説明

コード相関方法、コード相関プログラム、入射信号を解読する方法、測位方法、測位プログラム、コード相関装置、および測位装置。

【課題】短遅延マルチパスによる影響を抑圧可能なコード相関器を実現する。
【解決手段】Pレプリカコードと、該Pレプリカコードを基準にしてチップ間隔d/2のE1,L1レプリカコードと、Pレプリカコードを基準にしてチップ間隔dのE2,L2レプリカコードと、E1,L1,E2,L2レプリカコードに対してそれぞれ2chip遅延したVE1,VL1,VE2,VL2レプリカコードを生成する。各レプリカコードとIF信号との相関処理を行い、各相関処理結果である相関レベルを出力する。P相関レベル、E1相関レベル、L1相関レベル、E2相関レベル、L2相関レベル、VE1相関レベル、VL1相関レベル、VE2相関レベル、VL2相関レベルを組み合わせて所定の四則演算処理を行うことで、1.0chipを含む所定区間で位相差検出結果が定常的にゼロとなる位相差検出特性を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測位信号の拡散コードと、該拡散コードのレプリカコードとのコード相関処理を行うコード相関方法および該コード相関方法を用いた測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GNSS(Global Navigation SatelliteSystem)を利用した測位装置では、位置、速度などを算出するために擬似距離やその変化量を観測する必要がある。そして、擬似距離等の測定には、測位信号を捕捉して追尾しなければならない。
【0003】
測位信号のコード追尾方法としては、受信した測位信号の拡散コードと、該拡散コードに基づくレプリカコードとをコード相関処理し、コード位相差を算出する。そして、このコード位相差が無くなるように、レプリカコードの位相を調整していく。
【0004】
このようなコード追尾処理では、一般に、レプリカコードとして、Promptレプリカコード(以下、略して「Pレプリカコード」と称する。)、Earlyレプリカコード(以下、略して「Eレプリカコード」と称する。)、Lateレプリカコード(以下、略して「Lレプリカコード」と称する。)を用いる。Pレプリカコードは、測位信号の拡散コードに対して位相差が無くなるように設定されている。Eレプリカコードは、Pレプリカコードに対して、所定位相進んだ位相に設定されている。Lレプリカコードは、Pレプリカコードに対して、所定位相遅れた位相に設定されている。
【0005】
そして、具体的なコード追尾方法として、例えば特許文献1に示す方法がある。図7は、従来方法で利用する各レプリカコードのコード相関特性を示す。図7で横軸は目的信号(測位信号)の拡散コードに対するコード位相差[chip]であり、縦軸はコード相関レベルを表す。
【0006】
特許文献1の方法では、Pレプリカコード(図7の特性900P)を中心に、チップ間隔dからなる第1Eレプリカコード(図7の特性900E)と第1Lレプリカコード(図7の特性900L)を設定する。さらに、Pレプリカコードを中心に、チップ間隔2dからなる第2Eレプリカコード(図7の特性900VE)と第2Lレプリカコード(図7の特性900VL)を設定する。
【0007】
測位信号の拡散コードと第1Eレプリカコードとを相関処理して相関レベルEc1を得る。測位信号の拡散コードと第1Lレプリカコードとを相関処理して相関レベルLc1を得る。相関レベルEc1から相関レベルLc1を減算して、第1EL相関レベルELc1を算出する。
【0008】
測位信号の拡散コードと第2Eレプリカコードとを相関処理して相関レベルEc2を得る。測位信号の拡散コードと第2Lレプリカコードとを相関処理して相関レベルLc2を得る。相関レベルEc2から相関レベルLc2を減算して、第2EL相関レベルELc2を算出する。
【0009】
そして、第1EL相関レベルELc1を、第2EL相関レベルELc2を1/2倍した値から減算する。すなわち、ELc1−(1/2)*ELc2を算出する。この算出結果をコード追尾のレプリカコードの位相調整や擬似距離算出に利用する。
【0010】
また、特許文献2の発明および特許文献3の発明も、特許文献1の発明と同様に、複数のレプリカコードを用いて所望の相関レベルが得られるような処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5953367号明細書
【特許文献2】特開2001−53648号公報
【特許文献3】特開平11−142502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1,2,3の方法では、次に示すような同様の問題が生じる。したがって、ここでは、特に特許文献1に付いて示す。図8は特許文献1の方法でコード相関を行った場合のコード位相差検出特性である。図8の横軸は目的信号(測位信号)の拡散コードに対するコード位相差[chip]であり、縦軸は上述のELc1−(1/2)*ELc2の値である。
【0013】
図8に示すように、特許文献1の方法を用いると、コード位相差が「0.0chip」付近、「±1.0chip」付近を除き、常に検出値が理論上「0」となる。したがって、これらの検出値が「0」となる区間は、マルチパスが生じても影響されない不感区間となる。
【0014】
しかしながら、逆にマルチパスによる相関ピークが±1.0chip付近に現れるような場合には、その影響を受けてしまい、コード追尾精度および擬似距離算出精度に大きな影響を与えてしまう。ここで、GPS(Global Positioning System)の1575.42MHzのL1波に用いられるC/Aコードの場合、チップレートが1.023Mcpsであり、+1chipとは距離にして293mとなる。このような短遅延マルチパスは、測位信号を高層建築物等の反射する物体が多く存在する都市部では、起こりやすい。
【0015】
したがって、本発明の目的は、短遅延マルチパスの影響を抑圧できるコード相関方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、目的の拡散コードとレプリカコードとのコード位相差を算出するためのコード相関方法に関する。コード相関方法は、コード相関処理工程と、コード位相差算出工程と、を有する。
【0017】
コード相関処理工程は、GNSS信号の拡散コードと第1のレプリカコード対、第2のレプリカコード対、第3のレプリカコード対、および第4のレプリカコード対の各レプリカコードとを相関処理する。具体的には、コード相関処理工程は、GNSS信号の拡散コードと第1のレプリカコードの各レプリカコードとを相関処理し、第1相関結果を得る。コード相関処理工程は、GNSS信号の拡散コードと第2のレプリカコードの各レプリカコードとを相関処理し、第2相関結果を得る。コード相関処理工程は、GNSS信号の拡散コードと第3のレプリカコードの各レプリカコードとを相関処理し、第3相関結果を得る。コード相関処理工程は、GNSS信号の拡散コードと第4のレプリカコードの各レプリカコードとを相関処理し、第4相関結果を得る。
【0018】
コード位相差算出部は、第1相関結果、第2相関結果、第3相関結果、および第4相関結果に基づいて、コード位相差検出結果を算出する。
【0019】
そして、このようなコード相関処理に利用する上述の第1のレプリカコード対、第2のレプリカコード対、第3のレプリカコード対、および第4のレプリカコード対は、以下の特徴を有する。
【0020】
第1のレプリカコード対は、第1チップ間隔を有する二つのレプリカコードからなる。
【0021】
第2のレプリカコード対は、第1チップ間隔と異なる第2チップ間隔を有する二つのレプリカコードからなる。
【0022】
第3のレプリカコード対は、第1のレプリカコード対を構成する二つのレプリカコードに対して、それぞれに所定コード位相差を有する二つのレプリカコードからなる。
【0023】
第4のレプリカコード対は、第2のレプリカコード対を構成する二つのレプリカコードに対して、それぞれに所定コード位相差を有する二つのレプリカコードからなる。
【0024】
この方法では、チップ間隔の異なる第1、第2のレプリカコード対と、第1、第2のレプリカコード対のそれぞれに対してコード位相が異なる第3、第4のレプリカコード対とを、組み合わせて用いることで、目的の拡散コードに対するコード相関特性を複数の相関パターンで取得することが可能になる。具体的には、図8のコード特性900Cに示すようなコード位相差が「0chip」で相関値がピークとなり、コード位相差の絶対値が大きくなるほど相関値が低下して、コード位相差の絶対値が「1.0chip」以上で相関値が「0」になるような特性とは異なる相関特性を算術的に得ることができる。これにより、例えば、後述する図3(C)に示すようなコード位相差が「+1.0chip」を中間点として線形で低下し続けるような相関特性も設定できる。そして、このような特性により、図3(C)の特性であれば、図4(C)に示すように、コード位相差が「+1.0chip」近傍での検出値を「0」として、マルチパスに対する不感区間に設定することが可能になる。
【0025】
また、この発明のコード相関方法では、上述の所定コード位相差は拡散コードの1.0chipである。第3のレプリカコード対と第4のレプリカコード対は、第1のレプリカコード対と第2のレプリカコード対に対して遅延している。
【0026】
この方法では、上述の各レプリカコード対同士の具体的な時間的関係(コード位相差上の関係)を示している。
【0027】
また、この発明のコード相関方法では、第2チップ間隔は第1チップ間隔よりも広く設定されている。さらに、第1レプリカコード対の二つのレプリカコードとGNSS信号の拡散コードとの相関ピークのタイミングは、第2レプリカコード対の二つのレプリカコードとGNSS信号の拡散コードとの相関ピークのタイミングの間になるように各レプリカコードが設定されている。コード位相差算出工程は、第1相関結果を第3相関結果で減算した値と、第2相関結果を第4相関結果で減算した値とに基づいて、コード位相差検出結果を算出する。
【0028】
また、この発明のコード相関方法のコード位相差算出工程では、第1相関結果を第3相関結果で減算した値を所定倍する。コード位相差算出工程では、第2相関結果を第4相関結果で減算した値で、所定倍後の値をさらに減算することで、コード位相差検出結果を算出する。
【0029】
これらの方法では、上述の所望とする特定の相関特性を得るための具体的設定例を示している。
【0030】
また、この発明のコード相関方法では、各レプリカコード対のレプリカコードは、GNSS信号の拡散コードに対してコード位相差がゼロになるように設定されたPromptレプリカコードを基準にして、所定コード位相だけ位相が進んだEarlyレプリカコードと、所定コード位相だけ位相が遅れたLateレプリカコードと、から構成される。
【0031】
この方法では、上述の各レプリカコード対を構成するレプリカコードの具体的な設定例を示している。
【0032】
また、この発明のコード相関方法では、各相関結果は、GNSS信号の拡散コードとEarlyレプリカコードとの相関値から、GNSS信号の拡散コードとLateレプリカコードとの相関値を減算することにより、算出される。
【0033】
この方法では、上述の各EarlyレプリカコードおよびLateレプリカコードを用いた場合の具体的な相関結果の算出方法を示している。
【0034】
また、この発明は、搬送波を含む入射信号を解読する方法であり、搬送波は、擬似ランダムノイズ(PRN)2進コードで暗号化されたものである入射信号を解読する方法において、入射信号のPRNコードに対応するPRN信号を局部的に発生させ、局部発生したPRN信号を入射信号と混合させ、局部発生したPRN信号を入射信号と混合させた結果から、入射信号PRNコードおよび局部発生PRN信号間の相対位相差の関数として大きさをもつ誤差信号を展開することであり、ここで、局部発生したPRN信号は、(a)零の相対位相差に対して、およびプラスおよびマイナス1チップ間との広範囲の相対位相差に対して零であり、そして(b)相対位相差が、前記範囲の中心部分内で零から別の値に変化するにつれて増加するものである誤差信号を展開し、そして、誤差信号が、前記範囲の中心部分内に零でない大きさをもつとき、局部発生したPRN信号の位相を、誤差信号を零に駆動するように調整することで相対位相差を調整することであり、それにより、入射信号のPRNコードと局部発生したPRN信号との間の相対位相差を零に駆動する相対位相差を調整することを含む。その上で、前記PRN信号は、第1のPRN信号対、第2のPRN信号対、第3のPRN信号対、および第4のPRN信号対を有し、第1のPRN信号対は第1チップ間隔を有する二つのPRN信号からなり、第2のPRN信号対は第1チップ間隔と異なる第2チップ間隔を有する二つのPRN信号からなり、第3のPRN信号対は第1のPRN信号対を構成する二つのPRN信号に対してそれぞれに所定コード位相差を有する二つのPRN信号からなり、第4のPRN信号対は第2のPRN信号対を構成する二つのPRN信号に対して、それぞれに所定コード位相差を有する二つのPRN信号からなる。
【0035】
このような搬送波を含む入射信号を解読する方法においても、同様の作用が得られる。
【0036】
また、この発明は測位方法に関する。この測位方法では、上述のコード相関方法の各工程を含むとともに、航法メッセージ解析工程、擬似距離算出工程、および測位演算工程を有する。航法メッセージ解析工程では、目的の拡散信号に重畳された航法メッセージを解析する。擬似距離算出工程では、コード位相差に基づいてコード擬似距離を算出する。測位演算工程では、航法メッセージとコード擬似距離に基づいて測位を行う。
【0037】
この方法では、上述のコード相関方法を有する測位方法について示している。そして、上述のように相関特性が改善されたコード相関方法を用いることで、コード追尾精度が向上し、より高精度な測位演算が可能となる。
【発明の効果】
【0038】
この発明によれば、短遅延マルチパスの影響を抑圧することができ、高精度のコード位相差算出処理が可能になる。これにより、高精度なコード追尾および測位が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態1に係るGPS測位装置1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】GPS測位装置1の復調部13のコード追尾処理に関する構成を示すブロック図である。
【図3】コード相関部32で生成される各レプリカコードのPNコードに対するコード相関特性の関係を示す図である。
【図4】EL相関レベル、VEL相関レベルおよびこれらに基づく位相差検出結果のコード位相特性を示す図である。
【図5】実施形態1の構成および処理による擬似距離算出誤差および従来技術(特許文献1)の構成および処理による擬似距離算出誤差のコード位相差特性を示す図である。
【図6】実施形態2に係る復調部13Aのコード追尾処理に関する構成を示すブロック図である。
【図7】従来方法で利用する各レプリカコードのコード相関特性を示す。
【図8】特許文献1の方法でコード相関を行った場合のコード位相差検出特性である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施形態1に係るコード相関部および該コード相関部を備えたGPS測位装置の構成について、図を参照して説明する。なお、本実施形態では、GPS測位信号を用いたGPS測位装置を例に説明するが、他のGNSSシステムの測位信号を用いた測位装置に対しても、本実施形態のコード相関器の構成および測位装置の構成を適用することができる。
【0041】
図1は本実施形態のコード相関部32を備える復調部13を含むGPS測位装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0042】
GPS測位装置1は、受信アンテナ11、ダウンコンバータ12、本発明のコード相関装置を含む復調部13、航法メッセージ解析部14、測位演算部15を備える。
【0043】
受信アンテナ11は、GPS測位衛星から送信されるL1測位信号を受信し、ダウンコンバータ12へ出力する。ダウンコンバータ12は、L1測位信号を所定の中間周波数信号(以下、IF信号と称する)に変換し、復調部13へ出力する。
【0044】
復調部13は、IF信号に対してキャリア及びPRN(Pseudo-rangeRandom Noise)コード(本願の拡散コードに相当する。)の位相追尾を行い、航法メッセージを復調する。復調部13で得られるキャリア位相差およびコード位相差の観測量は、測位演算部15へ出力され、また、復調された航法メッセージは、航法メッセージ解析部14へ出力される。
【0045】
航法メッセージ解析部14は、復調部13からの航法メッセージを解析して、その内容を測位演算部15に与える。測位演算部15は、航法メッセージ解析部14からの航法メッセージの内容と、復調部13からの観測量に基づいて測位演算を行い、測位装置の位置を算出する。
【0046】
次に、コード相関部32を含む復調部13について、図を参照して、より具体的に説明する。図2は、GPS測位装置1の復調部13のコード追尾処理に関する構成を示すブロック図である。なお、復調部13のキャリア相関やキャリア追尾に関する処理は、公知の方法によって行われるために、図2では構成を省略し、説明も省略する。また、図3は、本実施形態のコード相関部32で生成される各レプリカコードのPNコードに対するコード相関特性の関係を示す図である。
【0047】
復調部13は、コード追尾部31、復調処理部35、および擬似距離算出部36を備える。コード追尾部31は、コード相関部32、正規化演算部33、ループフィルタ34を備える。
【0048】
復調処理部35は、コード相関部32の相関器323Pから出力されたP相関値に基づいて航法メッセージを復調し、当該復調した航法メッセージを航法メッセージ解析部14へ出力する。
【0049】
擬似距離算出部36は、コード追尾部31のループフィルタ34から出力されたコード位相差信号に基づいてコード擬似距離を算出して、測位演算部15へ出力する。なお、擬似距離算出部34の処理は、図1に示した測位演算部15で行ってもよい。この場合は、ループフィルタ34の出力を測位演算部15へ出力すればよい。
【0050】
コード追尾部31のコード相関部32は、NCO320、コード発生器321、コードシフタ322、相関器323P,323E1,323L1,323E2,323L2,323VE1,323VL1,323VE2,323VL2、レベル検出部324E1,324L1,324E2,324L2,324VE1,324VL1,324VE2,324VL2、および、位相差算出部37を備える。
【0051】
NCO320は、ループフィルタ34からのコード位相差信号に応じて制御されるクロックレートのNCOクロック信号を発生する。NCO320は、該NCOクロック信号をコード発生器321へ出力する。
【0052】
コード発生器321は、NCOクロック信号に基づいて、L1測位信号に係るPNコードのコードレプリカを発生し、該コードレプリカをコードシフタ332へ出力する。
【0053】
コードシフタ322は、シフトレジスタ回路からなり、基準コードレプリカとなるPromptレプリカコード(Pレプリカコード)とともに、次に示す各レプリカコードを出力する。
【0054】
コードシフタ322は、Pレプリカコードに対してチップ間隔d/2[chip](dは所定の定数)で位相が進んでいる第1Earlyレプリカコード(E1レプリカコードと称する。)と、Pレプリカコードに対してチップ間隔d/2[chip]で位相が遅延している第1Lateレプリカコード(L1レプリカコードと称する。)とを出力する。このように、E1レプリカコードとL1レプリカコードは、時間軸上でPレプリカコードを中心として、チップ間隔d[chip]離間したレプリカコードとして出力される。
【0055】
また、コードシフタ322は、Pレプリカコードに対してチップ間隔d[chip]で位相が進んでいる第2Earlyレプリカコード(VE1レプリカコードと称する。)と、Pレプリカコードに対してチップ間隔d[chip]で位相が遅延している第2Lateレプリカコード(VL1レプリカコードと称する。)とを出力する。このように、VE1レプリカコードとVL1レプリカコードは、時間軸上でPレプリカコードを中心として、チップ間隔2d[chip]離間したレプリカコードとして出力される。
【0056】
これらPレプリカコード、E1,VE1レプリカコード、およびL1,VL1レプリカコードの受信信号(L1測位信号)のPNコードに対する相関特性は、図3(A)の関係になる。
【0057】
Pレプリカコードは、受信信号のPNコードに対してコード位相差が0[chip]の位置で相関レベルがピーク値Pkとなり、コード位相差が±1.0[chip]に近づくにしたがって相関レベルが下がり、コード位相差が1.0[chip]以上および−1.0[chip]以下では相関レベルが「0」になる。すなわち、図3(A)の特性カーブ90Ppに示す特性となる。
【0058】
E1レプリカコードは、受信信号のPNコードに対してコード位相差が0−d/2[chip]の位置で相関レベルがピーク値Pkとなり、コード位相差が±1.0−d/2[chip]に近づくにしたがって相関レベルが下がり、コード位相差が1.0−d/2[chip]以上および−1.0−d/2[chip]以下では相関レベルが「0」になる。すなわち、図3(A)の特性カーブ90E1に示す特性となる。
【0059】
L1レプリカコードは、受信信号のPNコードに対してコード位相差が0+d/2[chip]の位置で相関レベルがピーク値Pkとなり、コード位相差が±1.0+d/2[chip]に近づくにしたがって相関レベルが下がり、コード位相差が1.0+d/2[chip]以上および−1.0+d/2[chip]以下では相関レベルが「0」になる。すなわち、図3(A)の特性カーブ90L1に示す特性となる。
【0060】
VE1レプリカコードは、受信信号のPNコードに対してコード位相差が0−d[chip]の位置で相関レベルがピーク値Pkとなり、コード位相差が±1.0−d[chip]に近づくにしたがって相関レベルが下がり、コード位相差が1.0−d[chip]以上および−1.0−d[chip]以下では相関レベルが「0」になる。すなわち、図3(A)の特性カーブ90VE1に示す特性となる。
【0061】
VL1レプリカコードは、受信信号のPNコードに対してコード位相差が0+d[chip]の位置で相関レベルがピーク値Pkとなり、コード位相差が±1.0+d[chip]に近づくにしたがって相関レベルが下がり、コード位相差が1.0+d[chip]以上および−1.0+d[chip]以下では相関レベルが「0」になる。すなわち、図3(A)の特性カーブ90VL1に示す特性となる。
【0062】
また、コードシフタ322は、E1レプリカコードに対してチップ間隔2[chip]で位相が遅延している第3Earlyレプリカコード(E2レプリカコードと称する。)と、E2レプリカコードに対してチップ間隔d[chip]で位相が遅延している第3Lateレプリカコード(L2レプリカコードと称する。)とを出力する。このように、E2レプリカコードおよびL2レプリカコードは、E1レプリカコードおよびL1レプリカコードに対して、それぞれチップ間隔2[chip]分遅延したレプリカコードとして出力される。
【0063】
また、コードシフタ322は、VE1レプリカコードに対してチップ間隔2[chip]で位相が遅延している第4Earlyレプリカコード(VE2レプリカコードと称する。)と、VE2レプリカコードに対してチップ間隔2d[chip]で位相が遅延している第4Lateレプリカコード(VL2レプリカコードと称する。)とを出力する。このように、VE2レプリカコードおよびVL2レプリカコードは、VE1レプリカコードおよびVL1レプリカコードに対して、それぞれチップ間隔2[chip]分遅延したレプリカコードとして出力される。
【0064】
これらE2,VE2レプリカコード、およびL2,VL2レプリカコードの受信信号のPNコードに対する相関特性は、図3(B)の関係になる。
【0065】
E2レプリカコードは、受信信号のPNコードに対してコード位相差が0−(d/2)+2[chip]の位置で相関レベルがピーク値Pkとなり、コード位相差が±1.0−(d/2)+2[chip]に近づくにしたがって相関レベルが下がり、コード位相差が1.0−(d/2)+2[chip]以上および−1.0−(d/2)+2[chip]以下では相関レベルが「0」になる。すなわち、図3(B)の特性カーブ90E2に示す特性となる。
【0066】
L2レプリカコードは、受信信号のPNコードに対してコード位相差が0+(d/2)+2[chip]の位置で相関レベルがピーク値Pkとなり、コード位相差が±1.0+(d/2)+2[chip]に近づくにしたがって相関レベルが下がり、コード位相差が1.0+(d/2)+2[chip]以上および−1.0+(d/2)+2[chip]以下では相関レベルが「0」になる。すなわち、図3(B)の特性カーブ90L2に示す特性となる。
【0067】
VE2レプリカコードは、受信信号のPNコードに対してコード位相差が0−d+2[chip]の位置で相関レベルがピーク値Pkとなり、コード位相差が±1.0−d+2[chip]に近づくにしたがって相関レベルが下がり、コード位相差が1.0−d+2[chip]以上および−1.0−d+2[chip]以下では相関レベルが「0」になる。すなわち、図3(B)の特性カーブ90VE2に示す特性となる。
【0068】
VL2レプリカコードは、受信信号のPNコードに対してコード位相差が0+d+2[chip]の位置で相関レベルがピーク値Pkとなり、コード位相差が±1.0+d+2[chip]に近づくにしたがって相関レベルが下がり、コード位相差が1.0+d+2[chip]以上および−1.0+d[chip]+2以下では相関レベルが「0」になる。すなわち、図3(B)の特性カーブ90VL2に示す特性となる。
【0069】
なお、実際には出力する必要はないが、Pレプリカコードに対して2[chip]遅延した位相からなるPvレプリカコードは、受信信号のPNコードに対してコード位相差が2[chip]の位置で相関レベルがピーク値Pkとなり、コード位相差が±1.0+2[chip]に近づくにしたがって相関レベルが下がり、コード位相差が1.0+2[chip]以上および−1.0+2[chip]以下では相関レベルが「0」になる。すなわち、図3(B)の特性カーブ90Pvに示す特性となる。
【0070】
このような特性に設定することで、Pレプリカコードの相関レベルとPvレプリカコードの相関レベルの符号反転値とを合成した特性は、図3(C)の特性カーブ90Puに示す特性となる。具体的には、コード位相差が0.0[chip]から2.0[chip]まで、線形で相関レベルが低下する特性を得られる。これにより、コード位相差の変化率が1.0[chip]を中心とする所定範囲で一定な特性を得られる。
【0071】
同様に、E1レプリカコードの相関レベルとE2レプリカコードの相関レベルの符号反転値とを合成した特性は、図3(C)の特性カーブ90Euに示す特性となる。図3(C)に示すように、E1レプリカコードとE2レプリカコードによる特性カーブ90Euは、特性カーブ90Puに対して、コード位相差として−d/2[chip]シフトした特性となる。
【0072】
また、L1レプリカコードの相関レベルとL2レプリカコードの相関レベルの符号反転値とを合成した特性は、図3(C)の特性カーブ90Luに示す特性となる。図3(C)に示すように、L1レプリカコードとL2レプリカコードによる特性カーブ90Luは、特性カーブ90Puに対して、コード位相差として+d/2[chip]シフトした特性となる。
【0073】
また、VE1レプリカコードの相関レベルとVE2レプリカコードの相関レベルの符号反転値とを合成した特性は、図3(C)の特性カーブ90VEuに示す特性となる。図3(C)に示すように、VE1レプリカコードとVE2レプリカコードによる特性カーブ90VEuは、特性カーブ90Puに対して、コード位相差として−d[chip]シフトした特性となる。
【0074】
また、VL1レプリカコードの相関レベルとVL2レプリカコードの相関レベルの符号反転値とを合成した特性は、図3(C)の特性カーブ90VLuに示す特性となる。図3(C)に示すように、VL1レプリカコードとVL2レプリカコードによる特性カーブ90VLuは、特性カーブ90Puに対して、コード位相差として+d[chip]シフトした特性となる。
【0075】
このような各特性が得られる各レプリカコードは、相関器323P,323E1,323L1,323E2,323L2,323VE1,323VL1,323VE2,323VL2へ入力される。具体的には、Pレプリカコードは相関器323Pに入力される。E1レプリカコードは相関器323E1に入力され、L1レプリカコードは相関器323L1に入力される。E2レプリカコードは相関器323E2に入力され、L2レプリカコードは相関器323L2に入力される。VE1レプリカコードは相関器323VE1に入力され、VL1レプリカコードは相関器323VL1に入力される。VE2レプリカコードは相関器323VE2に入力され、VL2レプリカコードは相関器323VL2に入力される。
【0076】
相関器323Pは、PレプリカコードとIF信号との相関を行い、相関結果であるP相関値を復調処理部35へ出力する。
【0077】
相関器323E1は、E1レプリカコードとIF信号との相関を行い、相関結果であるE1相関値をレベル検出部324E1へ出力する。レベル検出部324E1は、E1相関値の絶対値であるE1相関レベルを算出し、位相差算出部37の減算器3711へ出力する。
【0078】
相関器323L1は、L1レプリカコードとIF信号との相関を行い、相関結果であるL1相関値をレベル検出部324L1へ出力する。レベル検出部324L1は、L1相関値の絶対値であるL1相関レベルを算出し、位相差算出部37の減算器3711へ出力する。
【0079】
相関器323E2は、E2レプリカコードとIF信号との相関を行い、相関結果であるE2相関値をレベル検出部324E2へ出力する。レベル検出部324E2は、E2相関値の絶対値であるE2相関レベルを算出し、位相差算出部37の減算器3712へ出力する。
【0080】
相関器323L2は、L2レプリカコードとIF信号との相関を行い、相関結果であるL2相関値をレベル検出部324L2へ出力する。レベル検出部324L2は、L2相関値の絶対値であるL2相関レベルを算出し、位相差算出部37の減算器3712へ出力する。
【0081】
相関器323VE1は、VE1レプリカコードとIF信号との相関を行い、相関結果であるVE1相関値をレベル検出部324VE1へ出力する。レベル検出部324VE1は、VE1相関値の絶対値であるVE1相関レベルを算出し、位相差算出部37の減算器3713へ出力する。
【0082】
相関器323VL1は、VL1レプリカコードとIF信号との相関を行い、相関結果であるVL1相関値をレベル検出部324VL1へ出力する。レベル検出部324VL1は、VL1相関値の絶対値であるVL1相関レベルを算出し、位相差算出部37の減算器3713へ出力する。
【0083】
相関器323VE2は、VE2レプリカコードとIF信号との相関を行い、相関結果であるVE2相関値をレベル検出部324VE2へ出力する。レベル検出部324VE2は、VE2相関値の絶対値であるVE2相関レベルを算出し、位相差算出部37の減算器3714へ出力する。
【0084】
相関器323VL2は、VL2レプリカコードとIF信号との相関を行い、相関結果であるVL2相関値をレベル検出部324VL2へ出力する。レベル検出部324VL2は、VL2相関値の絶対値であるVL2相関レベルを算出し、位相差算出部37の減算器3714へ出力する。
【0085】
位相差算出部37は、減算器3711,3712,3713,3714,3721,3722,374、および定倍部373を備える。
【0086】
減算器3711は、E1相関レベルからL1相関レベルを減算することで、EL1相関レベルを算出する。
【0087】
減算器3712は、E2相関レベルからL2相関レベルを減算することで、EL2相関レベルを算出する。
【0088】
減算器3713は、VE1相関レベルからVL1相関レベルを減算することで、VEL1相関レベルを算出する。
【0089】
減算器3714は、VE2相関レベルからVL2相関レベルを減算することで、VEL2相関レベルを算出する。
【0090】
減算器3721は、EL1相関レベルからEL2相関レベルを減算することで、EL相関レベルを算出する。
【0091】
減算器3722は、VEL1相関レベルからVEL2相関レベルを減算することで、VEL相関レベルを算出する。
【0092】
ここで、各レプリカコード(P,E1,E2,L1,L2,VE1,VE2,VL1,VL2レプリカコード)が上述の図3に示す特性を有することで、減算器3721から出力されるEL相関レベルおよび減算器3722から出力されるVEL相関レベルは、図4(A)に示すような特性を有する。図4は、EL相関レベル、VEL相関レベルおよびこれらに基づく位相差検出結果のコード位相特性を示す図である。図4(A)はEL相関レベルおよびVEL相関レベルのコード位相特性であり、図4(B)は2倍したEL相関レベルとVEL相関レベルとのコード位相特性であり、図4(C)は位相差検出結果のコード位相特性を示す。
【0093】
EL相関レベルは、次の式で表すことができる。なお、以下の式では、各相関レベルを、その直前の記号のみ出示している。
【0094】
EL=EL1−EL2=(E1−L1)−(E2−L2)
=(E1−E2)−(L1−L2) ・・・(式1)
このように、EL相関レベルは、図3(C)に示したE1レプリカコードの相関レベルとE2レプリカコード(E1レプリカコードに対して2[chip]位相遅延のレプリカコード)の相関レベルの符号反転値との合成値(E1−E2)から、図3(C)に示したL1レプリカコードの相関レベルとL2レプリカコード(L1レプリカコードに対して2[chip]位相遅延のレプリカコード)の相関レベルの符号反転値との合成値(L1−L2)を減算したもの等価になる。
【0095】
これにより、EL相関レベルは、図4(A)の特性カーブ90ELに示すように、コード位相差が−1.0[chip]近傍、0[chip]近傍、2.0[chip]近傍、および3.0[chip]近傍で変化し、他の区間では変化しない特性となる。
【0096】
VEL相関レベルは、次の式で表すことができる。なお、以下の式では、各相関レベルを、その直前の記号のみ出示している。
【0097】
VEL=VEL1−VEL2=(VE1−VL1)−(VE2−VL2)
=(VE1−VE2)−(VL1−VL2) ・・・(式2)
このように、VEL相関レベルは、図3(C)に示したVE1レプリカコードの相関レベルとVE2レプリカコード(VE1レプリカコードに対して2[chip]位相遅延のレプリカコード)の相関レベルの符号反転値との合成値(VE1−VE2)から、図3(C)に示したVL1レプリカコードの相関レベルとVL2レプリカコード(VL1レプリカコードに対して2[chip]位相遅延のレプリカコード)の相関レベルの符号反転値との合成値(VL1−VL2)を減算したもの等価になる。
【0098】
これにより、VEL相関レベルは、図4(A)の特性カーブ90VELに示すように、コード位相差が−1.0[chip]近傍、0[chip]近傍、2.0[chip]近傍、および3.0[chip]近傍で変化し、他の区間では変化しない特性となる。また、VEL相関レベルは、−1.0[chip]から3.0[chip]における一定レベルの区間では、その値がEL相関レベルの2倍となる。
【0099】
定倍部373は、増幅器等からなり、EL相関レベルを定倍する処理を行う。具体的に本実施形態では、定倍部373は、EL相関レベルを2倍する処理を行う。これにより、図4(B)の特性カーブ92ELに示す特性が得られる。すなわち、VEL相関レベルが一定レベルの区間では、当該レベルと同じレベルの特性が得られる。
【0100】
減算器374は、2倍したEL相関レベルからVEL相関レベルを減算することで、位相差検出結果Cdを出力する。すなわち、次式の演算を行う。
【0101】
Cd=2*EL−VEL ・・・(式3)
ここで、上述の図4(B)に示すように、VEL相関レベルは、−1.0[chip]から3.0[chip]における0(ゼロ)以外のレベルの区間では、その値が、2倍されたEL相関レベルと同じになる。したがって、位相差検出結果は、図4(C)に示すように、VEL相関レベルもしくはEL相関レベルが変化する区間のみで、0(ゼロ)ではない値となり、一定の区間では0(ゼロ)となる。
【0102】
より具体的には、図4(C)に示すように、コード位相差が−1.0[chip]を中心とする2d[chip]の範囲、0[chip]を中心とする2d[chip]の範囲、2.0[chip]を中心とする2d[chip]の範囲、および3.0[chip]を中心とする2d[chip]の区間以外では、位相差検出結果が常に0(ゼロ)になる。したがって、コード位相差が0[chip]および2.0[chip]の近傍を除く0.0[chip]から2.0[chip]までの広い区間で、位相差検出結果が常に0(ゼロ)になる。図5(A)は本実施形態の構成および処理を用いた擬似距離算出誤差のコード位相差特性であり、図5(B)は従来技術の構成および処理を用いた擬似距離算出誤差のコード位相差特性である。図5に示すように、特許文献1に示したような1.0[chip]付近等に相関ピークが現れてしまうマルチパスによる影響を受けない。これにより、このような短距離遅延のマルチパス特性と改善することができる。
【0103】
なお、位相差算出部37の減算器374から出力された位相差検出結果は、正規化演算部33に出力される。正規化演算部33は、位相差検出結果を正規化してコード位相差を算出し、ループフィルタ34へ与える。ループフィルタ34は、コード位相差をフィルタ処理することでコード位相データを生成して、NCO320および擬似距離算出部36へ与える。
【0104】
以上のように、本実施形態の構成および処理を用いることで、コード位相差が0[chip]および2.0[chip]の近傍を除く0.0[chip]から2.0[chip]までの広い区間で、マルチパスに対する不感区間を形成することができる。これにより、これらの区間で生じる短距離遅延マルチパスの影響を抑圧し、マルチパス特性を改善することができる。
【0105】
なお、本実施形態の構成および処理では、2.0[chip]や3.0[chip]の近傍区間でマルチパスの影響を受ける可能性があるが、これらは距離にして587m、879mに相当し、直接波との分離は容易に行うことができるので、問題にはならない。すなわち、本実施形態の構成および処理を用いることで、従来、直接波との分離が難しいもしくは不可能な短遅延マルチパスの影響を抑圧でき、高精度なコード相関を可能にできる。
【0106】
また、上述の説明では、具体的な数値を説明していないが、チップ間隔dは、0.1[chip]程度に設定するとよい。
【0107】
また、上述の説明では、E1,L1,E2,L2レプリカコードと、VE1,VL1,VE2,VL2レプリカコードとの間隔を2[chip]に設定した。しかしながら、当該間隔は、P,E1,L1,E2,L2レプリカコードの相関特性に応じて、所望のコード位相差位置近傍で線形のコード相関特性が得られるように、適宜設定すればよい。
【0108】
次に、本発明の実施形態2に係るGPS測位装置の構成について、図を参照して説明する。図6は、実施形態2に係るGPS測位装置の復調部13Aのコード追尾処理に関する構成を示すブロック図である。なお、本実施形態のGPS測位装置は、復調部13Aの構成、より具体的には、コード相関部32Aの構成および処理が、実施形態1の構成および処理と異なる。したがって、当該異なる箇所のみを説明し、他の箇所の説明は省略する。
【0109】
図6に示すように、コード相関部32Aの位相差算出部37Aの減算器3711Aには、E1相関レベルとE2相関レベルとが入力される。減算器3711Aは、E1相関レベルからE2相関レベルを減算することで、E12相関レベルを算出する。
【0110】
減算器3712Aには、L1相関レベルとL2相関レベルとが入力される。減算器3712Aは、L1相関レベルからL2相関レベルを減算することで、L12相関レベルを算出する。
【0111】
減算器3713Aには、VE1相関レベルとVE2相関レベルとが入力される。減算器3713Aは、VE1相関レベルからVE2相関レベルを減算することで、VE12相関レベルを算出する。
【0112】
減算器3714Aには、VL1相関レベルとVL2相関レベルとが入力される。減算器3714Aは、VL1相関レベルからVL2相関レベルを減算することで、VL12相関レベルを算出する。
【0113】
減算器3721Aは、E12相関レベルからL12相関レベルを減算することで、EL相関レベルを算出する。
【0114】
減算器3722Aは、VE12相関レベルからVL12相関レベルを減算することで、VEL相関レベルを算出する。
【0115】
このような構成であっても、上述の位相差検出結果Cdを算出することができる。
【0116】
なお、上述の各実施形態の他に、E1相関レベル、L1相関レベル、E2相関レベル、L2相関レベル、VE1相関レベル、VL1相関レベル、VE2相関レベル、およびVL2相関レベルから(式3)と同様の算出結果で位相差検出結果Cdが得られれば、他の構成および処理を用いることができる。
【0117】
また、上述の説明では、各機能部をブロック化して記載しているが、これの機能部は、それぞれに個別の素子や回路により実現してもよく、上述の処理をプログラム化して記憶しておき、CPU等の演算処理部で実行することにより実現してもよい。
【符号の説明】
【0118】
1−GPS測位装置、11−受信アンテナ、12−ダウンコンバータ、13,13A−復調部、14−航法メッセージ解析部、15−測位演算部、31,31A−コード追尾部、32,32A−コード相関部、33−正規化演算部、34−ループフィルタ、35−復調処理部、36−擬似距離算出部、37,37A−位相差算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSS信号の拡散コードと前記第1のレプリカコード対の各レプリカコードとの相関処理、前記拡散コードと前記第2のレプリカコード対の各レプリカコードとの相関処理、前記拡散コードと前記第3のレプリカコード対の各レプリカコードとの相関処理、および、前記拡散コードと前記第4のレプリカコード対の各レプリカコードとの相関処理を実行するコード相関処理工程と、
前記拡散コードと前記第1のレプリカコード対とによる第1相関結果と、前記拡散コードと前記第2のレプリカコード対とによる第2相関結果と、前記拡散コードと前記第3のレプリカコード対とによる第3相関結果と、前記拡散コードと前記第4のレプリカコード対とによる第4相関結果と、に基づいて、コード位相差検出結果を算出するコード位相差算出工程と、を有し、
前記第1のレプリカコード対は、第1チップ間隔を有する二つのレプリカコードからなり、
前記第2のレプリカコード対は、第1チップ間隔と異なる第2チップ間隔を有する二つのレプリカコードからなり、
前記第3のレプリカコード対は、前記第1のレプリカコード対を構成する二つのレプリカコードに対して、それぞれに所定コード位相差を有する二つのレプリカコードからなり、
前記第4のレプリカコード対は、前記第2のレプリカコード対を構成する二つのレプリカコードに対して、それぞれに所定コード位相差を有する二つのレプリカコードからなる、コード相関方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコード相関方法であって、
前記所定コード位相差は前記拡散コードの1.0chipであり、
前記第3のレプリカコード対と前記第4のレプリカコード対は、前記第1のレプリカコード対と前記第2のレプリカコード対に対して遅延している、コード相関方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコード相関方法であって、
前記第2チップ間隔は前記第1チップ間隔よりも広く、
前記第1レプリカコード対の二つのレプリカコードと前記GNSS信号の拡散コードとの相関ピークのタイミングは、前記第2レプリカコード対の二つのレプリカコードと前記GNSS信号の拡散コードとの相関ピークのタイミングの間になるように各レプリカコードが設定されており、
前記コード位相差算出工程は、
前記第1相関結果を前記第3相関結果で減算した値と、前記第2相関結果を前記第4相関結果で減算した値とに基づいて、前記コード位相差検出結果を算出する、コード相関方法。
【請求項4】
請求項3に記載のコード相関方法であって、
前記コード位相差算出工程では、
前記第1相関結果を前記第3相関結果で減算した値を所定倍し、
前記第2相関結果を前記第4相関結果で減算した値で、前記所定倍後の値をさらに減算することで、前記コード位相差検出結果を算出する、コード相関方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコード相関方法であって、
各レプリカコード対のレプリカコードは、前記拡散コードとのコード位相差がゼロになるように設定されたPromptレプリカコードを基準にして、所定コード位相だけ位相が進んだEarlyレプリカコードと、所定コード位相だけ位相が遅れたLateレプリカコードと、から構成される、コード相関方法。
【請求項6】
請求項5に記載のコード相関方法であって、
各相関結果は、前記拡散コードと前記Earlyレプリカコードとの相関値から、前記拡散コードと前記Lateレプリカコードとの相関値を減算することにより、算出される、コード相関方法。
【請求項7】
搬送波を含む入射信号を解読する方法であり、前記搬送波は、擬似ランダムノイズ(PRN)2進コードで暗号化されたものである入射信号を解読する方法において、
入射信号のPRNコードに対応するPRN信号を局部的に発生させ、
局部発生したPRN信号を入射信号と混合させ、
局部発生したPRN信号を入射信号と混合させた結果から、入射信号PRNコードおよび局部発生PRN信号間の相対位相差の関数として大きさをもつ誤差信号を展開することであり、ここで、前記局部発生したPRN信号は、(a)零の相対位相差に対して、およびプラスおよびマイナス1チップ間との広範囲の相対位相差に対して零であり、そして(b)相対位相差が、前記範囲の中心部分内で零から別の値に変化するにつれて増加するものである誤差信号を展開し、そして、
前記誤差信号が、前記範囲の前記中心部分内に零でない大きさをもつとき、局部発生したPRN信号の位相を、誤差信号を零に駆動するように調整することで前記相対位相差を調整することであり、それにより、入射信号のPRNコードと局部発生したPRN信号との間の相対位相差を零に駆動する前記相対位相差を調整することを含み、
前記PRN信号は、第1のPRN信号対、第2のPRN信号対、第3のPRN信号対、および第4のPRN信号対を有し、
前記第1のPRN信号対は、第1チップ間隔を有する二つのPRN信号からなり、
前記第2のPRN信号対は、第1チップ間隔と異なる第2チップ間隔を有する二つのPRN信号からなり、
前記第3のPRN信号対は、前記第1のPRN信号対を構成する二つのPRN信号に対して、それぞれに所定コード位相差を有する二つのPRN信号からなり、
前記第4のPRN信号対は、前記第2のPRN信号対を構成する二つのPRN信号に対して、それぞれに所定コード位相差を有する二つのPRN信号からなる、入射信号を解読する方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のコード相関方法の各工程を含むとともに、
前記拡散信号に重畳された航法メッセージを解析する航法メッセージ解析工程と、
前記コード位相差に基づいてコード擬似距離を算出する擬似距離算出工程と、
前記航法メッセージと前記コード擬似距離に基づいて測位を行う測位演算工程と、を有する測位方法。
【請求項9】
所定の記憶媒体に記憶され、実行されることで、GNSS信号の拡散コードとレプリカコードとのコード位相差を算出するためのコード相関プログラムであって、
GNSS信号の拡散コードと前記第1のレプリカコード対の各レプリカコードと相関処理、前記拡散コードと前記第2のレプリカコード対の各レプリカコードと相関処理、前記拡散コードと前記第3のレプリカコード対の各レプリカコードと相関処理、および、前記拡散コードと前記第4のレプリカコード対の各レプリカコードと相関処理を実行するコード相関処理処理と、
前記拡散コードと前記第1のレプリカコード対とによる第1相関結果と、前記拡散コードと前記第2のレプリカコード対とによる第2相関結果と、前記拡散コードと前記第3のレプリカコード対とによる第3相関結果と、前記拡散コードと前記第4のレプリカコード対とによる第4相関結果と、に基づいて、コード位相差検出結果を算出するコード位相差算出処理と、を含み、
前記第1のレプリカコード対は、第1チップ間隔を有する二つのレプリカコードからなり、
前記第2のレプリカコード対は、第1チップ間隔と異なる第2チップ間隔を有する二つのレプリカコードからなり、
前記第3のレプリカコード対は、前記第1のレプリカコード対を構成する二つのレプリカコードに対して、それぞれに所定コード位相差を有する二つのレプリカコードからなり、
前記第4のレプリカコード対は、前記第2のレプリカコード対を構成する二つのレプリカコードに対して、それぞれに所定コード位相差を有する二つのレプリカコードからなる、コード相関プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコード相関プログラムの各処理を含むとともに、
前記拡散コードに重畳された航法メッセージを解析する処理と、
前記コード位相差に基づいてコード擬似距離を算出する処理と、
前記航法メッセージと前記コード擬似距離に基づいて測位を行う処理と、を含む測位プログラム。
【請求項11】
GNSS信号の拡散コードと前記第1のレプリカコード対の各レプリカコードと相関処理、前記拡散コードと前記第2のレプリカコード対の各レプリカコードと相関処理、前記拡散コードと前記第3のレプリカコード対の各レプリカコードと相関処理、および、前記拡散コードと前記第4のレプリカコード対の各レプリカコードと相関処理を実行するコード相関処理部と、
前記拡散コードと前記第1のレプリカコード対とによる第1相関結果と、前記拡散コードと前記第2のレプリカコード対とによる第2相関結果と、前記拡散コードと前記第3のレプリカコード対とによる第3相関結果と、前記拡散コードと前記第4のレプリカコード対とによる第4相関結果と、に基づいて、コード位相差検出結果を算出するコード位相差算出部と、を備えるとともに、
第1チップ間隔を有する二つのレプリカコードからなる前記第1のレプリカコード対と、、第1チップ間隔と異なる第2チップ間隔を有する二つのレプリカコードからなる前記第2のレプリカコード対と、前記第1のレプリカコード対を構成する二つのレプリカコードに対して、それぞれに所定コード位相差を有する二つのレプリカコードからなる前記第3のレプリカコード対と、前記第2のレプリカコード対を構成する二つのレプリカコードに対して、それぞれに所定コード位相差を有する二つのレプリカコードからなる前記第4のレプリカコード対と、を生成するレプリカコード生成部を備える、コード相関装置。
【請求項12】
請求項11に記載のコード相関装置を備えるとともに、
前記拡散コードに重畳された航法メッセージを解析する航法メッセージ解析部と、
前記コード位相差に基づいてコード擬似距離を算出する擬似距離算出部と、
前記航法メッセージと前記コード擬似距離に基づいて測位を行う測位演算部と、を備えた測位装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−247766(P2011−247766A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121701(P2010−121701)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】