説明

コード画像出力装置

【課題】外部装置の処理負担を軽減し得るコード画像出力装置を提供する。
【解決手段】スキャナ装置では、エリアセンサにより情報コードを含んだ画像を撮像しその画像データを出力し、メモリによりエリアセンサから出力された画像データを記憶する(S10)。そして、制御回路により、メモリに記憶された画像データに基づいて情報コードのコード画像の全体が占めるコード画像領域の位置および範囲を算出する(S30)とともにこの位置および範囲に関する付加データを生成し(S60)、制御回路および通信インタフェースによって、コード画像領域の位置および範囲に基づいてメモリに記憶された画像データからコード画像データを特定しこの特定されたコード画像データを含んだ出力画像データとこの特定されたコード画像データに関する付加データとをホストコンピュータに出力する(S60)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、POSシステム(Point Of Sales system)の上位装置やホストコンピュータ等の外部装置にコード画像を出力するコード画像出力装置および光学情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、外部装置にコード画像を出力するコード画像出力装置や光学情報読取装置として、例えば、下記特許文献1に開示される「光学的シンボル情報読取装置およびPOSシステム」がある。
【0003】
この開示技術によるバーコード読取装置では、媒体に表示されたバーコード等のシンボル情報の劣化が判るように所定の階調で二次元画像を媒体から採取して、復号手段で元の情報をデコードできないようなものであるときに読み取った画像そのものを外部に出力し得るように構成している。これにより、印刷物等の媒体から読み取ったシンボル情報の画像が読取りエラーとなるような状態のときには、その状態を保持した画像をそのまま外部に配置されるPOS装置あるいはホストコンピュータなど(外部装置)に送ることができ、その画像をそのままこれらの装置に保存することが可能となるとしている(特許文献1;段落番号0005)。
【特許文献1】特開2005−202473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示される「光学的シンボル情報読取装置およびPOSシステム」等によると、以下に挙げるような技術的な課題が存在する。
【0005】
(1) 画像メモリに記憶されるデータは、読取対象となるバーコード等の二次元画像1画面分に相当することから、上記バーコード読取装置では、当該画像データに圧縮処理を施した後に所定の電文フォーマットに組み立てて外部装置に送出している(特許文献1;段落番号0009、0010)。これにより、このような圧縮を施した分、送信時のデータ量はある程度、削減できるものの、それを受信する外部装置側においては、受信されたデータの情報処理に際し、圧縮された画像データを一旦、元の画像データに伸張する処理が必要となる。このため、外部装置の処理負担の増大を招くという問題がある。
【0006】
(2) また、外部装置が受信する画像データは、デジタルカメラ等で撮像した画像情報のすべてを含んだものであることから(特許文献1;段落番号0007〜0009)、バーコード等のデコードあるいは解析には本来必要としない画像情報(例えばバーコードを取り囲む周囲の画像情報)をも含んでいることが多い。そのため、このような使用目的のない画像情報の送信は、外部装置が情報処理する画像データの増大につながるばかりか、これによっても情報処理の負担を増大するという問題がある。
【0007】
(3) さらに、外部装置において、受信した画像データに含まれるバーコード等のデコードや解析をする場合には、一般的には、当該バーコード等の位置や範囲を求める演算処理を必要とするが、このような演算処理をその都度、外部装置で行っていたのでは、これによっても外部装置の処理負担が増大するという問題がある。また、当該画面中において斜めに傾いて位置するバーコード等については、所定演算処理によりその傾きを修正して真っ直ぐなものに置き換える必要があるが、これには、当該バーコード等が傾いた角度を必要とするため、このような角度の算出処理も外部装置の処理負担の増大につながる。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、外部装置の処理負担を軽減し得るコード画像出力装置および光学情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1のコード画像出力装置では、情報コードを含んだ画像を撮像しその画像データを出力可能な撮像手段と、前記撮像手段から出力された前記画像データを記憶可能な記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記画像データに基づいて前記情報コードのコード画像の全体が占めるコード画像領域の位置および範囲を算出可能であるとともにこの位置および範囲に関する付加データを生成可能な演算手段と、前記コード画像領域の位置および範囲に基づいて、前記記憶手段に記憶された前記画像データから前記コード画像データを特定しこの特定されたコード画像データを含んだ出力画像データとこの特定されたコード画像データに関する前記付加データとを外部装置に出力可能な出力手段と、を備えることを技術的特徴とする。
【0010】
なお、「情報コード」とは、一次元コード(EAN/UPC、インターリーブド2オブ5、コーダバー、コード39/128、スタンダード2オブ5、RSS等)や二次元コード(QRコード、PDF417、データマトリックス、マキシコード、RSSコンポジット等)等の各種のコードシンボルを含む概念である。
【0011】
特許請求の範囲に記載の請求項2のコード画像出力装置では、請求項1記載のコード画像出力装置において、前記付加データは、前記出力画像データにおいて前記コード画像領域を内包可能な矩形状領域を特定可能な座標情報であることを技術的特徴とする。
【0012】
特許請求の範囲に記載の請求項3のコード画像出力装置では、請求項1記載のコード画像出力装置において、前記情報コードが位置決めマークを含んで構成されている場合において、前記付加データは、前記出力画像データにおいて前記位置決めマークの存在位置を特定可能な座標情報であることを技術的特徴とする。
【0013】
特許請求の範囲に記載の請求項4のコード画像出力装置では、請求項2または3記載のコード画像出力装置において、前記演算手段は、前記出力画像データにおける前記コード画像領域の傾き角度を算出し、前記付加データは、前記傾き角度の角度情報であることを技術的特徴とする。
【0014】
特許請求の範囲に記載の請求項5のコード画像出力装置では、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコード画像出力装置において、前記記憶手段に記憶された前記画像データが前記撮像手段により撮像可能な最小単位である画素ごとに2ビット以上の明暗情報を有する場合において、前記演算手段は、所定区画内に存在する前記画素ごとの明暗情報が所定の閾値を挟んで変化する回数に基づいて、前記コード画像データとその周囲の周囲画像データとの境界を判別することで前記コード画像領域の位置または範囲を特定することを技術的特徴とする。
【0015】
特許請求の範囲に記載の請求項6のコード画像出力装置では、請求項5記載のコード画像出力装置において、前記演算手段は、隣接した複数の前記所定区画でまとめて得られる前記回数に基づいて、前記コード画像データとその周囲の周囲画像データとの境界を判別することで前記コード画像領域の位置または範囲を特定することを技術的特徴とする。
【0016】
特許請求の範囲に記載の請求項7のコード画像出力装置では、請求項1記載のコード画像出力装置において、前記情報コードが二次元コードであり、当該情報コードの存在範囲を特定可能な四隅のうちの少なくとも3箇所に位置決めマークが存在するものを前記出力手段が前記コード画像データとして出力する場合において、前記演算手段は、少なくとも1箇所に存在する前記位置決めマークの座標情報に基づいて、前記出力画像データにおける前記情報コードの存在位置を特定し、少なくとも3箇所に存在する前記位置決めマークの座標情報に基づいて、前記出力画像データにおける前記情報コードの存在範囲を特定することを技術的特徴とする。
【0017】
特許請求の範囲に記載の請求項8のコード画像出力装置では、請求項7記載のコード画像出力装置において、前記出力手段は、前記情報コードの周囲を囲む所定幅の余白枠を含んだものを前記コード画像データとして出力することを技術的特徴とする。
【0018】
特許請求の範囲に記載の請求項9の光学情報読取装置では、請求項1〜8のいずれか一項に記載のコード画像出力装置を用いた光学情報読取装置であって、前記撮像手段から出力される前記画像データに含まれる当該情報コードを解読可能な解読手段と、前記解読手段による前記情報コードの解読が成功した場合には前記解読手段から出力される解読データを出力し、前記情報コードの解読が失敗した場合には前記出力手段から出力される前記出力画像データと前記付加データとを出力するように前記出力手段を制御する出力制御手段と、を備えることを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係るコード画像出力装置の発明では、撮像手段により情報コードを含んだ画像を撮像しその画像データを出力し、記憶手段により撮像手段から出力された画像データを記憶する。そして、演算手段により、記憶手段に記憶された画像データに基づいて情報コードのコード画像の全体が占めるコード画像領域の位置および範囲を算出するとともにこの位置および範囲に関する付加データを生成し、出力手段によって、コード画像領域の位置および範囲に基づいて、記憶手段に記憶された画像データからコード画像データを特定しこの特定されたコード画像データを含んだ出力画像データとこの特定されたコード画像データに関する付加データとを外部装置に出力する。これにより、これを受けた外部装置では、コード画像データを含んだ出力画像データとともに当該コード画像データに関する付加データ(コード画像領域の位置および範囲に関するもの)が得られるので、当該コード画像データの情報処理に際し、当該コード画像領域の位置および範囲に関する付加データをあらためて算出する必要がない。したがって、外部装置において、このような付加データの算出処理が省ける分、当該外部装置の処理負担を軽減することができる。
【0020】
請求項2に係るコード画像出力装置の発明では、付加データは、出力画像データにおいてコード画像領域を内包可能な矩形状領域を特定可能な座標情報である。これにより、これを受けた外部装置では、このような座標情報の算出処理が省けるばかりか、当該座標情報に基づいてコード画像領域を矩形状領域に限定して特定できるので、当該コード画像データの情報処理を容易にすることができる。したがって、当該外部装置の処理負担をより軽減することができる。
【0021】
請求項3に係るコード画像出力装置の発明では、付加データは、出力画像データにおいて位置決めマークの存在位置を特定可能な座標情報である。これにより、情報コードが位置決めマークを含んで構成されている場合において、これを受けた外部装置では、このような座標情報の算出処理が省けるばかりか、当該座標情報に基づいてコード画像領域を特定できるので、当該コード画像データの情報処理を容易にすることができる。したがって、当該外部装置の処理負担をより軽減することができる。
【0022】
請求項4に係るコード画像出力装置の発明では、付加データは、演算手段により算出されたコード画像領域の傾き角度の角度情報である。これにより、このような演算手段を備えている場合において、これを受けた外部装置では、このようなコード画像領域の傾き角度の角度情報の算出処理が省けるばかりか、当該角度情報に基づいてコード画像領域の傾き角度が得られるので、当該コード画像データの情報処理を容易にすることができる。したがって、当該外部装置の処理負担をより軽減することができる。
【0023】
請求項5に係るコード画像出力装置の発明では、演算手段は、所定区画内に存在する画素ごとの明暗情報が所定の閾値を挟んで変化する回数に基づいて、コード画像データとその周囲の周囲画像データとの境界を判別することでコード画像領域の位置または範囲を特定する。これにより、記憶手段に記憶された画像データが撮像手段により撮像可能な最小単位である画素ごとに2ビット以上の明暗情報を有する場合において、比較的容易に当該明暗情報の内容を判定することができる。
【0024】
請求項6に係るコード画像出力装置の発明では、演算手段は、隣接した複数の所定区画でまとめて得られる回数に基づいて、コード画像データとその周囲の周囲画像データとの境界を判別することでコード画像領域の位置または範囲を特定する。これにより、このようにまとめない場合に比べて、明暗情報の判定回数を削減できるので、情報処理速度を速めることができる。
【0025】
請求項7に係るコード画像出力装置の発明では、演算手段は、少なくとも1箇所に存在する位置決めマークの座標情報に基づいて、出力画像データにおける情報コードの存在位置を特定し、少なくとも3箇所に存在する位置決めマークの座標情報に基づいて、出力画像データにおける情報コードの存在範囲を特定する。これにより、情報コードが二次元コードであり、当該情報コードの存在範囲を特定可能な四隅のうちの少なくとも3箇所に位置決めマークが存在するものを出力手段がコード画像データとして出力する場合において、当該3箇所の座標情報に基づいて二次元コードに位置および範囲を容易に特定することができる。
【0026】
請求項8に係るコード画像出力装置の発明では、出力手段は、情報コードの周囲を囲む所定幅の余白枠を含んだものをコード画像データとして出力する。これにより、二次元コードの周囲に位置する当該余白枠も併せて外部装置に出力できるので、例えば、QRコードのように所定の規格でこのような余白枠(クワイエットゾーン)を出力することが定められているものに対応することができる。
【0027】
請求項9に係る光学情報読取装置の発明では、解読手段により、撮像手段から出力される画像データに含まれる当該情報コードを解読し、情報コードの解読が成功した場合には解読手段から出力される解読データを出力し、情報コードの解読が失敗した場合には出力手段から出力される出力画像データと付加データとを出力するように出力手段を出力制御手段により制御する。これにより、情報コードの解読が失敗しても、コード画像データを含んだ出力画像データとこのコード画像データに関する付加データとを外部装置に出力するので、これを受けた外部装置では、前述した請求項1〜8の発明が奏する作用・効果を得ることができる。したがって、外部装置の処理負担を軽減し得る光学情報読取装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明のコード画像出力装置を二次元コードスキャナ装置(以下「スキャナ装置」という)に適用した実施形態(本発明の光学情報読取装置の実施形態に相当する)を各図に基づいて説明する。
【0029】
本実施形態に係るスキャナ装置10は、二次元コード(情報コード)の読み取りを可能にする光学情報読取装置で、以下説明する実施形態では二次元コードのうちのQRコードを読み取る場合について説明する。
【0030】
まず、スキャナ装置10の機械的構成および光学的構成を図1を参照して説明する。スキャナ装置10は、機械的構成として、図略のほぼ矩形状の箱体からなる筐体11を備えており、この筐体11内に光学的構成および電気的構成が収容されている。即ち、筐体11は、照明部21、エリアセンサ23、結像光学部25等からなる光学的構成や、メモリ35、制御回路40等からなる電気的構成を、それぞれ収容している。
【0031】
図1に示すように、この筐体11の表面には、矩形状の読取窓12が形成されており、この読取窓12には筐体11の内側から当該読取窓12を閉塞可能な透明板15が設けられている。この読取窓12は、表示媒体100に印刷(表示)された情報コードQを読み取るための開口部として機能するもので、当該情報コードQを十分に読み取り可能な大きさに設定されている。また、筐体11には、当該スキャナ装置10の使用者が後述する液晶表示部46の表示画面を目視可能に液晶表示部46が取り付けられている。
【0032】
スキャナ装置10の光学的構成は、主に、照明部21、エリアセンサ23、結像光学部25からなる。照明部21は、当該スキャナ装置10の読取対象となる情報コードQに照明光Lfを照射可能に構成される照明光源で、例えば、赤色光を発光可能な複数の発光ダイオードを矩形状や円環状等に配置して構成されるLED照明である。この照明部21から出射された照明光Lfは、前述した読取窓12の外側に位置する表示媒体100の情報コードQに照射されると、それに反射した反射光Lrが後述する筐体11内の結像光学部25に入射することによりエリアセンサ23の受光を可能にしている。
【0033】
エリアセンサ23は、情報コードQに照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成される受光センサで、例えば、C−MOSやCCD等の固体撮像素子である受光素子を二次元に配置したものである。このエリアセンサ23は、結像光学部25による結像が当該エリアセンサ23の受光面23aで可能な位置に取り付けられており、後述する増幅回路31に電気的に接続されている。これにより、受光面23aで結像されたコード画像等を画像信号に変換した後、当該画像情報を増幅回路31に出力可能にしている。
【0034】
結像光学部25は、読取対象となる情報コードQに照射された照明光Lfの反射光Lrを受光して、エリアセンサ23の受光面23aにコード画像等を結像可能にする光学部材で、結像レンズ27等を備えている。
【0035】
次に、このような機械的構成および光学的構成を持つスキャナ装置10の電気的構成を引き続き図1を参照して説明する。
図1に示すように、スキャナ装置10の電気的構成は、増幅回路31、A/D変換回路33、メモリ35、アドレス発生回路36、同期信号発生回路38、制御回路40、電源スイッチ42、ブザー44、液晶表示部46、通信インタフェース48等からなる。
【0036】
これらは、制御回路40およびメモリ35を中心に構成されるマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)(情報処理装置)として機能し得るもので、エリアセンサ23、結像光学部25、結像レンズ27等からなる光学的構成によって撮像された情報コードQの画像信号をハードウェア的およびソフトウェア的に信号処理し得るものである。また制御回路40は、当該スキャナ装置10の全体システムに関する制御も行っている。
【0037】
結像光学部25によりエリアセンサ23の受光面23aに結像されたコード画像等は、当該エリアセンサ23によって画像信号(アナログ信号)に変換された後、増幅回路31に入力されることで所定ゲインで増幅され、さらにA/D変換回路33に入力される。これにより、アナログ信号からディジタル信号に変換されるため、ディジタル化された画像信号、つまり画像データは、メモリ35に入力されると、画像データ蓄積領域に蓄積される。なお、同期信号発生回路38は、エリアセンサ23およびアドレス発生回路36に対する同期信号を発生可能に構成されており、またアドレス発生回路36は、この同期信号発生回路38から供給される同期信号に基づいて、メモリ35に格納される画像データの格納アドレスを発生可能に構成されている。
【0038】
メモリ35は、半導体メモリ装置で、例えばRAM(DRAM、SRAM等)やROM(EPROM、EEPROM等)がこれに相当する。このメモリ35のうちのRAMには、前述した画像データ蓄積領域のほかに、制御回路40が算術演算や論理演算等の各処理時に利用する作業領域や後述する画像データ転送処理で用いる出力データ領域等も確保可能に構成されている。またROMには、後述する情報コード読取処理や画像データ転送処理等を実行可能な所定プログラムやその他、照明部21、エリアセンサ23等の各ハードウェアを制御可能なシステムプログラム等が予め格納されている。
【0039】
制御回路40は、スキャナ装置10全体を制御可能なマイコンで、CPU、システムバス、入出力インタフェース等からなり、メモリ35とともに情報処理装置を構成し情報処理機能を有するものである。この制御回路40には、内蔵された入出力インタフェースを介して種々の入出力装置と接続可能に構成されており、本実施形態の場合、電源スイッチ42、ブザー44、液晶表示部46、通信インタフェース48等を接続している。
【0040】
これにより、例えば、電源スイッチ42の監視や管理、また所定のビープ音やアラーム音を発生可能なブザー44の鳴動のオンオフ、さらには情報コードQの読み取りの可否等を画面表示可能な液晶表示部46の画面制御や、外部装置とのシリアル通信を可能にする通信インタフェース48の通信制御等を可能にしている。なお、通信インタフェース48に接続される外部装置(外部)としては、例えば、当該スキャナ装置10が読み取った情報コードQのデコードデータDDや出力画像データPDを情報処理可能なホストコンピュータHSTがこれに相当する。
【0041】
このようにハードウェア(機械的構成、光学的構成、電気的構成)が構成されるスキャナ装置10では、図2〜図4に示す情報コード読取処理を行う。この処理は、スキャナ装置10の使用者が自ら手にしている表示媒体100の情報コードQを読取窓12に向けて読取窓12にかざしたり透明板15上に置いたりした場合に、表示媒体100の情報コードQまたはそれ相当の画像情報を検出した所定の検出プログラムが起動する。
【0042】
なお、図2には情報コード読取処理の流れを示すフローチャート、図3には情報コード読取処理のサブルーチンである画像データ転送処理の流れを示すフローチャート、がそれぞれ図示されている。また図4には、情報コード読取処理により当該スキャナ装置10から出力される出力データのデータフォーマットが図示されている。
【0043】
図2に示すように、情報コード読取処理では、メモリ35に確保される作業領域のクリアやパラメータの設定等といった所定の初期化処理の後、まずステップS10により画像情報取得処理が行われる。この画像情報取得処理は、前述したエリアセンサ23から出力された画像信号に基づく画像データをメモリ35の画像データ蓄積領域から取得するものである。
【0044】
次のステップS20では、位置検出処理が行われる。この処理は、ステップS10により取得された画像データに含まれるコード画像の位置を検出するもので、例えば、情報コードQがQRコードの場合には、当該QRコードを構成する位置検出パターンを検出することによって当該QRコードの位置および範囲を検出する。
【0045】
ここで、QRコードの位置検出パターン等について図5〜図7を参照して説明する。図5(A) には、QRコードの位置検出パターンを構成するQRコードの位置検出要素パターンFPが図示されており、また図5(B) には、クワイエットゾーンQZを含めたQRコード(コード画像Q’)Qの全体が図示されている。図6(A) には、コード画像の検出方法を概念的に示す説明図、また図6(B) は各行ごとに複数セルのまとまりで数値化した例を示す説明図で、さらに図6(C) は図6(B) に示す4行分をまとめて数値化した例を示す説明図、がそれぞれ図示されている。図7は、撮像画像Wの範囲内におけるコード画像Q’とその周囲を囲む切出し枠Fとの位置関係等を示す説明図で、図7(A) にはクワイエットゾーンQZなしのQRコードの場合のもの、図7(B) にはクワイエットゾーンQZ付きのQRコードの場合のものが、それぞれ図示されている。
【0046】
図5(A) に示すように、QRコードの位置検出要素パターンFPは、QRコードの基本仕様(日本工業規格;JIS X 0510:2004、以下これを単に「JIS規格」という。)により、正方形状からなる、暗(黒色等)の7×7のモジュールFPa、明(白色等)の5×5のモジュールFPbおよび暗の3×3のモジュールFPcの3個が同心正方形状に重なって構成されている。ここにいう「モジュール」とは、QRコードを構成する最小構成要素のことで、データ1ビットに相当しその幅であるピッチpは、これらのセル最小幅をなすものである。
【0047】
例えば、モジュールFPaは7モジュール分の幅αで暗モジュール集まりを、またモジュールFPbは5モジュール分の幅βで明モジュール集まりを、さらにモジュールFPcは3モジュール分の幅γで暗モジュール集まりを、それぞれ形成している。このため、位置検出要素パターンFPを横断または縦断するように明暗情報を走査すると、暗、明、暗、明、暗の順番で同色モジュールの連続比率が1:1:3:1:1となることを利用して当該画像範囲が当該位置検出要素パターンFPであることや当該位置検出要素パターンFPの中心位置FCを検出している。
【0048】
なお、QRコードでは、位置検出要素パターンFP以外において、同色モジュールの連続比率がこのような1:1:3:1:1となる可能性を抑制するため、マスク処理と称される明暗のバランスを調整する処理をエンコード処理において行っている。マスク処理の詳細は前記のJIS規格を参照されたい。
【0049】
また、QRコードでは、図5(B) に示すように、このような位置検出要素パターンFPを、一般に、その左上、左下および右上の3箇所の隅に配置して位置検出パターンを構成することによって、当該情報コードQがQRコードであるか否か、またQRコードであればそのコード画像の領域Rを検出可能にしている。
【0050】
例えば、図7(A) に示すように、QRコードの一部に汚れPLが存在するため、事実上、クワイエットゾーンQZが確保されていないに等しいQRコードの場合には、そのコード画像Q’のコード画像領域Rとして当該コード画像Q’の周囲近傍を囲み、また図7(B) に示すように、QRコードの周囲に汚れ等がなくJIS規格に従ったクワイエットゾーンQZが確保されている場合には、そのコード画像Q’のコード画像領域R’として当該クワイエットゾーンQZの周囲近傍を囲むように、本ステップS20によりコード画像Q’の範囲が検出される。なおこのようなコード画像Q’の範囲の検出は、公知のアルゴリズムによって行われてコード画像領域Rが生成される。
【0051】
なお、図5(B) に示す符号APは、暗の1モジュール、明の3×3モジュールおよび暗の5×5モジュールを同心正方形状に重ねて構成される、位置合わせパターン(アライメントパターン)と称されるもので、QRコードの歪みの補正を可能にしている。また、同図に示す符号QZは、QRコードの周囲をJIS規格に従い明の4モジュールで枠状に取り囲むクワイエットゾーンと称されるもので、さらに符号BTは、当該QRコードを構成するデータおよび誤り訂正コードを収容するデータ領域を示すものである。さらに図5(A) および図5(B) において符号FCにより示される○印は、位置検出要素パターンFPの中心位置を示す仮想的なもので、実際のQRコードに明示されるものではない。
【0052】
このような各モジュールの「明」および「暗」は、例えば、図6に示すように、コード画像Q’に基づく画像波形Kが所定の閾値Thを横切る回数(白黒変化数)を、所定ブロックごとにカウントしてその回数が所定数以上であるか否かによって判断されることで、コード画像Q’の位置や範囲が検出される。
【0053】
例えば、図6(A) に示すように、上から5番目の水平ライン#5の一部を構成する60画素分を、1ブロックを10画素で構成した6ブロック(BLK1〜BLK6)に対応させて、所定の閾値Thを横切る回数(白黒変化数)をカウントする。この例の場合、所定の閾値Thを横切る(同図中に示す●箇所)回数が、紙面左側のブロックから順番に、ブロックBLK1は0回、ブロックBLK2は4回、ブロック、BLK3は2回、ブロックBLK4は0回、ブロックBLK5は0回、ブロックBLK6は0回となるため、この回数が3回(所定数)以上のブロックを「暗モジュール」と判定し、2回以下のブロックを「明モジュール」と判定する。
【0054】
これにより、図6(B) に示すように、水平ライン#5は、ブロックBLK1は「明」、ブロックBLK2は「暗」、ブロック、BLK3〜BLK6は「明」となる。同様に、水平ライン#6は、ブロックBLK1,BLK2は「明」、ブロック、BLK3は「暗」、ブロックBLK4〜BLK6は「明」となり、また水平ライン#7は、ブロックBLK1は「明」、ブロックBLK2は「暗」、ブロック、BLK3〜BLK6は「明」、水平ライン#8はブロックBLK1〜BLK6がすべて「明」となる。
【0055】
なお、図6(C) に示すように、このように得られる所定の閾値Thを横切る回数(白黒変化数)を、複数の水平ラインを集約してから、所定数と比較して「明」・「暗」を判定しても良い。例えば、図6(C) の例では、水平ライン#5〜#8の4行分を集約することにより、ブロックBLK1は0回(=0+0+0+0)、ブロックBLK2は10回(=4+2+3+1)、ブロックBLK3は10回(=2+4+2+2)、ブロックBLK4は0回(=0+0+0+0)、ブロックBLK5は0回(=0+0+0+0)、ブロックBLK6は0回(=0+0+0+0)となるので、これら回数が9回(所定数)以上のブロックを「暗モジュール」と判定し、8回以下のブロックを「明モジュール」と判定する。
【0056】
これにより、図6(B) のように全て水平ラインに対するブロックごとに「明」・「暗」を判定する場合に比べて、判定精度は低下するものの、判定回数を集約数分の1(この場合は1/4)に削減できるので、演算の処理速度を高めることが可能となる。したがって、判定精度よりも演算速度を重視する場合にメリットがある。ここで再び図2に戻る。
【0057】
図2に示すように、ステップS30ではデコード処理が行われる。この処理は、ステップS20により検出されたコード画像Q’のデータ範囲に基づいて、所定のアルゴリズムに従ってQRコードを解読するもので、例えば、特許第2938338号公報等に公知の解読アルゴリズムに従って行われる。これにより、ステップS30では、当該QRコードを正常にデコードできた場合には、そのデコード結果をメモリ35の所定領域に格納し、また正常にデコードできた旨をデコード可否フラグに設定する。一方、当該QRコードを正常にデコードできなかった場合には、正常にデコードできなかった旨をデコード可否フラグに設定する。なお、このステップS30は、特許請求の範囲に記載の「解読手段」に相当し得るものである。
【0058】
ステップS40では、ステップS30により設定されたデコード可否フラグに基づいて、当該QRコードのデコードは成功したか(正常に読み取れたか)否かを判断する処理が行われる。即ち、デコード可否フラグに正常にデコードできた旨が設定されている場合には、当該スキャナ装置10の使用者がスキャナ装置10にかざしたQRコードは、問題なく読み取れたことになるので、デコードに成功したと判断した後(S40;Yes)、続くステップS50に処理を移行してデータ出力処理を行う。これに対し、デコード可否フラグに正常にデコードできなかった旨が設定されている場合には、当該スキャナ装置10では正常に読み取ることができないので、デコードに失敗したと判断した後(S40;No)、続くステップS60に処理を移行する。
【0059】
続くステップS50では、データ出力処理が行われる。即ち、ステップS30により正常に行われたデコードの結果、つまりデコードデータDDを所定のデータフォーマットに従って出力データを構成した後、通信インタフェース48を介して外部のホストコンピュータHSTに出力して一連の本情報コード読取処理を終了する。
【0060】
例えば、図4(A) に示すようなデータフォーマットに従った出力データを構成する。このフォーマット例で、「データID」は1バイトで構成されるデータで当該スキャナ装置10の識別と出力データ個々の識別とを可能にするものである。また、「データ種別」は、1バイトで構成されるデータで、当該データ種別の後に続くデータがデコードに成功したときに出力される「デコードデータDD」であるか、デコードに失敗したときに出力される「エラーコードEC」もしくは「出力画像データPD」であるかを明示する。図4(A) に示すデータフォーマットはデコードに成功したときのものであるため、データ種別の後には「デコードデータDD」が続き、最後にデータの終端を示すEODが付加される。
【0061】
なお、図4(B) や図4(C) には、データが読み取り(デコード)に失敗したときに出力されるデータフォーマット例が示されているが、これらについては、次に説明する画像データ転送処理において詳述する。ここで図3を参照してQRコードのデコードに失敗したときに実行される画像データ転送処理を説明する。なお、このステップS60は、特許請求の範囲に記載の「出力制御手段」に相当し得るものである。
【0062】
図3に示すように、画像データ転送処理では、まずステップS101により設定モード取得処理が行われる。この処理は、当該スキャナ装置10において予め設定されている出力モードとして、QRコードのデコードに失敗した場合にコード画像Q’を出力する「画像出力モード」か、デコードに失敗した場合でもコード画像Q’を出力しない「画像非出力モード」かのいずれかに設定されているモード情報を取得するものである。なおこの出力モードの設定は、図略の設定処理により任意に外部から入力可能に構成されている。
【0063】
ステップS103では、画像出力モードであるか否かを判断する処理が行われる。即ち、ステップS101により取得した出力モードのモード情報が画像出力モードであるか否か、つまりQRコードのデコードに失敗した場合にコード画像Q’を出力するか否かが判断される。そして、画像出力モードである場合には(S103;Yes)、続くステップS107に移行する。これに対し、ステップS101により取得した出力モードが画像出力モードでない(画像非出力モードである)場合には(S103;No)、ステップS105に移行してエラーコード出力処理が行われる。
【0064】
ステップS105によるエラーコード出力処理では、例えば、図4(B) に示すようなデータフォーマットに従って所定のエラーコードとして、QRコードのデコードに失敗した旨を示すエラー情報を含んだ出力データを構成した後、通信インタフェース48を介して外部のホストコンピュータHSTに出力する。なお、図4(B) に示す「データ種別」は、当該データ種別の後に続くデータがデコードに失敗かつ非画像出力モードに設定されているときに出力される「エラーコードEC」である旨を示すもので、また「データID」は図4(A) に示すものと同様である。本ステップによりエラーコードが出力されると図2に示すメインルーチンに戻って一連の本情報コード読取処理を終了する。
【0065】
続くステップS107では、QRコードの位置検出要素パターンFPの中心位置FCを検出できたか否かを判断する処理が行われる。この処理は、前述したステップS20によってコード画像Q’の位置を検出した際に、位置検出要素パターンFPの中心位置FCが検出されたか否かを判断するもので、当該中心位置FCが検出されている場合には(S107;Yes)、当該コード画像Q’はQRコードのものであるので、ステップS109に処理を移行し、当該中心位置FCが検出されていない場合には(S107;No)、当該コード画像Q’はQRコードのものではなく他のコード(例えばバーコード、データマトリクス等)のコード画像である可能性が高いのでステップS125に処理を移行する。
【0066】
そして、コード画像Q’がQRコードのものである場合にはステップS109により、当該QRコードのコード画像Q’の周囲にクワイエットゾーンQZが確保されているか否かを判断する処理行われる。即ち、コード画像Q’がQRコードのものであっても、QRコードの汚れPL等によって、その周囲に所定幅の余白枠(クワイエットゾーンQZ)が確保されていない場合には、JIS規格に従ったものではない反面、そのような余白枠でない周囲の画像(例えば汚れPL部分)を転送する必要もないので、このような判断処理を行い後続する処理により適正な切出し枠Fの設定を行う。
【0067】
ステップS109によりクワイエットゾーンQZが確保されていないと判断された場合には(S109;No)、ステップS121によりQRコードのFP座標算出処理が行われる。例えば、図7(A) に示す例では、エリアセンサ23により撮像された撮像画像の範囲W(500画素×600画素)において、QRコードのコード画像Q’の一部に及ぶほどの汚れPLの画像が存在する。このため、コード画像Q’の周囲にはクワイエットゾーンQZが確保されていないことから、このような場合には、コード画像Q’の三隅に位置する位置検出要素パターンFPの中心位置FCを、当該撮像画像の範囲Wの二次元座標空間(X=1〜600,Y=1〜500)における座標FC1(X1,Y1)、FC2(X2,Y2)、FC3(X3,Y3)として本ステップS121によってそれぞれ特定する。
【0068】
これに対し、ステップS109によりクワイエットゾーンQZが確保されていると判断された場合には(S109;Yes)、ステップS123によりQRコードの四隅座標算出処理が行われる。例えば、図7(B) に示す例では、撮像画像の範囲Wにおいて、QRコードのコード画像Q’の周囲には特に汚れが存在することなくクワイエットゾーンQZが確保されている。このような場合には、当該クワイエットゾーンQZの四隅の位置FKを、先と同様の座標空間において本ステップS123により特定する。この場合、特定される座標は、FK1(X1,Y1)、FK2(X2,Y2)、FK3(X3,Y3)、FK4(X4,Y4)となる。
【0069】
一方、ステップS107により中心位置FCが検出されていない場合には(S107;No)、ステップS125により他コードの四隅座標算出処理が行われる。例えば、図8(A) に示すようなバーコードBCのコード画像BC’がエリアセンサ23により撮像されていた場合には、撮像画像の範囲Wにおいて、前述したステップS20によりコード画像BC’のコード画像領域R”が生成されている。このような場合には、当該コード画像領域R”の四隅の位置FKを、ステップS123とほぼ同様に本ステップS125により特定する。この場合、特定される座標も、ステップS123の場合と同様に、FK1(X1,Y1)、FK2(X2,Y2)、FK3(X3,Y3)、FK4(X4,Y4)となる。
【0070】
ステップS121.S123,S125のいずれかによって、このような撮像画像の範囲Wにおける座標情報を算出すると、続くステップS131により傾き角算出処理が行われる。この処理は、当該座標空間におけるコード画像Q’の傾きを所定演算により算出するものである。
【0071】
例えば、図7(A) に示すクワイエットゾーンQZなしのコード画像Q’の例では、隣接する位置検出要素パターンFPの中心位置FCを通る仮想線Kと、このうちの一方の中心位置FCを通るX軸に平行な仮想線Lと、他方の中心位置FCを通るY軸に平行な仮想線Mとにより囲まれる三角形に着目し、当該三角形の斜辺外の二辺x12,y12の長さに基づいてtan−1(y12/x12)を演算する。これにより、X軸に対する当該コード画像Q’の傾きθ12が算出される(θ12=tan−1(y12/x12))。Y軸に対する当該コード画像Q’の傾きθ12’は、分母、分子のy12とx12を入れ替えることにより同様に算出される(θ12’=tan−1(x12/y12))。なお、x12=|x1−x2|(x1−x2の絶対値),y12=|y1−y2|(y1−y2の絶対値)である。
【0072】
また、図7(B) に示すクワイエットゾーンQZ付きのコード画像Q’の例では、コード画像領域R’の任意の一辺に平行な仮想線K’と、X軸に平行な仮想線L’と、Y軸に平行な仮想線M’とにより囲まれる三角形に着目し、当該三角形の斜辺外の二辺x34,y34の長さに基づいてtan−1(y34/x34)を演算する。これにより、X軸に対する当該コード画像Q’の傾きθ34が算出される(θ34=tan−1(y34/x34))。Y軸に対する当該コード画像Q’の傾きθ34’は、分母、分子のy34とx34を入れ替えることにより同様に算出される(θ34’=tan−1(x34/y34))。なお、x34=|x3−x4|(x3−x4の絶対値),y34=|y3−y4|(y3−y4の絶対値)である。
【0073】
さらに、図7(C) に示すバーコードBCのコード画像BC’の例では、コード画像領域R”の長辺に平行な仮想線K”と、X軸に平行な仮想線L”と、Y軸に平行な仮想線M”とにより囲まれる三角形に着目し、当該三角形の斜辺外の二辺x34,y34の長さに基づいてtan−1(y34/x34)を演算することにより、前述と同様に、X軸に対する当該コード画像BC’の傾きθ34が算出される(θ34=tan−1(y34/x34))。ここで、x34=|x3−x4|(x3−x4の絶対値),y34=|y3−y4|(y3−y4の絶対値)であるが、コード画像領域R”の「長辺」に対して仮想線K”を平行に設定しているので、コード画像領域R”の「短辺」に対して平行に設定した場合に比べて着目する三角形の各辺が長くなる分、算出される傾きθ34の演算精度を向上することが可能となる。またY軸に対する当該コード画像BC’の傾きθ34’も、tan−1(x34/y34)により算出可能である。
【0074】
次のステップS133では、切出し枠設定処理が行われる。この処理は、前述したステップS20により検出されたコード画像Q’の位置またはコード画像領域Rに基づいて、当該コード画像Q’の周囲を暫定的に取り囲む矩形状の切出し枠F(画像データ上の仮想的な矩形枠)を設定するものである。例えば、図7(A) に示すように、情報コードQがQRコードで事実上のクワイエットゾーンQZが存在しない場合には、コード画像Q’の3箇所に位置する各位置検出要素パターンFPのそれぞれ中心位置FCの座標に基づいて、当該コード画像Q’三隅の座標を求める。そして、そのうちのX軸方向の最大値とY軸方向の最大値とから点qの座標(Xq,Yq)を求め、X軸方向の最小値とY軸方向の最小値とから点sの座標(Xs,Ys)を求める。また、X軸方向の最小値とY軸方向の最大値とから点pの座標(Xp,Yp)を求め、X軸方向の最大値とY軸方向の最小値とから点rの座標(Xr,Yr)を求める。これにより、当該QRコードの周囲のコード画像領域Rを囲み得る切出し枠Fが設定される。
【0075】
また、図7(B) に示すように、情報コードQがQRコードでクワイエットゾーンQZが存在する場合には、コード画像領域R’の四隅の座標に基づいてそれらのXYの各軸の最大値、最小値を求めて、図7(A) の場合と同様に、当該QRコードの周囲のクワイエットゾーンQZqお含んだコード画像領域Rを囲み得る切出し枠F’を設定する。さらに図8(A) に示すように、情報コードQがQRコード以外、例えばバーコードBCである場合にも、同様に、当該バーコードBCの周囲を囲み得る切出し枠F”を設定する。
【0076】
次のステップS135では、切出し幅算出処理が行われる。この処理は、ステップS133により設定された切出し枠F(F’,F”)のX軸方向の幅とY軸方向の幅を算出するものである。例えば、図8(B) に示すように、切出し枠FのX軸方向の幅は、qのXqからpのXpを減算したもの(Xq−Yp)、またはrのXrからsのXs減算したもの(Xr−Ys)に相当し、また切出し枠FのY軸方向の幅は、pのXpからsのXsを減算したもの(Xp−Ys)、またはqのXqからrのXr減算したもの(Xq−Yr)に相当する。このため、これらの演算を行うことにより、当該切出し枠Fの各幅(X方向、Y方向)が算出される。
【0077】
ステップS137では、切出し枠補正処理が行われる。この処理は、ステップS135により算出された切出し枠Fの各幅(X方向、Y方向)が送信データの単位、例えばバイト(8ビット)単位でない場合に、当該単位の整数倍(1,2,3…n)となるようにデータ量を調整する処理である。例えば、図8(B) に示す例では、X軸方向にXadやXad’を加えた幅に補正することで、当該幅をバイト単位の整数倍に設定する。Y軸方向についても同様に、YadやYad’を加えた幅に補正する。なお、Xad、Xad’、YadやYad’は、少なくとも1つを選択しても良いし、またこれらの組み合わせても良い。
【0078】
これにより、ステップS133により暫定的に設定された切出し枠F(F’,F”)は、例えば、図8(B) に示すように、拡張された切出し枠Fsに変更される。例えば、図7(A) に示す例では、当初各座標がp(Xp,Yp),q(Xq,Yq),r(Xr,Yr),s(Xs,Ys)であった切出し枠Fが、ステップS135による補正処理によって、p’(Xp',Yp'),q’(Xq',Yq'),r’(Xr',Yr'),s’(Xs',Ys')にそれぞれ設定変更されている。なお、ステップS133により設定された切出し枠Fの各座標が、当初からバイト単位の整数倍であった場合には、当該切出し枠Fの幅は設定を変更されることなく変動しない(例えば図7(B) に示す切出し枠F’(=Fs’)。
【0079】
ステップS139では、枠内データ等転送処理が行われる。この処理は、ステップS133、S137で設定された切出し枠F等の枠内に存在する画像データ、つまり出力画像データPDを所定のデータフォーマットに従って出力データを構成した後、通信インタフェース48を介して外部のホストコンピュータHSTに出力(転送)するものである。
【0080】
例えば、図4(C) に示すようなデータフォーマットに従った出力データを構成する。このフォーマット例で、「データ長」には、これに続く付加データADと出力画像データPDを加算したデータ長が設定され、また「座標データ」には出力画像データPD中におけるコード画像領域R(R’,R”)の四隅の座標が設定されている。さらに「角度データ」には、出力画像データPD中におけるコード画像領域R(R’,R”)の傾き角度が設定されている。なお、コード画像領域R(R’,R”)の四隅の座標は、ステップS133により算出され、また傾き角度はステップS131により算出されたものである。
【0081】
なお、出力画像データPDのデータサイズが、1つの送信フレームでは収まりきれないサイズの場合には、図4(C) に示すように、複数の送信フレームに分割されてホストコンピュータHSTに転送される。この場合、途中の送信フレームの最後には、転送データが途中である旨を示すEOBが付加される。「データID]や「データ種別」その他については、図4(A) を参照して説明したものと同様である。
【0082】
このようにステップS139により切出し枠内の画像データがホストコンピュータHSTに転送されると、図2に示すメインルーチンに戻って一連の本情報コード読取処理を終了する。
【0083】
以上説明したように、本実施形態に係るスキャナ装置10では、エリアセンサ23により情報コードQ(QRコード)を含んだ画像を撮像しその画像データを出力し、メモリ35によりエリアセンサ23から出力された画像データを記憶する。そして、制御回路40により、メモリ35に記憶された画像データに基づいて情報コードQのコード画像Q’の全体が占めるコード画像領域Rの位置および範囲を算出するとともにこの位置および範囲に関する付加データADを生成し、制御回路40および通信インタフェース48によって、コード画像領域Rの位置および範囲に基づいて、メモリ35に記憶された画像データからコード画像データQ’を特定しこの特定されたコード画像データQ’を含んだ出力画像データDDとこの特定されたコード画像データQ’に関する付加データADとをホストコンピュータHSTに出力する。これにより、これを受けたホストコンピュータHSTでは、コード画像データQ’を含んだ出力画像データDDとともに当該コード画像データQ’に関する付加データAD(コード画像領域Q’の位置および範囲に関するもの)が得られるので、当該コード画像データQ’の情報処理に際し、当該コード画像領域Q’の位置および範囲に関する付加データADをあらためて算出する必要がない。したがって、ホストコンピュータHSTにおいて、このような付加データADの算出処理が省ける分、当該ホストコンピュータHSTの処理負担を軽減することができる。
【0084】
また、本実施形態に係るスキャナ装置10では、付加データADとしてコード画像領域Rの傾き角度の角度データθ(θ12、θ12’)も付加するので、ホストコンピュータHSTにおいて、このようなコード画像領域Rの傾き角度θの算出処理が省ける分、当該ホストコンピュータHSTの処理負担を軽減することができる。
【0085】
なお、上述した実施形態では、情報コードの例としてQRコードを例示して説明したが、本発明はこれに限られることはなく、情報コードであれば、例えば、QRコード以外の二次元コード(PDF417、データマトリックス、マキシコード、RSSコンポジット等)や、一次元コード(EAN/UPC、インターリーブド2オブ5、コーダバー、コード39/128、スタンダード2オブ5、RSS等)等についても、前述と同様の作用および効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一実施形態に係るスキャナ装置の電気的、光学的構成例を示すブロック図である。
【図2】本スキャナ装置による情報コードの読取処理の主な流れを示すフローチャートである。
【図3】図2に示す画像データ転送処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】本スキャナ装置から出力されるデータフォーマットの例を示す説明図で、図4(A) はデコードに成功した場合に出力される出力データの例で、図4(B) はデコードに失敗した場合に出力される出力データ(エラーコード)の例、図4(C) はデコードに失敗した場合に出力される出力データ(出力画像データ)の例である。
【図5】図5(A) はQRコードの位置検出要素パターンの構成を示す説明図、図5(B) はQRコードの構成例を示す説明図である。
【図6】図6(A) はコード画像の検出方法を概念的に示す説明図で、図6(B) は各行ごとに複数セルのまとまりで数値化した例を示す説明図で、図6(C) は図6(B) に示す4行分をまとめて数値化した例を示す説明図である。
【図7】撮像画像の範囲内におけるコード画像とその周囲を囲む切出し枠との位置関係等を示す説明図で、図7(A) はクワイエットゾーンなしのQRコードの場合、図7(B) はクワイエットゾーン付きのQRコードの場合、をそれぞれ示すものである。
【図8】図8(A) は、撮像画像の範囲内におけるバーコードのコード画像とその周囲を囲む切出し枠との位置関係等を示す説明図で、図8(B) は、図3に示すステップS135,S137の説明を補足する説明図である。
【符号の説明】
【0087】
10…スキャナ装置(コード画像出力装置、光学情報読取装置)
21…照明部
23…エリアセンサ(撮像手段)
25…結像光学部
27…結像レンズ
31…増幅回路
33…A/D変換回路
35…メモリ(記憶手段、解読手段、出力制御手段)
36…アドレス発生回路
38…同期信号発生回路
40…制御回路(演算手段、出力手段、解読手段、出力制御手段)
46…液晶表示部
48…通信インタフェース(出力手段)
100…表示媒体
AD…付加データ
BC…バーコード
DD…デコードデータ(解読データ)
PD…出力画像データ
F、F’、F”…切出し枠(矩形状領域)
FP…位置検出要素パターン
FC…中心位置
HST…ホストコンピュータ(外部装置)
Q…QRコード(情報コード)
Q’…コード画像
QZ…クワイエットゾーン(所定幅の余白枠)
R、R’、R”…コード画像領域
Th…所定の閾値
W…撮像画像の範囲
θ、θ12、θ12’、θ34、θ34’…傾き角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報コードを含んだ画像を撮像しその画像データを出力可能な撮像手段と、
前記撮像手段から出力された前記画像データを記憶可能な記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記画像データに基づいて前記情報コードのコード画像の全体が占めるコード画像領域の位置および範囲を算出可能であるとともにこの位置および範囲に関する付加データを生成可能な演算手段と、
前記コード画像領域の位置および範囲に基づいて、前記記憶手段に記憶された前記画像データから前記コード画像データを特定しこの特定されたコード画像データを含んだ出力画像データとこの特定されたコード画像データに関する前記付加データとを外部装置に出力可能な出力手段と、
を備えることを特徴とするコード画像出力装置。
【請求項2】
前記付加データは、前記出力画像データにおいて前記コード画像領域を内包可能な矩形状領域を特定可能な座標情報であることを特徴とする請求項1記載のコード画像出力装置。
【請求項3】
前記情報コードが位置決めマークを含んで構成されている場合において、
前記付加データは、前記出力画像データにおいて前記位置決めマークの存在位置を特定可能な座標情報であることを特徴とする請求項1記載のコード画像出力装置。
【請求項4】
前記演算手段は、前記出力画像データにおける前記コード画像領域の傾き角度を算出し、前記付加データは、前記傾き角度の角度情報であることを特徴とする請求項2または3記載のコード画像出力装置。
【請求項5】
前記記憶手段に記憶された前記画像データが前記撮像手段により撮像可能な最小単位である画素ごとに2ビット以上の明暗情報を有する場合において、
前記演算手段は、
所定区画内に存在する前記画素ごとの明暗情報が所定の閾値を挟んで変化する回数に基づいて、前記コード画像データとその周囲の周囲画像データとの境界を判別することで前記コード画像領域の位置または範囲を特定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のコード画像出力装置。
【請求項6】
前記演算手段は、
隣接した複数の前記所定区画でまとめて得られる前記回数に基づいて、前記コード画像データとその周囲の周囲画像データとの境界を判別することで前記コード画像領域の位置または範囲を特定することを特徴とする請求項5記載のコード画像出力装置。
【請求項7】
前記情報コードが二次元コードであり、当該情報コードの存在範囲を特定可能な四隅のうちの少なくとも3箇所に位置決めマークが存在するものを前記出力手段が前記コード画像データとして出力する場合において、
前記演算手段は、
少なくとも1箇所に存在する前記位置決めマークの座標情報に基づいて、前記出力画像データにおける前記情報コードの存在位置を特定し、
少なくとも3箇所に存在する前記位置決めマークの座標情報に基づいて、前記出力画像データにおける前記情報コードの存在範囲を特定することを特徴とする請求項1記載のコード画像出力装置。
【請求項8】
前記出力手段は、前記情報コードの周囲を囲む所定幅の余白枠を含んだものを前記コード画像データとして出力することを特徴とする請求項7記載のコード画像出力装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のコード画像出力装置を用いた光学情報読取装置であって、
前記撮像手段から出力される前記画像データに含まれる当該情報コードを解読可能な解読手段と、
前記解読手段による前記情報コードの解読が成功した場合には前記解読手段から出力される解読データを出力し、前記情報コードの解読が失敗した場合には前記出力手段から出力される前記出力画像データと前記付加データとを出力するように前記出力手段を制御する出力制御手段と、
を備えることを特徴とする光学情報読取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate