説明

ゴムホース

【課題】滑り性に優れ、低摩擦性が要求される用途にも好適に使用することができ、かつ煩雑な工程の追加を要することなく、金具との加締加工性にも優れ、油圧ホース等として好適に使用されるゴムホースを提供する。
【解決手段】最外層4が、光硬化性液状樹脂組成物の硬化物で形成されており、かつこの光硬化性液状樹脂組成物が、重量平均分子量(Mw)5000〜40000、分子量分布3.0以下の共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体から合成される、分子鎖両末端に光硬化性不飽和炭化水素基を有する水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体、及び滑り成分として超高分子量ポリエチレンパウダー又は有機酸アミド含むものであるゴムホース。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築機械、農業機械やその他の産業機械などの油圧ホースとして好適に使用されるゴムホースに関し、更に詳述すると、外表面に低摩擦性、耐オゾン性、接着性に優れた表皮層が形成され、耐久性に優れ、上記油圧ホース等として好適に用いられるゴムホースに関する。
【0002】
油圧ホースは、パワーショベルやブルドーザー等の建築機械、耕うん機やトラクター等の農業機械、その他油圧ジャッキ、油圧パンチャー、油圧プレス、油圧ベンダーなどの産業機器等の油圧で駆動する機械に使用され、ホース内に充填された作動油の圧力により駆動力を伝えるものである。
【0003】
このような油圧ホースは、例えば図1に示した油圧ホース1のように、作動油が充填されるゴム製の内面ゴム層2、作動油の圧力に耐える為の補強層3、外部からの損傷を防止する外面ゴム層4を内側から順次積層した構造が一般的であり、また上記補強層3を複数層設けることもよく行われる。
【0004】
従来、このような油圧ホースの上記外面ゴム層4には、クロロプレンゴム(CR)が一般的に用いられているが、油圧ホースはホースが頻繁に擦れる用途に使用される場合も多く、このような用途に用いられるホースには低摩擦性が強く求められることになる。
【0005】
この場合、ゴムホースにおける低摩擦化については、脂肪酸アミド、パラフィンワックスなどの滑剤を配合する方法(特許文献1:特開2002−39448号公報、特許文献2:特開2006−123384号公報)や、ポリエチレンフィルムを最外層に巻き付ける方法(特許文献3:特開平8−296771号公報、特許文献4:特開2005−3171号公報、特許文献5:特開2005−314455号公報)などが提案されている。
【0006】
しかしながら、滑剤を配合する方法の場合、他の部材との摩擦により滑剤が取れてしまい耐久性の点で問題がある。一方、ポリエチレンフィルムを最外層に配する方法は、ポリエチレンフィルムとゴムとを貼り合わせて加硫する際に高分子鎖の絡み合いにより良好な接着性を得ることが可能で、接着剤や外層ゴムに特別な接着処方を要することなく、良好な低摩擦層を形成することができるが、この方法には以下の欠点がある。
【0007】
即ち、油圧ホースは、金具と加締られた状態で用いられるのが一般的であり、金具との加締性も重要な性能であるが、最外層にポリエチレンフィルムが配された場合、最外層のゴム的な弾性が低下して高度な加締め技術が必要となる。また、ホースの生産工程を新規に設計する場合、ポリエチレンフィルムを成型加工する設備が必要で、更にそのポリエチレンフィルムを巻き付ける煩雑な工程が必要となり、工程設計の自由度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−39448号公報
【特許文献2】特開2006−123384号公
【特許文献3】特開平8−296771号公報
【特許文献4】特開2005−3171号公報
【特許文献5】特開2005−314455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、滑り性に優れ、低摩擦性が要求される用途にも好適に使用することができ、かつ煩雑な工程の追加を要することなく、金具との加締加工性にも優れ、油圧ホース等として好適に使用されるゴムホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、重量平均分子量(Mw)5000〜40000、分子量分布3.0以下の共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体を水添したポリマー成分を有するゴム配合物をUV架橋等により光硬化させることにより、一般的なゴム組成物全般に対して良好な接着性能を簡単に得られること、しかもこのポリマーは水素添加することで、ポリマー主鎖骨格の二重結合が消失させているため耐オゾン性に優れ、ゴムホースの最外層として好適な耐候性を有し、また良好なゴム的弾性を有し金具との加締め加工性にも優れ、更に滑り成分として超高分子量ポリエチレンパウダー又はアマイド等の有機酸アミドを適量配合することにより、良好な接着性を維持したまま良好な低摩擦性を付与し得ることを見い出し、本発明を完成したものである。
【0011】
従って、本発明は、下記(1)のゴムホースを提供する。
(1)最外層が、光硬化性液状樹脂組成物の硬化物で形成されており、かつこの光硬化性液状樹脂組成物が、重量平均分子量(Mw)5000〜40000、分子量分布3.0以下の共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体から合成される、分子鎖両末端に光硬化性不飽和炭化水素基を有する水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体、及び滑り成分として超高分子量ポリエチレンパウダー又は有機酸アミド含むものであることを特徴とするゴムホース。
【0012】
更に、本発明者らは検討を進めた結果、上記本発明の好適な実施態様として下記(2)〜(7)のゴムホースを提供する。
(2)上記水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体が、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンと、スチレン、α−メチルスチレン及びパラメチルスチレンより選ばれる1種又は2種以上が重合したものである(1)のゴムホース。
(3)上記光硬化性不飽和炭化水素基が、アクリロイル基又はメタクリロイル基である(1)又は(2)のゴムホース。
(4)上記滑り成分として、水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体70質量部に対して、10〜30質量部の超高分子量ポリエチレンパウダーを含有する(1)〜(3)のいずれかのゴムホース。
(5)上記滑り成分として、水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体70質量部に対して、4〜25質量部の有機酸アミドを含有する(1)〜(4)のいずれかのゴムホース。
(6)上記有機酸アミドが、炭素数10以上の脂肪酸アミド又は不飽和脂肪酸アミドである(5)のゴムホース。
(7)上記最外層が、ゴムホースの外表面に塗工形成された厚さ0.1〜2mmの塗膜層である(1)〜(6)のいずれかのゴムホース。
【発明の効果】
【0013】
本発明のゴムホースは、良好な接着性、低摩擦性、耐オゾン性を有する最外層を有し、良好な耐久性を持って低摩擦性が要求される用途にも好適に使用することができ、かつこの最外層は液状樹脂組成物をホース表面に塗工してUV照射などにより光硬化させて簡便に形成することができ、しかも金具との加締加工性にも優れ、油圧ホースとして好適に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】油圧ホースの一例を示す一部を切り欠いて断面とした概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のゴムホースは、後述の光硬化性液状樹脂組成物を硬化してなる低摩擦層を最外層に形成したものであり、例えば内面ゴム層、補強層、及び外面ゴム層を内側から順次積層した油圧ホースの上記外面ゴム層表面に後述の光硬化性液状樹脂組成物を硬化してなる低摩擦性の最外層を形成したものである。
【0016】
上記光硬化性液状樹脂組成物は、重量平均分子量(Mw)5000〜40000、分子量分布3.0以下の共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体から合成され、分子鎖両末端に光硬化性不飽和炭化水素基を有する水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体を含むものである。
【0017】
上記この水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体は、例えば、特開2007−145949号公報等に記載されているように、
(A)飽和炭化水素系溶媒中で、ジリチウム開始剤により共役ジエン系単量体と芳香族ビニル系単量体を重合して、重量平均分子量5000〜40000及び分子量分布3.0以下を有する共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体を製造する段階と、
(B)前記共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体とアルキレンオキシドとを反応させて、共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールを製造する段階と、
(C)前記共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールに水素添加反応し、水添共役ジエン系重合体ポリオール又は水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールを製造する段階と、
(D)前記水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオールと光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させる段階とを経ることにより得ることができる。
その詳細について、以下で説明する。
【0018】
まず、第一の段階(A)として、飽和炭化水素系溶媒中で、ジリチウム開始剤により共役ジエン系単量体及び芳香族ビニル系単量体を重合して、共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体(以下、「共重合体」ということがある)を製造する。この重合はリビングアニオン重合であるために、分子量及び分子量分布を制御して重合できる。分子量は、ジリチウム開始剤と上記単量体の量により所定の分子量の重合体を重合することが可能であり、特に重量平均分子量(Mw)が5000以上では、分子量分布が2以下の狭い重合体を得易いことから、5000〜40000とすることが好ましい。また、所望により、ランダマイザーの存在下にアニオン重合をさせてもよい。
次に、第二の段階(B)として、上記の共重合体の、リビングアニオンである重合体末端とアルキレンオキシドとを当量反応させることにより両末端に水酸基を有する共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール(以下、「共重合体ポリオール」ということがある)を得ることができる。
更に、第三の段階(C)として、主鎖に二重結合を有する共重合体ポリオールに水素添加反応(以下、水添反応という)を行うことにより、主鎖に不飽和二重結合を持たない水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体ポリオール(以下、「水添共重合体ポリオール」ということがある)を得ることができる。
第四の段階(D)として、上記のようにして得た水添共重合体ポリオールに、光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を反応させて、光硬化性不飽和炭化水素基を導入した光硬化性液状樹脂(水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体)が得られる。
【0019】
上記の共役ジエン系単量体としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中では、1,3−ブタジエン又はイソプレンが硬化後のゴム弾性確保の観点から好ましい。
また、芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン又はパラメチルスチレンが硬化後のゴム物性の点で好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
ジリチウム開始剤としては、特に限定されず公知のものを用いることができる。例えば、特公平1−53681号公報には、モノリチウム化合物を第3級アミンの存在下に、二置換ビニル又はアルケニル基含有芳香族炭化水素と反応させてジリチウム開始剤を製造する方法が記載されている。
【0021】
ジリチウム開始剤を製造するときに用いられるモノリチウム化合物としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム等が挙げられるが、これらの中で、sec−ブチルリチウムが好ましい。
【0022】
ジリチウム開始剤を製造するときに用いられる第3級アミンとしては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン等の低級脂肪族アミンやN,N−ジフェニルメチルアミン等が挙げられるが、特にトリエチルアミンが好ましい。
また、上記二置換ビニル又はアルケニル基含有芳香族炭化水素としては、例えば、1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,4−(ジイソプロペニル)ベンゼン、1,3−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン、1,4−ビス(1−エチルエテニル)ベンゼン等が好ましく挙げられる。
【0023】
上記ジリチウム開始剤の調製、及び共重合体の製造において用いられる溶媒としては、反応に不活性な有機溶剤であればよく、脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶媒が用いられ、例えば、n−ブタン、l−ブタン、n−ペンタン、l−ペンタン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン、l−ブテン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、l−オクタン、メチルシクロペンタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ペンテン、2−ペンテン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等から1種あるいは2種選んで使用される。これらのうち、n−ヘキサン、シクロヘキサンが通常用いられる。
【0024】
また、上記の共重合体のリビングアニオンである末端と反応して、両末端に水酸基を生成するポリオール化反応に用いるアルキレンオキシドとして、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシド等が挙げられる。このポリオール化反応は、重合反応直後に行うのが好ましい。
【0025】
上記ポリオール化反応により得られた共重合体ポリオールの重量平均分子量(Mw)は5000〜40000とされる。重量平均分子量が5000未満になると、粘度が低すぎて、塗工に必要とされる適度な粘性が得られず、塗工作業が困難となるおそれがあり、一方、分子量が40000を超えると、逆に高粘度化し過ぎてしまい、塗工作業性を損うだけでなく、単位重量あたりの末端水酸基の絶対量が減少し、ゴムとの接着性が低下してしまうおそれがある。
また、分子量分布が3.0以下であると、低分子量成分や高分子量成分によるさまざまな影響を抑制することができる。特に、粘度は分子量の影響を大きく受けるため、分子量のわずかなブレは粘度バラツキとなる。狭い分子量分布の共重合体を合成できる本方法では、再現性良く同じ分子量の共重合体を得ることができるため、粘度を安定化させる効果が期待できる。
【0026】
本方法における水添反応は、有機溶媒中、水素加圧下、水添触媒の存在下で上記共重合体ポリオールに水素添加して行われる。この水添反応により、ポリマーの主鎖骨格の二重結合が消失され、耐オゾン性に優れたものとなる。本方法で用いる水添触媒は、パラジウム−カーボン、還元ニッケル、ロジウム系等不均一系触媒:又は、ナフテン酸ニッケル、オクタン酸ニッケル等の有機ニッケル化合物あるいはナフテン酸コバルト、オクタン酸コバルト等の有機コバルト化合物とトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物もしくはn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウムのような有機リチウム化合物を組合せた均一触媒が使用できる。共触媒として、テトラハイドロフラン、エチレグリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル化合物を用いてもよい。また、他の水添反応方法としては、例えば上記水添前の共重合体を、ジシクロペンタジエニルチタンハライド、有機カルボン酸ニッケル、有機カルボン酸ニッケルと周期律表第I〜III族の有機金属化合物からなる水素化触媒、カーボン、シリカ、ケイソウ土等で担持されたニッケル、白金、バラジウム、ルテニウム、レニウム、ロジウム金属触媒やコバルト、ニッケル、ロジウム、ルテニウム錯体等を触媒として、1〜100気圧に加圧された水素下、あるいはリチウムアルミニウムハイドライド、p−トルエンスルホニルヒドラジドの存在下、もしくはZr−Ti−Fe−V−Cr合金、Zr−Ti−Nb−Fe−V−Cr合金、LaNi5合金等の水素貯蔵合金の存在下、あるいは1〜100気圧に加圧された水素下で、水素化する方法、また、ジ−p−トリル−ビス(1−シクロペンタジエニル)チタニウム/シクロヘキサン溶液とn−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液を水素下で混合して得られる水素化触媒を用いて、1〜100気圧に加圧された水素下で、水素添加する方法等を挙げることができる。
【0027】
上述の各種水添触媒の中で、遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物の組み合わせからなるチーグラー系水添触媒又はパラジウム−カーボン系水添触媒が好ましい。
かかる遷移金属化合物としては、トリス(アセチルアセトナート)コバルト、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル、トリス(アセチルアセトナート)鉄、トリス(アセチルアセトナート)クロム、トリス(アセチルアセトナート)マンガン、ビス(アセチルアセトナート)マンガン、トリス(アセチルアセトナート)ルテニウム、ビス(アセチルアセトナート)コバルト、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタン、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、ビス(トリフェニルホスフィン)コバルトジクロライド、ビス(2−ヘキサノエート)ニッケル、ビス(2−ヘキサノエート)コバルト、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラエトキシド等が挙げられる。これらの中でも、ビス(アセチルアセトナート)ニッケル、トリス(アセチルアセトナート)コバルトが高い水添活性の面から好ましい。
また、チーグラー系水添触媒に用いられるアルキルアルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げられる。これらの中でも、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが水添活性の面から好ましく、トリイソブチルアルミニウムが最も好ましい。
【0028】
本方法におけるチーグラー系水添触媒の使用形態に特に制限はないが、予め遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物とを反応させた触媒溶液を調製し、それを重合溶液に添加する方法を好ましく挙げることが出来る。かかる際に用いるアルキルアルミニウム化合物の量は、遷移金属化合物1molに対して0.2〜5molが好ましい。上記の触媒調製の反応は、−40〜100℃、好ましくは0〜80℃の温度範囲で行われ、反応時間は1分から3時間の範囲である。
【0029】
また、水添反応は通常50〜180℃、好ましくは70〜150℃の温度で、また5〜100気圧(5066.25〜101325hPa)、好ましくは10〜50気圧(10132.5〜50662.5hPa)の水素圧で行われる。水添温度が50℃より低いと、また水素圧が5気圧よりも低いと触媒活性が低くなるため好ましくなく、水添温度が180℃を超えると触媒の失活、副反応等が起こりやすいため好ましくない。また通常、チーグラー系水添触媒は水添活性の極めて高い触媒であり、水素圧100気圧(101325hPa)以上とするのは必要性に乏しく装置上の負担が大きくなるので好ましくない。
【0030】
上記の水添共重合体ポリオールに、光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物を反応させて、該水添共重合体ポリオールの末端に光硬化性不飽和炭化水素基を導入するためには、光硬化性不飽和炭化水素基がアクリロイル基又はメタクリロイル基であることが好ましい。ここで、光硬化性不飽和炭化水素基含有化合物としては、アクリロイルイソシアネートやメタクリロイルイソシアネートが好ましく、これらとの反応により、上記の水添共重合体ポリオールは(メタ)アクリレート化される。
アクリロイルイソシアネートとしては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられ、メタクリロイルイソシアネートとしては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートが挙げられる。
【0031】
本方法で得られた光硬化性液状樹脂(水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体)は、通常、光硬化性液状樹脂組成物として用いられ、光硬化性液状樹脂組成物全体を基準として、その光硬化性液状樹脂を好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上含有する。
【0032】
この光硬化性樹脂組成物には、滑り成分として超高分子量ポリエチレンパウダー、又は有機酸アミドが配合される。この場合、有機酸アミドとしては、炭素数12〜22の長鎖脂肪酸アミド、特に脂肪族モノカルボン酸のアミドが好ましく用いられる。具体的には、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ラウリン酸アミド、オクタデセンアミド等が例示され、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、これらの中でもステアリン酸アミド、エルカ酸アミドが特に好適に使用される。
【0033】
上記超高分子量ポリエチレンパウダーの配合量は、特に制限されるものではないが、上記光硬化性液状樹脂(水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体)70質量部に対して10〜30質量部、特に15〜25質量部とすることが好ましく、10質量部未満であると十分な低摩擦性が得られない場合があり、一方30質量部を超えるとゴムとの接着性が低下する場合がある。また、上記有機酸アミドの配合量は、上記光硬化性液状樹脂(水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体)70質量部に対して4〜25質量部、特に5〜20質量部とすることが好ましく、4質量部未満であると十分な低摩擦性が得られない場合があり、一方25質量部を超えるとゴムとの接着性が低下する場合がある。
【0034】
この光硬化性樹脂組成物には、上記光硬化性液状樹脂(水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体)及び滑り成分以外にも、必要に応じて適宜な配合剤を添加することができ、その配合剤としては、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、光ラジカル重合開始剤、無機充填剤及び/又は有機増粘剤が好適に用いられる。
【0035】
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、硬化前の光硬化性液状樹脂組成物の粘度を低減し、また硬化後の諸物性も改良する。すなわち、接着強度の向上、硬度の低下、Eb(伸び)及びTb(破断強度)の向上等を図ることができる。この(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、分子量が1000未満のものが好ましく、150〜600のものがより好ましい。(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びメトキシトリエチレングリコールアクリレート等が挙げられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートをいう。これらのうち、本発明においては、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート及びイソボニルアクリレートが好ましい。
【0036】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーの配合量は、光硬化性液状樹脂と(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを合わせて100質量部としたとき、光硬化性液状樹脂30〜100質量部に対して(メタ)アクリル酸エステルモノマー70〜0質量部が好ましく、更に好ましくは、光硬化性液状樹脂40〜90質量部に対して(メタ)アクリル酸エステルモノマー60〜10質量部である。(メタ)アクリル酸エステルモノマーが10質量部未満となった場合、低弾性ではあるものの伸長時の破断伸度が低下してしまい、ゴムの変形に対する追従性が悪化するおそれがあり、一方60質量部を超えると、組成物自体の弾性率が増大し、ゴムの変形に対する追従性が悪化するおそれがある。
【0037】
光ラジカル重合開始剤としては、分子内開裂型として、ベンゾイン誘導体類、ベンジルケタール類[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア651]、α−ヒドロキシアセトフェノン類[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:ダロキュア1173、イルガキュア184、イルガキュア127]、α−アミノアセトフェノン類[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア907、イルガキュア369]、α−アミノアセトフェノン類とチオキサントン類(例えば、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン)との併用、アシルホスフィンオキサイド類[例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:イルガキュア819]等が挙げられ、水素引き抜き型として、ベンゾフェノン類とアミンの併用、チオキサントンとアミンの併用等が挙げられる。また、分子内開裂型と水素引き抜き型を併用してもよい。中でもオリゴマー化したα−ヒドロキシアセトフェノン及びアクリレート化したベンゾフェノン類が好ましい。より具体的には、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン][例えば、Lamberti S.p.A製、商品名:ESACURE KIP150等]、アクリル化ベンゾフェノン[例えは、ダイセル・ユー・シー・ビー(株)製、商品名:Ebecryl P136等]、イミドアクリレート等が挙げられる。
【0038】
また、光ラジカル重合開始剤として、上述のもの以外に、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンとベンゾフェノンの混合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[(4−メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンゾイルメチルエーテル、ベンゾイルエチルエーテル、ベンゾイルブチルエーテル、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマーと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンの混合物、イソプロピルチオキサントン、o−ベンゾイル安息香酸メチル及び[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン等も用いることができる。
【0039】
本方法で得られる光硬化性液状樹脂組成物に配合される光ラジカル重合開始剤量は、光硬化性液状樹脂及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜6質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜4質量部、更に好ましくは1〜3質量部である。
【0040】
本方法で得られる光硬化性液状樹脂組成物に、無機充填剤及び/又は有機増粘剤を配合すると、組成物に揺変性(チクソトロピー)を持たせ、組成物の成形性を向上させることができる。
【0041】
無機充填剤としては、シリカ(SiO2)、アルミナ、チタニア及び粘度鉱物等が挙げられ、中でもシリカ粉末、疎水処理したシリカ粉末又はこれらの混合物が好ましい。より具体的には、乾式法により微粉化したシリカ微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル300等]、このシリカ微粉末をトリメチルジシラザンで変性した微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルRX300等]及び上記シリカ微粉末をポリジメチルシロキサンで変性した微粉末[例えば、日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジルRY300等]等が挙げられる。
【0042】
無機充填剤の平均粒径は、増粘性、チクソトロピーの付与の観点から、5〜50μmが好ましく、5〜12μmがより好ましい。
【0043】
この無機充填剤の配合量は、光硬化性液状樹脂及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜7質量部、更に好ましくは1〜5質量部である。
【0044】
有機増粘剤としては、水添ひまし油、アマイドワックス又はこれらの混合物が好ましい。有機増粘剤として具体的には、ひまし油(主成分がリシノール酸の不乾性油)の水添品である水添ひまし油[例えば、ズードケミー触媒(株)製、商品名:ADVITROL100、楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン305等]及びアミド結合を有する化合物である高級アマイドワックス[例えば、楠本化成(株)製、商品名:ディスパロン6500等]等が挙げられる。
【0045】
この有機増粘剤の配合量は、光硬化性液状樹脂及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜7質量部、更に好ましくは1〜5質量部である。
【0046】
また、光硬化性液状樹脂組成物には、上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーに加えて、又はその代替として、末端(メタ)アクリレートオリゴマーを配合することもできる。この末端(メタ)アクリレートオリゴマーを配合することにより、光硬化性液状樹脂組成物の粘度を調節することができ、また、物理的には、硬度の低下、Eb(伸び)及びTb(破断強度)の向上等を図ることができる。なお、末端(メタ)アクリレートオリゴマーとは、片末端又は両末端にアクリロイル基又はメタクリロイル基を有するオリゴマーをいう。末端(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、透湿性、耐候性及び耐熱性の点から、炭化水素系のオリゴマー、すなわち、水添オリゴマー、末端(メタ)アクリレート水添オリゴマーが好ましい。末端(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、好ましくは5000〜40000である。重量平均分子量がこの範囲であると、液体原料として取り扱い易く、かつ硬化物が低硬度であるという利点がある。
【0047】
末端(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリオール(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。又は、イソシアネートと変性させ、末端の水酸基をアクリル酸でエステル化することもできる。ポリオール(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアナートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0048】
この末端(メタ)アクリレートオリゴマー量は、光硬化性液状樹脂及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100質量部に対し、30〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは40〜90質量部である。但し、所望により、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと末端(メタ)アクリレートオリゴマーを相互置換してもよい。
【0049】
光硬化性液状樹脂組成物には、更に、安定化剤等を加えてもよい。安定化剤としては、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート][例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:IRGANOX245、旭電化工業(株)製、商品名:アデカスタブAO−70等]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン[例えば、旭電化工業(株)製、商品名:アデカスタブAO−80等]等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0050】
この安定化剤の配合量は、光硬化性液状樹脂及び(メタ)アクリル酸エステルモノマーの合計100質量部に対し、0.1〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3質量部、更に好ましくは0.5〜2質量部である。
【0051】
更に、光硬化性液状樹脂組成物には、その効果を損なわない範囲で、密着性向上のための、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系炭化水素、ロジン誘導体等の各種粘着付与剤、チタンブラック等の着色剤等の添加剤を添加することができる。
【0052】
上記光硬化液状樹脂性組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、各成分及び所望により用いられる添加剤成分を温度調節可能な混練機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、プラネリーミキサー、二軸ミキサー、高剪断型ミキサー等を用いて混練することにより、製造することができる。
【0053】
上記光硬化性液状樹脂組成物は、油圧ホース等のゴムホースの外表面に薄く塗布し、活性エネルギー線を照射して光硬化させることにより、該ゴムホース外表面と強固に接着し、良好な滑り性及び耐オゾン性を有する最外層を短時間で容易に形成することができる。この場合、上記光硬化性液状樹脂組成物のゴムホース表面への塗布は、該組成物を必要に応じて温度調節し、一定粘度に調整した塗液を用いて任意の方法で行うことができ、例えば刷毛塗りやスプレー等の方法を用いることができる。また、この塗膜層(最外層)の厚さは、ゴムホースの使用環境やゴムホースの用途、仕様等に応じて適宜設定することができるが、通常は0.1〜2mmとされる。
【0054】
光硬化の際に使用する活性エネルギー線としては、例えば、紫外線及び電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を用いることができ、本発明においては紫外線を好適に使用できる。紫外線源としては、キセノンランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波方式エキシマランプ等を挙げることができる。紫外線を照射する雰囲気としては、窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気あるいは酸素濃度を低下させた雰囲気が好ましいが、通常の空気雰囲気でも十分に硬化させることができる。この場合、照射雰囲気温度は、通常10〜200℃とすることができる。また、上記光硬化樹脂は硬化後に再度活性エネルギー線を照射したり、熱を加えることにより性状を更に安定化させることもできる。
【0055】
本発明のゴムホースは、最外層に上記光硬化性液状樹脂組成物の硬化物層を形成したものである。この場合、ゴムホースとしては特に制限はなく、種々の用途に用いられるホースに適用することができるが、特に油圧ホースに適用することが好ましい。油圧ホースとしては、例えば図1に示された、内面ゴム層2、作動油の圧力に耐える為の補強層3、外部からの損傷を防止する外面ゴム層4を内側から順次積層した構造の油圧ホース1を例示することができ、その外面ゴム層4上に上記光硬化性液状樹脂組成物を塗工し、硬化させることにより、本発明のゴムホース(油圧ホース)とすることができる。この場合、上記光硬化性液状樹脂組成物は外面ゴム層4を形成するゴムの種類にかかわらず良好な接着性を有し、上記外面ゴム層4を形成するゴムの種類に制限はないが、特にクロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムを主体とするものであることが好ましい。
【0056】
なお、油圧ホースは、上記図1に示された3層構造のものに限定されるものではなく、2層構造や4層以上の層構造のものであってもよく、更に本発明のゴムホースは油圧ホース以外の用途にも好適に用いることができ、種々の構造のホースに対して外表面のゴム層上に上記光硬化性液状樹脂組成物を塗工し硬化させて、本発明ゴムホースとすることができる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0058】
[光硬化性樹脂の調製]
充分に脱水精製したシクロヘキサン溶媒中に、1,3−(ジイソプロペニル)ベンゼン1モルを添加した後、トリエチルアミン2モル、sec−ブチルリチウム2モルを順次添加し、50℃で2時間撹拌して、ジリチウム重合開始剤を調製した。
アルゴン置換した7リットルの重合リアクターに、脱水精製したシクロヘキサン1.50kg、22.9質量%の1,3−ブタジエンモノマーのヘキサン溶液2.00kg、20.0質量%のスチレンモノマーのシクロヘキサン溶液0.765kg、1.6モル/リットルのOOPS(2−2’−ジ(テトラヒドロフリル)プロパン)のヘキサン溶液を209.4ml添加した後、0.5モル/リットルのジリチウム重合開始剤を223.5ml添加して重合を開始させた。
【0059】
重合リアクターを50℃に昇温しながら、1.5時間重合を行った後、1モル/リットルのエチレンオキシドのシクロヘキサン溶液を220.4ml添加し、更に2時間撹拌した後、50mlのイソプロピルアルコールを添加した。重合体のヘキサン溶液をイソプロピルアルコール中に沈殿させ、十分に乾燥させてスチレン分25質量%、重量平均分子量7100、分子量分布1.25の分子鎖両末端に水酸基を有するスチレン−ブタジエン共重合体を得た。
【0060】
得られた上記スチレン−ブタジエン共重合体120gを、十分に脱水精製したヘキサン1リットルに溶解した後、予め別容器で調整したナフテン酸ニッケル、トリエチルアルミニウム、ブタジエンが1:3:3(モル比)の触媒液を共重合体溶液中のブタジエン部1000モルに対してニッケル1モルになるように仕込んだ。密閉反応容器に水素を27580hPa(400psi)に加圧添加して、110℃にて4時間水添反応を行った。その後、3規定濃度の塩酸で触媒残渣を抽出分離し、更に遠心分離をして触媒残渣を沈降分離した。その後、水添スチレン−ブタジエン共重合体をイソプロピルアルコール中に沈殿させ、更に十分に乾燥を行った。
【0061】
十分に乾燥した上記水添スチレン−ブタジエン共重合体100gを、シクロヘキサンに溶解させ、40℃に保ち十分に撹拌しながら2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製:カレンズAOI)をゆっくり滴下した後、更に4時間撹拌を行い、イソプロピルアルコールに沈殿させ乾燥させた。2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートの添加量は、3.75gであった。以上のようにして、液状の光硬化性樹脂を得た。
【0062】
[光硬化性樹脂組成物の調製]
上記光硬化性樹脂に下記表1に示した各成分を配合し、プラネタリーミキサーを用いて80〜100℃に加温しながら約1時間混練りすることにより、本発明の光硬化性樹脂組成物を調製した。なお、表1中の各配合成分の詳細は次の通りであり、配合量はいずれも質量部である。
イソボニルアクリレート:大阪有機化学工業社「IBXA」
光ラジカル重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社「ダロキュア1173(α−ヒドロキシアセトフェノン)」
超高分子量ポリエチレンパウダー:三井化学(株)社「ミペロン」
有機酸アミド:オクタデセンアミド、日本化成(株)社「ダイヤミッド M309」
【0063】
得られた各光硬化性樹脂組成物を、クロロプレンゴムの加硫ゴムシート(120mm×120mm×2mm)に約1mm厚に塗布して光硬化処理を行い、幅10mmで剥離試験を行い、ゴムとの接着性を評価した。結果を表1に示す。
【0064】
次に、外面ゴム層4がクロロプレンゴムを主体とするゴム組成物で形成された図1の層構造を有する油圧ホースの外周面に上記各光硬化性樹脂組成物を塗布し、下記条件で紫外線を照射して硬化させ、厚さ1mmの最外層を形成した。得られた油圧ホース表面の常温での摩擦係数を測定し、超高分子ポリエチレンシートを巻き付けた油圧ホースの動摩擦係数を100とした指数で評価した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】

【符号の説明】
【0066】
1 油圧ホース(ゴムホース)
2 内面ゴム層
3 補強層
4 外面ゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最外層が、光硬化性液状樹脂組成物の硬化物で形成されており、かつこの光硬化性液状樹脂組成物が、
重量平均分子量(Mw)5000〜40000、分子量分布3.0以下の共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体から合成される、分子鎖両末端に光硬化性不飽和炭化水素基を有する水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体、及び滑り成分として超高分子量ポリエチレンパウダー又は有機酸アミド含むものであることを特徴とするゴムホース。
【請求項2】
上記水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体が、1,3−ブタジエン及び/又はイソプレンと、スチレン、α−メチルスチレン及びパラメチルスチレンより選ばれる1種又は2種以上が重合したものである請求項1記載のゴムホース。
【請求項3】
上記光硬化性不飽和炭化水素基が、アクリロイル基又はメタクリロイル基である請求項1又は2記載のゴムホース。
【請求項4】
上記滑り成分として、水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体70質量部に対して、10〜30質量部の超高分子量ポリエチレンパウダーを含有する請求項1〜3のいずれか1項記載のゴムホース。
【請求項5】
上記滑り成分として、水添共役ジエン−芳香族ビニル系共重合体70質量部に対して、4〜25質量部の有機酸アミドを含有する請求項1〜3のいずれか1項記載のゴムホース。
【請求項6】
上記有機酸アミドが、炭素数10以上の脂肪酸アミド又は不飽和脂肪酸アミドである請求項5記載のゴムホース。
【請求項7】
上記最外層が、ゴムホースの外表面に塗工形成された厚さ0.1〜2mmの塗膜層である請求項1〜6のいずれか1項記載のゴムホース。

【図1】
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【公開番号】特開2010−253782(P2010−253782A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105868(P2009−105868)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】