説明

コーティング組成物

本発明は、エポキシ官能性バインダーおよび該バインダーのエポキシ基と反応性の架橋剤を含んでいる高光沢耐洗車性コーティング組成物、並びにこのような耐洗車性コーティングを調製する方法に関する。本発明はさらに、当該コーティング組成物を、顔料を含んでいないトップコートまたはクリアコートとして、物品、たとえばオートバイ、自動車、列車、バス、トラック、および飛行機の上塗りおよび再上塗りに使用する方法に関する。硬化後のコーティング組成物は、初期光沢少なくとも81GUおよび光沢損失(LoG)0.25未満を有するコーティングを生成し、光沢損失は式(I):LoG=(1−e(A/X))/(1−e)+(1−eD*ΔTg)によって決定され、ここでK=B*(Tg開始点−C)である。式(I)において、A=−8.03、B=−0.21、C=328およびD=−0.00304である。Xは架橋密度パラメータをkPa/Kで、Tg開始点はTg転移の開始温度をKで、およびΔTgはガラス転移温度の幅をKで夫々表し、全3パラメータは、11Hzおよび加熱速度5℃/分におけるDMA試験で測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ官能性バインダーおよび該バインダーの反応基と反応性の酸官能性架橋剤を含んでいる高光沢耐洗車性コーティング組成物、並びにこのような耐洗車性コーティングを調製する方法に関する。本発明はさらに当該組成物を、顔料を含んでいないトップコートまたはクリアコートとして物品、たとえばオートバイ、自動車、列車、バス、トラック、および飛行機の上塗りおよび再上塗りに使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティングの重要な特徴は光沢である。コーティングの光沢は時間を経ると低減して、魅力のないくすんだ表面をもたらす。特に、自動車のコーティングは洗車処理によってかなり被害を受ける。したがって、コーティング組成物の耐洗車性を改良する継続的な願望が存在する。明らかに、耐洗車性を改良する願望は一般に、たとえばオートバイ、列車等のような他の用途のためのコーティング組成物にも同様に当てはまる。後記された、規定の洗車実験(Renault規格RNUR 2204−C.R.PO N°2204)で測定される光沢の損失として、耐洗車性は表現される。ISO 2813に従う方法における反射光を使用して光沢を測定することによって、光沢損失は測定される。
【0003】
エポキシ官能性バインダーおよび該バインダーのエポキシ基と反応性のポリ酸架橋剤を含んでいるコーティング組成物は、たとえば米国特許第4,703,101号および米国特許第6,773,819号によって知られている。脂環式多塩基酸および/または脂環式多価(polyhydric)アルコールから誘導された1または複数の単位を有する、特殊なカルボキシル含有ポリエステルを使用して、該従来技術のコーティング組成物は、得られる硬化コーティングの高架橋密度を達成するように配合され、500N/mmを超えないユニバーサル硬さ(UH)を有する硬化コーティングを形成する能力がある。該開示されたエポキシアクリレートバインダーのヒドロキシル価は77であり、遊離過剰ヒドロキシル価(以下に定義されるOHVC)は31である。高い数字のヒドロキシル価を有するバインダーを使用する不利な点は、得られたコーティングが親水性であり、不満足な耐水性をもたらすことである。この故に、これらのコーティングは自動車コーティングとして非常に好適であるわけではない。
【0004】
該コーティング組成物中にポリシロキサンバインダーのような無機添加剤を含めることによって、または無機ナノスケール粒子を使用することによって、コーティングを耐洗車性にすることが、さらに記載されており、該ナノスケールの粒子は1〜1,000nmの直径を有している。これらの系に関連する不利な点は、これらの系の難しくかつ高価な処理工程および高い物質コストである。したがって、このような無機添加剤を実質的に含まないで高耐洗車性を有する、耐洗車性コーティングを作るべきさらなる願望が存在する。
【0005】
たとえば国際特許出願公開第98/40442号および国際特許出願公開第98/40171号に開示されたような乾燥耐擦傷性とは、耐洗車性は非常に異なることが注目される。非常に良好な乾燥耐擦傷性を有するように最適化された硬化コーティングが、最適な耐洗車性を有するとは限らず、その逆もありうる。
【特許文献1】米国特許第4,703,101号公報
【特許文献2】米国特許第6,773,819号公報
【特許文献3】国際特許出願公開第98/40442号公報
【特許文献4】国際特許出願公開第98/40171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、硬化後に、良好な耐洗車性および高光沢を有する硬化コーティング、特に顔料を含んでいないトップコーティングを与えるコーティング組成物であって、当該コーティング組成物が、エポキシ官能性のアクリルまたはポリエステルのバインダー並びに酸官能性および/または酸無水物官能性架橋剤、並びに任意的に他の架橋剤、たとえばイソシアネート官能性、(加水分解性)アルコキシシリル官能性架橋剤、官能化されたメラミンまたはアミノ樹脂の架橋剤を含んでいる簡単な配合を有するものへの願望が存在する。特に、より低コストで、かつポリシロキサンバインダーまたは無機ナノスケール粒子のような従来技術で使用される特殊な添加剤を実質的に含まないで、高耐洗車性を達成することができるコーティング組成物への願望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従うと、エポキシ官能性アクリルバインダー、エポキシ官能性ポリエステルバインダーおよび/または2官能性以上のグリシジルエーテル若しくはエステルのバインダーの群から選択された少なくとも1のエポキシ官能性バインダー、並びに該バインダーの反応基と反応性の1以上の架橋剤を含んでいる、耐洗車性コーティングを製造するためのコーティング組成物であって、コーティングの硬化後に、該コーティングが初期光沢少なくとも81GUおよび光沢損失(LoG)0.25未満を有するように、該バインダーおよび架橋剤が選択されるコーティング組成物が提供され、ここで、光沢損失は式(I)によって決定される。

式(I)で、A=−8.03、B=−0.21、C=328およびD=−0.00304である。
Xは架橋密度パラメータをkPa/Kで、Tg開始点はTg転移の開始温度をKで、およびΔTgはガラス転移温度の幅をKで夫々表し、全3パラメータは、11Hzおよび加熱速度5℃/分におけるDMA試験で測定され、
およびここで、該少なくとも1のエポキシ官能性バインダーがアクリルバインダーである場合には、該アクリルバインダーは(1)モノマー全重量当たりエポキシ基含有モノマー少なくとも20重量%を含んでおり、およびこのアクリルバインダーは(2)アクリル非エポキシ官能性モノマーについては253Kを超えず、またはメタクリル若しくは非アクリルの非エポキシ官能性モノマーについては293Kを超えないモノマーTgを持つ非エポキシ官能性低Tgモノマーの群から選択されたモノマー10モル%超を含んでおり、およびここで(3)該アクリルバインダーはEEW値(EEWは平均エポキシ当量である。)200〜700g/モルおよびOHVC値30mgKOH/固形コーティングg未満を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明者らは、洗車操作におけるコーティングの観察された光沢損失(観察された光沢損失は[初期光沢−最終光沢]/初期光沢と定義される。)を検討し、洗車によって引き起こされる損傷は、機械的原因のものであって化学的原因のものではなく、機械的パラメータのみを使用する式(I)によって正確に記述され決定されることを発見した。コーティング表面に付着している、および/または小さい、往々にして硬い、無機粉塵粒子を依然含有する再循環洗浄水の使用によってコーティング表面に持って来られた粉塵粒子の存在と組み合わされた機械的力によって、硬化されたコーティング組成物への洗車の損傷は引き起こされることが発見された。特に、プラスチックブラシが回転頭上に取り付けられている今日の洗車設備では、状況はかなり厳しい。該ブラシはコーティングの表面をたたき、小さい汚れた粒子がその小さい表面領域(高い硬度、尖った端)によって、衝突するブラシの圧力をさらに高めて、光沢損失として観察される損傷をコーティング中に生じさせる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
これらのパラメータ、特に架橋密度パラメータX、Tg開始点およびガラス転移温度の幅ΔTgを明らかにすることが、本発明者らの成果であり、これらのパラメータは独特にかつ正確に洗車条件における観察された光沢損失および数式(I)で表現されるこれらの相互の関係を記述する。以下に定義された洗車処理の結果として観察された光沢損失を、計算されたLoG値は正確に記述する。耐洗車性コーティング組成物の組成を変えたときに、耐洗車性への見たところ相矛盾する効果が観察される問題を、該式は解決する。たとえば、ある時には良好な耐洗車性を得るために高架橋密度(X)が好まれるように思われ、ところが他方において、高架橋密度(X)はまた、広いTg(ΔTg)をもたらすかも知れず、これは良好な耐洗車性にとって好ましくない。硬化されたコーティングにおける特定のパラメータについて、その特定の式における条件が満たされるように選択された値を達成するという観点から、当業者がコーティング組成物の成分を当該成分の物理的特性に基づいて選択することを、本発明は許す。具体的には、広い範囲の入手可能な成分から、a)比較的低いΔTg、b)比較的高い架橋密度パラメータX、c)比較的低いTg開始点温度のバランスの取れた組み合わせを硬化後にもたらすような成分を、コーティング組成物を作るために当業者は選択する。化学化合物の物理的特性、本発明の記載、および何らかのルーチンの実験についての当業者の一般的理解に基づいて、比較的低いΔTg、比較的高いパラメータX、および比較的低いTg開始点温度をもたらすことになり、そうして本発明に従う上式を満たすように要求されるパラメータの値に到達するようなコーティング組成物中の成分を、当業者は選ぶことができる。たとえば、より低い架橋密度を有し、したがってより良好な耐洗車性を有する、あるポリマーバインダーおよび架橋剤を使用するときにも、低い光沢損失が得られることができる。
【0010】
該バインダーおよび架橋剤によって形成されたポリマー網状組織の特性に基づいて、この良好な耐洗車性は達成されることが強調される。式(I)は、コーティング組成物中の該バインダーおよび架橋剤によって形成された網状組織の特性に関し、コーティング組成物中にナノ粒子またはポリシロキサンのような他の成分がなくてさえも網状組織の特性に純粋に基づいて、LoG0.25未満が達成されることができることを意味する。コーティング組成物中の、網状組織と反応するまたはその一部となる成分は、式(I)および式(II)の評価に含められなければならない。ナノ粒子添加剤またはポリシロキサン添加剤のような網状組織の一部を形成しない組成物成分は、これらの式の評価に含められてはならない。本発明に従うコーティング組成物が、計算された(硬化されたコーティングの)LoG0.25未満を要求する事実はまた、それが、観察された光沢損失0.25未満を有することを意味する。
【0011】
米国特許第4,764,430号は、ポリエポキシドおよびポリ酸に基づいたコーティング組成物を記載し、該組成物はモノカルボン酸の添加によって変性されて、得られる硬化コーティングの外観を特に気泡形成に関して改良する。該コーティング組成物は所要の最大限度光沢損失を持つコーティングをもたらさないことが発見された(比較例4を見よ)。
【0012】
該式中のパラメータは単にフィットされたパラメータではなく、コーティングの内部構造に関する真の物理的特性を表す。狭いΔTgは、均質な架橋網状組織を持つコーティングの特性を表す。このような網状組織の特性は、架橋点間の網状組織鎖が性質において均一であり、硬化されたコーティング組成物全体にわたって架橋点が一様に分布していることである。一つだけの架橋網状組織を含んでいるコーティングが、二つの共存する網状組織を含んでいるコーティングよりも好まれることが発見された。この観点から、組成物中に有意な量の自己架橋性を与えないバインダーおよび架橋剤を使用することも好まれる。好ましくは、本発明に従うコーティング組成物は、コーティングのガラス転移温度の幅が80K未満、より好ましくは70K未満、さらにより好ましくは60K未満、最も好ましくは50K未満であるコーティングをもたらす。
【0013】
小さいΔTgが一般に好まれるけれども、他様には耐洗車性コーティングとして不適格になるであろうところの比較的広いΔTgを有するコーティングをもたらすようなコーティング組成物についても、低い光沢損失が達成されることができることが本発明の利点である。本発明に従う式(I)を使用して、適切に高い架橋パラメータXおよび適切に低いTg開始点温度を有するようにエポキシ官能性バインダーと酸官能性架橋剤樹脂との両者の組成を選択することによって、比較的広いΔTgの負の効果は補償されることができる。本発明に従うこの様式で、良好な耐洗車性を有するエポキシ−酸コーティング組成物が利用できるようにされた。
【0014】
小さいΔTgを達成する様式は、グルシジル官能性バインダー中の延長されたグルシジル基を使用することによってか、あるいは酸官能性および/または酸無水物官能性架橋剤中の延長された酸基または酸無水物基を使用することによってである。伸長されたグルシジル基および/または酸基は、エポキシ官能性バインダーの2のポリマー鎖間に余分の距離を付与し、架橋剤との硬化後にそれはさらに離れるだろう。2の架橋されたポリマー鎖間の増加された距離は、より均質なポリマー網状組織および小さいΔTgをもたらすだろう。延長されたグルシジル官能性アクリルモノマーは容易に接近可能ではない事実の故に、架橋剤を変性する方がより都合がよい。好ましくは、アクリルヒドロキシル−エポキシ官能性バインダー並びに/または酸官能性および酸無水物官能性架橋剤は、酸基のヒドロキシルと架橋剤のアクリル骨格若しくは分岐状炭素原子と間に多数の原子を有する。酸基の鎖延長によって、たとえばバインダー架橋剤を鎖延長剤と反応させること、または架橋剤の構造中に鎖延長剤を取り込むことによって、これはたとえば達成されることができる。狭いΔTgによって特性付けられる均質な網状組織は、ポリマー網状組織鎖の大きい部分にわたって、かけられた機械的応力の一様な分布をもたらし、したがって過大応力のかかった網状組織鎖を避けるのに役立つ。
【0015】
バインダーは1以上の異なったタイプのバインダーであることができ、したがって、「該バインダー」は「該少なくとも1のバインダー」と読まれることができることが注記される。さらに、上記のように、架橋剤は鎖延長剤によって変性されてもよい。したがって、全固形分について言及されている場合には、任意的に鎖延長剤によって変性されていてもよい、バインダーと架橋剤との全量を、これは意味する。
【0016】
洗車試験の間の作用する力の下で、原則として3の異なったタイプの擦過傷、すなわち弾性擦過傷、これはかけられた力が取り除かれた後直ちに消失し、並びにかけられた力が取り除かれた後も消失しない可塑性擦過傷および脆性(破壊)擦過傷が、コーティング層中に生じることを本発明者らは確立した。可塑性擦過傷が、散乱される光の量に最大の影響を有するだろう。該散乱される光の量は有意の光沢損失として観察され、一般に従来のおよび/または商業的な高光沢用途において評価されていない。弾性擦過傷はコーティングの光沢に影響を与えず、脆性擦過傷の効果はこれらの中間である。したがって、弾性擦過傷の量の増加の犠牲の下に、またはさらに脆性擦過傷の増加の犠牲の下に可塑性擦過傷の量を低減することが重要であることを、本発明者らは確立した。
【0017】
洗浄処理の際の可塑性擦過傷の発生量の変化が、架橋密度の減少とともに増加することに、本発明者らは気付いた。架橋密度の減少に基づく、可塑性擦過傷の変化のこの増加は、式(I)の右辺の第一項によって、すなわち項:1−e(A/X)によって説明される。ポリマー鎖の易動度が十分に高ければ、生じた可塑性擦過傷の一部は、再流動過程によって消失することができる。ガラス転移温度の開始点(Tg開始点)の値の減少とともに、再流動の可能性は増加する。ガラス転移温度の開始点(Tg開始点)の減少に基づく、生じた可塑性擦過傷の再流動の変化のこの増加は、式(I)の右辺の第二項によって、すなわち項:(1+e−1によって考慮に入れられる。結論として、コーティングの架橋密度を増加することによって、およびガラス転移温度の開始点(Tg開始点)を下げることによって、光沢損失への洗浄処理による可塑性擦過傷の効果は最小化されることができる。
【0018】
洗浄処理の際の脆性擦過傷の発生量の変化は、ΔTgの増加(架橋網状構造の均質性の減少)とともに増加する。ΔTgの増加に基づく脆性擦過傷の変化の増加は、式(I)の右辺の第三項によって、すなわち項:(1−eD*ΔTg)によって説明される。
【0019】
さらに、硬化されたコーティングの架橋密度パラメータXは、少なくとも7kPa/K、より好ましくは少なくとも10kPa/K、より好ましくは少なくとも15kPa/K、さらにより好ましくは少なくとも25kPa/K、一層より好ましくは少なくとも30kPa/K、最も好ましくは少なくとも35kPa/Kであることが好まれる。エポキシ基および/または酸基の数を増加することによって、高い架橋密度は達成されることができる。単官能性化合物(モノカルボン酸またはモノアルコール)は、ポリエポキシまたはポリ酸上の反応性のエポキシ基および/または酸基の数を低減し、架橋密度を低減する。ポリエポキシまたはポリ酸上の反応性のエポキシ基および/または酸基の性質および量に応じて、少量の単官能性物は許されることができるけれども、高い架橋密度を達成する観点から、組成物は単官能性化合物を(全固形分重量に対して)5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満の量で含んでいることが好まれる。
【0020】
低極性のおよび低Tgの部分がコーティング組成物中に存在すると、より高い架橋効率、したがってより高い架橋パラメータXが達成されることができることが発見された。酸官能性架橋剤/バインダーの部分を硬化する際の局所的な易動度は、バインダーおよび架橋剤上の反応性基が互いに他方を見つけ、共有結合(架橋)を形成するための時間を伸ばすと考えられる。架橋密度を増加する他の様式は、容易に接近可能な、すなわち近傍基によって立体的に障害されていない酸基を使用することによる。したがって、高い架橋密度を得るためには、可撓性の、突き出ている酸基または架橋基が好まれる。硬化されたコーティング組成物の架橋密度をさらに微調整して、式(I)に従う要件を満たすように、下記の化学的パラメータである炭素長(CL)、および低Tgモノマーの低極性分率(LPF)が使用されることができる。
【0021】
上記のように、生じた可塑性擦過傷の再流動を許す(すなわち、可塑性擦過傷を消失させる)ために、コーティングの低い値のガラス転移温度開始点(Tg開始点)を有することは、さらに好都合である。11HzにおけるDMTA試験で測定されるTg開始点の値が、洗車条件下のコーティングの再流動能力のよい尺度であることを、本発明者らは発見した。硬化されたコーティング組成物の低い値のTg開始点は、ポリマー網状組織中に局所的な柔らかい点を導入することによって達成されることができる。アクリル樹脂については、低Tgの非官能性モノマーを使用することによって、これらの柔らかい点は導入されることができ、ポリエステルエポキシ官能性および/またはポリエーテルエポキシ官能性のバインダー並びに架橋剤については、ポリマー鎖中の可撓性部分を使用し、すなわち官能基の間に少なくとも3の連続した炭化水素を持つモノマーを使用して、これらの柔らかい点は導入されることができる。アクリル並びにポリエステルおよび/またはポリエーテルのバインダーに基づいたコーティング配合物の両方について、エポキシ官能性バインダー上のエポキシ基と反応性であるか、あるいは硬化するコーティング組成物中に存在するヒドロキシル基と反応性である基の間に少なくとも3の連続した炭化水素を有する追加の架橋剤を使用することによって、柔らかい点は任意的に追加して導入されることができる。これらのヒドロキシル基は、酸基とエポキシ基との間の反応からの結果として生成されるだろう。またはこれらのヒドロキシル基は、耐洗車性コーティング組成物中の1以上のバインダー中に意図的に取り込まれてもよい。さらに、アクリルバインダーに基づいたコーティング組成物については低Tgモノマーの低極性分率(LPF)の、および下記の重縮合(ポリエステル)およびポリエーテルに基づいたコーティング組成物については炭素長(CL)の、適当な選択によって、Tg開始点はさらに微調整されることができる。原則として、式(I)の条件が満たされる限り、Tg開始点は広い範囲で変わることができるけれども、(11Hzにおける)Tg開始点は、好ましくは350K未満、より好ましくは330K未満、さらにより好ましくは320K未満、最も好ましくは310K未満に選択される。Tg開始点は好ましくは少なくとも275Kである。
【0022】
耐洗車性以外、たとえば自動車クリアコーティングの補修性の理由から、Tg開始点は少なくとも275K、より好ましくは少なくとも295K、さらにより好ましくは少なくとも310K、さらにより好ましくは少なくとも320K、最も好ましくは少なくとも330Kであることが好まれる。特定の用途に応じて、優れた耐洗車性またはたとえば優れた補修性を達成するために、当業者はTg開始点の最適値を選択することができる。
【0023】
高光沢耐洗車性コーティングをもたらす本発明に従うコーティング組成物の好まれる実施態様では、該少なくとも1のエポキシ官能性バインダーはアクリルバインダーであって、(1)該アクリルバインダーが、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ビニルシクロヘキサン、エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ビニルグリシジルエーテル等から選択されたエポキシ基含有モノマーをモノマー全重量当たり少なくとも20重量%含んでおり、(2)このアクリルバインダーが、アクリル非エポキシ官能性モノマーについては253Kを超えず、またはメタクリル若しくは非アクリル非エポキシ官能性モノマーについては293Kを超えないモノマーTgを持つ非エポキシ官能性低Tgモノマーの群から選択されたモノマー10モル%超を含んでおり、および(3)該アクリルバインダーが、重量平均されたエポキシ当量(EEW)(固形分当たり)200〜700g/モルおよびOHVC値30mgKOH/固形コーティングg未満を有するものである。
【0024】
特に自動車コーティング用途に要求される十分な耐水性を得る観点から、該コーティング組成物の、特にバインダーのヒドロキシル価(OH価)は70mgKOH/グラム未満、より好ましくは60未満、さらにより好ましくは50未満、最も好ましくは40未満である。少なくとも1の架橋剤が、酸官能性および/または酸無水物官能性架橋剤、任意的にまたアミノ官能性架橋剤、若しくは(保護された)イソシアネート官能性架橋剤であるならば、少なくとも1のバインダーがエポキシ官能性アクリルバインダーであり、該バインダーおよび架橋剤が合わせてコーティング組成物の固形分含有量の少なくとも90重量%の量を占め、およびL値0.25未満を与えるところの、好まれる実施態様の発明に従うコーティング組成物について、良好な結果が得られることができることを本発明らは発見した。該L値は、式(II)に従って計算され、

ここで、Mnは組成物中の全エポキシ官能性バインダーの数平均分子量を、LPFはアクリルバインダー中の低Tgモノマーの実験的に測定された重量平均された低極性分率を、EEWは平均エポキシ当量を、CLは炭素長を、AVXは酸官能性架橋剤の重量平均された酸価を、MFはコーティング組成物中の全固形分当たりのアミノ架橋剤の重量分率を夫々表し、NCOは硬化されたコーティング組成物中に存在するNCO基ミリモル/gで表現されたNCO基の全濃度と定義され、ここでA1=0.479、A2=0.000932、A3=−28.103、A4=−0.000858、A5=6.788、A6=0.00920、A7=−7.003、A8=0.391、A9=−0.00269、A10=−0.00000343、A11=0.00311、A12=79.122であり、および該少なくとも1のエポキシ官能性バインダーはEEW値200〜700を有する。
【0025】
エポキシ−酸に基づいたコーティング組成物の配合のために、広く多様な可能な成分から、L値0.25未満を有する、式(II)に従う判断基準を満たす適当な化学組成を有するような成分を当業者が選択することを、式(II)は可能にし、該L値は、低い観察された光沢損失25%未満に正確に対応する。
【0026】
改良された耐洗車性を生み出すための従来技術で知られた特別の添加剤がなくてさえも、硬化後の上記の本発明に従うコーティング組成物は、規定された洗車処理後に少なくとも81GUの高光沢および0.25未満の観察された光沢損失を有するコーティングをもたらす。本発明に従うコーティング組成物において、さらにより良好な耐洗車性が得られることができる。好ましくは、硬化されたコーティングの観察された光沢損失は22%未満、さらにより好ましくは20%未満、一層より好ましくは18%未満、さらに一層より好ましくは16%未満、最も好ましくは14%未満である。本発明に従うコーティング組成物の最良の実施態様では、観察された光沢損失10%未満が達成されることができる。式(I)に従う組成パラメータX、Tg開始点およびΔTgを微調整して、対応する計算されたLoG値を満たすことによって、これらの非常に低い観察された光沢損失値は達成される。
【0027】
低光沢損失を持つ上述の高耐洗車性を達成するために、特別の添加剤は要求されないけれども、耐洗車性をさらに改良するためにコーティング組成物中にこれらの添加剤は原則的に存在してもよい。しかし、それにもかかわらず本発明に従うコーティング組成物は、このような添加剤を実質的に含んでいないことが好まれる。特に、該コーティング組成物は、ポリシロキサンバインダーおよび/またはナノスケール粒子、特に無機ナノスケール粒子を実質的に含んでいないことが好まれる。該コーティング組成物の意図される使用先は、主にクリアコーティングなので、該コーティング組成物は顔料も実質的に含んでいないことがさらに好まれる。本発明に従うコーティング組成物は、好ましくはシロキサンを実質的に含んでおらず、並びに/またはアクリロシランおよび無機ナノスケール粒子を実質的に含んでおらず(0.1重量%未満)、それでいて良好な耐洗車性を与える。シロキサンを実質的に含んでいない、およびアクリロシランを実質的に含んでいないとは、シロキサン化合物およびアクリロシラン化合物の量が、全コーティング組成物当たり5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満、最も好ましくは1重量%未満を意味する。顔料を実質的に含んでいないとは、コーティング組成物が顔料粒子を実質的に含んでおらず、および/またはアルミニウム粒子を実質的に含んでおらず、全組成物当たり好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満、さらにより好ましくは0.5重量%未満、最も好ましくは0.3重量%未満含んでいることを意味する。
【0028】
コーティング組成物を基体に施与して、コーティングを形成することへの使用の容易さを考慮すると、コーティング組成物は液体であることが好まれる。
【0029】
本発明はさらに、この明細書に上記されたコーティング組成物への使用に適したバインダーに関し、これらのバインダーは40〜90、好ましくは50〜80重量%、より好ましくは50〜75重量%の量で使用され、重量パーセントはバインダー+架橋剤=100%当たりである。
【0030】
好まれるコーティング組成物は、Lが0.22未満、より好ましくはLが0.20未満、さらにより好ましくはLが0.18未満、一層より好ましくはLが0.16未満、最も好ましくはLが0.14未満であるものである。
【0031】
パラメータの定義
【0032】
引張貯蔵弾性率E’およびこの弾性率が最小値に達する温度は、平均層厚さ30〜50μmおよび該層厚さの標準偏差2μm未満を持つ自立性硬化コーティングを測定する動力学的熱機械分析(DMTA)を使用して測定される。完全に硬化されたコーティングを得るために、コーティングは少なくとも温度60℃で硬化されることが好まれる。DMTAは、コーティングの特性を測定するための一般的に知られた方法であり、T.Murayama著、Dynamic Mechanical Analysis of Polymeric Material(米国、New York、Elsevier社、1978年刊)およびLoren W. Hill、Journal of Coatings Technology誌、第64巻、第808号、1992年5月刊、31〜33ページに、より詳細に記載されている。より具体的には、改良されたRheovibron(Toyo Baldwin社DDV−II−C型)を周波数11Hzおよび動的引張変形0.03%において使用して、DMTAは遂行される。加熱速度5℃/分において−50℃〜200℃の間で、温度が変えられる。全ての測定は引張モードで行われ、各温度において引張貯蔵弾性率E’、引張損失弾性率E’’、および損失正接tan−δ(tan−δ=E’’/E’)が測定される。ガラス転移領域において、E’は急激に減少する。ガラス転移温度Tgより上であるがゴムから液体への転移温度であるT−流動より下の温度においては、E’は温度(K単位でのT極小)において極小値(E’極小)を有し、その後はE’は温度とともに増加する。架橋密度パラメータXは、この極小引張貯蔵弾性率E’極小とこの弾性率E’極小が到達されるところの温度T極小との比(X=E’極小/T極小)である。
【0033】
ガラス転移温度(Tg)の値、ガラス転移温度の幅(ΔTg)およびガラス転移温度の開始点(Tg開始点)は、温度の関数としての損失係数(tan−δ)の実験データを二重ガウス曲線にフィットさせることによって得られる。

ここで、y、K、Tg1、w、K、Tg2、wは定数であり、tan−δ(T)は温度Tの関数としてのtan−δの実験データである。フィッティングの手順において、Kの値の上限はK/2である。
【0034】
(上式によって与えられる)フィットされたtan−δ曲線が、最大値に達するところの温度がガラス転移温度Tgとして取られる。ΔTgの値はフィットされたtan−δピークの(℃での)半値幅である。
【0035】
Tg開始点は、Tgそれ自体よりも低く、その温度で(フィットされた)tan−dの値が、0.25×tan−dの(フィットされた)最大値に等しいところの温度である。
【0036】
硬化されたコーティングサンプルの層厚さは、誘導厚さ計(Isoscope(商標)MP、Fischer Instrumentation社)を使用して測定される。該厚さは、サンプル上の少なくとも5の異なった点で測定され、平均厚さが取られる。柔らかすぎてIsoscope(商標)MP計器の測定探針の進入が妨げられる硬化コーティングの厚さは、該サンプルの重量をミクロバランス(Mettler Toledo(商標)AT201)を使用して測定することによって検査された。
【0037】
酸官能性架橋剤は、カルボン酸官能基、無水カルボン酸基(酸無水物)または両者を有することができる。酸価(AVX)は、ISO 3682−1996に従って固形酸官能性架橋剤1グラム中のKOHミリグラム当量で測定された実験的な酸価である。酸無水物官能性および酸/酸無水物官能性架橋剤についてのAVXは、上記の酸基の酸価に加水分解後の酸無水物基の酸価を2で割ったものを加えた和である。酸無水物基1ミリモルは酸基1ミリモルに等しいことを、これは意味する。酸無水物官能性および酸/酸無水物官能性架橋剤のAVXは、ISO 3682−1996に従って固形架橋剤1グラム中のKOHミリグラム当量で測定される。
【0038】
テトラヒドロフランを溶出液とする(Polymer Laboratories社からの)PLゲル5μm混合ゲルカラム(Mixed−C column)上のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して、分子量分布は測定される。ポリスチレン標品との相対で計算されて測定された分子量分布から、重量平均された分子量分布(Mw)、数平均分子量分布(Mn)、および多分散度Mw/Mnが決定される。
【0039】
1以上のエポキシ官能性バインダーが使用されるならば、バインダー固形分当たりの各バインダーの重量分率を取ることによって(すなわち、架橋剤を考慮に入れないで)、耐洗車性コーティング組成物のMn値が計算される。2以上の異なったエポキシ官能性アクリルバインダーを含有する耐洗車性コーティング組成物のエポキシ官能性バインダーAの重量分率をβAが、エポキシ官能性バインダーBの重量分率をβBが等々、βA+βB+・・・=1であるように表すならば、その場合には該耐洗車性コーティング組成物のMn値は、
Mn=βA・MnA+βB・MnB+・・・として計算され、ここでMnAおよびMnB等は、それぞれバインダーAおよびBのMn値を表す。
【0040】
酸官能性および/または酸無水物官能性架橋剤の炭素長(CL)は、耐洗車性コーティング組成物中の全固形分当たりの、酸官能性または酸無水物官能性架橋剤および他の架橋剤(たとえば、イソシアネート官能性架橋剤)の、モノマー単位毎におよび架橋剤単位毎に数えられた最大可能経路にわたって測定された、連続的な非環式アルキルまたはアルキレン鎖中の少なくとも4(4以上)の連続した炭素原子を有する炭化水素部分の形で存在する全炭素原子の重量分率である。パラメータCLは分率(すなわち、0〜1の数)として表現される。炭素長(CL)は、次式を使用して計算されることができる。

ここで、
=モノマーまたは架橋剤(若しくは任意的な鎖延長剤)I、およびエポキシ官能性アクリルバインダー中の上の定義に従う連続した炭素原子の数、
=コーティング組成物(バインダー、架橋剤および任意的な鎖延長剤)中のモノマーまたは架橋剤(若しくは任意的な鎖延長剤)iの重量分率、および
=重縮合前のモノマーまたは架橋剤(若しくは任意的な鎖延長剤)の分子量
である。
コーティング組成物中の全てのモノマー、架橋剤および任意的な鎖延長剤にわたって、和が取られる。たとえば、エプシロン−カプロラクトンではnは5に等しい。上式において、アミノに基づいた全ての架橋剤は、定義に従って零個の炭素原子(n=0)を有すると定義される。
【0041】
アミノ架橋剤濃度(MF)は、耐洗車性コーティング組成物中の全固形分当たりのメラミン架橋剤の重量分率と定義される。パラメータMFは、0〜1の数として表現される。
【0042】
コーティング組成物中のウレタン基またはウレタン形成性基の全量(NCO)は、グラム当たりウレタンNCO基ミリモルで表現された、硬化されたコーティング組成物中に存在するNCO基の全濃度と定義され、その場合に濃度の計算のために、NCO基がウレタン、尿素、アロファネート等として存在しているかどうかにかかわらず、NCO基の分子質量(42)が取られる。在りうる疑念を避けるために、酸官能性架橋剤中に任意的に存在するウレタン基およびウレタン形成性基は、NCOの値の決定にあずかる。イソシアネート官能性架橋剤を通して、並びに任意的にグリシジル官能性バインダーおよび/または酸官能性架橋剤で、NCO基はコーティング組成物中に存在してもよい。
【0043】
重量平均されたエポキシ当量(EEW)は、エポキシ官能性バインダー中のエポキシ基1モルについてのグラム数と定義される。1より多いエポキシ官能性バインダーが使用されるならば、バインダー固形分当たりのエポキシ官能性バインダーの重量分率を取ることによって(すなわち、1または複数の架橋剤を考慮に入れないで)、耐洗車性コーティング組成物のEEW値は計算される。2の異なったエポキシ官能性バインダーを含有する耐洗車性コーティング組成物のエポキシ官能性バインダーAの重量分率をβが、エポキシ官能性バインダーBの重量分率をβが等々、β+β+・・・=1であるように表すならば、その場合には該耐洗車性コーティング組成物のEEW値は、次式として計算される。

【0044】
アクリルバインダー中の低Tgモノマーの重量平均された分率(LPF)は以下のように決定される。すなわち、非官能性低Tgモノマーの分率fが、エポキシ官能性バインダー当たりの低Tgモノマーの重量分率として計算される。これらのエポキシ官能性バインダーのそれぞれにつき1より多いアクリルバインダーが使用されるならば、分率fが計算される。耐洗車性コーティング組成物についての低Tgモノマーの重量平均された分率(LPF)はそうすると、LPF=α・f+α・f+・・・として計算され、ここでα、α、等はそれぞれバインダー1、2等の耐洗車性コーティング組成物中の全固形分当たりの重量分率を表し、fおよびfはそれぞれバインダー1、2、等中の低Tgモノマーの分率を表す。ここで、任意的な鎖延長剤を包含する少なくとも1のバインダーおよび架橋剤を、全固形分は含むことが注記される。この場合に、αは重量分率を表すために使用される。
【0045】
コーティング組成物の遊離過剰ヒドロキシル価、OHVCは以下のように定義される。

ここで、
P=(全バインダーおよび全架橋剤を基準とする)コーティング組成物中の遊離ヒドロキシル基の、固形コーティンググラム当たりOHミリモルでの量。硬化前に存在するヒドロキシル基を、遊離ヒドロキシル基は意味する。すなわち、エポキシ−酸反応から生じることになるヒドロキシル基は含まれない。
Q=ヒドロキシル基と反応性の非酸官能性基の、(全バインダーおよび全架橋剤を基準とする)固形コーティンググラム当たりのミリモルでの量。
明確のために、ブチル化アミノ樹脂については固形アミノ樹脂グラム当たり反応性基6.5ミリモルがあり、メチル化アミノ樹脂については固形アミノ樹脂グラム当たり反応性基10.0ミリモルがあると、本発明者らは定義する。
【0046】
エポキシ官能性バインダー
【0047】
エポキシ官能性バインダーは、アクリル官能性またはグリシジル官能性のポリエステルまたはポリエーテルバインダーであることができる。また、エポキシ官能性アクリルおよび/またはポリエステル/ポリエーテルバインダーの混合物が使用されてもよい。
【0048】
エポキシ官能性アクリルバインダー
【0049】
この特許出願においては、アクリルバインダーの語は、(メタ)アクリルモノマーを含んでいるバインダーを言う。(メタ)アクリルは、(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリル酸並びにビニルエステルを意味する。
アクリル樹脂は、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルに基づいている。
本発明に従うコーティング組成物のアクリルバインダーは、好ましくはガラス転移温度230K〜350Kを有する。
【0050】
本発明に従うコーティング組成物のアクリルバインダーは、好ましくはエポキシ基含有モノマーをモノマー全重量当たり少なくとも20重量%含んでいる。
さらに、エポキシ官能性バインダーは、ヒドロキシル基含有モノマーまたはヒドロキシシクロアルキル基含有モノマーを含有してもよい。耐洗車性硬化コーティングの不満足な耐湿性を防ぐために、硬化前のコーティング組成物中に存在する遊離過剰ヒドロキシル基の計算された量は限定されなければならない。したがって、OHVC値は30mgKOH/固形コーティングg未満でなければならない、好ましくはOHVCは25mgKOH/固形コーティングg未満でなければならない、より好ましくはOHVCは20mgKOH/固形コーティングg未満でなければならない、さらにより好ましくはOHVCは15mgKOH/固形コーティングg未満でなければならない、および最も好ましくはOHVCは10mgKOH/固形コーティングg未満でなければならないことが要求される。コーティング組成物中に存在する遊離ヒドロキシル基と反応性のさらに追加の架橋剤を使用して、OHVCに負の数をもたらすことが可能である。後者の場合、これは、酸基とエポキシ基との硬化反応の間に形成されたヒドロキシル基と反応するさらなる架橋剤基を意味する。
【0051】
本発明に従うコーティング組成物のアクリルバインダーはさらに好ましくは、アクリル非エポキシ官能性モノマーについては253Kを超えず、またはメタクリル若しくは非アクリル非エポキシ官能性モノマーについては293Kを超えないモノマーTgを持つ非エポキシ官能性低Tgモノマーの群から選択されたモノマー10モル%超を含んでいる。
【0052】
該アクリルバインダーはさらに好ましくは、エポキシ基を有さず、アクリルタイプのモノマーについては253K超の、およびメタクリルモノマーについては293K超のTgを有するモノマー、たとえばメチルアクリレート、第三級ブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、イソブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、第三級ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、アクリル酸およびメタクリル酸を含んでいる。
アクリルバインダーは任意的に、非(メタ)アクリレートモノマー、たとえばスチレン、ビニルトルエン、分岐状モノカルボン酸のビニルエステルを含んでいる。
【0053】
任意的に、該アクリルバインダーの少量は変性されてもよい。好まれる変性では、ポリイソシアネート化合物、たとえばイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシレンジイソシアネートメタン、2,4−および2,6−トルエンジイソシアネート、およびビウレット、イソシアヌレート、ウレトジオン、アロファネート、並びにこれらのイソシアネートのイミノオキサジアジンジオンとの反応によって、アクリルモノマーの10重量%未満が変性される。
【0054】
上記のように、架橋鎖間に、ある数の原子を有することが好まれる。これを達成するために、酸官能性架橋剤は好ましくは鎖延長剤と反応される。この鎖延長剤は架橋剤の酸基と反応性の化合物を含んでいて、鎖延長前よりも骨格から離れた位置に新しい酸官能基またはエポキシと反応性の官能基をもたらす。好適な鎖延長剤は、ラクトン、たとえばカプロラクトン、バレロラクトン、およびブチロラクトン、ヒドロキシ官能性C12〜C18酸、たとえばヒドロキシピバリン酸、ジメチルプロピオン酸、乳酸、ヒドロキシステアリン酸等、およびエポキシド官能性化合物、たとえばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびモノカルボン酸のグリシジルエステルを含んでいるモノエポキシ化合物である。好適な例は、カプロラクトン、エチレングリコール、プロピレングリコールを含む。あるいは、OH官能性モノマーのOH基の変性とそれに続く(共)重合によって、骨格とヒドロキシル基の酸素原子との間の原子数は増加されることができる。上述と同じ鎖延長剤が適用されることができる。
【0055】
酸官能基の突き出し度は、ポリマー骨格と該基との間の平均原子数によって表現されることができる。該基の酸素原子とポリマー骨格との間の原子数は、平均数として表現されなければならない。
【0056】
エポキシ官能性アクリルバインダーは、実質的な量の低極性モノマーを含んでいる。この量は、該モノマーの全重量の少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%でなければならない。低極性モノマーは、酸素含有量25重量%未満を有するアクリレート、メタクリレートおよびビニルエステルの群から選択されたモノマーである。好適な無極性モノマーの例は、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、α−オレフィン、α,α−分岐モノカルボン酸(C9〜C10)のビニルエステル、たとえばResolution社からのVeoVa(商標)9およびVeoVa(商標)10を含む。
【0057】
上記のように、単独重合されると低ガラス転移温度(Tg)を持つホモポリマー、すなわちメタクリル若しくは非アクリルモノマーについては293K未満のガラス転移温度を持つホモポリマー、またはアクリルモノマーについては253K未満のガラス転移温度を持つホモポリマーを生じるであろう、エポキシ官能基を持たないモノマーも、アクリルバインダーは含んでいる。本明細書において、これらのモノマーは「非エポキシ官能性低Tgモノマー」と呼ばれるだろう。
【0058】
モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、便覧に見出されることができる。このTg、したがって低Tgモノマーは、たとえばJ.BrandrupおよびE.H.Immergut(編者)、Polymer Handbook、第三版、第VI号、209〜277ページ、John Wiley & Sons社(米国、New York、1989年)刊、およびD.W.Van Krevelen著、Properties of Polymers、Elsevier社(蘭国、Amsterdam、1990年)刊、第6章に見出されることができる。
【0059】
アクリル非OH官能性モノマーについては253Kを超えず、またはメタクリル若しくは非アクリル(たとえば、ビニルエステル)の非OH官能性モノマーについては293Kを超えないモノマーTgを持つ非OH官能性低Tgモノマーの群からそのモノマー12モル%超が選択されるところのアクリルバインダーを使用することによって、さらに改良された耐洗車特性が得られることができる。
【0060】
好適な非OH官能性低Tgモノマーの例は、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、α−オレフィンを含む。
【0061】
アクリルバインダーは、好ましくは少なくとも230K、より好ましくは少なくとも240K、最も好ましくは少なくとも250Kの理論上のTgを有する。
【0062】
エポキシ官能性ポリエステルバインダー
【0063】
エポキシ官能性バインダー成分はまた、エポキシ官能性ポリエステルまたはポリエーテルバインダーを含んでいてもよい。
グリシジルエーテルおよびグリシジルエステルの例は、ブタンジオールグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサン−カルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、水素化ビスフェノールAのグリシジルエーテルであり、ここでグリシジルエステルは、たとえばグリシドールとカルボン酸との反応生成物である。
【0064】
架橋剤
【0065】
架橋剤は、エポキシ官能性バインダーのエポキシ基と反応性の官能基を含んでいる、任意の普通の架橋剤であることができる。これはバインダーと反応して、エステルまたはアミン結合を形成する架橋剤であってもよい。好ましくは、該少なくとも1の架橋剤は、酸官能性および/または酸無水物官能性架橋剤である。酸−エポキシ反応は、エステル結合の他にヒドロキシル基ももたらす事実の故に、ヒドロキシ官能性バインダーを架橋するのに使用される架橋剤も、酸エポキシ配合物は含有してもよい。したがって、他の架橋剤、たとえばアミノ官能性架橋剤または(保護された)イソシアネート官能性架橋剤が使用されることができる。
【0066】
酸官能性架橋剤
【0067】
酸官能性架橋剤は、バインダーのエポキシ基と反応して、エステル基およびヒドロキシル基を生成する。任意的に、酸官能性架橋剤および/またはグリシジル官能性バインダーは、相容性を改良するためにヒドロキシル基を有してもよい。また、酸官能性架橋剤および/またはグリシジル官能性バインダーは、酸無水物基を有してもよい。酸無水物基は好ましくは、最終的に存在しているヒドロキシル基と反応して、エステル基および遊離酸基を生じるだろう。該遊離酸基は利用可能なエポキシ基と反応して、エステル結合および遊離ヒドロキシル基を生じるだろう。その後、該遊離ヒドロキシル基はさらなる反応に利用できる。
【0068】
少なくとも1のポリアルコ−ルと化学量論的に過剰の少なくとも1のポリカルボン酸とのポリエステル化によって、これらの酸官能性ポリエステル架橋剤は生成されることができる。
【0069】
好まれる酸官能性ポリエステルを生成する方法は、(予備縮合された)ポリオールのヒドロキシル基を酸無水物、たとえば無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸と反応させることを含む。
【0070】
特に好まれる酸官能性ポリエステルを生成する方法は、(予備縮合された)ポリオールのヒドロキシル基を鎖延長剤、好ましくはラクトン、たとえばカプロラクトン、バレロラクトン、およびブチロラクトンと反応させ、続けて鎖延長されたポリオールを酸無水物、たとえば無水フタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸と反応させることによって、ポリオールまたはポリエステルポリオールを鎖延長することを含む。
【0071】
特に好まれる酸官能性ポリエステルを生成する他の方法は、(予備縮合された)カルボキシル官能性ポリエステルを鎖延長剤、好ましくはラクトン、たとえばカプロラクトン、バレロラクトン、およびブチロラクトンと反応させることによって、カルボキシル官能性ポリエステルを鎖延長することを含む。
【0072】
任意的に、酸官能性ポリエステルは、共縮合された単官能性カルボン酸、単官能性アルコール、ヒドロキシ酸、単官能性エポキシ化合物および/または共反応されたイソシアネートを含んでいてもよい。
【0073】
好適なポリカルボン酸は、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、二量体酸、およびこれらの混合物を包含する。
【0074】
好適なポリアルコールの例は、トリオール、たとえばトリメチロールプロパンおよびトリメチロールエタン、ジオール、たとえば1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、二量体ジオール、およびこれらのポリアルコールの混合物を含む。
【0075】
任意的に共縮合されたモノカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族またはこれらの混合物であることができる。好ましくは、モノカルボン酸は、6〜18炭素原子、最も好ましくは7〜14炭素原子を有し、たとえばオクタン酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、安息香酸、ヘキサヒドロ安息香酸、およびこれらの混合物である。
【0076】
使用されることができる典型的なヒドロキシ酸は、ジメチロールプロピオン酸、ヒドロキシピバル酸、およびヒドロキシステアリン酸を包含する。
【0077】
好適な単官能性アルコールの例は、6〜18炭素原子を持つアルコール、たとえば2−エチルヘキサノール、ドデカノール、シクロヘキサノールおよびトリメチルシクロヘキサノールを含む。
【0078】
好適な単官能性エポキシ化合物は、分岐状モノカルボン酸のグリシジルエステル、たとえばResolution社からのCardura(商標)Eを包含する。特に、ポリエステルには、Cardura(商標)Eは全ポリエステルバインダーの重量当たり25重量%以下、好ましくは22.5重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらにより好ましくは17.5重量%以下、最も好ましくは15重量%以下の量で使用されることが好まれる。
【0079】
効率的な架橋のためには、架橋剤中の分岐がそこに存在するところの炭素原子からできるだけ離れて、酸基の実質的な部分が位置している、酸官能性架橋剤を使用することが好都合である。
【0080】
任意的に、グリシジル官能性バインダー並びに酸官能性および/または酸無水物官能性架橋剤に基づいたこれらの系は、1以上のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよび/またはポリウレタンポリオールを有してもよい。
【0081】
アミノ官能性架橋剤
【0082】
酸−エポキシ反応から生じるヒドロキシル基と、またはバインダー若しくは架橋剤のさらなるヒドロキシル基と反応して、エーテル基構造を生成することができるアミノ官能性架橋剤は、アミノ樹脂を含んでいる。アミノ樹脂は当業者に周知であり、多くの会社によって商業製品として提供されている。これらのアミノ樹脂は、アルデヒド、とりわけホルムアルデヒドと、たとえば尿素、メラミン、グアナミン、およびベンゾグアナミンとの縮合物を含んでいる。アルコール基、好ましくはメチロール基を有するアミノ樹脂は、一般に部分的に、または好ましくは完全にアルコールでエーテル化されている。低級アルコール、とりわけメタノールまたはブタノールでエーテル化された、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂が特に使用される。特に好まれるには、低級アルコール、とりわけメタノールおよび/またはエタノールおよび/またはブタノールでエーテル化され、それでもなおトリアジン環当たり窒素原子に結合された水素原子を平均して0.1〜0.25個有するメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を、架橋剤として使用することである。
【0083】
酸−エポキシ反応から生じるヒドロキシル基と、またはバインダー若しくは架橋剤のさらなるヒドロキシル基と反応して、エーテル基を生成する、トリアジンに基づいた架橋剤は、たとえば欧州特許出願公開第604922号にも記載されたトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン等のようなエステル交換架橋剤も含んでおり、該公報の開示である6ページ、1〜23行および6ページ、46行〜7ページ、3行は引用によって本明細書に取り込まれる。弾性擦過傷の回復はトリアジン化合物によってマイナスの影響を受けうると考えられるので、とりわけ式(I)に従い、低光沢損失を達成するために低ΔTg−開始点を有することが要求されるような場合には、コーティング組成物は低いカルバモイルトリアジン含有量を含んでいることが好まれ、特に全組成物当たりカルバモイルトリアジン2.0重量%未満、好ましくは1.5重量%未満、より好ましくは1.2重量%未満、さらにより好ましくは1.0重量%未満、最も好ましくは0.8重量%未満含んでいる。
【0084】
好まれる実施態様では、共架橋剤として酸官能性化合物および/または官能化されたメラミン化合物および/またはイソシアネート化合物を、架橋剤は含んでいる。
【0085】
(保護された)イソシアネート官能性架橋剤
【0086】
任意的に、本発明のコーティング組成物は、保護されたイソシアネート官能性架橋剤を含んでいる。これらの化合物は、当業者に知られた通常のイソシアネート官能性化合物に基づいている。より好ましくは、該コーティング組成物は、少なくとも2の(遊離の)イソシアネート基を持つ架橋剤を含んでいる。少なくとも2のイソシアネート基を含んでいる化合物の例は、脂肪族、脂環式、および芳香族イソシアネート、たとえばヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、二量体酸ジイソシアネート、たとえばHenkel社からのDDI(商標)1410、1,2−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシレンジイソシアネートメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシレンジイソシアネートメタン、ノルボルナンジイソシアネート、m−およびp−フェニレンジイソシアネート、1,3−および1,4−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、1,5−ジメチル−2,4−ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、2,4−および2,6−トルエンジイソシアネート、2,4,6−トルエントリイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルo−、m−、およびp−キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンジイソシアネートメタン、4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート、並びに前述のポリイソシアネートの混合物である。
【0087】
他の任意的な保護されたイソシアネート化合物は、ポリイソシアネートの付加物、たとえばビウレット、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン、アロファネート、ウレトジオン、およびこれらの混合物に基づいている。このような付加物の例は、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートの2分子とジオール、たとえばエチレングリコール1分子との付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート3分子と水1分子との付加物、トリメチロールプロパン1分子とイソホロンジイソシアネート3分子との付加物、ペンタエリスリト−ル1分子とトルエンジイソシアネート4分子との付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、これはDesmodur(商標)N3390の商品名でBayer社から入手可能、ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオンおよびイソシアヌレートの混合物、これはDesmodur(商標)N3400の商品名でBayer社から入手可能、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート、これはDesmodur(商標)LS2101の商品名でBayer社から入手可能、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート、これはVestanat(商標)T1890の商品名でHuls社から入手可能である。さらに、イソシアネート官能性モノマー、たとえばα,α’−ジメチル−m−イソプロペニルベンジルイソシアネートの(コ)ポリマーは使用に適している。最後に、当業者に知られているように、上述のイソシアネートおよびこれらの付加物は、保護されたイソシアネートの形で少なくとも部分的に存在することができる。
【0088】
ポリイソシアネートを保護するために、ポリイソシアネートの保護のために利用されることができ、十分に低い脱保護温度を有する任意の保護剤を用いることが、原則として可能である。この種の保護剤は当業者に周知であり、本明細書でさらに詳細に説明する必要はない。第一の保護剤で保護されたイソシアネート基および第二の保護剤で保護されたイソシアネート基の両方を有する、保護されたポリイソシアネートの混合物を用いることが可能である。国際特許出願公開第98/40442号が引用される。
【0089】
本発明に従うコーティング組成物は、1成分または2成分組成物であることができる。1成分組成物では、全てのバインダー成分および架橋剤成分は1包装物中に混合され、そして比較的高温で、一般に100℃超で、通常、触媒の存在下に反応して、架橋を形成する。2成分組成物では、バインダーおよび架橋剤成分は別個に貯蔵されて、時期尚早な反応を避ける。両包装物を混合することは、コーティング組成物の施与直前に行われる。遊離イソシアネートを有する架橋剤が通常、2成分組成物に使用される。アミノ樹脂および保護されたイソシアネートは、ともに1成分コーティング組成物に普通に使用される架橋剤の例である。
【0090】
2成分組成物については、各部材が1成分を含有する部材のキットとして、該2成分が通常一緒に販売される。したがって、本発明の他の実施態様耐は、エポキシ官能性アクリルバインダー、エポキシ官能性ポリエステルバインダーまたはエポキシ官能性ポリエーテルバインダーの群から選択された少なくとも1のエポキシ官能性バインダーを含んでいる第一キット部材、および該バインダーの反応基と反応性の1以上の酸官能性架橋剤を含んでいる第二キット部材を含んでいる、耐洗車性コーティングを製造するための部材のキットに関し、該バインダーおよび架橋剤のキット部材が施与されると、上記のように本発明に従うコーティング組成物および高光沢、低LoGコーティングが得られる。
【0091】
本発明に従う硬化コーティング組成物のガラス転移温度は、30℃〜170℃、好ましくは40℃〜160℃、より好ましくは50℃〜150℃、さらにより好ましくは50℃〜140℃、最も好ましくは60℃〜130℃である。
【0092】
本発明に従うコーティング組成物は、1以上のコバインダーを含んでいてもよい。コバインダーは、アクリルバインダー、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオールの群から選択されることができる。2成分系では、コバインダーは、ケチミン、オキサゾリジン、保護されたアミンまたは2環式オルトエステルのバインダーであることもできる。
【0093】
好まれる実施態様では、コーティング組成物は、存在するバインダーの全量当たりエポキシ官能性アクリルバインダーを少なくとも25重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、さらにより好ましくは少なくとも35重量%、最も好ましくは少なくとも40重量%含んでいる。
【0094】
本発明のコーティング組成物は通常、バインダーまたは複数の(コ)バインダーが40〜90、好ましくは50〜75重量%の量で存在し、かつ一または複数の架橋剤が10〜60、好ましくは25〜50重量%の量で存在するような量で、(コ)バインダーおよび架橋剤を含んでおり、重量パーセントはバインダー+架橋剤=100重量%を基準とする。
【0095】
コーティング組成物は、慣用の添加剤および助剤、たとえば分散剤、染料、硬化反応促進剤、顔料、およびレオロジー調整剤を含有することができる。コーティング組成物は、Nuplex Resins社から入手できるSCAのような垂れ抑制剤も含んでいてもよい。
【0096】
コーティング組成物は、乾燥粉体形態でまたは液体形態であることができる。本発明に従うコーティング組成物は好ましくは液体である。コーティング組成物は、溶媒型または水性型であることができる。好ましくは、コーティング組成物は溶媒型である。コーティング組成物は好ましくは、全組成物当たり揮発性有機溶媒780g/l未満、より好ましくは420g/l未満、最も好ましくは250g/l未満含んでいる。
【0097】
本発明に従うコーティング組成物は好ましくは、いわゆるベースコート/クリアコート系におけるクリアコートとして、または顔料を含んでいないトップコートとして使用される。本発明に従うコーティング組成物をクリアコートまたはトップコートとして使用すると、該クリアコートまたはトップコートが洗車に誘起される光学欠陥、たとえば光沢損失およびDOI(鮮映性)の損失を被ることを防ぐことができる。ベースコート/クリアコート系に使用されるベースコートは、たとえば1成分または2成分系であることができる。該ベースコートは、物理的に乾燥し、または化学的に乾燥することができる。該ベースコートは水に媒体され、または溶媒に媒体されることができる。
【0098】
本発明に従うコーティング組成物は、任意の望ましい様式、たとえばロール掛け、スプレー法、ブラシ掛け、散布法、流し塗り、浸漬法、静電スプレー法、または電気泳動法で、好ましくはスプレー法によって、最も好ましくは静電スプレー法によって基体に施与されることができる。
【0099】
好適な基体は、任意的に、たとえばプライマー、フィラーで、または上記のようにクリアコートについてはベースコートで前処理された金属、合成物質(プラスチック)性のものであることができる。環境温度で、または任意的に、硬化時間を低減するために高められた温度で、硬化は実施されることができる。好ましくは、焼付け炉中で10〜60分間にわたって、たとえば60〜160℃の範囲の比較的高温度で、コーティング組成物は焼付けされることができる。
【0100】
当業者に知られた適当な反応性化合物および添加剤と混合されると、化学線放射、たとえばUV光、IR光、NIR光によって、硬化は誘起されることもできる。クリアコートはベースコート上にウェットオンウェットで施与されることができる。任意的に、クリアコートの施与前に、ベースコートは部分的に硬化されてもよい。また、クリアコートの施与前に、ベースコートは完全に硬化されてもよい。
【0101】
本発明の組成物は、自動車およびオートバイの最初の上塗りに特に適している。コーティングされた金属基体の調製に、たとえば再上塗り業、特に車体工場で、自動車および輸送乗物を補修するために、並びに大型輸送乗物、たとえば列車、トラック、バス、および飛行機の上塗りに、該組成物は使用されることもできる。
【0102】
本発明は、以下の実施例においてさらに説明され、該実施例は本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【0103】
語句の明細
Setamine(商標)US 138 BB−70:Akzo Nobel社からのブチル化メラミン樹脂
Setalux(商標)8503 SS−60:Akzo Nobel社からのアクリル樹脂含有グリシジルメタクリレート
Tinuvin(商標)328:Ciba Specialty Chemicals社からのUV光安定剤
Torigonox(商標)21S:Akzo Nobel社からの第三級ブチルパーオキシオクタノエート
Torigonox(商標)B:Akzo Nobel社からのジ第三級ブチルパーオキシド
BYK(商標)306:Byk−Chemie社からの流れ添加剤
BYK(商標)331:Byk−Chemie社からの流れ添加剤
Desmodur(商標)N 3390:Bayer社からのポリイソシアネート硬化剤
Dowanol PMアセテート:Dow Chemicals社からのメトキシプロピルアセテート溶媒
Armeen(商標)DM 12D:Akzo Nobel Chemicals社からの触媒(N,N−ジメチルドデシルアミン)
Cymel(商標)303:Cytec社からの架橋剤(メチロール化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂)
ERL−4299:Union Carbide社からのエポキシ硬化剤(ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート)
Dow Corning 200:Dow Corning社からのレベリング剤
【実施例1】
【0104】
バインダー実施例1
【0105】
Setalux(商標)8503 SS−60、Akzo Nobel Resins社からのグリシジルメタクリレート官能性バインダー
【実施例2】
【0106】
バインダー実施例2
【0107】
撹拌機、熱電対、凝縮器、窒素入口、および投入口を備えた鋼鉄製反応容器に、ブチルアセテート1366gおよびクメンヒドロパーオキシド23.50gが仕込まれ、160℃および圧力約2.5バールまで加熱された。グリシジルメタクリレート620.1g、ブチルアクリレート284.7g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート202.4g、スチレン807.9g、エチルヘキシルアクリレート414.2gおよびエチルヘキシルメタクリレート151.1g、Trigonox(商標)Bの31gおよびブチルアセテート48gの混合物が、5時間にわたって反応容器中にポンプで徐々に送られた。添加後、モノマー容器、ポンプおよび管がブチルアセテート61.9gですすがれた。反応混合物は160℃に3時間保たれ、最後に80℃まで冷却され、固形分含有量60%までブチルアセテートで希釈され、そしてろ過された。得られた生成物は、重量平均分子量8144、多分散度2.59および計算されたヒドロキシル価35mgKOH/固形樹脂gを有していた。
【実施例3】
【0108】
バインダー実施例3
【0109】
撹拌機、熱電対、凝縮器、窒素入口、および投入口を備えた鋼鉄製反応容器に、ブチルアセテート1366gおよびクメンヒドロパーオキシド23.50gが仕込まれ、160℃および圧力約2.5バールまで加熱された。グリシジルメタクリレート880.5g、ブチルアクリレート770.4g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート202.4g、スチレン496.1g、ブチルメタクリレート131.0g、Trigonox(商標)Bの31gおよびブチルアセテート48gの混合物が、5時間にわたって反応容器中にポンプで徐々に送られた。添加後、モノマー容器、ポンプおよび管がブチルアセテート61.9gですすがれた。主施量後の30分間にわたって、Trigonox(商標)21Sの6.20gおよびブチルアセテート6.2gの混合物が、反応容器中にポンプで送られた。反応混合物は温度に1時間保たれ、それから90℃まで冷却され、そしてろ過された。得られた生成物は、重量平均分子量5563、多分散度2.16および計算されたヒドロキシル価35mgKOH/固形樹脂gを有していた。
【実施例4】
【0110】
バインダー実施例4
【0111】
撹拌機、熱電対、凝縮器、窒素入口、および投入口を備えた鋼鉄製反応容器に、ブチルアセテート1366gおよびクメンヒドロパーオキシド23.50gが仕込まれ、160℃および圧力約2.5バールまで加熱された。グリシジルメタクリレート1176.0g、ブチルアクリレート780.6g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート202.4g、スチレン321.7g、Trigonox(商標)Bの24.8gおよびブチルアセテート48gの混合物が、5時間にわたって反応容器中にポンプで徐々に送られた。添加後、モノマー容器、ポンプおよび管がブチルアセテート61.9gですすがれた。次に、主施量の終了30分後に、Trigonox(商標)21Sの6.20gおよびブチルアセテート6.2gの混合物が、反応容器中にポンプで送られ、ブチルアセテート31gですすがれた。反応混合物は温度に1時間保たれた。次に、主施量の終了90分後に、再びTrigonox(商標)21Sの6.20gおよびブチルアセテート6.2gの混合物が、反応容器中にポンプで送られ、ブチルアセテート31gですすがれた。反応混合物は温度に1時間保たれ、それから90℃まで冷却され、そしてろ過された。得られた生成物は、重量平均分子量5477、多分散度2.22および計算されたヒドロキシル価35mgKOH/固形樹脂gを有していた。
【実施例5】
【0112】
バインダー実施例5
【0113】
撹拌機、熱電対、凝縮器、窒素入口、および投入口を備えた鋼鉄製反応容器に、メトキシプロピルアセテート1366gおよびクメンヒドロパーオキシド23.50gが仕込まれ、175℃および圧力約2.5バールまで加熱された。グリシジルメタクリレート1176.0g、ブチルアクリレート780.6g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート202.4g、スチレン321.7g、Trigonox(商標)Bの62gおよびメトキシプロピルアセテート62gの混合物が、5時間にわたって反応容器中にポンプで徐々に送られた。添加後、モノマー容器、ポンプおよび管がメトキシプロピルアセテート61.9gですすがれた。次に、主施量の終了30分後に、Trigonox(商標)21Sの6.20gおよびメトキシプロピルアセテート6.2gの混合物が、反応容器中にポンプで送られ、メトキシプロピルアセテート31gですすがれた。反応混合物は温度に1時間保たれた。次に、主施量の終了90分後に、再びTrigonox(商標)21Sの6.20gおよびメトキシプロピルアセテート6.2gの混合物が、反応容器中にポンプで送られ、メトキシプロピルアセテート31gですすがれた。反応混合物は温度に1時間保たれ、それから90℃まで冷却され、そしてろ過された。得られた生成物は重量平均分子量2564、多分散度1.92および計算されたヒドロキシル価35mgKOH/固形樹脂gを有していた。
【実施例6】
【0114】
バインダー実施例6
【0115】
撹拌機、熱電対、凝縮器、窒素入口、および投入口を備えた鋼鉄製反応容器に、メトキシプロピルアセテート1366gおよびクメンヒドロパーオキシド23.50gが仕込まれ、175℃および圧力約2.5バールまで加熱された。グリシジルメタクリレート880.5g、ブチルアクリレート770.4g、ブチルメタクリレート131.0g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート202.4gおよびスチレン496.1g、Trigonox(商標)Bの62gおよびメトキシプロピルアセテート61.5gの混合物が、5時間にわたって反応容器中にポンプで徐々に送られた。添加後、モノマー容器、ポンプおよび管がメトキシプロピルアセテート61.9gですすがれた。次に、主施量の終了30分後に、Trigonox(商標)21Sの6.20gおよびメトキシプロピルアセテート6.2gの混合物が、反応容器中にポンプで送られ、メトキシプロピルアセテート31gですすがれた。反応混合物は温度に1時間保たれた。次に、主施量の終了90分後に、再びTrigonox(商標)21Sの6.20gおよびメトキシプロピルアセテート6.2gの混合物が、反応容器中にポンプで送られ、メトキシプロピルアセテート31gですすがれた。反応混合物は温度に1時間保たれ、それから90℃まで冷却され、そしてろ過された。得られた生成物は、重量平均分子量2837、多分散度1.87および計算されたヒドロキシル価35mgKOH/固形樹脂gを有していた。
【実施例7】
【0116】
架橋剤実施例7
【0117】
このサンプルは、米国特許第4,703,101号実施例Fの再現試験品である。トリメチロールプロパンと無水メチルヘキサヒドロフタル酸とのポリ酸半エステルが、以下の混合物、すなわちトリメチロールプロパン514.9g、無水メチルヘキサヒドロフタル酸1935gおよびメチルイソブチルケトン1050gから調製された。該トリメチロールプロパンおよびメチルイソブチルケトンは、適当な反応容器に仕込まれ、窒素環境下に115℃まで加熱された。温度112℃〜117℃を維持しながら、該無水メチルヘキサヒドロフタル酸が2時間にわたって仕込まれた。反応混合物はこの温度に約3時間保たれた。反応生成物は次に室温まで冷却され、固形分含有量70.2%および(固形分当たりの)酸価287mgKOH/gおよび数平均分子量511および多分散度1.13を有していた。
【実施例8】
【0118】
架橋剤実施例8
【0119】
ポリ酸半エステルが以下のように調製された。メチルイソブチルケトン1290g、トリメチロールプロパン400.2gおよびジブチルスズジラウレート0.1gが適当な鋼鉄製反応器に仕込まれ、約2.8バールの圧力で150℃まで加熱された。次に、ε−カプロラクトン1029gが、2時間にわたって反応容器中にポンプで徐々に送られた。添加後、該容器、ポンプおよび管がメチルイソブチルケトン30gですすがれ、反応混合物は150℃に4時間保たれた。それから反応混合物は80℃まで冷却され、そしてろ過された。次に中間生成物のこの溶液916gが、適当な反応容器に仕込まれ、窒素環境下に115℃まで加熱された。温度112℃〜117℃を維持しながら、無水メチルヘキサヒドロフタル酸504.3gが2時間にわたって仕込まれ、施量容器がメチルイソブチルケトン10gですすがれ、反応混合物に加えられた。反応混合物はこの温度に約3時間保たれた。反応生成物は次に80℃まで冷却され、そしてろ過された。反応生成物は、固形分含有量63.2%および(固形分当たりの)酸価198mgKOH/gおよび数平均分子量1031および多分散度1.20を有していた。
【実施例9】
【0120】
架橋剤実施例9
【0121】
架橋剤サンプル7からの中間生成物の溶液916gが、適当な反応容器に仕込まれ、窒素環境下に115℃まで加熱された。温度112℃〜117℃を維持しながら、無水コハク酸300.3gが2時間にわたって(15分間毎に等しい小分け分で)仕込まれた。最後に、メチルイソブチルケトン10gが反応混合物に添加された。反応混合物は115℃に約3時間保たれた。反応生成物は次に80℃まで冷却され、そしてろ過された。反応生成物は、固形分含有量58.8%および(固形分当たりの)酸価259mgKOH/gおよび数平均分子量1053および多分散度1.30を有していた。
【実施例10】
【0122】
架橋剤実施例10
【0123】
ジ−トリメチロールプロパンと無水メチルヘキサヒドロフタル酸とのポリ酸半エステルが、以下の混合物、すなわちジ−トリメチロールプロパン300g、無水メチルヘキサヒドロフタル酸806.4gおよびメチルイソブチルケトン400gから調製された。該ジ−トリメチロールプロパンおよびメチルイソブチルケトンは、適当な反応容器に仕込まれ、窒素環境下に115℃まで加熱された。温度112℃〜117℃を維持しながら、該無水メチルヘキサヒドロフタル酸が2時間にわたって仕込まれた。施量容器がメチルイソブチルケトン74gですすがれ、反応器に加えられた。反応混合物はこの温度に約3時間保たれた。反応生成物は次に80℃まで冷却され、そしてろ過された。反応生成物は、固形分含有量69.8%および(固形分当たりの)酸価253mgKOH/gおよび数平均分子量906および多分散度1.06を有していた。
【実施例11】
【0124】
架橋剤実施例11
【0125】
ジ−トリメチロールプロパン250g、ε−カプロラクトン228gおよびジブチルスズジラウレート0.1gが適当な反応容器に仕込まれ、窒素環境下に150℃まで加熱された。反応混合物はこの温度に4時間保たれ、それから115℃まで冷却された。メチルイソブチルケトン400gが添加され、次に温度112℃〜117℃を維持しながら、無水メチルヘキサヒドロフタル酸672gが2時間にわたって仕込まれた。施量容器がメチルイソブチルケトン92gですすがれ、反応器に加えられた。反応混合物は115℃に約3時間保たれた。反応生成物は次に80℃まで冷却され、そしてろ過された。反応生成物は、固形分含有量72.0%および(固形分当たりの)酸価201mgKOH/gおよび数平均分子量1304および多分散度1.13を有していた。
【実施例12】
【0126】
架橋剤実施例12
【0127】
メチルイソブチルケトン400gおよびPerstorp社のポリオール PP30の336gが、適当な反応容器に仕込まれ、窒素環境下に115℃まで加熱された。次に温度112℃〜117℃を維持しながら、無水メチルヘキサヒドロフタル酸806.4gが2時間にわたって仕込まれた。施量容器がメチルイソブチルケトン90gですすがれ、反応器に加えられた。反応混合物は115℃に約3時間保たれた。反応生成物は次に80℃まで冷却され、そしてろ過された。反応生成物は、固形分含有量70.2%および(固形分当たりの)酸価245mgKOH/gおよび数平均分子量943および多分散度1.09を有していた。
【実施例13】
【0128】
架橋剤実施例13
【0129】
トリメチロールプロパン201g、ε−カプロラクトン171gおよびジブチルスズジラウレート0.1gが、適当な反応容器に仕込まれ、窒素環境下に150℃まで加熱された。反応混合物はこの温度に4時間保たれ、それから115℃まで冷却された。メチルイソブチルケトン400gが添加され、次に温度112℃〜117℃を維持しながら、無水メチルヘキサヒドロフタル酸504gが2時間にわたって仕込まれた。施量容器がメチルイソブチルケトン40gですすがれ、反応器に加えられた。反応混合物は115℃に約3時間保たれた。反応生成物は次に100℃まで冷却され、ヘキサメチレンジイソシアネート252gが1時間にわたって添加され、ろ過された。施量容器がメチルイソブチルケトン43gですすがれ、反応混合物に加えられた。反応混合物は115℃まで加熱され、この温度に45分間保たれ、それから80℃まで冷却され、そしてろ過された。反応生成物は、固形分含有量71.7%および(固形分当たりの)酸価145mgKOH/gおよび数平均分子量1463および多分散度1.96を有していた。
【実施例14】
【0130】
架橋剤実施例14
【0131】
架橋剤実施例14は、Uniqema社のPripol(商標)1040である。
【実施例15】
【0132】
コーティング組成物1〜9
【0133】
表1に従って、適当なバインダーが適当な架橋剤と混合され、固形塗料100部当たり、N,N−ジメチルエタノールアミン触媒1.0部、Byk(商標)306の0.1部、Byk(商標)331の0.15部およびTinuvin(商標)328の3.0部が添加され、混合された。Dowanol(商標)PMアセテートで、23℃においてDINカップ4で28秒間になるまで、該塗料は希釈された。
【0134】
【表1】

【0135】
コーティング組成物比較例1
【0136】
Setalux 8503 SS−60の74.8g(固形分)、架橋剤実施例7の25.2g(固形分)、N,N−ジメチルエタノールアミン1.0g、BYK(商標)306の0.1g、BYK(商標)331の0.15gおよびTinuvin(商標)328の3.0gが混合され、次にDowanol(商標)PMアセテートでスプレー粘度(28秒間DIN4カップ、23℃)まで希釈された。
【0137】
コーティング組成物比較例2
【0138】
バインダー実施例5の57.5g(固形分)、架橋剤実施例10の42.5g(固形分)、N,N−ジメチルエタノールアミン1.0g、BYK(商標)306の0.1g、BYK(商標)331の0.15gおよびTinuvin(商標)328の3.0gが混合され、次にDowanol(商標)PMアセテートでスプレー粘度(28秒間DIN4カップ、23℃)まで希釈された。
【0139】
コーティング組成物比較例3
【0140】
バインダー実施例2の59.9g(固形分)、架橋剤実施例8の31g(固形分)、Setamine(商標)US 138 BB−70の9.1g(固形分)、N,N−ジメチルエタノールアミン1.0g、BYK(商標)306の0.1g、BYK(商標)331の0.15gおよびTinuvin(商標)328の3.0gが混合され、次にDowanol(商標)PMアセテートでスプレー粘度(28秒間DIN4カップ、23℃)まで希釈された。
【0141】
市販のプライマーおよび市販の濃青色ベースコートを電着塗装された鋼鉄パネルに、コーティング組成物がスプレー塗布された。層間に1分間のフラッシュオフを置いて、ベースコートは2層で塗布された。コーティング組成物は、5分間のフラッシュオフ後に、同様に2層で塗布された。10分間のフラッシュオフ後、完成した系は140℃で30分間焼付けされた。
【0142】
Renault社規格RNUR 2204−C.R.PO N°2204に従う小型洗車装置を用いて、耐洗車性は測定された。この試験において、商業的洗車に使用されるものに似た回転洗車ブラシに、コーティングされたパネルは10分間付された。この操作の間、仏国、パリ、Prolabo社からの酸化アルミニウムペーストDurmax 24Hのスラリーが、パネル全面に連続的にスプレーされた。光沢損失が、耐洗車性の尺度としてとられる。観察された光沢損失は以下のように、すなわち観察された光沢損失=(初期光沢−最終光沢)/初期光沢*100%と定義される。初期光沢は、洗車試験前の硬化されたコーティングの光沢と定義される。最終光沢は、洗車試験後の硬化されたコーティングの光沢と定義される。Byk Gardner社からのヘイズ・光沢測定器を使用してISO 2813に従って、光沢は測定された。洗車試験と光沢損失測定との間の経過時間は、約1〜3時間であった。洗車試験と光沢測定との間、全サンプルは室温で貯蔵された。
【0143】
DTMA測定のために、ドクターナイフを使用して未乾燥膜厚さ100ミクロンでポリプロピレンパネル上にコーティング組成物を施与することによって、自立性コーティング膜が調製された。10分間のフラッシュオフ期間の後、該パネルは140℃で30分間焼付けされた。硬化されたコーティングは、ポリプロピレンパネルから容易に引き剥がされて、コーティングの自立性膜が製造されることができる。該自立性膜から、DTMA測定のための3mm幅および少なくとも30mm長のサンプルが切られた。DTMAの引張試験台のクランプ間の長さは30mmであった。11Hzおよび加熱速度5℃/分において、DTMA測定は実施され、これからガラス転移温度の開始点Tg開始点(K単位)、ガラス転移温度の幅ΔTg(℃単位)、および架橋密度パラメータX(kPa/K単位)が、上記のように評価された。光沢損失(LoG)は式(I)を使用して計算された。さらに、各種のコーティング組成物のパラメータが測定され、特にMn、MF、NCO、AVX、CL、EEWおよびLPFが、適当なときに、上記のように測定された。全結果が表2および3にまとめられている。
【0144】
【表2】

【0145】
【表3】

【0146】
実施例1〜9のコーティング組成物に基づいたコーティング組成物は、比較例1、2、および3と比較して、より低い観察された光沢損失、したがって改良された耐洗車性を有することが、明白に証明される。式(I)に従って計算された光沢損失LoGは、観察された光沢損失値を正確に予測する。また、式(II)に従うL値は、低い観察された光沢損失値をもたらすような組成物を正確に予測する。
【0147】
コーティング組成物比較例4
【0148】
従来技術の特許である米国特許第4,764,430号のコーティング組成物が再現試験された。エポキシ含有アクリルポリマーは、実施例Aの再現試験品であり、トリメチロールプロパン無水メチルヘキサヒドロフタル酸は実施例Cの再現試験品であった。Tinuvin 328の3.0g、メチルイソブチルケトン46.9g、Dow Corning 200の1.0g、ERL−4299の16.8g、Armeen DM 12Dの2.0g、(固形分含有量56.9%を持つ)エポキシ含有アクリルポリマー53.4g、Cymel 303の20.4g、(固形分含有量80.0%を持つ)トリメチロールプロパン無水メチルヘキサヒドロフタル酸41.0gおよび2−エチルヘキサン酸10.0gが、混合された。得られた配合されたコーティング組成物は、樹脂固形分56パーセントを含有し、No.4Fordカップ粘度16秒間を有していた。
【0149】
溶媒型青色ベースコート上に、コーティングの間に室温で90秒間のフラッシュオフを置いて、クリアコート配合物が2コーティングで施与された。第二のクリアコートが施与された後、該コーティングは空気噴流を5分間受け、それから140℃で40分間焼付けされ(パネルは水平位置)、そして耐洗車性を試験された。
【0150】
同じクリアコート配合物が、同じスプレーおよび硬化条件を使用して、ポリプロピレン(PP)パネル上にもスプレーされた。DMA分析を行うために、PPパネルから該クリアコートは引き離されることができた。洗車パネルのクリアコートの初期光沢は82GU(光沢単位)であった。洗車後、最終光沢53GUが見出され、これは観察された光沢損失0.35を意味する。以下のパラメータが該クリアコートについて見出された。すなわち、Tg開始点は58℃であり、ΔTgは23℃であり、架橋密度は8.8kPa/Kであった。これらの測定されたDMAデータから、(請求項1の式(I)を使用して)LoG0.44が計算された。耐薬品性を試験するために、キシレン試験が行われた。1分間後に既に、該コーティングは膨潤し始めた。明らかに、従来技術のコーティングは、劣った耐洗車性および耐薬品性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ官能性アクリルバインダー、エポキシ官能性ポリエステルバインダーまたはエポキシ官能性ポリエーテルバインダーの群から選択された少なくとも1のエポキシ官能性バインダー、並びに該バインダーの反応基と反応性の1以上の酸官能性架橋剤を含んでいる、耐洗車性コーティングを製造するためのコーティング組成物であって、コーティングへの硬化後に、該コーティングが初期光沢少なくとも81GUおよび光沢損失(LoG)0.25未満を有するように、該バインダーおよび架橋剤が選択され、ここで、光沢損失は式(I)によって決定され、

式(I)で、A=−8.03、B=−0.21、C=328およびD=−0.00304であり、
Xは架橋密度パラメータをkPa/Kで、Tg開始点はTg転移の開始温度をKで、およびΔTgはガラス転移温度の幅をKで夫々表し、全3パラメータは、11Hzおよび加熱速度5℃/分におけるDMA試験で測定され、
およびここで、該少なくとも1のエポキシ官能性バインダーがアクリルバインダーである場合には、該アクリルバインダーは(1)モノマー全重量当たりエポキシ基含有モノマー少なくとも20重量%を含んでおり、およびこのアクリルバインダーは(2)アクリル非エポキシ官能性モノマーについては253Kを超えず、またはメタクリル若しくは非アクリルの非エポキシ官能性モノマーについては293Kを超えないモノマーTgを持つ非エポキシ官能性低Tgモノマーの群から選択されたモノマー10モル%超を含んでおり、およびここで(3)該アクリルバインダーがEEW値(EEWは平均エポキシ当量である。)200〜700g/モルおよびOHVC値30mgKOH/固形コーティングg未満を有する、上記のコーティング組成物。
【請求項2】
エポキシ官能性アクリルバインダー、エポキシ官能性ポリエステルバインダーまたはエポキシ官能性ポリエーテルバインダーの群から選択された少なくとも1のエポキシ官能性バインダー、並びに該バインダーの反応基と反応性の1以上の酸官能性架橋剤および任意的にアミノ架橋剤若しくはイソシアネート架橋剤を含んでいる、耐洗車性コーティングを製造するためのコーティング組成物であって、コーティングへの硬化後に、該コーティングが初期光沢少なくとも81GUおよび光沢損失L0.25未満を有するように、該バインダーおよび架橋剤が選択され、ここで、光沢損失は式(II)によって決定され、

ここで、Mnは組成物中の全エポキシ官能性バインダーの数平均分子量を、LPFはアクリルバインダー中の低Tgモノマーの重量平均された低極性分率を、EEWは平均エポキシ当量を、CLは該架橋剤の炭素長を、AVXは酸官能性架橋剤の重量平均された酸価を、およびMFはコーティング組成物中の全固形分当たりのアミノ架橋剤の重量分率を夫々表し、NCOは硬化されたコーティング組成物中に存在するミリモルNCO基/gで表現されたNCO基の全濃度と定義され、ここでA1=0.479、A2=0.000932、A3=−28.103、A4=−0.000858、A5=6.788、A6=0.00920、A7=−7.003、A8=0.391、A9=−0.00269、A10=−0.00000343、A11=0.00311、A12=79.122であり、および該少なくとも1のエポキシ官能性バインダーがEEW価200〜700およびOHVC値30mgKOH/固形コーティングg未満を有する、上記のコーティング組成物。
【請求項3】
実質的にシロキサンを含まないことを特徴とする、請求項1または2に従うコーティング組成物。
【請求項4】
実質的に顔料を含まないことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項5】
実質的にナノスケール粒子を含まないことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項6】
コーティングのガラス転移温度の幅ΔTgが、70℃未満であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項7】
硬化後にコーティングが、i)初期光沢少なくとも81GU、ii)光沢損失(LoG)0.25未満およびiv)架橋密度パラメータX 7〜45kPa/Kを有する、請求項1〜6のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項8】
架橋剤が、官能化されたメラミン化合物を含んでいる、請求項1〜7のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項9】
架橋剤が、イソシアネート官能性または保護されたイソシアネート官能性化合物を含んでいる、請求項1〜8のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項10】
酸官能性架橋剤が、鎖延長剤としてラクトン、好ましくはε−カプロラクトンを含んでいる、請求項1〜9のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項11】
バインダーが、モノマー全重量当たり低極性モノマー少なくとも10重量%を含んでいる、請求項1〜10のいずれか1項に従うコーティング組成物。
【請求項12】
少なくとも1の酸官能性架橋剤を含んでいる第一部材、および少なくとも1のエポキシ官能性バインダーを含んでいる第二部材を含んでおり、これらが一緒にされると、請求項1〜11のいずれか1項に従うコーティング組成物を形成する、耐洗車性コーティングを製造するための部材のキット。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に従うコーティング組成物が基体に施与され、その後の段階で硬化され、硬化後に該コーティングが、初期光沢少なくとも81GUおよび光沢損失(LoG)0.25未満を有することを特徴とする、耐洗車性コーティングを調製する方法。
【請求項14】
コーティングが、少なくとも60℃の温度で硬化される、請求項13に従う方法。
【請求項15】
少なくとも1の酸官能性架橋剤が鎖延長剤と反応される、請求項13または14に従う方法。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか1項に従うコーティング組成物、または請求項12に従う部材のキットを耐洗車性コーティングを調製するために使用する方法。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか1項に従うコーティング組成物、または請求項12に従う部材のキットを、オートバイ、自動車、列車、バス、トラック、および飛行機の上塗りおよび再上塗りに、好ましくは顔料を含んでいないトップコートまたはクリアコートとして使用する方法。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれか1項に従うコーティング組成物、または請求項12に従う部材のキットから製造されている、コーティングで、好ましくは顔料を含んでいないトップコートまたはクリアコートで少なくとも部分的に被覆されている物品、特にオートバイ、自動車、列車、バス、トラック、および飛行機の本体部品。

【公表番号】特表2008−518071(P2008−518071A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538407(P2007−538407)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055550
【国際公開番号】WO2006/045808
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(505396349)ヌプレクス レジンズ ビー.ブイ. (13)
【Fターム(参考)】