60−30350号公報
【特許文献3】特公昭61−33868号公報
【特許文献4】特公昭62−9266号公報
【特許文献5】特公平4−59601号公報
【特許文献6】特公昭61−54331号公報
【特許文献7】特公昭63−37142号公報
【特許文献8】特開平1−301517号公報
【特許文献9】特開平2−264902号公報
【特許文献10】特開平3−68901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述の硬化触媒を用いた時のハードコート組成物は、塗膜の基本特性等には問題はないが、組成物の液寿命を延ばすためには、pHの調整が必要になるなど塗液管理が繁雑化する点で必ずしも満足のいくものではない。また、これらハードコート組成物を塗布した製品の寿命をさらに延ばすためには、耐候性に関してレベルアップを図りたいのが実情であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、これらの問題点を解決するため鋭意研究を行ったところ、硬化触媒として、Fe、Al、SnあるいはTiのアセチルアセトネートまたは、過塩素酸類またはカルボン酸あるいはその無水物とLi、CuあるいはMnのアセチルアセトネートとを併用することにより、優れた生産性および基本特性の双方を調和的に発現させることができることを見出した。同時に、数ある複合酸化物微粒子の中でも、特に酸化錫、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムを特定の重量%比で構成させた複合酸化物微粒子を主成分とする組成物によれば、耐候性の大幅なレベルアップが可能となることをも見出した。
【0010】
また本発明者らは、上記成分に加え、重合可能な反応基を有するシラン化合物および多官能性エポキシ化合物を含有させることにより、熱硬化で得られるコーティング被膜の透明性、硬化性を向上させ、さらに染色性、無機蒸着膜との密着性(耐久性)においても優れた性能を発現させると同時に塗液の寿命を延ばすことができることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち本発明のコーティング用組成物は、下記の成分(A)および成分(B)を主成分とし、かつ、硬化触媒として、下記の成分(C)および成分(D)を含有することを特徴とする。
【0012】
(A)酸化錫、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから構成される複合酸化物微粒子。
【0013】
(B)一般式
【化3】

で表される有機ケイ素化合物(式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解性基であり、nは0または1である。)。
【0014】
(C)(イ)Fe(III)、Al(III)、Sn(IV)またはTi(IV)を中心金属とするアセチルアセトネート、
(ロ)過塩素酸マグネシウムまたは過塩素酸アンモニウム、
(ハ)脂肪族の飽和若しくは不飽和カルボン酸または芳香族カルボン酸またはその無水物、および
これらの混合物、からなる群から選ばれる1種以上の化合物。
【0015】
(D)Li(I)、Cu(II)、Mn(II)またはMn(III)を中心金属原子とするアセチルアセトネート。
また本発明は、上記成分(A)の複合酸化物微粒子の重量%比が、酸化錫60〜85、酸化チタン10〜30、酸化ジルコニウム1〜10であることを特徴とするコーティング用組成物である。
コーティング用組成物を構成する主成分としての重合性の硬化性成分としては、従来公知の成分が使用され得る。
特に、本発明においては、さらに下記成分(E)および成分(F)を含有するコーティング用組成物およびそのコーティング用組成物からなる被膜表面に無機物質からなる反射防止膜を設けてなる複合構造として構成した場合にそのすぐれた効果を発揮する。
【0016】
(E)下記式で表される有機ケイ素化合物。
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、R3およびR4は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X2およびX3は加水分解性基であり、Yはカーボネート基またはエポキシ基を含有する有機基であり、kおよびmは0または1である。)
【0019】
(F)多官能性エポキシ化合物。
本発明において、硬化触媒として成分(C)と成分(D)を併用することは、極めて重要な役割を果たす。すなわち、成分(C)単独で用いても硬化触媒としての効果は充分にある。しかしながら、これらの触媒と成分(D)とを併用することにより、塗膜の各種耐久性および生産性が飛躍的に向上する。特に、成分(D)の併用添加は、組成物(塗液)のポットライフを向上させる上で優れている。
【0020】
この成分(D)の中においても、リチウムおよびマンガンのアセチルアセトネートがその効果の発現において特に好ましい。
【0021】
また、成分(A)の酸化錫、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから構成される複合酸化物微粒子は、分散媒たとえば水、アルコール系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散させたものが挙げられる。これらのコーティング液中での分散安定性を高めるためにこれらの微粒子表面を有機ケイ素化合物またはアミン系化合物および/またはカルボン酸で処理したものを使用することも可能である。この際用いられる有機ケイ素化合物としては、単官能性シラン、あるいは二官能性シラン、三官能性シラン、四官能性シラン等がある。処理に際しては加水分解性基を未処理で行ってもあるいは加水分解して行ってもよい。また処理後は、加水分解性基が微粒子の−OH基と反応した状態が好ましいが、一部残存した状態でも安定性には何ら問題がない。またアミン系化合物としてはアンモニウムまたはエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンがある。これら有機ケイ素化合物とアミン化合物の添加量は微粒子の重量に対して1から15%程度の範囲内で加えることが好ましい。いずれも粒子径は約1〜300nmが好適であり、本発明のコーティング組成物への適用種及び使用量は目的とする被膜性能により決定されるものであるが、使用量は固形分の10〜50重量%であることが望ましい。すなわち、10重量%未満では、無機蒸着膜との密着性が不充分となるか、もしくは、塗膜の耐擦傷性が不充分となる傾向が増大する。また50重量%を超えると、塗膜にクラックが生じる傾向がある。また、染色性も不充分となる。
【0022】
また、成分(B)において、R1は重合可能な反応基を有する有機基であり、好ましくは、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基等の重合可能な反応基を有するシラン化合物であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であるが、その好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基等が挙げられる。またX1は加水分解可能な官能基であり、その好ましい具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
このシラン化合物の好ましい具体例として、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルジアルコキシメチルシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン等がある。
【0024】
この成分(B)は、2種以上混合して用いてもかまわない。
【0025】
また、加水分解を行ってから用いるか、もしくは硬化した後の被膜に酸処理を行うか、どちらかの方法を取った方がより有効である。
【0026】
成分(B)の使用量は、全組成物の20〜60重量%であることが望ましい。すなわち、20重量%未満であると、無機蒸着膜との密着性が不充分となりやすい。また60重量%を越えると、硬化被膜にクラックを生じさせる原因となり好ましくない。
【0027】
次に、成分(E)については、前記一般式(E)において、R3、R4は炭素数1〜6の炭化水素基であるが、その好ましい具体的例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基等が挙げられる。また、X2、X3は、加水分解可能な官能基であり、好ましい具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。また、Yはカーボネート基またはエポキシ基を含有する有機基であり、好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
【化10】

【0034】
【化11】

【0035】
【化12】

【0036】
【化13】

【0037】
【化14】

【0038】
これらのジシラン化合物は、従来公知の種々方法で合成することができる。
【0039】
例えば、ジアリルカーボネートとトリクロロシラン等を付加反応させ、その後アルコキシ化させれば得ることができる。または、両末端に付加可能な置換機を持ち、更にその内部にエポキシ化可能な官能基を含む化合物に、トリクロロシラン等を付加させ、その後アルコキシ化させれば得ることができる。
【0040】
この成分(E)は、加水分解を行ってから用いるか、もしくは硬化した後の被膜に酸処理を行うか、どちらかの方法を取った方がより有効である。
【0041】
使用量は固形分の3〜40重量%であることが望ましい。すなわち、3重量%未満では、染色性と無機蒸着膜との各種耐久性の双方を同時に満足させることができない。また40重量%を超えると塗膜の耐水性が悪くなる。また、塗液のポットライフも短くなる。
【0042】
上述した成分(E)を添加することは、組成物の硬化速度を増大させて歩留まりを向上させる上で好ましい。とくに、硬化速度が増大して硬化時間が短くなることは、塗膜形成工程における塗布表面へのゴミや不純物の付着の可能性を少なくするので、優れている。さらに、この成分(E)は、染色性を向上させる作用も有しているので、後述する成分(F)の含有量を少なくすることができる点においても有利である。さらに、成分(E)は塗工する対象物の表面に存在する傷などの不良箇所の存在を目立たなくする上でもすぐれた効果を有している。
【0043】
成分(F)の多官能性エポキシ化合物は、塗料、接着剤、注型用などに広く実用されているもので、例えば過酸化法で合成されるポリオレフィン系エポキシ樹脂、シクロペンタジエンオキシドやシクロヘキセンオキシドあるいはヘキサヒドロフタル酸とエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエステルなどの脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールAやカテコール、レゾシノールなどの多価フェノールあるいは(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ソルビトールなどの多価アルコールとエピクロルヒドリンから得られるポリグリシジルエーテル、エポキシ化植物油、ノボラック型フェノール樹脂とエピクロルヒドリンから得られるエポキシノボラック、フェノールフタレインとエピクロルヒドリンから得られるエポキシ樹脂、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートアクリル系モノマーあるいはスチレンなどの共重合体、さらには上記エポキシ化合物とモノカルボン酸含有(メタ)アクリル酸とのグリシジル基開環反応により得られるエポキシアクリレートなどが挙げられる。
【0044】
多官能性エポキシ化合物の好ましい具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールヒドロキシヒパリン酸エステルのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリテールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリグリシジルエーテル、等の脂肪族エポキシ化合物、イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル等の脂環族エポキシ化合物、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0045】
本発明では成分(F)は、染色成分の役割と同時に耐水性・耐温水性の向上として用いる。そこで、上記した中でも、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物が特に好ましい。
【0046】
成分(F)の使用量は、全組成物の5〜40重量%であることが必要である。すなわち5重量%未満であると塗膜の耐水性が不充分となる。また、40重量%を超えると無機蒸着膜との密着性が不充分となりやすく、好ましくない。
【0047】
また、一般式がSi(OR)4で表される四官能シラン化合物を添加することも有用である。好ましい具体例として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、テトラアセトキシシラン、テトラアリロキシシラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(2−エチルブトキシ)シラン、テトラキス(2−エチルヘキシロキシ)シラン等があげられる。これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらは無溶媒下またはアルコール等の有機溶剤中で、酸の存在下で加水分解して使用する方が好ましい。
【0048】
このようにして得られるコーティング用組成物は、必要に応じ、溶剤に希釈して用いることができる。溶剤としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、芳香族類等の溶剤が用いられ得る。
【0049】
尚、本発明のコーティング組成物は上記成分の他に必要に応じて、少量の界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散染料、油溶染料・蛍光塗料・顔料、フォトクロミック化合物、ヒンダードアミン・ヒンダードフェノール系等の耐光耐熱安定剤等を添加しコーティング液の塗布性および硬化後の被膜性能を改良することもできる。
【0050】
さらに、本発明のコーティング組成物の塗布にあたっては、基材レンズと被膜の密着性を向上させる目的で、基材表面をあらかじめアルカリ処理、酸処理、界面活性剤処理、無機あるいは有機物の微粒子による研磨処理、プライマー処理またはプラズマ処理を行うことが効果的である。
【0051】
また、塗布・硬化方法としては、ディッピング法、スピンナー法、スプレー法あるいはフロー法によりコーティング液を塗布した後、40〜200℃の温度で数時間加熱乾燥することにより、被膜を形成することができる。特に熱変形温度が100℃未満の基材に対しては治工具でレンズ基材を固定する必要のないスピンナー法が好適である。
【0052】
また、硬化被膜の膜厚としては、0.05〜30μmであることが好ましい。すなわち、0.05μm未満では、基本となる性能が出ず、30μmを超えると、表面の平滑性が損なわれたり、光学的歪が発生する為好ましくない。
【0053】
その塗布方法としては、浸漬法、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、フローコート法等が挙げられる。
【0054】
このようにして得られたコート被膜の表面上に、無機物質からなる反射防止膜を形成する被膜化方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等が挙げられる。真空蒸着法においては、蒸着中にイオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。また、膜構成としては、単層反射防止膜もしくは多層反射防止膜のどちらを用いてもかまわない。
【0055】
使用される無機物の好ましい具体例としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti23、Ti25、Al23、Ta25、CeO2、MgO、Y23、SnO2、MgF2、WO3などが挙げられる。これらの無機物は単独で用いるかもしくは2種以上の混合物を用いる。
【0056】
また、反射防止膜を形成する際には、ハードコート膜の表面処理を行うことが望ましい。この表面処理の具体的例としては、酸処理、アルカリ処理、紫外線照射処理、アルゴンもしくは酸素雰囲気中での高周波放電によるプラズマ処理、アルゴンや酸素もしくは窒素などのイオンビーム照射処理などが挙げられる。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、高屈折率塗膜の耐候性が飛躍的に向上しかつ塗液の複雑な管理を要することなく塗液のポットライフを著しく長くすることが可能となる。本発明は、プラスチックレンズ材料として、(メタ)アクリル樹脂をはじめとしてスチレン樹脂、カーボネート樹脂、アリル樹脂、アリルカーボネート樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ウレタン樹脂更に新たなモノマーやコモノマーの重合体等各種機能をもった樹脂に応用し得る。
【0058】
優れた生産性(複雑な塗液管理が不要なことおよび塗液のポットライフが長いこと)および各種耐久性を兼ね備えたプラスチック材料は、眼鏡レンズ、カメラレンズ、光ビーム蛍光レンズや光拡散用レンズとして民生用或いは産業用に広く応用することができる。更に本発明は、ウォッチガラスやディスプレイ用カバーガラス等の透明ガラスやカバーガラス等の光学用途の透明プラスチック全般に応用ないし利用することも可能であり、工業上すこぶる有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0060】
(1)塗液の調整
メチルセロソルブ1832g、1,4−ジオキサン785g、メタノール分散酸化錫−酸化チタン−酸化ジルコニウム複合微粒子ゾル(重量%比:76.5/20.5/3、固形分濃度20重量%、日産化学工業(株)製HITシリーズ)5332g、メタノール分散コロイド状シリカ(触媒化成工業(株)製、商品名「オスカル1132」、固形分濃度30重量%)102gおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン902gを混合した。この混合液に0.05N塩酸水溶液250gを攪拌しながら滴下し、さらに4時間攪拌後一昼夜熟成させた。この液に、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(ナガセ化成工業(株)製、商品名「デナコールEX−212」)を762g添加した後、Mg(ClO42を37gおよびLi(C572)を5.5g、シリコン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7001」3gおよびヒンダードアミン系光安定剤(三共(株)製、商品名「サノールLS−770」)6gを添加し4時間攪拌後一昼夜熟成させて塗液とした。
【0061】
(2)塗布および硬化
このようにして得られた塗液で、アルカリ処理を施した屈折率1.60眼鏡レンズ(セイコーエプソン(株)製、セイコースーパールーシャス用レンズ生地)に浸漬法にて塗布を行った。引き上げ速度は、23cm/minとした。塗布後80℃で20分間風乾した後130℃で60分間焼成を行った。このようにして得られた硬化被膜の厚みは約2ミクロンであり、外観、染色性共に優れたものであった。
【実施例2】
【0062】
実施例−1で得られたレンズに、それぞれ以下の方法で無機物質からなる反射防止コート薄膜の形成を行った。
(1)反射防止薄膜の形成
上記の方法で得られたレンズをプラズマ処理(アルゴンプラズマ400W×60秒)を行った後、基板から大気にむかって順に、SiO2、ZrO2、SiO2、ZrO2、SiO2の5層からなる反射防止多層膜を真空蒸着法(真空器械工業(株)製:BMC−1000)にて形成を行った。各層の光学的膜厚は、最初のSiO2層、次のZrO2とSiO2の等価膜層および次のZrO2層、最上層のSiO2層がそれぞれλ/4となる様に形成した。なお、設計波長λは520nmとした。
得られた多層膜の反射干渉色は緑色を呈し、全光線透過率は98%であった。
【0063】
(2)試験および評価結果
実施例−1で得られたレンズ(以下、ハードコートレンズと呼ぶ)および実施例−2で得られたレンズ(以下、ハードマルチコートレンズと呼ぶ)をそれぞれ次に述べる方法で試験を行い、その結果を表1に示した。
(a)耐摩耗性:ボンスター#0000スチールウール(日本スチールウール(株)製)で1kgの荷重をかけ、10往復、表面を摩擦し、傷ついた程度を目視で次の段階に分けて評価した。
A:1cm*3cmの範囲に全く傷がつかない
B:上記範囲内に1〜10本の傷がつく
C:上記範囲内に10〜100本の傷がつく
D:無数の傷がついているが、平滑な表面が残っている
E:表面についた傷のため、平滑な表面が残っていない
【0064】
(b)耐水・耐薬品性:水、アルコール、灯油中に48時間浸漬し、表面状態に変化のないものを良とした。
【0065】
(c)耐酸・耐洗剤性:0.1N塩酸及び1%「ママレモン」(ライオン油脂(株)製)水溶液に12時間浸漬し、表面状態に変化のないものを良とした。
【0066】
(d)密着性:基材とハードコート膜およびハードコート膜とマルチコート膜との密着性は、JISD−0202に準じてクロスカットテープ試験によって行った。即ち、ナイフを用い基材表面に1mm間隔に切れ目を入れ、1平方mmのマス目を100個形成させる。次に、その上へセロファン粘着テープ(ニチバン(株)製 商品名「セロテープ(R)」)を強く押し付けた後、表面から90度方向へ急に引っ張り剥離した後コート被膜の残っているマス目をもって密着性指標とした。
【0067】
(e)耐候性:キセノンランプによるサンシャインウェザーメーターに400時間暴露した後の表面状態に変化のないものを良とした。
【0068】
(f)耐候性後の耐摩耗性:キセノンランプによるサンシャインウェザーメーターに400時間暴露した後に、(a)と同様の試験を行った。
【0069】
(g)耐久性:耐久性は本質的に密着性の接続であると考え、(a)から(f)の試験を行ったものについて、上記のクロスカットテープ試験を行いコート膜に剥離のないものを良とした。
【0070】
(h)染色性(ハードコートレンズのみ):92℃の純水1リットルに、セイコープラックスダイヤコート用染色剤アンバーDを2g分散させ染色液を調整した。この染色液に、5分間浸漬させ染色を行い、染色ムラがなく、かつ全光線透過率が染色前と染色後の差が20%以上のものを良とした。
【0071】
(i)塗液のポットライフ:塗液調整後20℃の雰囲気で3週間保管した後に、同様な方法で塗布および硬化を行い、そのハードコートレンズの各種耐久性および染色性を確認した。耐久性に関しては、保管後塗布したレンズの耐久性が、保管前に塗布したレンズより、低下しないものを良とした。染色性に関しては、染色ムラがなく、かつ保管前の全光線透過率と保管後の全光線透過率の差が3%以内のものを良とした。
【実施例3】
【0072】
(1)塗液の調整
ブチルセロソルブ383gおよびメタノール分散酸化錫−酸化チタン−酸化ジルコニウム複合微粒子ゾル(重量%比:80/15/5、固形分濃度20重量%、日産化学工業(株)製HITシリーズ)416gおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン95gを混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液27gを攪拌しながら滴下を行い4時間攪拌後一昼夜熟成させた。この液にグリセロールトリグリシジルエーテル(ナガセ化成工業(株)製、商品名「デナコールEX−314」)を77g添加した後、Fe(C5723を2gおよびMn(C57221.1g、シリコン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「FZ−2110」0.3gおよびフェノール系酸化防止剤(川口化学工業(株)製、商品名「アンテージクリスタル」)0.7gを添加し4時間攪拌後一昼夜熟成させて塗液とした。
【0073】
(2)塗布および硬化
このようにして得られた塗液で、屈折率1.66眼鏡レンズ(セイコーエプソン(株)製、セイコースーパーソブリン用レンズ生地)にスピンナー法にて塗布を行った。
コーティング条件は以下の通りである。
回転数 500rpmで10秒(この間に塗液を塗布)
回転数 2000rpmで 1秒
回転数 500rpmで 5秒
塗布後80℃で20分間風乾した後、130℃で60分間焼成を行った。このようにして得られた硬化被膜の厚みは約2.3ミクロンであり、外観、染色性共に優れたものであった。
【0074】
(3)試験および評価結果
このようにして得られたレンズは実施例−1と同様の方法で試験を行い、その結果を表1に示した。
【実施例4】
【0075】
(1)反射防止薄膜の形成
上記の方法で得られたレンズをプラズマ処理(アルゴンプラズマ400W×60秒)を行った後、基板から大気にむかって順に、 ZrO2、SiO2、ZrO2、SiO2の4層からなる反射防止多層膜を真空蒸着法(真空機器工業(株)製:BMC−1000)にて形成を行った。各層の光学的膜厚は、最初のZrO2とSiO2の等価膜層および次のZrO2層、最上層のSiO2層がそれぞれλ/4となる様に形成した。なお、設計波長λは520nmとした。
得られた多層膜の反射干渉色は緑色を呈し、全光線透過率は98%であった。
【0076】
(2)試験および評価結果
このようにして得られたレンズは実施例−2と同様の方法で試験を行い、その結果を表1に示した。
【実施例5】
【0077】
(1)塗液の調整
イソプロピルセロソルブ385g、純水112gおよびメタノール分散酸化錫−酸化チタン−酸化ジルコニウム複合微粒子ゾル(重量%比:80/15/5、固形分濃度30重量%、日産化学工業(株)製HITシリーズ)290gを混合した後、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン97gおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン51gおよびテトラメトキシシラン16gを混合した。この混合液に0.1N塩酸水溶液50gを攪拌しながら滴下し、5時間攪拌後この液にSnCl2(C5722を2gおよびCu(C5722を0.8g、シリコン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7604」)0.3gを添加し4時間攪拌後一昼夜熟成させて塗液とした。
【0078】
(2)塗布および硬化
このようにして得られた塗液で、屈折率1.58のポリカーボネート射出成形眼鏡レンズにスピンナー法にて塗布を行った。コーティング条件は、実施例−3と同様な方法で行った。
塗布後80℃で15分間風乾した後、130℃で60分焼成を行った。このようにして得られた硬化被膜の厚みは約2.1ミクロンであり、外観に優れたものであった。
【0079】
(3)反射防止薄膜の形成
上記の方法で得られたレンズを実施例−4のZrO2をZrO2とTi酸化物の混合物( ZrO2/Ti酸化物=65/35(重量比))に変更したこと以外は、同様の方法で反射防止膜を形成した。
得られた多層膜の反射干渉色は緑色を呈し、全光線透過率は99%であった。
【0080】
(4)試験および評価結果
このようにして得られたレンズは実施例−2と同様の方法で試験を行い、その結果を表1に示した。なお、染色性はハードコートレンズの状態で評価を行った。
【実施例6】
【0081】
(1)塗液の調整
メチルセロソルブ390g、メタノール分散酸化錫−酸化チタン−酸化ジルコニウム複合微粒子ゾル(重量%比:80/14/6、固形分濃度30重量%、日産化学工業(株)製HITシリーズ)372gを混合した後、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン69gおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン66gを混合した。この混合液に0.05N塩酸水溶液30gを攪拌しながら滴下を行い4時間攪拌後一昼夜熟成させた。この液にグリセロールジグリシジルエーテル(ナガセ化成工業(株)製、商品名「デナコールEX−313」)73g添加した後、無水マレイン酸8.5g、およびLi(C572)を1.9g、シリコン系界面活性剤(ビッグケミー(株)製:商品名「BYK−300」)0.2gを添加し4時間攪拌後一昼夜熟成させて塗液とした。
【0082】
(2)塗布および硬化
このようにして得られた塗液で、屈折率1.56眼鏡レンズ(セイコーエプソン(株)製、セイコープラックスIIGX用レンズ生地)スプレー法にて塗布を行った。
スプレーは、イワタワイダー61(岩田塗装機(株)製:ノズル口径1mm)を用い、スプレー圧力3kg/平方cm、塗料吐出量100ml/minで行った。
塗布後80℃で10分間風乾した後130℃で60分間焼成を行った。このようにして得られた硬化被膜の厚みは約4ミクロンであり、外観、染色性共に優れたものであった。
【0083】
(3)試験および評価結果
このようにして得られたレンズは実施例−1と同様の方法で試験を行い、その結果を表1に示す。
【実施例7】
【0084】
(1)反射防止薄膜の形成
実施例−6で得られたレンズを酸素ガスによるイオンビーム照射処理(加速電圧500V×60秒)を行った後、基板から大気にむかって順に、SiO2、ZrO2、SiO2、TiO2、SiO2の5層からなる反射防止多層膜を真空蒸着法(真空器械工業(株)製:BMC−1000)にて形成を行った。その際4層目のTiO2をイオンビームアシスト蒸着により成膜を行った。蒸着各層の光学的膜厚は、最初のSiO2、次のZrO2とSiO2の等価膜層がλ/4、TiO2層がλ/2、最上層のSiO2層がλ/4となる様に形成した。なお、設計波長λは520nmとした。
得られた多層膜の反射干渉色は緑色を呈し、全光線透過率は99%であった。
【0085】
(2)試験および評価結果
このようにして得られたレンズは実施例−2と同様の方法で試験を行い、その結果を表1に示す。
【実施例8】
【0086】
(1)塗液の調整
ブチルセロソルブ1830g、メタノール分散酸化錫−酸化チタン−酸化ジルコニウム複合微粒子ゾル(重量%比:76.5/20.5/3、固形分濃度20重量%、日産化学工業(株)製HITシリーズ)5683gおよびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1922gを混合した。この混合液に0.05N塩酸水溶液528gを攪拌しながら滴下し、4時間攪拌後一昼夜熟成させた後、Al(C5723を36gおよびLi(C572)を5g、シリコン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名「L−7001」)3gを添加し4時間攪拌後一昼夜熟成させて塗液とした。
【0087】
(2)塗布および硬化
このようにして得られた塗液で、アルカリ処理を施した屈折率1.60眼鏡レンズ(セイコーエプソン(株)製、セイコースーパールーシャスレンズ生地)に浸漬法にて塗布を行った。引き上げ速度は、18cm/minとした。塗布後80℃で20分間風乾した後130℃で120分間焼成を行った。このようにして得られた硬化被膜の厚みは約2ミクロンであり、外観に優れたものであった。
【0088】
(3)反射防止薄膜の形成
上記の方法で得られたレンズを実施例−8と同様の方法で反射防止膜を形成した。
得られた多層膜の反射干渉色は緑色を呈し、全光線透過率は99%であった。
【0089】
(4)試験および評価結果
このようにして得られたレンズは実施例−2と同様の方法で試験を行い、その結果を表1に示した。なお、染色性はハードコートレンズの状態で評価を行った。
【0090】
〔比較例1〕
実施例−1において、Li(C572)を添加しないこと以外はすべて同様な方法でレンズに塗布を行った。
このようにして得られたレンズを同様の方法で試験を行い、その結果を表1に示した。
【0091】
〔比較例2〕
実施例−1において、Mg(ClO42を添加しないこと以外はすべて同様な方法でレンズに塗布を行った。
このようにして得られたレンズを実施例−1と同様の方法で試験を行い、その結果を表1に示した。
【0092】
〔比較例3〕
実施例−3において、Fe(C5723を添加せず、Mn(C5723の添加量を3gにしたこと以外はすべて同様な方法でレンズに塗布を行った。
このようにして得られたレンズを実施例−1と同様の方法で試験を行い、その結果を表1に示した。
【0093】
〔比較例4〕
実施例−3において、メタノール分散酸化錫−酸化チタン−酸化ジルコニウム複合微粒子ゾルの代わりにメチルセロソルブ分散二酸化セリウム−二酸化チタン−二酸化ケイ素複合微粒子ゾル(触媒化成工業(株)製、商品名「オプトレイク1832」固形分濃度20wt%)を使用したこと以外はすべて同様な方法でレンズに塗布を行なった。
このようにして得られたレンズを実施例−1と同様の方法で試験を行ない、その結果を表1に示した。
【0094】
〔比較例5〕
実施例−1においてメタノール分散酸化錫−酸化チタン−酸化ジルコニウム複合微粒子ゾルの代わりにメタノール分散酸化錫−酸化タングステン複合微粒子ゾル使用したこと以外はすべて同様な方法でレンズに塗布を行なった。
このようにして得られたレンズを実施例−1と同様の方法で試験を行ない、その結果を表1に示した。
【0095】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)および成分(B)を主成分とし、かつ、硬化触媒として、下記の成分(C)および成分(D)を含有することを特徴とするコーティング用組成物。
(A)酸化錫、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから構成される複合酸化物微粒子。
(B)一般式
【化1】

で表される有機ケイ素化合物(式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解性基であり、nは0または1である。)。
(C)(イ)Fe(III)、Al(III)、Sn(IV)またはTi(IV)を中心金属とするアセチルアセトネート、
(ロ)過塩素酸マグネシウムまたは過塩素酸アンモニウム、
(ハ)脂肪族の飽和若しくは不飽和カルボン酸または芳香族カルボン酸またはその無水物、および
これらの混合物、からなる群から選ばれる1種以上の化合物。
(D)Li(I)、Cu(II)、Mn(II)またはMn(III)を中心金属原子とするアセチルアセトネート。
【請求項2】
前記成分(A)の複合酸化物微粒子の重量%比が、酸化錫60〜85、酸化チタン10〜30、酸化ジルコニウム1〜10であることを特徴とする請求項1記載のコーティング用組成物。
【請求項3】
下記成分(E)で表される有機ケイ素化合物を含有する、請求項1または2に記載のコーティング用組成物。
(E)下記式で表される有機ケイ素化合物。
【化2】

(式中、R3およびR4は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X2およびX3は加水分解性基であり、Yはカーボネート基またはエポキシ基を含有する有機基であり、kおよびmは0または1である。)
【請求項4】
成分(F)として多官能性エポキシ化合物を含有する、請求項1乃至3のいずれかに記載のコーティング用組成物。
【請求項5】
基板上に、請求項1乃至4のいずれかに記載のコーティング用組成物の硬化物からなるコーティング被膜が形成され、さらにコーティング被膜の表面に無機物質からなる反射防止膜をさらに設けてなる複合構造。
【請求項6】
前記基材が光学物品である、請求項5に記載の複合構造。
【請求項7】
前記光学物品がメガネレンズである、請求項6に記載の複合構造。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)および成分(B)を主成分とし、かつ、硬化触媒として、下記の成分(C)および成分(D)を含有することを特徴とするコーティング用組成物。
(A)酸化錫、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから構成される複合酸化物微粒子。
(B)一般式
【化1】

で表される有機ケイ素化合物(式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解性基であり、nは0または1である。)。
(C)(イ)Fe(III)、Al(III)、Sn(IV)またはTi(IV)を中心金属とする
アセチルアセトネート、
(ロ)過塩素酸マグネシウムまたは過塩素酸アンモニウム、
(ハ)脂肪族の飽和若しくは不飽和カルボン酸または芳香族カルボン酸またはその無水物、および
これらの混合物、からなる群から選ばれる1種以上の化合物。
(D)Li(I)、Cu(II)、Mn(II)またはMn(III)を中心金属原子とするアセチルアセトネート。
【請求項2】
前記成分(A)の複合酸化物微粒子の重量%比が、酸化錫60〜85、酸化チタン10〜30、酸化ジルコニウム1〜10であることを特徴とする請求項1記載のコーティング用組成物。
【請求項3】
下記成分(E)で表される有機ケイ素化合物を含有する、請求項1または2に記載のコーティング用組成物。
(E)下記式で表される有機ケイ素化合物。
【化2】

(式中、R3およびR4は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X2およびX3は加水分解性基であり、Yはカーボネート基またはエポキシ基を含有する有機基であり、kおよびmは0または1である。)
【請求項4】
成分(F)として多官能性エポキシ化合物を含有する、請求項1乃至3のいずれかに記載のコーティング用組成物。
【請求項5】
基板上に、請求項1乃至4のいずれかに記載のコーティング用組成物の硬化物からなるコーティング被膜が形成され、さらにコーティング被膜の表面に無機物質からなる反射防止膜をさらに設けてなる光学物品。
【請求項6】
メガネレンズである、請求項5に記載の光学物品。

【公開番号】特開2006−77256(P2006−77256A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294461(P2005−294461)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【分割の表示】特願平9−280667の分割
【原出願日】平成9年10月14日(1997.10.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】