サイズ選別過程なしで単分散で結晶性に優れた金属、合金、金属酸化物、及び複合金属酸化物のナノ粒子を製造する方法
【課題】サイズ選別過程なしで、単分散で結晶性に優れた金属、複合金属合金、単金属酸化物及び複合金属酸化物のナノ粒子を直接合成する方法を提供すること。
【解決手段】代表的な方法は、容器内の溶媒に金属前駆体、酸化剤、界面活性剤を添加して混合溶液を準備した後、加熱処理を行うことにより、単分散金属酸化物ナノ粒子を合成する段階と、貧溶媒を添加してから遠心分離して、金属酸化物ナノ粒子の形成を完了する段階とを含んでなり、その結果として得られるナノ粒子は多様な用途に適した優れた磁気特性を有する。
【解決手段】代表的な方法は、容器内の溶媒に金属前駆体、酸化剤、界面活性剤を添加して混合溶液を準備した後、加熱処理を行うことにより、単分散金属酸化物ナノ粒子を合成する段階と、貧溶媒を添加してから遠心分離して、金属酸化物ナノ粒子の形成を完了する段階とを含んでなり、その結果として得られるナノ粒子は多様な用途に適した優れた磁気特性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサイズ選別過程なしで単分散で結晶性に優れた金属、複合金属合金、単金属酸化物及び複合金属酸化物のナノ粒子を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
均一なナノ粒子の出現は、高密度磁気データ記憶素子、高密度単電子トランジスタ・デバイス、及び高効率レーザ・ビーム源等の様々な技術的な分野で大きな影響力を発揮している。このようなナノサイズを有する粒子は、従来のよく知られているマイクロメートルよりも大きなサイズの粒子に比べて新規で興味深い電気的、光学的、磁気的特性を持っている。
【0003】
ナノ粒子は、バルク材料に比べて体積対表面積比が非常に大きく、表面欠陥の比率が大きいため、材料の表面性質が特に重要である。すなわち、分子とバルク材料の中間サイズを有するナノ粒子の量子閉じ込め効果のため、学問的、技術的関心が増大している。ナノデバイス、非線型光学材料、触媒、情報記憶装置などはその応用例であると言える。特に、情報化とマルチメディア時代に入り、既存の商用化した装置に比べ、高密度、高速度、低消費電力、超軽量化などを指向する磁気記憶装置に対する開発研究及び需要が増大している。現在、磁気ナノ粒子を用いる磁気記憶装置の開発に対する研究が活発に行われており、これにより、単分散で制御可能なサイズのナノ粒子の合成が追求されている。しかし、ナノ粒子間の強い電磁気的相互影響力のため、単分散磁気ナノ粒子の合成は非常に困難であると知られている[Science 267(1995)1338, J. Appl. Phys. 61(1987)3323, IEEE Transactions on Magnetism, 27(1991)5184]。
【0004】
フェリ磁性酸化物の一つであるマグヘマイト(Maghemite、γ−Fe2O3)は1937年以来商業的なテープとディスク記憶装置として用いられており、現在にも依然として主要な磁気記録材料として使用されている。しかし、従来の典型的なマグヘマイトの粒子サイズはミクロン単位であるため、磁気記憶素子に必要とされる最小領域は磁気粒子のサイズにより決定され、磁気媒体の密度もこの粒子サイズによる制限があった。
【0005】
最近、高密度磁気記憶装置を製造するため、均一なナノサイズの磁気ナノ粒子を作ろうとする努力が多様に行われている。従来の磁気記憶装置の最小記憶単位は磁場によって配向する最小磁気単位、つまり磁気ドメインと言われる相当に多くの小さな磁気材料結晶の集合体であると知られている。しかし、従来の磁気データ記憶媒体とは異なり、一定の形状及びサイズを有するナノ粒子を磁気記憶媒体の材料として使用することができれば、1ナノ粒子で1ビットのシステムを作ることができるため、記憶密度が幾何級数的に増加して、平方インチ当たりテラビット級の磁気記憶密度が具現される。従来の均一な球形磁気ナノ粒子の合成法としては、有機金属前駆体の熱的分解[J. Phys. Chem. 84(1980)1621]、有機金属前駆体の音波化学的分解[J. Am. Chem. Soc. 118(1996)11960]、金属塩の高温還元[J. Appl. Phys. 85(1999)4325、及び韓国特許KR2000-0011546]、及び逆ミセル(reverse micelles)内での金属塩の還元[J. Phys. Chem. B 103(1999)1805]を含むいろいろの合成方法が用いられている。
【0006】
詳細には、「高温界面活性剤溶液内への前駆体の短時間投与に続くエージングにより誘導される核形成のショートバースト(short-burst)法」[J. Am. Chem. Soc. 115(1993)8706]が、単分散ナノ粒子を合成するために最も広く使用されている。ほかの従来技術においては球形ナノ粒子の指向性成長を使用することによりロッド型の磁気ナノ粒子が合成される[J. Am. Chem. Soc. 122(2000)8581;Science 291(2001)2115]。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような方法で合成されたナノ粒子のサイズの均一性が保障されない問題点があることが知られている。また、遷移金属及び酸化物の単分散ナノ粒子の合成は2〜6族化合物半導体ナノ粒子、又は金、白金、銀などの貴金属ナノ粒子に比べて従来の研究が乏しかった分野であって、粒子サイズ及び形状が一定したナノ粒子を合成するのが難しいことは既に知られている。
【0008】
一方、アリビサトス等(Alivisatos et. al.)は界面活性剤の存在下の高温で金属クペロン[N−nitorosophenylhydroxylamine[C6H5N(NO)O−]前駆体を熱分解させることにより、酸化鉄(ガンマ−Fe2O3、マグヘマイト)、などの遷移金属の酸化物、酸化マンガン(Mn3O4)及び酸化銅(Cu2O)のナノ粒子を合成した。しかし、このように合成したナノ粒子はサイズが均一でなく、その形状が無晶形であるため、磁気データ記憶媒体に適用するための超格子構造を形成し難い。加えて、非常に高価な金属クペロン複合前駆体が使用されている[J. Am. Chem. Soc. 121(1999)11595]。
【0009】
したがって、本発明はこのような従来技術の問題点を解決するためのナノ粒子の合成方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、略球形で均一な形状及びサイズを有する金属、合金、金属酸化物及び複合金属酸化物ナノ粒子をサイズ選別過程なしで製造することができるナノ粒子の製造方法を提供することである。本発明の方法により製造されたナノ粒子は均一な形状及び直径サイズを有して、自己アセンブリにより超格子構造を形成するので、平方インチ当たりテラビットに近い高密度磁気記憶媒体を具現することができる。
【0011】
本発明のほかの目的は、様々な媒質に多数回分散させ粉末状態で回収してもナノ粒子が凝集しないでその粒子サイズをそのまま維持する特性を有する金属、合金、金属酸化物及び複合金属酸化物ナノ粒子を製造する方法を提供することである。
【0012】
本発明の方法により製造されたナノ粒子が有する非凝集性、回収時の粒子サイズ維持性などの物理的特性はナノ粒子の活用分野及び活用度を向上させるだけでなく、再活用可能な可能性を向上させる。
【0013】
本発明のほかの目的は、前駆体と界面活性剤との反応により金属−界面活性剤錯化合物を形成した後、この金属−界面活性剤錯化合物を高温で熱分解させてエージングすることにより、高結晶性且つ単分散の金属球形粒子を製造する方法を提供することである。また、本発明の目的は、前記金属球形ナノ粒子が酸化剤により酸化するように形状とサイズが均一な金属酸化物ナノ粒子を製造する方法を提供することである。本発明により製造された単分散ナノ粒子は自己アセンブリによる超格子構造に誘導され、これにより高密度磁気記憶媒体に応用できる。
【0014】
本発明の金属及び金属酸化物ナノ粒子の合成方法を図1ないし図3に基づいて説明する。
図1は本発明による金属又は金属酸化物ナノ粒子の合成過程を示すフローチャート、図2は本発明による、金属ナノ粒子の合成過程を経ることなく金属酸化物ナノ粒子を直接合成する過程を示すフローチャート、図3は本発明による、既に製造されたナノ粒子を成長させることによってより大きなナノ粒子を製造する過程を示すフローチャートである。
【0015】
図1に示すように、金属及び金属酸化物のナノ粒子は、以下の3つのステップにより合成される。(A S101 S102)金属前駆体と適当な界面活性剤を溶媒内に用意した後、金属前駆体と界面活性剤との反応により金属−界面活性剤錯化合物を合成し、(B
S103)前記金属−界面活性剤錯化合物を分解させることにより、単分散金属ナノ粒子を形成し、(C S104)貧溶媒を加え、遠心分離機にかけることにより、前記金属ナノ粒子の形成が完了する。更に、金属酸化物ナノ粒子を製造するためには、(D S105 S106)前記金属ナノ粒子を分散させた後、所定の酸化剤を添加して酸化反応を誘導することにより金属酸化物ナノ粒子を形成した後、金属酸化物ナノ粒子を回収することによりナノ粒子を製造することもできる。
【0016】
本発明の更なる態様では、約12〜50nmサイズのより大きなナノ粒子が合成可能である。図2に示すように、金属前駆体を、界面活性剤及び酸化剤を含む溶媒内に迅速に投入した後、反応を誘導し熱分解させ、所望の金属酸化物ナノ粒子を回収することによりナノ粒子を製造することもできる。
【0017】
図3に示すように、図1又は図2のように製造された約4〜11nmの小さなナノ粒子を用意した後、前記用意したナノ粒子に所定の金属−界面活性剤錯化合物をさらに添加し、熱分解過程を進めることにより、約12〜50nmサイズのより大きなナノ粒子を製造することもできる。
【0018】
図1〜3に基づく前記反応は、好ましくは、窒素、アルゴンのような不活性雰囲気で進行し、例えばシュレンク法(Schrenk technique)を用いるか、又はグローブボックス(Glove box)内で行うことができる。
【0019】
前記(A)段階のS101及びS102で金属ナノ粒子を合成するため、30℃〜200℃の温度で界面活性剤溶液に金属前駆体を注入して金属−界面活性剤錯化合物を製造し、前記(B)段階のS103でこの金属−界面活性剤錯化合物を30〜500℃の高温で還流法により熱分解させることにより、金属ナノ粒子を得る。
【0020】
前記金属前駆体としては、鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]、 フェロセン、コバルトトリカルボニルニトロシル[Co(CO)3(NO)]、シクロペンタジエニルコバルト−トリカルボニル[Co(CO)3C5H5]、ジコバルトオクタカルボニル[Co2(CO)8]、クロムヘキサカルボニル[Cr(CO)6]、ニッケルテトラカルボニル[Ni(CO)4]、ジマンガンデカカルボニル[Mn2(CO)10]そして、鉄アセチルアセトネート[Fe(acac)3]、コバルトアセチルアセトネート[Co(acac)3]、バリウムアセチルアセトネート[Ba(acac)2]、ストロンチウムアセチルアセトネート[Sr(acac)2]、プラチナアセチルアセトネート[Pt(acac)2]、パラジウムアセチルアセトネート[Pd(acac)2]などの金属アセチルアセトネート化合物、及びチタンテトライソプロポキシド[Ti(iOC3H7)4]、ジルコニウムテトラブトキシド[Zr(OC4H9)4]などの金属アルコキシド化合物の多様な有機金属化合物を所望のナノ粒子を生成するために使用することができる。
【0021】
前駆体を構成する金属としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)などの多様な金属、特に2〜10族の遷移金属を含み、リガンドはカルボニル(CO)、ニトロシル(NO)、シクロペンタジエニル(C5H5)、アセテート、芳香族化合物及びアルコキシドそのほかの公知のものを使用することができる。また、塩化鉄(III)(FeCl3)、塩化鉄(II)(FeCl2)、硝酸鉄(III)(Fe(NO3)3)、硫化鉄(II)(FeSO4)、塩化コバルト(III)(CoCl3)、塩化コバルト(II)(CoCl2)、硝酸コバルト(III)(CO(NO3)3)、硫化ニッケル(II)(NiSO4)、塩化ニッケル(II)(NiCl2)、硝酸ニッケル(II)(Ni(NO3)2)、四塩化チタン(TiCl4)、四塩化ジルコニウム(ZrCl4)、ヘキサクロロ白金酸(IV)(H2PtCl6)、ヘキサクロロパラジウム酸(IV)(H2PdCl6)、塩化バリウム(BaCl2)、硫化バリウム(BaSO4)、塩化ストロンチウム(SrCl2)、硫化ストロンチウム(SrSO4)などの金属イオンを含む金属塩を使用することができる。すなわち、これらの金属塩は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)などの多様な金属を含み、陰イオンとしては、塩化物(Cl−)、硝酸物(NO3-)、硫化物(SO42-)、リン酸塩(PO43-)、アルコキシドを含む。また、合金ナノ粒子と複合酸化物ナノ粒子の合成には前述した2種以上の金属の前駆体の混合物を使用することができる。
【0022】
前記(A)段階のS101及びS102において、球形ナノ粒子を安定化させるために使用される界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロマイドのようなアルキルトリメチルアンモニウムハライド系列の陽イオン界面活性剤と、オレイン酸、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、トリフェニルホスフィン(TOP)と、オレイルアミン、トリオクチルアミン、オクチルアミン及びアルキルチオールなどのアルキルアミンのような中性界面活性剤と、アルキル硫酸ナトリウム及びアルキルリン酸ナトリウムのような陰イオン界面活性剤を使用することができる。場合によっては、前記界面活性剤から選択された2種以上を使用することもできる。
【0023】
本発明に使用される酸化剤としては、ピリジンN−オキシド及びトリメチルアミンN−オキシドのようなアミンN−オキシドと、過酸化水素と、酸素とを含む。
本発明に使用される溶媒は、本発明で形成される金属−界面活性剤錯化合物を熱により分解させるため、少なくとも錯化合物の熱分解温度に近接する高沸点を有することが好ましい。これら溶媒の好ましい例としては、オクチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエ−テル、デシルエーテルなどのエーテル系化合物と、ピリジン、テトラヒドロフラン(THF)などの複素環式(heterocyclic)化合物と、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼンなどの芳香族化合物と、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)と、オクチルアルコール、デカノールなどのアルコール類と、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカンなどのヒドロカーボンと、水とがある。
【0024】
本発明は、金属−界面活性剤錯化合物を調節し分解して金属ナノ粒子を製造した後、前記製造した金属ナノ粒子を酸化させて金属酸化物ナノ粒子を生成するもので、合成条件の変数の調節はナノ粒子の形状及びサイズ分布を制御する。このような合成条件変数としては、界面活性剤の量、反応時間、反応温度などが挙げられる。例えば、図1を参照して、前記(B)段階のS103で得られた金属ナノ粒子の直径サイズは均一であり、サイズの均一性は前記(D)段階S105及びS106で金属酸化物ナノ粒子が合成される際でも維持され、本発明に従って金属ナノ粒子が合成される際に金属酸化物ナノ粒子のサイズは変化しない。特に界面活性剤の溶媒に対する濃度を調節することにより、2nmから50nmまで容易にナノ粒子のサイズを調節し得ることが分かった。すなわち、単分散の金属及び酸化金属のナノ粒子の合成が可能であり、ナノ粒子のサイズ調節も容易であることが分かった。界面活性剤の量の変更によるナノ粒子のサイズ調節の場合を見ると、前記(A)段階のS101及びS102で投入される界面活性剤の量を増加させると、生成される金属ナノ粒子の直径が増加することを実験的に確認した。したがって、本発明は、金属前駆体に対する界面活性剤の比を広い範囲で調節することにより、多様なサイズの金属及び金属酸化物ナノ粒子を製造することができる。本発明が適用できる金属前駆体と界面活性剤のモル比は1:0.1〜1:100の範囲、好ましくは1:0.1〜1:20の範囲である。また、高温で熱分解されるときの反応温度が低いほど、かつ反応時間が短いほど、金属ナノ粒子のサイズが小さくなることが実験的に分かった。
【0025】
本発明では、金属−界面活性剤錯化合物を形成するために、金属前駆体と界面活性剤とを反応させる。金属前駆体と界面活性剤との反応は、金属前駆体及び界面活性剤の種類によって、室温又はその以下の温度でも形成できるが、通常には少しの加熱が必要である。したがって、錯化合物の形成段階では、温度を30〜200℃の範囲に維持させることが好ましい。
【0026】
金属−界面活性剤錯化合物を適切な反応条件下で熱分解すると、均一なサイズ及び形状を備える単分散金属ナノ粒子が形成される。金属−界面活性剤錯化合物の熱分解温度は、使用される金属−界面活性剤錯化合物の種類によって多少異なり、本発明においては、錯化合物の熱分解のため、好ましくは50〜500℃の温度に加熱しこの状態を維持する。
【0027】
また、本発明において、金属ナノ粒子の酸化のために使用する酸化剤は、金属ナノ粒子を全部酸化させ得るほどの充分量を使用する。金属ナノ粒子と酸化剤のモル比は、概ね1:0.1〜1:100の範囲、好ましくは1:0.1〜1:20の範囲である。
【0028】
金属酸化物ナノ粒子を製造するため、金属前駆体、界面活性剤及び酸化剤を混合して金属酸化物ナノ粒子を形成する方法(図2のS201ないしS203参照)においては、まず金属前駆体、界面活性剤及び酸化剤を低温、例えば−100〜200℃、好ましくは約100℃で混合し、金属酸化物ナノ粒子の形成を完了するため、その混合物を、例えば30〜500℃の温度、好ましくは約300℃に加熱する。前記熱分解のための温度上昇において、昇温速度を制御することが好ましいが、本発明においては、ナノ粒子に求められる特性に応じて昇温速度を1℃/分〜20℃/分の範囲内で制御することができる。
【0029】
前述したように製造された微細なナノ粒子のサイズ(通常、11nm以下のサイズに形成される)を成長させるため、用意した金属−界面活性剤錯化合物をモル比1:0.1〜1:100で前記ナノ粒子(通常、11nm以下のサイズに形成されたナノ粒子)に注入した後、熱分解過程を進行すると、12〜50nmの成長したナノ粒子を製造することもできる(図3のS301ないしS304参照)。
【0030】
本発明において、各反応段階は各反応段階の目的を達成し得る程度の充分な時間行われるが、通常、1分〜24時間であれば、各反応段階の目的が達成できる。また、所望の金属ナノ粒子又は金属酸化物ナノ粒子は、反応溶液を遠心分離するか、上記のように貧溶媒を添加して沈殿させることにより、分離、収得することができる。貧溶媒は、ナノ粒子を効果的に分散させることができず、ナノ粒子の沈殿を生成する。
【0031】
本発明は前記のような方法により製造された直径2〜50nmの均一なナノ粒子に関するもので、主に、ナノ粒子が有するサイズ及び形状の均一性により超格子構造が形成され、これにより、本発明の方法により製造されたナノ粒子が良好な磁気特性を示す。特に、ナノ粒子のサイズが直径16nm以上となると、十分な高磁気モーメントを備える強磁性又はフェリ磁性を呈するので、磁気データ記憶素子に応用でき、前記工程条件によってその粒子のサイズを50nmまで成長させることができれば、産業上効用性が増大する。
【0032】
一般に、ナノ磁性材料は、温度によって、低温での強磁性又は高温での超常磁性等の異なる温度依存磁気特性示す。強磁性と超常磁性との間の可逆遷移温度をブロッキング温度(Tb)という。磁気記録媒体として使用されるためには材料は強磁性を有しなければならないので、ブロッキング温度は高いほどに好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明においては、金属酸化物ナノ粒子のサイズ変化によるブロッキング温度の変化を測定することにより、本発明による球形金属酸化物ナノ粒子が磁気記録媒体の材料としての磁気的性質が優れている事実を確認した。
【0034】
以下、本発明の実施例の手順及び結果を詳細に説明するが、下記の手順及び結果は本発明を例示するためのものであるばかりで、本発明の範囲がこの実施例に制限されるものではなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を持った者は、本発明の思想及び手順の多様な変形形態を容易に導き出すことができる。
【実施例1】
【0035】
単分散球形鉄ナノ粒子の合成
本発明に従う単分散の球形鉄ナノ粒子の合成の実施例1を説明する。不活性雰囲気で、水分を除去した10mlのオクチルエーテルにオレイン酸1.25gを入れ、110℃で加熱した。これに0.2mlの鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]を注入して鉄−オレイン酸錯化合物を形成する。この混合物を加熱し還流した後、還流温度で1時間エージングすることにより、鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]が完全に熱分解して金属鉄原子を形成するようにした。これにより生じた溶液を常温まで冷却し、エタノールを入れて黒色沈殿物を得た。沈殿物は遠心分離により沈降させ、上澄み液を除去した。このような洗浄過程を3回以上繰り返した後、真空乾燥でエタノールを除去した。合成された生成物はヘキサン中で容易に再分散され、所望の鉄ナノ粒子が形成された。これにより製造された生成物である鉄ナノ粒子を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図4に示した。すなわち、図4は実施例1により製造された直径11nm球形鉄ナノ粒子の典型的な透過電子顕微鏡の写真である。図4から、このナノ粒子が球形且つ均一であり、単分散であることが確認できた。
【実施例2】
【0036】
単分散球形酸化鉄ナノ粒子の合成−1
本発明に従って直径7nmの単分散の球形鉄酸化物ナノ粒子を合成するために、上記した実施例1の手順と同様に、不活性雰囲気で、水分を除去した10mlのオクチルエーテルとオレイン酸1.25gを入れ、110℃で加熱した。これに0.2mlの鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]を注入して鉄−オレイン酸錯化合物を形成する。この反応混合溶液を加熱し、還流した後、還流温度で1時間エージングすることにより、鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]が完全に熱分解して金属鉄原子を形成するようにした。単分散の球形鉄酸化鉄(マグヘマイト、ガンマ−Fe2O3)ナノ粒子を得るため、その結果生じた赤色溶液の温度を常温まで下げた後、酸化剤であるトリメチルアミンN−オキシド0.36gを入れた。この結果生じた黒色混合液を300℃まで加熱した後、この温度で30分間維持し、茶色の溶液を生成した。赤色から茶色への色の変化により、酸化鉄が形成されることが視覚的に確認できた。酸化溶液は常温まで冷却する。過量の界面活性剤と副反応物を除去するため、水分と空気が除去されたエタノールを入れて洗浄することにより、黒色沈殿物を得た。傾瀉または遠心分離により、上澄み液を除去した。このような洗浄過程を3回以上繰り返した後、真空乾燥でエタノールを除去した。合成された生成物はヘキサン中で容易に再分散された。前記実施例2により製造された酸化鉄ナノ粒子を観察した結果を図5ないし図7にそれぞれ示した。すなわち、図5は本発明により製造された直径11nmの球形酸化鉄ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真であり、図6は本発明により製造された直径11nmの球形の酸化鉄ナノ粒子が三次元的に配列されたものを示す透過電子顕微鏡写真であり、図7は本発明により製造された直径11nmの球形の酸化鉄ナノ粒子の高分解能の透過電子顕微鏡写真である。図5ないし図7から、11nm球形酸化鉄ナノ粒子が単分散であることがそれぞれ確認できた。
【実施例3】
【0037】
単分散球形酸化鉄ナノ粒子の合成−2
使用した界面活性剤の量を0.85gに減少させたことを除き、実施例2と同一反応条件で、直径7nmの単分散球形金属酸化物ナノ粒子を合成した。こうして製造した球形金属酸化物ナノ粒子を観察した結果を図8に示した。すなわち、図8は本発明により製造された7nmの球形酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。図8から、7nm球形酸化鉄ナノ粒子が単分散であることが分かる。
【実施例4】
【0038】
単分散球形酸化鉄ナノ粒子の合成−3
使用した界面活性剤の量を0.43gに減少させたことを除き、実施例2と同一反応条件で、直径4nmの単分散球形金属酸化物ナノ粒子を合成した。こうして製造した球形金属酸化物ナノ粒子を観察した結果を図9に示した。すなわち、図9は本発明により製造された4nmの球形酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。図9から、4nm球形酸化鉄ナノ粒子が単分散であることが分かる。
【実施例5】
【0039】
単分散球形酸化鉄ナノ粒子の合成−4
使用した界面活性剤の量を1.72gに減少させたことを除き、実施例2と同一反応条件で、直径16nmの単分散球形金属酸化物ナノ粒子を合成した。こうして製造した球形金属酸化物ナノ粒子を観察した結果を図10に示した。すなわち、図10は本発明により製造された16nmの球形酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。図10から、16nm球形酸化鉄ナノ粒子が単分散であることが分かる。
【実施例6】
【0040】
単分散球形酸化鉄ナノ粒子の直接的合成−5
不活性雰囲気で、水分を除去した7mlのオクチルエーテルにラウリン酸0.91g、トリメチルアミンN−オキシド0.57gを入した。これに0.2mlの鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]を注入すると、120℃まで温度が上昇し、酸化鉄核が生成される。この溶液を300℃まで加熱した後、1時間維持させることにより、鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]が完全に熱分解する。この際、初期の黒色溶液が赤くなり、高温に上昇するにつれて溶液の色が次第に茶色に変わるので、鉄酸化物が形成されることが視覚的に確認できた。過量の界面活性剤と副反応物を除去するため、水分と空気が除去されたエタノールを入れて洗浄することにより、黒色沈殿物を得た。傾瀉または遠心分離により、上澄み液を除去した。このような洗浄過程を3回以上繰り返した後、真空乾燥でエタノールを除去した。合成された生成物はヘキサン中で容易に再分散された。前記実施例6により製造された生成物を透過電子顕微鏡で観察した結果を図11に示した。すなわち、図11は実施例6により製造された13nm球形酸化鉄ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。図11から、13nm球形酸化鉄ナノ粒子が単分散であることが確認できた。
【実施例7】
【0041】
球形の鉄−コバルト合金ナノ粒子の合成
不活性雰囲気で、水分を除去した10mlのオクチルエーテルにオレイン酸0.9gを入れ、110℃で加熱した。これに0.3mlの鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]と0.15mlのシクロペンタジエニルコバルト・トリカルボニル[Co(CO)3(C5H5)]を注入して鉄−オレイン酸錯化合物とコバルト−オレイン酸錯化合物の混合溶液を形成した後、この混合溶液を300℃まで加熱し、この温度で1時間エージングすることにより、有機金属前駆体化合物が完全に熱分解して金属合金ナノ粒子を形成するようにした。単分散球形鉄コバルト合金ナノ粒子を得るため、水分と空気が除去されたエタノールを入れて黒色沈殿物を得た。傾瀉または遠心分離により、上澄み液を除去した。このような洗浄過程を3回以上繰り返した後、真空乾燥でエタノールを除去した。合成された生成物はヘキサン中で容易に再分散された。これにより製造された生成物を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図12に示した。すなわち、図12は実施例7により製造された6nmの球形コバルト鉄合金ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。図12から、6nmの球形鉄−コバルト合金ナノ粒子が単分散であることが確認できた。
【実施例8】
【0042】
単分散球形コバルトフェライト(CoFe2O4)ナノ粒子の合成−1
不活性雰囲気で、水分を除去した10mlのオクチルエーテルにオレイン酸1.95gを入れ、110℃で加熱した。これに0.3mlの鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]と0.15mlのシクロペンタジエニルコバルト・トリカルボニル[Co(CO)3(C5H5)]を注入し、混合溶液を300℃まで加熱した後、その温度で30分間維持させることにより、有機金属前駆体が完全に熱分解して金属合金ナノ粒子を形成するようにした。単分散球形コバルトフェライトナノ粒子を得るため、反応溶液の温度を常温に下げた後、トリメチルアミンN−オキシド0.38gを入れた。この混合液を300℃まで加熱した後、この温度で30分間維持させた。この際、茶色の溶液が生成され、この赤色から茶色への色の変化により、コバルトフェライトが形成されることが視覚的に確認できた。過量の界面活性剤と副反応物を除去するため、水分と空気が除去されたエタノールを入れることにより、黒色沈殿物を得た。傾瀉または遠心分離により、上澄み液を除去した。このような洗浄過程を3回以上繰り返した後、真空乾燥でエタノールを除去した。合成された生成物はヘキサン中で容易に再分散された。これにより製造された金属酸化物ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真を図13に示した。すなわち、図13は実施例8により製造された9nm球形コバルトフェライトナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。図13から、9nm球形コバルトフェライトナノ粒子が単分散であることが確認できた。
【実施例9】
【0043】
単分散球形コバルトフェライト(CoFe2O4)ナノ粒子の合成−2
使用した界面活性剤の量を0.9gに減少させたことを除き、実施例8と同一反応条件で単分散球形コバルトフェライトナノ粒子を合成した。こうして製造したナノ粒子を観察した結果を図14及び図15に示した。すなわち、図14は実施例9により製造された6nmの球形コバルトフェライトナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真であり、図15は実施例9により製造された6nmの球形コバルトフェライトナノ粒子が三次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。図14及び図15から、6nm球形コバルトフェライトナノ粒子が単分散であることが分かる。
【実施例10】
【0044】
単分散球形コバルトフェライト(CoFe2O4)ナノ粒子の合成−3
使用した界面活性剤の量を1.2gに減少させたことを除き、実施例8と同一反応条件で単分散球形コバルトフェライトナノ粒子を合成した。こうして製造したナノ粒子を観察した結果を図16に示した。すなわち、図16は実施例10により製造された8nmの球形コバルトフェライトナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。図16から、8nm球形コバルトフェライトナノ粒子が単分散であることが分かる。
【実施例11】
【0045】
球形酸化鉄ナノ粒子の磁気的物性
実施例4、実施例5、実施例6によりそれぞれ製造された4nm、13nm、16nm粒子サイズの球形酸化鉄ナノ粒子の磁気的特性を検証するため、零磁場冷却(ZFC)と100Oeの磁場を加える磁場冷却(FC)とで、5K〜300Kの温度範囲で超伝導量子干渉装置(Super-conducting Quantum Interference Device:SQUID)を使用してナノ粒子の温度による磁化の変化を測定した。図17は、ZFCでの温度対磁化のプロットである。図17は実施例4、実施例5、実施例6によりそれぞれ製造された4nm、13nm、16nm粒子サイズの球形酸化鉄ナノ粒子の温度による磁化性の変化を示すグラフである。図17から、実施例4により製造された4nm粒子サイズの球形酸化鉄ナノ粒子はブロッキング温度(Tb)が25Kであり、実施例5により製造された16nm粒子サイズの球形酸化鉄ナノ粒子はブロッキング温度(Tb)が290Kであり、実施例6により製造された13nm粒子サイズの球形酸化鉄ナノ粒子はブロッキング温度(Tb)が200Kであることが分かった。特に、粒子サイズが16nm以上となると、フェリ磁性を有するので、磁気データ記憶装置として応用可能なことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明により合成された単分散で結晶性に優れた金属、合金、金属酸化物ナノ粒子は非常に独特で良好で均一な電気的、磁気的及び光学的特性を有する。特に、金属、合金及び金属酸化物ナノ粒子のサイズが非常に均一であることによる磁気的特性のため、このようなナノ粒子をハードディスク及び磁気テープなどの高密度磁気記憶媒体として使用するのに魅力的である。また、このような単分散で結晶性に優れたナノ粒子は超小型単電子トランジスタデバイスの製造及び高効率レーザ光源に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による金属又は金属酸化物ナノ粒子を合成する過程を示すフローチャートである。
【図2】本発明による金属酸化物ナノ粒子を金属ナノ粒子合成過程なしで直接的に合成する過程を示すフローチャートである。
【図3】本発明によるナノ粒子のサイズを成長させる方法によって、より大きなナノ粒子を製造する過程を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例1により製造された直径11nmの球形鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明の実施例2により製造された直径11nmの球形酸化鉄ナノ粒子が二次元的に配列されたものを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明の実施例2により製造された直径11nmの球形酸化鉄ナノ粒子が三次元的に配列されたものを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明の実施例2により製造された直径11nmの球形酸化鉄ナノ粒子の高分解能の透過電子顕微鏡写真である。
【図8】本発明の実施例3により製造された直径7nmの球形酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明の実施例4により製造された直径4nmの球形酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【図10】本発明の実施例5により製造された直径16nmの球形酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【図11】本発明の実施例6により製造された直径13nmの球形酸化鉄ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図12】本発明の実施例7により製造された直径6nmの球形のコバルト−鉄合金ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図13】本発明の実施例8により製造された直径9nmの球形コバルトフェライト(CoFe2O4)ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図14】本発明の実施例9により製造された直径6nmの球形コバルトフェライト(CoFe2O4)ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図15】本発明の実施例9により製造された直径6nmの球形コバルトフェライト(CoFe2O4)ナノ粒子が三次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図16】本発明の実施例10により製造された直径8nmの球形コバルトフェライト(CoFe2O4)ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図17】本発明の実施例4、実施例5、実施例6によりそれぞれ製造された、直径4nm、13nm、16nmの球形酸化鉄ナノ粒子の温度による磁化の変化を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明はサイズ選別過程なしで単分散で結晶性に優れた金属、複合金属合金、単金属酸化物及び複合金属酸化物のナノ粒子を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
均一なナノ粒子の出現は、高密度磁気データ記憶素子、高密度単電子トランジスタ・デバイス、及び高効率レーザ・ビーム源等の様々な技術的な分野で大きな影響力を発揮している。このようなナノサイズを有する粒子は、従来のよく知られているマイクロメートルよりも大きなサイズの粒子に比べて新規で興味深い電気的、光学的、磁気的特性を持っている。
【0003】
ナノ粒子は、バルク材料に比べて体積対表面積比が非常に大きく、表面欠陥の比率が大きいため、材料の表面性質が特に重要である。すなわち、分子とバルク材料の中間サイズを有するナノ粒子の量子閉じ込め効果のため、学問的、技術的関心が増大している。ナノデバイス、非線型光学材料、触媒、情報記憶装置などはその応用例であると言える。特に、情報化とマルチメディア時代に入り、既存の商用化した装置に比べ、高密度、高速度、低消費電力、超軽量化などを指向する磁気記憶装置に対する開発研究及び需要が増大している。現在、磁気ナノ粒子を用いる磁気記憶装置の開発に対する研究が活発に行われており、これにより、単分散で制御可能なサイズのナノ粒子の合成が追求されている。しかし、ナノ粒子間の強い電磁気的相互影響力のため、単分散磁気ナノ粒子の合成は非常に困難であると知られている[Science 267(1995)1338, J. Appl. Phys. 61(1987)3323, IEEE Transactions on Magnetism, 27(1991)5184]。
【0004】
フェリ磁性酸化物の一つであるマグヘマイト(Maghemite、γ−Fe2O3)は1937年以来商業的なテープとディスク記憶装置として用いられており、現在にも依然として主要な磁気記録材料として使用されている。しかし、従来の典型的なマグヘマイトの粒子サイズはミクロン単位であるため、磁気記憶素子に必要とされる最小領域は磁気粒子のサイズにより決定され、磁気媒体の密度もこの粒子サイズによる制限があった。
【0005】
最近、高密度磁気記憶装置を製造するため、均一なナノサイズの磁気ナノ粒子を作ろうとする努力が多様に行われている。従来の磁気記憶装置の最小記憶単位は磁場によって配向する最小磁気単位、つまり磁気ドメインと言われる相当に多くの小さな磁気材料結晶の集合体であると知られている。しかし、従来の磁気データ記憶媒体とは異なり、一定の形状及びサイズを有するナノ粒子を磁気記憶媒体の材料として使用することができれば、1ナノ粒子で1ビットのシステムを作ることができるため、記憶密度が幾何級数的に増加して、平方インチ当たりテラビット級の磁気記憶密度が具現される。従来の均一な球形磁気ナノ粒子の合成法としては、有機金属前駆体の熱的分解[J. Phys. Chem. 84(1980)1621]、有機金属前駆体の音波化学的分解[J. Am. Chem. Soc. 118(1996)11960]、金属塩の高温還元[J. Appl. Phys. 85(1999)4325、及び韓国特許KR2000-0011546]、及び逆ミセル(reverse micelles)内での金属塩の還元[J. Phys. Chem. B 103(1999)1805]を含むいろいろの合成方法が用いられている。
【0006】
詳細には、「高温界面活性剤溶液内への前駆体の短時間投与に続くエージングにより誘導される核形成のショートバースト(short-burst)法」[J. Am. Chem. Soc. 115(1993)8706]が、単分散ナノ粒子を合成するために最も広く使用されている。ほかの従来技術においては球形ナノ粒子の指向性成長を使用することによりロッド型の磁気ナノ粒子が合成される[J. Am. Chem. Soc. 122(2000)8581;Science 291(2001)2115]。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような方法で合成されたナノ粒子のサイズの均一性が保障されない問題点があることが知られている。また、遷移金属及び酸化物の単分散ナノ粒子の合成は2〜6族化合物半導体ナノ粒子、又は金、白金、銀などの貴金属ナノ粒子に比べて従来の研究が乏しかった分野であって、粒子サイズ及び形状が一定したナノ粒子を合成するのが難しいことは既に知られている。
【0008】
一方、アリビサトス等(Alivisatos et. al.)は界面活性剤の存在下の高温で金属クペロン[N−nitorosophenylhydroxylamine[C6H5N(NO)O−]前駆体を熱分解させることにより、酸化鉄(ガンマ−Fe2O3、マグヘマイト)、などの遷移金属の酸化物、酸化マンガン(Mn3O4)及び酸化銅(Cu2O)のナノ粒子を合成した。しかし、このように合成したナノ粒子はサイズが均一でなく、その形状が無晶形であるため、磁気データ記憶媒体に適用するための超格子構造を形成し難い。加えて、非常に高価な金属クペロン複合前駆体が使用されている[J. Am. Chem. Soc. 121(1999)11595]。
【0009】
したがって、本発明はこのような従来技術の問題点を解決するためのナノ粒子の合成方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、略球形で均一な形状及びサイズを有する金属、合金、金属酸化物及び複合金属酸化物ナノ粒子をサイズ選別過程なしで製造することができるナノ粒子の製造方法を提供することである。本発明の方法により製造されたナノ粒子は均一な形状及び直径サイズを有して、自己アセンブリにより超格子構造を形成するので、平方インチ当たりテラビットに近い高密度磁気記憶媒体を具現することができる。
【0011】
本発明のほかの目的は、様々な媒質に多数回分散させ粉末状態で回収してもナノ粒子が凝集しないでその粒子サイズをそのまま維持する特性を有する金属、合金、金属酸化物及び複合金属酸化物ナノ粒子を製造する方法を提供することである。
【0012】
本発明の方法により製造されたナノ粒子が有する非凝集性、回収時の粒子サイズ維持性などの物理的特性はナノ粒子の活用分野及び活用度を向上させるだけでなく、再活用可能な可能性を向上させる。
【0013】
本発明のほかの目的は、前駆体と界面活性剤との反応により金属−界面活性剤錯化合物を形成した後、この金属−界面活性剤錯化合物を高温で熱分解させてエージングすることにより、高結晶性且つ単分散の金属球形粒子を製造する方法を提供することである。また、本発明の目的は、前記金属球形ナノ粒子が酸化剤により酸化するように形状とサイズが均一な金属酸化物ナノ粒子を製造する方法を提供することである。本発明により製造された単分散ナノ粒子は自己アセンブリによる超格子構造に誘導され、これにより高密度磁気記憶媒体に応用できる。
【0014】
本発明の金属及び金属酸化物ナノ粒子の合成方法を図1ないし図3に基づいて説明する。
図1は本発明による金属又は金属酸化物ナノ粒子の合成過程を示すフローチャート、図2は本発明による、金属ナノ粒子の合成過程を経ることなく金属酸化物ナノ粒子を直接合成する過程を示すフローチャート、図3は本発明による、既に製造されたナノ粒子を成長させることによってより大きなナノ粒子を製造する過程を示すフローチャートである。
【0015】
図1に示すように、金属及び金属酸化物のナノ粒子は、以下の3つのステップにより合成される。(A S101 S102)金属前駆体と適当な界面活性剤を溶媒内に用意した後、金属前駆体と界面活性剤との反応により金属−界面活性剤錯化合物を合成し、(B
S103)前記金属−界面活性剤錯化合物を分解させることにより、単分散金属ナノ粒子を形成し、(C S104)貧溶媒を加え、遠心分離機にかけることにより、前記金属ナノ粒子の形成が完了する。更に、金属酸化物ナノ粒子を製造するためには、(D S105 S106)前記金属ナノ粒子を分散させた後、所定の酸化剤を添加して酸化反応を誘導することにより金属酸化物ナノ粒子を形成した後、金属酸化物ナノ粒子を回収することによりナノ粒子を製造することもできる。
【0016】
本発明の更なる態様では、約12〜50nmサイズのより大きなナノ粒子が合成可能である。図2に示すように、金属前駆体を、界面活性剤及び酸化剤を含む溶媒内に迅速に投入した後、反応を誘導し熱分解させ、所望の金属酸化物ナノ粒子を回収することによりナノ粒子を製造することもできる。
【0017】
図3に示すように、図1又は図2のように製造された約4〜11nmの小さなナノ粒子を用意した後、前記用意したナノ粒子に所定の金属−界面活性剤錯化合物をさらに添加し、熱分解過程を進めることにより、約12〜50nmサイズのより大きなナノ粒子を製造することもできる。
【0018】
図1〜3に基づく前記反応は、好ましくは、窒素、アルゴンのような不活性雰囲気で進行し、例えばシュレンク法(Schrenk technique)を用いるか、又はグローブボックス(Glove box)内で行うことができる。
【0019】
前記(A)段階のS101及びS102で金属ナノ粒子を合成するため、30℃〜200℃の温度で界面活性剤溶液に金属前駆体を注入して金属−界面活性剤錯化合物を製造し、前記(B)段階のS103でこの金属−界面活性剤錯化合物を30〜500℃の高温で還流法により熱分解させることにより、金属ナノ粒子を得る。
【0020】
前記金属前駆体としては、鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]、 フェロセン、コバルトトリカルボニルニトロシル[Co(CO)3(NO)]、シクロペンタジエニルコバルト−トリカルボニル[Co(CO)3C5H5]、ジコバルトオクタカルボニル[Co2(CO)8]、クロムヘキサカルボニル[Cr(CO)6]、ニッケルテトラカルボニル[Ni(CO)4]、ジマンガンデカカルボニル[Mn2(CO)10]そして、鉄アセチルアセトネート[Fe(acac)3]、コバルトアセチルアセトネート[Co(acac)3]、バリウムアセチルアセトネート[Ba(acac)2]、ストロンチウムアセチルアセトネート[Sr(acac)2]、プラチナアセチルアセトネート[Pt(acac)2]、パラジウムアセチルアセトネート[Pd(acac)2]などの金属アセチルアセトネート化合物、及びチタンテトライソプロポキシド[Ti(iOC3H7)4]、ジルコニウムテトラブトキシド[Zr(OC4H9)4]などの金属アルコキシド化合物の多様な有機金属化合物を所望のナノ粒子を生成するために使用することができる。
【0021】
前駆体を構成する金属としては、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)などの多様な金属、特に2〜10族の遷移金属を含み、リガンドはカルボニル(CO)、ニトロシル(NO)、シクロペンタジエニル(C5H5)、アセテート、芳香族化合物及びアルコキシドそのほかの公知のものを使用することができる。また、塩化鉄(III)(FeCl3)、塩化鉄(II)(FeCl2)、硝酸鉄(III)(Fe(NO3)3)、硫化鉄(II)(FeSO4)、塩化コバルト(III)(CoCl3)、塩化コバルト(II)(CoCl2)、硝酸コバルト(III)(CO(NO3)3)、硫化ニッケル(II)(NiSO4)、塩化ニッケル(II)(NiCl2)、硝酸ニッケル(II)(Ni(NO3)2)、四塩化チタン(TiCl4)、四塩化ジルコニウム(ZrCl4)、ヘキサクロロ白金酸(IV)(H2PtCl6)、ヘキサクロロパラジウム酸(IV)(H2PdCl6)、塩化バリウム(BaCl2)、硫化バリウム(BaSO4)、塩化ストロンチウム(SrCl2)、硫化ストロンチウム(SrSO4)などの金属イオンを含む金属塩を使用することができる。すなわち、これらの金属塩は、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)などの多様な金属を含み、陰イオンとしては、塩化物(Cl−)、硝酸物(NO3-)、硫化物(SO42-)、リン酸塩(PO43-)、アルコキシドを含む。また、合金ナノ粒子と複合酸化物ナノ粒子の合成には前述した2種以上の金属の前駆体の混合物を使用することができる。
【0022】
前記(A)段階のS101及びS102において、球形ナノ粒子を安定化させるために使用される界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムブロマイドのようなアルキルトリメチルアンモニウムハライド系列の陽イオン界面活性剤と、オレイン酸、トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)、トリフェニルホスフィン(TOP)と、オレイルアミン、トリオクチルアミン、オクチルアミン及びアルキルチオールなどのアルキルアミンのような中性界面活性剤と、アルキル硫酸ナトリウム及びアルキルリン酸ナトリウムのような陰イオン界面活性剤を使用することができる。場合によっては、前記界面活性剤から選択された2種以上を使用することもできる。
【0023】
本発明に使用される酸化剤としては、ピリジンN−オキシド及びトリメチルアミンN−オキシドのようなアミンN−オキシドと、過酸化水素と、酸素とを含む。
本発明に使用される溶媒は、本発明で形成される金属−界面活性剤錯化合物を熱により分解させるため、少なくとも錯化合物の熱分解温度に近接する高沸点を有することが好ましい。これら溶媒の好ましい例としては、オクチルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエ−テル、デシルエーテルなどのエーテル系化合物と、ピリジン、テトラヒドロフラン(THF)などの複素環式(heterocyclic)化合物と、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼンなどの芳香族化合物と、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)と、オクチルアルコール、デカノールなどのアルコール類と、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカンなどのヒドロカーボンと、水とがある。
【0024】
本発明は、金属−界面活性剤錯化合物を調節し分解して金属ナノ粒子を製造した後、前記製造した金属ナノ粒子を酸化させて金属酸化物ナノ粒子を生成するもので、合成条件の変数の調節はナノ粒子の形状及びサイズ分布を制御する。このような合成条件変数としては、界面活性剤の量、反応時間、反応温度などが挙げられる。例えば、図1を参照して、前記(B)段階のS103で得られた金属ナノ粒子の直径サイズは均一であり、サイズの均一性は前記(D)段階S105及びS106で金属酸化物ナノ粒子が合成される際でも維持され、本発明に従って金属ナノ粒子が合成される際に金属酸化物ナノ粒子のサイズは変化しない。特に界面活性剤の溶媒に対する濃度を調節することにより、2nmから50nmまで容易にナノ粒子のサイズを調節し得ることが分かった。すなわち、単分散の金属及び酸化金属のナノ粒子の合成が可能であり、ナノ粒子のサイズ調節も容易であることが分かった。界面活性剤の量の変更によるナノ粒子のサイズ調節の場合を見ると、前記(A)段階のS101及びS102で投入される界面活性剤の量を増加させると、生成される金属ナノ粒子の直径が増加することを実験的に確認した。したがって、本発明は、金属前駆体に対する界面活性剤の比を広い範囲で調節することにより、多様なサイズの金属及び金属酸化物ナノ粒子を製造することができる。本発明が適用できる金属前駆体と界面活性剤のモル比は1:0.1〜1:100の範囲、好ましくは1:0.1〜1:20の範囲である。また、高温で熱分解されるときの反応温度が低いほど、かつ反応時間が短いほど、金属ナノ粒子のサイズが小さくなることが実験的に分かった。
【0025】
本発明では、金属−界面活性剤錯化合物を形成するために、金属前駆体と界面活性剤とを反応させる。金属前駆体と界面活性剤との反応は、金属前駆体及び界面活性剤の種類によって、室温又はその以下の温度でも形成できるが、通常には少しの加熱が必要である。したがって、錯化合物の形成段階では、温度を30〜200℃の範囲に維持させることが好ましい。
【0026】
金属−界面活性剤錯化合物を適切な反応条件下で熱分解すると、均一なサイズ及び形状を備える単分散金属ナノ粒子が形成される。金属−界面活性剤錯化合物の熱分解温度は、使用される金属−界面活性剤錯化合物の種類によって多少異なり、本発明においては、錯化合物の熱分解のため、好ましくは50〜500℃の温度に加熱しこの状態を維持する。
【0027】
また、本発明において、金属ナノ粒子の酸化のために使用する酸化剤は、金属ナノ粒子を全部酸化させ得るほどの充分量を使用する。金属ナノ粒子と酸化剤のモル比は、概ね1:0.1〜1:100の範囲、好ましくは1:0.1〜1:20の範囲である。
【0028】
金属酸化物ナノ粒子を製造するため、金属前駆体、界面活性剤及び酸化剤を混合して金属酸化物ナノ粒子を形成する方法(図2のS201ないしS203参照)においては、まず金属前駆体、界面活性剤及び酸化剤を低温、例えば−100〜200℃、好ましくは約100℃で混合し、金属酸化物ナノ粒子の形成を完了するため、その混合物を、例えば30〜500℃の温度、好ましくは約300℃に加熱する。前記熱分解のための温度上昇において、昇温速度を制御することが好ましいが、本発明においては、ナノ粒子に求められる特性に応じて昇温速度を1℃/分〜20℃/分の範囲内で制御することができる。
【0029】
前述したように製造された微細なナノ粒子のサイズ(通常、11nm以下のサイズに形成される)を成長させるため、用意した金属−界面活性剤錯化合物をモル比1:0.1〜1:100で前記ナノ粒子(通常、11nm以下のサイズに形成されたナノ粒子)に注入した後、熱分解過程を進行すると、12〜50nmの成長したナノ粒子を製造することもできる(図3のS301ないしS304参照)。
【0030】
本発明において、各反応段階は各反応段階の目的を達成し得る程度の充分な時間行われるが、通常、1分〜24時間であれば、各反応段階の目的が達成できる。また、所望の金属ナノ粒子又は金属酸化物ナノ粒子は、反応溶液を遠心分離するか、上記のように貧溶媒を添加して沈殿させることにより、分離、収得することができる。貧溶媒は、ナノ粒子を効果的に分散させることができず、ナノ粒子の沈殿を生成する。
【0031】
本発明は前記のような方法により製造された直径2〜50nmの均一なナノ粒子に関するもので、主に、ナノ粒子が有するサイズ及び形状の均一性により超格子構造が形成され、これにより、本発明の方法により製造されたナノ粒子が良好な磁気特性を示す。特に、ナノ粒子のサイズが直径16nm以上となると、十分な高磁気モーメントを備える強磁性又はフェリ磁性を呈するので、磁気データ記憶素子に応用でき、前記工程条件によってその粒子のサイズを50nmまで成長させることができれば、産業上効用性が増大する。
【0032】
一般に、ナノ磁性材料は、温度によって、低温での強磁性又は高温での超常磁性等の異なる温度依存磁気特性示す。強磁性と超常磁性との間の可逆遷移温度をブロッキング温度(Tb)という。磁気記録媒体として使用されるためには材料は強磁性を有しなければならないので、ブロッキング温度は高いほどに好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明においては、金属酸化物ナノ粒子のサイズ変化によるブロッキング温度の変化を測定することにより、本発明による球形金属酸化物ナノ粒子が磁気記録媒体の材料としての磁気的性質が優れている事実を確認した。
【0034】
以下、本発明の実施例の手順及び結果を詳細に説明するが、下記の手順及び結果は本発明を例示するためのものであるばかりで、本発明の範囲がこの実施例に制限されるものではなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を持った者は、本発明の思想及び手順の多様な変形形態を容易に導き出すことができる。
【実施例1】
【0035】
単分散球形鉄ナノ粒子の合成
本発明に従う単分散の球形鉄ナノ粒子の合成の実施例1を説明する。不活性雰囲気で、水分を除去した10mlのオクチルエーテルにオレイン酸1.25gを入れ、110℃で加熱した。これに0.2mlの鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]を注入して鉄−オレイン酸錯化合物を形成する。この混合物を加熱し還流した後、還流温度で1時間エージングすることにより、鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]が完全に熱分解して金属鉄原子を形成するようにした。これにより生じた溶液を常温まで冷却し、エタノールを入れて黒色沈殿物を得た。沈殿物は遠心分離により沈降させ、上澄み液を除去した。このような洗浄過程を3回以上繰り返した後、真空乾燥でエタノールを除去した。合成された生成物はヘキサン中で容易に再分散され、所望の鉄ナノ粒子が形成された。これにより製造された生成物である鉄ナノ粒子を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図4に示した。すなわち、図4は実施例1により製造された直径11nm球形鉄ナノ粒子の典型的な透過電子顕微鏡の写真である。図4から、このナノ粒子が球形且つ均一であり、単分散であることが確認できた。
【実施例2】
【0036】
単分散球形酸化鉄ナノ粒子の合成−1
本発明に従って直径7nmの単分散の球形鉄酸化物ナノ粒子を合成するために、上記した実施例1の手順と同様に、不活性雰囲気で、水分を除去した10mlのオクチルエーテルとオレイン酸1.25gを入れ、110℃で加熱した。これに0.2mlの鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]を注入して鉄−オレイン酸錯化合物を形成する。この反応混合溶液を加熱し、還流した後、還流温度で1時間エージングすることにより、鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]が完全に熱分解して金属鉄原子を形成するようにした。単分散の球形鉄酸化鉄(マグヘマイト、ガンマ−Fe2O3)ナノ粒子を得るため、その結果生じた赤色溶液の温度を常温まで下げた後、酸化剤であるトリメチルアミンN−オキシド0.36gを入れた。この結果生じた黒色混合液を300℃まで加熱した後、この温度で30分間維持し、茶色の溶液を生成した。赤色から茶色への色の変化により、酸化鉄が形成されることが視覚的に確認できた。酸化溶液は常温まで冷却する。過量の界面活性剤と副反応物を除去するため、水分と空気が除去されたエタノールを入れて洗浄することにより、黒色沈殿物を得た。傾瀉または遠心分離により、上澄み液を除去した。このような洗浄過程を3回以上繰り返した後、真空乾燥でエタノールを除去した。合成された生成物はヘキサン中で容易に再分散された。前記実施例2により製造された酸化鉄ナノ粒子を観察した結果を図5ないし図7にそれぞれ示した。すなわち、図5は本発明により製造された直径11nmの球形酸化鉄ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真であり、図6は本発明により製造された直径11nmの球形の酸化鉄ナノ粒子が三次元的に配列されたものを示す透過電子顕微鏡写真であり、図7は本発明により製造された直径11nmの球形の酸化鉄ナノ粒子の高分解能の透過電子顕微鏡写真である。図5ないし図7から、11nm球形酸化鉄ナノ粒子が単分散であることがそれぞれ確認できた。
【実施例3】
【0037】
単分散球形酸化鉄ナノ粒子の合成−2
使用した界面活性剤の量を0.85gに減少させたことを除き、実施例2と同一反応条件で、直径7nmの単分散球形金属酸化物ナノ粒子を合成した。こうして製造した球形金属酸化物ナノ粒子を観察した結果を図8に示した。すなわち、図8は本発明により製造された7nmの球形酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。図8から、7nm球形酸化鉄ナノ粒子が単分散であることが分かる。
【実施例4】
【0038】
単分散球形酸化鉄ナノ粒子の合成−3
使用した界面活性剤の量を0.43gに減少させたことを除き、実施例2と同一反応条件で、直径4nmの単分散球形金属酸化物ナノ粒子を合成した。こうして製造した球形金属酸化物ナノ粒子を観察した結果を図9に示した。すなわち、図9は本発明により製造された4nmの球形酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。図9から、4nm球形酸化鉄ナノ粒子が単分散であることが分かる。
【実施例5】
【0039】
単分散球形酸化鉄ナノ粒子の合成−4
使用した界面活性剤の量を1.72gに減少させたことを除き、実施例2と同一反応条件で、直径16nmの単分散球形金属酸化物ナノ粒子を合成した。こうして製造した球形金属酸化物ナノ粒子を観察した結果を図10に示した。すなわち、図10は本発明により製造された16nmの球形酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。図10から、16nm球形酸化鉄ナノ粒子が単分散であることが分かる。
【実施例6】
【0040】
単分散球形酸化鉄ナノ粒子の直接的合成−5
不活性雰囲気で、水分を除去した7mlのオクチルエーテルにラウリン酸0.91g、トリメチルアミンN−オキシド0.57gを入した。これに0.2mlの鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]を注入すると、120℃まで温度が上昇し、酸化鉄核が生成される。この溶液を300℃まで加熱した後、1時間維持させることにより、鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]が完全に熱分解する。この際、初期の黒色溶液が赤くなり、高温に上昇するにつれて溶液の色が次第に茶色に変わるので、鉄酸化物が形成されることが視覚的に確認できた。過量の界面活性剤と副反応物を除去するため、水分と空気が除去されたエタノールを入れて洗浄することにより、黒色沈殿物を得た。傾瀉または遠心分離により、上澄み液を除去した。このような洗浄過程を3回以上繰り返した後、真空乾燥でエタノールを除去した。合成された生成物はヘキサン中で容易に再分散された。前記実施例6により製造された生成物を透過電子顕微鏡で観察した結果を図11に示した。すなわち、図11は実施例6により製造された13nm球形酸化鉄ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。図11から、13nm球形酸化鉄ナノ粒子が単分散であることが確認できた。
【実施例7】
【0041】
球形の鉄−コバルト合金ナノ粒子の合成
不活性雰囲気で、水分を除去した10mlのオクチルエーテルにオレイン酸0.9gを入れ、110℃で加熱した。これに0.3mlの鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]と0.15mlのシクロペンタジエニルコバルト・トリカルボニル[Co(CO)3(C5H5)]を注入して鉄−オレイン酸錯化合物とコバルト−オレイン酸錯化合物の混合溶液を形成した後、この混合溶液を300℃まで加熱し、この温度で1時間エージングすることにより、有機金属前駆体化合物が完全に熱分解して金属合金ナノ粒子を形成するようにした。単分散球形鉄コバルト合金ナノ粒子を得るため、水分と空気が除去されたエタノールを入れて黒色沈殿物を得た。傾瀉または遠心分離により、上澄み液を除去した。このような洗浄過程を3回以上繰り返した後、真空乾燥でエタノールを除去した。合成された生成物はヘキサン中で容易に再分散された。これにより製造された生成物を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図12に示した。すなわち、図12は実施例7により製造された6nmの球形コバルト鉄合金ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。図12から、6nmの球形鉄−コバルト合金ナノ粒子が単分散であることが確認できた。
【実施例8】
【0042】
単分散球形コバルトフェライト(CoFe2O4)ナノ粒子の合成−1
不活性雰囲気で、水分を除去した10mlのオクチルエーテルにオレイン酸1.95gを入れ、110℃で加熱した。これに0.3mlの鉄ペンタカルボニル[Fe(CO)5]と0.15mlのシクロペンタジエニルコバルト・トリカルボニル[Co(CO)3(C5H5)]を注入し、混合溶液を300℃まで加熱した後、その温度で30分間維持させることにより、有機金属前駆体が完全に熱分解して金属合金ナノ粒子を形成するようにした。単分散球形コバルトフェライトナノ粒子を得るため、反応溶液の温度を常温に下げた後、トリメチルアミンN−オキシド0.38gを入れた。この混合液を300℃まで加熱した後、この温度で30分間維持させた。この際、茶色の溶液が生成され、この赤色から茶色への色の変化により、コバルトフェライトが形成されることが視覚的に確認できた。過量の界面活性剤と副反応物を除去するため、水分と空気が除去されたエタノールを入れることにより、黒色沈殿物を得た。傾瀉または遠心分離により、上澄み液を除去した。このような洗浄過程を3回以上繰り返した後、真空乾燥でエタノールを除去した。合成された生成物はヘキサン中で容易に再分散された。これにより製造された金属酸化物ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真を図13に示した。すなわち、図13は実施例8により製造された9nm球形コバルトフェライトナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。図13から、9nm球形コバルトフェライトナノ粒子が単分散であることが確認できた。
【実施例9】
【0043】
単分散球形コバルトフェライト(CoFe2O4)ナノ粒子の合成−2
使用した界面活性剤の量を0.9gに減少させたことを除き、実施例8と同一反応条件で単分散球形コバルトフェライトナノ粒子を合成した。こうして製造したナノ粒子を観察した結果を図14及び図15に示した。すなわち、図14は実施例9により製造された6nmの球形コバルトフェライトナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真であり、図15は実施例9により製造された6nmの球形コバルトフェライトナノ粒子が三次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。図14及び図15から、6nm球形コバルトフェライトナノ粒子が単分散であることが分かる。
【実施例10】
【0044】
単分散球形コバルトフェライト(CoFe2O4)ナノ粒子の合成−3
使用した界面活性剤の量を1.2gに減少させたことを除き、実施例8と同一反応条件で単分散球形コバルトフェライトナノ粒子を合成した。こうして製造したナノ粒子を観察した結果を図16に示した。すなわち、図16は実施例10により製造された8nmの球形コバルトフェライトナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。図16から、8nm球形コバルトフェライトナノ粒子が単分散であることが分かる。
【実施例11】
【0045】
球形酸化鉄ナノ粒子の磁気的物性
実施例4、実施例5、実施例6によりそれぞれ製造された4nm、13nm、16nm粒子サイズの球形酸化鉄ナノ粒子の磁気的特性を検証するため、零磁場冷却(ZFC)と100Oeの磁場を加える磁場冷却(FC)とで、5K〜300Kの温度範囲で超伝導量子干渉装置(Super-conducting Quantum Interference Device:SQUID)を使用してナノ粒子の温度による磁化の変化を測定した。図17は、ZFCでの温度対磁化のプロットである。図17は実施例4、実施例5、実施例6によりそれぞれ製造された4nm、13nm、16nm粒子サイズの球形酸化鉄ナノ粒子の温度による磁化性の変化を示すグラフである。図17から、実施例4により製造された4nm粒子サイズの球形酸化鉄ナノ粒子はブロッキング温度(Tb)が25Kであり、実施例5により製造された16nm粒子サイズの球形酸化鉄ナノ粒子はブロッキング温度(Tb)が290Kであり、実施例6により製造された13nm粒子サイズの球形酸化鉄ナノ粒子はブロッキング温度(Tb)が200Kであることが分かった。特に、粒子サイズが16nm以上となると、フェリ磁性を有するので、磁気データ記憶装置として応用可能なことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明により合成された単分散で結晶性に優れた金属、合金、金属酸化物ナノ粒子は非常に独特で良好で均一な電気的、磁気的及び光学的特性を有する。特に、金属、合金及び金属酸化物ナノ粒子のサイズが非常に均一であることによる磁気的特性のため、このようなナノ粒子をハードディスク及び磁気テープなどの高密度磁気記憶媒体として使用するのに魅力的である。また、このような単分散で結晶性に優れたナノ粒子は超小型単電子トランジスタデバイスの製造及び高効率レーザ光源に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による金属又は金属酸化物ナノ粒子を合成する過程を示すフローチャートである。
【図2】本発明による金属酸化物ナノ粒子を金属ナノ粒子合成過程なしで直接的に合成する過程を示すフローチャートである。
【図3】本発明によるナノ粒子のサイズを成長させる方法によって、より大きなナノ粒子を製造する過程を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例1により製造された直径11nmの球形鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明の実施例2により製造された直径11nmの球形酸化鉄ナノ粒子が二次元的に配列されたものを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明の実施例2により製造された直径11nmの球形酸化鉄ナノ粒子が三次元的に配列されたものを示す透過電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明の実施例2により製造された直径11nmの球形酸化鉄ナノ粒子の高分解能の透過電子顕微鏡写真である。
【図8】本発明の実施例3により製造された直径7nmの球形酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明の実施例4により製造された直径4nmの球形酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【図10】本発明の実施例5により製造された直径16nmの球形酸化鉄ナノ粒子の透過電子顕微鏡写真である。
【図11】本発明の実施例6により製造された直径13nmの球形酸化鉄ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図12】本発明の実施例7により製造された直径6nmの球形のコバルト−鉄合金ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図13】本発明の実施例8により製造された直径9nmの球形コバルトフェライト(CoFe2O4)ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図14】本発明の実施例9により製造された直径6nmの球形コバルトフェライト(CoFe2O4)ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図15】本発明の実施例9により製造された直径6nmの球形コバルトフェライト(CoFe2O4)ナノ粒子が三次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図16】本発明の実施例10により製造された直径8nmの球形コバルトフェライト(CoFe2O4)ナノ粒子が二次元的に配列された状態を示す透過電子顕微鏡写真である。
【図17】本発明の実施例4、実施例5、実施例6によりそれぞれ製造された、直径4nm、13nm、16nmの球形酸化鉄ナノ粒子の温度による磁化の変化を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物ナノ粒子の直接合成方法において、
容器内の溶媒に金属前駆体、酸化剤、界面活性剤を添加し、混合溶液を準備した後、加熱処理を行うことにより、単分散金属酸化物ナノ粒子を合成する段階と、
貧溶媒を添加してから遠心分離して、前記金属酸化物ナノ粒子の形成を完了する段階とを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1において、前記混合溶液は30℃〜500℃の温度で1分〜24時間持続的に熱処理して前記金属酸化物ナノ粒子を合成することを特徴とする方法。
【請求項1】
金属酸化物ナノ粒子の直接合成方法において、
容器内の溶媒に金属前駆体、酸化剤、界面活性剤を添加し、混合溶液を準備した後、加熱処理を行うことにより、単分散金属酸化物ナノ粒子を合成する段階と、
貧溶媒を添加してから遠心分離して、前記金属酸化物ナノ粒子の形成を完了する段階とを含んでなることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1において、前記混合溶液は30℃〜500℃の温度で1分〜24時間持続的に熱処理して前記金属酸化物ナノ粒子を合成することを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図17】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図17】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−169110(P2008−169110A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−13539(P2008−13539)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【分割の表示】特願2003−534313(P2003−534313)の分割
【原出願日】平成14年1月22日(2002.1.22)
【出願人】(503317485)ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファウンデーション (25)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【分割の表示】特願2003−534313(P2003−534313)の分割
【原出願日】平成14年1月22日(2002.1.22)
【出願人】(503317485)ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファウンデーション (25)
【Fターム(参考)】
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