説明

コーヒーカラメルと、コーヒーカラメル入り食品、及びコーヒーカラメルの製造方法

【課題】コーヒー飲料等で用いられる糖類を原料とするカラメルは、本来のコーヒーの風味とは異質な苦味や、甘味があり、またコーヒー本来の自然な香気に乏しく、また自ら風味は決まったものしか製造できないので、製品に応じたコーヒーの風味付けを工夫することもできない等の欠点がある。
【解決手段】コーヒー抽出成分と、糖類と、水とを少なくとも含む混合液を調整し、この混合液を、カラメル化反応、及びアミノカルボニル反応が進行し、褐色で良好なコーヒー色がつくまで加熱する。これにより、コーヒー抽出成分と、糖類とからなり、コーヒー抽出成分と糖類とを同時加熱することで生じる香気成分をさらに含み、この香気成分として含まれるフラン化合物中のフルフラール以外のフラン化合物含有率が、糖類のみを加熱したカラメルにコーヒー抽出成分を添加したものに比べて高いコーヒーカラメルとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーの抽出成分をカラメル化した食品素材、詳しくはコーヒー独特の苦味・甘味・香り等の風味及び色、さらにはコーヒーが本来持つ機能性を調整若しくは増強するためのコーヒーカラメルと、コーヒーカラメル入り食品、及びコーヒーカラメルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒー飲料は、製品内容量100g中にコーヒー生豆使用量2.5g以上5g未満のものをいい、1g以上2.5g未満のものをコーヒー入り清涼飲料とされ(「コーヒー飲料などの表示に関する公正競争規約」による)、その他少量のコーヒーを用いてコーヒー風味を特徴とする食品・飲料が広く製造販売されている。
これらのコーヒー飲料等では、それぞれの製品に応じてコーヒー風味を引き立たすために、製品に応じたコーヒー風味付けや色付けが必要となる。
【0003】
コーヒーは、粉砕したコーヒー焙煎豆を熱湯や水で抽出することによって得る場合には、抽出方法や、コーヒー豆の焙煎度等によって、コーヒーの苦味・甘味・香りの量等を調整している。
しかしながら、このような方法ではコーヒーの風味等を調整することに自ずから上限や限界がある。
また、コーヒーの風味付けのためには高濃度のコーヒーを必要とするが、そのためにはそれなりの量のコーヒー豆を必要とするために、高価となりすぎる。
【0004】
そのため、コーヒー飲料やその他コーヒー風味の食品・飲料では、通常、糖類を原料としたカラメルを添加して、苦味やコクまたは色づけを増強する調整が行われている。
【0005】
また、コーヒー生豆に糖類の溶液を噴霧し、または浸透させた後、これを乾燥したものを焙煎するか、或いは、糖類の微粉末をコーヒー生豆に噴霧したものを焙煎することによりコーヒー豆を得、これを粉砕して抽出することにより、様々な焙煎香やカラメル香などの香りのよい、香ばしいコクのあるコーヒー飲料を製造することが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−50800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、糖類を原料とするカラメルは、本来のコーヒーの風味とは異質な苦味や、甘味があり、またコーヒー本来の自然な香気に乏しく、自ずから風味は決まったものしか製造できないので、製品に応じたコーヒーの風味付けを工夫することもできない等の欠点がある。
【0008】
また、上記特許文献1に係る発明は、香ばしいコクのあるコーヒー飲料そのものを製造することを目的とするものではあるが、ここで採用をするコーヒー生豆に熱をあてる焙煎法では、既述の通り、コーヒーの苦味・甘味・香りの量等を調整することに上限や限界がある。しかも、当該特許文献1に係る発明で得られる焙煎コーヒー豆をコーヒー飲料等の調味調整用に使用しても、それぞれの製品にあったコーヒー風味をその都度引き出すことは限界がある。
【0009】
さらに、嗜好品であるコーヒーは、特に新たな風味、香りが望まれるものであるが、常にこれに対応できるコーヒー風味を作り出して、コーヒー飲料等のコーヒー風味や香り、コーヒー独特のコクの増強ができ、またその他の飲料や食品の味付けに用いることができるコーヒー風味の添加物によって、新たなコーヒーの需要を喚起することも必要である。
【0010】
また、コーヒー生豆には、モノカフェイルキナ酸、フェルリルキナ酸、及びジカフェイルキナ酸など、少なくとも13種のクロロゲン酸類を有することが知られている。さらに、モノカフェイルキナ酸としては、3−カフェイルキナ酸(3−CQA)、4−カフェイルキナ酸(4−CQA)、及び5−カフェイルキナ酸(5−CQA)の異性体がある。本明細書において「クロロゲン酸類」は、上記の化合物の総称として用いるものとする。
また、クロロゲン酸類は、ケイ皮酸誘導体とキナ酸とからなるエステルの総称であり、ポリフェノールの一種である。クロロゲン酸類は、抗酸化性、活性酸素消去能、発ガン抑制、抗変異原性、血圧降下作用などの生理活性機能を有することが報告されている。
【0011】
コーヒー生豆中には、クロロゲン酸類は5〜8質量%含有されている。ところが、クロロゲン酸類は、コーヒー生豆の焙煎工程において、熱分解や加水分解により消失する。そこで、これを消失させることなく添加することができれば、コーヒー飲料やその他の飲料、及び食品等においても、コーヒーが本来持つ生理活性機能を発揮させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明では、コーヒー生豆、または、一般的な飲用コーヒーに用いられる焙煎度合より浅く焙煎をしたコーヒー豆の抽出成分と糖とを同時加熱することで得られるコーヒーカラメルとその製造方法によって、コーヒー本来の風味と香り、色を保ちながら、コーヒーと糖との相互の反応により新しい香りと味と色をも作り出し、さらに多くのクロロゲン酸類が含有されている機能性に富んだ新規なコーヒー風味の調整物質を提供して上記課題を解決するものである。
【0013】
本発明の請求項1に係るコーヒーカラメルは、コーヒー抽出成分と、糖類とからなり、前記コーヒー抽出成分と前記糖類とを同時加熱することで生じる香気成分をさらに含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項2に係るコーヒーカラメルは、請求項1の記載のコーヒーカラメルにおいて、前記香気成分は、コーヒー抽出成分と糖類とを同時加熱することで進行するアミノカルボニル反応によって生成される、フルフラール以外のフラン化合物であることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項3に係るコーヒーカラメルは、コーヒー抽出成分と、糖類と、フラン化合物を有する香気成分とを含み、前記香気成分として含まれるフラン化合物中のフルフラール以外のフラン化合物含有率が、前記糖類のみを加熱したものに前記コーヒー抽出成分を添加したものに比べて高いことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項4に係るコーヒーカラメルは、請求項3の記載のコーヒーカラメルにおいて、前記香気成分は、フラン化合物含有率が10%以上であり、かつ、前記フラン化合物中のフルフラール以外のフラン化合物含有率が40%以上であることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項5に係るコーヒーカラメルは、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコーヒーカラメルにおいて、総クロロゲン酸含有量が、0.07質量%以上であることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項6に係るコーヒーカラメルは、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコーヒーカラメルにおいて、コーヒーオイルをさらに含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項7に係るコーヒーカラメルは、請求項1乃至6のいずれか1項に記載のコーヒーカラメルであって、これを乾燥させて粉末にしたことを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項8に係るコーヒーカラメル入り食品は、前記請求項1乃至7のいずれか1項に記載のコーヒーカラメルを用いてなることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項9に係るコーヒーカラメルの製造方法は、コーヒー抽出成分と、糖類と、水とを少なくとも含む混合液を調整し、該混合液を、カラメル化反応、及びアミノカルボニル反応が進行し、褐色で良好なコーヒー色がつくまで加熱することを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項10に係るコーヒーカラメルの製造方法は、請求項9に記載のコーヒーカラメルの製造方法において、前記コーヒー抽出成分は、コーヒー生豆または焙煎度合を示すL値が45〜30である焙煎コーヒー豆から抽出したものであることを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項11に係るコーヒーカラメルの製造方法は、請求項9又は10に記載のコーヒーカラメルの製造方法において、前記混合液は、前記コーヒー抽出成分と前記糖類の固形物重量比が1:1〜1:99の割合で、水分が5〜74%(固形物重量比が1:1の時74%、1:99の時5%)であることを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項12に係るコーヒーカラメルの製造方法は、請求項9乃至11のいずれか1項に記載のコーヒーカラメルの製造方法において、前記混合液は、コーヒーオイルをさらに添加して調整したことを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項13に係るコーヒーカラメルの製造方法は、請求項12に記載のコーヒーカラメルの製造方法において、前記コーヒーオイルは、添加量が0.02〜3質量%であることを特徴とする。
【0026】
本発明の請求項14に係るコーヒーカラメルの製造方法は、請求項9乃至13のいずれか1項に記載のコーヒーカラメルの製造方法において、クロロゲン酸類をさらに添加して調整したことを特徴とする。
【0027】
本発明の請求項15に係るコーヒーカラメルの製造方法は、請求項9乃至14のいずれか1項に記載のコーヒーカラメルの製造方法において、前記コーヒー抽出成分は、焙煎度合を示すL値が30未満であるコーヒー豆から得たコーヒー抽出成分を一部使用し調整したことを特徴とする。
【0028】
本発明の請求項16に係るコーヒーカラメルの製造方法は、請求項9乃至15のいずれか1項に記載のコーヒーカラメルの製造方法において、前記混合液の加熱は、130〜180℃の温度で、少なくとも10分以上行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明のコーヒーカラメルは、コーヒー抽出成分と、糖類とからなり、前記コーヒー抽出成分と前記糖類とを同時加熱することで生じる香気成分をさらに含む。すなわち、コーヒー抽出成分と、糖類と、フラン化合物を有する香気成分とを含み、前記香気成分として含まれるフラン化合物中のフルフラール以外のフラン化合物含有率が、前記糖類のみを加熱したものに前記コーヒー抽出成分を添加したものに比べて高い。ゆえに、良好なコーヒーとカラメルの風味、すなわちコーヒーの苦味と甘いカラメルの香りがあり、かつ自然な褐色色素を有したものとすることができる。
したがって、コーヒー本来の風味と香り、色を保ちながら、コーヒーと糖との相互の反応により新たな味(風味)と香り、色をも作り出す新規なコーヒー風味の調整物質としてのコーヒーカラメル(合成コーヒー)を提供することができる。
【0030】
また、本発明によれば、ポリフェノールの一種である、クロロゲン酸類が、焙煎工程中に熱分解や加水分解されることが少ない。
したがって、クロロゲン酸類が持つと言われる抗酸化性、活性酸素消去能、発ガン抑制、抗変異原性、血圧降下作用などのコーヒー本来が持つ生理活性機能を有する食品添加物として使用することができる。
【0031】
また、本発明のコーヒーカラメルの製造方法は、コーヒー抽出成分と、糖類と、水とを少なくとも含む混合液を調整し、この混合液を、カラメル化反応、及びアミノカルボニル反応が進行し、褐色で良好なコーヒー色がつくまで加熱する。ゆえに、前記コーヒー抽出成分と前記糖類とが同時加熱され、アミノカルボニル反応が複雑に進行してコーヒー特有の香気成分であるフラン化合物、中でもフルフラール以外のフラン化合物を多く含むものとすることができる。
したがって、コーヒー本来の自然な香気に富んだコーヒーカラメルを容易に製造することができる。
【0032】
また、本発明によれば、原料固形物の主体を糖類とする、たとえば糖類の割合を99%〜50%とすることが出来る。具体的には、コーヒーと糖類の固形物比が1:99の時に糖類の割合は99%、同固形物比が1:1の時に同割合は50%にでき、良好なコーヒー風味を安価に得ることが出来る。
【0033】
さらに、このコーヒーカラメルをコーヒー飲料やその他の食品に添加しても違和感なくコーヒーの風味とコクを増強できる。また、糖類を原料とするカラメルと同様に、プリンなど菓子やデザートに風味増強・着色に良好に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るコーヒーカラメルと、糖類のみを原料とするカラメルと、コーヒー抽出成分と、糖類のみを原料とするカラメルにコーヒー抽出成分を後から添加したもの、にそれぞれ含まれる香気成分含有率を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
一般にコーヒー豆の焙煎度合はL値で表示されるが、飲用コーヒーに用いられるコーヒー豆のL値は、浅煎りが30未満〜25以上、中煎りが25未満〜18.5以上、深煎りがL値18.5未満とされる。本発明のコーヒーカラメルにおいては、コーヒー生豆または前記浅煎りコーヒー豆より浅く焙煎したL値45〜30の焙煎豆(以下、「超浅煎りコーヒー豆」という)を使用する。
【0036】
(コーヒー生豆または超浅煎り豆を使用することの有意性)
本発明において超浅煎りコーヒー豆を使用するのは、第一は、コーヒー生豆または超浅煎りコーヒー豆から抽出されたコーヒー抽出成分に糖類を添加して同時加熱することによって、相互の反応により新しい香りと味と色をつくりだすことができるからである。すなわち、本発明のコーヒーカラメルは、コーヒー抽出成分と糖類とを同時加熱することで生じる香気成分、具体的には、アミノカルボニル反応によって生成される、フルフラール以外のフラン化合物をさらに含むものである。本発明のコーヒーカラメルにおいて、この香気成分(フルフラール以外のフラン化合物)の含有率は、糖類のみを加熱したものにコーヒー抽出成分を添加したものに比べて高い。
【0037】
第二に、コーヒー生豆または超浅煎りコーヒー豆と、糖類とを同時加熱して得られた加熱物には、深煎り豆を原料として得られた加熱物に比べて多くのクロロゲン酸類が含有されていることが挙げられる。
焙煎度合(L値)と総クロロゲン酸含有量(3−CQA、4−CQA、5−CQAの総含有量)との関係は、コーヒー生豆中に含まれる総クロロゲン酸含有量を100%とすると、L値40では約15%、L値30では約50%、L値20では約80%消失するという報告例があり、浅煎り豆であるほどクロロゲン酸類の含有量は多い。
【0038】
本発明におけるコーヒーカラメルでは、総クロロゲン酸含有量が0.07質量%以上であることが望ましい。また、本発明におけるコーヒーカラメルは、総クロロゲン酸含有量が0.07質量%未満である場合、クロロゲン酸類をさらに添加して調整することも可能である。
【0039】
第三に、コーヒー生豆は固く粉砕が困難なこともあるが、少なくとも超浅煎り豆は、浅く煎ることにより製造し易く、コストを抑えることができる等の優位性がある。
【0040】
(コーヒー抽出成分の抽出方法)
コーヒー成分の抽出方法としては、コーヒー豆を粉砕した後、熱湯や水を用いて抽出する水抽出法、エタノール水溶液やヘキサン溶液を加えて攪拌・浸漬により抽出する溶媒抽出法等がある。
したがって、コーヒー生豆からコーヒー抽出成分を得る場合、たとえば、以下の1又は2のように行うことができる。
1.コーヒー生豆を粉砕して、これに熱湯を加えて攪拌してコーヒー成分を抽出する水抽出法によってコーヒー豆成分を抽出する。得られた抽出液を吸引濾過し、この濾過液をエバポレーター(回転式減圧蒸留装置)により濃縮し、さらに凍結乾燥することによって、白色粉末状のコーヒー抽出成分を得る(以下、「第1のコーヒー抽出成分」という)。
2.コーヒー生豆を微粉砕し、その粉砕物にエタノール水溶液を加えて攪拌して親水性成分と疎水性成分(コーヒーの脂質)とを抽出する溶媒抽出法でコーヒー豆成分を抽出する。その後は上記1.と同様の方法で濾過・濃縮及び乾燥し、白色粉末状のコーヒー抽出成分を得る(以下、「第2のコーヒー抽出成分」という)。
【0041】
また、超浅煎りコーヒー豆からコーヒー抽出成分を得る場合、たとえば、以下の1又は2のように行うことができる。
1.前述のように焙煎した超浅煎りコーヒー豆を中挽きに粉砕し、その粉砕物に熱湯を加えてシャワー式連続抽出法によって、Bx15の抽出液が得られるまで水抽出法により抽出を行い、この抽出液をコーヒー抽出成分として得る(以下、「第3のコーヒー抽出成分」という)。
2.前述のように焙煎した超浅煎りコーヒー豆を中挽きに粉砕し、その粉砕物にエタノール水溶液を加え、攪拌して親水性成分と疎水性成分(コーヒーの脂質)とを抽出する溶媒抽出法でコーヒー豆成分を抽出する。得られた抽出液を吸引濾過し、その濾過液をエバポレーターにより濃縮し、さらに凍結乾燥することによって、褐色粉末状のコーヒー抽出成分を得る(以下、「第4のコーヒー抽出成分」という)。
【0042】
したがって、本発明におけるコーヒー抽出成分は、上述した抽出方法によって、第1乃至第4の各コーヒー抽出成分に分けることができる。
【0043】
(糖類)
糖類は一般に単糖類又は二糖類を意味する。本発明では、食品で通常に使うショ糖・果糖・ブドウ糖などを用いる。その他、乳糖などの糖類も使用できる。
【0044】
(コーヒー抽出成分と糖類との同時加熱)
本発明では、コーヒー生豆または超浅煎りコーヒー豆から上記方法で得たコーヒー抽出成分(すなわち、上記第1乃至第4のコーヒー抽出成分のいずれか)と、糖類とを同時加熱することによって、良好なコーヒーとカラメルの風味を呈し、かつ褐色色素である、新規なコーヒーカラメル(合成コーヒー)を得ることを特徴とするものである。
【0045】
本発明の風味における「香り」は、香気成分において特定することができる。また、この香気成分は、たとえばGC/MS(ガスクロマトグラフ−質量分析計)を用いたヘッドスペース法で特定できる。具体的には、22ml容量のバイアル瓶に試料1gを充填後、60℃で60分間加温し、そのヘッドスペースの香気成分をGC/MSにて分析する。また、香気成分の分析は、たとえばGC/MSで検出されたピークのうち、最初の70ピークを解析し、11種類のグループに分類する。そして、検出されたピーク面積より、グループ別の含有率を算出する。すなわち、グループ別の含有率は、以下の式で算出することができる。
グループ別の含有率=各グループのピーク面積合計/全香気成分のピーク面積合計
【0046】
ここで、本発明のコーヒーカラメル水溶液と、糖類のみを原料とするカラメル水溶液(以下、「カラメル水溶液」という。)と、超浅煎りコーヒー豆の熱水抽出物(以下、「コーヒー抽出成分」という。)と、糖類のみを原料とするカラメル水溶液に超浅煎りコーヒー豆の熱水抽出物を後から添加したもの(以下、「カラメル水溶液+コーヒー抽出成分」という。)における香気成分を上記方法によってそれぞれ特定し、その香気成分含有率を図1に併記した。
【0047】
なお、本発明のコーヒーカラメル水溶液は、L値30の焙煎豆を中挽きに粉砕し、その粉砕物に熱湯を加えて抽出した超浅煎りコーヒー豆抽出物(Bx15)100gにショ糖90gを添加し、その固形成分比が1:6となる混合物を調製し、この混合物を平鍋に入れ、140℃で10分間加熱処理して超浅煎りコーヒーカラメルを得、これに製品水分想定30%の水を添加し冷却して得た。また、カラメル水溶液は、ショ糖90gに水100gを添加し、混合物を調製し、この混合物を平鍋に入れ、160℃で30分間加熱処理してカラメル化を行い、製品水分想定30%の水を添加し冷却して得た。また、コーヒー抽出成分は、L値30の焙煎豆を中挽きに粉砕し、その粉砕物に熱湯を加えて抽出して得た。さらに、カラメル水溶液+コーヒー抽出成分は、上記カラメル水溶液に上記コーヒー抽出成分を、固形成分比が1:6となるように添加して得た。
【0048】
図1に示すように、コーヒー抽出成分の香気成分は、その多くはアルデヒド化合物、ケトン化合物、アルコール化合物が占めており、グリーンな香り、または、フレッシュな香りがするだけである。また、カラメル水溶液では、カラメル化反応により、フラン化合物の一種のフルフラールが大量に生成され(香気成分の約50%以上を占める)、単調な香ばしい香りへとつながっている。
このように、超浅煎りコーヒー豆の熱水抽出物や、糖類のみを原料とするカラメルそれぞれ単独では、甘い香ばしさやコーヒー本来の風味(良好なコーヒー風味)と香りを作り出すことはできない。
【0049】
ところが本発明のコーヒーカラメル水溶液ように、超浅煎りコーヒー豆の熱水抽出物と糖類を同時に加熱すると、熱水抽出物中のアミノ酸や蛋白質と糖類とのアミノカルボニル反応が複雑に進行する。よって、コーヒー特有の香気成分であるフラン化合物が多く生成され、その含有率は全体の10%以上を占めている。さらに、フラン化合物以外にも、ケトン化合物や含窒素化合物など、コーヒー特有の香気成分も生成される。また、糖類のみのカラメル化反応から生成される化合物は、フラン化合物のフルフラールがほぼ占めており、フルフラール以外のフラン化合物の生産量は少ないのに対し、アミノカルボニル反応により生成されるフラン化合物は、フルフラール以外にDihydro−2−methyl−3(2H)−furanoneを代表とするフランケトン化合物、Furanmethanolを代表とするフランアルコール化合物などが多く含まれ、フラン化合物中のフルフラール以外の含有率は40%以上となる。
【0050】
また、アミノカルボニル反応により生成されるケトン化合物の中で、代表的な香気成分である2,3−Butadioneは、甘く焦げたような香りであり、コーヒー抽出成分と糖類を同時に加熱することで進行するアミノカルボニル反応により、多量に生成される成分である。
【0051】
また、焙煎コーヒー豆に特徴的な成分である含窒素化合物(ピラジン化合物、ピロール化合物、ピリジン化合物など)も、焙煎豆中のアミノ酸や蛋白質と糖のアミノカルボニル反応により生成される。この含窒素化合物は、糖類のみのカラメル化反応では得られず、コーヒー抽出成分と糖類を同時に加熱することで得られる成分である。
【0052】
このように、フルフラール以外のフランケトン化合物、及びフランアルコール化合物、2,3−Butadioneを代表とするケトン化合物、含窒素化合物は、コーヒー抽出成分や、カラメル水溶液、それぞれ単独からは多く得られるものではない。甘い香ばしさやコーヒー本来の風味(良好なコーヒー風味)と香りを作り出すためには、コーヒーと糖類とを同時に加熱して、相互の反応を誘起させることが必要である。
【0053】
したがって、例えば、本発明でショ糖を使用した場合、ショ糖は甘味としてではなく、コーヒー成分と混合加熱され、良好なコーヒーとカラメルの風味、焙煎香や甘い香り・苦味やコク・褐色色素として効果に寄与する。
【0054】
なお、コーヒー生豆には、コーヒー特有の香気成分がないので、香気成分については、超浅煎りコーヒー豆からのコーヒー抽出成分を用いた場合よりも若干効果は劣ると言わなければならない。
【0055】
(コーヒーオイル)
コーヒーオイルは、コーヒー焙煎豆に含有される成分のうち、油溶性成分や香りが含まれており、コーヒー本来の風味には欠かせない成分とされている。しかしながら、コーヒーオイルは、コーヒー生豆または超浅煎りコーヒー豆のコーヒー抽出成分からは得られ難いものである。したがって、本発明では必要に応じてコーヒーオイルを添加することも行う。
【0056】
(コーヒーオイルを添加する意義 − コーヒーオイルの効果)
コーヒーオイルとコーヒー抽出成分及び糖類を同時加熱して得られたコーヒーカラメルは、コーヒーオイルを添加しない場合に比べて(コーヒー抽出成分と糖類を同時加熱して得られたコーヒーカラメル(コーヒーオイル無添加)に比べて)、良好なコーヒー風味が一層強くなり、コクも増加する。このような効果は、コーヒー抽出成分と糖類を同時加熱して得られたコーヒーカラメルに、後からコーヒーオイルを添加しても得られず、コーヒーオイルをコーヒー抽出成分及び糖類と同時加熱することで得られる効果である。
【0057】
コーヒーオイルの製法には、圧搾法、溶媒抽出法、超臨界抽出法などがあるが、安全、且つ安価で、代表的な製法である圧搾法は、未粉砕のコーヒー焙煎豆から直接搾り出すことが可能であり、粉砕による香りの飛散がない製法である。
本発明で使用するコーヒーオイルは、たとえば、コールドプレス法で圧搾することで得ることができる。このコールドプレス法では、圧搾時にかかる熱が低温であるため、圧搾における香りの飛散、加熱による焦げ臭さを抑制することが可能である。なお、本発明では、この手法に限定されるものではなく、他の手法により製造したものであっても良い。
【0058】
(コーヒーカラメル)
本発明では、上記第1乃至第4のコーヒー抽出成分のいずれかと、糖類、及び必要に応じてクロロゲン酸類、コーヒーオイルを添加して、水を加えてこれを一定の温度、一定の時間加熱してカラメル化して、コーヒーカラメルを製造するものである。
【0059】
(粉末コーヒーカラメルの製造方法)
粉末コーヒーカラメルは、たとえば、凍結乾燥機を用いて製造することができる。また、凍結乾燥機を用いた凍結乾燥方法に限らず、エバポレーター(回転式減圧蒸留装置)を用いた濃縮方法でも可能である。その場合、濃縮方法では凍結乾燥方法に比べると、鮮度が劣り、熱劣化した風味の粉末コーヒーカラメルとなる虞がある。したがって、粉末コーヒーカラメルを製造する場合、凍結乾燥機を用いて製造するのが望ましい。
【0060】
粉末コーヒーカラメルは、水分を含まないために、品質劣化の抑制、及び粉末食品、例えば、製菓や製パンの品質を損ねることなく、コーヒー風味を有するデコレーション材料などへの利用範囲拡大などが期待できる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、コーヒー生豆からの水抽出法によるコーヒー抽出成分は、以下の方法及び条件の下で行って得た。
コーヒー生豆を大阪ケミカル社製のワンダーブレンダーで微粉砕し、その粉砕物200gに95℃の熱湯1000gを加え、80℃で30分間攪拌浸漬抽出法により、コーヒー生豆の成分を抽出した。得られた抽出液を吸引濾過し、その濾液をエバポレーター(回転式減圧蒸留装置)により濃縮し、さらに凍結乾燥することにより、約45gの白色粉末物を得た。このコーヒー生豆の熱水抽出物を、コーヒー生豆抽出物A(すなわち、第1のコーヒー抽出成分)とした。
【0062】
また、コーヒー生豆からの溶媒抽出法によるコーヒー抽出成分は、以下の方法及び条件の下で行って得た。
コーヒー生豆を大阪ケミカル社製のワンダーブレンダーで微粉砕し、その粉砕物200gに40%エタノール水溶液1000gを加え、60℃で30分間、攪拌浸漬抽出法によりコーヒー生豆中の成分を抽出した。得られた抽出液を吸引濾過し、その濾液をエバポレーターにより濃縮し、さらに凍結乾燥することにより、約50gの白色粉末物を得た。このコーヒー生豆の溶媒抽出物(親水性成分と疎水性成分)を、コーヒー生豆抽出物B(すなわち、第2のコーヒー抽出成分)とした。
【0063】
一方、超浅煎りコーヒー豆の成分の抽出については、次のように実施した。
水抽出法では、超浅煎りコーヒー豆をカリタ社製のハイカットミルで中挽きに粉砕した。その粉砕物200gに95℃の熱湯を加え、シャワー式連続抽出方法によって、Bx15の抽出液が得られるまで抽出を行い、160gの抽出液を得た。この超浅煎りコーヒー豆の熱水抽出物を、超浅煎りコーヒー豆抽出物A(すなわち、第3のコーヒー抽出成分)とした。
【0064】
また、溶媒抽出法では、超浅煎りコーヒー豆をカリタ社製のハイカットミルで中挽きに粉砕した。その粉砕物200gに40%エタノール水溶液1000gを加え、60℃で30分間、攪拌浸漬抽出法により超浅煎りコーヒー豆の成分を抽出した。得られた抽出液を吸引濾過し、その濾液をエバポレーターにより濃縮し、さらに凍結乾燥することにより、約40gの褐色粉末物を得た。この超浅煎りコーヒー豆の溶媒抽出物(親水性成分と疎水性成分)を、超浅煎りコーヒー豆抽出物B(すなわち、第4のコーヒー抽出成分)とした。
【0065】
また、コーヒーオイルの抽出については、以下の方法及び条件の下で行って得た。
コーヒー生豆を大阪ケミカル社製のワンダーブレンダーで微粉砕し、その粉砕物200gにヘキサン溶液1000gを加え、60℃で30分間、攪拌浸漬抽出法によりコーヒー生豆中の低極性成分を抽出した。得られた抽出液を吸引濾過し、その濾液をエバポレーターにより濃縮し、さらに凍結乾燥することにより、約8gの白色粉末物を得た。このコーヒー生豆の成分(疎水性成分:コーヒーオイル)を第1のコーヒーオイルとした。
【0066】
また、超浅煎りコーヒー豆20Kgから、Reinartz社製のエキスペラー搾油装置を使用したコールドプレス法により、シャフト回転数18rpmで超浅煎りコーヒー豆の成分(粗オイル)を搾油した。その搾油を濾過し、約1.4Kgの濾液を得た。この超浅煎りコーヒー豆の成分(疎水性成分:圧搾コーヒーオイル)を第2のコーヒーオイルとした。
【0067】
そして、コーヒー生豆または超浅煎りコーヒー豆の抽出成分と糖類とを、液状で同時に加熱する効果の有無を見極めるため、それぞれ下記のコーヒーカラメルを得て評価を行った。
なお、本発明における各実施例(ここでは、以下「実験例」という)では、コーヒー抽出成分として、上記コーヒー生豆抽出物Aもしくは上記超浅煎りコーヒー豆抽出物Aを使用して各実験を行った。
【0068】
[実験例1]
コーヒー生豆抽出物15%水溶液100gに、二糖類の代表的なショ糖を90g添加し、混合物を調製した。この混合物は、該コーヒー生豆抽出物1重量部に対し、糖類としてショ糖6重量部が添加されている。この混合物を平鍋に入れ、140℃で10分間加熱処理して生豆コーヒーカラメルを得、これに製品水分想定30%の水を添加し冷却して生豆コーヒーカラメル水溶液を得た。
【0069】
[実験例2]
コーヒー生豆抽出物15%水溶液100gに、単糖の代表的なグルコースを90g添加し、混合物を調製した。この混合物は、該コーヒー生豆抽出物1重量部に対し、糖類としてグルコース6重量部が添加されている。この混合物を平鍋に入れ、140℃で10分間加熱処理して生豆コーヒーカラメルを得、これに製品水分想定30%の水を添加し冷却して生豆コーヒーカラメル水溶液を得た。
【0070】
[実験例3]
L値30の焙煎豆を用いた超浅煎りコーヒー豆抽出物(Bx15)100gに、ショ糖90gを添加し、混合物を調製した。この混合物は、該超浅煎りコーヒー豆抽出物1重量部に対し、糖類としてショ糖6重量部が添加されている。この混合物を、上記と同様の方法にて処理を行い、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を得た。
【0071】
[実験例4]
L値30の焙煎豆を用いた超浅煎りコーヒー豆抽出物(Bx15)100gに、グルコース90gを添加し、混合物を調製した。この混合物は、該超浅煎りコーヒー豆抽出物1重量部に対し、糖類としてグルコース6重量部が添加されている。この混合物を、上記と同様の方法にて処理を行い、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を得た。
【0072】
[実験例5]
ショ糖90gに水100gを添加し、混合物を調製した。この混合物を平鍋に入れ、160℃で30分間加熱処理してカラメル化を行い、製品水分想定30%の水を添加し冷却してカラメル水溶液を得た。
【0073】
[実験例6]
グルコース90gに水100gを添加し、混合物を調製した。この混合物を平鍋に入れ、160℃で30分間加熱処理してカラメル化を行い、製品水分想定30%の水を添加し冷却してカラメル水溶液を得た。
【0074】
[実験例7]
コーヒー生豆抽出物15%水溶液100gに水90gを添加して混合物を調製した。この混合物を140℃で10分間加熱処理してコーヒー加熱物を得、その後、これに製品水分想定30%の水を添加し冷却してコーヒー加熱物水溶液を得た。
【0075】
[実験例8]
L値30の焙煎豆を用いた超浅煎りコーヒー豆抽出物100gに水90gを添加して混合物を得、この混合物を上記実験例7と同様の方法にて処理し、コーヒー加熱物水溶液を得た。
【0076】
それぞれ得られた本発明に係る生豆コーヒーカラメル水溶液(実験例1及び2)と、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液(実験例3及び4)、及び糖のみからなるカラメル水溶液(実験例5及び6)、コーヒーのみから得たコーヒー加熱物水溶液(実験例7及び8)について、甘味、苦味、コーヒー感に関する各風味項目と、カラメル化反応、及びアミノカルボニル反応の有無、固形物発生の有無の評価を行った。この評価は、男5名、女4名、計9名のパネラーにより、後述する方法によって行った。また、これらの項目に関する総合評価を行った。さらに、それぞれの総クロロゲン酸含有量(3−CQA、4−CQA、5−CQAの総含有量)について、高速液体クロマトグラフにより測定した。
【0077】
評価の方法は、風味項目については、甘味が、甘い香ばしさと甘さの程度について、同苦味が、自然な苦味の程度について、同コーヒー感が、良好なコーヒー風味の程度について、最も程度が強いものを5とし、最も程度が弱いものを1とした、5段階評価を行った。そして、パネラー9名の平均点数、各項目の合計点数を求め、表1に記した。
【0078】
また、カラメル化反応、及びアミノカルボニル反応の有無については、褐色で良好なコーヒー色がついたものを○印、つかなかったものを×印でそれぞれ示し、さらに、固形物発生の有無については、製造時において固形物の発生がなかったものを○印、発生したものを×印でそれぞれ示し、表1にそれぞれ併記した。
【0079】
また、総合評価については、風味の各項目の合計点数が12以上、且つ、褐色で良好なコーヒー色がつき、製造時に固形物の発生がなかったものを○印、風味の各項目の合計点数が10〜11、且つ、褐色で良好なコーヒー色がつき、製造時に固形物の発生がなかったものを△印、風味の各項目の合計点数が10未満のもの、または、褐色で良好なコーヒー色がつかなかったもの、または、製造時に固形物が発生してしまい、実用性がないものを×印でそれぞれ示し、表1に併記した。
【0080】
さらに、総クロロゲン酸含有量については、高速液体クロマトグラフを用いてUV=330nmで測定を行い、クロロゲン酸0.5水和物(5−CQA)を標準とした絶対検量線法にて算出し、3−CQA、4−CQAにおいては5−CQAのピーク面積より換算した。その結果を、重量%で表1に併記した。
【0081】
【表1】

【0082】
なお、表1中の「原料」欄では、水を除いた原料で表示しているものであり、それぞれの「原料」には記載原料以外に水が含まれている。
【0083】
上記表1に示す結果より、甘い香ばしさと甘さがあり、自然な苦味、良好なコーヒーの風味を呈しており、好ましいものは、コーヒー生豆抽出物、または超浅煎りコーヒー豆抽出物に糖類を添加し、それを液状で同時加熱して得られたコーヒーカラメル水溶液(実験例1〜4)であった。その中でもより好ましいものは、超浅煎りコーヒー豆抽出物とショ糖を原料とする超浅煎りコーヒーカラメル水溶液によるもの(実験例3)であった。この実験例3は、コーヒー生豆抽出物とショ糖を原料とする生豆コーヒーカラメル水溶液(実験例1)に比べて、コーヒー本来の自然な風味であることが確認された。
【0084】
また、コーヒー抽出成分とショ糖を原料とするコーヒーカラメル水溶液は、コーヒー抽出成分とグルコースを原料とするものに比べて(すなわち、実験例1は実験例2に比べて、また、実験例3は実験例4に比べて)、甘い香ばしさと甘さが強く、さらに、自然な苦味を強く呈することが確認された。
【0085】
それに対して、ショ糖やグルコースのみのカラメル水溶液(実験例5、6)では、甘さは強いが、甘い香ばしさや良好なコーヒーの風味が弱いことが確認された。また、コーヒー生豆抽出物や超浅煎りコーヒー豆抽出物のみの加熱物水溶液(実験例7、8)では、甘い香ばしさと甘さ、自然な苦味が弱いことが確認された。
【0086】
このことから、コーヒー抽出成分と糖類を一緒に加熱することで、相互作用の反応により新しい香りと味を発現できることが確認された。
【0087】
また、コーヒーカラメル、糖のみによるカラメル、及びコーヒーのみによる加熱物全てにおいて、褐色で良好なコーヒー色がついたことが確認されたが、超浅煎りコーヒー豆抽出物のみの加熱物水溶液(実験例8)においては、製造時に固形物の発生が確認された。
【0088】
さらに、総クロロゲン酸含有量については、ショ糖やグルコースの糖類のみを原料とするカラメル水溶液(実験例5、6)では、クロロゲン酸類の含有が認められなかったが、コーヒーを原料とする水溶液(実験例7、8)、または原料の一部をコーヒーとする水溶液(実験例1〜4)においては、クロロゲン酸類の含有が認められた。また、コーヒー生豆抽出物、及び超浅煎りコーヒー豆抽出物において、グルコースに比べてショ糖と同時加熱して得られたコーヒーカラメル水溶液の方が、クロロゲン酸類の含有量が多いことが確認された。
【0089】
[実験例9〜12]
次に、焙煎度合(L値)による影響を確認するため、焙煎度合がL値30のコーヒー豆を用いた超浅煎りコーヒー豆抽出物に、ショ糖を添加して得た超浅煎りコーヒーカラメル水溶液(実験例3)、及び同超浅煎りコーヒー豆抽出物に、グルコースを添加して得たコーヒーカラメル水溶液(実験例4)をそれぞれ基準とし、焙煎度合だけを変えたコーヒー豆を用いてそれぞれ製造したコーヒーカラメル水溶液について、上記評価内容と同様の項目について、同様の方法にて評価を行った。
【0090】
すなわち、上記実験例3とは、焙煎度合がL値45とした点で異なるコーヒー豆を用いた以外は同様の方法によって得た超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例9、同じく、焙煎度合がL値20とした点で異なるコーヒー豆を用いた以外は同様の方法によって得た中煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例11とした。
また、上記実験例4とは、焙煎度合がL値45とした点で異なるコーヒー豆を用いた以外は同様の方法によって得た超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例10、同じく、焙煎度合がL値20とした点で異なるコーヒー豆を用いた以外は同様の方法によって得た中煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例12とした。
【0091】
その結果を、それぞれ表2に示す。また、良好なコーヒー抽出成分を確認するために、上記実験例1〜4の結果も表2中に併記した。
【0092】
【表2】

【0093】
上記表2に示す結果より、コーヒー生豆、又はL値30もしくはL値30よりも浅く焙煎したL値45のコーヒー豆と、糖類(ショ糖又はグルコース)を原料とした場合、そのコーヒーカラメル水溶液(実験例1〜4,9,10)は、甘い香ばしさと甘さがあり、自然な苦味、良好なコーヒーの風味を呈した。それに対して、L値30よりも深く焙煎したL値20のコーヒー豆と糖類(ショ糖又はグルコース)を原料とした場合、そのコーヒーカラメル水溶液(実験例11及び12)では、甘い香ばしさが弱く、焦げたようなエキス様の加熱臭が確認された。L値20のコーヒー豆においては、すでに反応が進んでおり、糖類との同時加熱における相互作用の反応が弱いこと、また、L値30などの浅く焙煎したコーヒー豆に比べて過剰に熱が加わっていることが確認された。
【0094】
また、コーヒー生豆、又はL値30もしくはL値30よりも浅く焙煎したコーヒー豆と、ショ糖を原料とするコーヒーカラメル水溶液は、当該ショ糖に代えてグルコースを原料とするコーヒーカラメル水溶液に比べて(すなわち、実験例1は実験例2に比べて、実験例3は実験例4に比べて、また、実験例9は実験例10に比べて)、甘い香ばしさと甘さ、自然な苦味が強いことが確認された。
【0095】
[実験例13〜16]
次に、コーヒー抽出成分と糖類との適切な固形物重量比を確認するため、コーヒー生豆抽出物とショ糖を原料とする生豆コーヒーカラメル水溶液において好ましい結果が得られた上記実験例1を基準とし、ショ糖の添加率だけを変えてそれぞれ製造したコーヒーカラメル水溶液について、上記評価内容と同様の項目について、同様の方法にて評価を行った。
【0096】
すなわち、上記実験例1では、コーヒー生豆とショ糖の固形物重量比が1:6の割合としたが、同固形物重量比を1:1の割合とした以外は同様の方法によって得た生豆コーヒーカラメル水溶液を実験例13、同固形物重量比を1:99の割合とした以外は同様の方法によって得た生豆コーヒーカラメル水溶液を実験例14、同固形物重量比を1:199の割合とした以外は同様の方法によって得た生豆コーヒーカラメル水溶液を実験例15とした。
その結果を、それぞれ表3に示す。また、良好なコーヒー抽出成分と糖類との固形物重量比を確認するために、上記実験例1の結果を表3中に併記した。さらに、参考のために、ショ糖が含まれていない、すなわち同固形物重量比が1:0の割合である上記実験例7の結果も表3中に併記した。
【0097】
また、コーヒーオイルの添加効果を見極めるために、コーヒー生豆抽出物とショ糖との固形物重量比が1:6の割合の混合液に、コーヒーオイルを1%添加して得られた生豆コーヒーカラメル水溶液を実験例16とし、上記評価内容と同様の項目について、同様の方法にて評価を行った。その結果を表3に併記した。なお、コーヒーオイルとして、上記第2のコーヒーオイルを使用して実験を行った。
【0098】
[実験例17〜20]
また、他のコーヒー抽出成分と糖類との適切な固形物重量比を確認するため、超浅煎りコーヒー豆抽出物とショ糖を原料とする超浅煎りコーヒーカラメル水溶液において好ましい結果が得られた上記実験例3を基準とし、ショ糖の添加を比率だけを変えてそれぞれ製造したコーヒーカラメル水溶液について、上記評価内容と同様の項目について、同様の方法にて評価を行った。
【0099】
すなわち、上記実験例3では、超浅煎りコーヒー豆抽出物とショ糖の固形物重量比が1:6の割合としたが、同固形物重量比を1:1の割合とした以外は同様の方法によって得た超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例17、同固形物重量比を1:99の割合とした以外は同様の方法によって得た超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例18、同固形物重量比を1:199の割合とした以外は同様の方法によって得た超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例19とした。
その結果を、それぞれ表4に示す。なお、参考のために、ショ糖が含まれていない、すなわち同固形物重量比が1:0の割合である上記実験例8の結果も表4に併記した。
【0100】
また、コーヒーオイルの添加効果を見極めるために、超浅煎りコーヒー豆抽出物とショ糖との固形物重量比が1:6の割合の混合液に、コーヒーオイルを1%添加して得られた超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例20とし、上記評価内容と同様の項目について、同様の方法にて評価を行った。その結果を表4に併記した。なお、コーヒーオイルとして、上記第2のコーヒーオイルを使用して実験を行った。
【0101】
【表3】

【0102】
上記表3に示す結果より、生豆コーヒーカラメル水溶液において、好ましいものは、コーヒー生豆抽出物とショ糖との固形物重量比が1:1〜1:99の割合の混合液(水分が5〜74%から成る混合液)を原料として得られた生豆コーヒーカラメル水溶液(実験例1、13、14)であり、より好ましいものは、同固形物重量比が1:6の割合の混合液に、コーヒーオイルを1%添加して得られた生豆コーヒーカラメル水溶液(実験例16)であった。
一方、同固形物重量比が1:199の混合液(水分が0.4%から成る混合液)である原料から得られた生豆コーヒーカラメル水溶液(実験例15)は、甘さは強いが、甘い香ばしさが弱く、良好なコーヒーの風味を呈さないことが確認された。
【0103】
【表4】

【0104】
また、上記表4に示す結果より、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液において、好ましいものは、超浅煎りコーヒー豆抽出物とショ糖との固形物重量比が1:1〜1:99の割合の混合液(水分が5〜74%から成る混合液)を原料として得られた超浅煎りコーヒーカラメル水溶液(実験例3、17、18)であり、より好ましいものは、同固形物重量比が1:6の割合の混合液に、コーヒーオイルを1%添加して得られた超浅煎りコーヒーカラメル水溶液(実験例20)であった。
一方、同固形物重量比が1:199の混合液(水分が0.4%から成る混合液)である原料から得られた超浅煎りコーヒーカラメル水溶液(実験例19)は、甘さは強いが、甘い香ばしさが弱く、良好なコーヒーの風味を呈さないことが確認された。
【0105】
また、上記表3、表4の結果において記述したように、コーヒー生豆抽出物、及び超浅煎りコーヒー豆抽出物のみの加熱物水溶液(水分が92%から成る混合液を原料とした加熱物水溶液)(実験例7、8)では、甘い香ばしさと甘さ、自然な苦味が弱く、また、超浅煎りコーヒー豆抽出物のみの加熱物水溶液(実験例8)については、製造時に固形物が発生し、実用的でないことが確認された。
このことから、甘い香ばしさがあり、良好なコーヒーの風味と自然な苦味を呈するには、コーヒー生豆抽出物、又は超浅煎りコーヒー豆抽出物と、糖との同時加熱が必要であることが分かる。
【0106】
また、コーヒー生豆抽出物、または超浅煎りコーヒー豆抽出物と、ショ糖との固形物重量比が1:6の割合の混合液に、コーヒーオイルを1%添加して得られたコーヒーカラメル水溶液は、コーヒーオイルが無添加のものに比べて(実験例16は実験例1に比べて、実験例20は実験例3に比べて)、良好なコーヒーの風味、コクが増加し、コーヒーオイルの添加効果の優位性が確認された。
【0107】
さらに、生豆コーヒーカラメル水溶液と超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を比較すると、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液は、生豆コーヒーカラメル水溶液に比べて、コーヒー本来の自然で良好なコーヒー風味が強いことが確認された。
【0108】
[実験例21〜24]
次に、コーヒーオイルの適切な添加量を確認するため、コーヒー生豆抽出物とショ糖との固形物重量比が1:6の割合の混合液に、コーヒーオイルを1%添加することで好ましい結果が得られた上記実験例16を基準とし、コーヒーオイルの添加量だけを変えてそれぞれ製造した生豆コーヒーカラメル水溶液について、各評価を行った。
【0109】
すなわち、上記実験例16では、コーヒーオイルの添加量を1%としたが、同添加量を0.01%とした以外は同様の方法によって得た生豆コーヒーカラメル水溶液を実験例21、同添加量を0.02%とした以外は同様の方法によって得た生豆コーヒーカラメル水溶液を実験例22、同添加量を3%とした以外は同様の方法によって得た生豆コーヒーカラメル水溶液を実験例23、同添加量を5%とした以外は同様の方法によって得た生豆コーヒーカラメル水溶液を実験例24とした。
【0110】
また、評価項目は、コーヒーオイルの添加効果を見極めるために、コーヒーオイルを添加した場合に効果的に得られると予想される、良好で、且つ、自然なコーヒーの風味やコクの増加などの、風味への効果についての評価、また、多量に添加した場合に懸念される油浮きについての評価、また、これら項目に関する総合評価をそれぞれ、男5名、女4名、計9名のパネラーにより行った。評価方法は、コーヒーオイルを添加した場合の風味への効果は、良好で、且つ、自然なコーヒーの風味やコクが、コーヒーオイルを添加しない場合の前記実験例1に比べて、増加したものを○印、増加したが効果が弱いものを△印、増加しない、または、マイナスの評価として効果が現れたものを×印でそれぞれ表し、油浮きについては、油浮きが発生しなかったものを○印、発生したものを×印でそれぞれ表した。また、総合評価については、風味への効果が十分に現れ、且つ、油浮きが発生しなかったものを○印、風味への効果が弱く、且つ、油浮きが発生しなかったものを△印、風味への効果が現れないもの、または、油浮きが発生し、実用性がないものを×印でそれぞれ表した。その結果を、それぞれ表5に示す。
【0111】
[実験例25〜28]
また、上記実験例21〜24と同様に、コーヒーオイルの適切な添加量を確認するため、超浅煎りコーヒー豆抽出物とショ糖の固形物重量比が1:6の割合の混合液に、コーヒーオイルを1%添加することで好ましい結果が得られた上記実験例20を基準とし、コーヒーオイルの添加量だけを変えてそれぞれ製造した超浅煎りコーヒーカラメル水溶液について、上記評価内容と同様の項目について、同様の方法にてそれぞれ評価を行った。
【0112】
すなわち、上記実験例20では、コーヒーオイルの添加量を1%としたが、同添加量を0.01%とした以外は同様の方法によって得た超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例25、同添加量を0.02%とした以外は同様の方法によって得た超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例26、同添加量を3%とした以外は同様の方法によって得た超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例27、同添加量を5%とした以外は同様の方法によって得た超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例28とした。その結果を、それぞれ表6に示す。
【0113】
なお、評価方法は、コーヒーオイルを添加しない場合の前記実験例3に比べて、良好で、且つ、自然なコーヒーの風味やコクが増加したものを○印、増加したが効果が弱いものを△印、増加しない、または、マイナスの評価として効果が現れたものを×印で、風味への効果をそれぞれ表した以外は、上記実験例21〜24の場合と同様である。
【0114】
【表5】

【0115】
上記表5に示す結果より、コーヒーオイルを0.02%添加し得られた生豆コーヒーカラメル水溶液(実験例22)は、無添加の場合(実験例1)に比べて、良好で、且つ、自然なコーヒーの風味やコクが僅かに増加し、コーヒーオイルを添加した効果が確認された。また、コーヒーオイルを1%添加し得られた生豆コーヒーカラメル水溶液(実験例16)は、無添加の場合(実験例1)や0.02%添加した場合(実験例22)に比べて、良好で、且つ、自然なコーヒーの風味やコクが十分に増加し、また油浮きも生じず、より実用的であり、コーヒーオイルの添加効果の優位性が確認された。また、コーヒーオイルを3%添加し得られた生豆コーヒーカラメル水溶液(実験例23)は、0.02%の場合(実験例22)に比べて、風味への効果はより好ましく、良好で、且つ、自然なコーヒーの風味やコクが十分に増加したが、僅かに表面の油浮きが生じた。
【0116】
一方、添加量が0.01%(実験例21)では、無添加のもの(実験例1)とほぼ同等の風味であり、コーヒーオイルの添加効果の優位性は確認されなかった。また、添加量が5%(実験例24)では、コーヒー風味は増加したものの、焦げたような香りなど、コーヒーオイル特有の風味が強いため、良好なコーヒー風味ではなく、また、表面に油浮きが発生し、添加効果の優位性は確認されなかった。
【0117】
【表6】

【0118】
また、上記表6に示す結果より、コーヒーオイルを0.02%添加し得られた超浅煎りコーヒーカラメル水溶液(実験例26)は、無添加の場合(実験例3)に比べて、良好で、且つ、自然なコーヒーの風味やコクが僅かに増加し、コーヒーオイルを添加した効果が確認された。また、コーヒーオイルを1%添加し得られた超浅煎りコーヒーカラメル水溶液(実験例20)は、無添加の場合(実験例3)や0.02%添加した場合(実験例26)に比べて、良好で、且つ、自然なコーヒーの風味やコクが十分に増加し、また油浮きも生じず、より実用的であり、コーヒーオイルの添加効果の優位性が確認された。また、コーヒーオイルを3%添加し得られた超浅煎りコーヒーカラメル水溶液(実験例27)は、0.02%の場合(実験例26)に比べて、風味への効果はより好ましく、良好で、且つ、自然なコーヒーの風味やコクが十分に増加したが、僅かに表面の油浮きが生じた。
【0119】
一方、添加量が0.01%(実験例25)では、無添加のもの(実験例3)とほぼ同等の風味であり、コーヒーオイルの添加効果の優位性は確認されなかった。また、添加量が5%(実験例28)では、コーヒー風味は増加したものの、焦げたような香りなど、コーヒーオイル特有の風味が強いため、良好なコーヒー風味ではなく、また、表面に油浮きが発生し、添加効果の優位性は確認されなかった。
【0120】
したがって、上記表5、及び表6に示す結果より、コーヒーオイルの添加効果は、生豆コーヒーカラメル水溶液、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液において同様の結果であった。
【0121】
[実験例29〜37]
次に、コーヒー抽出成分と糖類との適切な加熱条件を確認するため、生豆コーヒーカラメル水溶液にて好ましい結果が得られた上記実験例1において、コーヒー生豆抽出物とショ糖との固形物重量比が1:6の割合の混合液を、その加熱条件をそれぞれ変えて得た各コーヒーカラメル水溶液について、甘味、苦味、コーヒー感に関する各風味項目と、カラメル化反応の有無、及び固形物発生の有無の評価を、上記実験例1と同様の方法にて評価を行った。
【0122】
すなわち、上記実験例1で使用したコーヒー生豆抽出物15%水溶液100gとショ糖90g(固形物重量比は1:6)の混合液を、120℃で15分間加熱処理し、生豆コーヒーカラメル水溶液を得た(実験例29)。また、同混合液の加熱条件を、130℃で5分間加熱処理に変えて、生豆コーヒーカラメル水溶液を得た(実験例30)。また、同混合液の加熱条件を、130℃で10分間加熱処理に変えて、生豆コーヒーカラメル水溶液を得た(実験例31)。また、同混合液の加熱条件を、130℃で15分間加熱処理に変えて、生豆コーヒーカラメル水溶液を得た(実験例32)。また、同混合液の加熱条件を、180℃で5分間加熱処理に変えて、生豆コーヒーカラメル水溶液を得た(実験例33)。また、同混合液の加熱条件を、180℃で10分間加熱処理に変えて、生豆コーヒーカラメル水溶液を得た(実験例34)。さらに、同混合液の加熱条件を、200℃で5分間加熱処理に変えて、生豆コーヒーカラメル水溶液を得た(実験例35)。
得られたこれらの生豆コーヒーカラメル水溶液の評価結果を、それぞれ表7に示す。
【0123】
また、ここでは全て平鍋を使用した、酸素存在下での製造であったが、酸素と触れ合わない環境下での製造を検討するために、上記実験例1で使用したコーヒー生豆抽出物とショ糖の混合液を、140℃で30分間、密閉釜において加熱処理し、生豆コーヒーカラメル水溶液を得た(実験例36)。また、同混合液の加熱条件を、180℃で10分間、密閉釜において加熱処理に変えて、生豆コーヒーカラメル水溶液を得た(実験例37)。
得られたこれらの生豆コーヒーカラメル水溶液の評価結果を、それぞれ表7に併記する。
【0124】
[実験例38〜46]
また、上記実験例3で使用した超浅煎りコーヒー豆抽出物100gとショ糖90g(固形物重量比は1:6)の混合液を、120℃で15分間加熱処理し、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を得た(実験例38)。また、同混合液の加熱条件を、130℃で5分間加熱処理に変えて、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を得た(実験例39)。また、同混合液の加熱条件を、130℃で10分間加熱処理に変えて、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を得た(実験例40)。また、同混合液の加熱条件を、130℃で15分間加熱処理に変えて、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を得た(実験例41)。また、同混合液の加熱条件を、180℃で5分間加熱処理に変えて、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を得た(実験例42)。また、同混合液の加熱条件を、180℃で10分間加熱処理に変えて、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を得た(実験例43)。さらに、同混合液の加熱条件を、200℃で5分間加熱処理に変えて、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を得た(実験例44)。
得られたこれらの超浅煎りコーヒーカラメル水溶液の評価結果を、それぞれ表8に示す。
【0125】
また、ここでは全て平鍋を使用した、酸素存在下での製造であったが、酸素と触れ合わない環境下での製造を検討するために、上記実験例3で使用した超浅煎りコーヒー豆抽出物とショ糖の混合液を、140℃で30分間、密閉釜において加熱処理し、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を得た(実験例45)。また、同混合液の加熱条件を、180℃で10分間、密閉釜において加熱処理に変えて、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を得た(実験例46)。
得られたこれらの超浅煎りコーヒーカラメル水溶液の評価結果を、それぞれ表8に併記する。
【0126】
【表7】

【0127】
上記表7に示す結果より、生豆コーヒーカラメル水溶液は、130〜180℃の温度で、少なくとも10分以上加熱処理することで、コーヒー抽出成分と糖類による相互作用の反応により、自然な苦味、良好なコーヒーの風味を作り出すことが確認された(実験例31,32,34)。また、180℃で10分間加熱処理した場合における甘味は、甘さは弱いが、甘い香ばしさは良好であった(実験例34)。
一方、120℃で15分間加熱処理した場合(実験例29)、または、130℃で5分間加熱処理した場合(実験例30)では、甘い香ばしさと甘さが強いが、自然な苦味と良好なコーヒー風味が弱く、また、褐色で良好なコーヒー色がつかないことから、カラメル化反応、及びアミノカルボニル反応が弱いことが確認された。また、180℃で5分間加熱処理した場合(実験例33)では、甘い香ばしさと甘さ、良好なコーヒー風味が弱いことが確認された。さらに、200℃で5分間加熱処理した場合(実験例35)では、焦げたような風味を呈し、固形物が発生したことから、反応が過剰に進んでしまったことが確認された。
【0128】
【表8】

【0129】
また、上記表8に示す結果より、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液は、130〜180℃の温度で、少なくとも10分以上加熱処理することで、コーヒー抽出成分と糖類による相互作用の反応により、自然な苦味、良好なコーヒーの風味を作り出すことが確認された(実験例40,41,43)。また、180℃で10分間加熱処理した場合における甘味は、甘さは弱いが、甘い香ばしさは良好であった(実験例43)。
一方、120℃で15分間加熱処理した場合(実験例38)、または、130℃で5分間加熱処理した場合(実験例39)では、甘い香ばしさと甘さが強いが、自然な苦味と良好なコーヒー風味が弱く、また、褐色で良好なコーヒー色がつかないことから、カラメル化反応、及びアミノカルボニル反応が弱いことが確認された。また、180℃で5分間加熱処理した場合(実験例42)では、甘い香ばしさと甘さ、良好なコーヒー風味が弱いことが確認された。一方、200℃で5分間加熱処理した場合(実験例44)では、焦げたような風味を呈し、固形物が発生したことから、反応が過剰に進んでしまったことが確認された。
【0130】
また、上記表7、及び表8に示す結果より、密閉釜を使用して得られたコーヒーカラメル水溶液(実験例36,37、及び実験例45,46)においても、平鍋を使用して製造したコーヒーカラメル水溶液と同様の風味が得られ、褐色で良好なコーヒー色がついたことから、本発明は、平鍋を使用した、酸素存在下において加熱処理をして得られたコーヒーカラメル水溶液に限定されず、酸素と触れ合わない環境下である、密閉釜において加熱処理して得られたコーヒーカラメル水溶液についても適用されることが確認された。
【0131】
[実験例47〜50]
次に、製造時において加熱物を冷却する目的で添加する適切な水分の量を確認するため、生豆コーヒーカラメル水溶液にて好ましい結果が得られた前記実験例1において、添加する水分の量(製品水分想定量)をそれぞれ変えて製造した生豆コーヒーカラメル水溶液について、各評価を行った。
【0132】
すなわち、製品水分想定量が5%とした生豆コーヒーカラメル水溶液を実験例47とし、同10%とした生豆コーヒーカラメル水溶液を実験例48とし、同50%とした生豆コーヒーカラメル水溶液を実験例49とし、同60%とした生豆コーヒーカラメル水溶液を実験例50とした。
【0133】
また、評価項目は、生豆コーヒーカラメル水溶液において、風味の安定性、品質の安定性、性状について評価を行った。また、これら項目に関する総合評価を、男5名、女4名、計9名のパネラーにより行った。評価の方法は、風味の安定性については、生豆コーヒーカラメル水溶液10gを20mlサンプル管に入れて25℃で30日間静置した後に、製造直後の風味を保持しているものを○印、製造直後に比べて僅かに風味が変化しているものを△印、風味が変化して保持していないものを×印でそれぞれ表した。また、品質の安定性については、同様に30日間静置した時に、沈殿や濁りの発生がなかったものを○印、発生したものを×印でそれぞれ表し、さらに、性状については、製造直後にカラメルが固まらず、飲食物への添加など、二次加工が可能なものを○印、固まってしまい二次加工が困難なものを×印でそれぞれ表した。また、総合評価については、風味、品質の安定性が良く、且つ、製造直後にカラメルが固まらず二次加工が可能なものを○印、製造直後に比べて僅かに風味が変化しているものの、品質の安定性が良く、且つ、製造直後にカラメルが固まらず二次加工が可能なものを△印、風味の安定性が悪いもの、または、固まってしまい二次加工が困難であるものなど、実用性がないものを×印でそれぞれ表した。その結果を、それぞれ表9に示す。
【0134】
[実験例51〜54]
また、製造時において加熱物を冷却する目的で添加する適切な水分の量を確認するため、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液にて好ましい結果が得られた前記実験例3において、添加する水分の量(製品水分想定量)をそれぞれ変えて製造した超浅煎りコーヒーカラメル水溶液について、上記実験例47〜50と同様に各評価を行った。
【0135】
すなわち、製品水分想定量が5%とした超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例51とし、同10%とした超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例52とし、同50%とした超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例53とし、同60%とした超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を実験例54とした。その結果を、それぞれ表10に示す。
【0136】
【表9】

【0137】
上記表9に示す結果より、生豆コーヒーカラメル水溶液では、加熱物の冷却時に製品水分想定量が10〜50%の水を添加すると、風味低下を抑制し、また、品質の安定性を保持でき、実用的であることが確認された(実験例48,49)。
【0138】
【表10】

【0139】
また、上記表10に示す結果より、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液においても、加熱物の冷却時に製品水分想定量が10〜50%の水を添加すると、風味低下を抑制し、また、品質の安定性を保持でき、実用的であることが確認された(実験例52,53)。
【0140】
次に、本発明におけるコーヒーカラメルの原料を、一般的な飲用コーヒーに用いられる焙煎度合を示すL値が30未満であるコーヒー豆から得たコーヒー抽出成分(以下、「通常焙煎コーヒー豆抽出物」という)に一部変更しても、コーヒーカラメル水溶液と同様の風味が得られること、又は、コーヒーカラメル水溶液の風味がより向上することを確認するため、コーヒーカラメル水溶液中のコーヒー固形物重量比をそれぞれ変えて製造したコーヒーカラメル水溶液について、各評価を行った。なお、コーヒー固形物重量比とは、コーヒーカラメル水溶液として用いられる、コーヒー生豆抽出物の固形物又は超浅煎りコーヒー豆抽出物中の固形物と、通常焙煎コーヒー豆抽出物中の固形物との重量比をいう。
【0141】
[実験例55〜58]
ここでは、コーヒー生豆抽出物として、生豆コーヒーカラメル水溶液において好ましい結果が得られた前記実験例1におけるコーヒー生豆抽出物を使用し、この原料の一部を、焙煎度合(L値)が16である通常焙煎コーヒー豆抽出物に変更することで得たコーヒーカラメル水溶液について、その風味を評価した。
すなわち、コーヒー生豆抽出物とL値16の通常焙煎コーヒー豆抽出物とのコーヒー固形物重量比が90:10の割合のコーヒーカラメル水溶液を実験例55とし、同固形物重量比が70:30の割合のコーヒーカラメル水溶液を実験例56とし、同固形物重量比が50:50の割合のコーヒーカラメル水溶液を実験例57とし、同固形物重量比が0:100の割合のコーヒーカラメル水溶液を実験例58とした。
【0142】
また、評価項目は、前記実験例1に示した生豆コーヒーカラメル水溶液と比較した場合の、甘い香ばしさ、苦味、コクの増加などの風味への効果について、男5名、女4名、計9名のパネラーにより、評価を行った。評価の方法は、L値16の通常焙煎コーヒー豆抽出物を使用しなかった場合に比べて、甘い香ばしさ、苦味、コクが同等、もしくは増加し、バランスが良く好ましい風味を有するものを○印、好ましい風味であるがバランスの良さにやや欠けるものを△印、バランスが悪く好ましくない風味を有するものを×印でそれぞれ表した。その結果を、それぞれ表11に示す。
【0143】
[実験例59〜62]
また、超浅煎りコーヒー豆抽出物として、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液として好ましい結果が得られた前記実験例3における超浅煎りコーヒー豆抽出物を使用し、この原料の一部を、焙煎度合(L値)が16である通常焙煎コーヒー豆抽出物に変更することで得たコーヒーカラメル水溶液について、その風味を評価した。
すなわち、超浅煎りコーヒー豆抽出物とL値16の通常コーヒー豆抽出物とのコーヒー固形物重量比が90:10の割合のコーヒーカラメル水溶液を実験例59とし、同固形物重量比が70:30の割合のコーヒーカラメル水溶液を実験例60とし、同固形物重量比が50:50の割合のコーヒーカラメル水溶液を実験例61とし、同固形物重量比が0:100の割合のコーヒーカラメル水溶液を実験例62とした。
【0144】
そして、評価項目として、前記実験例3に示した超浅煎りコーヒーカラメル水溶液と比較した場合の、甘い香ばしさ、苦味、コクの増加などの風味への効果について、男5名、女4名、計9名のパネラーにより、評価を行った。評価の方法は、上記実験例55〜58と同様に、L値16の通常焙煎コーヒー豆抽出物を使用しなかった場合に比べて、甘い香ばしさ、苦味、コクが同等、もしくは増加し、バランスが良く好ましい風味を有するものを○印、好ましい風味であるがバランスの良さにやや欠けるものを△印、バランスが悪く好ましくない風味を有するものを×印でそれぞれ表した。その結果を、それぞれ表12に示す。
【0145】
【表11】

【0146】
上記表11に示す結果より、原料となるコーヒー固形物重量比を90:10〜70:30に変更すると(実験例55、56)、変更しなかった時の生豆コーヒーカラメル水溶液(実験例1)に比べて、苦味、コクが増加し、バランスが良く好ましい風味を持つコーヒーカラメル水溶液を製造可能であることが確認された。同固形物重量比を50:50に変更した場合(実験例57)は、苦味を主体としたものとなり、ややバランスの良さに欠けた風味となった。しかしながら、コーヒー生豆抽出物の全てを、通常焙煎コーヒー豆抽出物に変更した場合(実験例58)、過剰な加熱臭と苦味が付与され、コーヒーの風味が低下してしまい、優位性は認められなかった。
【0147】
【表12】

【0148】
上記表12に示す結果より、原料となるコーヒー固形物重量比を90:10〜70:30に変更すると(実験例59、60)、変更しなかった時の超浅煎りコーヒーカラメル水溶液(実験例3)に比べて、苦味、コクが増加し、バランスが良く好ましい風味を持つコーヒーカラメル水溶液が製造可能であることが確認された。同固形物重量比を50:50に変更した場合(実験例61)は、苦味を主体としたものとなり、ややバランスの良さに欠けた風味となった。しかしながら、超浅煎りコーヒー豆抽出物の全てを、通常焙煎コーヒー豆抽出物に変更した場合(実験例62)、過剰な加熱臭と苦味が付与され、コーヒーの風味が低下してしまい、優位性は認められなかった。
【0149】
[実験例63〜66]
次に、本発明におけるコーヒーカラメルの原料の一部を、一般的な飲用コーヒーに用いられている焙煎度合(L値)が28である通常焙煎コーヒー豆抽出物に変えて製造した、生豆コーヒーカラメル水溶液について、前記実験例55〜58と同様に各評価を行った。
【0150】
すなわち、前記実験例55〜58では、通常焙煎コーヒー豆抽出物のL値を16としたが、同L値を28とした以外は同様の方法によって得た生豆コーヒーカラメル水溶液を実験例63〜66とした。
【0151】
また、評価項目は、前記実験例55〜58と同様の方法にて評価を行った。評価方法は、L値28の通常焙煎コーヒー豆抽出物を使用しなかった場合に比べて、甘い香ばしさ、苦味、コクが同等、もしくは増加し、バランスが良く好ましい風味を有するものを○印、好ましい風味であるがバランスの良さにやや欠けるものを△印、バランスが悪く好ましくない風味を有するものを×印でそれぞれ表した。その結果を、それぞれ表13に示す。
【0152】
[実験例67〜70]
また、コーヒーカラメルの原料の一部を、一般的な飲用コーヒーに用いられている焙煎度合(L値)が28である通常焙煎コーヒー豆抽出物に変えて製造した、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液について、前記実験例59〜62と同様に各評価を行った。
すなわち、前記実験例59〜62では、通常焙煎コーヒー豆抽出物のL値を16としたが、同L値を28とした以外は同様の方法によって得た生豆コーヒーカラメル水溶液を実験例67〜70とした。
【0153】
そして、評価項目は、前記実験例59〜62と同様の方法にて評価を行った。評価方法は、L値28の通常焙煎コーヒー豆抽出物を使用しなかった場合に比べて、甘い香ばしさ、苦味、コクが同等、もしくは増加し、バランスが良く好ましい風味を有するものを○印、好ましい風味であるがバランスの良さにやや欠けるものを△印、バランスが悪く好ましくない風味を有するものを×印でそれぞれ表した。その結果を、それぞれ表14に示す。
【0154】
【表13】

【0155】
上記表13に示す結果より、原料となるコーヒー生豆抽出物の一部を、一般的な飲用コーヒーに用いられている焙煎度合を示すL値が28である通常焙煎コーヒー豆抽出物に変更しても(実験例63〜65)、変更しなかった時の生豆コーヒーカラメル水溶液(実験例1)と同様の特徴を持つコーヒーカラメル水溶液が製造可能であることが確認された。しかも、コーヒー固形物重量比を50:50に変更することで、コクが付与されており、優位性が認められた。しかしながら、コーヒー生豆抽出物の全てを、通常焙煎コーヒー豆抽出物に変更した場合(実験例66)、甘い香ばしさが弱く、優位性は認められなかった。
【0156】
【表14】

【0157】
上記表14に示す結果より、原料となるコーヒー生豆抽出物の一部を、一般的な飲用コーヒーに用いられている焙煎度合を示すL値が28である通常焙煎コーヒー豆抽出物に変更しても(実験例67〜69)、変更しなかった時の生豆コーヒーカラメル水溶液(実験例3)と同様の特徴を持つコーヒーカラメル水溶液が製造可能であることが確認された。しかも、コーヒー固形物重量比を50:50に変更することで、コクが付与されており、優位性が認められた。しかしながら、超浅煎りコーヒー豆抽出物の全てを、通常焙煎コーヒー豆抽出物に変更した場合(実験例70)、甘い香ばしさが弱く、優位性は認められなかった。
【0158】
[実験例71,72]
次に、本発明におけるコーヒーカラメルを粉末化しても風味等が変わらないことを確認するため、生豆コーヒーカラメル水溶液及び超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を粉末化し、その風味等を確認した。
ここでは、コーヒー生豆抽出物として、生豆コーヒーカラメル水溶液において好ましい結果が得られた前記実験例1におけるコーヒー生豆抽出物を使用し、これを東京理化器械社製の凍結乾燥機(FDU−540)を用いて、−45℃で5日間乾燥させ粉末状にし、粉末コーヒーカラメルを製造した(実験例71)。また、超浅煎りコーヒー豆抽出物として、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液として好ましい結果が得られた前記実験例3におけるコーヒー生豆抽出物をそれぞれ使用し、上記同様の方法により粉末コーヒーカラメルを製造した(実験例72)。
【0159】
そして、コーヒー生豆抽出物を使用し、得られた粉末コーヒーカラメルを、そのまま舐めることによって風味について評価した。評価項目は、甘味、苦味、コーヒー感に関する風味について、男5名、女4名、計9名のパネラーにより行った。また、風味の評価は、パネラーの評価誤差を小さくするため、約0.05gとした同量の粉末コーヒーカラメルをそれぞれ舐めた。評価の方法は、粉末化しなかった場合の前記実験例1を基準として、同等の風味が得られたものを○印、得られなかったものを×印でそれぞれ表した。その結果を表15に示す。
【0160】
また、超浅煎りコーヒー豆抽出物を使用し、得られた粉末コーヒーカラメルを、上記実験例71と同様に各評価を行った。評価の方法は、粉末化しなかった場合の前記実験例3を基準として、同様の風味が得られたものを○印、得られなかったものを×印でそれぞれ表した。その結果を表15に併記する。
【0161】
【表15】

【0162】
上記表15に示す結果より、得られた粉末コーヒーカラメルは、甘い香ばしさ、良好なコーヒーの風味、自然な苦味を呈しており、元の生豆コーヒーカラメル水溶液(実験例1)、及び元の超浅煎りコーヒーカラメル水溶液(実験例3)と、同様の効果を持つことが確認された。
【0163】
次に、生豆コーヒーカラメル水溶液において好ましい結果が得られた、コーヒー生豆抽出物とショ糖との固形物重量比が1:6の割合の混合液を原料として得られた生豆コーヒーカラメル水溶液(実験例1)、及び、この混合液に、コーヒーオイルを1%添加して得られたコーヒーオイル配合生豆コーヒーカラメル水溶液(実験例16)、また、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液において好ましい結果が得られた、超浅煎りコーヒー豆抽出物とショ糖との固形物重量比が1:6の割合の混合液を原料として得られた超浅煎りコーヒーカラメル水溶液(実験例3)、及び、この混合液に、コーヒーオイルを1%添加して得られたコーヒーオイル配合超浅煎りコーヒーカラメル水溶液(実験例20)について、その応用例を紹介する。
【0164】
(ミルク入りコーヒー飲料への応用)
[実験例73〜77]
まず、L値20である通常焙煎コーヒー豆をカリタ社製のハイカットミルで中挽きに粉砕し、その粉砕物50gに95℃の熱湯を加えてドリップ抽出し、Bx3の抽出液を300g得た。次いで、得られた抽出液300gと牛乳500g、重曹0.3g、乳化剤0.6gをそれぞれ調合し、純水を加えて合計1000gになるまで調整し、コーヒー飲料調合液を得た。
次いで、このコーヒー飲料調合液をホモゲナイザー処理し、85℃でそのまま缶にホットパック後、殺菌し、コーヒーカラメル無添加のコーヒー飲料を製造した(実験例73)。
【0165】
また、前記実験例1で得られた生豆コーヒーカラメル水溶液を、上記のコーヒー飲料調合液に対して0.1%の配合率となるように1g添加し、生豆コーヒーカラメル入り調合液を調整した。次いで、この生豆コーヒーカラメル入り調合液をホモゲナイザー処理し、85℃で缶にホットパック後、殺菌し、生豆コーヒーカラメル入りコーヒー飲料を製造した(実験例74)。
また、前記実験例16で得られたコーヒーオイル入り生豆コーヒーカラメル水溶液を、上記のコーヒー飲料調合液に対して0.1%の配合率となるように1g添加し、コーヒーオイル配合生豆コーヒーカラメル入り調合液を調整した。次いで、このコーヒーオイル配合生豆コーヒーカラメル入り調合液を、上記実験例74と同じ条件で処理し、コーヒーオイル配合生豆コーヒーカラメル入りコーヒー飲料を製造した(実験例75)。
【0166】
また、前記実験例3で得られた超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を、上記実験例74と同じ条件で処理し、超浅煎りコーヒーカラメル入りコーヒー飲料を製造した(実験例76)。
さらに、上記実験例20で得られたコーヒーオイル入り超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を、上記実験例75と同じ条件で処理し、コーヒーオイル配合超浅煎りコーヒーカラメル入りコーヒー飲料を製造した(実験例77)。
【0167】
そして、それぞれ得られた各コーヒー飲料において、コク、苦味、コーヒー感に関する風味について評価を行うと共に、これら各項目に関する総合評価を、男5名、女4名、計9名のパネラーにより行った。評価の方法は、風味のコクについては、コクの程度について、苦味については、自然な苦味の程度について、コーヒー感については、良好なコーヒー風味の程度について、最も程度が強いものを5とし、最も程度が弱いものを1とした、5段階評価を行った。そして、パネラー9名の平均点数、各項目の合計点数を求め、表16に記した。
【0168】
また、総合評価については、風味の各項目の合計点数が12以上のものを○印、風味の各項目の合計点数が10〜11のものを△印、風味の各項目の合計点数が10未満のものを×印でそれぞれ示し、その結果を、表16に併記した。
【0169】
【表16】

【0170】
上記表16に示す結果より、コーヒーカラメル無添加のコーヒー飲料(実験例73)に比べて、生豆コーヒーカラメル入りコーヒー飲料(実験例74)、及び超浅煎りコーヒーカラメル入りコーヒー飲料(実験例76)は、コク、自然な苦味、良好なコーヒー風味が強いことが確認された。また、生豆コーヒーカラメル水溶液(実験例74)に比べて、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液(実験例76)の方が、ミルク入りコーヒー飲料への応用に対し優位性が高いことがわかる。
さらに、コーヒーオイル配合コーヒーカラメル入りコーヒー飲料は、コーヒーオイルが配合されていないコーヒーカラメル入りコーヒー飲料に比べて(実験例75は実験例74に比べて、実験例77は実験例76に比べて)、更にコクや良好なコーヒー風味の増加が認められ、コーヒーオイル入りコーヒーカラメル水溶液の優位性が確認された。
【0171】
(プリンへの応用)
[実験例78〜82]
砂糖10gを牛乳60gで溶解し、卵30g、フレーバー0.01gを混合し、プリン液を調整した。
次いで、前記実験例5で得られたショ糖のみから得られたカラメル水溶液を容器内に3g充填し、引き続き、上記調整したプリン液を容器内に充填した。そして、160℃のオーブンにて15分間蒸し焼きした後、冷却を行い、カラメル入りプリンを製造した(実験例78)。
【0172】
また、前記実験例1で得られた生豆コーヒーカラメル水溶液を容器内に3g充填し、引き続き、上記調整したプリン液を容器内に充填した。そして、上記実験例78と同様の方法にて、生豆コーヒーカラメル入りプリンを製造した(実験例79)。
また、前記実験例16で得られたコーヒーオイル入り生豆コーヒーカラメル水溶液を、容器内に3g充填し、引き続き、上記調整したプリン液を容器内に充填した。そして、上記実験例78と同様の方法にて、コーヒーオイル配合生豆コーヒーカラメル入りプリンを製造した(実験例80)。
【0173】
また、前記実験例3で得られた超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を容器内に3g充填し、引き続き、上記調整したプリン液を容器内に充填した。そして、上記実験例78と同様の方法にて、超浅煎りコーヒーカラメル入りプリンを製造した(実験例81)。
さらに、上記実験例20で得られたコーヒーオイル入り超浅煎りコーヒーカラメル水溶液を容器内に3g充填し、引き続き、上記調整したプリン液を容器内に充填した。そして、上記実験例78と同様の方法にて、コーヒーオイル配合超浅煎りコーヒーカラメル入りプリンを製造した(実験例82)。
【0174】
そして、それぞれ得られたプリンについて、上記ミルク入りコーヒー飲料の評価内容と同様の項目について、同様の方法にて評価を行った。その結果を、表17に示す。
【0175】
【表17】

【0176】
上記表17に示す結果より、カラメル入りプリン(実験例78)に比べて、生豆コーヒーカラメル入りプリン(実験例79)、及び超浅煎りコーヒーカラメル入りプリン(実験例80)は、自然な苦味、良好なコーヒー風味が強いことが確認された。また、上記ミルク入りコーヒー飲料と同様に、生豆コーヒーカラメル水溶液に比べて、超浅煎りコーヒーカラメル水溶液の方が、プリンへの応用に対し優位性が高いことがわかる。
さらに、コーヒーオイル配合コーヒーカラメル入りプリンは、コーヒーオイルが配合されていないコーヒーカラメル入りプリンに比べて(実験例80は実施例79に比べて、実験例82は実験例81に比べて)、良好なコーヒー風味と、特にコクの増加が認められ、コーヒーオイル入りコーヒーカラメル水溶液の優位性が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー抽出成分と、糖類とからなり、
前記コーヒー抽出成分と前記糖類とを同時加熱することで生じる香気成分をさらに含む、
ことを特徴とするコーヒーカラメル。
【請求項2】
前記香気成分は、コーヒー抽出成分と糖類とを同時加熱することで進行するアミノカルボニル反応によって生成される、フルフラール以外のフラン化合物であることを特徴とする請求項1に記載のコーヒーカラメル。
【請求項3】
コーヒー抽出成分と、糖類と、フラン化合物を有する香気成分とを含み、
前記香気成分として含まれるフラン化合物中のフルフラール以外のフラン化合物含有率が、前記糖類のみを加熱したものに前記コーヒー抽出成分を添加したものに比べて高い、
ことを特徴とするコーヒーカラメル。
【請求項4】
前記香気成分は、フラン化合物含有率が10%以上であり、かつ、前記フラン化合物中のフルフラール以外のフラン化合物含有率が40%以上である、
ことを特徴とする請求項3に記載のコーヒーカラメル。
【請求項5】
総クロロゲン酸含有量が、0.07質量%以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコーヒーカラメル。
【請求項6】
コーヒーオイルをさらに含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のコーヒーカラメル。
【請求項7】
前記請求項1乃至6のいずれか1項に記載のコーヒーカラメルであって、これを乾燥させて粉末にしたことを特徴とするコーヒーカラメル。
【請求項8】
前記請求項1乃至7のいずれか1項に記載のコーヒーカラメルを用いてなることを特徴とするコーヒーカラメル入り食品。
【請求項9】
コーヒー抽出成分と、糖類と、水とを少なくとも含む混合液を調整し、該混合液を、カラメル化反応、及びアミノカルボニル反応が進行し、褐色で良好なコーヒー色がつくまで加熱する、ことを特徴とするコーヒーカラメルの製造方法。
【請求項10】
前記コーヒー抽出成分は、コーヒー生豆または焙煎度合を示すL値が45〜30である焙煎コーヒー豆から抽出したものであることを特徴とする請求項9に記載のコーヒーカラメルの製造方法。
【請求項11】
前記混合液は、前記コーヒー抽出成分と前記糖類の固形物重量比が1:1〜1:99の割合で、水分が5〜74%(固形物重量比が1:1の時74%、1:99の時5%)であることを特徴とする請求項9又は10に記載のコーヒーカラメルの製造方法。
【請求項12】
前記混合液は、コーヒーオイルをさらに添加して調整したことを特徴とする請求項9乃至11のいずれか1項に記載のコーヒーカラメルの製造方法。
【請求項13】
前記コーヒーオイルは、添加量が0.02〜3質量%であることを特徴とする請求項12に記載のコーヒーカラメルの製造方法。
【請求項14】
クロロゲン酸類をさらに添加して調整したことを特徴とする請求項9乃至13のいずれか1項に記載のコーヒーカラメルの製造方法。
【請求項15】
前記コーヒー抽出成分は、焙煎度合を示すL値が30未満であるコーヒー豆から得たコーヒー抽出成分を一部使用し調整したことを特徴とする請求項9乃至14のいずれか1項に記載のコーヒーカラメルの製造方法。
【請求項16】
前記混合液の加熱は、130〜180℃の温度で、少なくとも10分以上行なうことを特徴とする請求項9乃至15のいずれか1項に記載のコーヒーカラメルの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−219488(P2009−219488A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37647(P2009−37647)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(591079498)株式会社ユニカフェ (7)
【Fターム(参考)】