説明

ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモンを使用する方法及び組成物

本発明は、2種の持続放出配合物、すなわち、ゴナドトロピン放出ホルモン組成物を放出することができる第1持続放出配合物と、エストロゲン組成物を放出することができる第2持続放出配合物とを含む組成物に関する。本発明の組成物は、前立腺癌のアンドロゲン遮断治療の改善のために採用することができ、この治療において、骨ミネラル濃度損失及びホットフラッシュの発生率及び重症度が、最小限に十分なエストロゲン・レベルを維持することによって最小限に抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
背景及び従来技術
月経前症候群を含む良性婦人科障害及びアンドロゲン依存性前立腺癌を治療するために、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト及びアンタゴニストが使用されている。GnRHは黄体形成ホルモン放出ホルモンとしても知られている。GnRHは下垂体門脈系における視床下部によって脈動状に分泌される。このホルモンの半減期は数分オーダーなので、下垂体はホルモンの脈動に暴露される。この暴露の結果、ゴナドトロピン、すなわち黄体形成ホルモン(LH)及び卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌が生じる。男性の場合、LHは精巣のライジヒ細胞に作用し、テストステロンの分泌を刺激する。FSHは精子形成に関与する。テストステロンはGnRHの分泌をフィードバック阻害し、ホルモンに対する下垂体の感受性を低減するように思われる。女性の場合、FSHは卵巣に作用し、エストロゲンの分泌を刺激する。女性におけるLHの主な機能は、卵胞の成熟を支持すること、及び中間卵胞周期で排卵をトリガーすることである。テストステロンと同様に、エストロゲンも、GnRHの分泌及び作用をフィードバック阻害することができるように思われる。
【0002】
GnRHの潜在的なアゴニストの投与は、LH及びFSH放出の初期突発を引き起こし、続いて下垂体におけるGnRH受容体を完全にダウン・レギュレートすることが見いだされた。結果として、LH及びFSHはもはや放出されず、そして性ホルモンが女性の場合には卵巣摘除レベルまで、また男性の場合には精巣摘除レベル又は去勢レベルまでそれぞれ低減される。GnRHアゴニストの高投与量デポ配合物の開発は、性ステロイド産生を持続的に阻害することを可能にし、薬物を投与しやすくした。
【0003】
典型的には、前立腺癌は初めはアンドロゲン依存性であり、後期にのみアンドロゲン非依存性になる。種々のアンドロゲン・アブレーション治療法が、唯一の治療として、又は他の治療法、例えば手術、外照射療法、近接照射療法などとともに実施された。高用量の半合成エストロゲン化合物ジエチルスチルベステロールを経口投与する計画が、前立腺癌の治療のための手術以外の最も古くからの選択肢であった。この治療は緩解をもたらす上で精巣摘除と同様に効果的であった。しかし残念ながら、高用量のこのエストロゲン化合物の経口投与は、浮腫及び深部静脈血栓症を含む心血管系の合併症を引き起こす。ジエチルスチルベステロール治療は、事実上心臓血管毒性のないGnRHアゴニスト及びアンタゴニストが利用可能になると中止された。
【0004】
GnRHアゴニストが前立腺癌の緩解をもたらす上で、精巣摘除と臨床上同様に効果的であり、治療の標準である一方、これらの使用には、重大な他の毒性が伴う。これらの毒性は、疲労、体重増加、鬱、骨量減少、貧血、筋委縮、女性化乳房、ホットフラッシュ、認知機能の損失、及び高密度リポタンパク質の減少を含む。Hellerstedt及びPienta. CA Cancer J Clin 2002; 52: 154-179。おそらく、生活の質に最も深刻な影響を与える合併症は骨ミネラル濃度の損失及びホットフラッシュである。
【0005】
テストステロンは男性において主要な循環性ホルモンなので、外科的に去勢された男性又はGnRHアゴニスト及びアンタゴニストで治療された前立腺癌患者における骨ターンオーバーの増大及び骨ミネラル濃度の損失は、このホルモンの不在に起因すると長い間推測されていた。しかし最近の観察研究が示唆したところによると、驚くべきことに、男性における骨ミネラル濃度は、テストステロン・レベルとよりもエストロゲン・レベルとよく相関する。Khosla他、J Clin Endocrinol Metab 2002; 87: 1443-1450。介入研究が示したところによると、エストロゲンの補充は、骨形成マーカーのGnRH誘発型低下、並びにGnRHアゴニストで治療された高齢男性における骨吸収マーカーの増大を予防する。Khosla他、J Clin Endocrinol Metab 2001; 86: 3555-3561。別の研究が示したところによると、アロマターゼ活性の特異的阻害によっても、骨吸収マーカーが著しく増大し、そして骨形成マーカーが減少する。Taxel他、J Clin Endocrinol Metab 2002; 87: 4907-4913。
【0006】
発明の概要
本発明は、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン(本明細書中では略してGnRHと称する)組成物の第1持続放出配合物と、エストロゲン組成物の第2持続放出配合物とを含む組成物であって、該第1持続放出配合物が、男性患者の化学的去勢を誘発して維持するのに十分な速度で、約1ヶ月以上、好ましくは2ヶ月以上、より好ましくは3ヶ月以上の期間にわたって該GnRH組成物を放出することができ、そして該第2持続放出配合物が、男性患者を化学的去勢するGnRH組成物を投与することによって通常引き起こされる骨ミネラル濃度損失の促進又はホットフラッシュを低減するのに十分な血清レベルを前記期間にわたって維持することができる、組成物に関する。
【0007】
好ましくは、本発明の組成物の第1持続放出配合物は、1日当たり約10〜約1,000 μgの速度で、GnRH組成物を放出する。本発明の第2持続放出配合物は、少なくとも第1初期段階と第2段階とを含むプロフィール下で、エストロゲン組成物を放出する。第1初期段階の経過中に、本発明の第2持続放出配合物は減衰されたイニシャル・バーストを示す。第2段階経過中、第2持続放出配合物のエストロゲン組成物の放出速度は、1日当たり約10〜約100 μgのエストラジオール当量であり、好ましくは1日当たり約50 μgのエストラジオール当量を超えない。好ましくは、第1初期段階経過中のエストロゲン組成物の放出量は、第2段階中に発生するエストロゲン組成物の一日放出上限量の5倍、より好ましくは3倍を決して超えない。
【0008】
本発明の異なる実施態様の場合、組成物は男性患者の化学的去勢への言及によって限定されない。この組成物は、GnRH組成物の第1持続放出配合物と、エストロゲン組成物の第2持続放出配合物とを含む組成物であって、第1持続放出配合物が、1日当たり約10〜約1,000 μgの平均速度で、約1ヶ月以上の期間にわたってGnRH組成物を放出することができ、そして第2持続放出配合物が、上述のような少なくとも第1初期段階と第2段階とを含むプロフィール下で、エストロゲン組成物を前記期間にわたって放出することができる、組成物として定義される。
【0009】
本発明の組成物において、第1持続放出配合物のGnRH組成物は、GnRH、GnRHのアゴニスト、GnRHのアンタゴニスト及びこれらの混合物から成る群から選択される。好ましくは、GnRH組成物は、ロイプロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、ナファレリン、デスロレリン、ヒステレリン、ゴナドレリン、並びにこれらの塩及び混合物から成る群から選択されたGnRHアゴニストである。
【0010】
第2持続放出配合物中に存在するエストロゲン組成物は、クロロトリアニセン、ジエンストロール、ジエチルスチルベストロール、ジエチルスチルベストロールジプロピオネート、ジエチルスチルベストロールモノベンジルエーテル、エキレリニン、エキレリニンスルフェート、エステトロール、エストラジオール、(3α,17β)-エストル-4-エン-3,17-ジオール、エストリオール、エストリオールヘミスクシネート、エストロン、エストロンスルフェートモノナトリウム、エストロンカリウムスルフェート、エチニルエストラジオール、フォスフェストロールテトラナトリウム、ヘキセストロール、ヒドロキシエストロンジアセテート、メストラノール、ピネストロール、ピペラジンエストロンスルフェート、プロメストリエン、キネストロール、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0011】
好ましい組成物において、第1持続放出配合物のGnRH組成物は、トリプトレリン又はその塩であり、第2持続放出配合物のエストロゲン組成物はエストラジオールである。最も好ましい組成物の場合、第1持続放出配合物のGnRH組成物は、1日当たり約100 μgの速度で放出されるトリプトレリン又はトリプトレリン塩であり、そして第2持続放出配合物のエストロゲン組成物は、前記第2段階経過中に1日当たり約25〜約50 μgの速度で放出されるエストラジオールである。
【0012】
本発明はさらに、前立腺癌の治療方法であって、GnRH組成物の第1持続放出配合物とエストロゲン組成物の第2持続放出配合物とを含む組成物を前立腺癌患者に投与することを含み、GnRH組成物の第1持続放出配合物は、患者の化学的去勢を誘発して維持するのに十分な速度で、約1ヶ月以上、好ましくは2ヶ月以上、そしてより好ましくは3ヶ月以上の期間にわたってGnRH組成物を放出することができ、エストロゲン組成物の第2持続放出配合物は、男性患者を化学的去勢するGnRH組成物を投与することによって通常引き起こされる骨ミネラル濃度損失の促進又はホットフラッシュを低減するのに十分な血清レベルを前記期間にわたって維持することができる、前立腺癌の治療方法に関する。
【0013】
好ましくは、前立腺癌患者に投与される組成物の第1持続放出配合物は、1日当たり約10〜約1,000 μgの速度でGnRH組成物を放出し、第2持続放出配合物は1日当たり約10〜約100 μgの速度でエストロゲン組成物を放出する。最も好ましくは、本発明の方法に従って前立腺癌患者に投与される第2持続放出配合物は、上述のように、放出の減衰されたバーストを伴う第1初期段階と、第2段階とを少なくとも含むプロフィール下で、エストロゲン組成物を放出する。
【0014】
本発明の方法に従って投与された組成物において、第1持続放出配合物のGnRH組成物は、GnRH、GnRHのアゴニスト、GnRHのアンタゴニスト及びこれらの混合物から成る群から選択される。好ましくは、GnRH組成物は、ロイプロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、ナファレリン、デスロレリン、ヒステレリン、ゴナドレリン、並びにこれらの塩及び混合物から成る群から選択されたGnRHアゴニストである。
【0015】
第2持続放出配合物中に存在するエストロゲン組成物は、クロロトリアニセン、ジエンストロール、ジエチルスチルベストロール、ジエチルスチルベストロールジプロピオネート、ジエチルスチルベストロールモノベンジルエーテル、エキレリニン、エキレリニンスルフェート、エステトロール、エストラジオール、(3α,17β)-エストル-4-エン-3,17-ジオール、エストリオール、エストリオールヘミスクシネート、エストロン、エストロンスルフェートモノナトリウム、エストロンカリウムスルフェート、エチニルエストラジオール、フォスフェストロールテトラナトリウム、ヘキセストロール、ヒドロキシエストロンジアセテート、メストラノール、ピネストロール、ピペラジンエストロンスルフェート、プロメストリエン、キネストロール、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0016】
本発明の方法に従って投与される好ましい組成物において、第1持続放出配合物のGnRH組成物は、トリプトレリン又はその塩であり、第2持続放出配合物のエストロゲン組成物はエストラジオールである。本発明の方法の最も好ましい組成物の場合、第1持続放出配合物のGnRH組成物は、1日当たり約100 μgの速度で放出されるトリプトレリン又はトリプトレリン塩であり、そして第2持続放出配合物のエストロゲン組成物は、1日当たり約25〜約50 μgの速度で放出されるエストラジオールである。本発明の組成物は、皮下、筋内又は経皮経路で投与することができる。
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、新規の組成物、及び、従来のホルモン・アブレーション治療の深刻な副作用特性を顕在化させることなしに、ホルモン応答性前立腺癌を治療するためにこれらの組成物を使用することに関する。本発明の組成物は、2種の持続放出配合物、すなわち、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン(GnRH)組成物を含む第1持続放出配合物と、同時に患者に投与されるエストロゲン組成物を含む第2持続放出配合物とを含む。これらの配合物は投与時に合体させることができ、或いは、製造時に組み合わせることもできる。典型的には本発明の持続放出配合物は、約1ヶ月以上の期間にわたって有効である。有効性期間は1年もの長い期間である。より長い持続効果のある配合物も本発明の範囲内に含まれるものと考えられる。好ましくは、本発明の組成物は、1〜3ヶ月の治療期間のために構成され、この治療期間後、組成物は再投与される。
【0018】
第1持続放出配合物はGnRH組成物を含む。ゴナドトロピンの分泌、ひいては男性におけるアンドロゲン及び女性におけるエストロゲンの分泌を阻害する多数の化合物が記載されている。男性の場合、エストロゲンはアロマターゼ反応によってテストステロンから誘導される。GnRH組成物はGnRHのアゴニスト及びアンタゴニストの両方、並びにGnRH自体を含む。本発明のGnRH組成物は、後者の化合物の混合物から成ることもできる。下垂体内のGnRH受容体を巡ってGnRHと競合することにより、GnRHアンタゴニストが作用する。通常、GnRHは脈動状に分泌される。ホルモンの高いターンオーバーにより、GnRH受容体は、LH及びFSHの放出をシグナル伝達するGnRH波に暴露される。高濃度のGnRHアゴニストの存在において、LH及びFSH放出のイニシャル・バースト後、シグナル伝達経路は、GnRH受容体のダウン・レギュレーション、並びにLH及びFSH放出量の低減によって遮断される。数週間の期間内で、LH及びFSH放出は完全に抑制され、エストロゲン濃度が女性における卵巣摘除レベルに達し、テストステロン濃度が男性における精巣摘除レベル又は去勢レベルに達する。テストステロン及びエストロゲンのこのような最小レベルの存在において、GnRHのフィードバック阻害はもはや発生しない。従ってGnRH放出量は最大限となる。この放出パターンは、GnRH受容体のダウン・レギュレーションの維持を助ける。よく知られたGnRHアゴニストは、ロイプロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、ナファレリン、デスロレリン、ヒステレリン、ゴナドレリン、並びにこれらの塩を含む。よく知られたGnRHアンタゴニストはアバレリックスである。
【0019】
GnRHアゴニストの種々の持続放出配合物が開発され、商業的に入手可能である。GnRHアゴニストの商業的な持続放出配合物の例は、Lake Forrest, ILのTAP Pharmaceuticals Inc.のLupron Depot 3.75 mg及びLupron Depot 7.5 mgを含む。Lupron Depot 3.75 mgは、3.75 mgのロイプロレリンアセテート、0.65 mgのゼラチン、33.1 mgのDL-乳酸-グリコール酸コポリマー、及び6.6 mgのD-マンニトールを含む。添付の希釈剤は、7.5 mgのカルボキシメチルセルロースナトリウム、75 mgのマンニトール、1.5 mgのポリソルベート 80、水、USP及び氷酢酸を含有する。Lupron Depot-3 Month 22.5mgは、ポリラクチド・ミクロ球体中に22.5 mgのロイプロレリンアセテートを含む、3ヶ月のインターバルを置いた筋内注射のための配合物である。米国特許第4,728,721号;同第4,849,228号;同第5,330,767号;同第5,476,663号;同第5,480,656号;同第5,575,987号;同第5,631,020号;同第5,643,607号;同第5,716,640号;同第5,814,342号;同第5,823,997号;同第5,980,488号;同第6,036,976号の各明細書。ロイプロレリンアセテートのその他の持続放出配合物は、Eligard(Atrix Laboratoriesによる1ヶ月用配合物)、及びViadur(ALZA Corporation による12ヶ月用配合物)を含む。Zoladex 3.6 mg及び10.8 mgはそれぞれ、AstraZenecaによって販売されているゴセレリンアセテートの1ヶ月用及び3ヶ月用のデポ配合物である。Zoladex 3.6 mg配合物は、13.3〜14.3 mgのD,L-乳酸及びグリコール酸のコポリマー中の3.6 mgのゴセレリンに対応する量でゴセレリンアセテートを含む。Ferring Corp.及びIpsen-Beaufourによって流通されているDecapetylは、トリプトレリンアセテート又はパモエートのデポ配合物である。Decapetylの1ヶ月配合物は、ポリラクチドコ-グリコリドのミクロカプセル内にカプセル化された3.75 mgのトリプトレリンを含む。トリプトレリンパモエートの同様の持続放出配合物は、Pamorelinの名称でドイツ国内の保健機関によって最近承認された。Pamorelinは1ヶ月用又は3ヶ月用の持続放出配合物として利用可能である(Pamorelin Depot 3.75 mg, Pamorelin LA 11.25 mg)。Pamorelin Depot 3.75 mgは、トリプトレリンパモエート(3.75mgのトリプトレリンペプチド)、170 mgのポリ-d,l-ラクチド-コ-グリコリド, 85 mgのマンニトール、30 mgのカルボキシメチルセルロースナトリウム、及び2 mgのポリソルベート 80を含有する単回投与量バイアルとして供給された滅菌凍結乾燥型生分解性ミクロ顆粒配合物である。注射に際して、配合物は2mlの水中に懸濁され、そして筋内注射される。Pamorelin LA 11.25 mgは、トリプトレリンパモエート(11.25mgのトリプトレリンペプチド)、145 mgのポリ-d,l-ラクチド-コ-グリコリド, 85 mgのマンニトール、30 mgのカルボキシメチルセルロースナトリウム、及び2 mgのポリソルベート 80を含有する同様の配合物である。この配合物は2mlの水中に懸濁され、そして筋内注射される。同様の配合物が米国特許第5,134,122号明細書、同第5,192,741号明細書及び同第5,225,205号明細書に記載されている。これらの特許明細書全体を参考のため本明細書中に引用する。
【0020】
GnRH、GnRHアゴニスト、GnRHアンタゴニスト又はこれらの混合物の同様の持続放出配合物は、本発明の組成物中に使用することができる。このような持続放出配合物は、上記商業的な配合物中に存在するポリラクチド-グリコリド・コポリマー以外の生分解性且つ/又は生体適合性のポリマーを基剤とすることができる。このようなポリマーは、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸を含む。これら及びその他のポリマー、並びに、このようなポリマーを使用して好適な配合物を調製するための方法が当業者によく知られている。
【0021】
本発明の第1持続放出配合物は好ましくは、トリプトレリンパモエートのデポ配合物、例えばPamorelin配合物であるが、GnRHのアゴニスト又はアンタゴニスト又はGnRH自体のその他の持続放出配合物を採用することもできる。GnRH受容体をダウン・レギュレートさせるのに十分な、また女性の場合には卵巣摘除レベルまで、そして男性の場合には精巣摘除レベル又は去勢レベルまで性ホルモン濃度を低減させるのに十分な速度で、GnRHのアゴニスト又はアンタゴニスト又はGnRHを連続的に放出するいかなるデポ配合物も、本発明とともに使用するのに適している。正確な放出速度は、使用されるGnRHアゴニスト(GnRHを含む)又はアンタゴニストの性質、配合物の性質、及び投与様式とともに変化してよいが、好適な第1持続放出配合物は、1日当たり約10〜約1,000 μgの速度でGnRHアゴニスト又はアンタゴニストを放出する。
【0022】
第1持続放出配合物からGnRHのアゴニスト又はアンタゴニストが放出されると、GnRHアゴニスト又はアンタゴニスト治療のよく知られた副作用がもたらされる。これらの副作用、具体的には前立腺癌患者における骨ミネラル濃度損失及びホットフラッシュを阻止するために、本発明の組成物は、エストロゲン組成物を放出する第2持続放出配合物を含む。観察研究が示すところによれば、生体利用可能なエストラジオールの血清レベルが約11 pg/ml以上である場合には、男性の骨ミネラル濃度損失は発生しない。Khosla他、J Clin Endocrinol Metab 2002; 87: 1443-1450。高齢男性における性ホルモン結合グロブリンのレベル増大を考慮に入れると、これは、最小約30 pg/mlの総血清エストラジオール・レベルに相当する。
【0023】
第2持続放出配合物によって送達されるエストロゲン組成物は、天然及び合成双方の化合物を含む。好ましいエストロゲン組成物は、エストラジオール(化学名:β-エストラ-1,3,5(10)-トリエン-3,17-ジオール;CAS RN: 50-28-2)である。本発明に従って使用することができるその他のエストロゲン組成物の例は、クロロトリアニセン、ジエンストロール、ジエチルスチルベストロール、ジエチルスチルベストロールジプロピオネート、ジエチルスチルベストロールモノベンジルエーテル、エキレリニン、エキレリニンスルフェート、エステトロール、エストリオール、エストリオールヘミスクシネート、エストロン、エストロンスルフェートモノナトリウム、エストロンカリウムスルフェート、エチニルエストラジオール、フォスフェストロールテトラナトリウム、ヘキセストロール、ヒドロキシエストロンジアセテート、メストラノール、ピネストロール、ピペラジンエストロンスルフェート、プロメストリエン、キネストロール、及びこれらの混合物を含む。これらのエストロゲン組成物の効能及び薬物動態特性は大幅に異なるので、使用されるべきこのようなエストロゲン組成物の量、及び達成されるべき濃度は種々様々となる。本発明の目的において、エストロゲン組成物の量及び濃度は、エストラジオールの量及び濃度に対する当量によって定義される。当量とは、達成される所望の生物学的効果、例えばホルモン・アブレーション治療を受けた前立腺癌患者における骨ミネラル濃度損失の低減及び/又はホットフラッシュの頻度及び重症度の軽減という効果が類似していることを意味する。
【0024】
付加的なエストロゲン組成物は、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)、例えばタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、チボロン及びラソフォキシフェンを含む。Rigg 及びHartman, 2003, N Engl J Med 348, 618-629, Ke他 2001, J Bone Miner Res 16, 765-773。これらの組成物の選択性により、本発明の第2持続放出配合物においてこれらの組成物を使用すると、エストラジオール投与から生じる有益な効果のうちのいくつかだけをもたらすことができるが、しかし全てをもたらすことはできない。例えば、ラロキシフェン、トレミフェン及びタモキシフェンは、骨吸収を遅らせることは期待できるものの、ホットフラッシュの発生率及び重症度を低減することは期待できない(しかし促進することはあり得る)。エストロゲン組成物はまた、いわゆるANGELS{核内転写制御を介さないエストロゲン様シグナル伝達アクチベーター(Activators of Non-Genotropic Estrogen-like Signaling)}化合物を含む。これらの化合物は特許出願PCT/US02/18544に記載されている。ANGELS化合物はエストロゲン及びアンドロゲンの核内転写制御を介さない作用を模しているが、これらの核内転写制御を介する作用をほとんど欠いている小分子である。好ましいANGELS化合物は、マウス・モデルにおいて骨量減少を逆転することが判った(3α,17β)-エストル-4-エン-3,17-ジオール(CAS RN: 35950-87-9)である。Kousteni他、2002, Science 298, 843-846。
【0025】
エストロゲンは、心臓血管イベント、例えば浮腫及び深部静脈血栓症の確率を増大させることがよく知られている。このような認識が、経口ジエチルスチルベステロン治療を断念し、その代わりにGnRHアゴニスト治療を採用した重大な理由である。閉経後の女性のためのエストロゲン補充治療に対しても、同様の観察がなされた。ホルモンの投与経路を経口から非経口に変えると、前立腺癌患者に対するエストロゲンの毒性をある程度まで緩和することができるものの、増量したエストロゲンを投与することと相俟って、顕著なリスクがまだ残っているおそれがある。
【0026】
高レベルのエストロゲンと相俟ってリスクを不必要に増大させることなしに、GnRH投与の副作用を効果的に阻止するために、第2持続放出配合物は、約30 pg/mlのエストラジオールと当量の血清エストロゲン・レベルを提供するのに十分であるに過ぎないものであると計算される低い速度で、エストロゲン組成物を放出する。患者間の生物学的差異により、第2持続放出配合物の投与によって達成される実際の血清エストラジオール又はエストラジオール当量レベルは、約10 pg/ml〜約50 pg/mlであってよい。
【0027】
しかし、持続放出配合物の欠点の1つは、これらがほとんど必然的に薬物放出の双峰形動態特性を示し、この特性が放出のイニシャル・バーストと、これに続いて、かなり低い速度での長時間の持続放出段階とを含むことである。このような放出プロフィールは、本発明の目的でのこのような配合物の使用を検討するのを十分に思いとどまらせるものである。
【0028】
驚くべきことに、本発明の組成物の第2持続放出配合物のいくつかが、単峰形に近づく放出プロフィールを示すことが見いだされた。このような配合物は、所与のエストロゲン組成物に関して、この組成物が埋め込まれる生分解性高分子材料と、配合物調製法を実施する条件との間に適当な妥協策を選択することにより得られた。適切な配合物を提供することを実証した高分子材料のうちの1つは、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、好ましくは2種のコポリマー間の比がそれぞれ85 : 15〜40 : 60、例えば50 : 50又は65 : 35で構成されている材料であった。好ましくは適正な配合物は、ミクロ球体の形状を成しており、これらの球体を調製する方法は、エマルジョン/溶剤抽出として当業者に知られた方法であってよい。任意には、異なるバッチから得られた2種以上の持続放出配合物を混合することが、放出プロフィールを平滑にする助けとなる場合がある。
【0029】
従って、この第2持続放出配合物からの薬物放出の重大なイニシャル・バーストが存在しないことにより、エストロゲン濃度は目標レベルを大幅に上回ることは決してない。エストロゲン組成物の計算された理想放出速度は、約25 μg/日のエストラジオール(クリアランス x 所望の血清レベル又は血清レベルの上昇)と当量である。第2持続放出配合物の投与に続く、1日目におけるエストロゲン組成物の最大放出速度は、1日当たり約75 μgのエストラジオールと当量となる。第2持続放出配合物の放出特性がこのように狭く定義された結果、高レベルのエストロゲンに伴うリスクは最小限に維持される。
【0030】
本発明の組成物の2種の持続放出配合物、すなわちゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン(GnRH)組成物を含む第1持続放出配合物と、エストロゲン組成物を含む第2持続放出配合物とは、投与時に合体させるか、或いは製造時に組み合わせることができる。分離又は合体された配合物を固形形状、例えば凍結乾燥体として貯蔵することができる。
【0031】
本発明の組成物は、注射可能な調製物を液中で戻した後、例えば臀部に単回筋内注射として投与される。
【0032】
典型的には、本発明の持続放出配合物は、約1ヶ月以上、好ましくは2ヶ月以上、より好ましくは3ヶ月以上の期間にわたって効果的である。好ましくは、本発明の組成物は、1〜3ヶ月の治療期間のために構成され、この治療期間後、組成物は再投与される。
【0033】
本発明の組成物及びその特性は、下記実施例及び図面においてより詳細に示される。
【0034】
実施例1:1ヶ月以上の期間にわたってトリプトレリン及びエストラジオールを放出する組成物の調製
1. トリプトレリンの配合物
この配合物を、米国特許第5,134,122号明細書の実施例1に記載された方法に従って得た。
【0035】
2. PLGAミクロ球体内に埋め込まれたエストラジオールの配合物
160 gのPVA (ポリビニルアルコール)と7840 gのH2O MilliQとを磁気撹拌しながら40℃の温度で混合することにより、水性相(溶液A)を調製した。続いて、4.9 gのポリマー、50:50ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(内部粘度(iv) = 0.42 dl/g)を50 gのエチルアセテート中に磁気撹拌しながら溶解することにより、有機相(溶液B)を調製した。100 mgのエストラジオールを800 μlのDMSO中に溶解した(溶液C)。
【0036】
溶液B及びCを混ぜ合わせ、得られた溶液を5 ml/分の速度で均質化チャンバ内にポンプ供給した。溶液Aを並行して750 ml/分の速度で均質化チャンバ内にポンプ供給した。ローターの回転速度は5000 rpmであり、このプロセスを約10分間続けた。
【0037】
こうして得られた懸濁液を1.2 μmで濾過し、次いで粒子を濾過により取り戻し、水で洗浄し、続いて凍結乾燥させた。コア・ローディング率は1.50 %であり、平均サイズD(v,0.5)は18.9 μmである。
【0038】
こうして得られた配合物の単回筋内注射に続く、ラットにおけるエストラジオール血清放出を実施例4で報告する。
【0039】
実施例2:1ヶ月以上の期間にわたってトリプトレリン及びエストラジオールを放出する組成物の調製
1. トリプトレリンの配合物
この配合物を、米国特許第5,134,122号明細書の実施例1に記載された方法に従って得た。
【0040】
2. PLGAミクロ球体内に埋め込まれたエストラジオールの配合物
80 gのPVA (ポリビニルアルコール)と3920 gのH2O MilliQとを磁気撹拌しながら40℃の温度で混合することにより、水性相(溶液A)を調製した。続いて、4.5 gのポリマー、65:35ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(内部粘度(iv) = 0.62 dl/g)を25 gのエチルアセテート中に磁気撹拌しながら溶解することにより、有機相(溶液B)を調製した。92 mgのエストラジオールを800 μlのDMSO中に溶解した(溶液C)。
【0041】
溶液B及びCを混ぜ合わせ、得られた溶液を5 ml/分の速度で均質化チャンバ内にポンプ供給した。溶液Aを並行して630 ml/分の速度で均質化チャンバ内にポンプ供給した。ローターの回転速度は5000 rpmであり、このプロセスを約6分間続けた。
【0042】
こうして得られた懸濁液を1.2 μmで濾過し、次いで粒子を濾過により取り戻し、水で洗浄し、続いて凍結乾燥させた。コア・ローディング率は1.60 %であり、平均サイズD(v,0.5)は32.2 μmである。
【0043】
こうして得られた配合物の単回筋内注射に続く、ラットにおけるエストラジオール血清放出を実施例4で報告する。
【0044】
実施例3:3ヶ月以上の期間にわたってトリプトレリン及びエストラジオールを放出する組成物の調製
1. トリプトレリンの配合物
トリプトレリンパモエートのミクロ顆粒配合物を下記方法に従って調製した。
約12 wt%のトリプトレリンパモエートを、約88 wt%のPLGA 75:25とボールミル内で室温で混合した。こうして得られた混合物を十分に均質化し、徐々に圧縮し、そして同時に徐々に加熱した。その後、これを約110℃の温度で押出した。押出物を切断してぺレットにし、約-110℃の温度で粉砕した。粉砕後に得られたミクロ顆粒を、180ミクロン未満の篩にかけた。
【0045】
2. エストラジオールの配合物
内部粘度0.42 dL/gの、エストラジオールとPLGA 50/50とのミクロ球体配合物(配合物1)を、下記のように調製した:
160 gのPVA (ポリビニルアルコール)と7840 gのH2O MilliQとを磁気撹拌しながら40℃の温度で混合することにより、水性相(溶液A)を調製した。続いて、4.9 gのポリマー、50:50ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(内部粘度(iv) = 0.42 dl/g)を50 gのエチルアセテート中に磁気撹拌しながら溶解することにより、有機相(溶液B)を調製した。100 mgのエストラジオールを800 μlのDMSO中に溶解した(溶液C)。
【0046】
溶液B及びCを混ぜ合わせ、得られた溶液を5 ml/分の速度で均質化チャンバ内にポンプ供給した。溶液Aを並行して750 ml/分の速度で均質化チャンバ内にポンプ供給した。ローターの回転速度は5000 rpmであり、このプロセスを約10分間続けた。
【0047】
こうして得られた懸濁液を1.2 μmで濾過し、次いで粒子を濾過により取り戻し、水で洗浄し、続いて凍結乾燥させた。コア・ローディング率は1.50 %であり、平均サイズD(v,0.5)は18.9 μmである。
【0048】
内部粘度0.6 dL/gの、エストラジオールとPLGA 85/15とのミクロ球体配合物(配合物2)を、下記のように調製した:
160 gのPVA (ポリビニルアルコール)と7840 gのH2O MilliQとを磁気撹拌しながら40℃の温度で混合することにより、水性相(溶液A)を調製した。続いて、4.65 gのポリマー、85:15ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(内部粘度(iv) = 0.6 dl/g)を50 gのエチルアセテート中に磁気撹拌しながら溶解することにより、有機相(溶液B)を調製した。350 mgのエストラジオールを2500 μlのDMSO中に溶解した(溶液C)。
【0049】
溶液B及びCを混ぜ合わせ、得られた溶液を5 ml/分の速度で均質化チャンバ内にポンプ供給した。溶液Aを並行して750 ml/分の速度で均質化チャンバ内にポンプ供給した。ローターの回転速度は5000 rpmであり、このプロセスを約10分間続けた。
こうして得られた懸濁液を1.2 μmで濾過し、次いで粒子を濾過により取り戻し、精製水で洗浄し、続いて凍結乾燥させた。
コア・ローディング率は6.04 %であり、平均サイズD(v,0.5)は18.4 μmである。
【0050】
3. トリプトレリン及びエストラジオールの合体配合物
エストラジオール・ミクロ球体配合物1及び2のそれぞれの比75:25、エストラジオール投与量3 mg及びトリプトレリン投与量 12mgを有するように、これらの配合物をバイアル内で混合した。この混合物を最後に凍結乾燥した(マンニトール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びTween 80を含有する凍結乾燥媒質の添加後)。
こうして得られた配合物の単回筋内注射に続く、ラットにおけるエストラジオール及びトリプトレリンの血清放出を実施例4で報告する。
【0051】
実施例4:薬物動態研究
この試験研究の目的は、ラットにおけるエストラジオール及び/又はトリプトレリン配合物の単回筋内注射に続くエストラジオール及び/又はトリプトレリンの血清放出を追跡調査することであった。
【0052】
1. 動物及び配合物投与
軽いエーテル麻酔下で、雄Sprague Dawley精巣摘除済ラットの後部大腿筋内に、エストラジオール及び/又はトリプトレリン配合物を筋内注射した(i.m)。1群当たり6匹の動物を研究した。配合物注射の前日(0日目)に、基準血液試料を採取した。各注射は1日目に時点T0において行った(エストラジオール投与量0.75〜2.25 mg/kg及び/又はトリプトレリン投与量9 mg/kg)。これを下記血液試料のための基準時間と見なした。
【0053】
2. 血液試料採取
次いで2種の血液試料を1日目に採取した。第1の試料は注射から1時間後(T0 + 1h00)に捕集し、そして第2の試料は注射から6時間後(T0 + 6h00)に捕集した。後日、すなわち2日目〜42日目に、T0に対して選択されたのと同時刻に血液試料を採取した。42日目まで、全ての群において血液試料を採取した。3ヶ月用配合物で処理される動物の場合には、91日目まで、付加的に週に一度血液試料を採取した。それぞれの時点で、ヘマトクリット毛管を使用して、眼窩後(右又は左眼)からほぼ1.5 mlの血液を収集した。
【0054】
3. アッセイ
ラジオ・イムノアッセイ(RIA)によって、処理された動物の血清中で血清エストラジオール及び/又はトリプトレリンを測定した。
【0055】
4. 結果
4.1 実施例1及び実施例2において得られたエストラジオール配合物
図1は、ラット血清中の実施例1(四角)の配合物及び実施例2(円)の配合物のエストラジオール放出の動態プロフィールを報告する。
【0056】
このプロフィールは、実施例1及び実施例2の配合物にそれぞれ対応して、450 pモル/l及び470 pモル/lでバーストが生じ、これに対して、両配合物とも100 pモル付近で水平状態にあったことを示す。4.5〜4.7の速度が得られた。バースト後、血清中のエストラジオール・レベルは減少して、7日目から32日目まで水平状態に達した。次いで32日目からは、エストラジオール放出量が減少した。
同様の動態プロフィールがヒトの男性において達成されるのが予期される。
【0057】
4.2 実施例3において得られたトリプトレリン及びエストラジオールの合体配合物
図2は、配合物の単回筋内注射に続く84日間にわたる、ラット血清中の実施例3の合体配合物のエストラジオール(菱形)放出量及びトリプトレリン(四角)放出量の動態プロフィールを報告する。
【0058】
配合物の注射直後に、588 pモル/lの血清エストラジオールのバーストが観察された。次いで、エストラジオール・レベルは急速に減少し、7日目から28日目まで水平状態(90〜130 pモル/l)に達した。35日目からは、エストラジオール・レベルの僅かな増大が観察され(56日目に190〜234 pモル/l)、続いて84日目から減少が観察された。91日目には45 pモル/lのレベルがまだ観察された。これらの結果は、配合物が、比較的初期のバーストを伴う、血清中へのエストラジオールの規則的な放出を誘発できることを示した。
【0059】
図3は、基準トリプトレリン配合物(トリプトレリン単独)(四角)、及び実施例3のトリプトレリンとエストラジオールとの合体配合物(菱形)のIM注射後の、ラット血清中の血清トリプトレリン放出量の比較トリプトレリン動態プロフィールを報告する。
エストラジオールとトリプトレリンとの組み合わせは、2種のトリプトレリン血清プロフィールが同様であるため、3ヶ月用トリプトレリン配合物と比較して血清トリプトレリンの放出量を変更することはなかった。
【0060】
実施例5:臨床試験
持続放出トリプトレリン(単独)及び実施例3のトリプトレリン+エストラジオール合体配合物を投与することにより、前立腺癌に対するGnRHアゴニスト治療を受けている男性におけるそれぞれ骨ミネラル濃度、ホットフラッシュ、テストステロン血清レベル及び前立腺特異的抗原に対する治療効果を比較する研究。
【0061】
骨転移のない進行性前立腺癌男性患者140名を無作為抽出して、トリプトレリンパモエート11.25 mg単独の持続放出配合物 (基準)、又は3mgの投与量のエストラジオールと合体されたトリプトレリンパモエート11.25 mg(実施例3の組成物)を12週毎に注射する。両治療は、持続放出(PLGA)配合物中で筋内で行われ、1治療群当たりの患者は70名である。患者は48週間の期間にわたって追跡調査される。
【0062】
研究薬物治療開始の1ヶ月前にカルシウム及びビタミンD栄養補助剤で全ての患者の治療を開始することにより、カルシウム又はビタミンDの不足による骨量減少を防止する。
骨ミネラル濃度(BMD)をベースライン及び48週目で測定する。ホットフラッシュの発生率及び重症度を患者日記を用いてベースラインで、そして毎月測定する。血清テストステロン・レベル及び前立腺特異的抗原(PSA)レベルを、ベースラインで、そして規則的なインターバルを置いて測定する。
【0063】
結果:
骨ミネラル濃度
48週目において、トリプトレリン単独治療群の場合、BMDが腰椎で2.8 %減少し、そして総股関節で3.3 %減少するのに対し、トリプトレリン + エストラジオール治療を用いた場合には両部位においてBMDは0.5 %しか減少しない。
【0064】
トリプトレリン + エストラジオール群とトリプトレリン単独群との間の48週間後の骨量減少の平均差は、腰椎で2.3 %、そして総股関節で2.8 %(統計的に有意)であることが見いだされ、ベースラインからの変化において標準偏差は4.4である。
【0065】
ホットフラッシュ
両治療群の患者の75 %がホットフラッシュを経験した。ホットフラッシュの平均回数は、トリプトレリン単独群で7回、そしてトリプトレリン + エストラジオール群では5回である。視覚的なアナログ・スケール(1〜10)に基づくホットフラッシュの平均重症度は、トリプトレリン単独群で6.5、そしてトリプトレリン + エストラジオール群では4.5である。
【0066】
血清テストステロン・レベル
29日目で去勢状態(血清テストステロン ≦1.735 nmol/L)に達する患者の平均パーセンテージは、トリプトレリン単独群で95.3 %であり、そしてトリプトレリン + エストラジオール群では96.1 %である。29日目と336日目との間で去勢状態を維持する患者の平均パーセンテージは、トリプトレリン単独群で98.2 %であり、そしてトリプトレリン + エストラジオール群では98.5 %である。治療群間の平均差は有意ではない。
【0067】
血清PSAレベル
平均PSA濃度は、トリプトレリン単独群の場合、ベースラインの46.8 μg/Lから1.3 μg/Lまで減少し、そしてトリプトレリン + エストラジオール群の場合、ベースラインの45.0 μg/Lから1.2 μg/Lまで減少した。治療群の間の平均差は有意ではない。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、実施例1(四角)の配合物及び実施例2(円)の配合物を用いて得られるエストラジオール動態プロフィールを示す図である。
【図2】図2は、実施例3の合体組成物を用いて得られるエストラジオール動態プロフィール(菱形)及びトリプトレリン動態プロフィール(四角)を示す図である。
【図3】図3は、基準長時間持続型トリプトレリン配合物(四角)、及び実施例3の合体組成物(菱形)を用いて得られるトリプトレリン動態プロフィールを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の持続放出配合物と、エストロゲン組成物の持続放出配合物とを含む組成物であって:
ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の該持続放出配合物が、男性患者の化学的去勢を誘発して維持するのに十分な速度で、約1ヶ月以上の期間にわたって該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を放出することができ、そして
エストロゲン組成物の該持続放出配合物が、男性患者を化学的去勢するゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を投与することによって通常引き起こされる骨ミネラル濃度損失の促進又はホットフラッシュを低減するのに十分な血清レベルを前記期間にわたって維持することができる、
組成物。
【請求項2】
ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の該持続放出配合物が、1日当たり約10〜約1,000 μgの速度で、該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を放出することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該持続放出配合物が、少なくとも第1初期段階と第2段階とを含むプロフィール下で、エストロゲン組成物を放出し、前記第2段階経過中のエストロゲン組成物の放出速度が1日当たり約10〜約100 μgのエストラジオール当量であり、前記第1初期段階経過中の該エストロゲン組成物の放出量が、前記第2段階中に発生する該エストロゲン組成物の一日放出量の5倍を決して超えない、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の持続放出配合物と、エストロゲン組成物の持続放出配合物とを含む組成物であって:
ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の該持続放出配合物が、1日当たり約10〜約1,000 μgの平均速度で、約1ヶ月以上の期間にわたって該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を放出することができ、そして
エストロゲン組成物の該持続放出配合物が、少なくとも第1初期段階と第2段階とを含むプロフィール下で、エストロゲン組成物を放出することができ、前記第2段階経過中のエストロゲン組成物の放出速度が1日当たり約10〜約100 μgのエストラジオール当量であり、前記第1初期段階経過中の該エストロゲン組成物の放出量が、前記第2段階中に発生する該エストロゲン組成物の一日放出上限量の5倍を決して超えない、
組成物。
【請求項5】
該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物が、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモンのアゴニスト、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモンのアンタゴニスト及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物が、ロイプロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、ナファレリン、デスロレリン、ヒステレリン、ゴナドレリン、並びにこれらの塩及び混合物から成る群から選択されたゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン・アゴニストである、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
該エストロゲン組成物が、クロロトリアニセン、ジエンストロール、ジエチルスチルベストロール、ジエチルスチルベストロールジプロピオネート、ジエチルスチルベストロールモノベンジルエーテル、エキレリニン、エキレリニンスルフェート、エステトロール、エストラジオール、(3α,17β)-エストル-4-エン-3,17-ジオール、エストリオール、エストリオールヘミスクシネート、エストロン、エストロンスルフェートモノナトリウム、エストロンカリウムスルフェート、エチニルエストラジオール、フォスフェストロールテトラナトリウム、ヘキセストロール、ヒドロキシエストロンジアセテート、メストラノール、ピネストロール、ピペラジンエストロンスルフェート、プロメストリエン、キネストロール、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
該ゴナドトロピン放出ホルモン組成物が、トリプトレリン又はその塩であり、該エストロゲン組成物がエストラジオールである、請求項1から4までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
トリプトレリン、又はトリプトレリン塩が、1日当たり約100 μgの速度で放出され、エストラジオールが、1日当たり約25〜約50 μgの速度で放出される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前立腺癌の治療方法であって:
前立腺癌患者に、該患者の化学的去勢を誘発して維持するのに十分な速度で、約1ヶ月以上の期間にわたってゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を放出することができるゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の持続放出配合物を投与し、そして
同時に、男性患者を化学的去勢するゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を投与することによって通常引き起こされる骨ミネラル濃度損失の促進又はホットフラッシュを低減するのに十分な血清レベルを前記期間にわたって維持することができるエストロゲン組成物の該持続放出配合物を、該患者に投与する
ことを含む、前立腺癌の治療方法。
【請求項11】
前立腺癌の治療方法であって:
前立腺癌患者に、1日当たり約10〜約1,000 μgの平均速度で、約1ヶ月以上の期間にわたって該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を放出することができるゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の持続放出配合物を投与し、そして、
同時に、少なくとも第1初期段階と第2段階とを含むプロフィール下で、エストロゲン組成物の持続放出配合物を該患者に投与することを含み、前記第2段階経過中のエストロゲン組成物の放出速度が1日当たり約10〜約100 μgのエストラジオール当量であり、前記第1初期段階経過中の該エストロゲン組成物の放出量が、前記第2段階中に発生する該エストロゲン組成物の一日放出上限量の5倍を決して超えない、
前立腺癌の治療方法。
【請求項12】
前立腺癌の治療方法であって:
前立腺癌患者に、1日当たり約10〜約1,000 μgの平均速度で、約1ヶ月以上の期間にわたって該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を放出することができるゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の持続放出配合物を投与し、そして、
同時に、少なくとも第1初期段階と第2段階とを含むプロフィール下で、エストロゲン組成物の持続放出配合物を該患者に投与することを含み、前記第2段階経過中のエストロゲン組成物の放出速度が1日当たり約10〜約100 μgのエストラジオール当量であり、前記第1初期段階経過中の該エストロゲン組成物の放出量が、前記第2段階中に発生する該エストロゲン組成物の一日放出上限量の5倍を決して超えない、
前立腺癌の治療方法。
【請求項13】
該ゴナドトロピン放出ホルモン組成物が、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモンのアゴニスト、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモンのアンタゴニスト及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物が、ロイプロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、ナファレリン、デスロレリン、ヒステレリン、ゴナドレリン、並びにこれらの塩及び混合物から成る群から選択されたゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン・アゴニストである、請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
該エストロゲン組成物が、クロロトリアニセン、ジエンストロール、ジエチルスチルベストロール、ジエチルスチルベストロールジプロピオネート、ジエチルスチルベストロールモノベンジルエーテル、エキレリニン、エキレリニンスルフェート、エステトロール、エストラジオール、(3α,17β)-エストル-4-エン-3,17-ジオール、エストリオール、エストリオールヘミスクシネート、エストロン、エストロンスルフェートモノナトリウム、エストロンカリウムスルフェート、エチニルエストラジオール、フォスフェストロールテトラナトリウム、ヘキセストロール、ヒドロキシエストロンジアセテート、メストラノール、ピネストロール、ピペラジンエストロンスルフェート、プロメストリエン、キネストロール、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物が、トリプトレリン又はその塩であり、該エストロゲン組成物がエストラジオールである、請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
トリプトレリン、又はトリプトレリン塩が、1日当たり約100 μgの速度で放出され、エストラジオールが、1日当たり約25〜約50 μgの速度で放出される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
該組成物が皮下、筋内又は経皮経路で投与される、請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の第一持続放出配合物と、エストロゲン組成物の第二持続放出配合物とを含む組成物であって:
ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の該第一持続放出配合物が、男性患者の化学的去勢を誘発して維持するのに十分な速度で、約1ヶ月以上の期間にわたって該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を放出することができ、そして
エストロゲン組成物の該第二持続放出配合物が、男性患者を化学的去勢するゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を投与することによって通常引き起こされる骨ミネラル濃度損失の促進又はホットフラッシュを低減するのに十分な血清レベルを前記期間にわたって維持することができ、
ここで該第二持続放出配合物が、少なくとも第1初期段階と第2段階とを含むプロフィール下で、エストロゲン組成物を放出し、前記第2段階経過中のエストロゲン組成物の放出速度が1日当たり約10〜約100 μgのエストラジオール当量であり、前記第1初期段階経過中の該エストロゲン組成物の放出量が、前記第2段階中に発生する該エストロゲン組成物の一日放出量の5倍を決して超えない、
組成物。
【請求項2】
ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の前記第一持続放出配合物が、1日当たり約10〜約1,000 μgの速度で、該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を放出することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の第一持続放出配合物と、エストロゲン組成物の第二持続放出配合物とを含む組成物であって:
ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の該第一持続放出配合物が、1日当たり約10〜約1,000 μgの平均速度で、約1ヶ月以上の期間にわたって該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を放出することができ、そして
エストロゲン組成物の該第二持続放出配合物が、少なくとも第1初期段階と第2段階とを含むプロフィール下で、エストロゲン組成物を放出することができ、前記第2段階経過中のエストロゲン組成物の放出速度が1日当たり約10〜約100 μgのエストラジオール当量であり、前記第1初期段階経過中の該エストロゲン組成物の放出量が、前記第2段階中に発生する該エストロゲン組成物の一日放出上限量の5倍を決して超えない、
組成物。
【請求項4】
該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物が、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモンのアゴニスト、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモンのアンタゴニスト及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物が、ロイプロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、ナファレリン、デスロレリン、ヒステレリン、ゴナドレリン、並びにこれらの塩及び混合物から成る群から選択されたゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン・アゴニストである、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
該エストロゲン組成物が、クロロトリアニセン、ジエンストロール、ジエチルスチルベストロール、ジエチルスチルベストロールジプロピオネート、ジエチルスチルベストロールモノベンジルエーテル、エキレリニン、エキレリニンスルフェート、エステトロール、エストラジオール、(3α,17β)-エストル-4-エン-3,17-ジオール、エストリオール、エストリオールヘミスクシネート、エストロン、エストロンスルフェートモノナトリウム、エストロンカリウムスルフェート、エチニルエストラジオール、フォスフェストロールテトラナトリウム、ヘキセストロール、ヒドロキシエストロンジアセテート、メストラノール、ピネストロール、ピペラジンエストロンスルフェート、プロメストリエン、キネストロール、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
該ゴナドトロピン放出ホルモン組成物が、トリプトレリン又はその塩であり、該エストロゲン組成物がエストラジオールである、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
トリプトレリン、又はトリプトレリン塩が、1日当たり約100 μgの速度で放出され、エストラジオールが、1日当たり約25〜約50 μgの速度で放出される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前立腺癌の治療方法であって:
前立腺癌患者に、該患者の化学的去勢を誘発して維持するのに十分な速度で、約1ヶ月以上の期間にわたってゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を放出することができるゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の持続放出配合物を投与し、そして
同時に、男性患者を化学的去勢するゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を投与することによって通常引き起こされる骨ミネラル濃度損失の促進又はホットフラッシュを低減するのに十分な血清レベルを前記期間にわたって維持することができるエストロゲン組成物の該持続放出配合物を、該患者に投与する
ことを含む、前立腺癌の治療方法。
【請求項10】
前立腺癌の治療方法であって:
前立腺癌患者に、1日当たり約10〜約1,000 μgの平均速度で、約1ヶ月以上の期間にわたって該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を放出することができるゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の持続放出配合物を投与し、そして、
同時に、少なくとも第1初期段階と第2段階とを含むプロフィール下で、エストロゲン組成物の持続放出配合物を該患者に投与することを含み、前記第2段階経過中のエストロゲン組成物の放出速度が1日当たり約10〜約100 μgのエストラジオール当量であり、前記第1初期段階経過中の該エストロゲン組成物の放出量が、前記第2段階中に発生する該エストロゲン組成物の一日放出上限量の5倍を決して超えない、
前立腺癌の治療方法。
【請求項11】
前立腺癌の治療方法であって:
前立腺癌患者に、1日当たり約10〜約1,000 μgの平均速度で、約1ヶ月以上の期間にわたって該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を放出することができるゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の持続放出配合物を投与し、そして、
同時に、少なくとも第1初期段階と第2段階とを含むプロフィール下で、エストロゲン組成物の持続放出配合物を該患者に投与することを含み、前記第2段階経過中のエストロゲン組成物の放出速度が1日当たり約10〜約100 μgのエストラジオール当量であり、前記第1初期段階経過中の該エストロゲン組成物の放出量が、前記第2段階中に発生する該エストロゲン組成物の一日放出上限量の5倍を決して超えない、
前立腺癌の治療方法。
【請求項12】
該ゴナドトロピン放出ホルモン組成物が、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモンのアゴニスト、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモンのアンタゴニスト及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項9から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物が、ロイプロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、ナファレリン、デスロレリン、ヒステレリン、ゴナドレリン、並びにこれらの塩及び混合物から成る群から選択されたゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン・アゴニストである、請求項9から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
該エストロゲン組成物が、クロロトリアニセン、ジエンストロール、ジエチルスチルベストロール、ジエチルスチルベストロールジプロピオネート、ジエチルスチルベストロールモノベンジルエーテル、エキレリニン、エキレリニンスルフェート、エステトロール、エストラジオール、(3α,17β)-エストル-4-エン-3,17-ジオール、エストリオール、エストリオールヘミスクシネート、エストロン、エストロンスルフェートモノナトリウム、エストロンカリウムスルフェート、エチニルエストラジオール、フォスフェストロールテトラナトリウム、ヘキセストロール、ヒドロキシエストロンジアセテート、メストラノール、ピネストロール、ピペラジンエストロンスルフェート、プロメストリエン、キネストロール、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項9から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物が、トリプトレリン又はその塩であり、該エストロゲン組成物がエストラジオールである、請求項9から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
トリプトレリン、又はトリプトレリン塩が、1日当たり約100 μgの速度で放出され、エストラジオールが、1日当たり約25〜約50 μgの速度で放出される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該組成物が皮下、筋内又は経皮経路で投与される、請求項9から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の第一持続放出配合物と、エストロゲン組成物の第二持続放出配合物とを含む組成物の使用であって、
ここで
ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の該第一持続放出配合物が、男性患者の化学的去勢を誘発して維持するのに十分な速度で、約1ヶ月以上の期間にわたって該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を放出することができ、そして
エストロゲン組成物の該第二持続放出配合物が、男性患者を化学的去勢するゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を投与することによって通常引き起こされる骨ミネラル濃度損失の促進又はホットフラッシュを低減するのに十分な血清レベルを前記期間にわたって維持することができ、前記血清レベルのエストラジオール当量が約50pg/ml未満である、
使用。
【請求項19】
前立腺癌を患う患者の前立腺癌の治療のための医薬品の調製のための、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の第一持続放出配合物と、エストロゲン組成物の第二持続放出配合物とを含む組成物の使用であって、当該第一持続放出配合物と当該第二持続放出配合物が前記患者に同時に投与され、
ここで
ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物の該第一持続放出配合物が、1日当たり約10〜約1,000 μgの平均速度で、約1ヶ月以上の期間にわたって該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物を放出することができ、そして
エストロゲン組成物の該第二持続放出配合物が、少なくとも第1初期段階と第2段階とを含むプロフィール下で、エストロゲン組成物を放出することができ、前記第2段階経過中のエストロゲン組成物の放出速度が1日当たり約10〜約100 μgのエストラジオール当量であり、前記第1初期段階経過中の該エストロゲン組成物の放出量が、前記第2段階中に発生する該エストロゲン組成物の一日放出上限量の5倍を決して超えない、
使用。
【請求項20】
該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物が、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモンのアゴニスト、ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモンのアンタゴニスト及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項18又は19に記載の使用。
【請求項21】
該ゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン組成物が、ロイプロレリン、ゴセレリン、トリプトレリン、ブセレリン、ナファレリン、デスロレリン、ヒステレリン、ゴナドレリン、並びにこれらの塩及び混合物から成る群から選択されたゴナドトロピン・ホルモン放出ホルモン・アゴニストである、請求項18又は19に記載の使用。
【請求項22】
該エストロゲン組成物が、クロロトリアニセン、ジエンストロール、ジエチルスチルベストロール、ジエチルスチルベストロールジプロピオネート、ジエチルスチルベストロールモノベンジルエーテル、エキレリニン、エキレリニンスルフェート、エステトロール、エストラジオール、(3α,17β)-エストル-4-エン-3,17-ジオール、エストリオール、エストリオールヘミスクシネート、エストロン、エストロンスルフェートモノナトリウム、エストロンカリウムスルフェート、エチニルエストラジオール、フォスフェストロールテトラナトリウム、ヘキセストロール、ヒドロキシエストロンジアセテート、メストラノール、ピネストロール、ピペラジンエストロンスルフェート、プロメストリエン、キネストロール、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項18又は19に記載の使用。
【請求項23】
該ゴナドトロピン放出ホルモン組成物が、トリプトレリン又はその塩であり、該エストロゲン組成物がエストラジオールである、請求項18又は19に記載の使用。
【請求項24】
トリプトレリン、又はトリプトレリン塩が、1日当たり約100 μgの速度で放出され、エストラジオールが、1日当たり約25〜約50 μgの速度で放出される、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
該組成物が皮下、筋内又は経皮経路で投与される、請求項18又は19に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−525306(P2006−525306A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506555(P2006−506555)
【出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001334
【国際公開番号】WO2004/096259
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(302033827)デビオファーム ソシエテ アノニム (6)
【Fターム(参考)】