説明

コーティング装置およびコーティング方法

本発明は、真空排気が可能でありかつ基板(30)を受け入れるように構成される少なくとも1つの受け入れ容器と、その受け入れ容器の中に少なくとも1種の気体状前駆物質を導入するのに用いられる少なくとも1つのガス供給装置と、所定の長さ方向の範囲を有すると共に少なくとも1つの関連する機械的固定装置によって固定される少なくとも1つの加熱可能な活性化要素とを含むコーティング装置に関する。活性化要素には、少なくとも2つの接点要素を介して電流を供給することが可能であり、その接点要素は、受け入れ容器に対して事実上不動であるように固定される。活性化要素は、受け入れ容器に対して可動に配置される。本発明は、さらに、対応するコーティング方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーティング装置に関する。このコーティング装置は、真空排気が可能でありかつ基板(30)を受け入れるように構成される少なくとも1つの受け入れ容器(10)と、その受け入れ容器(10)の中に少なくとも1種の気体状前駆物質を導入するように構成される少なくとも1つのガス供給装置(20、21、22)と、所定の長さ方向の範囲(広がり)を有すると共に少なくとも1つの専用の機械的固定装置によって固定される少なくとも1つの加熱可能な活性化要素(40)とを備えている。本発明は、また、対応するコーティング方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
上記のタイプのコーティング装置は、先行技術によれば、ホットワイヤ活性化化学蒸着法(hot-wire activated chemical vapor deposition)による基板コーティング用として意図されている。堆積層は、例えば、炭素、ケイ素またはゲルマニウムを含むことができる。これに対応して、気体状前駆物質は、例えば、メタン、モノシラン、モノゲルマン、アンモニアまたはトリメチルシランを含むことができる。
【0003】
K.Honda、K.OhdairaおよびH.Matsumuraは、“Jpn.J.App.Phys.”の第47巻第5号において、ケイ素堆積用として、冒頭に述べたタイプのコーティング装置を用いることを開示している。このため、シラン(SiH)が、ガス供給装置によって前駆物質として供給される。この先行技術によれば、この前駆物質は、活性化要素の加熱されたタングステン表面において解離しかつ活性化し、その結果、ケイ素の層またはケイ素を含む層を基板上に堆積させることができる。
【0004】
しかし、特に活性化要素の低温のクランプ点において、活性化要素の材料と前駆物質との好ましくない反応が生起するという点が、上記に引用した先行技術の欠点である。例えば、シラン化合物を前駆物質として使用すると、活性化要素上にシリサイド相が形成される結果が生じることがある。
【0005】
反応中に生じるシリサイド相は、一般的に、活性化要素の容積を変化させ、当初材料に比べて脆く、大きな機械的力に耐え得ず、かつ、電気抵抗の変化を生じる場合が多い。これは、活性化要素が数時間の運転後にすでに破壊されている場合が多いという結果をもたらす。例えば、活性化要素は、受け入れ容器内において機械的プレストレスを受けて用いられる場合があるが、この機械的プレストレスの影響下で破断することがある。機械的プレストレスの下での活性化要素の破断を防止するために、先行技術はクランプ点に不活性ガスを流すことを提案している。先行技術は、稼動寿命が一定限界まで延長されることを示してはいるが、相対的に長時間のコーティング処理を実行する場合、あるいは、短時間のコーティング処理を何回も次々と実施する場合には、それはなお不十分である。さらに、用いられる不活性ガスがコーティング処理に影響する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K.Honda、K.Ohdaira, H.Matsumura,“Jpn.J.App.Phys.”, 第47巻第5号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、ホットワイヤ活性化化学蒸着法のコーティング装置における活性化要素の稼動寿命を、コーティング処理に不利な影響を及ぼすことなく延長するという目的に基づいている。また、処理の安定性の増大、および/または、処理の制御の簡素化も、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1によるコーティング装置および請求項10によるコーティング方法によって、本発明に従って達成される。
【0009】
本発明によれば、それ自体としては既知の方法によって、コーティングするべき基板を排気可能な受け入れ容器に導入することが提案される。受け入れ容器は、例えば、アルミニウム、高級鋼、セラミック、および/またはガラスから構成することができる。受け入れ容器は、それ自体としては既知の方法で、例えば、金属またはポリマーのシール要素によって、あるいは、溶接接合、およびハンダ付けまたはロウ付接合によって、実質的に気密に閉鎖される。受け入れ容器は真空ポンプによって排気することができる。
【0010】
所定の分圧を有する少なくとも1種の気体状前駆物質が、ガス供給装置によって受け入れ容器に導入される。前駆物質は、例えば、メタンまたは他の炭化水素、シラン、ゲルマン(Germane)、アンモニア、トリメチルシラン、酸素および/または水素を含むことができる。
【0011】
層を堆積させるため、受け入れ容器内部の空間内に配置される少なくとも1つの活性化要素(活性化素子)が加熱される。本発明のいくつかの実施形態においては、活性化要素の加熱は、電子衝撃加熱および/または電気抵抗加熱によって行ってもよい。活性化要素は、実質的に高融点金属を含む。これは、モリブデン、ニオブ、タングステン、タンタル、またはこれらの金属の合金を含む群から選択することができる。さらに、活性化要素は、不可避的な不純物であるか、合金成分として、活性化要素を所要の特性に合わせる別の化学元素を含んでもよい。活性化要素は、ワイヤ、プレート、チューブ、円筒、および/またはさらに複雑な形状であってもよい。
【0012】
活性化要素の表面において、気体状前駆物質の分子は、少なくとも部分的に解離または励起される。この励起および/または解離は、活性化要素の表面の触媒特性によって強化されてもよい。この方式で活性化される分子は、基板の表面に達し、そこで所望のコーティングを形成する。さらに、気体状前駆物質の分子は、活性化要素の表面と少なくとも部分的に反応する場合がある。励起および/または解離、および/または活性化要素の材料との反応は、活性化要素の温度に応じて抑制または加速される可能性がある。
【0013】
活性化要素に電流を供給するために、少なくとも2つの接点要素(接点素子)が設けられ、それによって、活性化要素を電流源または電圧源に接続できる。活性化要素が均質な材料組成と一定の断面とを備えている場合には、電流が流れる際に蓄積される熱エネルギーは、長さ方向に沿って均等に導入される。
【0014】
接点要素は熱伝導率が高くかつ/または熱の消散率が高いので、活性化要素の温度は、接点要素から離れた部分に比べて、接点要素に近い部分において低下する可能性がある。この場合、活性化要素の温度は、接点要素に近い部分において、活性化要素の材料が優先的に前駆物質と化学反応する程度まで低下することがある。例えば、タングステンを含む活性化要素は、ケイ素を含む前駆物質とタングステン−シリサイド相を形成する場合がある。
【0015】
この問題を解決するため、本発明によれば、活性化要素を、可動固定装置によって、固定された接点要素の上で動かすことが提案される。この方策の結果、接点要素が活性化要素に(入れ替り)変化する接触点で接触することになる。この相対的な動きによって、接点要素の移動に伴って、活性化要素の温度が低下する位置も移動する効果が得られる。この結果として、活性化要素は、コーティング処理の全期間において、同じ位置において好ましくない相変換またはそのような相変換の加速を受けることがなくなる。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態においては、当初に生起する好ましくない相変換、例えば炭化物またはシリサイドの形成も、好ましくない形で変換された活性化要素の表面領域または一部分をその後高温に加熱すると、再度元に戻すことが可能である。この方法によって、活性化要素の寿命を延長できる。
【0017】
本発明によれば、(入れ替わり)変化する接点の形成は活性化要素を動かすことによって行われ、この活性化要素の動きは固定装置の移動によって与えられ、一方、接点要素は周囲の受け入れ容器に対して不動のままである。本明細書の趣旨においては、接点要素は、それが熱膨張による微小な長さ変化を受ける場合にも、あるいは熱膨張を補正し得る保持装置を含む場合にも不動である。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態においては、細長い活性化要素は、前駆物質を活性化するのに用いられる領域より長い長さを有することができる。しかし、活性化要素は、常に完全に受け入れ容器の内部に配置され、例えば収納装置の中に収納されるのではない。活性化要素を移動させることによって、活性化要素の加熱部分がその都度変化する。接点要素は固定配置されているので、接点要素間に配置される加熱部分は一定のままである。この方法によって、活性化要素の電力消費および/または温度の電気的制御が簡単化される。活性化要素の接点要素に対する移動は、固定装置の並進動作および/または固定装置の回転によって与えることができる。後者の場合には、活性化要素を、エンドレスのリングまたはループとして形成することができる。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態においては、活性化要素は少なくとも1本のワイヤを含むことができる。本発明の趣旨においては、ワイヤは円形、長円形または多角形の断面を有することができる。この方式で、活性化要素の表面積対容積比を増大できる。本発明のいくつかの実施形態においては、このような活性化要素を、少なくとも1つのローラによってガイドまたは方向転換させることができる。このローラは、接点要素および/または固定装置の一部とすることができる。
【0020】
以下、本発明を、典型的な実施形態および図面に基づいてさらに詳細に説明する。この説明は本発明の一般的概念を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるコーティング装置の基本構造を示す。
【図2】活性化領域を通ってエンドレスに導かれる活性化要素の平面図を示す。
【図3】本発明によって提案される活性化要素の典型的な実施形態であって、移動が固定装置の並進動作によって与えられる実施形態を示す。
【図4】可動な活性化要素が複数の固定された接点要素の上に導かれる実施形態における一動作態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1はコーティング装置1の断面図を示す。コーティング装置1は、例えば、高級鋼、アルミニウム、ガラス、またはこれらの材料の組合せから製造される受け入れ容器10を含む。この受け入れ容器10は、実質的に気密に周囲環境から閉鎖される。真空ポンプ(図示されていない)を、ポンプフランジ103を介して接続することができる。受け入れ容器10は、例えば、10mbar未満、10−2mbar未満、または10−6mbar未満の圧力に真空排気することができる。
【0023】
受け入れ容器10の内部には、基板30を装着することができる保持装置104が設けられる。基板30は、例えば、ガラス、ケイ素、プラスチック、セラミック、金属または合金から構成することができる。基板は、半導体ウエハ、建築用ガラス、あるいは工具とすることができ、それは、平坦なまたは湾曲した表面を有することができる。この場合、上記の材料は、ただ例として述べただけである。本発明は、解決策を提供する原理として特定の基板の使用を教示することはない。コーティング装置1の運転の間に、基板30の上にコーティング105が堆積される。
【0024】
コーティング105の組成は、気体状前駆物質の選択によって影響を受ける。本発明の一実施形態においては、前駆物質はメタンを含むことができるので、コーティング105はダイヤモンドまたはダイヤモンドライクカーボンを含む。本発明の別の実施形態においては、前駆物質はモノシランおよび/またはモノゲルマン(Monogerman)を含むことができるので、コーティングは結晶性または非晶質のケイ素および/またはゲルマニウムを含む。
【0025】
気体状前駆物質は、少なくとも1つのガス供給装置20によって受け入れ容器10の内部に導入される。ガス供給装置20は、気体状前駆物質を貯蔵容器21から得る。貯蔵容器21から取り出される前駆物質の量は制御弁22によって変えることができる。コーティング105がいくつかの異なる前駆物質から作製される場合は、貯蔵容器21は調製されたガス混合物を含んでもよいし、あるいはそうでなければ、いくつかのガス供給装置20を設けてもよく、そのそれぞれが、調合される前駆物質の構成成分を受け入れ容器10の中に導入する。
【0026】
制御弁22からガス供給装置20に供給される前駆物質の量は制御装置101によって監視される。制御装置101には、測定装置100から、分圧または絶対圧の実際値が供給される。
【0027】
気体状前駆物質を活性化するため、活性化要素40を利用できる。活性化要素40は、例えば金属シートまたはワイヤの形態の1つ以上の触媒活性表面を含む。活性化要素40は、例えば、タングステン、モリブデン、および、ニオブおよび/またはタンタルを含んでもよい。活性化要素の運転中、受け入れ容器10の内部には、活性化領域50が形成され、そこでは解離および/または励起した前駆物質の構成成分を検知できる。
【0028】
活性化要素40は、少なくとも1つの固定装置44に固定(fasten)される。固定装置(fastening device)44は、活性化要素40を、所定の位置におよび/または所定の機械的応力でもってガイドする。少なくとも1つの固定装置44は、活性化要素を少なくとも部分的に所定の電位にするために、電気絶縁して形成してもよい。
【0029】
活性化要素40の表面の活性は、室温に比べて高められた温度において実現される。活性化要素40を加熱するために、図1によれば、少なくとも2つの電気接点要素43を設けることが想定されている。少なくとも1つの電気接点要素43は、耐真空の貫通線108によって電源107に接続してもよい。この場合、活性化要素40の加熱は抵抗加熱によって行われる。活性化要素が均質な材料から構成され、かつ、一様な厚さを有する場合は、活性化要素の縦方向の長さxに沿って導入される加熱電力Eは一定である。すなわち、
【数1】

である。
【0030】
固定装置44および/または接点要素43の熱伝導および/または熱放射のために、活性化要素40の温度は、加熱電力がワイヤの全長にわたって実質的に一定であれば、幾何学的中心から周縁に向かって低下する。この場合、接点要素43の近傍には、活性化要素40の材料が気体状前駆物質と急速に反応して、好ましくない相、例えば炭化物および/またはシリサイドおよび/またはゲルマニウム化物を形成するような温度が確立される可能性がある。
【0031】
活性化要素に対する前駆物質の有害な影響を最小化するために、図1によれば、活性化領域50の寸法よりも大きい幾何学的寸法を有する活性化要素40を用いることが提案される。活性化要素40は、受け入れ容器10の内部に、固定装置44によって電気絶縁して装着される。2つの接点要素43が、例えば、ローラ、ロール、摺動接触子、または類似の要素(素子)によって活性化要素40と接触している。
【0032】
接点要素43は受け入れ容器内に実質的に固定して取り付けられる。接点要素43の間隔が、電流によって加熱される活性化要素40の部分の長さを決定する。
【0033】
固定装置44は搬送方向49に沿って可動である。この搬送方向49は、いくつかの実施形態においては、活性化要素40の長さ方向の範囲に沿って延びることができる。搬送方向49に沿う固定装置44の動作は、調和的または非調和的とすることができ、連続的にまたは断続的に生起させることができる。
【0034】
固定装置44の動きは、活性化要素40上の接点要素43の接点近傍に形成される低温度の位置が局所的に可変になるという効果を有する。この方法によって、活性化要素40に対する前駆物質の有害な影響が、活性化要素のより大きな表面積または縦方向部分の上に分散され、その結果、活性化要素の全寿命が増大する。さらに、本発明のいくつかの実施形態においては、前駆物質の存在により低温度において損傷を受けた領域を、接点要素43が離れた時に、活性化要素40の好ましくない相が更新反応を受けるようにその温度を高めることによって再生するという対策を用意することができる。
【0035】
図2は活性化要素40の別の実施形態を示す。本発明のこの実施形態においては、活性化要素40の活性表面は、例えば、タングステン、ニオブ、モリブデンまたはタンタルを含むワイヤ41によって形成される。断面積は多角形または円形とすることができるので、帯材の目視的印象が得られる。
【0036】
図6による活性化要素40は3本のワイヤ41a、41bおよび41cを含む。各個別のワイヤの端部は、例えばスポット溶接によって互いに接続されているので、エンドレスループが形成される。これらのエンドレスループのそれぞれは、接点要素43および固定要素44の両者を形成する2つのローラ46上に導かれる。ワイヤ41a、41bまたは41c専用の2つのローラは異なる電位状態にあるので、それぞれのワイヤ41を通って電流が流れ、この電流がワイヤ41を加熱する。この方法でも、ワイヤ41a、41bおよび41cと基板30の表面との間に活性領域50が形成され、そこでは、層堆積のための解離および/または励起された分子を検出できる。
【0037】
ローラ46による熱除去のために、ワイヤ41の温度は、活性領域の中心からローラ46を含む周縁領域に向かって低下する。ワイヤ41の脆化または破断の進行を遅らせ、あるいはそれを防止するために、少なくとも1つのローラ46を、例えば電気モータまたはスプリング緊張手段によって回転させることが提案される。この方法によって、ワイヤ41は、活性領域50の中心における熱除去が最小でかつ最高温度の領域と、ローラ46における熱除去が最大でかつ最低温度の領域とを循環的に通過する。この方法で、ローラ46の近傍の低温領域において形成される好ましくない炭化物、ゲルマニウム化物またはシリサイドの相を、活性領域50の中心において再度低減できる。しかし、少なくとも、ワイヤ41は、その全長にわたって一様な反応を受け、その結果、機械的破損に対するその寿命は増大する。ワイヤが一様に時効変化することは、その電気的特性がごく緩慢にしか変化しないという効果を有するので、コーティング処理の監視を簡単化できる。
【0038】
図3による実施形態は、1本のワイヤ41を含む活性化要素40を動作の3つの異なる位相において示している。図3の上段に示す第1位置においては、固定装置44は、線200で表現される中立位置にある。ワイヤ41は、固定装置44の間に引き伸ばされ、活性化要素40の活性表面を提供する。2つの固定装置44の間隔は実質的に一定であるが、いくつかの実施形態においては、熱膨張を補正するために、その間隔をわずかな範囲で可変にしてもよい。この場合には、ワイヤ41の機械的応力を、例えば少なくとも1つのスプリングによって確実に一定にする装置を組み込んでもよい。
【0039】
図1に関連してすでに述べたように、2つの接点要素43が設けられ、受け入れ容器の内部に実質的に固定して配置される。図示の方式の場合には、1つの接点要素43はローラ46を含み、このローラ46は、ローラ装着部47に回転可能に固定される。ローラの周囲表面には、ワイヤ41がローラ46から離脱するのを防止するために、溝を組み込んでもよい。2つの接点要素46に、電源107によって電位差が印加される。ワイヤ41によって回路が閉じられ、それによって、活性化要素40の加熱部分が接点要素の間に生じる。
【0040】
図3の中段に見られるように、固定装置44は、動きの方向49に沿って中立位置から左側に動かすことができる。これは、活性化要素の加熱部分、従って活性部分を移動させる効果を有する。しかし、その部分の全長は一定のままであるので、温度または電力要求の簡単な制御が可能になる。この方法によって、活性化要素40に対する前駆物質の有害な影響が、活性化要素のより大きい表面積または縦方向部分に分散され、その結果、活性化要素の全寿命が増大する。本発明のいくつかの実施形態においては、さらに、前駆物質の存在下で低温度において損傷を受けた領域を、接点要素43が離れた時に、活性化要素40の好ましくない相が更新反応を受けるようにその温度を高めることによって再生してもよい。
【0041】
図3の下段に見られるように、終端位置に達すると、動きの方向を逆転させることができ、固定装置44は右側に動かされる。これは、活性化要素の加熱部分、従って活性部分を移動させる効果を有する。しかし、その部分の全長と、受け入れ容器に対するその部分の相対的位置とは一定のままである。図に表現される終端位置に達すると、動きの方向を再度変えることができるので、図3に表現される位置を循環的に通過することになる。この場合、動きは、連続的にまたは断続的に生起させることができる。
【0042】
図4による実施形態は、1本のワイヤ41を含む活性化要素40を動作の3つの異なる位相において示している。図4aに示す第1位置においては、固定装置44は中立位置にある。ワイヤ41は、固定装置44の間に引きの伸ばされ、活性化要素40の活性表面を提供する。2つの固定装置44の間隔は、図3に関連して説明したように実質的に一定である。
【0043】
活性化要素40は、受け入れ容器の内部に実質的に固定して配置される4つの接点要素43すなわち2対の接点要素の上に導かれる。図示の方式の場合には、1つの接点要素43は、回転可能に装着されるローラ46を含む。ローラの周囲表面には、ワイヤ41がローラ46から離脱するのを防止するために、溝を組み込んでもよい。2つの接点要素43に、電源(図示されていない)によって電位差がそれぞれ印加され、その結果、2つの接点要素43の間の各部分において、所定の電力が蓄積される。ワイヤ41によって回路が閉じられ、それによって、活性化要素40の加熱部分が接点要素の間に生じる。それぞれ最も外側の接点要素43と固定装置44との間には、加熱されない部分がある。
【0044】
図4bに見られるように、固定装置44は、動きの方向49に沿って中立位置から左側に動かすことができる。これは、活性化要素の加熱部分、従って活性部分を移動する効果を有する。しかし、その部分の全長は一定のままであるので、温度または電力要求の簡単な制御が可能になる。同様に、その部分の位置、従って受け入れ容器内部における活性領域50の位置も一定のままである。それにも拘らず、活性化要素40に対する前駆物質の有害な影響は、活性化要素のより大きな表面積または縦方向部分の上に分散され、その結果、活性化要素の全寿命が増大する。さらに、本発明のいくつかの実施形態においては、前駆物質の存在下で低温度において損傷を受けた領域を、接点要素43が離れた時に、活性化要素40の好ましくない相が更新反応を受けるようにその温度を高めることによって再生するという対策を用意することができる。
【0045】
図4cに見られるように、終端位置に達すると、動きの方向を逆転させることができ、固定装置44は右側に動く。これは、活性化要素の加熱部分、従って活性部分を移動する効果を有する。しかし、その部分の全長と、受け入れ容器に対するその部分の相対的位置とは一定のままである。図に示す終端位置に達すると、動きの方向を再度変えることができるので、図4a〜4cに表現される位置を循環的に通過することになる。この場合、動きは、連続的にまたは断続的に生起させることができる。
【0046】
いくつかの実施形態においては、活性化要素の全長は、受け入れ容器の内部に配置されかつ実質的に引きの伸ばされた状態で動くように設定される。これによって、ワイヤ41を収納装置に巻き取る必要なく、あるいは収納装置から取り出す必要なく、利用可能なその全長を気相の活性化用として循環使用できるようになる。その結果として、装置の信頼性の向上が可能になる。
【0047】
図1〜4に表現した特徴は、本発明による活性化要素または提案されたコーティング装置のさらに別の実施形態をこの方法で得るために、組み合わせてもよいことは言うまでもない。従って、以上の説明は、制限的なものではなく、典型的な事例として理解されるべきである。以下に述べる特許請求の範囲は、言及される特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に存在することを意味するものとして理解されるべきである。これは、さらに別の特徴の存在を排除するものではない。請求項が「第1」および「第2」の特徴を規定する場合は必ず、この指定は、それらにいかなる優先権をも付与することなく、2つの同等の特徴間を単に区別するためのものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空排気が可能でありかつ基板(30)を受け入れるように構成される少なくとも1つの受け入れ容器(10)と、
前記受け入れ容器(10)の中に少なくとも1種の気体状前駆物質を導入するように構成される少なくとも1つのガス供給装置(20、21、22)と、
所定の長さ方向の範囲を有すると共に少なくとも1つの専用の機械的固定装置(44)によって固定される少なくとも1つの加熱可能な活性化要素(40)とを備えたコーティング装置(1)において、
前記活性化要素に少なくとも2つの接点要素(43)によって電流を供給することが可能であり、
前記接点要素(43)は前記受け入れ容器(10)に対してほぼ不動に固定され、
前記活性化要素(40)は前記受け入れ容器に対して可動に配置されることを特徴とするコーティング装置(1)。
【請求項2】
前記活性化要素の長さ方向の範囲が、完全に、前記受け入れ容器の内部に配置されることを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置(1)。
【請求項3】
前記活性化要素(40)が少なくとも1本のワイヤ(41)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のコーティング装置(1)。
【請求項4】
前記接点要素(43)が少なくとも1つのローラ(46)を含み、前記ローラ(46)は前記活性化要素(40)と接触するように構成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコーティング装置(1)。
【請求項5】
活性領域(50)を繰り返し通るように前記ワイヤ(41)を導くことができることを特徴とする請求項3または4に記載のコーティング装置(1)。
【請求項6】
所定の電位差をそれぞれに印加することが可能な複数の接点要素(43)が、前記活性化要素(40)の長さ方向の範囲に沿って配置されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコーティング装置(1)。
【請求項7】
前記機械的固定装置(44)が電気絶縁されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコーティング装置(1)。
【請求項8】
前記活性化要素(40)を、前記機械的固定装置(44)の並進動作によって前記受け入れ容器に対して動かすことができることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のコーティング装置(1)。
【請求項9】
前記活性化要素(40)を、前記機械的固定装置(44)の回転によって前記受け入れ容器の内部で動かすことができることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のコーティング装置(1)。
【請求項10】
基板(30)上にコーティング(105)を生成する方法であり、
前記基板(30)が真空排気可能な受け入れ容器(10)の中に導入され、
少なくとも1種の気体状前駆物質が、少なくとも1つのガス供給装置(20、21、22)によって前記受け入れ容器(10)の中に導入されると共に、少なくとも1つの電気加熱される活性化要素(40)によって活性化される方法であって、
前記活性化要素(40)に、少なくとも2つの接点要素(43)によって電流が供給され、
前記接点要素(43)の少なくとも1つは、前記受け入れ容器内にほぼ固定して配置され、前記活性化要素(40)は、前記受け入れ容器に対して動かされることを特徴とする方法。
【請求項11】
前記動きが往復動方式で実現されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記活性化要素(40)が、前記機械的固定装置(44)の回転によって前記受け入れ容器内で動かされる、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記活性化要素(40)が、前記機械的固定装置(44)の並進動作によって前記受け入れ容器に対して動かされる、請求項10乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記活性化要素(40)が少なくとも1本のワイヤ(41)を含む、請求項10乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ワイヤ(41)が、活性領域(50)を繰り返し通る、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記活性化要素(40)の長さ方向の範囲に沿って配置される複数の接点要素(43)が前記活性化要素(40)と接触し、各接点要素(43)に対して所定の電位差が印加される
請求項10乃至15のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−528937(P2012−528937A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513534(P2012−513534)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056719
【国際公開番号】WO2010/139547
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(591037214)フラウンホッファー−ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ (259)
【Fターム(参考)】