説明

コーヒー製品

【課題】呈味が改善されコーヒー感に優れたコーヒー製品を提供する。
【解決手段】コーヒー製品は、コーヒー分に酸性アミノ酸及び/又は中性アミノ酸を添加してなる。アミノ酸は、バリン、ロイシン及びイソロイシンからなる群から選択される1種以上であることが好ましく、その添加量がコーヒー分の生豆換算量の0.01〜2倍の範囲内にあることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コーヒー製品に関するものであり、かかるコーヒー製品の呈味の改善を図る。
【背景技術】
【0002】
コーヒー炒り豆から抽出されたコーヒー分を含むコーヒー製品には、抽出液から噴霧乾燥、凍結乾燥等により水分を除去して粉末状に加工した、いわゆるインスタントコーヒー、抽出液を真空蒸発濃縮、凍結濃縮、膜濃縮等により濃縮した、いわゆるコーヒーエキス、そのまま飲用に供されるコーヒー飲料、風味付けにこれらを添加したコーヒー菓子等がある。中でもコーヒー飲料は広く飲用されている嗜好性飲料の一つである。粉砕した焙煎豆に熱湯を注いで抽出した、いわゆるレギュラーコーヒーに加え、コーヒー抽出液をそのまま、又は糖分や乳成分等を加えて容器に詰めた、いわゆるRTD(Ready−To−Drink)タイプのコーヒー飲料があり、持ち運びが可能であり手軽に摂取可能なことから、RTDコーヒー飲料が広く普及している。
【0003】
コーヒー製品の呈味は、主として苦味、酸味及び旨味よって決まり、特にはいわゆるコーヒー感を特徴づけるのは苦味である。この呈味は、コーヒー抽出液を抽出した直後が最も優れており、経時的に劣化することが一般に知られている。また、乳成分を加えたRTDコーヒー飲料においては、乳成分の凝固を防止するためpH調整剤の添加が行われるが、このpH調整剤由来のアルカリ味がコーヒーの呈味を損なう場合もある。さらに、インスタントコーヒー及びコーヒーエキスでは、水分を除去し濃縮する過程において加熱されることが多く、RTDコーヒー飲料では、長期保存を可能とするために容器詰め前又は容器詰め後に加熱殺菌処理が行われるが、かかる加熱処理により、pHが変化し、酸味が増加したり、コーヒーの旨み成分が減少したりする結果、やはりコーヒーの呈味を損なう場合もある。
【0004】
また、コーヒーに含まれるカフェインには、その中枢刺激効果により、覚せい作用、筋肉・疲労抵抗の上昇作用及び精神安定作用等の有益な効果をもたらすことが知られている反面、代謝機能が衰えてくる高齢者、代謝機能が発達していない乳幼児又は刺激物質に敏感な人たちにとっては、不眠や過剰な興奮作用などの有害な効果があることも知られており、さらに、妊産婦が過剰に摂取した場合には胎児への影響も懸念されている。このため、カフェインを除去したコーヒー製品も市販されているが、カフェインはコーヒーの重要な呈味成分であるため、カフェインを除去したコーヒー製品ではコーヒー本来の呈味が失われるという問題があった。
【0005】
このようなコーヒー製品の呈味劣化を改善するため、例えばクロロゲン酸類中の5−カフェオイルキナ酸の含有量を特定範囲内とすることが提案されている(例えば特許文献1参照)。また、抗酸化剤を添加して品質劣化を防止することが提案されている(例えば特許文献2及び3参照)。さらに、乳入りコーヒー飲料に添加される重曹の全てまたは一部を、強塩基性物質および/または塩基性アミノ酸に置き換えることが提案されている(例えば特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2007−181406号公報
【特許文献2】特開昭62−269642号公報
【特許文献3】特開2000−354455号公報
【特許文献4】特開2002−186425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら特許文献に記載された技術は、コーヒー製品の呈味改善に一定の効果をあげるものの、いわゆるコーヒー感においては依然としてレギュラーコーヒーとの間に差があり、一層の呈味の改善が求められている。
【0008】
したがって、この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、呈味が改善されコーヒー感に優れたコーヒー製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、この発明は、コーヒー分に中性アミノ酸を添加してなるコーヒー製品である。かかる構成を採用することにより、中性アミノ酸により苦味が補強され、コーヒー製品の苦味、ひいてはコーヒー感を調整することが可能となる。
【0010】
この発明に従うコーヒー製品に用いる中性アミノ酸としては、分岐鎖アミノ酸(BCAA)とも呼ばれるバリン、ロイシン及びイソロイシンからなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
【0011】
また、中性アミノ酸の添加量がコーヒー分の生豆換算量の0.01〜2倍の範囲内にあることが好ましい。
【0012】
さらに、中性アミノ酸の添加量をa、カフェインの含有量をb、コーヒー分の生豆換算量をcとしたとき、a+50bが0.1c〜2.0cの範囲にあることが好ましい。
【0013】
この発明に従うコーヒー製品は、糖類及び乳製品の添加されていない、いわゆるブラックコーヒー(若しくはストレートコーヒー)又はその乾燥粉末若しくは濃縮物とすることもできるが、糖類、乳製品及び油脂からなる群から選択される1種以上をさらに含むこともできる。
【0014】
さらに、この発明に従うコーヒー製品では、コーヒー分が脱カフェイン処理されていることが好ましい。なお、ここでいう「脱カフェイン処理」には、育種技術及び遺伝子組換え技術等により、収穫されるコーヒー生豆のカフェイン含有量を低減する処理、超臨界流体、水及び溶媒により、コーヒー生豆からカフェインを選択的に抽出する処理、活性炭及びイオン交換樹脂等により、コーヒー抽出液からカフェインを吸着除去する処理を含むが、これらに限定されない。
【0015】
加えて、この発明に従うコーヒー製品は、粉末状又は液状とすることが好ましく、特にコーヒー飲料に好適である。
【0016】
なお、ここでいう「コーヒー飲料」とはコーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約に定められる「コーヒー入り清涼飲料」、「コーヒー飲料」及び「コーヒー」、並びにコーヒー豆を原料とした飲料に乳製品を加えたものであって、牛乳、加工乳及び乳飲料の表示に関する公正競争規約の適用を受ける「乳飲料」を含む。
【0017】
この発明をコーヒー飲料に用いる場合には、中性アミノ酸の添加量が0.1〜3質量%の範囲内にあること、製品100g当たりのコーヒー分の生豆換算量が0.1〜6gの範囲にあるにあること、加熱殺菌処理されたことがそれぞれ好ましい。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、中性アミノ酸により苦味を制御することで、呈味が改善されコーヒー感に優れたコーヒー製品を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、この発明の実施の形態について説明する。ただし、この発明の範囲は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0020】
この発明に従うコーヒー製品はコーヒー分を含む。このコーヒー分は、焙煎及び粉砕されたコーヒー豆に湯又は水を接触させることで抽出することができる。この際の抽出方法としては、ドリップ式、サイフォン式、ジェット式、エスプレッソ式、ボイリング式、カラム式等の公知の抽出方法のいずれを用いてもよく、その抽出温度及び抽出時間についても特に制限はない。
【0021】
原料のコーヒー豆の栽培品種は、例えばアラビア種、ロブスター種、リベリカ種であるが、これらに限定されない。また、コーヒー豆の種類は、例えばキリマンジャロ、コナ、ブルーマウンテン、モカ、グアテマラ、ブラジル、コロンビア、マンデリン、トラジャ、ジャワ、ケニアであるが、これらに限定されず、また複数種のコーヒー豆をブレンドして用いることもできる。
【0022】
コーヒー豆の焙煎は、直火、熱風、遠赤外線、マイクロ波、炭火等を用いることができ、その度合い(焙煎度)は、浅煎り、中煎り、深煎りのいずれであってもよい。焙煎されたコーヒー豆は、ミル又はグラインダー等で粉砕されるが、その粉砕度合いは、細挽き、中挽き、粗挽きのいずれであってもよい。
【0023】
コーヒー生豆中の苦味成分としては、カフェインとトリゴネリンが代表的である。このうち、トリゴネリンは焙煎工程で50〜80%が熱分解するため、カフェインに比べるとコーヒー製品の苦味に寄与することが少ないとされている。また、コーヒー生豆にはクロロゲン酸が含まれており、焙煎工程でこれが熱分解して生ずるキナ酸等の生成物もコーヒー製品中の苦味成分となる。カフェインは水に溶けやすいが、クロロゲン酸は水に溶けにくく、コーヒー抽出液の濁りや沈殿となる場合がある。さらに、コーヒー製品の製造工程においては、コーヒー豆の微粉等を除去するためにコーヒー抽出液にろ過処理を行うのが一般的であるが、このろ過処理において不溶性固形分となったクロロゲン酸も除去されてしまう。さらに、殺菌等を目的としてコーヒー抽出液を加熱処理した際にクロロゲン酸がさらに熱分解してキナ酸を生成する場合もある。これらの原因が相まって、淹れたてのレギュラーコーヒーに比べると、コーヒー製品、特にはコーヒー飲料、中でもRTDコーヒー飲料は、味のバランスが崩れており、かつ、呈味成分の一部が除去された味の厚みがなくなりコーヒー感に乏しくなり、呈味が劣化すると考えられる。
【0024】
こうした呈味の劣化を改善するために、この発明に従うコーヒー製品は、苦味を持つ中性アミノ酸を添加している。中性アミノ酸は、クロロゲン酸に比べると熱的、経時的に安定性が高く、加熱処理や長期保存を行った場合にも呈味の変化が少ない。また、アミノ酸は食品添加物として認可されており、元来生体内に存在する物質であるから安全性も極めて高い。さらに、近年、アミノ酸の持つ機能性が注目されていることから、アミノ酸を添加することは栄養学的見地からも好ましい。
【0025】
粉末状のコーヒー製品に中性アミノ酸を添加する場合には、コーヒー分を粉末化した後に粉末状の中性アミノ酸を混合してもよく、あるいは、以下に述べる液状コーヒー製品への中性アミノ酸の添加と同様にして原液を調整し、これから水分を除去して粉末状に加工してもよい。液状のコーヒー製品の場合には、中性アミノ酸を、例えば結晶粉末を60℃以上の熱湯中で、ミキサを用いて溶解し、かかる中性アミノ酸溶液をコーヒー豆の抽出用の湯又は水に混合してもよく、また、コーヒー抽出液に混合してもよい。
【0026】
使用可能な中性アミノ酸は、アルキル鎖を持つグリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン、ヒドロキシ基を持つセリン及びトレオニン、硫黄を含むシステイン及びメチオニン、アミド基を持つアスパラギン及びグルタミン、イミノ基を持つプロリン、芳香族基を持つフェニルアラニン、チロシン及びトリプトファンである。中でも、アルキル鎖を持つグリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンが好ましく、バリン、ロイシン及びイソロイシンが特に好ましい。
【0027】
中性アミノ酸の添加量は、コーヒー豆の種類、焙煎度、抽出条件及び最終製品に要求される呈味等に応じて、コーヒー分の生豆換算量の0.01〜2倍の範囲内で適宜に変更することができる。すなわち、この発明に従うコーヒー製品において、コーヒー生豆換算量1グラムに対して中性アミノ酸0.01〜2グラムを添加することが好ましい。コーヒー生豆換算量1グラムに対して中性アミノ酸の添加量が0.01グラム未満では、中性アミノ酸による呈味の改善効果が十分に得られない場合があり、一方、これが2グラムを超えると、コーヒー成分由来の呈味に中性アミノ酸由来の呈味が勝り、コーヒー感を損なう場合があるからである。
【0028】
カフェインの苦味強度は中性アミノ酸の苦味強度に比べて著しく大きい。このため、カフェイン含量と中性アミノ酸の添加量の和を適当な範囲内としなければ、かえって呈味を損なう場合がある。この観点からは、アミノ酸の添加量をa、カフェインの含有量をb、前記コーヒー分の生豆換算量をcとしたとき、a+50bを0.1c〜1.0cとすることが好ましい。a+50bが0.1c未満の場合には製品の苦味が不足しコーヒー感が低下する場合があるからであり、これが1.0cを超える場合には製品の苦味が強すぎて食用又は飲用に適さなくなるおそれがあるからである。
【0029】
この発明に従うコーヒー製品は、ブラックタイプのみならず、糖類、乳製品、油脂又はこれらの組み合わせのいずれかを含むことができる。一般に、糖類、乳製品及び油脂のいずれかを加えると製品のコーヒー感が低下するため、従来のコーヒー製品では、コーヒー感の低下を補う必要がある場合には、コーヒー分を多くしたり、香料を添加したりしていた。また、苦味を補強することは困難であった。これに対し、この発明では、中性アミノ酸を適宜に加えることにより、苦味を補強し、ひいてはコーヒー感を向上することを可能としており、製品の呈味の設計の自由度が広がっている。
【0030】
また、この発明は、コーヒー分が脱カフェイン処理されたものに好適である。カフェインはコーヒーの主な呈味成分の一つであり、これを除去するとコーヒー本来の呈味が薄れる。また、コーヒー抽出液を脱カフェイン処理する際に、カフェイン以外の他の呈味成分も除去される場合があり、これもまたコーヒーの呈味を損なう。この発明では、中性アミノ酸を適宜に加えることにより、脱カフェイン処理により低下した呈味を補うことが可能である。
【0031】
また、この発明は、粉末状のコーヒー製品に好適に用いることができる。粉末化は、一般にコーヒー抽出液又はこれを濃縮したコーヒーエキスを噴霧乾燥又は凍結乾燥することで行われるが、これには処理効率の観点から加熱処理が実用上付随し、熱の影響によりコーヒー分の呈味が変化することが知られている。これに対し、この発明に従うコーヒー製品では、コーヒー分に比べて熱による呈味の変化の少ない中性アミノ酸により苦味を補強しているので、粉末化した際にも呈味の劣化が少ない。
【0032】
さらに、この発明は、液状のコーヒー製品にも好適に用いることができる。液状のコーヒー製品としては、コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキスがあるが、この濃縮には処理効率の観点から加熱処理が実用上付随する。上述したように、この熱の影響によりコーヒー分の呈味が変化するが、この発明に従うコーヒー製品では呈味の劣化を抑制することができる。また、液状のコーヒー製品では、ろ過処理や成分の酸化、結晶化により呈味が劣化する場合があるが、この発明のコーヒー製品では、かかる影響を受けることが少なく、呈味の劣化を抑制することができる。特に、直接飲用に供するコーヒー飲料とすることが好ましく、この場合には、アミノ酸を補給することができるという副次的な効果を得ることもできる。なお、ここでいうコーヒー飲料は、乳固形分を3.0質量%以上とした乳飲料であってもよい。さらに、このコーヒー飲料を製造する際には、コーヒー抽出液に中性アミノ酸を添加してもしてもよく、上述したような、この発明に従う粉末状コーヒー製品又は濃縮された液状コーヒー製品を還元又は希釈してもよい。
【0033】
この発明に従うコーヒー飲料では、中性アミノ酸の添加量は、コーヒー豆の種類、焙煎度、抽出条件及び最終製品に要求される呈味等に応じて0.1〜3質量%の範囲内で適宜に変更することができる。しかし、アミノ酸の添加量が0.1質量%未満ではアミノ酸の添加による呈味の改善効果が十分に得られないおそれがあり、一方、3質量%を超えると、コーヒー成分由来の呈味に中性アミノ酸由来の呈味が勝り、コーヒー感を損なうおそれがある。
【0034】
また、この発明に従うコーヒー飲料では、製品100g当たりのコーヒー分が生豆換算量で0.1〜6gの範囲にあることが好ましい。この発明に従うコーヒー飲料は、中性アミノ酸の添加によりコーヒー感が増しているため、通常のコーヒー飲料に比べるとコーヒー分の含有率を低く抑えることができるが、コーヒー分が0.1g未満では、コーヒー成分由来の呈味にアミノ酸由来の呈味が勝ってしまい、好ましくない。一方、コーヒー分が6gを超えると、飲料に適さない濃度となり、またコストの面からも好ましくない。同様に、カフェインの含有量を0.002〜0.2質量%の範囲内とすることが、呈味、飲用及びコストの観点から好ましい。
【0035】
さらに、この発明は、加熱殺菌処理されたコーヒー飲料に好適である。加熱殺菌は、包装前殺菌としてもよく、包装後殺菌としてもよい。加熱殺菌処理により、クロロゲン酸等が変性又は分解して、加熱前とは呈味が変化してしまうが、予めこの変化を予測してコーヒー分と中性アミノ酸の添加量のバランスを調整しておけば、製品の呈味の低下を防止することができる。
【0036】
なお、上述したところは、この発明の実施形態の一部を示したにすぎず、この発明の趣旨を逸脱しない限り、これらの構成を相互に組み合わせたり、種々の変更を加えたりすることができる。
【実施例】
【0037】
次に、この発明に従うコーヒー飲料を試作評価したので、以下に説明する。
【0038】
(ブラックタイプのコーヒー飲料)
40gの焙煎コーヒー豆を90℃の純水で抽出したコーヒー抽出液に、0.5gの重曹を添加してpHを調整し、試料液を得た。この試料液に純水を加えて総量を1000gに調製し、これを190g缶に充填した後、レトルト殺菌を行い比較例1のコーヒー飲料を得た。また、この試料液に表1に示す各量のアミノ酸を添加し、さらに純水を加えて総量を1000gに調製し、これを190g缶に充填した後、レトルト殺菌を行い実施例1〜5のコーヒー飲料を得た。
【0039】
これら比較例1及び実施例1〜5のコーヒー飲料は、100g当たりのコーヒー分含有量(生豆換算値)が5gであり、カフェインの含有量が0.04質量%であった。
【0040】
このようにして調製した各コーヒー飲料を複数の評価パネラーによって苦味及びコーヒー感について官能評価した。評価は、比較例1の評点を0とし、評価すべき呈味が強くなっている場合を1、特に強くなっている場合を2、弱くなっている場合を−1、特に弱くなっている場合を−2とした。全パネラーの評点の平均値を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
この評価結果から明らかなように、実施例1〜4のコーヒー飲料は比較例1のコーヒー飲料に比べて、苦味及びコーヒー感のいずれもが向上しており、総合的な呈味が改善されていることが分かる。
【0043】
(加糖タイプのコーヒー飲料)
40gの焙煎コーヒー豆を90℃の純水で抽出したコーヒー抽出液に、0.5gの重曹を添加してpHを調整し、45gの砂糖を加え、試料液を得た。この試料液に純水を加えて総量を1000gに調製し、これを190g缶に充填した後、レトルト殺菌を行い比較例2のコーヒー飲料を得た。また、この試料液に表2に示す各量のアミノ酸を添加し、さらに純水を加えて総量を1000gに調製し、これを190g缶に充填した後、レトルト殺菌を行い実施例5〜10のコーヒー飲料を得た。
【0044】
これら比較例2及び実施例5〜10のコーヒー飲料は、100g当たりのコーヒー分含有量(生豆換算値)が5gであり、カフェインの含有量が0.04質量%であった。
【0045】
このようにして調製した各コーヒー飲料を、ブラックタイプのコーヒー飲料と同様にして評価した。全パネラーの評点の平均値を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
この評価結果から明らかなように、実施例5〜10のコーヒー飲料は比較例2のコーヒー飲料に比べて、苦味及びコーヒー感のいずれもが向上しており、総合的な呈味が改善されていることが分かる。
【0048】
(カフェオレタイプのコーヒー飲料)
20gの焙煎コーヒー豆を90℃の純水で抽出したコーヒー抽出液に、1gの重曹を添加してpHを調整し、70gの砂糖、230gの牛乳及び1.5gの乳化剤を加え、試料液を得た。この試料液に純水を加えて総量を1000gに調製し、これを190g缶に充填した後、レトルト殺菌を行い比較例3のコーヒー飲料を得た。また、この試料液に表3に示す各量のアミノ酸を添加し、さらに純水を加えて総量を1000gに調製し、これを190g缶に充填した後、レトルト殺菌を行い実施例11〜16のコーヒー飲料を得た。
【0049】
これら比較例3及び実施例11〜16のコーヒー飲料は、100g当たりのコーヒー分含有量(生豆換算値)が2.5gであり、カフェインの含有量が0.02質量%であった。
【0050】
このようにして調製した各コーヒー飲料を、ブラックタイプのコーヒー飲料と同様にして評価した。全パネラーの評点の平均値を表3に示す。
【0051】
【表3】

【0052】
この評価結果から明らかなように、実施例11〜16のコーヒー飲料は比較例3のコーヒー飲料に比べて、苦味及びコーヒー感のいずれもが向上しており、総合的な呈味が改善されていることが分かる。
【0053】
(粉末状コーヒー製品)
インスタントコーヒー12gに対してロイシン1.32g、イソロイシン0.66g、バリン0.66gを添加し、さらに純水を加えて総量を1000gに調製して実施例17のコーヒー飲料を得た。また、実施例17に用いたものと同じインスタントコーヒー15gに純水を加えて総量を1000gに調製して比較例4のコーヒー飲料を得た。
【0054】
このようにして調製した各コーヒー飲料を、ブラックタイプのコーヒー飲料と同様にして評価した。全パネラーの評点の平均値を表4に示す。
【0055】
【表4】

【0056】
この評価結果から明らかなように、実施例17のコーヒー飲料は比較例4のコーヒー飲料に比べて、コーヒー成分の生豆換算量が少ないにもかかわらず、苦味及びコーヒー感のいずれもが向上しており、総合的な呈味が改善されていることが分かる。
【0057】
(脱カフェイン処理したコーヒー製品)
脱カフェイン処理したインスタントコーヒー12gに対してロイシン1.32g、イソロイシン0.66g、バリン0.66gを添加し、さらに純水を加えて総量を1000gに調製して実施例18のコーヒー飲料を得た。また、実施例18に用いたものと同じインスタントコーヒー15gに純水を加えて総量を1000gに調製して比較例5のコーヒー飲料を得た。
【0058】
このようにして調製した各コーヒー飲料を、ブラックタイプのコーヒー飲料と同様にして評価した。全パネラーの評点の平均値を表5に示す。
【0059】
【表5】

【0060】
この評価結果から明らかなように、実施例18のコーヒー飲料は比較例5のコーヒー飲料に比べて、コーヒー成分の生豆換算量が少ないにもかかわらず、苦味及びコーヒー感のいずれもが向上しており、総合的な呈味が改善されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上の説明から明らかなように、この発明によって、呈味が改善されコーヒー感に優れたコーヒー製品を提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーヒー分に中性アミノ酸を添加してなるコーヒー製品。
【請求項2】
前記中性アミノ酸が、バリン、ロイシン及びイソロイシンからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のコーヒー製品。
【請求項3】
前記中性アミノ酸の添加量が前記コーヒー分の生豆換算量の0.01〜2倍の範囲内にある、請求項1又は2に記載のコーヒー製品。
【請求項4】
前記中性アミノ酸の添加量をa、カフェインの含有量をb、前記コーヒー分の生豆換算量をcとしたとき、a+50bが0.1c〜2.0cの範囲にある、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコーヒー製品。
【請求項5】
糖類、乳製品及び油脂からなる群から選択される1種以上をさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコーヒー製品。
【請求項6】
前記コーヒー分が脱カフェイン処理された、請求項1〜5のいずれか一項に記載のコーヒー製品。
【請求項7】
前記コーヒー製品は粉末状である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のコーヒー製品。
【請求項8】
前記コーヒー製品は液状である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のコーヒー製品。
【請求項9】
前記コーヒー製品はコーヒー飲料である、請求項8に記載のコーヒー製品。
【請求項10】
前記中性アミノ酸の添加量が0.1〜3質量%の範囲内にある、請求項9に記載のコーヒー製品。
【請求項11】
製品100g当たりの前記コーヒー分の生豆換算量が0.1〜6gの範囲にある、請求項9又は10に記載のコーヒー製品。
【請求項12】
カフェインの含有量が0.002〜0.2質量%の範囲内にある、請求項9〜11のいずれか一項に記載のコーヒー製品。
【請求項13】
加熱殺菌処理された、請求項9〜12のいずれか一項に記載のコーヒー製品。

【公開番号】特開2009−254307(P2009−254307A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108927(P2008−108927)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(592069470)ゴールドパック株式会社 (8)
【Fターム(参考)】