説明

コートフック装置

【課題】フック部材を収納状態に保持する保持機構の部品点数が少なく、保持機構をケース本体に簡単に組み付けることができるコートフック装置を提供する。
【解決手段】ケース本体1と、ケース本体内に枢軸によって枢支されフック部材2と、フック部材を付勢するばね部材4と、フック部材の基部円周面に形成されたカム溝22と、カム溝に先端ピン6aを係合させてケース本体内に取り付けられるトレースピン6と、を備える。トレースピン6を押えて保持するための合成樹脂製のピン押え部14がケース本体1の一部に設けられる。金属線を略コ字状に曲折して形成されたトレースピン6がその一端の軸部6bをケース本体1の背面部13に設けた軸孔17に挿入して回動可能に取り付けられる。トレースピン6の先端ピン6aがカム溝22に対する係合状態を保持するように、トレースピン6がピン押え部14により可動的に押えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フック部材を使用状態と不使用収納状態間で回動させる構造のコートフック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の室内で、衣服などを掛けるために、フック部材を使用状態と不使用収納状態間で回動させる構造のコートフック装置が知られている。
【0003】
このコートフック装置は、下記特許文献1などに記載されるように、ケース本体に、フック部材が枢軸により使用状態と不使用収納状態間で回動するように枢支され、フック部材を使用状態側に回動付勢するトーションばねが枢軸に装着される一方、フック部材と枢軸との間に、フック部材の回動速度を減速させるための摩擦抵抗部材或いはオイルダンパーを配設している。また、フック部材の基部内側面には、ハート型のカム溝が設けられ、ケース本体内には、トレースピンがそのカム溝に先端部を係合させるように取り付けられる一方、トレースピンの先端部をカム溝側に付勢する板ばねを設けて構成され、カム溝、トレースピン及び板ばねを含む機構が、フック部材を収納状態に保持するための保持機構となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−282385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなフック部材を収納するタイプのコートフック装置は、ケース本体内にフック部材が収納された状態で、フック部材をプッシュする(押して離す)と、トレースピンの先端部がカム溝のロック位置から外れて、フック部材がトーションばねのばね力により開放側に回動を開始し、フック部材が使用状態まで回動したとき、トレースピンの先端部がハート型のカム溝の末端まで進み、フック部材が停止して使用状態となる。次に、フック部材を押して、収納するケース本体内まで回動させると、トレースピンの先端部がハート型のカム溝のロック位置まで相対的に進み、トレースピンの先端部がそのロック位置で相対的にロックされて、フック部材が収納された状態となる。
【0006】
このように、コートフック装置には、フック部材を使用状態から収納位置に押し込んだとき、フック部材を収納状態にロックして保持する保持機構が設けられるが、従来の保持機構は、フック部材の基部内側面に設けたカム溝に、金属線の先端部を係合させてケース本体側に可動的に取り付けられる金属線のトレースピン、及びそのトレースピンをカム溝側に付勢する板ばねを備えているため、従来の保持機構は部品点数が多く、また製造時の組み付け作業性も悪いという課題があった。
【0007】
また、コートフック装置の使用時、金属線のトレースピンが板ばねに接触して摺動するため、金属同士の接触摺動により異音が発生しやすく、このために、トレースピンの表面にフッ素樹脂をコーティングするなどの表面処理を行ない、板ばねとトレースピンの接触摺動による異音の発生を防止する必要があった。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、フック部材を収納状態に保持する保持機構の部品点数を低減し、部品の表面処理を行なうことなく、異音の発生を防止することができるコートフック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1のコートフック装置は、前面に開口部を設けたケース本体と、該ケース本体内に枢軸によって枢支され、該ケース本体内の収納位置と該ケース本体から突出した使用位置との間を回動するフック部材と、該フック部材を開放方向に付勢するばね部材と、該フック部材の枢軸を軸とする基部円周面に形成されたカム溝と、該カム溝に先端ピンを係合させて該ケース本体に取り付けられたトレースピンと、を備え、該フック部材のプッシュ操作に応じて該フック部材が上記収納位置と上記使用位置を往復回動するコートフック装置において、該トレースピンを押えて保持するための合成樹脂製のピン押え部が該ケース本体の一部に設けられ、金属線を略コ字状に曲折して形成された該トレースピンがその一端の軸部を該ケース本体の背面部に設けた軸孔に挿入して回動可能に取り付けられ、該トレースピンの先端ピンが該カム溝に対する係合状態を保持するように、該トレースピンが該ピン押え部により可動的に押えられることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、従来、保持機構に使用していた板ばねは不要となり、トレースピンは、ケース本体の一部に設けられたピン押え部により、トレースピンの先端ピンが該カム溝に対する係合状態を保持するように可動的に押えられるので、従来の板ばねを不要として部品点数を削減し、より簡単な組み付け作業で、コートフック装置を組み立てることができる。また、金属線のトレースピンが板ばねに代えて合成樹脂製のピン押え部により押えられるので、トレースピンの表面処理が不要となり、フック部材回動時の異音の発生を防止することができる。
【0011】
請求項2の発明は、上記請求項1のコートフック装置において、上記ピン押え部がケース本体の背面部の側壁部から背面と平行に、自由端を有して突設され、トレースピンの先端ピンが該ケース本体背面部の円弧状長孔を通して該ケース本体内のフック部材のカム溝に係合し、該トレースピンを取り付ける際、その軸部を該背面部の軸孔に挿入すると共に、先端ピンを該ピン押え部から離れた位置で円弧状長孔に挿入し、その後、トレースピンを回動させながら該ピン押え部の自由端側から該ピン押え部と該背面部との間に該トレースピンを進入させて該ピン押え部により該トレースピンを該背面部側に押えることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、トレースピンをケース本体の背面部に取り付ける際、トレースピンの軸部を軸孔に挿入すると共に、トレースピンの先端ピンを円弧状長孔に挿入し、ピン押え部の自由端側からピン押え部と背面部との間にトレースピンを入るように回動させながら、簡単にトレースピンを取り付けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコートフック装置によれば、従来の板ばねを不要として部品点数を削減し、より簡単な組み付け作業で、コートフック装置を組み立てることができる。また、板ばねに代えて合成樹脂製のピン押え部を使用するため、トレースピンの表面処理が不要となり、フック部材の回動操作時、トレースピンを円滑に摺動させ、異音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態を示すコートフック装置の斜視図である。
【図2】同コートフック装置の背面側からの斜視図である。
【図3】同コートフック装置の正面図である。
【図4】同コートフック装置の背面図である。
【図5】同コートフック装置の左側面図である。
【図6】同コートフック装置の右側面図である。
【図7】同コートフック装置の平面図である。
【図8】同コートフック装置の底面図である。
【図9】同コートフック装置の分解斜視図である。
【図10】図3のX-X断面図である。
【図11】図4のXI-XI断面図である。
【図12】図3のXII-XII断面図である。
【図13】図4のXIII-XIII断面図である。
【図14】フック部材の回動に伴う、カム溝内でのトレースピンの先端ピンの移動軌跡を示す説明図である。
【図15】フック部材の回動に伴う、カム溝内でのトレースピンの先端ピンの位置を示す説明図である。
【図16】フック部材の回動に伴う、カム溝内でのトレースピンの先端ピンの位置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1,2は、自動車の室内などに取り付けられるコートフック装置の斜視図を示している。なお、図に示す矢印Fはコートフック装置の前方を示し、矢印Rはその後方を、矢印RIはその右側を、矢印Lはその左側を示す。
【0016】
コートフック装置は、概略的には、図1のように、前面に前面開口部12を設けたケース本体1と、ケース本体1内に枢軸3によって枢支され、ケース本体1内の収納室11とケース本体1から突出した使用位置との間を回動するフック部材2と、フック部材2を開放方向に付勢するばね部材4(図9)と、フック部材2の枢軸3の周りでその基部の円周面となる基部円周面21に形成されたカム溝22と、カム溝22に先端ピン6aを係合させてケース本体1内に取り付けられ、フック部材2の保持機構となるトレースピン6と、を備えて構成される。フック部材2は、フック部材2のプッシュ操作に応じて、収納室11と使用位置との間を往復回動し、非使用時には、トレースピン6の先端ピン6aがカム溝22の上部に係止され、収納室11内に保持されるように構成される。
【0017】
ケース本体1は、図9、図10、図11などに示すように、略直方体形状の箱型に形成され、その前面に前面開口部12が大きく形成され、その前面開口部12の内側に収納室11が形成される。図9等に示すように、ケース本体1の背面側の上部に、車室の側壁などに取り付けるための取付孔18が設けられ、また、ケース本体1の上部と下部には取付用突起19が設けられる。ケース本体1の収納室11内には、フック部材2が、収納室11とケース本体1から突出した使用位置との間で回動するように、枢軸3により枢支される。枢軸3は、例えば金属シャフトをケース本体1の前部両側壁に設けた軸孔15(図9)からフック部材2の基部の軸孔25に貫通させるように嵌入され、フック部材2はその枢軸3を軸に収納室11内と正面に突き出す使用状態との間で回動可能となっている。
【0018】
また、図9に示すように、フック部材2の基部に、ばね収納凹部23が形成され、このばね収納凹部23には、フック部材2を開放方向に付勢するばね部材4(トーションばね)が枢軸3に外嵌された状態で収納される。さらに、フック部材2の基部における軸孔25の回りには、開口凹部26が形成され、その開口凹部26にゴム状弾性体のブッシュ7が嵌め込まれる。このブッシュ7は枢軸3及びケース本体1の側壁面との間で摩擦抵抗を生じさせ、フック部材2が枢軸3上を回動する際、枢軸3及びケース本体1の側壁に対し適度な摩擦抵抗を生じさせて、開閉速度を緩やかにしている。
【0019】
さらに、図2、図4、図9に示すように、ケース本体1の背面側の下半分には、凹状の背面部13が設けられ、背面部13には、トレースピン6の先端ピン6aが挿入される円弧状長孔16が設けられ、さらに、その背面部13の下側に、トレースピン6の軸部6bが挿入される軸孔17が形成されている。一方、背面部13の一方の側壁部からはピン押え部14が背面と平行に、水平に突き出すように突設されている。
【0020】
ケース本体1は合成樹脂の型成形により形成され、その成形時にこのピン押え部14も一体成形されるが、別に成形されたピン押え部14を背面部13の所定位置に取着することもできる。ピン押え部14はトレースピン6を背面部13側に押えるために設けられており、図13に示すように、背面部13の背面との間に僅かな隙間(トレースピン6の直径より僅かに薄い間隔)をおいてピン押え部14は側壁部から背面と平行に突設される。このため、トレースピン6をピン押え部14と背面部13との間に装着した際、トレースピン6はピン押え部14のばね弾性に伴う小荷重で背面部13側に押圧されることとなる。
【0021】
図9に示すように、トレースピン6はその軸部6bを背面部13の下部の軸孔17に挿入し、その先端ピン6aを背面部13の円弧状長孔16内に挿入し、且つピン押え部14と背面部13との間に入り込むように装着される。このために、ピン押え部14の長さは円弧状長孔16より短く形成され、ピン押え部14の先端(自由端)の位置は円弧状長孔16の中ほどに位置し、トレースピン6を背面部13に取り付ける際には、図4のように、トレースピン6の軸部6bを軸孔17に挿入し、先ず、先端ピン6aを図4の左側に傾けて円弧状長孔16の左端部近傍に挿入し、その状態からピン押え部14を図4の時計方向に回し、先端ピン6aを円弧状長孔16内で移動させながら、トレースピン6をピン押え部14と背面部13との間に進入させて取り付けるようになっている。
【0022】
このように、背面部13に取り付けられるトレースピン6は、図4の如く、ピン押え部14により背面部13側に僅かな荷重で押えられ、先端ピン6aが係合するフック部材2の基部円周面21におけるカム溝22の回動に応じて、左右に移動し、トレースピン6は軸部6bを軸に左右に揺動可能に保持されることとなる。
【0023】
フック部材2は、図9に示すように、先端にコートなどを掛けるためのフック部24を設け、フック部24の反対側の基部に軸孔25を貫設し、その軸孔25に枢軸3を挿入するように構成される。さらに上述の如く、軸孔25の左端側に開口凹部26が形成され、この開口凹部26にブッシュ7が嵌着され、このブッシュ7及び軸孔25内に枢軸3が嵌挿される。また、フック部材2の基部には、基部円周面21が軸の周囲につまり枢軸3の軸を中心とする円の円周面として形成され、この基部円周面21に、略ハート型のカム溝22が、図14の展開図に示すような形状に形成されている。
【0024】
また、図9、12に示すように、フック部材2の基部のばね収納凹部23内には、フック部材2を使用状態側(ケース本体内から突き出す側)に付勢するばね部材(トーションばね)4が設けられる。ばね部材4の一端はフック部材2に係止され、他端はケース本体1の一部に係止され、フック部材2をケース本体1から前方に突き出す側に付勢している。
【0025】
上述のように、フック部材2の基部円周面21には、カム溝22が形成されるが、このカム溝22には、図14の展開図に示す如く、フック部材2を収納状態としたときトレースピン6の先端ピン6aが係合保持されるカム形状部A、収納状態のフック部材2をプッシュしたときに先端ピン6aが移動するカム形状部B、フック部材2が使用状態まで突出したときに先端ピン6aが係合保持されるカム形状部Cが設けられ、使用状態に突出したフック部材2をケース本体内の収納室11に押し込んだとき、先端ピン6aはカム溝22内を移動して一旦最上部のカム形状部Dに進み、フック部材2から押し込み力を解除したとき、元のカム形状部Aに戻るように形成されている。
【0026】
トレースピン6は、図9に示すように、金属線を略コ字状に曲折して形成され、上部に先端ピン6aを突設し、下部に軸部6bを突設して形成される。トレースピン6はその下部の軸部6bをケース本体1の背面部13の下部に設けた軸孔17に差し込み、その上部の先端ピン6aを、背面部13の円弧状長孔16からカム溝22に挿入するように、ピン押え部14と背面部13との間に入れ込む形態で取り付けられる。トレースピン6は、合成樹脂製のピン押え部14により、背面部13側に可動的に押えられるので、異音発生の虞はなく、トレースピン6の表面にフッ素樹脂などをコーティングする表面処理は不要となる。
【0027】
上記構成のコートフック装置を製造時に組み立てる場合、図4、9に示すように、先ず、トレースピン6を、その下部の軸部6bをケース本体1の背面部13の下部に設けた軸孔17に差し込み、その上部の先端ピン6aを、背面部13の円弧状長孔16の端部、つまりピン押え部14から離れた位置の円弧状長孔16の端部位置に挿入し、その状態で、図4の時計方向にトレースピン6を、その軸部6bを支点に回動させ、ピン押え部14と背面部13との間に入れ込むようにし、その先端ピン6aをフック部材2のカム溝22内に挿入可能な状態とする。
【0028】
次に、フック部材2のばね収納凹部23の軸心位置に、ばね部材4を装着した状態で、フック部材2をケース本体1の前面開口部12から収納室11内に挿入し、ケース本体1の軸孔15とフック部材2の軸孔25を同一軸線上に合わせた状態で、枢軸3を軸孔15からブッシュ7及び軸孔25に挿入しながら圧入し、枢軸3の両端部をケース本体1の軸孔17内に嵌着させる。
【0029】
これにより、フック部材2は、ケース本体1の収納室11内の適正位置に収納され、この状態で、先にケース本体1に装着されたトレースピン6の先端ピン6aが、フック部材2の基部円周面のカム溝22内に係合する。ばね部材4はフック部材2を突き出す方向に付勢するので、図15の下図に示すように、フック部材2を突き出した状態で、ケース本体1の収納室11内に入れ、トレースピン6の先端ピン6aを、カム溝22のカム形状部Cの位置に係合させるようにすれば、容易に組み付けることができる。
【0030】
この状態で、フック部材2はばね部材4の付勢力に抗してケース本体1内に収納可能となり、また、収納状態のフック部材2はプッシュ操作により、ばね部材4のばね力によって前方に突き出すように回動可能となり、フック部材2は、ゴム状弾性体のブッシュ7の摩擦抵抗によって、固定側のケース本体1及び枢軸3に対し適度な摩擦抵抗を生じさせ、緩やかな開閉速度で回動可能となる。
【0031】
上記構成のコートフック装置は、車室の側壁などに設けた矩形開口部に、そのケース本体1の背面部を嵌め込むようにし、取付孔18に固定ねじを挿入してねじ込み締付固定される。フック部材2がケース本体1の収納室11内に収納された状態で、図15の上段に示すように、フック部材2をプッシュする(押して離す)と、フック部材2が枢軸3を軸に回動することにより、カム溝22に係合するトレースピン6の先端ピン6aが、図15の中段のように、カム溝22内のカム形状部Aから一旦カム形状部Bに移動する。そして、フック部材2がばね部材4に付勢力により前方に突き出すように回動し、このとき、トレースピン6の先端ピン6aはカム溝22内を、図14のように下降し、カム形状部Cの位置で停止する。
【0032】
この動作により、フック部材2は、図15の下段のように、ケース本体1から前方に突き出した使用状態となる。このように、フック部材2がプッシュ操作に応じて回動する間、先端ピン6aがカム溝22内を移動するとき、トレースピン6は円弧状長孔16内を移動するが、ピン押え部14に適度な小荷重で押えられ、がたつきなく良好に従動することができる。
【0033】
使用状態のフック部材2を非使用状態にする場合、図16に示すように、フック部材2を持って上に回動させ、ケース本体1の収納室11内に押し込むようにする。このとき、フック部材2の回動に伴い、トレースピン6の先端ピン6aは、カム溝22内を図14のように、カム形状部CからDに移動し、フック部材2を離した時、ばね部材4の付勢力によりフック部材2が少し戻り、図16の下段の如く、先端ピン6aはカム形状部Aに入り、フック部材2は最初のフック収納状態(非使用状態)に戻る。
【0034】
このように、このコートフック装置は、従来の保持機構に使用していた板ばねは不要となり、トレースピン6は、ケース本体1の背面部に設けたピン押え部14のばね弾性により、適度な小荷重で押えられて摺動可能とすることができる。また、トレースピン6を取り付ける際には、トレースピン6の軸部6bを軸孔17に挿入した状態で、先端ピン6aをピン押え部14から離れた位置からピン押え部14と背面部13の間に入れ込むように回動させるだけの簡単な組み付け作業で、トレースピン6を組み付けることができる。さらに、従来の保持機構で使用していた板ばねを使用しないため、トレースピン6の表面処理が不要となり、フック部材2の回動操作時にトレースピン6との摺動によって生じやすい異音の発生を防止することができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、ゴム状弾性体のブッシュ7をフック部材2の軸孔部分に嵌着して、フック部材2、枢軸3、及びケース本体1間に摩擦抵抗を生じさせ、フック部材2の開閉(回動)速度を緩やかにしたが、オイルダンパーを使用してこれを行うこともできる。
【符号の説明】
【0036】
1 ケース本体
2 フック部材
3 枢軸
6 トレースピン
6a 先端ピン
6b 軸部
7 ブッシュ
11 収納室
12 前面開口部
13 背面部
14 ピン押え部
15 軸孔
16 円弧状長孔
17 軸孔
21 基部円周面
22 カム溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面に開口部を設けたケース本体と、
該ケース本体内に枢軸によって枢支され、該ケース本体内の収納位置と該ケース本体から突出した使用位置との間を回動するフック部材と、
該フック部材を開放方向に付勢するばね部材と、
該フック部材の枢軸を軸とする基部円周面に形成されたカム溝と、
該カム溝に先端ピンを係合させて該ケース本体内に取り付けられたトレースピンと、
を備え、該フック部材のプッシュ操作に応じて、該フック部材が前記収納位置と前記使用位置を往復回動するコートフック装置において、
該トレースピンを押えて保持するための合成樹脂製のピン押え部が該ケース本体の一部に設けられ、金属線を略コ字状に曲折して形成された該トレースピンがその一端の軸部を該ケース本体の背面部に設けた軸孔に挿入して回動可能に取り付けられ、該トレースピンの先端ピンが該カム溝に対する係合状態を保持するように、該トレースピンが該ピン押え部により可動的に押えられることを特徴とするコートフック装置。
【請求項2】
前記ピン押え部は前記ケース本体の背面部の側壁部から背面と平行に、自由端を有して突設され、前記トレースピンの先端ピンが該ケース本体背面部の円弧状長孔を通して該ケース本体内の前記フック部材のカム溝に係合し、該トレースピンを取り付ける際、該軸部を該背面部の軸孔に挿入すると共に、該先端ピンを該ピン押え部から離れた位置で円弧状長孔に挿入し、その後、該トレースピンを回動させながら該ピン押え部の自由端側から該ピン押え部と該背面部との間に進入させ、該先端ピンを前記フック部材の基部円周面のカム溝に係合させて、該トレースピンを取り付けることを特徴とする請求項1記載のコートフック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−20635(P2011−20635A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169199(P2009−169199)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(308016242)豊和化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】