説明

ゴム弾性多成分繊維、不織ウエブおよび不織布

1番目の重合体成分と2番目の重合体成分を含有させた多成分ストランドを結合させたウエブは、不織ウエブに関連した数多くの問題(粘着性およびブロッキングの両方を包含)を克服し得る。前記1番目の重合体成分と2番目の重合体成分を前記ウエブを構成するストランドの長さの少なくとも一部に沿って縦方向に伸びる実質的に個々別々のゾーンの中に配列させて、前記2番目の成分が入っているゾーンが前記ストランドの周囲表面の少なくとも一部を構成するようにする。また、前記1番目の重合体成分が示す弾力性の方が前記2番目の重合体が示すそれよりも大きいようにする。また、前記ストランドを増分的に引き伸ばすことによる活性化を利用したゴム弾性スパンボンド不織布製造方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は2002年10月24日付けで出願した仮出願連続番号60/420,949(引用することによって本明細書に組み入れられる)の優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、多成分ストランド(multi−component strands)から製造した不織布、不織ウエブ(nonwoven webs)の製造方法そして前記不織ウエブを用いた製品に関する。本発明の不織ウエブの製造は、少なくとも2種類の成分、即ち弾力性のある1番目の重合体成分と伸張性はあるが弾力性が低い方の2番目の重合体成分を包含する多成分ストランドを用いて実施可能である。
【背景技術】
【0003】
近年、使い捨て衛生用製品に不織物、特にゴム弾性不織物(elastomeric nonwovens)を用いることが劇的に増加している。例えば、弾力性のある不織布を包帯材料、衣服、おむつ、支持衣料(support clothing)および女性衛生用製品に組み込むことが行われている。ゴム弾性成分をそのような製品に組み込むと適合性、心地よさおよび漏れ制御が向上する。
【0004】
しかしながら、1層または2層の弾力性のない不織層と結合させた弾力性のある膜で構成させた数多くの積層品は、これが適切な張力および回復特性を示すようにする目的で、それを「活性化」させる必要がある。特に、そのような弾性膜/非弾性不織物の積層品の多くは、これが最終的な特性を示すようにする目的で、それに初期の延伸または引き伸ばし工程を受けさせる必要がある。幅広いウエブ製品に関係した伝統的な引き伸ばし装置には、通常の延伸用ロール(draw rolls)および幅出し機(tenter frames)が含まれる。不幸なことに、ゴム弾性布と併せて延伸用ロールを用いるともたらされる引き伸ばしが均一にならない可能性がある。幅出し機は高価でありかつ製造施設内に大きな空間を必要とする。
【0005】
本発明者らは向上したドレープ(drape)を示しかつ更に経済的に製造可能なゴム弾性不織布が本技術分野で求められているままであることに気づいた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要約)
本発明は、少なくともある程度ではあるが、少なくとも2種類の重合体成分を含んで成っていて一方の成分が弾力性を示しかつもう一方の成分が弾力性がより低い伸張性のある多数のストランドから生じさせて結合させた不織ウエブに増分的引き伸ばし(incremental stretching)を受けさせておくと本分野におけるいろいろな問題を克服することができることを驚くべきことに見いだしたことが基になっている。
【0007】
本発明は、一般に、弾力性のある不織ウエブおよび布を製造する方法に向けたものであり、この方法は、フィラメントの長さ方向に沿って縦方向に同一の広がりを持つ1番目と2番目の重合体成分を有する多数の多成分ストランドを溶融紡糸することを包含し得る。前記1番目の成分をゴム弾性重合体から生じさせそして前記2番目の成分を非ゴム弾性(non−elastomeric)重合体から生じさせる。その溶融紡糸したストランドを不織ウエブに成形した後、それを結合させそして少なくとも1つの方向に増分的に引き伸ばすことで、前記不織ウエブの弾性を活性化させる。ウエブを狭い間隔を置いて位置する箇所(closely spaced apart locations)で支えそして次にそれらの狭い間隔を置いて位置する箇所と箇所の間の前記ウエブの支えられていない部分を引き伸ばすことを通して、増分的引き伸ばしを達成する。これを最も容易には前記ウエブを1対の噛み合う波形ロール(meshing corrugated rolls)(これらは移動するウエブの方向に対して垂直な回転軸を有する)の間に形成される間隙に通すことを通して達成する。縦方向、横方向および斜め方向の引き伸ばしに適するように設計された増分的引き伸ばし装置が米国特許第5,861,074号(引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。その増分的引き伸ばし段階は、多成分ストランドのある部分が引き伸ばしで活性化され(stretch−activated)て弾力性を示すようになる一方で前記ストランドの他の部分は引き伸ばしで活性化されないで弾力性が実質的により低いままであるように前記ウエブを引き伸ばすことを包含し得る。有利な態様では、多成分ストランドの実質的に全部が均一に引き伸ばしで活性化されて弾力性を示すようになるように前記ウエブを増分的に引き伸ばす。
【0008】
そのような増分的引き伸ばし段階は、有利なさらなる面において、前記ウエブを縦方向と横方向の両方に増分的に引き伸ばすことを包含する。1つの態様では、前記ウエブを温度が約35℃未満の少なくとも1対の互いに噛み合う引き伸ばし用ローラーに通すことで増分的引き伸ばしを達成することができる。そのような態様の1つの面では、その互いに噛み合う引き伸ばし用ローラーによって、活性化されていなくて弾力性が実質的に低い方の縦方向に伸びるゾーンが間に位置することで分離されていて間隔を置いて位置する幅が狭い縦方向に伸びる引き伸ばしで活性化された弾力性のあるゾーンを前記布の中に生じさせる。本発明の有利な面では、増分的に引き伸ばされたウエブを温度が約35℃未満の2番目の対の互いに噛み合う引き伸ばし用ローラーに通すことで前記ウエブの中の活性化されていないストランドの2番目の部分を引き伸ばしで活性化させることで増分的引き伸ばしを達成してもよい。有利なさらなる面では、流体を前記ウエブの表面に向けて衝突させることと協力させて機械的な増分的引き伸ばしを実施してもよい。その衝突させる流体は有利には空気または水である。
【0009】
前記多成分ストランドに関して、前記1番目および2番目の成分は幅広く多様な重合体のいずれから生じさせたものであってもよい。本発明の1つの態様では、前記1番目の重合体成分をゴム弾性ポリウレタン、ゴム弾性スチレンブロック共重合体またはゴム弾性ポリオレフィンから生じさせそして前記2番目の重合体成分を前記1番目の成分より弾力性が低いポリオレフィンから生じさせる。
【0010】
本発明のある面はシース/コア(sheath/core)形態を有するストランドを製造することに向けたものであり、ここでは、増分的引き伸ばし段階でストランドのシースおよびコアの両方の中に波形を生じさせる。個々のストランドは非常に長く、一般的には連続押出し加工されたストランドであり、長さは無限である。そのストランドを増分的引き伸ばしで活性化させた後、それをより短い長さに切断することはせず、むしろ、ストランドの成形を一般的には増分的引き伸ばしを受けた不織ウエブの長さの実質的に全体に渡って波形の蛇腹様形態を有する構造がもたらされるように行った。そのような波形外観および構造は標準的な顕微鏡技術を用いることで観察可能であり、肉眼では不可能でないにしても検出するのは困難である。そのような不織ウエブの増分的引き伸ばしを受けた波形部分の中の個々のひだの厚みは本質的に当該ストランドのシース成分の幅であり、このように、厚みは典型的に0.1から2ミクロンの桁である。本発明の別の面は、分割されたパイV字形(segmented pie−wedge)または先端部を有する多葉形態(tipped multilobal configurations)のいずれかを有するストランドを溶融紡糸しそして増分的引き伸ばしを用いて前記成分を互いに分裂させるか或はストランドの長さに沿って波形、曲がりくねった形態または他の形態の外見(texture)を生じさせることに関する。
【0011】
本発明は、更に、本発明の方法で製造した弾力性のある不織布ばかりでなく弾力性のある多成分繊維も包含する。1つの有利な態様では、全体的に螺旋形態(キャンディーケインまたは理髪店の看板柱の外観に類似)を示すゴム弾性多成分繊維を準備する。このような態様の有利な面では、そのような螺旋形の繊維を更に分裂させることで、1種以上のゴム弾性成分の回りに非ゴム弾性成分を含有する螺旋形に取り巻かれた繊維を生じさせる。
【0012】
本発明は、1つの幅広い面において、弾力性のある不織布を製造する方法であり、この方法は、不織ウエブを少なくとも1つの方向に増分的に引き伸ばすことで前記不織ウエブの弾力性を活性化させて弾力性のある不織布を生じさせることを含んで成り、ここで、前記不織ウエブは、ストランドの長さ方向に沿って縦方向に同一の広がりを持つ1番目と2番目の重合体成分を有する多成分ストランドを多数含んで成るが、前記1番目の成分はゴム弾性重合体を含んで成りそして前記2番目の重合体成分は前記1番目の重合体成分より弾力性が低い重合体を含んで成る。1つの態様では、ストランドの長さ方向に沿って縦方向に同一の広がりを持つ1番目と2番目の重合体成分を有する多数の多成分ストランド(ここで、前記1番目の成分はゴム弾性重合体を含んで成りそして前記2番目の重合体成分は非ゴム弾性重合体を含んで成る)を溶融紡糸し、前記多成分ストランドを成形して不織ウエブを生じさせ、そして前記ストランドを結合させるか或は絡み合わせることで互いに密着して結合した不織ウエブ(coherent bonded nonwoven web)を生じさせることを通して、前記不織ウエブを生じさせることができる。1つの態様では、前記ウエブを増分的に引き伸ばすことに、前記多成分ストランドのある部分が引き伸ばしで活性化されて弾力性を示すようになる一方で前記ストランドの他の部分は引き伸ばしで活性化されないで弾力性が実質的により低いままであるように前記布を引き伸ばすことを含めてもよい。1つの態様では、前記ウエブを増分的に引き伸ばすことに、前記多成分ストランドの実質的に全部が引き伸ばしで活性化されて弾力性を示すようになるように前記布を引き伸ばすことを含めてもよい。1つの態様では、前記ウエブを増分的に引き伸ばすことに、前記ウエブを縦方向と横方向の両方に増分的に引き伸ばすことを含める。1つの態様では、前記ウエブを増分的に引き伸ばすことに、前記ウエブを温度が35℃未満の少なくとも1対の互いに噛み合う引き伸ばし用ローラーに通すことを含める。1つの態様では、前記ウエブを互いに噛み合う引き伸ばし用ローラーに通すことに、活性化されていなくて弾力性が実質的に低い方の縦方向に伸びるゾーンが間に位置することで分離されていて間隔を置いて位置する幅が狭い縦方向に伸びる引き伸ばしで活性化された弾力性のあるゾーンを前記布の中に生じさせることを含める。1つの態様では、前記ウエブを増分的に引き伸ばすことに、前記ウエブを1番目の対の互いに噛み合う引き伸ばし用ローラーに通すことで前記ウエブの1番目の部分を引き伸ばしで活性化させそして次に前記ウエブを2番目の対の互いに噛み合う引き伸ばし用ローラーに通すことで前記ウエブの中の活性化されていないストランドの2番目の部分を引き伸ばしで活性化させることを含める。1つの態様では、前記ウエブを増分的に引き伸ばすことに、更に、前記ウエブの表面に流体を衝突させることも含める。1つの態様における前記流体は水または空気のいずれかである。1つの態様において、前記1番目の重合体成分はゴム弾性ポリウレタンを含んで成りそして前記2番目の重合体成分は前記ゴム弾性ポリウレタンより弾力性が低いポリオレフィンを含んで成り、別の態様における2番目の重合体成分はポリプロピレン、ポリエチレンまたはこれらの混合物である。1つの態様では、前記溶融紡糸に、前記1番目および2番目の重合体成分をストランド断面の点でそれらがシース/コア形態を形成するように配列させることを含め、そして前記増分的に引き伸ばす段階に、前記ストランドのシースとコアの両方に波形を生じさせることを含める。1つの態様では、前記溶融紡糸に、前記1番目および2番目の重合体成分をストランド断面の点で前記重合体成分が分割されたパイの形態を形成するように配列させることを含め、そして前記増分的に引き伸ばす段階に、前記1番目と2番目の重合体成分をこれらが互いに離れるように分裂させることを含める。1つの態様では、前記溶融紡糸に、前記1番目および2番目の重合体成分をストランド断面の点で重合体成分が先端部を有する多葉形態を形成するように配列させることを含め、そして前記増分的に引き伸ばす段階に、前記1番目と2番目の重合体成分をこれらが互いに離れるように分裂させるか或は前記ストランドの長さ方向に沿って波形を生じさせるか或は曲がりくねった外見または他の非線形で不揃いな外見を生じさせることを含める。1つの態様では、前記多成分ストランドの少なくとも一部にシース/コア形態を持たせる。1つの態様では、前記多成分ストランドの少なくとも一部に三葉形態または先端部を有する三葉形態を持たせる。本明細書に記述する態様または他の態様の任意組み合わせを本発明の実施で用いることができる。
【0013】
本発明は、別の幅広い面において、弾力性のある不織布であり、これは、不織ウエブを形成するように不揃いに配列している多数の多成分ストランド、互いに密着して結合した不織ウエブが形成されるように前記ストランドを一緒に結合させている多数の結合部位またはストランドの実質的に不揃いな絡み合いを含んで成り、ここで、前記ウエブの前記ストランドは1番目と2番目の重合体成分を含有するが、前記1番目の重合体成分はゴム弾性重合体を含んで成りそして前記2番目の重合体成分は非ゴム弾性重合体を含んで成り、そしてここで、前記ウエブの前記多成分ストランドの1番目の部分は引き伸ばしで活性化されていて弾力性を示す。1つの態様において、前記ウエブの前記多成分ストランドの他の部分は、引き伸ばしで活性化されていなくて前記1番目の部分より弾力性が低い。1つの態様では、前記布に、活性化されていなくて弾力性が実質的に低い方の縦方向に伸びるゾーンが間に位置することで分離されていて間隔を置いて位置する幅が狭い縦方向に伸びる引き伸ばしで活性化された弾力性のあるゾーンを含める。1つの態様における前記1番目の重合体成分はゴム弾性ポリウレタンを含んで成りそして前記2番目の重合体成分はポリオレフィンを含んで成る。1つの態様における前記2番目の重合体成分はポリプロピレン、ポリエチレンまたはこれらの混合物である。1つの態様では、前記1番目および2番目の重合体成分をシースコア形態に配列させ、そして前記ストランドの引き伸ばしで活性化された部分には、前記ストランドのシースおよびコアの中に波形を持たせる。1つの態様では、前記1番目および2番目の重合体成分を分割されたパイの形態に配列させ、そして前記ストランドの引き伸ばしで活性化された部分の前記1番目および2番目の重合体成分をこれらが互いに離れるように分裂させるか、或は前記成分の両方が長さ方向に沿って波形を示すようにする。1つの態様では、前記1番目および2番目の重合体成分を先端部を有する多葉形態に配列させ、そして前記ストランドの引き伸ばしで活性化された部分の前記1番目および2番目の重合体成分をこれらが互いに離れるように分裂させるか、或は前記成分の両方が長さ方向に沿って波形を示すようにする。
【0014】
本発明は、別の幅広い面において、ゴム弾性成分と前記ゴム弾性成分より弾力性が低い成分を含んで成る多成分繊維であり、ここで、前記多成分繊維は全体として螺旋形の形態を示し、これは前記ゴム弾性成分の回りでかさ高くなった弾力性が低い方の成分を含有する。1つの態様では、前記繊維に増分的引き伸ばしを受けさせておく。
【0015】
本発明は、別の幅広い面において、多数の層を含んで成る衣類であり、ここで、前記層の中の少なくとも1層はこの上に記述した不織布を含んで成る。前記衣類は、例えばトレーニングパンツ、おむつ、吸収性のあるパンツ、下着、失禁用製品、女性衛生用品、労働用衣服、作業服、頭を覆う物、ズボン、シャツ、手袋、靴下、ふき取り繊維、手術衣、創傷包帯、包帯、外科的ドレープ、フェイスマスク、手術帽、手術用フード、靴を覆う物またはブーツスリッパ(boot slipper)などであってもよい。
【0016】
本発明は、別の幅広い面において、前記多成分ストランドから作られていて増分的引き伸ばしで活性化された不織ウエブである。
【0017】
本発明の繊維および製品は多様な用途で使用可能である。適切な用途には、例えばこれらに限定するものでないが、個人用使い捨て衛生製品(例えばトレーニングパンツ、おむつ、吸収性のあるパンツ、失禁用製品、女性衛生用品など)、使い捨て衣類(例えば、労働用衣服、作業服、頭を覆う物、パンツ、ズボン、シャツ、手袋、靴下など)、感染制御/クリーンルーム用製品(例えば手術衣および外科的ドレープ、フェイスマスク、頭を覆う物、手術帽およびフード、靴を覆う物、ブーツスリッパ、創傷包帯、包帯、殺菌用ラップ、拭く物、実験衣、作業服、ズボン、エプロン、ジャケット)、および耐久および半耐久用途、例えば寝具類およびシーツ、家具埃用カバー、衣服用芯地、自動車用カバー、そしてスポーツおよび一般用着衣などが含まれる。
(発明の詳細な説明)
本発明を本発明の具体的な態様と併せて本明細書の以下により詳細に説明するが、それを本開示が徹底的で完全であるように示しかつ本発明の範囲が本分野の技術者に完全に伝えられるように示す。しかしながら、本発明は多種多様な形態で具体化可能でありかつ本発明を本明細書に記述して説明する具体的な態様に限定するとして解釈されるべきでないと理解されるべきである。以下の説明で特定の用語を用いるが、そのような用語は単に説明の目的であり、本発明の範囲を限定することも制限することも意図しない。追加的注釈として、全体に渡って同様な数字は同様な要素を指す。
【0018】
この上で考察したように、本発明は、一般に、多成分ストランドから生じさせるウエブの製造および使用に関する。本発明の範囲に2種以上の成分を有するストランドを包含させることを意味すると理解されるべきである。その上、本発明では、ストランド、繊維およびフィラメントを指す総称的な用語として「ストランド」を用いる。従って、本明細書で用いる如き用語「ストランド」または「繊維」または「フィラメント」は同義語である。
【0019】
ここで、図1A−1Mを参照して、本発明の典型的な多成分ストランドの断面図を示す。示すように、本多成分ストランドは一般に1番目の重合体成分1と2番目の重合体成分2を含有する。
【0020】
その1番目の重合体成分を1種以上の「ゴム弾性」重合体から生じさせる。用語「ゴム弾性」は、一般に、伸びを受けた時に弾性限度内で変形または伸びを示す重合体を指す。例えば、ゴム弾性フィラメントから生じさせたスパンボンド布は、典型的に、この布を1回引っ張って30%伸ばした後にこの布の縦方向および横方向の回復可能伸び値を基にして少なくとも約75%の二乗平均平方根平均回復可能伸びを示す。ゴム弾性フィラメントから生じさせたスパンボンド布は、有利に、この布を1回引っ張って50%伸ばした後にこの布の縦方向および横方向の回復可能伸び値を基にして典型的に少なくとも約65%の二乗平均平方根平均回復可能伸びを示す。
【0021】
前記2番目の成分を1種以上の伸張性重合体、例えば1種以上の非ゴム弾性重合体から生じさせる。この2番目の成分である重合体は弾性回復を示すことができ、本多成分ストランドを引き伸ばした時に弾性限度内で伸び得る。しかしながら、この2番目の成分の選択では、弾性回復が前記1番目の成分である重合体のそれよりも劣る、例えば弾力性がより低いようにそれを選択する。このように、この2番目の成分は、有利に、引張り応力がかかった時に弾性限度を超えて伸びて永久的に伸びたままであり得る重合体である。
【0022】
そのような1番目および2番目の成分を一般的には本ストランドの縦方向に伸びる「ゾーン」の中に存在させる。このストランドの中の縦方向に伸びるゾーンの配列を図1A−1Mに挙げた断面図で見ることができる。これらの図の各々で見られるように、1番目の重合体成分1と2番目の重合体成分2は本ストランドの中の実質的に個々別々のゾーンの中に存在する。
【0023】
本発明の有利な態様では、図1Aから1Eに示すように、2番目の成分のゾーンが実質的に本ストランドの周囲表面全体を構成している。有利には、この2番目の成分が本ストランドの周囲表面の少なくとも約50%を構成するようにする。そのような態様の典型的な形態には、同心および偏心のシース/コア形態が含まれる(それぞれ図1Aおよび1B)。典型的なさらなるシース/コア断面には、三葉形(図1C)および四葉形中心部を伴う円形(図1D)が含まれる。2番目の成分を周囲に含有するさらなる面には、「海の中の島」断面(図1E)が含まれる。そのような「海の中の島」形態では、1番目の成分は分散して数多くの微細な連続ストランドを形成している。本発明の有利な態様では、本発明のストランドの形態を図1Aに示す対称的なシース/コア配置または図1Bに示す非対称的なシース/コア配置のいずれかにする。非対称的な形態には、有利に、螺旋(コイル)形状または接合ストランド(conjugate strands)をかさ高くする(bulking)他の手段[これで生じさせた布が結果として示すかさ高性が向上するような]が含まれる。
【0024】
別法として、そのようなストランドの形態を、前記1番目と2番目の成分が分裂または分離してより微細なデニールのミクロフィラメントを形成し得るような形態にしてもよい。例えば、そのようなストランドに含める1番目および2番目の成分をそれらが繊維の長さ方向に沿って伸びる個々別々の密封されていない断面セグメント(distinct unocclusive cross−sectional segments)[これらのセグメントが解離し得るように]を形成するように配列させてもよい。本明細書で用いる如き用語「分裂」および「解離」に、ストランドがこのストランドの中の成分のいずれかの部分の中でなんらかの度合の分離を示すことを含める。有利な態様では、成分と成分の間の元々の接触面全体の少なくとも50%が分裂後にもはや連結していない。
【0025】
分裂可能態様の典型的なストランド形態には、横並び形態(図1F)、パイV字形態(図1G)、中空パイV字形態(図1H)および区分形態(図1I)が含まれる。有利な1つの態様では、先端部を有する三葉構造(図1M)の分裂可能ストランドを生じさせる。そのような有利な態様では、先端部2を有利に非ゴム弾性重合体で構成させる一方で最内部1をゴム弾性重合体で構成させてもよい。
【0026】
適切な分裂可能形態に必ずしも対称的な幾何形態を持たせる必要はないが、但しそれらが分裂が邪魔されるような度合で密封されていることも連結していることもないことを条件とすることを注目すべきである。従って、適切に分裂可能な形態にはまた非対称的な形態、例えば図1Jおよび1Kに示す形態なども含まれる。図1Jに、不規則に大きな末端セグメントを有する区分形態の接合ストランドを示す。図1Kに、不規則に大きなセグメントを1つ有するパイV字形態の接合ストランドを示す。そのような非対称的形態は、接合繊維に螺旋または渦巻き形状を与えるに適切であり、従ってそれから生じさせる布のかさ高性を向上させるに適切である。
【0027】
そのような分裂可能ストランドは必ずしも通常の円形繊維でなくてもよい。他の有用な形状には長方形、楕円形および多葉形などが含まれる。本発明に特に適したストランド形状は長方形または楕円形である。図1Lに典型的な長方形の接合ストランドの断面を示す。
【0028】
本多成分ストランド内の成分の各々は、更に、かなり多数のセグメントに分離していてもよく、特に分裂可能形態であってもよい。例えば、本多成分ストランドの中の各成分は約2から20個のセグメントに分離していてもよい。例えば、1つの有利な態様では、セグメントを4つ有する多成分ストランドを生じさせる。更に、本発明の多成分ストランドは幅広い範囲のデニールで生じさせることができる。本多成分ストランドに典型的なデニールは約1.5から15の範囲である。1つの有利な態様における多成分ストランドは約2デニールのストランドである。
【0029】
本多成分ストランドの中に存在させる1番目および2番目の成分の量は本繊維の具体的な形状に応じて適切な如何なる量であってもよい。有利な態様では、1番目の成分が本繊維の主要部を構成、即ちストランドの重量を基準にして(「bos」)約50重量パーセント以上を構成するようにする。例えば、1番目の成分を本多成分ストランドの中に有利には約80から99重量パーセントbosの範囲の量、例えば約85から95重量パーセントbosの範囲の量で存在させてもよい。そのような有利な態様では、非ゴム弾性成分を約50重量パーセントbos未満の量、例えば約1から約20重量パーセントbosの範囲の量で存在させることになるであろう。そのような有利な態様の有益な面では、2番目の成分を、この2番目の成分として用いる正確な重合体1種または2種以上に応じて、約5から15重量パーセントbosの範囲の量で存在させてもよい。1つの有利な態様では、コアとシースの重量比が約85:15に等しいか或はそれ以上、例えば95:5の比率のシース/コア形態を生じさせる。別法として、特に繊維の経済性が主要な関心である用途では、1番目の成分を約30重量パーセント以下の如き少ない量で存在させることも可能である。
【0030】
本出願者らは、多成分ストランドに特別な形態を持たせることに加えて更に個々の成分を有効な量で含有させると予想外な特性が得られることを見いだした。より具体的には、本出願者らは、2番目の成分のゾーンが本ストランドの周囲表面全体を実質的に構成する態様、例えば図1Aから1Eに示す態様などでは存在させる2番目の成分の量を約20重量パーセントbos未満にすると引き伸ばしによる充分な活性化を受けさせた後に1番目および2番目の両方の成分の中に断続的波形が生じ得ることを見いだした。そのような波形が生じる結果として、得られる布が超極細繊維触感(microfiber tactility)になる。
【0031】
シースとコアの両方に存在する波形は、繊維軸に対して垂直な周囲方向に生じた多数のリブ(ribs)の形態であり、それらは繊維軸方向に沿って広がる。そのような波形によって、繊維の周囲に蛇腹のような外側表面形状が与えられる。そのリブの高さ(頂上から谷)は有利に繊維直径の少なくとも約1/20である。リブ各々の幅(頂上から頂上)を有利には数ミクロン以下にする。引き伸ばしによる活性化段階が引き金になった波形を繊維の中にそれらが弛緩状態の時に存在させる。その波形の形状および寸法を変えるのは容易であり得る。例えば、重合体の種類、成分の比率、紡糸および/または引き伸ばしによる活性化中に起こる延伸の度合または繊維を冷却する速度などを変えることで、軸方向のピッチ(pitch)、高さおよび幅を変えることができる。
【0032】
本発明の分裂可能ストランドはまた有利な繊維幾何形態も示し得る。より具体的には、本発明の分裂可能ストランドは、引き伸ばしで活性化させたストランドの中の非ゴム弾性成分がより中心に位置するゴム弾性成分1種または2種以上の回りで分裂後にかさ高くなるか或は一団になることでそれ自身がかさ高くなる構造(self−bulked constructions)を構成する可能性がある。このようにかさ高くなることで、かさ高くならない匹敵するストランドに比べて手触りまたは触感がより柔らかいことを特徴とする「自己かさ高(self−textured)」ストランドがもたらされる。分裂可能な形態が分離を起こすと、それは更に分裂後に長さ方向に沿って縮れまたは波形を示し得る。そのような縮れまたは波形が生じるとそれらはまた分裂した繊維の触感または感触がより柔らかになることにも貢献すると期待することができる。
【0033】
有利な態様では、ゴム弾性成分を分裂可能形態物の内部領域または他の様式の凹型領域の中に存在させることで、結果として分裂した繊維の柔らかさを更に最適にしかつ紡糸および急冷中の隣接するストランドのゴム弾性成分間の接触を最小限にする。例えば、先端部を有する三葉形の繊維にゴム弾性内部と非ゴム弾性先端部を与えてもよい。ゴム弾性重合体が与える美的影響を更に最小限にしかつ押出し加工中に起こるストランドとストランドの間のゴム弾性接触の度合を軽減する目的で、多成分形態物の中の完全には包み込まれていないゴム弾性成分の量を最小限にすることができる。例えば、分裂可能形態物に含有させるゴム弾性成分の量を70重量パーセント以下にするのが有利であり得る。
【0034】
この上に簡単に述べたように、更に、本発明に従って渦巻きまたは螺旋形繊維を生じさせることも可能である。渦巻きまたは螺旋形態のストランドは布構造に数多くの利点を与える可能性があり、それにはかさ高性の向上が含まれる。非対称的形態、例えば図1B、1Jまたは1Kなどを利用して、この上に述べたように、多成分ストランドに渦巻き構造を与えることができる。また、改造した紡糸口金デザインを用いてストランドに渦巻きまたは螺旋構造を与えることも可能である。より具体的には、紡糸口金の穴(またはスロット)の出口表面をスピンライン(spin line)の法平面に対してある角度、例えば傾斜角で切断してもよい。そのような傾斜角は複合繊維ストランドに角運動量を与えることでそれをよじらせるか或は軸上で回転させると考えている。そのようなデザインは重合体特性の差にも延伸にも熱にも頼ることなく渦巻き形態を作り出す。延伸を受けていないフィラメントの場合、そのフィラメントの形状はスクリューの形状のようであり、そのスクリューのねじ山の少なくとも一部は2番目の非ゴム弾性成分で構成されておりそして軸は主にゴム弾性体で構成されている。これは、多成分繊維に延伸または加熱を受けさせる数多くの場合[この場合のフィラメントはスプリングのように見える(螺旋波形(helical crimp)として知られる)]に生じるそれとは異なる。本発明の繊維は加工が理由で螺旋ねじれ(スクリュー)と螺旋波形(コイルスプリング)の両方を構成し得る。
【0035】
本発明に従う螺旋形もしくは渦巻き形ストランドは隣接する繊維間でいくらか起こり得るゴム弾性体とゴム弾性体の接触を更に最小限にすることから有益である。その上、分裂可能螺旋構造物の場合、非ゴム弾性成分がゴム弾性成分の回りを取り巻く度合が分裂後により良好になり得る。そのように分裂可能な螺旋形態物では、取り巻く度合が向上することで2番目の成分が示す遮蔽特性が向上することから、結果として得る布のゴムのような触感が低下しかつかさ高さが高くなることが理由でより柔らかな触感が与えられる。このような利点は繊維が分裂する場合および分裂しない場合の両方に存在する。
【0036】
前記1番目および2番目の成分として用いるに適した材料は幅広く多様であり得る。典型的には、そのような材料を当該ストランドに望まれる機能を基にして選択する。1つの態様では、本発明の成分で用いる重合体が示すメルトフロー(melt flows)は約5から約1000の範囲である。メルトブロー方法(meltblowing process)では一般にスパンボンド方法の場合に比べてメルトフローが高い重合体を用いる。
【0037】
前記1番目の成分を本技術分野で公知の1種以上のゴム弾性重合体の任意組み合わせから生じさせてもよい。前記1番目の成分は、例えばポリウレタン(ポリエステルポリウレタンおよびポリエーテルポリウレタンの両方を包含)、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミド、低結晶性(密度<0.90g/cm)のポリオレフィン(例えばゴム弾性ポリプロピレン、ゴム弾性ポリエチレン、そしてプロピレンおよび/またはエチレンが基になった共重合体およびインターポリマー)、インターポリマー(結晶性および非結晶性成分のランダム共重合体、例えばエチレン/スチレンの疑似ランダム共重合体)、ゴム弾性繊維を形成するブロック共重合体およびこれらの混合物などから成形可能である。ゴム弾性ポリプロピレンは、例えば米国特許第6,525,157号、WO 2003040201(米国特許出願20030088037はWO 2003040201に対応する)などに記述されており、これらは全部引用することによって本明細書に組み入れられる。ゴム弾性繊維を形成する典型的なブロック共重合体には、コ−ポリエステル、コ−ポリアミド、ポリスチレン(S)と不飽和もしくは完全水添ゴムブロックが基になったジブロックおよびトリブロック共重合体が含まれる。ポリスチレンと併せて用いるに適したゴムブロックには、ブタジエン(B)、イソプレン(I)または水添形であるエチレン−ブチレン(EB)が含まれる。このように、S−B、S−I、S−EBばかりでなくS−B−S、S−I−SおよびS−EB−Sブロック共重合体を用いることができる。有利な態様では、1番目の成分をポリウレタン、例えばポリエステルポリウレタンなどまたはポリエステル系ゴム弾性体から生じさせる。
【0038】
1番目の成分に含めるに適したポリウレタンにはそれらが繊維を形成する限り特に制限はないが、熱可塑性で硬度が低い(ショアA≦80)のポリウレタンが有益であると考えている。熱可塑性ポリウレタンは、高分子量のジオールと有機ジイソシアネートと鎖伸長剤(chain extender)を反応させることで得られる重合体であり、それは溶融紡糸可能である。有利には、ポリウレタンであるゴム弾性体の分子量を少なくとも100,000ダルトンにする。
【0039】
前記高分子量のジオールは両末端にヒドロキシル基を有し、これに持たせる平均分子量は500−5,000であってもよい。高分子量ジオールの例はポリオールの種類、例えばポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールなど、エステルの種類のポリオール、例えばポリヘキサメチレンアジペート、ポリブチレンアジペートなど、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオールなど、またはこれらの混合物である。
【0040】
鎖伸長剤として、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、分子量が500以下のビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンが存在する。これらの中で1,4ブタンジオールおよびビスヒドロキシエトキシベンゼンが一般的であり、これらを有利に用いることができる。アミン末端を1つ以上有する鎖伸長剤、例えばエタノールアミンまたはエチレンジアミンなども考えられるが、通常は、それをジオールである鎖伸長剤との混合物として用い、比較的低いパーセント(鎖伸長剤の10重量%未満)で用いる。
【0041】
典型的な有機ジイソシアネートには、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、黄色化しないジイソシアネート、例えば1,6−ヘキサンジイソシアネートなど、およびこれらの混合物が含まれる。これらの中で特にMDIが有利である。
【0042】
ハードセグメント(hard segment)の重量パーセント(%HS)(これはポリウレタン中のMDIおよび鎖伸長剤の含有量の指数であり、ポリウレタンの硬さに関係している)を一般に約55重量パーセントから15重量パーセントの範囲にする。有利な態様では、ポリウレタンのハードセグメント含有量を約40重量パーセントから20重量パーセントにする。
【0043】
その上、公知の変性剤(modifiers)または混和剤(miscibilizing agents)、例えば二酸化チタン、染料および顔料、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、殺菌剤などをポリウレタンに添加することも可能である。
【0044】
上述した高分子量ジオール、有機イソシアネートおよび鎖伸長剤に加えて、より高い官能性を有する、即ちヒドロキシルまたはイソシアネート基を3個以上有する適合性成分を低いパーセントでポリウレタンに混合することである程度架橋させてもよい。一般的には、架橋全体を10当量%(equivalence %)未満、例えば5当量%未満に保持するのが有益である。
【0045】
この上で述べたように、また、ポリエステル系ゴム弾性体をゴム弾性成分として用いることも可能である。ポリエステル系ゴム弾性体は、一般に、短鎖エステル部分をハードセグメントとして含有しかつ長鎖ポリエーテル部分および/または長鎖ポリエステル部分をソフトセグメント(soft segment)として含有する。その短鎖エステルは典型的には芳香族ジカルボン酸と分子量が250以下の低分子量ジオールからなる。ハードセグメントに適した芳香族ジカルボン酸には、テレフタル酸、イソフタル酸、ビ安息香酸、ベンゼン核を2つ有する置換ジカルボン酸化合物、例えばビス(p−カルボキシフェニル)メタン、p−オキシ(p−カルボキシフェニル)安息香酸、エチレン−ビス(p−オキシ安息香酸)、1,5−ナフタレンジカルボン酸などが含まれる。特にフェニレンジカルボン酸、即ちテレフタル酸およびイソフタル酸が有益である。典型的な低分子量ジオールには、分子量が約250以下の全てのジオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどが含まれる。そのような脂肪族ジオールが含有する炭素原子の数は有利に2−3である。
【0046】
ポリエステル系ゴム弾性体に用いられる典型的な長鎖ポリエーテル部分には、ポリ(1,2−および1,3−プロピレンオキサイド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコール、エチレンオキサイド−1,2−プロピレンオキサイドのランダムもしくはブロック共重合体などが含まれる。ポリ(テトラメチレンオキサイド)グリコールを長鎖ポリエーテルとして有利に用いることができる。ポリエステルであるゴム弾性体に用いられる典型的な長鎖ポリエステル部分には、ポリ(脂肪族ラクトンジオール)、例えばポリカプロラクトンジオール、ポリバレロラクトンジオールなどが含まれる。特にポリカプロラクトンジオールが有利である。他の長鎖ポリエステル部分として、脂肪族ポリエステルジオール、例えば二塩基性酸、例えばアジピン酸、セバシン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、グルタル酸、こはく酸、しゅう酸、アゼライン酸などと低分子量ジオール、例えば1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどの反応生成物などが存在する。特にポリブチレンアジペートが長鎖ポリエステルとして有利である。
【0047】
この上に挙げたゴム弾性体の例として、市販品、例えばHYTREL(商標)ゴム弾性体(Du Pont−Toray Co.)、PELPRENE(商標)ゴム弾性体(Toyobo Co.)、GRILUX(商標)ゴム弾性体(Dainippon Ink and Chemicals Inc.)、ARNITEL(商標)ゴム弾性体(AKZO Co.)などを用いることができる。
【0048】
ポリアミド系ゴム弾性体もまたハードセグメントとソフトセグメントを含んで成る。ハードセグメントとして、ポリアミドブロック、例えばナイロン66、610、612またはナイロン6、11、12などを用いることができる一方、ソフトセグメントとしてポリエーテルブロック、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどまたは脂肪族ポリエステルジオールを用いることができる。結果として得られるポリアミド系ゴム弾性体が示す特性は、ハードセグメント用ポリアミド原料、ソフトセグメント用ポリエステルもしくはポリエーテル原料およびハードセグメント/ソフトセグメントの比率に伴って変わる。例えば、ハードセグメントを増加させると、機械的強度、耐熱性および耐化学薬品性が向上するが、ゴム弾性が低下する。逆にハードセグメントを減少させると、耐寒性および柔らかさが向上する。
【0049】
この上に挙げたポリアミド系ゴム弾性体の例として、市販品、例えばDIAMIDE(商標)ゴム弾性体(Daicel Huls Co.)、PEBAX(商標)ゴム弾性体(Toray Corp.)およびGRILUX(商標)ゴム弾性体(Dainippon Ink and Chemicals Inc.)などを用いることができる。
【0050】
ポリスチレンが基になったブロック共重合体であるゴム弾性体も同様にハードセグメントとソフトセグメントを含んで成る。そのハードセグメントをポリスチレンから生じさせることができる。ソフトセグメントはポリブタジエン、ポリイソプレンまたはポリエチレンブチレン(ブロック共重合させた)に由来するものであってもよい。この上に示した材料から得られるゴム弾性体をSBS、SISおよびSEBSとして表すことができる。また、スチレンと例えばエチレンから作られたランダム共重合体(典型的にはポリエチレンの流れの中に単一のスチレン分子が時折挿入している)を用いることも可能である。その上、スチレン部分を増加させると機械的強度が向上するが、それによって硬さが上昇してゴム弾性が失われる傾向がある。逆に、スチレン部分を減少させると反対になる。
【0051】
この上に挙げたポリスチレン系ゴム弾性体として、市販品、例えばKRATON G(商標)ゴム弾性体(Kraton Corp.)、VECTORゴム弾性体(Dexco)、CARIFLEX(商標)ゴム弾性体(Shell Kagaku K.K.)、RABALON(商標)ゴム弾性体(Mitsubishi Petroleum Co.)、TUFPRENE(商標)ゴム弾性体(Asahi Chemical Industry Co.)、ARON(商標)ゴム弾性体(Aron Co.)を用いることができる。
【0052】
本発明で用いるに適したさらなる市販ゴム弾性体には、Dow ChemicalのPELLETHANE(商標)ポリウレタン、Kraton Corp.が販売しているKRATON重合体およびDEXCOが販売しているVECTOR重合体が含まれる。他のゴム弾性熱可塑性重合体には、ポリウレタン系ゴム弾性材料、例えばBASFが販売しているELASTOLLAN、B.F.Goodrich Companyが販売しているESTANEなど、ポリエステル系ゴム弾性材料、例えばAkzo Plasticsが販売しているARNITELなど、およびポリエーテルアミド材料、例えばElf Atochem Companyが販売しているPEBAXなどが含まれる。また、異相ブロック共重合体、例えばMontelが商標CATALLOYの下で販売している異相ブロック共重合体なども本発明で有利に用いる。また、米国特許第5,594,080号に記述されているポリプロピレン重合体および共重合体も本発明で用いるに適する。また、ゴム弾性ポリエチレン、例えばDow Chemicalから入手可能な58200.02PEゴム弾性体およびExxon Chemical Companyから入手可能なEXACT 4023などを1番目の成分として用いることも可能である。また、ゴム弾性体の重合体混合物、例えばこの上に挙げたゴム弾性体の互いの混合物およびそれと非ゴム弾性熱可塑性重合体、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロンなどとの混合物を本発明で用いることも可能である。本分野の技術者は、完全な弾性伸びおよび回復特性から比較的低い伸びおよび回復特性に至る範囲の弾性が得られるように重合体の化学的性質および/またはゴム弾性体と非ゴム弾性重合体の混合を利用してゴム弾性を調節することができることを認識するであろう。
【0053】
1番目の成分が1種以上のゴム弾性体の混合物の場合、それらの材料を最初に適切な量で一緒にした後に混合する。用いることができる商業的に良好に適した混合装置には、とりわけ、Barmag AG(ドイツ)が供給しているBarmag 3DD三次元動的混合装置およびRubber and Plastic Research Association(英国)が供給しているRAPRA CTMキャビティートランスファー(cavity−transfer)混合装置が含まれる。
【0054】
前記1番目の成分を生じさせる目的で用いる重合体もしくは重合体組成物に比べて劣った弾性(低い弾性)を示す重合体もしくは重合体組成物のいずれかを用いて2番目の成分を生じさせることができる。繊維を形成する典型的な非ゴム弾性熱可塑性重合体には、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリブテンなど、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレンおよびこれらの混合物が含まれる。そのような重合体はホモ重合体であってもよいか或は共重合用単量体を比較的少量含有していてもよいことは理解されるであろう。
【0055】
適切な2番目の成分である重合体組成物の具体的な一例はポリエチレン/ポリプロピレン混合物である。このような混合物では、典型的に、ポリエチレンとポリプロピレンを当該材料がポリプロピレンを2から98重量パーセント含有していて残りがポリエチレンであるような比率で混合する。そのような重合体混合物から生じさせたストランドは柔らかな手触りを有していて「粘着性」も表面摩擦もほとんどない。
【0056】
いろいろな種類のポリエチレンを2番目の成分として用いることができるが、線状の低密度ポリエチレンが最も好適である。LLDPEの製造では、この重合体をポリプロピレンと一緒に溶融紡糸するに良好に適するように、いろいろな密度およびメルトインデックス特性が得られるように製造を行うことができる。線状の低密度ポリエチレン(LLDPE)はまたフィラメント押出し加工でも良好に機能する。好適な密度値は0.87から0.96g/ccの範囲であるが、0.90から0.96がより好適であり、そして好適なメルトインデックス値は一般に0.2から約150g/10分の範囲である(ASTM D1238−89、190℃)。
【0057】
2番目の成分の中に含めるポリプロピレンはイソタクティックもしくはシンジオタクテックポリプロピレンであるホモ重合体、共重合体またはターポリマーであってもよいが、ホモ重合体の形態が最も好適である。変性された低密度もしくは高メルトフロー(MF)のポリプロピレン(PP)を用いることも可能である。典型的なメルトフローには35、25および17が含まれる。本発明で使用可能な市販ポリプロピレン重合体の例には、ARCO 40−7956X、BP 50−7657X、Basell PH805およびExxonmobil 3155E2が含まれる。
【0058】
2番目の成分として用いるに適した典型的なポリエステルには、ポリエチレンテレフタレートが主材料であるが別のジカルボン酸成分、例えばイソフタル酸などを50モル%以下の量で用いそして/または別のジオール成分、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオールなどを35モル%以下の量で用いて共重合を行うことで得られる共重合ポリエステルが含まれる。
【0059】
2番目の成分が混合物の場合、1番目の成分の場合と同様に、重合体材料、例えばポリエチレンおよびポリプロピレンなどを適切な比率の量で一緒にして密に混合した後、繊維を生じさせる。
【0060】
本発明の多成分ストランドの主成分をこの上に記述してきたが、前記1番目および/または2番目の重合体成分に、また、本多成分ストランドに悪影響を与えない他の材料を含有させることも可能である。例えば、前記1番目および2番目の重合体成分に、また、これらに限定するものでないが、染料、顔料、抗酸化剤、紫外線安定剤および吸収剤、界面活性剤、蝋、流動促進剤、艶消し剤、導電剤、殺菌剤、混和剤、固体溶媒、粒子、および当該組成物の成分が示す加工性または分裂性(splittability)を向上させる目的で添加可能な材料、ラジカル捕捉剤、アミン、紫外線抑制剤、着色剤、充填材、アンチブロック剤、スリップ剤、光沢向上剤など、およびこれらの組み合わせを含有させることも可能である。添加剤を存在させる場合、各添加剤を典型的には約5重量パーセント未満の量で用いる。
【0061】
本発明に従うストランドは、布、特に不織布の製造で使用可能である。本ストランドを用いてヤーンおよび糸を生じさせることも可能であり、それらを次にニットまたは織り布の中に組み込んでもよい。
【0062】
本発明に従うゴム弾性多成分ストランドは複合繊維の技術で公知の如何なる手段を用いて溶融紡糸されてもよい。本発明の多成分ストランドが完全な範囲の弾性を示すようにする目的で、一般に、紡糸後に活性化段階、例えば引き伸ばしによる活性化段階を設ける必要がある。例えば、本発明の紡糸したままのシース/コアストランドは、活性化工程で繊維の中に波形を導入して弾力性を向上させるまでは、相対的に滑らかな表面を有しかつ堅い触感を有することを特徴とする。その波形によって本ストランドの中に柔軟さがもたらされるばかりでなく柔らかな手触りももたらされる。そのような活性化段階によって与えられる向上した弾性挙動は、初期弾性率が低下することで示される。
【0063】
本発明の紡糸したままの分裂可能ストランドも、同様に、活性化工程で本ストランドを完全または部分的にそれらの構成部分に分裂させるまでは相対的に滑らかな表面と堅い触感を有することを特徴とする。増分的引き伸ばしによる活性化を受けさせると、その結果として分裂したストランドは、非ゴム弾性成分がゴム弾性成分1種または2種以上の回りでかさ高くなるか或は一団となることで、より柔らかな自己テクスチャ化表面(self−textured surface)を示す。本発明の活性化を受けさせた分裂可能ストランドが示す初期弾性率も低下することを同様に注目されたい。
【0064】
増分的引き伸ばしを用いた活性化工程を、一般に、本ストランドを不織ウエブまたは布に成形した後に実施するが、それを先に行うことも可能である。この活性化工程では、一般に、前記不織ウエブもしくは布を増分的に約1.1から10.0倍引き伸ばす。有利な態様では、前記ウエブもしくは布に引き伸ばしまたは延伸をそれの最初の長さの約2.5倍になるまで受けさせる。本発明に従う増分的引き伸ばしは本技術分野で公知の如何なる手段で達成されてもよい。
【0065】
不織繊維含有ウエブおよびゴム弾性フィルムの出発または元々の積層品を引き伸ばす目的で多種多様な引き伸ばし装置および技術を用いることができる。増分的引き伸ばしは、例えば対角線噛み合い引き伸ばし装置、横方向(「CD」)噛み合い引き伸ばし装置、縦方向(「MD」)噛み合い引き伸ばし装置などを用いて達成可能である。対角線噛み合い引き伸ばし装置には、1対の左側と右側の螺旋歯車様要素が平行な軸上に含まれている。それらの軸は2個の機械側板の間に位置していて、下方の軸は固定式軸受けの中に位置しかつ上方の軸は垂直に滑らせることができる部材の中の軸受けの中に位置する。その滑らせることができる部材をV字形要素(これはねじを調整することで作動可能)で垂直方向に調整可能である。前記V字形要素をねじ込むか或はゆるめると前記垂直に滑らせることができる部材がそれぞれ上下に動き、それによって、上方の噛み合うロールの歯車様歯と下方の噛み合うロールが更に噛み合うか或は離れる。前記噛み合うロールの歯の噛み合いの深さを示す目的で側面の枠に取り付けたミクロメーターを作動させることができる。エアシリンダを用いて前記滑らせることができる部材をその調整するV字形要素に対してしっかりと噛み合う下方の位置に保持することで、引き伸ばしを受けさせる材料が及ぼす上方に向かう力に対抗させる。また、ある材料に活性化を受けさせる時にそれを噛み合う装置に通すか或は機械間隙点の全部を開放する安全回路と協力させる目的で、前記シリンダを引っ込めることによって前記上方の噛み合うロールと下方の噛み合うロールを互いに離すことも可能である。固定式の噛み合うロールを駆動させる目的で典型的には駆動手段を用いる。機械のスレッディング(threading)または安全の目的で上方の噛み合うロールを離すことができるようにすべき場合には、再び噛み合わせた時に一方の噛み合うロールの歯が常にもう一方の噛み合うロールの歯の間に来ることを確保しかつ噛み合う歯の歯先円と歯先円の間の物理的接触が損なわれないようにする目的で、上方の噛み合うロールと下方の噛み合うロールの間に抗反発歯車配置(antibacklash gearing arrangement)を用いるのが好適である。噛み合うロールが一定して噛み合ったままであるようにすべき場合には、典型的に、上方の噛み合うロールを駆動させる必要はない。駆動させる噛み合うロールが引き伸ばしを受けさせるべき材料を通るようにすることで駆動を達成することができる。これらの噛み合うロールは微細なピッチの螺旋歯車に類似しているかもしれない。1つの態様では、ロールの直径を5.935”にし、螺旋角を45゜にし、標準ピッチを0.100”にし、直径ピッチを30にし、圧力角を141/2゜にし、そしてこのロールは基本的に長い歯先円が先端に存在する歯車(long addendum topped gear)である。それによって狭くて深い歯の輪郭がもたらされることから、材料の厚みに関して約0.090”に及ぶ互いの噛み合い(intermeshing engagement)が可能になりかつ歯の側面に約0.005”の隙間を存在させることができる。その歯のデザインは、回転トルクを伝達するデザインではなくかつ通常の互いに噛み合う引き伸ばし操作で金属と金属が接触するようなデザインでもない。CD噛み合い引き伸ばし装置は、噛み合うロールのデザインの点で異なるが、対角線で噛み合う引き伸ばし装置と同じであり、他の主要でない領域は以下に示す。CD噛み合い要素(CD intermeshing elements)は噛み合う深さを大きくすることができることから、上方の軸を上下させた時に2本の噛み合うロールの軸が平行なままであるようにする手段を装置に組み込むことが重要である。これは、一方の噛み合うロールの歯が常にもう一方の噛み合うロールの歯の間に来ることを確保しかつ噛み合う歯と歯の間の物理的接触が損なわれないようにする目的で必要である。固定式ギアラック垂直に滑らせることができる部材と並列になるようにそれが各サイドフレームに取り付けられているラックとギアの配置を用いることで、そのような平行移動を確保する。1つの軸がサイドフレームに沿って動きかつ垂直に滑らせることができる部材の各々の中の軸受けの中で作動する。1つのギアが前記軸の各末端部の所に位置しそしてラックと噛み合った状態で作動することで所望の平行移動がもたらされる。CD噛み合い引き伸ばし装置用の駆動装置は、比較的高い摩擦係数を有する材料を噛み合いで引き伸ばす場合を除いて、上方と下方の両方の噛み合うロールを作動させるべきである。この駆動装置は必ずしも抗反発である必要はない。CD噛み合い要素は、固体状材料から機械加工された要素であるが、直径が異なる2個の盤を交互に積み重ねたものであるとして最良に記述可能である。1つの態様における噛み合う盤は、直径が6”で厚みが0.031”であってもよく、それらの縁に沿って完全な半径を有する。それらの噛み合う盤を分離しているスペーサーディスク(spacer disks)は直径が5.5”で厚みが0.069”であってもよい。このような形態の2本ロールは0.231”に及んで噛み合い得ると共に材料のために残るあらゆる側面の隙間は0.019”である。このCD噛み合い要素配置のピッチは、対角線噛み合い引き伸ばし装置の場合と同様に0.100”であってもよい。MD噛み合い引き伸ばし装置と対角線噛み合い引き伸ばし装置は、噛み合いロールのデザインを除いて同じであり得る。MD噛み合いロールは微細なピッチの平歯車に非常に似ている。1つの態様では、ロールの直径を5.933”にし、ピッチを0.100”にし、直径ピッチを30にし、圧力角を141/2゜にし、そしてこのロールは基本的に長い歯先円が先端に存在する歯車である。より大きな隙間を与える狭い歯がもたらされるようにギアホブオフセット(gear hob offset)が0.010”のロールを用いて、2番目のパス(second pass)を行うことも可能である。そのような配置にして約0.090”の噛み合いを用いると材料の厚みに関する側面の隙間は約0.010”になるであろう。この上に記述した対角線、CDまたはMD噛み合い引き伸ばし装置を用いて本発明の増分的に引き伸ばされた不織ウエブを生じさせることができる。
【0066】
1つの適切な増分的引き伸ばし装置の典型的な構造配置を図2に示す。増分的引き伸ばし装置10には、一般に、間隙を形成するように位置する1対の1番目の引き伸ばし用ローラー12(例えば上部)と2番目の引き伸ばし用ローラー14(例えば下部)が含まれている。前記1番目の増分的引き伸ばし用ローラー12には、一般に、突起部、例えば隆起した環と相当する溝が多数含まれており、それらは両方とも1番目の増分的引き伸ばし用ローラー12の周囲全体の回りに位置する。2番目の増分的引き伸ばし用ローラー14にも同様に突起部、例えば隆起した環と相当する溝が多数含まれており、それらもまた両方とも2番目の増分的引き伸ばし用ローラー14の周囲全体の回りに位置する。前記1番目の増分的引き伸ばし用ローラー12に備わっている突起部が前記2番目の増分的引き伸ばし用ローラー14に備わっている溝と互いに噛み合うか或は噛み合う一方で、前記2番目の増分的引き伸ばし用ローラー14に備わっている突起部が前記1番目の増分的引き伸ばし用ローラー12に備わっている溝と互いに噛み合うか或は噛み合う。当該ウエブが前記増分的引き伸ばし装置10を通る時に、それは横(「CD」)方向に増分的延伸または引き伸ばしを受ける。有利な態様では、そのような突起部を環で生じさせ、そしてそのような増分的引き伸ばし装置を「リングローラー(ring roller)」と呼ぶ。
【0067】
別法としてか或は追加的に、図3に示す如き増分的引き伸ばし装置を1個以上用いて、前記ウエブに縦方向(「MD」)の増分的延伸もしくは引き伸ばしを受けさせてもよい。図3に示すように、MD増分的引き伸ばし装置16にも同様に噛み合う突起部と溝が備わっている1対の増分的引き伸ばし用ローラーが含まれている。しかしながら、MD増分的引き伸ばし装置の中の突起部と溝は、一般に、周囲の回りではなく、ローラーの幅を横切って伸びている。
【0068】
別法として、衝突する流体を併せて用いて増分的引き伸ばしを実施することも可能である。例えば、加熱しておいた流体を当該ウエブの表面に向けてもよい。典型的な流体には水または空気が含まれる。その加熱しておいた流体の適切な温度には35℃未満の温度が含まれる。
【0069】
増分的引き伸ばし工程の性質が理由で、1回のパスで引き伸ばしによる活性化を受けるのはウエブの一部のみである。異なる様式で述べると、当該ウエブ(従って多成分ストランド)を増分的引き伸ばし装置に1回通すと、それのある部分が引き伸ばしで活性化されてより高い弾力性を示すようになるが、前記ウエブ(従って多成分ストランド)の他の部分は引き伸ばしで活性化されず、実質的に弾力性が低いままである。従って、部分的に活性化を受けた布、例えば増分的引き伸ばしを1回受けたウエブは、活性化されていなくて弾力性が実質的に低い方の縦方向に伸びるゾーンが間に位置することで分離されていて間隔を置いて位置する幅が狭い縦方向に伸びる引き伸ばしで活性化された弾力性のあるゾーンを含有する。
【0070】
その結果として、本発明に従って生じさせたウエブを1段階以上の活性化段階に通すと前記ウエブの弾性が完全に生じ得る。例えば、本発明に従って生じさせたウエブを一連の増分的引き伸ばし装置に通してもよい。本発明の有益な面では、本発明に従って生じさせたウエブを、1番目の増分的引き伸ばし装置の上方ローラーの突起部が2番目の増分的引き伸ばし装置の上方ローラーの溝と整列するようなオフセット(off−set)状態にある一連の増分的引き伸ばし装置に通す。そのような態様におけるオフセット増分的引き伸ばし装置は、当該ウエブの中の多成分の実質的に全部に引き伸ばしによる活性化を受けさせるような配置になっている。各増分的引き伸ばし後のウエブの中の引き伸ばしで活性化されたストランドの量が増えることは、ウエブの初期弾性率が低くなることを包含する数多くの弾性で示され得る。
【0071】
本発明の多成分ストランドから不織ウエブを製造する時、本技術分野で公知の如何なる技術も使用可能である。スパンボンドとして知られるある種の方法は、不織ウエブを生じさせるに適した1つの通常方法である。いろいろな種類のスパンボンド方法の例がKinneyの米国特許第3,338,992号、Dorschnerの米国特許第3,692,613号、Matsukiの米国特許第3,802,817号、Appelの米国特許第4,405,297号、Balkの米国特許第4,812,112号およびBrignola他の米国特許第5,665,300号に記述されている。伝統的なスパンボンド方法は一般に下記を包含する:
a)ストランドを紡糸口金から押出し、
b)溶融状態のストランドの固化を早める目的で一般に冷却しておいた空気の流れを用いて前記ストランドを急冷し、
c)延伸張力(draw tension)[フィラメントを空気流れの中に空気圧で引き込むか或は織物繊維産業で通常用いられている種類の機械的延伸用ロールの回りにフィラメントを巻き付けることでかけることができる]をかけながらフィラメントをクエンチゾーン(quench zone)の中に進めることでそれらを細くし、
d)その延伸を受けたストランドを小孔のある表面の上に集めてウエブを生じさせ、そして
e)その拘束されていないストランドのウエブを結合させることで布を生じさせる。
【0072】
そのような結合では、互いに密着したウエブ構造を与えることが本技術分野で知られる熱、化学的または物理的結合処理のいずれも使用可能である。熱点結合を有利に用いることができる。いろいろな熱点結合技術が知られており、点結合模様を有するカレンダーロールの利用が最も好適である。連続または不連続模様を用いる典型的な態様では本技術分野で公知の如何なる模様も使用可能である。好適には、結合が層の6から30パーセントを覆うようにし、最も好適には結合が層の12パーセントを覆うようにする。そのようなパーセントの範囲でウエブを結合させておくと、フィラメントが最大限の範囲の伸び全体に渡って伸びることができる一方で布の強度および一体性が維持され得る。本発明の別の面では、当該ウエブの中のストランドをもつれさせるか或は絡み合わせる結合過程を利用することも可能である。もつれまたは絡み合いに頼る典型的な結合過程は水力による絡み合い(hydroentanglement)である。
【0073】
本発明の弾力性のある布を製造する時、多成分ストランドをもたらし得る紡糸口金および押出し加工装置が備わっている限り、そのような種類のスパンボンド方法の全部を用いることができる。しかしながら、1つの好適な方法は、成形用表面(forming surface)の下に位置させた真空装置を用いて延伸張力を与えることを伴う。このような方法を用いると、成形用表面に至るストランドの速度を連続的に高くすることができ、そのようにして、弾力性のあるストランドが跳ね返る可能性がほとんどなくなる。
【0074】
本発明の不織布を製造する時、また、メルトブロー(meltblowing)として知られる別の種類の方法を用いることも可能である。ウエブを生じさせるそのようなアプローチはV.A.Wendt、E.L.BooneおよびC.D.FluhartyによるNRL Report 4364「Manufacture of Superfine Organic Fibers」およびBuntin他の米国特許第3,849,241号に記述されている。通常のメルトブロー方法は一般に下記を伴う:
a)ストランドを紡糸口金から押出し、
b)加熱しておいた空気の高速流れを用いて重合体流れを急冷することと細くすることを紡糸口金の直ぐ下で同時に起こさせ[このような手段を用いると、一般に、前記ストランドが延伸を受けて直径が非常に小さくなる。しかしながら、空気の体積を小さくしかつ速度を遅くすることで、通常の織物用繊維のデニールと同様なデニールを有するストランドを生じさせることができる]、
c)その延伸を受けたストランドを小孔のある表面の上に集めてウエブを生じさせる。
メルトブローンウエブ(meltblown webs)をいろいろな手段で結合させることができるが、しばしばウエブの中のフィラメントを絡ませるか或はゴム弾性体の場合には自然発生的に結合させることで、それをロールに巻き上げるに充分な引張り強度を得る。
【0075】
本発明の実施では、多成分ストランドの押出し加工に適した如何なるメルトブロー方法も使用可能であり、例えば米国特許第5,290,626号に挙げられているメルトブロー方法を用いることができる。
【0076】
完全さの目的で、多成分ストランドから不織物を製造するに適した加工ラインの一例を図4に示す。この図では、2成分連続ストランドがもたらされるように工程ラインを配置するが、本発明は3種以上の成分を有する多成分フィラメントを用いて作られた不織布も包含すると理解されるべきである。例えば、3種類または4種類の成分を有するフィラメントを用いて本発明の布を製造することができる。多成分ストランドに加えて、また、単一成分のストランドを含有する不織布を生じさせることも可能である。そのような態様では、単一成分ストランドと多成分ストランドを組み合わせて単一の一体式ウエブを生じさせてもよい。
【0077】
加工ライン18には、1番目と2番目の成分を個々別々に押出し加工するに適した1対の押出し加工機20および20aが含まれている。1番目および2番目の重合体材料A、Bをそれぞれ押出し加工機20および20aから個々のメルトポンプ(melt pump)22および24に通して紡糸口金26に送る。2成分フィラメントを押出すに適した紡糸口金は本分野の通常の技術者に良く知られており、従って、ここには詳細に記述しない。本発明の実施で用いるに特に適した紡糸口金のデザインが米国特許第5,162,074号に記述されている。紡糸口金26には一般にスピンパック(spin pack)が入るハウジングが含まれており、それにはもう一方のスピンパックの上に積み重なっている多数の板が含まれていて、配置されている開口部の模様は、重合体材料AおよびBを個別に紡糸口金の中に導くに適した流路が作り出されるような模様である。その紡糸口金26の開口部は1つ以上の列の状態で配置されている。その紡糸口金の開口部によって、当該重合体が前記紡糸口金を通って押出される時、下方に広がるストランドのカーテンSが作り出される。例えば、先端部を有する三葉形の多成分フィラメントがもたらされるように紡糸口金26を配列させてもよい。別法として、同心のシース/コア二成分フィラメントがもたらされるように紡糸口金26を配列させることも可能である。
【0078】
加工ライン18にはまた急冷用送風機28も含まれており、それを前記紡糸口金26から広がるフィラメントのカーテンに隣接させて位置させる。その急冷用送風機28から出る空気を用いて、前記紡糸口金26から広がるフィラメントを急冷する。その急冷用空気を図4に示すようにフィラメントカーテンの片面またはフィラメントカーテンの両面から導いてもよい。
【0079】
繊維延伸用装置または吸引装置30を前記紡糸口金26の下側に位置させて、それが急冷されたフィラメントを受け取るようにする。重合体の溶融紡糸で用いるに適した繊維延伸用装置または吸引装置は良く知られている。本発明の方法で用いるに適した繊維延伸用装置には、スロットアテニュエーター(slot attenuator)、線状繊維吸引装置(linear fiber aspirator)およびエダクティブガン(eductive guns)が含まれる。有利な態様では、低延伸スロット(low draw slot)を用いて本発明の繊維を細くする。
【0080】
一般的に記述すると、繊維延伸用装置30には細長い垂直の通路が含まれており、その中を通るフィラメントは、吸引される空気が前記通路の側面から入って前記通路を通って下方に流れることで延伸を受ける。その吸引される空気がフィラメントと周囲の空気を繊維延伸用装置の中に引き込む。
【0081】
小孔のあるエンドレスの成形用表面32を前記繊維延伸用装置30の下側に位置させて、それが前記繊維延伸用装置30の出口開口部から来る連続ストランドSを受け取るようにすることで、ウエブWを生じさせる。その成形用表面32はガイドローラー34の回りを移動する。フィラメントが堆積する前記成形用表面32の下側に位置させた真空装置36によって、フィラメントが成形用表面32に面するように引っ張られる。
【0082】
加工ライン18には更に圧縮用ローラー38も含まれており、これは、前記ウエブが成形用表面32から引き出されるにつれてガイドローラー34の最前部(forward most)と一緒になってウエブWを受け取る。加うるに、この加工ラインには、二成分フィラメントを一緒に結合させかつウエブを一体化させて完成した布を生じさせるための1対の熱点結合用カレンダーロール40も含まれている。
【0083】
図4に示した有益な態様では、移動する成形用表面32の上で結合させたウエブを次に増分的引き伸ばし装置42の形態の引き伸ばしによる活性化工程に移送するが、前記増分的引き伸ばし装置には、前記ウエブをCDまたはMDのいずれかの方向に引き伸ばす1対の噛み合う引き伸ばし用ローラー44、46が含まれている。
【0084】
図4には単一の増分的引き伸ばし装置を示したが、有益な態様では、前記ウエブに延伸を受けさせる目的で一連のそのような増分的引き伸ばし装置を用いてもよい。例えば、増分的引き伸ばし装置を2つ用いて布に引き伸ばしによる活性化をCD方向に受けさせてもよい。有利には、この2つの装置の中の引き伸ばし用ローラーをオフセット状態にすることで、前記ウエブに引き伸ばしによる活性化をより高い度合で受けさせることができる。別法としてか或は追加的に、増分的引き伸ばし装置を1つ以上用いて前記ウエブに引き伸ばしによる活性化をMD方向に受けさせることができる。代替態様では、前記ウエブに最初に引き伸ばしによる活性化を受けさせておいた後に結合を受けさせてもよい。
【0085】
最後に、加工ライン18には、結合させた布を取り上げる巻き上げロール48が含まれている。
【0086】
この加工ラインの操作では、ホッパー50および52にそれぞれ1番目および2番目の重合体成分を充填して、それらを個々の押出し加工機20および20aで溶融させてメルトポンプ22および24そして紡糸口金26に通して押出す。その溶融させた重合体の温度は使用する重合体に応じていろいろであるが、例えばPELLETHANE(商標)2103−70AポリウレタンとARCO 40−7956Xポリプロピレンを1番目と2番目の成分として用いる時の紡糸口金の所の重合体の好適な温度は約200から225℃の範囲である。
【0087】
その押し出されたストランドが紡糸口金26の下側で広がるにつれて、急冷用送風機28から出る空気の流れで前記ストランドを少なくともある程度急冷する。急冷後のストランドは延伸用装置30の中を流れる空気によって延伸用装置30の垂直の通路の中に引き込まれる。装置30の中に吸引させる空気の温度は当該ストランドの中の重合体の種類およびストランドのデニールの如き要因に依存するが、それらは本分野の技術者に公知であろう。
【0088】
その延伸を受けたフィラメントは繊維延伸用装置30の外側開口部を通って移動する成形用表面32の上に堆積する。真空装置36を用いて前記ストランドをこれが前記成形用表面32に面するように引っ張ることで、連続ストランドの結合していない不織ウエブを生じさせる。次に、そのウエブを圧縮用ローラー38で軽く圧縮した後、結合用ローラー40を用いて熱で点結合させる。熱による点結合技術は本分野の技術者に良く知られており、ここでは詳細に考察しない。
【0089】
しかしながら、結合模様の種類は所望の布強度に応じて多様であり得ることを特記する。結合させる温度もまたフィラメントの中の重合体などの如き要因に応じて多様であり得る。
【0090】
図4に示した結合方法は熱による点結合であるが、他の手段、例えばオーブンを用いた結合、超音波による結合、水力による絡み合いまたはそれらの組み合わせなどを用いて本発明の布を結合させることで、生地のような布を生じさせることができると理解されるべきである。空気による結合の如き結合技術は本分野の通常の技術者に良く知られており、ここでは詳細に考察しない。
【0091】
次に、その結合させたウエブに増分的引き伸ばしを受けさせる。図4に示した増分的引き伸ばし方法はローラーが基になったシステムであるが、本技術分野で公知の如何なる増分的引き伸ばしシステムも使用可能である。そのような増分的引き伸ばし工程を一般に本多成分ストランドの中の用いる重合体に応じて高温で実施する。有利な態様では、増分的引き伸ばしを35℃未満の温度で実施する。この増分的引き伸ばし工程を更に一般的にはローラー噛み合いの深さが約0.025から0.250インチの範囲になるように実施する。
【0092】
最後に、その引き伸ばしによる活性化を受けたウエブを巻き上げローラー48で巻き取り、それはさらなる処理または使用で用いる準備が出来ている。
【0093】
本発明は、以前の方法に関連した粘着およびブロッキング(blocking)問題を解決し得ると同時に特性も向上させる。本ウエブは限定されない典型的な製品、例えば使い捨ておむつのカバーストック、成人失禁用素地、衛生ナプキン支持体、ウエストバンド、カフス、トレーニングパンツ用サイドパネル、包帯、耐久品、例えば衣服用芯地など、使い捨てもしくは半耐久品の構成要素、例えば医学用ガウンなどで使用可能である。この目的で、本布に通常の表面処理剤による処理を本分野で認識されている方法で受けさせてもよい。例えば、本布の湿潤性を向上させる目的で通常の重合体添加剤を用いてもよい。そのような表面処理を受けさせると本布の湿潤性が向上し、従って、それを女性ケア(care)、幼児ケア、子供ケアおよび成人失禁製品用のライナーまたはサージ管理(surge management)材料として用いることが助長される。
【0094】
本発明の布にまた他の処理剤、例えば帯電防止剤、はつアルコール剤(alcohol repellents)などによる処理を本分野の技術者が認識するであろう技術で受けさせることも可能である。
【0095】
以下の非限定実施例を用いて本発明を更に説明する。以下の実施例は本発明を説明する例であり、本発明の範囲も添付請求の範囲も限定しないとして解釈されるべきである。
【実施例1】
【0096】
シース/コアが10/90の二成分フィラメントで出来ているウエブを図4に記述したスパンボンド装置と同様な装置を用いて生じさせた。前記コアをPELLETHANE 2103−70Aポリウレタンから生じさせそして前記シースをDow ASPUN 6811Aポリエチレンから生じさせた。このフィラメントの紡糸を直径が0.35mmの穴が144個開いているダイスを用いて実施した。このフィラメントを空気減衰装置(air attenuation device)に約600m/分の速度で通すことで引き伸ばした後、小孔のあるベルトの上に坪量が68gsmのウエブとして分散させた。このフィラメントのデニールは約5であった。このウエブを111℃の温度の熱で点結合させた後、機械的な増分的引き伸ばし装置に通すことで、それに縦方向および横方向の両方の引き伸ばしを受けさせた。この布の機械的特性を表1に示す。
【実施例2】
【0097】
実施例1で用いた装置を用いて、シース/コアが9/91の二成分フィラメントで出来ているウエブを生じさせた。前記コアをPELLETHANE 2102−75Aポリウレタンから生じさせそして前記シースをArco 40−7956xポリプロピレンから生じさせた。このウエブを136℃の熱で点結合させた後、これに縦方向および横方向の両方の増分的引き伸ばしを機械的に受けさせた。この布の機械的特性を表1に示す。
【実施例3】
【0098】
シース/コアが10/90の二成分フィラメントで出来ているウエブを図4に記述した装置と同様な装置を用いて生じさせた。前記コアをPELLETHANE 2102−75Aポリウレタンから生じさせそして前記シースをArco 40−7956Xポリプロピレンから生じさせた。このフィラメントの紡糸を直径が0.35mmの穴が1.2メートルの幅を横切って4000個開いているダイスを用いて実施した。このフィラメントを空気減衰装置に約1200m/分の速度で通すことで引き伸ばした後、小孔のあるベルトの上に分散させることで、坪量が50gsmのウエブを生じさせた。このフィラメントのデニールは約5であった。このウエブを138℃の温度の熱で点結合させた後、これに縦方向および横方向の両方の増分的引き伸ばしを機械的に受けさせた。この布の機械的特性を表1に示す。
【実施例4】
【0099】
シース/コアが20/80の二成分フィラメントで出来ているウエブを図4に記述した装置と同様な装置を用いて生じさせた。前記コアをPELLETHANE 2102−75Aポリウレタンから生じさせそして前記シースをDow ASPUN 6811Aポリエチレンから生じさせた。このウエブを118℃の熱で点結合させた後、これに縦方向および横方向の両方の増分的引き伸ばしを機械的に受けさせた。この布の機械的特性を表1に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
布を50%ゲージ長まで引き伸ばしそしてそのサンプルを5分間保持しながら応力減少を観察することを通して、応力緩和を測定した。応力緩和パーセントは(1−最終応力/初期応力)X100%である。ゴム弾性不織スパンレイド布(elastomeric nonwoven spunlaid fabrics)が示す歪みに対する応力を測定する目的でInstron Tensile試験装置を用いた。打ち抜いた実際のサンプルの重量または生産用ロールから採取した数多くの大きな片の平均重量から布の坪量を測定した。
【実施例5】
【0102】
実施例1の方法と同様な押出し加工方法を用いて3種類の弾力性のある二成分スパンボンド布を生じさせた。3種類の布全部をArco 40−7956Xポリプロピレン/PELLETHANE 2103−70Aポリウレタンが5/95の組成を有する4.0デニールのシース/コア二成分フィラメントから生じさせた。これらの布を110℃の熱で点結合させた。試験片1では、これに引き伸ばしによる活性化を全く受けさせないで試験を受けさせた。試験片2では、これをリングローラーに1回通すことで、これに引き伸ばしによる活性化を受けさせた。試験片3では、これをリングローラーに同じ方向で2回通すことで、これに引き伸ばしによる活性化を受けさせた。前記リングローラーには平行な環が1インチ当たり17個備わっていてローラーが噛み合う深さは0.16”であった。引き伸ばしによる活性化の効果は、その試験片を伸ばすに要する力の低下であった。試験片1を100%伸ばすに要した力は2.4kgf/インチ(1インチ当たりのキログラムの力)であった。試験片2を100%伸ばすに要した力は1.8kgf/インチであった。試験片3を100%伸ばすに要した力は1.6kgf/インチであった。逐次的引き伸ばしによる活性化段階によって初期の引張り応力が低下したことは、いろいろなウエブをリングロールに逐次的にかけた時にそれらの各々で前記ウエブの中の以前に活性化を受けていなかったストランドが引き伸ばしによる活性化を受けたことの指標である。
【実施例6】
【0103】
実施例1の方法と同様な押出し加工方法を用いて2種類の弾力性のある二成分スパンボンド布を生じさせた。両方の布を図1Cに記述したフィラメントと同様な先端部を有する三葉形の7デニールフィラメントから生じさせた。このフィラメントの中心部分に存在する重合体はVector 4111であった。先端部に位置する重合体はDow ASPUN 6811A LLDPEであった。これらの布を69℃の熱で点結合させた。試験片1では、これに引き伸ばしによる活性化を受けさせないで試験を受けさせた。試験片2では、これをリングローラーに2回通すことで、これに引き伸ばしによる活性化を受けさせた。前記リングローラーには平行な環が1インチ当たり17個備わっていてローラーが噛み合う深さは0.16”であった。引き伸ばしによる活性化の効果は、実施例5で観察した効果とは異なっていた。試験片1を100%伸ばすに要した力は1.4kgf/インチであった。しかしながら、試験片2を100%伸ばすに要した力は0.1kgf/インチであった。この場合、外側の比較的厚いポリエチレン層を引き伸ばすには環ローラーに2回通す必要があった。走査電子顕微鏡を用いることで、引き伸ばしがフィラメントの幾何形態に対して示す効果が明らかになった。特に、試験片1の中のフィラメントは比較的真っすぐであったが、試験片2の中のフィラメントは高度によじれていて小鈍鋸歯状であった。そのようにフィラメントが高度に小鈍鋸歯状であることがその布の弾力性に寄与している。試験片1が100%伸びから回復する率は60%であった。試験片2が100%伸びから回復する率は90%であった。
【実施例7】
【0104】
実施例1の方法と同様な押出し加工方法を用いて3種類の弾力性のある二成分スパンボンド布を生じさせた。3種類の布全部を8デニールのシース/コア二成分フィラメントから生じさせた。フィラメントの95%を構成するコア重合体はDow 58200.02 PEゴム弾性体であった。フィラメントの5%を構成するシース重合体はDow 6811A LLDPE/PPホモ重合体が85/15の混合物であった。これらのフィラメントウエブを110℃で結合させた。試験片1では、これに引き伸ばしによる活性化を全く受けさせないで試験を受けさせた。試験片2では、これをリングローラーに通すことで、これに引き伸ばしによる活性化を受けさせた。試験片3では、これをリングローラーに同じ方向で2回通すことで、これに引き伸ばしによる活性化を受けさせた。前記リングローラーには平行な環が1インチ当たり17個備わっていてローラーが噛み合う深さは0.16”であった。引き伸ばしによる活性化の効果は、その試験片を伸ばすに要する力の低下であった。試験片1を100%伸ばすに要した力は1.0kgf/インチであった。試験片2を100%伸ばすに要した力は0.6kgf/インチであった。試験片3を100%伸ばすに要した力は0.4kgf/インチであった。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1A−M】図1A−1Mに、本発明に従って生じさせたストランドの断面図を示す。
【図2】図2に、本発明の1つの面に従う横方向の増分的引き伸ばし装置を示す。
【図3】図3に、本発明の1つの面に従う縦方向の増分的引き伸ばし装置を示す。
【図4】図4に、本発明に従う不織布を製造するのに適した加工ラインの一例を示す。
【図1A−E】

【図1F−M】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾力性のある不織布を製造する方法であって、ストランドの長さ方向に沿って縦方向に同一の広がりを持つ1番目と2番目の重合体成分を有していて前記1番目の成分がゴム弾性重合体を含んで成りそして前記2番目の重合体成分が前記1番目の重合体成分より弾力性が低い重合体を含んで成る多成分ストランドを多数含んで成る不織ウエブを少なくとも1つの方向に増分的に引き伸ばすことで前記不織ウエブの弾力性を活性化させて弾力性のある不織布を生じさせることを含んで成る方法。
【請求項2】
前記不織ウエブが、
ストランドの長さ方向に沿って縦方向に同一の広がりを持つ1番目と2番目の重合体成分を有していて前記1番目の成分がゴム弾性重合体を含んで成りそして前記2番目の重合体成分が非ゴム弾性重合体を含んで成る多数の多成分ストランドを溶融紡糸し、
前記多成分ストランドを成形して不織ウエブを生じさせ、そして
前記ストランドを結合させるか或は絡み合わせることで互いに凝集して結合した不織ウエブを生じさせる、
ことで生じさせたものである請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ウエブを増分的に引き伸ばす段階が前記多成分ストランドのある部分が引き伸ばしで活性化されて弾力性を示すようになる一方で前記ストランドの他の部分は引き伸ばしで活性化されないで弾力性が実質的により低いように前記布を引き伸ばすことを含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ウエブを増分的に引き伸ばすことが前記多成分ストランドの実質的に全部が引き伸ばしで活性化されて弾力性を示すようになるように前記布を引き伸ばすことを含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ウエブを増分的に引き伸ばすことが前記ウエブを縦方向と横方向の両方に増分的に引き伸ばすことを含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ウエブを増分的に引き伸ばすことが前記ウエブを少なくとも1対の互いに噛み合う引き伸ばし用ローラーに通すことを含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記ウエブを互いに噛み合う引き伸ばし用ローラーに通すことが活性化されていなくて弾力性が実質的に低い方の縦方向に伸びるゾーンが間に位置することで分離されていて間隔を置いて位置する幅が狭い縦方向に伸びる引き伸ばしで活性化された弾力性のあるゾーンを前記布の中に生じさせることを包含する請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記ウエブを増分的に引き伸ばすことが前記ウエブを1番目の対の互いに噛み合う引き伸ばし用ローラーに通すことで前記ウエブの1番目の部分を引き伸ばしで活性化させそして次に前記ウエブを2番目の対の互いに噛み合う引き伸ばし用ローラーに通すことで前記ウエブの中の活性化されていないストランドの2番目の部分を引き伸ばしで活性化させることを含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ウエブを増分的に引き伸ばすことが更に前記ウエブの表面に流体を衝突させることも含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記流体が水または空気のいずれかである請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記1番目の重合体成分がゴム弾性ポリウレタン、ゴム弾性ポリエチレン、ゴム弾性ポリプロピレン、スチレンのブロック共重合体またはこれらの混合物を含んで成りそして前記2番目の重合体成分が前記1番目の成分より弾力性が低いポリオレフィンを含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記2番目の重合体成分がポリプロピレン、ポリエチレンまたはこれらの混合物である請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記溶融紡糸が前記1番目および2番目の重合体成分をストランド断面の点でそれらがシース/コア形態を形成するように配列させることを含んで成りそして前記増分的に引き伸ばす段階が前記ストランドのシースとコアの両方に波形を生じさせることを包含する請求項2記載の方法。
【請求項14】
前記溶融紡糸が前記1番目および2番目の重合体成分をストランド断面の点で前記重合体成分が分割されたパイの形態を形成するように配列させることを含んで成りそして前記増分的に引き伸ばす段階が前記1番目と2番目の重合体成分をこれらが互いに離れるように分裂させるか或は前記ストランドの長さ方向に沿って前記弾力性が低い方の成分が曲がりくねった外見または他の非線形で不揃いな外見を形成するようにすることを包含する請求項2記載の方法。
【請求項15】
前記溶融紡糸が前記1番目および2番目の重合体成分をストランド断面の点で重合体成分が先端部を有する三葉形態を形成するように配列させることを含んで成りそして前記増分的に引き伸ばす段階が前記1番目と2番目の重合体成分をこれらが互いに離れるように分裂させるか或は前記ストランドの長さ方向に沿って波形を生じさせることを包含する請求項2記載の方法。
【請求項16】
前記多成分ストランドの少なくとも一部にシース/コア形態を持たせる請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記多成分ストランドの少なくとも一部に三葉形態または先端部を有する三葉形態を持たせる請求項1記載の方法。
【請求項18】
弾力性のある不織布であって、
不織ウエブを形成するように不揃いに配列している多数の多成分ストランド、
互いに密着して結合した不織ウエブが形成されるように前記ストランドを一緒に結合させている多数の結合部位またはストランドの実質的に不揃いな絡み合い、
を含んで成っていて、
前記ウエブの前記ストランドが1番目と2番目の重合体成分を含有していて前記1番目の重合体成分がゴム弾性重合体を含んで成りそして前記2番目の重合体成分が非ゴム弾性重合体を含んで成り、かつ
前記ウエブの前記多成分ストランドの1番目の部分が引き伸ばしで活性化されていて弾力性を示す、
弾力性のある不織布。
【請求項19】
前記ウエブの前記多成分ストランドの他の部分が引き伸ばしで活性化されていなくて前記1番目の部分より弾力性が低い請求項18記載の布。
【請求項20】
活性化されていなくて弾力性が実質的に低い方の縦方向に伸びるゾーンが間に位置することで分離されていて間隔を置いて位置する幅が狭い縦方向に伸びる引き伸ばしで活性化された弾力性のあるゾーンを布の中に含有する請求項19記載の布。
【請求項21】
前記1番目の重合体成分がゴム弾性ポリウレタン、ゴム弾性ポリエチレン、ゴム弾性ポリプロピレン、スチレンのブロック共重合体またはこれらの混合物を含んで成りそして前記2番目の重合体成分がポリオレフィンを含んで成る請求項20記載の布。
【請求項22】
前記2番目の重合体成分がポリプロピレン、ポリエチレンまたはこれらの混合物である請求項18記載の布。
【請求項23】
前記1番目および2番目の重合体成分がシースコア形態に配列しておりかつ前記ストランドの引き伸ばしで活性化された部分が前記ストランドのシースおよびコアの中に波形を有する請求項18記載の布。
【請求項24】
前記1番目および2番目の重合体成分が分割されたパイの形態に配列しておりかつ前記ストランドの引き伸ばしで活性化された部分が互いに離れるように分裂した前記1番目および2番目の重合体成分を有するか或は前記成分の両方が長さ方向に沿って波形を示す請求項18記載の布。
【請求項25】
前記1番目および2番目の重合体成分が先端部を有する多葉形態に配列しておりかつ前記ストランドの引き伸ばしで活性化された部分が互いに離れるように分裂した前記1番目および2番目の重合体成分を有するか或は前記成分の両方が長さ方向に沿って波形を示す請求項18記載の布。
【請求項26】
ゴム弾性成分と前記ゴム弾性成分より弾力性が低い成分を含んで成る多成分繊維であって、前記ゴム弾性成分の回りでかさ高くなった弾力性が低い方の成分を含有する全体として螺旋形の形態を示す多成分繊維。
【請求項27】
前記繊維が増分的引き伸ばしを受けている請求項26記載の繊維。
【請求項28】
多数の層を含んで成る衣類であって、前記層の中の少なくとも1層が請求項16記載の不織布を含んで成る衣類。
【請求項29】
該衣類がトレーニングパンツ、おむつ、吸収性のあるパンツ、失禁用製品、女性衛生用品、労働用衣服、作業服、頭を覆う物、ズボン、シャツ、手袋、靴下、手術衣、外科的ドレープ、フェイスマスク、手術帽、手術用フード、靴を覆う物またはブーツスリッパである請求項28記載の衣類。
【請求項30】
請求項26記載の多成分繊維を製造する方法であって、葉、好適には葉の全部を限定するスロットの中の少なくとも1つがダイスブロックの面に対して90度ではない角度で切断されている多葉形紡糸口金デザインを用いる方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−504000(P2006−504000A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−547080(P2004−547080)
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2003/033629
【国際公開番号】WO2004/038085
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(505141565)アドバンスド・デザイン・コンセプト・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (5)
【Fターム(参考)】