説明

ゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置およびその加硫限界特定方法

【課題】ゴムの加圧加硫終了時、除圧して取り出したゴム試料の内部発泡を抑制する最小限の加硫度を、小型の試験片の加硫で特定する。
【解決手段】開示される発泡限界加硫度試験装置は、上下対称の金型面の凹部23,30で長手方向に深さが変わるダイキャビティを形成し、ダイキャビティの長軸方向に試料空間54を持つ、試料ゴムと同等の熱拡散定数を持つ試料装填用枠50の厚さ中心線上に、爪状突起部52で熱接点44を金属細管の管壁に形成した温度センサ40を把持して、試料空間の厚さ中心線上の試料ゴムの温度を計測し、上部金型6の下降時、下部金型7と圧着して試料空間の未加硫試料ゴムを加圧加硫する加圧機構と、試料ゴムの加圧加硫後、加圧機構の圧力を開放して加圧時の板バネ12の反力で上部金型の押し上げ状態を保持する除圧保持機構とを備え、除圧保持終了時、加硫済みゴム試験片の厚さ中心部の昇温曲線と発泡境界厚さから試料ゴムのブローポイントを特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゴム試料の加圧加硫を終了する際に、除圧して取り出したゴム試料の内部発泡を抑制するための必要最小限度の加硫度を、小型の試験片の加硫によって特定可能にするための、ゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置およびその加硫限界特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムは熱の不良導体であって、例えば肉厚ゴム片を両面から加熱すると、肉厚の中心部分は表層部に比べて昇温が遅れる。ゴム製品の生産工程において、必要な充填材や配合薬品を混合済みの未加硫ゴムに熱と圧力を加える加圧加硫工程では、もしも、昇温の遅い肉厚中心部が十分に加硫されていない "生焼け" の状態で加圧加硫を終了してから、除圧して加硫装置から取り出すと、その生焼け部分に微細な気泡(ブローン)が発生する。
一般に、ブローンの存在は、そのゴム製品の使用時に、種々の不具合を生じる原因となることが知られている。特に、自動車用タイヤ等の場合には、製造時のブローンが残存するような生焼け部分を含む製品が出荷されると、高速走行時にタイヤのバースト破壊を誘発することとなり、人命にかかわる事故の原因となるだけに重要視されている。
【0003】
一方、生焼け防止のために、加圧加硫の継続時間をいたずらに長くすることは、熱エネルギーの浪費や生産速度の低下等の原因となるだけでなく、余分な加熱処理自体がゴムの材質を劣化させて、種々の材料特性を損なう原因となるので、加圧加硫時間を必要最小限度に抑えたいという工業的要求が存在する。
そこで、被加硫物の内部の伝熱遅れに基づく加硫不足が危惧されるような部分においても、気泡が一切存在しないような被加硫物を得るための、必要最小限度の加硫度(以下、これをブローポイントと呼ぶ)を特定するための試験方法を確立しておくことが重要となる。
本発明は、ブローポイントを特定するための、ゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置およびその加硫限界特定方法を提供することを目的としている。
【0004】
次に、本発明と関わりの深い、三つの背景技術について概説する。
1.加硫度について
上述のように、ブローポイントは加硫度という物理尺度上の特定点である。加硫度は本来は、ゴム高分子の分子鎖間に形成される架橋点間網目鎖数密度で定義される加硫進行度を表す尺度であるが、実用的には、加硫度試験機(例えば周知の振動式加硫試験機)によって得られた加硫度曲線を解析することによって得られる工業尺度(一種の弾性率飽和度)によって代替できることが知られている。
この工業尺度は、架橋点間網目鎖数密度で定義される加硫進行度を表す学術的尺度に比べて測定が著しく容易であり、ゴム業界における普及度も極めて高いので、本発明においても、この尺度を用いることとする。
これについては、例えば非特許文献1(日本規格協会発行 日本工業規格 JIS K 6300−2第2部:振動式加硫試験機による加硫特性の求め方)に詳細に規定されている。
【0005】
図13は、非特許文献1に記載されている加硫曲線の解析方法を説明するものである。
図13の横軸(t)は加硫時間を示し、縦軸(M)は試験片を捩り振動させるためのトルク振幅を示している。この加硫度曲線は、前述の網目鎖数密度との間にほぼ直線的な関係が成立することが知られている。
図中の記号Mは、最小トルクMから最大トルクMに至る加硫度増加分の総量である。曲線上の任意の点の値をM(t) とすると、M(t) −MのMに対する比を百分率で表すことによって、加硫度を次式(1) で表すことができる。
加硫度= (( M(t) −M) /M) * 100% ・・・(1)
本発明においては、加硫度を上記式(1) によって求める。
【0006】
2.加硫速度の温度依存性に関するアレニウス(S.A.Arrhenius)の近似式と、等価加硫時間について
アレニウスによると、反応速度の温度依存性は次式(2) に従う。
k=A・exp[−Ea /RT〕 ・・・(2)
ここで、kは反応速度定数、Aは反応の頻度係数、Rは気体定数、Ea は見かけの活性化エネルギーであって、これらはその反応固有の定数である。式(2) は、多くの種類の反応への適合性が知られており、加硫反応もその一つであって、良好に適合することが知られている。
式(2) から得られる2温度間の反応速度比を用いて、時間とともに変化する温度T(t) と基準温度Tとにおける加硫反応の速度比を時間積分すると、温度履歴T(t) に等価なT保持時間を意味する等価加硫時間teq( T)を次式(3) によって求めることができる。なお、式(3) における定積分範囲を示す tは加熱開始時刻、 tは加熱終了時刻である。

【0007】
3.本発明によって測定される昇温曲線に関する理論式と熱拡散定数χの関係について熱伝導理論の教えるところによれば、両面から均一に加熱される平板における厚さ中心点の昇温曲線は指数型の無限級数で表されるが、昇温が開始されると級数の第2項以下は急速に減少してゼロに近づくので、昇温開始時の極めて初期の部分を除けば、昇温曲線はその第1項のみによって高精度に近似することができる。すなわち

ここで、Tは平板の初期温度、Tは平板の両面に熱接触させる熱源の温度、α(t) は平板の昇温不飽和度、hは厚さ中心点までの伝熱距離であって平板厚さの1/2 、t は熱接触させた瞬間からの経過時間、χは熱拡散定数であって、平板材質に固有の値 (単位: mm/sec) である。
【0008】
本発明において使用される、ダイキャビティの形状は平板ではなく、緩勾配の楔形であるが、勾配が小さいので上述の式(4) で良好に近似できる。式(4) の両辺の自然対数をとって整理すると
lnα(t) = ln (4 /π)−(πχ/4h)t ・・・(5)
となるので、lnα(t) と経過時間 tとの関係は負の勾配を持つ直線関係となり、負勾配の値から次式(6) によって熱拡散定数χが求められる。
χ=負勾配×4h/π ・・・(6)
【0009】
次に従来の技術について説明する。
従来、ブローポイント特定のための実験手段としては、加硫しようとする実製品や、厚手の未加硫試験片に熱電対を埋設して、加硫中の昇温曲線と加硫後のカット面の気泡の観察結果とからブローポイントを特定する方法が用いられてきたが、この方法では、ブローポイントの特定精度が低く、かつ、実験の手間と費用が大きいという難点があった。
このような旧式の方法に対して、簡単な操作で高いブローポイント特定精度が得られる飛躍的に進んだ方法として、特許文献1(特公平7−18870号公報)記載の方法が提案されている。以下、特許文献1記載の従来技術について概説する。
【0010】
図14は、特許文献1に記載された装置の実施例の一部であって、特許文献1記載の発明の核心をなすブローポイント特定用の金型を示したものである。
図14において、(a) は金型の長手方向の垂直断面図、(b) はこれと直角方向の垂直断面図である。
【0011】
図14の中央部の25で示す空間は、未加硫ゴム試料を加圧充填するための空間であって、キャビティと呼ばれる部分である。キャビティ25の形状は、図14(b) に示す断面では水平方向に長い長方形をなしているが、図14(a) に示す断面では、図示のように、緩勾配を持った楔形をなしており、そのため、充填した未加硫ゴム試料はキャビティの長手方向に対して、厚さ勾配を持っている。
キャビティ25の容積に対して、少し多めに裁断した未加硫ゴム試料を、加硫金型3の上型部分3と下型部分3とが開いた状態でキャビティ25に置き、型締め機構(不図示)で加圧して、余分の未加硫ゴム試料がキャビティ25から流出し終わったタイミングを狙って、加硫金型3の側壁に保持されている、先端に感熱部を有する細管状の熱電対(不図示)を未加硫ゴム試料の中へ突き刺す。
【0012】
加硫金型3の側壁には、図14(a) に示すように、複数個の貫通孔21が等間隔に設けられていて、熱電対は各貫通孔21を通って、その先端部が図14(b) に示すキャビティ25の長方形の中心に届くように、未加硫ゴム試料の厚さ方向の中心線に沿って圧入される。
図14(b) に示す断面図の右端の26,28,31,40は、熱電対を未加硫ゴム試料の厚さ中心線上に保持するための熱電対保持機構、29,30,32は、熱電対を未加硫ゴム試料に圧入するための熱電対圧入機構である。
【0013】
このような方法によれば、それ以前の方法では不可欠であった、予め熱電対を未加硫ゴム試料内に埋設しておくという厄介な作業が不要になるため、実験の操作が著しく簡略化される。
しかしながらその見返りとして、加硫金型3の側壁の熱電対保持機構部分からの伝熱によって、未加硫ゴム試料に圧入前に、熱電対がほぼ加硫金型3の温度まで加熱されてしまうという難点があった。
【特許文献1】特公平07−018870号公報
【非特許文献1】日本規格協会発行 JIS K 6300−2(2001)第2部:振動式加硫試験機による加硫特性の求め方
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図15は、特許文献1に開示された方法によって得られる未加硫ゴム試料の昇温特性を例示したものである。
特許文献1記載の方法によって得られる未加硫ゴム試料の昇温特性は単調増加の曲線とはならず、図15に "測定温度" として例示されるように、下降部分を経てから上昇部分へ移行する形の曲線を描く。
以下、このような昇温特性を示す理由を説明する。
【0015】
未加硫ゴム試料に圧入される前の熱電対は、図14(b) に示す熱電対保持機構26,28,31,40を介して、加硫金型3から伝わる熱によって、金型温度の近くまで加熱されているが、未加硫ゴム試料を圧入される際に試料ゴムによって冷却されるため、測定温度には必然的にAゾーンに示すような下降部分が現われる。
一方、未加硫ゴム試料は室温の状態で加硫金型3に投入されたのち、単純に加熱のみが行われるので、当然、上記のような下降部分は現われず、 "真の温度" として例示されているような、単調増加曲線を描く。
【0016】
ブローポイント特定という目的の上から本来、必要なのは "真の温度" の部分であるから、 "測定温度" と "真の温度" との間の温度差は、そのまま試料ゴム温度の推定誤差を示すことになる。この誤差は加硫開始時には大きいが、時間の経過とともに減少するので、前述の特許文献1記載の技術では、誤差がなるべく小さくなるように、熱電対保持機構部分に断熱の工夫を施し、その上で、測定温度におけるAゾーンに示された下降部分のデータを無視して、Bゾーンに示す上昇部分のデータのみを解析に使用することによって、試料ゴム温度の測定誤差の影響を除くようにしている。
【0017】
これに対して、本発明方式のように試料ゴムの昇温曲線から、未加硫ゴム試料の昇温特性を第一義的に支配する熱拡散定数(χ)を求め、定数χの値を用いて、任意の厚さの未加硫試料ゴムにおける厚さ中心の昇温曲線を逆算可能にすることが望ましいが、このような高度の利用方法を展開する上で、上述の "測定温度" と "真の温度" との温度差は、データ解析上の大きな障害となる。
そこで、 "測定温度" と "真の温度" との温度差が生じないようにするために、特許文献1記載の従来技術で採用していた "センサ差し込み方式" に代わる、ブローポイント特定のための新たな方式の実現が要望されていたが、従来、このような方式は提案されていないという問題があった。
【0018】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであって、ブローポイント特定のためのゴム加硫度試験装置の新たな方式として、センサ差し込み方式に代えて "センサ挟み込み方式" を提案することによって、上記課題の根本的解決を図ることを目的としている。
以下、これをやや具体的に説明すると、
(1) 金属細管の途中に1点又は数点の熱接点を露出させた特殊な熱電対センサと、
(2) この熱電対センサの金属細管をダイキャビティの楔状空間の厚さ中心面に正確に保持し、かつ、中央に細長い試料空間を形成する、未加硫ゴム試料と近似したχ値を有する物質で作成された試料装填用枠と、
(3) 試料空間の容積を僅かに上回る体積を有する、単純形状に裁断された未加硫ゴム試験片と、
を室温で組み合わせ、均一な加硫温度に調節された加硫用金型へ一括して投入して加圧加硫することによって、従来技術では不可能とされていた、試料ゴムの真の昇温曲線を高精度に計測可能とする。
【0019】
さらに入手した昇温曲線に昇温理論式を適用して、試料ゴムの熱拡散定数χの正確な値を求め、χ値から任意の厚さのゴム試料片を両面加熱したときの肉厚中心の昇温曲線を逆算可能とし、その逆算式に加硫済みゴム試験片の水平カット面観察により判定した発泡限界厚さのデータを代入することによって、発泡限界部分の正確な昇温曲線の数式表示を可能とする。
そしてこの昇温曲線とゴム試料の活性化エネルギーとから、発泡限界部分の熱履歴に等価な基準温度保持時間、すなわち等価加硫時間を求め、この値を同一試料,同一基準温度の加硫度曲線に当てはめて、目的とする発泡限界加硫度を特定する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明はゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置に係り、上下対称をなす一対の金型の面にそれぞれ設けられた凹部によって、長手方向に深さが変化する長方形ダイキャビティを形成する加硫金型と、上記ダイキャビティに収納可能な形状を有し、上記ダイキャビティの長軸と平行に試料ゴム充填用の細長い試料空間を持つ枠形からなるとともに、該枠に連接して上記ダイキャビティの長軸方向の厚さ中心線上に温度センサを把持するための爪状突起部を有し、試料ゴムと同等または近似の熱拡散定数を有する材料からなる試料装填用枠と、金属細管に収容した熱電対線によって、一又は複数の熱接点を上記金属細管の管壁に形成し、上記爪状突起部によって上記試料装填用枠内に把持されたとき、上記試料空間の厚さ中心線上における試料ゴムの温度を計測する温度センサと、上部金型を下降させたとき、下部金型と圧着して上記試料空間に装填された未加硫試料ゴムを加熱して加圧加硫する加圧機構と、試料ゴムを所定時間加圧加硫したのち、上記加圧機構の圧力を大気圧に開放することによって、加圧によってバネに蓄えられた反力によって上部金型が僅かに押し上げられる状態を保持する除圧保持機構とを備え、上記除圧保持状態の終了時、上記試料装填用枠から取り出した加硫済みゴム試験片の厚さ中心部の昇温曲線から、試料ゴムのブローポイントを特定することを特徴としている。
【0021】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置に係り、上記加硫済みゴム試験片を、試料を所定位置に保持する機能を有する試料ホルダ付き裁断機によって、その厚さ中心面に沿って裁断することを特徴としている。
【0022】
また、請求項3記載の発明は、ゴムサンプルの加硫限界特定方法に係り、請求項1又は2記載のゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置において、上下対称をなす一対の金型の面にそれぞれ設けられた凹部によって、長手方向に深さが変化する長方形ダイキャビティを形成する加硫金型と、上記ダイキャビティに収納可能な形状を有し、上記ダイキャビティの長軸と平行に試料ゴム充填用の細長い試料空間を持つ枠形からなるとともに、該枠に連接して上記ダイキャビティの長軸方向の厚さ中心線上に温度センサを把持するための爪状突起部を有し、試料ゴムと同等または近似の熱拡散定数を有する材料からなる試料装填用枠と、金属細管に収容した熱電対線によって、一又は複数の熱接点を上記金属細管の管壁に形成し、上記爪状突起部によって上記試料装填用枠内に保持されたとき、上記試料空間の厚さ中心線上における試料ゴムの温度を計測する温度センサと、上部金型を下降させたとき、下部金型と圧着して上記試料空間に装填された未加硫試料ゴムを加熱して加圧加硫する加圧機構と、試料ゴムを所定時間加圧加硫したのち上記加圧機構の圧力を大気圧に開放することによって、加圧によってバネに蓄えられた反力によって上部金型が僅かに押し上げられる状態を保持する除圧保持機構とを設け、上記除圧保持状態の終了時、上記試料装填枠から取り出した加硫済みゴム試験片の厚さ中心部の昇温曲線から、試料ゴムのブローポイントを特定することを特徴としている。
【0023】
また、請求項4記載の発明は、ゴムサンプルの加硫限界特定方法に係り、請求項3記載のゴムサンプルの加硫限界特定方法において、上記加硫済みゴム試験片を、試料を所定位置に保持する機能を有する試料ホルダ付き裁断機によって、その厚さ中心面に沿って裁断することを特徴としている。
【0024】
また、請求項5記載の発明は、ゴムサンプルの加硫限界特定方法に係り、請求項3又は4記載のゴムサンプルの加硫限界特定方法において、測定されたゴム試料片の厚さ中心線上の特定点の昇温曲線T(t) と測温点のゴム試料片の厚さ (2h)とから試料ゴムの熱拡散定数(χ)を求め、加硫済みゴム試験片の厚さ中心裁断面の観測によって判定した発泡境界部分の厚さ (h)と上記χ値から発泡境界部分の厚さ中心の昇温曲線 (T(t))を推定し、上記ゴム試料を構成する配合ゴムについて予め測定し又は推定した加硫活性化エネルギー(Ea )と上記昇温曲線 (T(t))にアレニウスの式を適用して、基準温度(T)に換算した等価加硫時間(teq.B(T)) を求め、該等価加硫時間値を同一配合のゴム試料について予め加硫度試験機で測定した加硫度曲線に適用して発泡抑制に最小限必要な加硫度(ブローポイント)を特定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
この発明のゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置及びゴムサンプルのブローポイント特定方法によれば、試料ゴムの加圧加硫を終了する際に、除圧して取り出したゴム試料の内部発泡を抑制するために最小限必要な加硫度を、小型の試験片の加硫によって特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
上下対称をなす一対の金型の面にそれぞれ設けられた凹部によって、長手方向に深さが変化する長方形ダイキャビティを形成する加硫金型と、ダイキャビティに収納可能な形状を有し、ダイキャビティの長軸と平行に試料ゴム充填用の細長い試料空間を持つ枠形からなるとともに、この枠に連接してダイキャビティの長軸方向の厚さ中心線上に温度センサを把持するための爪状突起部を有し、試料ゴムと同等または近似の熱拡散定数を有する材料からなる試料装填用枠と、金属細管に収容した熱電対線によって、一又は複数の熱接点を金属細管の管壁に形成し、爪状突起部によって試料装填用枠内に把持されたとき、試料空間の厚さ中心線上における試料ゴムの温度を計測する温度センサと、上部金型を下降させたとき、上部金型と圧着して試料空間に装填された未加硫試料ゴムを加熱して加圧加硫する加圧機構と、試料ゴムを所定時間加圧加硫したのち、加圧機構の圧力を大気圧に開放することによって、加圧によってバネに蓄えられた反力によって上部金型が僅かに押し上げられる状態を保持する除圧保持機構とを備え、
除圧保持状態の終了時、試料装填枠から取り出した加硫済みゴム試験片の厚さ中心部の昇温曲線から、試料ゴムのブローポイントを特定する。
【実施例】
【0027】
以下、この発明のゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置の好適な実施の形態について図を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例である発泡限界加硫度試験装置の全体構成を示す図、図2は、下部金型の構造を示す図、図3は、上部金型の構造を示す図、図4は、本実施例で用いられる温度センサを示す図、図5は、試料装填用枠を示す図、図6は、下部金型に試料装填用枠と温度センサを組み合わせた状態を示す組立図、図7は、中子を示す図、図8は、ダイキャビティの長軸に直交する断面におけるゴム試験片の気泡の分布状態を示す模式図、図9は、本発明の発泡限界加硫度試験装置で測定した昇温曲線の一例を示す図、図10は、昇温不飽和度α(t) の自然対数と時間の関係を示す図、図11は、ゴム試料の熱拡散定数(χ)のばらつきを例示する図、図12は、振動式加硫度試験機を用いて得た加硫度曲線を示す図である。
【0028】
最初に、この例のゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置の全体構成と、主要部分の構造とについて説明する。
図1は、この例の発泡限界加硫度試験装置の全体構成を例示したものであって、立面図によって示されている。
図1において、上部ベース板1は下部ベース板2上に支柱3によって支持されてフレーム構造を形成し、その内側にこの例の発泡限界加硫度試験装置の主要各部を収容する。上部均熱板4は、その下部に上部金型6を支持して均熱状態に保つ。下部均熱板5は、その上部に下部金型7を支持して均熱状態に保つ。上部金型6と下部金型7は、対向する内側の凹部によってダイキャビティを形成する。両軸式エアシリンダ8は、上下に貫通した軸を有し、軸の昇降に応じて、軸の下端に接続された昇降ベース9を上下に昇降させるとともに、軸の上端を板バネ12を介して当て板13に固定されることによって、昇降ベース9の降下に伴う上部金型6と下部金型7の圧着位置において、板バネ12の圧縮に基づいて軸に上向きの反力を発生させる。昇降ベース9は、両軸式エアシリンダ8の軸の昇降に応じて下部に配置された上部金型6を上下に移動させる。上部断熱スペーサ10aは硬質断熱材からなり、上部均熱板4からの熱漏れを抑制する。下部断熱スペーサ10bは硬質断熱材からなり、下部均熱板5からの熱漏れを抑制する。上部均熱ガード11aは上部金型6の周囲を井桁状に取り囲む軽合金角棒製の部材からなり、上部金型6の側面からの放熱を防止する。下部均熱ガード11aは下部金型7の周囲を井桁状に取り囲む軽合金角棒製の部材からなり、下部金型7の側面からの放熱を防止する。
【0029】
図2は、下部金型7の構造を例示したものであって、(a) は平面図を示し、(b) は立面図を示している。
図2において、外周面15は金属製の下部金型7の平面からなる上面における、最外周の枠形の面であって通常、長方形をなしている。食いきり受圧面16は外周面15の内側をバリ溝17を挟んで一周する面であって外周面15と同一平面をなしている。バリ溝17は、外周面15と食いきり受圧面16とを隔てる溝状の構造物である。左右の位置合わせ用ピン18,19は、外周面15上に突起して設けられていて、一方の位置合わせ用ピン18の内部には、温度センサ(後述)の円柱金具を挿入するための円柱金具挿入用孔20が設けられているとともに、温度センサのステンレス細管(後述)を収容するためのスリット21が設けられている。他方の位置合わせ用ピン19には、円柱金具挿入用孔はなく、温度センサのステンレス細管を収容するためのスリット22のみが設けられている。また、食いきり受圧面16の内側には、試料装填用枠(後述)を収容するための凹部23が設けられている。
【0030】
図3は、上部金型6の構造を例示したものであって、(a) は底面図を示し、(b) は立面図を示している。
図3において、外周面25は金属製の上部金型6の平面からなる底面における、最外周の枠形の面であって、下部金型7の外周面15と対応する形状を有している。食いきり受圧面26は外周面25の内側をバリ溝27を挟んで一周する面であって、外周面25と同一平面をなし、下部金型7の食いきり受圧面16と対応する形状を有している。バリ溝27は、外周面25と食いきり受圧面26とを隔てる溝状の構造物であって、下部金型7のバリ溝17と対応する形状を有している。左右の位置合わせ用ピン孔28,29は、外周面25を貫通して設けられた円柱状の孔であって、下部金型7の位置合わせ用ピン18,19がそれぞれ嵌合するように構成されている。
また、食いきり受圧面26の内側には、試料装填用枠(後述)を収容するための凹部30が設けられている。
【0031】
図2に示す下部金型7と、図3に示す上部金型6とを、位置合わせ用ピン18,19と、位置合わせ用ピン孔28,29とによって位置合わせして圧着した状態では、下部金型7の凹部23と上部金型6の凹部30とは合体して、ダイキャビティと呼ばれる一つの空間を形成する。ダイキャビティの形状は、立面図上では、下部金型6と上部金型7とを組み合わせることによって形成される、長手方向の一端が薄く、他端へ向かってテーパー状に厚くなる楔状をなしている。
【0032】
図4は、この例のゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置で用いられる温度センサ40を例示したものであって、(a) は平面図を示し、(b) は立面図を示している。なお、図4(a) に1点鎖線で併記した楔状の輪郭線は、温度センサと前記ダイキャビティとの位置関係を示す。
図4において、ステンレス細管41は素材の状態では、円形断面を有する直線状のステンレス管からなり、その中間の管壁に複数個の小穴42が形成されている。またステンレス細管41は、これと直交する円柱金具43を貫通する構造を有している。ステンレス細管41の小穴42には、熱電対を構成する異種金属からなる細線対(不図示)の先端を鑞付けして、鑞付けによる表面の膨らみをステンレス細管41の円筒面に合わせてトリミング加工して、それぞれ温度センサの接地形熱接点44(ch1〜ch4)を形成する。
【0033】
図5は、試料装填用枠50を例示したものであって、(a) は平面図を示し、(b) は図示のA−A’断面を立面図によって示している。
図5において、センサ挿入用溝51は、温度センサ40を挿入するための溝である。爪状突起部52はその中間のセンサ把持用溝53に、温度センサ40のステンレス細管41を把持する。
試料装填用枠50は、下部金型7と上部金型6とによって形成されるダイキャビティに適合した大きさと形状を有し、その内部にブローポイントを測定しようとするゴム試料を装填するための試料空間54を有している。試料装填用枠50は、ダイキャビティ内に温度センサ40と組み合わせた状態で装着されたとき、3箇所の爪状突起部52と位置合わせ用ピン18,19によって、温度センサ40をダイキャビティ内の所定位置の厚さ中心面に把持する。
【0034】
次に、この例のゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置の動作について、各部の構成と関連付けながら説明する。
最初に、この例のゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置の動作とその構成との関係について説明する。
【0035】
この例のゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置は、図1に例示されたような、一種の熱プレスからなっていて、上下に配置された上部ベース板1と下部ベース板2とを支柱3で接続して構成した頑丈なフレーム構造の内側に、上部均熱板4と下部均熱板5を配置するとともに、さらにその内側に上部金型6と下部金型7とを配置し、上部ベース板1上に搭載した両軸式エアシリンダ8の軸の下端に昇降ベース9を介して上部均熱板4を接続して、両軸式エアシリンダ8の軸の昇降によって上部金型6と下部金型7とを開閉可能にするとともに、上部金型6の下降端で、上部金型6と下部金型7とが圧着するような配置に組み付けられている。
【0036】
また、上部均熱板4,下部均熱板5からの熱の漏洩を抑制するために、上部均熱板4と昇降ベース9との間及び下部均熱板5と下部ベース板2との間には、それぞれ硬質断熱材で製作した上部断熱スペーサ10a 及び下部断熱スペーサ10b を挟んで固定している。
上部均熱ガード11a 及び下部均熱ガード11b は、それぞれ上部金型6及び下部金型7の周囲を井桁状に取り囲む軽合金角棒製の部材であって、それぞれ上部金型6及び下部金型7の側面からの放熱を防止する。
さらに図示省略されているが、上部均熱板4と昇降ベース9、及び下部均熱板5と昇降ベース9の外周を、それぞれ断熱材で囲むことによって、上部金型6及び下部金型7の温度均一性をさらに向上させている。
【0037】
これらの均熱の配慮に加えて、上部均熱板4,下部均熱板5,上部金型6及び下部金型7の素材として、上部均熱ガード11a,下部均熱ガード11b と同様の高熱伝導材質を選択することによって、上部金型6,下部金型7の温度均一性は、本発明装置の目的を達成するのに十分なレベルまで高められている。
上部均熱板4及び下部均熱板5は、その内部に埋設した電熱ヒータ(不図示)と温度センサ(不図示)、及び外付けの温度調節器(不図示)によって加熱されて、上部均熱板4の下部に固定されている上部金型6及び下部均熱板5の上部に固定されている下部金型7を、極めて均一な一定温度に保つようになっている。
【0038】
両軸式エアシリンダ8の上軸には、ドーナツ形の板バネ12を嵌め込んで、上部金型6,下部金型7の圧着位置において、軸の上端に固定された当て板13によって板バネ12が圧縮されて、両軸式エアシリンダ8の軸に上向きの反力が加わるように構成されている。
この上向きの反力の強さは、両軸式エアシリンダ8の内圧を開放したときに、両軸式エアシリンダ8の軸とともに昇降する物体の総重量を押し上げて、上部金型6と下部金型7の間に数mmの隙間を形成する程度に設計されている。
【0039】
両軸式エアシリンダ8の動作は、連動する2個のタイマ(不図示)によって制御されるようになっている。第1のタイマは加圧加硫時間設定用であり、第2のタイマは除圧保持時間設定用である。
予め設定された加圧加硫終了時間になると、第1のタイマからの信号によって両軸式エアシリンダ8の内圧が大気圧まで開放され、同時に第2のタイマが動作を開始する。
板バネ12の反力によって、上部金型6と下部金型7の圧着面に隙間が開くと、それまで高圧に保持されていたゴム試料の内圧は瞬時にして大気圧まで低下し、高温高圧によってゴム試料内に閉じ込められていた種々の低沸点成分(例えば水分等)が一挙に気化しようとする。
そしてこの際、気泡発生を押さえ込むのに十分な弾性率レベルまで加硫が進行していなかった "生焼け状態”の部分には、生焼けの程度に応じて、ゴムの連続固相内に微細な気泡が発生する。これが除圧発泡のメカニズムである。
【0040】
除圧発泡によって発生した気泡は瞬時には膨張せず、ゴム特有の粘弾性によって気泡の膨張には若干の時間遅れがあり、そのため気泡が断面観察で見分けやすい大きさにまで拡大するには、ある程度の膨張待ちの時間を必要とする。
除圧発泡の際の膨張速度は温度に依存し、高温ほど速い。その理由は、膨張の原動力であるガス圧は高温ほど高く、一方、膨張に対する抵抗力であるゴムの破壊強度は、高温ほど低下するからである。
従って、速やかにかつ安定的に膨張過程を完了させるためには、加圧加硫時と同じ温度で無圧保持することが最適であるということになる。
【0041】
本発明の装置において採用されている除圧保持機構はそのための工夫であって、ゴム試験片は加圧加硫中と同じ温度で短時間、無圧状態に保持されるようになっているので、その間に気泡は急速に膨張して、断面観察によって識別しやすい大きさに成長する。
従来技術では、加硫済みのゴム試験片を保温箱に移して、数十分間放置してから断面観察のために裁断する方法がとられていたが、本発明の除圧保持方式の場合は、僅か30秒で膨張過程がほぼ終了し、それ以上保持時間を延長しても、気泡サイズには殆ど変化がないことが確認されている。
これによって、本発明方式の場合は試験能率が向上するだけでなく、保持温度と保持時間が安定するので、試験結果の再現性も向上する。
除圧保持時間の経過後、第2のタイマの終了信号によって、両軸式エアシリンダ8の動作が切り替えられて、上部金型6が上昇し、ゴム試料の交換が可能になる。
【0042】
図6は、図1に示された下部金型7と温度センサ40と試料装填用枠50とを組み合わせた状態を示す組み立て図であって、(a) は平面図を示し、(b) は立面図を示している。
図6(b) の中央の破線で併記した楔状の輪郭線はダイキャビティであって、下部金型7と上部金型6とを組み合わせることによって、凹部23と凹部30とによって形成される、長手方向の一端が薄く、他端に向かってテーパ状に厚くなるような楔形をなしている。なお、下部金型7と上部金型6とを組み合わせたとき、ダイキャビティの長方形空間の四辺が正確に合致するように、下部金型7の両端には位置合わせ用ピン18,19が突起し、上部金型6には位置合わせ用ピン18,19が嵌合する位置に位置合わせ用ピン孔28,29が設けられている。
さらに一方の位置合わせ用ピン18は、温度センサ40を位置合わせする役割を兼ねており、温度センサ40のステンレス細管41を挿入できるスリット21と、温度センサ40の付け根部分に固定される円柱金具43を挿入できる円柱金具挿入用孔20が設けられている。また、他方の位置合わせ用ピン18には円柱金具挿入用孔はなく、ステンレス細管41を挿入するためのスリット21だけが設けられている。
【0043】
本発明において使用される温度センサ40は、図4に示すようにして製作されたものである。
接地型熱接点44は、ステンレス細管41の途中に1点又は複数点設けられるものであり、図4においては4点(ch1〜ch4)の場合が例示されている。ステンレス細管41の径は、測温精度と曲げ強度との兼ね合いから、2mm程度とする。
熱電対を構成する両細線の他端は、図示されない計測回路に接続されることによって、計測回路から各接地型熱接点44の温度に対応する出力を発生する。
【0044】
この温度センサ40を、図6に示すように試料空間54の厚さ中心面に保持するのが試料装填用枠50の第1の効果である。
すなわち、図5に示すように、試料装填用枠50には、試料空間54の途中の3箇所で温度センサ40を挟み込む爪状突起部52が設けられており、温度センサ40はこの3箇所の爪状突起部52と位置合わせピン用ピン18,19によって試料空間54の厚さ中心面の所定位置に正確に保持される。
この場合、接地型熱接点44は、試料装填用枠50の所定の保持状態では、対向する爪状突起部52を構成する上下の両突起部間隔の中央の位置、すなわち試料装填用枠50の表面から最も離れた位置に配置される(試料装填用枠50の第1の効果)。
これは試料空間54のゴム試料と試料装填用枠50との間に熱拡散定数の小差が存在した場合、これによる温度データへの微細な影響をさらに圧縮して、影響されにくくするためである。
【0045】
ダイキャビティの内部には、試料装填用枠50と温度センサ40とを組み合わせた状態で装着する。試料装填用枠50の内部の細長い空間は試料空間54であって、未加硫ゴム試料を満たすために用いられる。
試料空間54の容積より若干多めの単純形状に裁断した未加硫ゴム試料を試料空間54上に載せ、試料装填用枠50と温度センサ40とともに一括してダイキャビティに置き、両軸式エアシリンダ8で上部金型6と下部金型7とを型締めすると、ゴム試料は未加硫ゴムの流動性によって試料空間54を完全に満たし、余剰のゴム試料はダイキャビティの外周に設けられたバリ溝17,27へ溢出する。
型締めの瞬間に始まる上部金型6と下部金型7の内壁からの熱伝導によって、未加硫ゴム試料と試料装填用枠50とは急速に昇温する。その際に、ダイキャビティの周辺部分では、上部金型6と下部金型7の側壁からの熱伝導が加算されるため、式(4) で表される昇温曲線から高速側へずれるが、この偏寄が生じる領域は試料装填用枠50の部分に留まり、中央の未加硫ゴム試料には及ばない。
試料装填用枠50は、このように周辺部のデータ偏寄領域を引き受けて、その影響が未加硫ゴム試料に及ばないようにする(試料装填用枠50の第2の効果)。
【0046】
さらに、試料装填用枠50の材質が持つ熱拡散定数(χ)の値を未加硫ゴム試料のそれと近似させておくことによって、試料装填用枠50の存在が未加硫ゴム試料の昇温曲線に与える影響を殆どゼロにすることができる(試料装填用枠50の第3の効果)。
【0047】
このように、試料装填用枠50が有する三つの効果によって、試料空間54で加圧加硫される未加硫ゴム試料片の厚さ中心断面は、その全域を発泡限界特定のための観察領域として利用でき、かつ、そこで測定された昇温曲線は、始点から終点までのほぼ全域を式(4) の近似対象として解析のために利用することができる。
熱拡散定数(χ)の値が未加硫ゴム試料に近似した試料装填用枠50を用意するためには、未加硫ゴム試料と同種の配合ゴム又は類似配合ゴム、又はフッソ樹脂(PTFE)等の耐熱性樹脂材料を用いて試料装填用枠50を形成すればよい。
以下、試料装填用枠50の製作方法を説明する。
【0048】
図7は、図6に示された試料空間54の形状に合わせて切削加工した金属部品であって中子と呼ばれるものである。図7において(a) は立面図を示し、(b) は平面図を示している。
中子60は、試料装填用枠50の内部に試料空間54を形成するための、試料空間54と同形の金属製の雄型である。中子60を下部金型7内の所定位置に固定し、その周囲に試料装填用枠50を形成するための材料を配置して、それぞれの材料に適合した方法で固化させると、外形がダイキャビティに一致し、中央に中子60と同形の、試料空間54となるべき空間を備えた試料装填用枠50が得られる。
中子60の両端には板状の挿入端部61が設けられていて、これによって試料装填用枠50の成形時、試料装填用枠50の左右両端にセンサ挿入用溝51が形成される。
また試料装填用枠50の爪状突起部52の中間には、図5に示すように温度センサ40のステンレス細管41を把持するためのセンサ把持用溝53が設けられる。
センサ挿入用溝51とセンサ把持用溝53の形状は、すべて中子60となる金属部品に機械加工された正確な形状が転写形成される。
【0049】
このようにして作成された試料充填用枠50は、熱拡散定数(χ)の値が近似するゴム試料の試験のために、繰り返し使用することができる。
また、試料装填用枠50の成形の際に中子の位置がずれないようにするために、中子60と下部金型7の数箇所に、ネジ止め用の孔(不図示)が設けられている。下部金型7に設けられたねじ孔は、普段はめくらネジ等で塞いで置けば、通常測定の際の支障とはならない。
【0050】
本発明の方式において使用されるダイキャビティの形状は、図6の説明で前述したとおり、上下面が長方形で、その長手方向に厚さ勾配を持った楔形をなしている。
この場合、厚さ勾配に応じた昇温速度差に基づいて生じる加硫速度の差によって、長手方向に加硫度が連続的に変化する1枚のゴム試験片を作製することが、ダイキャビティの形状として楔形を選択した理由である。
以下、ゴム試験片内部に生じる、気泡の立体分布について説明する。
【0051】
図8は、ダイキャビティの長軸に直交する断面におけるゴム試験片61の内部の気泡の分布状態を示す模式図であって、A,B,Cは、ダイキャビティ内のゴム試験片の長さ方向の位置区分をダイキャビティの厚さの大きい順に示したものである。
前述したゴム試験片の発泡メカニズムによって、気泡はゴム試験片における昇温が遅れた部分に発生するので、上部金型6,下部金型7の内壁に近い部分には発生しにくく、各金型の内壁(すなわち、ダイキャビティの上面,下面,側壁面)から遠い部分に発生しやすい。
その結果、ダイキャビティの長軸に直交する断面に現われる気泡は、ダイキャビティの厚さ中心線の両脇を除いた部分を中心として、楕円状に分布する。
この楕円の上下方向の幅は、発泡限界部分に近づくに従って狭くなり、発泡限界部分(図8C)では、ダイキャビティの厚さ中心線上に集中する。
従って、発生した気泡を単一断面で評価する最適の方法は、ダイキャビティの厚さ中心面を裁断面とする水平面裁断の方法である。
【0052】
しかしながら、幅広のゴム試験片を水平面で裁断することは困難なため、従来技術では、ダイキャビティの長軸に沿った垂直面で裁断する方法が採られていた。
これに対して本発明の方式では、試料装填用枠50から分離して取り出した加硫済みゴム試験片は、試料装填用枠50の構成上、ダイキャビティの長軸に直交する水平方向の幅がダイキャビティの幅の約1/3になっているため、カッターブレード(不図示)の下にゴム試験片を縦置きするための簡単な支えを備えた試料ホルダ付き裁断機(不図示)を使用すれば、水平面裁断を容易に実行することができる。これは、本発明の場合の試料装填用枠50の副次的な利点である。
なお、加硫済み試験片を試料装填用枠50から分離しやすくするためには、試料装填用枠50の内面に予め適当な離型処理を施しておくことが望ましい。
【0053】
試料装填用枠50によって得られるもう一つの副次的な利点は、ゴム試料量の節約効果が得られることである。
すなわち、発泡度の評価に役立たないダイキャビティ周辺部のゴム試料を試料装填用枠50で代替するため、その体積分だけゴム試料量を節約できる。
図6に示す実施例においては、ダイキャビティの水平方向の幅がダイキャビティの幅の約1/3になっているため、ゴム試料空間の体積はダイキャビティに比べて約1/3に縮小している。
【0054】
従来技術では、ゴム試料が楔状の空間を無理なく満たすようにするために、ダイキャビティの深い側で投入するゴム試料の厚さを増加させるように、ゴム試料シートを部分的に貼り合わせる等の準備を必要とし、手間がかかるだけでなく、貼り合わせ部分に抱き込まれた空気層が、余計な気泡発生の原因となって気泡の判定を紛らわしくするという弊害が散見された。
これに対して本発明の方法では、試料空間の縮小によって、ゴム試料の準備作業は、試料空間54に対して体積が多めで長さが短めの単純形状に裁断して、嵩高の向きで試料装填用枠50の中央に置くだけという、単純作業に簡素化され、ゴム試料シートの貼り合わせによる空気層抱き込みの弊害も解消した。
【0055】
試料装填用枠50の熱拡散定数値を試料ゴムに一致させるという点では、試料ゴムと同一の配合ゴムを用いて試料装填用枠50を成形するのが最良であるが、前述したように、試料装填用枠50と試料ゴムの熱拡散定数の小差がブローポイントの試験結果に影響しないように、接地型熱接点44の配置を工夫済みであることを考慮すると、試料装填用枠50の材質の選択を耐熱樹脂の範囲まで広げることが可能になる。
例えば耐熱樹脂として代表的なフッソ樹脂(PTFE)は、熱拡散定数が0.11mm/sec であって、ゴム材料の熱拡散定数値にかなり近いレベルに位置している。さらに試料装填用枠50がゴム製の場合、加硫済みのゴムと未加硫ゴムの界面は加圧加硫中にかなり強力に接着するので、試験終了後、両者を分離するためには、予め離型剤の塗布等の離型処理をほどこしておくことが不可欠であるが、フッソ樹脂を使用した場合は、フッソ樹脂特有の離型性によって、分離作業が容易に行えるという利点が加わる。
従って、本発明の装置では、試料装填用枠50の素材をゴム試料と同一、または類似の配合組成の加硫ゴムに限定せず、熱拡散定数値がゴム試料に近似している耐熱性樹脂材料も利用範囲とすることができる。
【0056】
図9は、本発明の発泡限界加硫度試験装置で測定した昇温曲線の一例を示したものである。
ゴム試料は、カーボンブラック50PHRを含むSBR系配合ゴムからなるものである。温度センサの熱接点数は4点である。上部均熱板4,下部均熱板5の温度はそれぞれ170℃であり、加圧加硫時間は300秒である。
図9において、記号ch1〜ch4は熱接点番号を示したものであり、図9中には対応する符号によって示されている。熱接点番号は図4(b) に示されたようにダイキャビティの厚さの順に番号が大きくなる。
【0057】
前述の式(4) によって、温度軸を平板の昇温不飽和度α(t) に変換し、その自然対数と時間の関係を図示すると、図10に例示するような直線群が得られる。図10においては、図8の場合と同様に、ダイキャビティの厚さが大きくなる順に、温度センサ40の熱接点番号ch1〜ch4を示している。
図10に示す各直線の勾配は、ゴム試料の厚さの増加に応じて緩やかになり、昇温が遅くなる傾向が見られる。
【0058】
図10のデータを、最小2乗法で直線近似して勾配係数を求め、各熱接点の位置における伝熱距離(h)と勾配係数を式(6) に代入すると、図11に例示するように、ゴム試料の熱拡散定数(χ)が求められる。
【0059】
図11に見られるように、熱接点番号ch1〜ch4ごとに解析して得られたχ値の変動は小さく、本発明による測定法の精度がよいことを示している。
図11において、4点のχ値の平均値は、0.135mm/sec であって、カーボンブラック50PHRのゴム試料としては、妥当な大きさである。
また、変動の程度を示す変動係数は2.3%であったが、この種の測定値としては、良好な再現性を示すものと言える。
【0060】
次に、前述のゴム試料と同一の配合ゴムを、温度170℃,加硫時間240秒の条件で加硫したのち、ゴム試料の厚さ中心の断面の観察から発泡限界の厚さを求め、その値を式(5) に代入して発泡限界部分の昇温曲線を求め、式(3) の定積分を〔t=0,t=240sec ] の範囲で実行して、170℃換算の等価加硫時間を144秒と特定した。
さらに、予め測定しておいた170℃での加硫度曲線にこの時間を当てはめて、ブローポイント(BP%)を特定した。この特定作業に用いた解析図を、本発明の実施例として図12に示す。
【0061】
図12は、振動式加硫度試験機(機種名称:FDR)を用いて得た、加硫度曲線を示したものである。
図12において、加硫度曲線上に付した○印は、前述の等価加硫時間への対応点を示し、この点の縦軸値と、前記JIS K 6300−2の方法で求めた、図13に示すM, M, Mの値を式(1) に代入して、ブローポイントとしてBP=22%を得た。
なお、昇温曲線:T(t) の実際の値は、等時間間隔ディジタル数列の形でパソコン(PC)に記憶されているので、式(3) の定積分はPCの自動演算による数値積分で容易に実行できる。
【0062】
本発明の発泡限界加硫度試験装置で実測し、応用しようとする熱拡散定数(χ)は、ゴム材料が加熱されたときの熱応答性を第一義的に支配する物質定数であり、温度や圧力によって大きく変わることはないので、その応用範囲は広く、例えば、使用したテストモールドのゴム厚さを超えるような厚物加硫に対しても、良好な精度での外挿推定が可能となる。
【0063】
以上説明したように、本発明のゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置及び方法によれば、温度センサ差込み方式の従来技術では測定不可能とされていた、室温を起点として金型温度に至るまでの全温度範囲にわたる試料ゴムの真の昇温曲線を、簡便な操作によって、高精度に測定することが可能になるという優れた効果を得ることができる。
以下、本発明の効果を区分して詳説する。
【0064】
(1) 得られた昇温曲線と、測温点から型面までの伝熱距離(h)とから、試料ゴムの熱拡散定数(χ)を高精度に特定することができる。
(2) 熱拡散定数(χ)の値を高精度に特定できるので、実測済みの範囲を超える厚物領域の昇温曲線も良好な精度で外挿推定することができる。
(3) 得られた熱拡散定数(χ)の値と、取り出した加硫試験片の厚さ中心断面の観察によって判定される発泡境界厚さ(h)を熱伝達の理論式に代入することによって、発泡境界部分の昇温曲線を高精度に記述する昇温理論式が入手可能となる。
(4) この理論式にアレニウスの近似式を適用して、基準温度(T)に換算した発泡限界の等価加硫時間(teq.B)を高精度に特定することが可能になる。
(5) 同じゴムについて、振動式加硫度試験機によって、基準温度(T)で測定した加硫度曲線上の等価加硫時間(teq.B)に相当する加硫度として、発泡限界加硫度すなわちブローポイントを特定することが可能になった。
【0065】
また一方、楔状ダイキャビティの全体を被検体試料で満たすことをせず、発泡評価の役に立たないダイキャビティ周辺部を、試料と同一又は類似の配合ゴム、又は耐熱性樹脂材料から成形した試料装填用枠で満たし、発泡判定に有効なダイキャビティ中央の細長い部分だけを試料空間とし、さらにこの試料空間の長手方向に細管状温度センサを厚さ中心面上で保持できるセンサ挟み込み構造を備えた試料装填用枠を工夫したことによって、下記のような種々の効果がもたらされた。すなわち、
(6) 試料ゴムを充満させる範囲が発泡判定の有効部分に限定され、試料装填用枠体積相当分が不要となるため、試験に必要なゴム試料の量は、ダイキャビティ全体を満たす場合に比べて、約1/3に節減された。
(7) 試料装填用枠に設けた温度センサ挟み込み構造の工夫によって、ゴム試料充填時の温度センサ埋設位置が著しく安定し、昇温速度に大きく影響する温度センサ位置の不安定性は激減し、昇温曲線の繰り返し再現性が著しく向上した。
センサ差込み方式を採用する従来技術では、充満したゴム試料の大きな差込み抵抗力が災いして、温度センサがいろいろな方向へカーブし、温度センサ先端の感熱部が試料の厚さ中心からずれて昇温速度に大きな誤差を与えることが少なくなく、しかもこのような誤差が不規則に発生したが、本発明の場合は、試料装填用型による温度センサ保持構造の工夫によって、この種の不具合は解消し、得られるデータの安定性と信頼性とが著しく向上した。
(8) 気泡の判定に最適なカット面は、ゴム試料の厚さ中心面であるが、幅広のゴム試験片を厚さ中心面で水平カットすることが困難なため、従来技術では、ゴム試験片の長軸に沿って垂直カットする方法がとられきた。本発明方式の加硫済みゴム試験片は、試料装填用枠から分離すると元のダイキャビティの幅の約1/3の細長い形になるため、厚さ中心面に沿っての水平カットが容易に実行できるようになるので、気泡判定に利用できるカット面の有効面積が増加して、発泡境界線の判定信頼性が向上した。
【0066】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、発泡限界加硫度試験装置を大型化したり、あるいは小型化したりすることは、必要に応じてある程度自由に設計可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
この発明の発泡限界加硫度試験装置は、各種ゴム製品を製造する際に広く利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施例である発泡限界加硫度試験装置の全体構成を示す図である。
【図2】下部金型の構造を示す図である。
【図3】上部金型の構造を示す図である。
【図4】同実施例で用いられる温度センサを示す図である。
【図5】試料装填用枠を示す図である。
【図6】下部金型に試料装填用枠と温度センサを組み合わせた状態を示す組立図である。
【図7】中子を示す図である
【図8】ダイキャビティの長軸に直交する断面におけるゴム試験片の気泡の分布状態を示す模式図である。
【図9】本発明の発泡限界加硫度試験装置で測定した昇温曲線の一例を示す図である。
【図10】昇温不飽和度α(t) の自然対数と時間の関係を示す図である。
【図11】ゴム試料の熱拡散定数(χ)の熱接点間の再現性を例示する図である。
【図12】振動式加硫度試験機を用いて得た加硫度曲線を示す図である。
【図13】非特許文献1に記載されている加硫曲線の解析方法を説明する図である。
【図14】特許文献1記載の発明の核心をなすブローポイント特定用の金型を示す図である。
【図15】特許文献1に開示された方法によって得られる未加硫ゴム試料の昇温特性を例示する図である。
【符号の説明】
【0069】
1 上部ベース板
2 下部ベース板
3 支柱
4 上部均熱板
5 下部均熱板
6 上部金型
7 下部金型
8 両軸式エアシリンダ
9 昇降ベース
10a 上部断熱スペーサ
10b 下部断熱スペーサ
11a 上部均熱ガード
11b 下部均熱ガード
12 板バネ
13 当て板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下対称をなす一対の金型の面にそれぞれ設けられた凹部によって、長手方向に深さが変化する長方形ダイキャビティを形成する加硫金型と、
前記ダイキャビティに収納可能な形状を有し、前記ダイキャビティの長軸と平行に試料ゴム充填用の細長い試料空間を持つ枠形からなるとともに、該枠に連接して前記ダイキャビティの長軸方向の厚さ中心線上に温度センサを保持するための爪状突起部を有し、試料ゴムと同等または近似の熱拡散定数を有する材料からなる試料装填用枠と、
金属細管に収容した熱電対線によって、一又は複数の熱接点を前記金属細管の管壁に形成し、前記爪状突起部によって前記試料装填用枠内に保持されたとき、前記試料空間の厚さ中心線上における試料ゴムの温度を計測する温度センサと、
上部金型を下降させたとき、下部金型と圧着して前記試料空間に装填された未加硫試料ゴムを加熱して加圧加硫する加圧機構と、
試料ゴムを所定時間加圧加硫したのち、前記加圧機構の圧力を大気圧に開放することによって、加圧によってバネに蓄えられた反力によって上部金型が僅かに押し上げられる状態を保持する除圧保持機構とを備え、
前記除圧保持状態の終了時、前記試料装填用枠から取り出した加硫済みゴム試験片の厚さ中心部の昇温曲線から、試料ゴムのブローポイントを特定することを特徴とするゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置。
【請求項2】
前記加硫済みゴム試験片を、試料を所定位置に保持する機能を有する試料ホルダ付き裁断機によって、その厚さ中心面に沿って裁断することを特徴とする請求項1記載のゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のゴムサンプルの発泡限界加硫度試験装置において、上下対称をなす一対の金型の面にそれぞれ設けられた凹部によって、長手方向に深さが変化する長方形ダイキャビティを形成する加硫金型と、前記ダイキャビティに収納可能な形状を有し、前記ダイキャビティの長軸と平行に試料ゴム充填用の細長い試料空間を持つ枠形からなるとともに、該枠に連接して前記ダイキャビティの長軸方向の厚さ中心線上に温度センサを把持するための爪状突起部を有し、試料ゴムと同等または近似の熱拡散定数を有する材料からなる試料装填用枠と、金属細管に収容した熱電対線によって、一又は複数の熱接点を前記金属細管の管壁に形成し、前記爪状突起部によって前記試料装填用枠内に把持されたとき、前記試料空間の厚さ中心線上における試料ゴムの温度を計測する温度センサと、上部金型を下降させたとき、下部金型と圧着して前記試料空間に装填された未加硫試料ゴムを加熱して加圧加硫する加圧機構と、試料ゴムを所定時間加圧加硫したのち前記加圧機構の圧力を大気圧に開放することによって、加圧によってバネに蓄えられた反力によって上部金型が僅かに押し上げられる状態を保持する除圧保持機構とを設け、前記除圧保持状態の終了時、前記試料装填枠から取り出した加硫済みゴム試験片の厚さ中心部の昇温曲線から、試料ゴムのブローポイントを特定することを特徴とするゴムサンプルの加硫限界特定方法。
【請求項4】
前記加硫済みゴム試験片を、試料を所定位置に保持する機能を有する試料ホルダ付き裁断機によって、その厚さ中心面に沿って裁断することを特徴とする請求項3記載のゴムサンプルの加硫限界特定方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載のゴムサンプルの加硫限界特定方法において、測定されたゴム試料片の厚さ中心線上の特定点の昇温曲線T(t) と測温点のゴム試料片の厚さ (2h)とから試料ゴムの熱拡散定数(χ)を求め、加硫済みゴム試験片の厚さ中心裁断面の観測によって判定した発泡境界部分の厚さ (h)と前記χ値から発泡境界部分の厚さ中心の昇温曲線 (T(t))を推定し、前記ゴム試料を構成する配合ゴムについて予め測定し又は推定した加硫活性化エネルギー(Ea )と前記昇温曲線 (T(t))にアレニウスの式を適用して、基準温度(T)に換算した等価加硫時間(teq.B(T)) を求め、該等価加硫時間値を同一配合のゴム試料について予め加硫度試験機で測定した加硫度曲線に適用して発泡抑制に最小限必要な加硫度(ブローポイント)を特定することを特徴とするゴムサンプルの加硫限界特定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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