説明

サイクロイド減速機及びインホイールモータ駆動装置

【課題】サイクロイド減速機及びこれを用いたインホイールモータ駆動装置において、外ピンを支持する針状ころ軸受の保持器の抜け出しを阻止する構造をコストの増大やハウジングの大型化を伴うことなく実現することである。
【解決手段】サイクロイド減速機において、外ピン31を支持する針状ころ軸受43の保持器48の外側縁に内径側に屈曲された係合ツバ部53を設け、その係合ツバ部53を外ピン31の外端面に軸方向に係合することにより、保持器48の抜け出しを防止した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サイクロイド減速機及びこれを用いたインホイールモータ駆動装置に関し、特に、サイクロイド減速機における外ピンの支持軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インホイールモータ駆動装置の減速部を構成するのに適した減速機として、従来からサイクロイド減速機を用いることが知られている。サイクロイド減速機は、一般に、入力軸に設けられた偏心カムと、その偏心カムの外周面に回転自在に嵌合され外周部に円弧歯車を有する曲線板と、前記曲線板の径方向外側において前記入力軸と同心状態にハウジングの内周面に設けられた環状の外ピンハウジングと、その外ピンハウジングに保持され前記円弧歯車と係合された外ピンと、前記曲線板の自転運動を出力部材に伝達する運動変換機構とによって構成される。前記外ピンの両端部は、転がり軸受を介して外ピンハウジングに支持される(特許文献1)。
【0003】
サイクロイド減速機は、コンパクトでありながら、高減速比を得られるメリットがある一方、減速比がnの場合、外ピンの数は(n−1)本必要となる。このため、外ピンを支持する軸受が大きくなると、外ピンハウジング、ひいては減速機のハウジングが大型化する。この点を考慮して、前記軸受として針状ころ軸受を用いることが従来から知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−44537号公報
【特許文献2】特開2010−48280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の針状ころ軸受111は、図9に示したように、針状ころ112、保持器113、外輪114により構成される。外ピン118の両端部と、これを支持する外ピンハウジング115の孔117との間に前記の針状ころ軸受111が介在される。
【0006】
外ピンハウジング115は、減速機ハウジング119の内面に嵌合固定される。前記の針状ころ軸受111によって外ピン118のラジアル方向の摩擦の軽減が図られ、また、外ピン118の端面と減速機ハウジング119との間に鋼球120が介在され、これによってスラスト方向の摩擦の軽減が図られる。鋼球120の当接面にスラスト板121が埋め込まれる場合がある。また、外ピンハウジング115に係合されたクリップ122のツバ部が外輪114の内端面に係合され、外輪114の抜け出しが防止される。
【0007】
外ピン118の前記支持構造によると、針状ころ軸受111の保持器113は、軸方向外側へは減速機ハウジング119の壁に阻止され移動することはないが、その反対の内側へは障害物が存在しないことから、振動・衝撃等を受けると保持器113が針状ころ112とともに内側へ抜け出すおそれがある。
【0008】
その抜け出しを防止する対策として、図9に示したように、外ピン118に軸方向内側が大径となる段差部123を設ける手段がある。しかし、外ピン118に段差部123を設けることは製造工程が増え、外径管理のための検査時間も増えるので、コスト高の原因となる。
【0009】
また、図10に示したように、外輪114の両端部内径面にツバ部124、124を設け、これによって保持器113の両端部を係合する手段がある。しかし、外輪114が肉厚になり、減速機ハウジング119が大型化する要因となる。
【0010】
そこで、この発明は、サイクロイド減速機及びこれを用いたインホイールモータ駆動装置において、外ピンを支持する針状ころ軸受の保持器の抜け出しを阻止する構造をコストの増大やハウジングの大型化を伴うことなく実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、この発明は、入力軸に設けられた偏心カムと、前記偏心カムの外周面に回転自在に嵌合され外周部に円弧歯車を有する曲線板と、前記円弧歯車と係合する所要数の外ピンと、前記外ピンを前記ハウジングに対し回転自在に支持する針状ころ軸受と、前記曲線板の自転運動を出力部材に伝達する運動変換機構とによって構成されたサイクロイド減速機において、前記針状ころ軸受の保持器に係合部が設けられ、その係合部が当該保持器と径方向に隣接しかつ軸方向に固定された固定部材に対し軸方向に係合された構成を採用した。
【0012】
ここに、保持器の「係合部」とは、具体的には保持器の外端縁を内径側又は外径側に屈曲して形成された係合ツバ部をいう。また、「当該保持器と径方向に隣接しかつ軸方向に固定された固定部材」とは、具体的には、外ピン又は外輪をいう。係合ツバ部が内径側に屈曲されたものである場合は外ピンが対応し、外ピンの外端面に当該係合ツバ部が係合される。また、係合ツバ部が外径側へ屈曲されたものである場合は外輪が対応し、外輪の外端面に当該係合ツバ部が係合される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明はサイクロイド減速機及びこれを用いたインホイールモータ駆動装置において、外ピンを支持する針状ころ軸受の保持器に係合部を設け、その係合部を固定部材に対し軸方向に係合させた構成を採用したことによって当該保持器の抜け出しを防止することができる。この構成によれば部品の増加や加工工程の増加を伴うことがないので製造コストやハウジングの大きさに影響を及ぼすことがない。保持器に係合部を設けることは、従来の保持器の形状を変えるだけで実現できるので、針状ころ軸受の従来の製造工程を大幅に変える必要がない利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、インホイールモータ駆動装置の断面図である。
【図2】図2は、同上の減速部の拡大断面図である。
【図3】図3は、図2のX1−X1線の断面図である。
【図4】図4は、図2の外ピン支持部分の拡大断面図である。
【図5】図5は、図2の外ピン支持部分の他の例1の一部拡大断面図である。
【図6】図6は、図2の外ピン支持部分の他の例2の一部拡大断面図である。
【図7】図7は、図2の外ピン支持部分の他の例3の一部拡大断面図である。
【図8】図8は、図2の外ピン支持部分の他の例4の一部拡大断面図である。
【図9】図9は、従来例の外ピン支持部分の拡大断面図である。
【図10】図10は、従来例の外ピン支持部分の他の例の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
この発明の実施形態に係るインホイールモータ駆動装置11は、図1に示したように、駆動力を発生させるモータ部Aと、モータ部Aの回転を減速して出力する減速部Bと、減速部Bの出力を車輪に伝える車輪ハブ軸受部Cを備える。モータ部Aはモータハウジング12の内部に組み込まれ、減速部Bは減速部ハウジング13に組み込まれる。モータハウジング12の前端に減速部ハウジング13がボルト14によって連結固定される。
【0017】
モータ部Aは、モータハウジング12に固定されたステータ15と、モータ軸16に一体化されたロータ17を備え、ステータ15とロータ17はラジアル方向に対向したラジアルギャップモータを構成している。ロータ17は、ボルト18によってモータ軸16のフランジ19に固定される。モータ軸16は、その前後両端部において、転がり軸受21a、21bを介してモータハウジング12に回転自在に支持されている。
【0018】
前記のモータ軸16に内部通路22が設けられ、その内部通路22の前端に減速部Bの入力軸23が連結されている。入力軸23にも内部通路25が設けられ、両方の内部通路22、25は相互に連通している。
【0019】
減速部Bは、この発明の対象であるサイクロイド減速機によって構成される。減速部Bは、減速部ハウジング13の内径面に入力軸23と同心状態に嵌合固定された環状の外ピンハウジング26を備え(図1、図2参照)、減速部Bを構成する各部材がその外ピンハウジング26の内径側に設けられる。
【0020】
減速部Bを構成する部材としては、前記の入力軸23上において軸方向に隣接して設けられた一対の偏心カム27a、27b、各偏心カム27a、27bに円筒ころ軸受28a、28bを介して回転自在に保持された曲線板29a、29b、外ピンハウジング26の内径面に沿って等間隔に固定された複数の外ピン31(図3参照)、曲線板29a、29bの自転運動を出力部材32に伝達する内ピン34とその貫通孔39によって構成された運動変換機構20、各偏心カム27a、27bの軸方向外側に隣接して入力軸23に取り付けられたカウンタウェイト33a、33b等がある。
【0021】
前記の偏心カム27a、27bは、偏心運動による遠心力を互いに打ち消し合うように、180°位相を変えて設けられている。
【0022】
出力部材32は、フランジ部32aと軸部32bとを有する(図2参照)。フランジ部32aには、出力部材32の回転軸心を中心とする円周上の等間隔に複数の内ピン34の一端部が挿入固定される。また、軸部32bは車輪ハブ35の内径面に嵌合固定され、減速部Bの出力を車輪に伝達する。出力部材32のフランジ部32aの内径面と入力軸23との間に、転がり軸受36が介在され、入力軸23と出力部材32が同心状態に保持されかつ相対回転可能となっている。
【0023】
前記内ピン34の他端部は、スタビライザー37のフランジ部37aに挿通支持される(図2参照)。スタビライザー37は、フランジ部37aの内径に設けられた円筒部37bを有し、その円筒部37bが針状ころ軸受38を介してモータ軸16の前端部(減速部B側の端部)外径面に回転自在に嵌合されている。
【0024】
曲線板29a、29bは、図3に示すように、外周部にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成される円弧歯車30を有し、また軸方向の一方端面から他方端面に貫通する複数の貫通孔39を有する。貫通孔39は、曲線板29a、29bの自転軸心を中心とする円周上に等間隔をおいて内ピン34と同数、同間隔に設けられており、各貫通孔39に内ピン34が径方向の余裕(偏心量の2倍)をもって挿通される。
【0025】
前記の曲線板29a、29bは、それぞれ偏心カム27a、27bに対し円筒ころ軸受28a、28bを介して回転自在に支持される。曲線板29a、29bの位相も、偏心カム27a、27bと同方向に180°位相がずれている。
【0026】
前記の偏心カム27a、27bおよび曲線板29a、29bの回転によって生じる不釣合い慣性偶力を打ち消すために、各偏心カム27a、27bの軸方向外側に隣接してカウンタウェイト33a、33bが設けられる。これらのカウンタウェイト33a、33bは、偏心カム27a、27bとそれぞれ180°位相を変えた偏心状態に取り付けられる。
【0027】
外ピンハウジング26は環状に形成され(図3参照)、周方向に一定の間隔をおいてそれぞれ外ピン31の数だけ孔26a、26bが設けられる。外ピン31の両端部が孔26a、26bに挿入され、針状ころ軸受43を介して減速部ハウジング13に支持される。外ピン31の数は曲線板29a、29bの円弧歯車30の歯数より1だけ多く、外ピン31の複数のものが同時に円弧歯車30と係合する。
【0028】
前述の運動変換機構20は、出力部材32に固定された複数の内ピン34と、曲線板29a、29bに設けられた貫通孔39とにより構成される。貫通孔39の内径寸法は、内ピン34の外径寸法(「針状ころ軸受46a、46bを含む最大外径」を指す。以下同じ。)より偏心カム27a、27bの偏心量の2倍だけ大きく設定される。前記の内ピン34は、曲線板29a、29bの自転運動に伴って貫通孔39の内壁面と部分的に当接する。これにより、曲線板29a、29bの公転運動が内ピン34に伝わらず、自転運動のみの運動に変換された運動が内ピン34に伝達される。
【0029】
内ピン34は、出力部材32の回転軸心を中心とする円周軌道上に等間隔に設けられており、前述のように内ピン34の一端部が出力部材32に固定され、他端部がスタビライザー37に固定されている。曲線板29a、29bとの摩擦抵抗を低減するために、曲線板29a、29bの貫通孔39を通過する部分に針状ころ軸受46a、46bが設けられ、各内ピン34はその針状ころ軸受46a、46bを介して貫通孔39に部分的に接触する。
【0030】
前記の外ピン31を回転自在に支持する前記の針状ころ軸受43は、図4に示したように、針状ころ47、その保持器48及び外輪49の組み合わせからなり、外輪49が前記の孔26a、26bに嵌合される。外輪49の抜け出しを防止するために、外ピンハウジング26に係合したクリップ51のツバ部52が外輪49の内端面に係合される。その係合により外輪49は外ピンハウジング26に対し軸方向への移動が阻止され固定状態となる。
【0031】
また、外ピン31の両端部にポケット40が設けられ、そのポケット40に保持された鋼球44が減速部ハウジング13の内面に突き当てられる。これにより、外ピン31のスラスト方向の摩擦が軽減される。鋼球44と接触する減速部ハウジング13の内面にスラスト板45が埋められる。鋼球44を減速部ハウジング13の内面に直接接触させる場合もある(図5参照)
【0032】
外ピン31の端面から鋼球44が突き出すことにより、外ピン31の端面と減速部ハウジング13との間に一定の軸方向すき間aが形成される(図4参照)。
【0033】
前記の保持器48の外側縁(外ピン31の外端部側の側縁)は、通常の場合より軸方向の幅が大きく形成され、保持器本来の機能を損なわない部分を内径側に屈曲することにより係合ツバ部53が形成される。係合ツバ部53は、外ピン31の端面とこれに対向した減速部ハウジング13の内面との間のすき間aの部分に介在され、外ピン31(即ち、保持器48の内径側に隣接した固定部材)の外端面に軸方向に係合される。
【0034】
外ピン31の外径D1と係合ツバ部53の内径d1との関係はD1>d1となるので、係合ツバ部53は外ピン31に対して軸方向に係合され、保持器48の内側への抜け出しが阻止される。
【0035】
前記のすき間aは、係合ツバ部53がその両側の外ピン31及び減速部ハウジング13に対し相対回転可能なように、係合ツバ部53の厚さより若干大きく形成される。また、外輪49の外端部は減速部ハウジング13の内面に突き当てることができるように通常より外側へ長く形成され、外輪49の軸方向の位置決めが容易にできるようにしている。
【0036】
図6の場合は、針状ころ軸受43が、針状ころ47とその保持器48によって構成され、前記のような外輪49の無い例である。この場合は、外ピンハウジング26の孔26a、26bの内径面が針状ころ47の転走面となる。保持器48の外側縁に内径側へ屈曲された係合ツバ部53が形成され、外ピン31の外端面に軸方向に係合されることは前記の場合と同様である。
【0037】
図7の場合は、保持器48の外側縁を外径方向に屈曲することにより係合ツバ部53を形成している。その係合ツバ部53は、外輪49と減速部ハウジング13との間のすき間aの部分に介在され、保持器48の外径側に隣接した固定部材である外輪49に対し軸方向に係合される。その他の構成は図5、図6の場合と同様である。
【0038】
この場合は、外輪49の内径d2と係合ツバ部53の外径をD2との関係はd2<D2となるので、係合ツバ部53は外輪49に対して軸方向に係合され、保持器48の内側への抜け出しが阻止される。
【0039】
図8に示したその他の例は、図7の場合と同様に係合ツバ部53を外径方向に屈曲したものであるが、外ピン31の外端面を球面又は円弧面に形成し、その面を直接減速部ハウジング13の内面に押し当てるようにしている。
【0040】
以上述べた各例において、保持器48は樹脂を射出成形又は削り出しによって製作したもの、金属をプレス加工又は溶接加工によって製作したもののいずれでもよい。プレス加工された金属保持器の場合は、表面に摩擦係数の改良及び耐摩耗性向上のためのメッキ等の表面改質を行うことがある。
【0041】
減速部Bに潤滑油を供給する機構として、モータハウジング12の減速部B側の壁面の内径部分において、スタビライザー37の円筒部37bの外径面に回転ポンプ55(図1、図2参照)が設けられ、減速部Bの内部に至る給油通路56と、潤滑を終えて減速部Bから戻る帰還通路57が設けられる。
【0042】
給油通路56は、モータハウジング12の内側に沿ってモータ軸16の後端に達し、モータ軸16と入力軸23の各内部通路22、25、入力軸23の各偏心カム27a、27bに対応する位置において径方向に設けられた給油孔58a、58b(図2参照)に達し、この経路を経て潤滑油が減速部Bの内部に供給される。戻りの潤滑油は、減速部ハウジング13の外底部に設けられた潤滑油貯留部59から帰還通路57を経て回転ポンプに帰還する。
【0043】
車輪ハブ軸受部Cは、図1に示すように、減速部Bの出力部材32に固定連結された車輪ハブ35、車輪ハブ35を減速部ハウジング13に対して回転自在に保持する車輪ハブ軸受60を備える。車輪ハブ35の内径面に出力部材32が挿入されスプライン結合されるとともに、車輪ハブ35から露出した出力部材32の先端部をナット50で締結することによって、出力部材32と車輪ハブ35を結合している。
【0044】
次に、上記構成のインホイールモータ駆動装置11の作動原理を説明する。モータ部Aは、ステータ15のコイルに交流電流を供給することによって生じる電磁力を受けて、永久磁石または磁性体によって構成されるロータ17が回転する。
【0045】
これにより、ロータ17に接続されたモータ軸16及びこれと一体の入力軸23が回転すると、偏心カム27a、27bが偏心回転運動をすることにより曲線板29a、29bが入力軸23の回転軸心を中心として、入力軸23の速度で公転運動を行う。このとき、複数の外ピン31が、曲線板29a、29bの円弧歯車30と係合して、曲線板29a、29bに対し入力軸23の回転方向とは逆向きに低速の自転運動を生じさせる。
【0046】
貫通孔39に挿通された内ピン34は、曲線板29a、29bの自転運動に伴って貫通孔39の内壁面と部分的に当接する。これにより、曲線板29a、29bの公転運動が内ピン34に伝わらず、曲線板29a、29bの自転運動のみの運動に変換され、その自転運動が内ピン34及び出力部材32を介して車輪ハブ軸受部Cに伝達される。
【0047】
このようにして、モータ軸16の回転が減速部Bによって減速されて出力部材32を経て車輪ハブ軸受部Cに伝達されるので、低トルク、高回転型のモータ部Aを採用した場合でも、車輪に必要なトルクを伝達することが可能となる。
【0048】
なお、上記構成の減速部Bの減速比は、外ピン31の数をZA、曲線板29a、29bの円弧歯車30の数をZBとすると、(ZA−ZB)/ZBで算出される。図1に示す実施形態では、ZA=12、ZB=11であるので、減速比は1/11と、非常に大きな減速比を得ることができる。
【0049】
このように、多段構成とすることなく大きな減速比を得ることができる減速部Bを採用することにより、コンパクトで高減速比のインホイールモータ駆動装置11を得ることができる。また、外ピン31を針状ころ軸受43により支持し、また内ピン34の曲線板29a、29bに当接する位置に針状ころ軸受46a、46bを設けたことにより、摩擦抵抗が低減されるので、減速部Bの伝達効率が向上する。
【0050】
また、外ピン31を支持する針状ころ軸受43の保持器48は、その外端縁に設けられた係合ツバ部53が外ピン31又は外輪49(即ち、保持器48に対し径方向に隣接し、かつ軸方向に固定された固定部材)に係合することにより、軸方向への抜け出しが防止される。
【0051】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
A モータ部
B 減速部
C 車輪ハブ軸受部
11 インホイールモータ駆動装置
12 モータハウジング
13 減速部ハウジング
14 ボルト
15 ステータ
16 モータ軸
17 ロータ
18 ボルト
19 フランジ
20 運動変換機構
21a、21b 転がり軸受
22 内部通路
23 入力軸
25 内部通路
26 外ピンハウジング
26a、26b 孔
27a、27b 偏心カム
28a、28b 円筒ころ軸受
29a、29b 曲線板
30 円弧歯車
31 外ピン
32 出力部材
32a フランジ部
32b 軸部
33a、33b カウンタウェイト
34 内ピン
35 車輪ハブ
36 転がり軸受
37 スタビライザー
37a フランジ部
37b 円筒部
38 針状ころ軸受
39 貫通孔
40 ポケット
43 針状ころ軸受
44 鋼球
45 スラスト板
46a、46b 針状ころ軸受
47 針状ころ
48 保持器
49 外輪
50 ナット
51 クリップ
52 ツバ部
53 係合ツバ部
55 回転ポンプ
56 給油通路
57 帰還通路
58a、58b 給油孔
59 潤滑油貯留部
60 車輪ハブ軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力軸に設けられた偏心カムと、前記偏心カムの外周面に回転自在に嵌合され外周部に円弧歯車を有する曲線板と、前記円弧歯車と係合する所要数の外ピンと、前記外ピンを前記ハウジングに対し回転自在に支持する針状ころ軸受と、前記曲線板の自転運動を出力部材に伝達する運動変換機構とによって構成されたサイクロイド減速機において、前記針状ころ軸受の保持器に係合部が設けられ、その係合部が当該保持器と径方向に隣接しかつ軸方向に固定された固定部材に対し軸方向に係合されたことを特徴とするサイクロイド減速機。
【請求項2】
前記係合部が、前記保持器の外側縁を内径側に屈曲して形成された係合ツバ部であり、前記固定部材が前記外ピンであることを特徴とする請求項1に記載のサイクロイド減速機。
【請求項3】
前記係合ツバ部と外ピン端面との係合構造が、前記外ピンの外端面と前記ハウジングの間に所定のすき間が設けられ、前記係合ツバ部を前記すき間に介在させた構造であることを特徴とする請求項2に記載のサイクロイド減速機。
【請求項4】
前記所定のすき間が前記係合ツバ部の厚さより大きく形成されたことを特徴とする請求項3に記載のサイクロイド減速機。
【請求項5】
前記針状ころ軸受が、針状ころとその保持器によって構成され、転走面が前記ハウジング側に形成されたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のサイクロイド減速機。
【請求項6】
前記係合部が、前記保持器の外側縁を外径側に屈曲することにより形成された係合ツバ部であり、前記固定部材が前記外輪であることを特徴とする請求項1に記載のサイクロイド減速機。
【請求項7】
前記係合ツバ部と外輪端面との係合構造が、前記外輪の外端面と前記ハウジングの間に所定のすき間が設けられ、前記係合ツバ部を前記すき間に介在させた構造であることを特徴とする請求項6に記載のサイクロイド減速機。
【請求項8】
前記所定のすき間が前記係合ツバ部の厚さより大きく形成されたことを特徴とする請求項7に記載のサイクロイド減速機。
【請求項9】
前記ハウジングに環状の外ピンハウジングが前記入力軸と同心状態に固定され、その外ピンハウジングに設けられた孔に前記外ピンの両端部が挿入され、前記外ピンと前記孔との間に前記針状ころ軸受が介在され、前記外ピンが外ピンハウジングを介して前記ハウジングに支持されたことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のサイクロイド減速機。
【請求項10】
モータ部と、そのモータ部の出力回転を減速する減速部と、前記モータ部及び前記減速部を保持するハウジングと、前記減速部の出力部材に連結固定された車輪ハブ軸受部とからなるインホイールモータ駆動装置において、前記減速部として請求項1から9のいずれかに記載のサイクロイド減速機を用いたことを特徴とするインホイールモータ駆動装置。





【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−202457(P2012−202457A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66347(P2011−66347)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】