説明

ゴム補強用合成繊維すだれ織物及びそれを用いた空気入りタイヤ

【課題】 熱処理、延伸後のすだれ織物の密度が均一であり、特に空気入りタイヤに用いてユニフォミティー向上に優れた効果を発揮するゴム補強用合成繊維すだれ織物及びそれを用いた空気入りタイヤの提供する。
【解決手段】 緯糸と、タイヤコードからなる経糸とがすだれ織りされたゴム補強用合成繊維すだれ織物において、該織物の幅方向において、両端部の経糸密度を中央部の経糸密度よりも小さくする。さらに、上記ゴム補強用合成繊維すだれ織物を用いた空気入りタイヤとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム補強用合成繊維すだれ織物及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム補強用合成繊維としてはポリエステル、ナイロン、ポリビニールアルコールなどが広く使用される。例えばポリエステル繊維を例にとると、特許文献1或いは2に開示される如く、1670デシテックス或いは1100デシテックスのマルチフィラメントからなる撚糸コードを経糸として1000〜1500本整経して並べ、これらがばらけないように緯糸を緯糸密度が3〜5本/5cmとなるよう打ち込んで得られる織物、いわゆるすだれ織物として使用される。
【0003】
このとき、上記すだれ織物は、特にこれをタイヤに埋め込んで使用する場合、経糸となるコードが一定間隔になるように配列されていることが重要である。そして、上記コードの並び状態が均一になればなるほど成型されたタイヤ形状が安定する。
【0004】
すだれ織物は、ゴムへの接着性付与及び経糸のモジュラス維持を目的として、接着剤を付与した後、高温で熱処理され、かつ延伸される。一般には、接着剤としてレゾルシン−ホルマリン−ラッテクスが使用され、240℃以上の熱処理と3%以上の延伸が施されるが、上記の熱処理や延伸によって、すだれ織物の幅が変動する。
【0005】
この際、織物の両端部に位置する経糸は、緯糸が縮むのに伴って、織物の中央部に寄せられ、織物の両端部が中央部と比較して高密度となる現象が発生する。このようなすだれ織物を用いると、タイヤの成形加工において円環状に成形するとき、緯糸が均一に伸長することができず、タイヤのユニフォミティーが低下する問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2000−328387号公報
【特許文献2】特開2000−103204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題を解決し、熱処理、延伸後のすだれ織物の密度が均一であり、特に空気入りタイヤに用いてユニフォミティー向上に優れた効果を発揮するゴム補強用合成繊維すだれ織物及びそれを用いた空気入りタイヤの提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、すだれ織物の経糸密度を巧みに設計することでかかる課題を達成できることを見出した。
かくして本発明によれば、緯糸と、タイヤコードからなる経糸とがすだれ織りされたすだれ織物であって、該織物の幅方向において、両端部の経糸密度が中央部の経糸密度よりも小さいことを特徴とするゴム補強用合成繊維すだれ織物が提供される。また本発明によれば、上記すだれ織物を用いた空気入りタイヤが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接着剤付与などの際の延伸・熱処理後において経糸密度が均一となるゴム補強用合成繊維すだれ織物を提供することができる。このため、上記すだれ織物を空気入りタイヤに使用することによりユニフォミティーに優れたタイヤを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明においては、ゴム補強用合成繊維すだれ織物が、緯糸と、タイヤコードからなる経糸とがすだれ織りされたすだれ織物であって、該織物の幅方向において、両端部の経糸密度が中央部の経糸密度よりも小さいことが肝要である。これにより、延伸や熱処理により、織物の幅方向において両端部が中央部よりも高密度となることを抑制し、タイヤのユニフォミティーを向上させることができる。
【0011】
本発明で使用するゴム補強用合成繊維すだれ織物の経糸としては、ナイロン6、ナイロン66に代表されるポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステル、およびポリビニールアルコールよからなる繊維が好ましく挙げられる。一方、緯糸としては、綿、ポリビニールアルコール、ポリエステル、ナイロンなどを挙げることができる。
【0012】
そして、生すだれ織物は、上記の経糸用繊維に下撚および上撚を掛けてタイヤコードとしたものを経糸とし、この経糸を1000本〜1500本並べ、これら経糸がばらけないように上記の緯糸繊維からなる緯糸で製織することにより得ることができる。また、すだれの幅は140〜160cmで、長さは800〜2500mであり、緯糸は3本〜5本/5cm間隔で打ち込まれる。
【0013】
前述したように本発明のすだれ織物は、該織物の幅方向において、両端部の経糸密度が中央部の経糸密度よりも小さくする必要があるが、これは経糸の筬の間隔を調整することで可能である。
この際、タイヤのユニフォミティーを向上させる上では、織物の幅方向において、中央部から両端部に向かって経糸密度が漸減していることがより好ましい。
【0014】
上記のように経糸密度を漸減あるいは漸増させるには、経糸の筬の間隔を多段階に或いは連続的徐々に広くあるいは狭くすることによって実現できる。実際には、特定幅で段階的に経糸密度を変化させる方が織物設計上好ましい。この際、その段階数は3〜7段階が好ましく、その幅は5〜15cmで行うのが好ましい。また、本発明においては、すだれ織物の幅全部の経糸密度を変えるのではなく、織物端部から特定の幅のみを段階的に或いは連続的に徐々に経糸密度を変化させてもよい。
【0015】
上記すだれ織物に対して接着剤が付与されるが、該接着剤としては、エポキシ化合物、イソシアネ−ト化合物およびハロゲン化フェノ−ル化合物およびレゾシンポリサルファイド化合物などを挙げることができる。また、その付与方法としては、具体的には第1処理液でエポキシ化合物、ブロックイソシアネ−ト、ラテックスの混合液を付与し、熱処理後に第2処理液としてレゾルシンとホルムアルデヒドとの初期縮合物およびゴムラテックスからなる液(RFL液)を付与し、次いでさらに熱処理する方法が代表的手段として挙げられる。
【0016】
次に、接着剤付与後のすだれ織物に対し付与する熱処理、延伸条件としては、例えば経糸がナイロン6繊維の場合は170〜215℃で30〜90秒、好ましくは190〜210℃で50〜70秒、またナイロン66繊維の場合は200〜240℃、30〜90秒、好ましくは210〜230℃で50〜70秒が望ましい。また、ポリエステルの場合は200〜250℃で30〜150秒、好ましくは210〜230℃の処理が施される。いずれの場合にも約3%延伸が施される。
【実施例】
【0017】
以下、実施例を挙げて本発明の構成および効果をさらに詳細に説明する。尚、実施例における各物性は下記方法により求めたものである。
(1)筬仕様
中央部の筬密度を100とした指数で表示した。数値が小さいほど筬密度が低くなる。中央部の筬密度がA(本/inch)で、最端部の筬密度がB(本/inch)の場合にはB/Aで算出される。
(2)経糸密度の均一性
中央部の経糸密度を100とした指数で表示した。数値が100に近いほど均一性に優れている。中央部の経糸密度がC(本/inch)で、片側最端部の経糸密度がD(本/inch)、もう一方の片側最端部の経糸密度がE(本/inch)の場合には、(D+E)/Cで算出される。
(3)ユニフォミティー
JASOC607(自動車用タイヤのユニフォミティー試験方法)に準拠して、リム(16×6.5JJ)、内圧(200kPa)、荷重(5.50kN)の条件下における試供タイヤのRFV(ラテラルフォースバリエーション)を測定し、比較例1を100とした指数で表示した。数値が小なほどユニフォミティーに優れている。
【0018】
[実施例1]
極限粘度0.95のポリエチレンテレフタレートを常法により溶融紡糸し、延伸倍率5.5倍に延伸することにより得られた、1670デシテックス250フィラメントのマルチフィラメント2本を、下撚数40回/10cm、上撚数40回/10cmの撚数で撚糸してタイヤコードを得、これを経糸とした。
【0019】
上記経糸(タイヤコード)を1500本引揃え、これに20番手の綿紡績糸(都築紡績(株)製)を緯糸として4本/5cmの間隔で打ち込んで、ゴム補強用合成繊維すだれ織物を製造した。この際、両端部の筬仕様を95とし、そこから幅10cm単位(以下、この幅を変則幅と称する)で、5段階(この段階数を以下、漸増数と称する)で、それぞれ織物の中央部に向かって筬密度を漸増(織物の中央部から両端部に向かっては漸減)させた。
【0020】
次いで、上記のすだれ織物を、エポキシ化合物、ブロックイソシアネ−ト化合物およびゴムラテックスからなる混合液(第1浴処理液)に浸漬した後、130℃で100秒間乾燥し、続いて240℃で45秒間延伸熱処理した。
【0021】
さらに、上記第1処理浴で処理したすだれ織物を、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)からなる第2処理液に浸漬した後、100℃で100秒間乾燥し、続いて240℃で60秒間延伸熱処理を施した。そして、上記のすだれ織物を補強材として用いて、常法により空気入りタイヤ(タイヤサイズ225/60R16)を試作した。結果を表1に示す。
【0022】
[比較例1]
織物の幅方向において経糸密度を変えず、両端部と中央部の経糸密度を同じにした以外は、実施例1と同様にしてすだれ織物を製造し、タイヤを試作した。結果を表1に示す。
【0023】
[実施例2、比較例2]
両端部の筬仕様、両端部から中央部に向かっての漸増数、その際の変則幅を表1のように変更した以外は、実施例1と同様にしてすだれ織物を製造し、タイヤを試作した。結果を表1に示す。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、接着剤付与などの際の延伸・熱処理後において経糸密度が均一となるゴム補強用合成繊維すだれ織物を提供することができる。このため、上記すだれ織物を特に空気入りタイヤに使用することによりユニフォミティーに優れてタイヤを得ることができ、本発明はその産業的価値が極めて高いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯糸と、タイヤコードからなる経糸とがすだれ織りされたすだれ織物であって、該織物の幅方向において、両端部の経糸密度が中央部の経糸密度よりも小さいことを特徴とするゴム補強用合成繊維すだれ織物。
【請求項2】
織物の幅方向において、中央部から両端部に向かって経糸密度が漸減している請求項1記載のゴム補強用合成繊維すだれ織物。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載のゴム補強用合成繊維すだれ織物を用いた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2006−161177(P2006−161177A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349845(P2004−349845)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】