説明

ゴム混練機及びゴム混練方法

【課題】 ゴム混練機の機体内部の酸素濃度を低下させて、硫黄等の飛散した粉末の発火を抑制し、ゴムの性能を悪化させることなく粉塵爆発を予防して混練作業の安全性を向上させる。
【解決手段】 被混練物Gの投入前に、ガス供給装置15の供給する窒素や二酸化炭素等の不活性ガスを密閉式ゴム混練機1の円筒体5の側面に設けたガス導入口14から機体内に導入し、機体内の酸素濃度を一定値以下に低下させた後、被混練物Gを投入口11から混練室3へ投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ等の素材となるゴムや硫黄等の被混練物を混練して配合ゴム等を製造するゴム混練機及びゴム混練方法に関し、より詳しくは、被混練物である粉末硫黄等の粉塵の発火を防止して、安全性を向上させたゴム混練機及びゴム混練方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ等を構成する加硫後のゴム材に所望の物性を付与するためには、ゴム等の原材料の混練時に、ゴム分子を切断して原材料ゴムを可塑化して微細化し、その中にカーボンブラックや硫黄等の添加剤や配合薬品を均一に分散させる必要がある。従来、この混練には、被混練物の混練特性に優れ、分散性の良好な混練物が得られる密閉式混練機が使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
図5は、この従来の密閉式混練機の概略断面図である。この密閉式混練機80は、図示のように、チャンバー81と、その内部に形成された混練室82と、混練室82内に配設され、モータ(図示せず)により互いに逆方向に回転する2本の平行なロータ83と、チャンバー81の上部に設けられ内周が混練室82に連通する円筒体84と、その内周を上下動するフローティングウェイト85と、円筒体84上部に取り付けられフローティングウェイト85を駆動するピストン・シリンダ機構86とを有している。また、チャンバー81の下面には混練室82の下側開口部を塞ぐドロップドア87が取り付けられており、円筒体84の側面には、被混練物を投入する投入口88と、それを塞ぐホッパドア89が設けられている。
【0004】
ゴムや硫黄等の被混練物は、フローティングウェイト85を上昇させた状態でホッパドア89を開いて投入口88から混練室82に投入され、フローティングウェイト85が下降して混練室82を密閉し、その中で回転するロータ83により混練され、混練終了後、ドロップドア87を開いてチャンバー81の下端から取り出される。更に、この従来の密閉式混練機80では、混練時にフローティングウェイト85により混練室82内の被混練物を加圧できるため、被混練物の浮き上がり等が抑制されて効率的に混練を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0005】
しかし、一般に、被混練物には粉末状の添加剤等が加えられることが多く、この従来の密閉式混練機80でそれらを混練する場合には、投入時の投入口88から混練室82までの落下中や、混練室82への落下の衝撃で粉末が飛散して円筒体84内等の粉塵濃度が高くなり、静電気の放電等の着火エネルギーにより粉塵が空気中の酸素と反応して発火し、粉塵爆発を起こす恐れがある。特に、タイヤ等のゴム製品では、目的とする性能を得るために被混練物としてカーボンブラックや硫黄等の粉末状添加剤を加える必要があるが、この粉末状添加剤は、製品中に均一に分散させる等のために微細化されていて空気中に飛散しやすくなっており、更に粉末状添加剤が硫黄の場合には極めて発火しやすい物質であるため、その危険性は更に高くなる。
【0006】
図6は、このような密閉式ゴム混練機を用いてタイヤ等のゴム製品の原材料(原材料ゴムの他にカーボンブラックや硫黄等の粉末状添加剤を含む)を混練したときの、被混練物投入開始からの機体内部の粉塵濃度の変化を模式的に示したグラフであり、図の縦軸は粉塵濃度、横軸は被混練物投入開始からの時間を示す。粉塵濃度は、被混練物の投入開始時から急激に上昇して発火下限濃度以上になり、最高値に達した後、急速に低下して約18秒で発火下限濃度以下の一定値になり安定化する。つまり、粉塵濃度は、被混練物の投入開始直後に発火下限濃度よりも高くなり、このときに発火の危険性が特に増加することがわかる。
【0007】
図7は、粉塵濃度(横軸)と着火エネルギー(縦軸)の関係を模式的に示すグラフである。このグラフからわかるように、被混練物投入直後等の粉塵濃度の高いときでも、着火源となる静電気放電等の着火エネルギーの発生を防止できれば、粉塵の発火は防止することができる。また、図7に示すように、粉塵濃度を低く(図のWからXへ)することができれば、何らかの原因で着火エネルギーが発生した場合でも、発火が起こるにはより大きな着火エネルギーが必要となり、粉塵の発火を抑制できることがわかる。また、図8は、酸素濃度(横軸)と着火エネルギー(縦軸)の関係を模式的に示すグラフであるが、酸素濃度を低減、例えば8体積%程度まで低減できれば、粉塵が発火するには極めて大きな着火エネルギーが必要となり、粉塵濃度に関わらず粉塵の発火を抑制することができる。
【0008】
従って、硫黄等の粉塵の発火を防止するためには以上の3つの方法、即ち、着火エネルギー防止、粉塵濃度低減、酸素濃度低減の3つの方法のいずれかを、粉塵濃度が高くなる被混練物の投入時等に実施する必要がある。このうち、着火エネルギー防止は、機体を防爆仕様にしたりアースして静電気の帯電を防止する等、比較的容易に行えるので多くのゴム混練機で実施されている。
【0009】
しかし、このような方法を実施しても、飛散した硫黄等のアースされていない浮遊粉末相互の接触・摩擦により生じる静電気や機体金属同士のスパーク等が着火源となり、粉末が発火して粉塵爆発を起こす可能性がある。従って、粉塵爆発を予防してゴム混練作業の安全性を更に向上させるためには着火エネルギー防止以外に他の方法を合わせて実施する必要がある。一例として、発生する粉塵の濃度を低減して粉末の発火の防止を図った密閉式ゴム混練機が知られている(特許文献2参照)。
【0010】
図9は、この従来の密閉式ゴム混練機の要部概略断面図である。この密閉式ゴム混練機90は、図5に示す密閉式混練機80とほぼ同様の構成を有しており、投入口91から投入されたゴムや硫黄等の被混練物Gは、ホッパ92を落下して混練室93に投入され、その中で回転するロータ(図示せず)により混練される。更にこの密閉式ゴム混練機90は、投入口91の上部に集塵ダクト94を有しており、被混練物G投入時には、これにより飛散した粉塵Fを集塵するとともに、ホッパ92上部に設けられたノズル95からホッパ92内に水等のミストMを噴霧して粉末の飛散を防止して粉塵濃度を低下させ、硫黄等による粉塵爆発の予防を図っている。
【0011】
しかし、この従来の密閉式ゴム混練機90では、ゴム等の被混練物に水等の液体が混入してしまうため、混練作業や添加物の分散性およびゴムの性能に影響が生じる恐れがあり、また、水等により機体の金属にさび等の腐食が生じる恐れもあるという問題がある。
【0012】
【特許文献1】特開2005−103897号公報
【特許文献2】特開2003−170421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、ゴム混練機の機体内部の酸素濃度を低下させて、硫黄等の飛散した粉末の発火を抑制し、ゴムの性能を悪化させることなく粉塵爆発を予防して混練作業の安全性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は、機体内部に投入されるゴムや硫黄等の被混練物を混練するゴム混練機であって、機体内部に不活性ガスを導入するガス導入口と、該ガス導入口に不活性ガスを供給するガス供給装置とを有し、機体内部に不活性ガスを導入して機体内部の酸素濃度を所定濃度に低下させることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載されたゴム混練機において、被混練物投入前の前記所定濃度が、8体積%以下であることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載されたゴム混練機において、被混練物投入時の前記所定濃度が、10体積%以下であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載されたゴム混練機において、前記不活性ガスは、窒素または二酸化炭素であることを特徴とする。
請求項5の発明は、ゴム混練機の機体内部に投入されるゴムや硫黄等の被混練物を混練するゴム混練方法であって、前記機体内部に不活性ガスを導入して機体内部の酸素濃度を所定濃度にする工程と、前記機体内部に被混練物を投入する工程と、前記所定の酸素濃度の雰囲気中で前記被混練物を混練する工程と、を有することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項5に記載されたゴム混練方法において、被混練物投入前の前記所定濃度が、8体積%以下であることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項5または6に記載されたゴム混練方法において、被混練物投入時の前記所定濃度が、10体積%以下であることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項5ないし7のいずれかに記載されたゴム混練方法において、前記不活性ガスは、窒素または二酸化炭素であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ゴム混練機へ被混練物を投入する前等の適時に機体内部に窒素や二酸化炭素等の不活性ガスを導入し、機体内部の酸素濃度を所定濃度に低下させることができる。従って、硫黄等の飛散した粉末の発火を抑制することができ、ゴムの性能を悪化させることなく粉塵爆発を予防して混練作業の安全性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。
まず、原材料ゴム及びカーボンブラックや硫黄等の添加剤や配合薬品等の材料(以下、これらを総称して被混練物という)を混練するゴム混練機について説明する。図1は、本実施形態におけるゴム混練機の要部概略断面図を示す。なお、本実施形態では、上記した従来の密閉式混練機と同様に、密閉された混練室で混練を行う密閉式ゴム混練機を例に採って説明するが、粉末状の被混練物を混練するニーダーミキサー等のその他のゴム混練機にも適用することができる。
【0017】
この密閉式ゴム混練機1は、図5に示す従来の密閉式混練機80と同様に、チャンバー2と、その内部に形成された混練室3と、混練室3内で回転する一対のロータ4と、チャンバー2の上部に設けられた円筒体5と、その内部で上下動可能なフローティングウェイト6と、円筒体5の上端に取り付けられフローティングウェイト6を駆動するピストン・シリンダ機構7とを備えており、混練室3内に投入された被混練物Gは、円筒体5の下端まで下降したフローティングウェイト6で密閉された混練室3内で、回転するロータ4により混練されるようになっている。
【0018】
また、この密閉式ゴム混練機1は、前記従来の密閉式混練機80と相違して、不活性ガスを供給するボンベ17等からなるガス供給装置15や検知器19等を更に備えており、このガス供給装置15から供給される不活性ガスを機体内に導入して粉塵爆発を予防するようになっている。
【0019】
チャンバー2は、全体が箱状をなし、その上下面には、混練室3に連通する被混練物G投入用および排出用の開口部が形成されている。この上面の開口部は円筒体5の内部と連通し、一方、下面の開口部には開閉可能にドロップドア8が設けられている。また、チャンバー2下方にはドロップドア8を開閉駆動する油圧や空気圧等で動作するドロップドア用ピストン・シリンダ機構9が設けられている。
【0020】
混練室3は、図1の手前から奥側へ向かって延びる2つの同径かつ平行な円柱状の空間の一部を交わらせた構造に形成されている。その内部には、図示しないモータ等の駆動源により互いに逆方向に回転駆動される2本の平行なロータ4が配設されている。各ロータ4の外周面には、被混練物Gを効率よく混練するための切断羽根が、互いに接触しないように90度ずらして設けられている。
【0021】
フローティングウェイト6は、上方へ向かう突出部等を有する略円柱形状をなし、その下端面は、円筒体5の下端まで下降して混練室3の上部を密閉したときに、混練室3の上部内壁面を形成するように、下方に向かって突出する断面略山形に形成されている。また、その上端は、ピストン・シリンダ機構7のピストンロッド10の下端に固定されており、油圧や空気圧等で動作するピストンロッド10により、図示のように円筒体5の上端部から、円筒体5の下端部、即ちフローティングウェイト6下端面で混練室3の上面開口部を塞ぐ位置まで上下動される。
【0022】
円筒体5の外周面には、被混練物Gを機体内部に投入するため、被混練物Gを受けるホッパ21と、ホッパ21と円筒体5内部を連通する投入口11と、投入口11を開閉するホッパドア12が設けられている。また、チャンバー2の上面には、ホッパドア12を開閉するためのホッパドア用ピストン・シリンダ機構22が備えられ、そのピストンロッド先端は、ホッパドア12に取り付けられている。
【0023】
また、円筒体5の外周面には、機体のメンテナンス時等にピストンロッド10の下降を止めておくストッパーピンを挿入したり、被混練物Gにオイル等を投入するために、円筒体5の外周面から内周面まで貫通する複数の貫通口13が形成されている。本実施形態では、その中の1つを不活性ガスを機体内部に導入するためのガス導入口14として利用し、不活性ガスを供給するガス供給装置15の配管16を接続している。
【0024】
ガス供給装置15は、窒素や二酸化炭素等の不活性ガスが気体や液体状態で充填されたボンベ17と、円筒体5のガス導入口14とボンベ17のガス取出口をつなぐ配管16と、配管16の途中に設けられたバルブ18等から構成される。
【0025】
更に、本実施形態の密閉式ゴム混練機1には、機体内部の気体の酸素濃度等を検知する検知器19が取り付けられ、検知器19には検知結果の記録等を行う記録計20が接続されている。検知器19は、例えば混練室3に通じる配管を設け、そこから内部の気体を吸引ポンプで吸引して酸素濃度や粉塵濃度の測定等を行う。記録計20は、検知器19の測定値等を記録する他に、例えば酸素濃度が一定値になったときに警報を発する機能等を持たせることもできる。
【0026】
なお、ガス導入口14は、上記した貫通口13のいずれかを利用する他に、新たに円筒体5に専用のガス導入口14を形成してもよく、その位置も、導入する不活性ガスの比重等に合わせて円筒体5のより上方または下方、又は円筒体5以外のチャンバー2に形成する等、機体内部と外部を連通して不活性ガスを機体内部に導入できるようになっていればよい。
【0027】
また、機体内に導入する不活性ガスは、気体や液体状態で充填されたボンベ17から供給する他に、例えばドライアイスを投入口11やガス導入口14等から機体内に投入する等して供給してもよい。ここで、不活性ガスの機体内への導入は、例えばコンピュータ等の制御機器(図示せず)からの信号で開閉動作する電磁バルブを配管16に取り付けて、検知器19が測定した酸素濃度に基づいて自動で導入(供給・停止)できるようにしてもよく、また、配管16に手動バルブを取り付けて手動で導入してもよい。
【0028】
次に、この密閉式ゴム混練機1を使用したゴム混練方法等について説明する。本実施形態では、上記したように粉塵濃度が高くなり、粉塵の発火する危険性が最も高くなる被混練物Gの投入時に機体内の酸素濃度を低く抑えるため、その投入前に不活性ガスを導入し、機体内の酸素濃度を発火する危険性の少ない所定濃度(本実施形態では、被混練物Gの投入前は8体積%以下、被混練物Gの投入時は10体積%以下)にする。図1は、既に述べたように本実施形態における密閉式ゴム混練機1であるが、被混練物Gの投入前、即ち不活性ガスを導入するときの密閉式ゴム混練機1の状態を示しており、図2は、被混練物Gを投入するときの密閉式ゴム混練機1の状態を示し、図3は、被混練物Gの混練時の状態を示している。
【0029】
まず、図1に示すように、被混練物Gを投入する前に、混練室3等の機体内部を空にした状態でドロップドア8とホッパドア12を閉じて機体を密閉状態にする。その際、フローティングウェイト6は、円筒体5の上端まで上昇させておく。この状態でガス供給装置15から供給される不活性ガスを機体内に導入する。具体的には、バルブ18等を操作してボンベ17から不活性ガスを供給し、配管16を介して円筒体5のガス導入口14から不活性ガスを機体内に導入する。不活性ガスの導入は、検知器19で測定する機体内の酸素濃度が所定濃度(本実施形態では8体積%以下)になるまで行う。
【0030】
次に、図2に示すように、ホッパドア用ピストン・シリンダ機構22を作動してホッパドア12を開き、被混練物Gを投入口11から円筒体5を介して混練室3へ投入する。投入後は、図3に示すように、ホッパドア12を閉じて機体を密閉状態にし、ピストン・シリンダ機構7を作動してフローティングウェイト6を円筒体5の下端、即ちフローティングウェイト6下端面で混練室3の上面開口部を塞ぐ位置まで下降させて投入された被混練物Gを混練室3へ押し込み、ロータ4を回転させて所定の酸素濃度の雰囲気中で被混練物Gの混練を行う。
【0031】
なお、ホッパドア12を開くと投入口11から大気が機体内に流入し始めるが、直ちに機体内の不活性ガスと大気が入れ替わるわけではなく、機体内の酸素濃度は、ホッパドア12の開放時から徐々に上昇していく。従って、機体内への大気の流入をより少なくするため、ホッパドア12を開いてから機体を密閉状態に戻すまで、即ち、被混練物Gの投入とホッパドア12の閉鎖は素早く行う。
【0032】
混練が終了した後は、チャンバー2下面のドロップドア8を開いて混練物をチャンバー2の下面から排出させる。その後、ドロップドア8を閉じて機体を密閉状態にし、以上説明した手順により再び不活性ガスを機体内に導入して次の混練作業を行う。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の密閉式ゴム混練機1及びゴム混練方法では、被混練物Gを投入する前に機体内部に窒素や二酸化炭素等の不活性ガスを導入し、機体内部の酸素濃度を所定濃度に低下させる。従って、被混練物G投入時に飛散する硫黄等の粉末に静電気の放電等の着火エネルギーが加わっても発火を抑制することができ、ゴムの性能を悪化させることなく粉塵爆発を予防して混練作業の安全性を向上させることができる。
【0034】
(ゴム混練試験)
この密閉式ゴム混練機1を用いて上記した方法で被混練物Gの混練を行い、密閉式ゴム混練機1内の酸素濃度を測定した。なお、被混練物Gは、通常のタイヤ等のゴム製品の原材料であり、原材料ゴムの他に、カーボンブラックや発火しやすい硫黄粉末等の各種添加剤や配合薬品等からなる。また、被混練物G投入前の不活性ガスの導入は、機体内の酸素濃度が8体積%以下になるまで行った。
【0035】
本試験により、本実施形態によるときは被混練物G投入時の酸素濃度を低く抑えることができ、粉塵の発火を抑制できることがわかった。即ち、図4は、本実施形態における被混練物Gの投入開始からの密閉式ゴム混練機1内の酸素濃度の変化を示すグラフであり、図の縦軸は酸素濃度(体積%)、横軸は被混練物G投入開始からの時間(秒)を示す。
【0036】
本実施形態によるときは、図4の黒点で示すように、酸素濃度を粉塵濃度が高くなる被混練物Gの投入区間(約18秒まで)やその後の混練中を通して8体積%〜10体積%程度に抑えることができる。図8は、既に述べたように酸素濃度と着火エネルギーの関係を模式的に示すグラフであるが、この酸素濃度では、酸素濃度が約22体積%の大気中(図のY)に比べて発火するためには極めて大きな着火エネルギー(図のZ)が必要であり、粉塵の発火が起こりにくいことがわかる。そのため、粉塵濃度の高い被混練物Gの投入直後に何らかの原因で着火エネルギーが発生しても、粉塵の発火を抑制することができ、粉塵爆発を予防して混練作業の安全性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態における密閉式ゴム混練機(不活性ガス導入時の状態)の要部概略断面図である。
【図2】図1の密閉式ゴム混練機の被混練物投入時の状態を示す要部概略断面図である。
【図3】図1の密閉式ゴム混練機の被混練物混練時の状態を示す要部概略断面図である。
【図4】被混練物投入開始からのゴム混練機内部の酸素濃度の変化を示すグラフである。
【図5】従来の密閉式混練機の概略断面図である。
【図6】被混練物投入開始からのゴム混練機内部の粉塵濃度の変化を模式的に示すグラフである。
【図7】粉塵濃度と着火エネルギーの関係を模式的に示すグラフである。
【図8】酸素濃度と着火エネルギーの関係を模式的に示すグラフである。
【図9】従来の密閉式ゴム混練機の要部概略断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1・・・密閉式ゴム混練機、2・・・チャンバー、3・・・混練室、4・・・ロータ、5・・・円筒体、6・・・フローティングウェイト、7・・・ピストン・シリンダ機構、8・・・ドロップドア、9・・・ドロップドア用ピストン・シリンダ機構、10・・・ピストンロッド、11・・・投入口、12・・・ホッパドア、13・・・貫通口、14・・・ガス導入口、15・・・ガス供給装置、16・・・配管、17・・・ボンベ、18・・・バルブ、19・・・検知器、20・・・記録計、21・・・ホッパ、22・・・ホッパドア用ピストン・シリンダ機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体内部に投入されるゴムや硫黄等の被混練物を混練するゴム混練機であって、
機体内部に不活性ガスを導入するガス導入口と、
該ガス導入口に不活性ガスを供給するガス供給装置とを有し、
機体内部に不活性ガスを導入して機体内部の酸素濃度を所定濃度に低下させることを特徴とするゴム混練機。
【請求項2】
請求項1に記載されたゴム混練機において、
被混練物投入前の前記所定濃度が、8体積%以下であることを特徴とするゴム混練機。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたゴム混練機において、
被混練物投入時の前記所定濃度が、10体積%以下であることを特徴とするゴム混練機。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載されたゴム混練機において、
前記不活性ガスは、窒素または二酸化炭素であることを特徴とするゴム混練機。
【請求項5】
ゴム混練機の機体内部に投入されるゴムや硫黄等の被混練物を混練するゴム混練方法であって、
前記機体内部に不活性ガスを導入して機体内部の酸素濃度を所定濃度にする工程と、
前記機体内部に被混練物を投入する工程と、
前記所定の酸素濃度の雰囲気中で前記被混練物を混練する工程と、
を有することを特徴とするゴム混練方法。
【請求項6】
請求項5に記載されたゴム混練方法において、
被混練物投入前の前記所定濃度が、8体積%以下であることを特徴とするゴム混練方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載されたゴム混練方法において、
被混練物投入時の前記所定濃度が、10体積%以下であることを特徴とするゴム混練方法。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれかに記載されたゴム混練方法において、
前記不活性ガスは、窒素または二酸化炭素であることを特徴とするゴム混練方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−327052(P2006−327052A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154662(P2005−154662)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】