説明

サクションフィルタ

【課題】エンジンに並列接続されている複数の燃料ポンプの作動不良の発生を抑制することができるサクションフィルタを提供する。
【解決手段】エンジン11に並列接続されている第一燃料ポンプ20、第二燃料ポンプ30の吸入口21、31側には、一つのサクションフィルタ40が設けられている。サクションフィルタ40のフィルタ本体部41は、不織布42から構成されている。フィルタ本体部41は、内部に空間50を有しており、その空間50は、サクションフィルタ40に設けられている区画部44にて第一空間51と第二空間52とに区画されている。不織布42は樹脂製であって、区画部44は、向かい合う不織布42同士を溶着することにより形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンクの外部に設けられる燃料消費装置(例えば、内燃機関)へ燃料タンクの内部の燃料を供給する燃料ポンプの吸入側に設けられるサクションフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクの外部に設けられる燃料消費装置に対して並列接続され、この燃料消費装置が必要とする燃料量に応じて少なくとも一つが断続的に駆動し、燃料消費装置へ燃料タンクの内部の燃料を供給する第一燃料ポンプおよび第二燃料ポンプを備える燃料供給装置が知られている(特許文献1参照)。これらの燃料ポンプの吸入側には、一つのサクションフィルタが設けられている。第一燃料ポンプの吸入口と第二燃料ポンプの吸入口とは、サクションフィルタ内部で連通している。
【特許文献1】特開2007−85251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複数の燃料ポンプを備える燃料供給装置では、一方の燃料ポンプが駆動し、他方の燃料ポンプが停止している状態のとき、サクションフィルタの内部に停止している他方の燃料ポンプから気泡が流入することがある。いずれか一方の燃料ポンプが駆動すると、駆動している燃料ポンプの吸引力によりサクションフィルタ内部の圧力が、サクションフィルタ外部の圧力よりも低くなる。このため、停止している燃料ポンプに設けられているベーパ排出口などを介して燃料タンク内の気泡を含んだ燃料がサクションフィルタ内部に流入する。駆動している燃料ポンプの吸入口と停止している燃料ポンプの吸入口はサクションフィルタ内部で連通しているため、サクションフィルタ内部に流入した気泡は、駆動している燃料ポンプの吸入口に流入するおそれがある。
【0004】
駆動している燃料ポンプの内部に気泡が流入すると、燃料ポンプがロックしたり、息継ぎが発生したりして、燃料消費装置に適量の燃料を供給することが困難となる。
【0005】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、燃料消費装置に並列接続されている複数の燃料ポンプの作動不良の発生を抑制することができるサクションフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、燃料タンクの外部に設けられる燃料消費装置に対して並列接続され、燃料消費装置が必要とする燃料量に応じて少なくとも一つが断続的に駆動して、燃料消費装置へ燃料タンクの内部の燃料を供給する第一燃料ポンプおよび第二燃料ポンプのそれぞれの吸入側に設けられる一つのサクションフィルタにおいて、
外表面にフィルタエレメント部を備えるとともに内部に空間が形成されているフィルタ本体部と、フィルタ本体部に設けられ、第一燃料ポンプの吸入口に接続される第一通路部と、フィルタ本体部に設けられ、第二燃料ポンプの吸入口に接続される第二通路部と、を備え、
フィルタ本体部は、空間を第一通路部に通じる第一空間と、第二通路部に通じる第二空間とに区画する区画部を有していることを特徴としている。
【0007】
この構成によれば、フィルタ本体部の内部の空間は、区画部によって、第一通路部に通じる第一空間と第二通路部に通じる第二空間とに区画されているので、例えば、第一燃料ポンプが駆動し、第二燃料ポンプが停止している場合であっても、第一燃料ポンプの吸引力は、第二空間には及ばない、もしくは及び難くなる。
【0008】
第二空間に第一燃料ポンプの吸引力が及ばなければ、第二燃料ポンプの外部から第二燃料ポンプの吸入口を介して第二空間に気泡を含んだ燃料が流入することがない。このため、第一燃料ポンプの内部に気泡が流入するおそれがなくなり、燃料ポンプのロックや息継ぎなどの作動不良の発生を抑制することができる。
【0009】
また、第二空間に第一燃料ポンプの吸引力が及び、燃料タンク内の気泡を含んだ燃料が第二燃料ポンプの吸入口を介して第二空間に流入したとしても、第二空間内の気泡は、区画部によってその移動が妨げられる。このため、気泡を含んだ燃料が第二空間に流入したとしても、気泡が駆動している第一燃料ポンプに流入するのを抑制することができ、燃料ポンプのロックや息継ぎなどの作動不良の発生を抑制することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、第一燃料ポンプの吐出量は、第二燃料ポンプの吐出量よりも多く、区画部は、第二空間よりも第一空間の方が大きくなるように設けられていることを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、区画部は第一空間の方が第二空間よりも大きくなるように設けられているため、第一空間側のフィルタエレメント部の濾過面積は、第二空間側のフィルタエレメント部の濾過面積よりも広くなる。これにより、第一空間への濾過燃料流量を多くすることができ、吐出量の多い第一燃料ポンプへの燃料を容易に確保することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、第一燃料ポンプは、常時駆動して燃料消費装置へ燃料を供給する燃料ポンプであり、第二燃料ポンプは、断続的に駆動して燃料消費装置へ燃料を供給する燃料ポンプであって、区画部は、第二空間よりも第一空間の方が大きくなるように設けられていることを特徴としている。
【0013】
この構成によれば、区画部は第一空間の方が第二空間よりも大きくなるように設けられているため、第一空間側のフィルタエレメント部の濾過面積は、第二空間側のフィルタエレメント部の濾過面積よりも広くなる。これにより、第一空間側のフィルタエレメント部の濾過寿命は、第二空間側のフィルタエレメント部の濾過寿命よりも長くなる。第一燃料ポンプの使用頻度は、第二燃料ポンプの使用頻度よりも高いため、第一空間側のフィルタエレメント部と第二空間側のフィルタエレメント部の寿命時期をほぼ同時期とすることが可能となり、サクションフィルタを無駄なく使用することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、区画部は、第一空間と第二空間とを完全に区切っていることを特徴としている。
【0015】
この構成によれば、区画部は第一空間と第二空間とを完全に区切っているため、例えば、第二燃料ポンプが停止している場合、第二空間に流入した気泡の第一空間への移動を確実に阻止することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、区画部は、第一空間と第二空間とを連通する連通部を有していることを特徴としている。
【0017】
この構成によれば、区画部は、第一空間と第二空間とを連通する連通部を有しているため、例えば、第二燃料ポンプが停止している場合、第一燃料ポンプの吸引力によって、第二空間内の気泡の第一空間への移動を抑制しつつ、第二空間内の燃料を第一空間に移動させることができる。このため、区画部によって第一、第二空間を完全に区切った場合に比べ濾過面積を大きくすることができ、駆動している燃料ポンプへの燃料を確実に確保することができる。
【0018】
気泡には、気泡同士が接近すると結合するという性質がある。気泡同士が結合、成長し燃料ポンプに流入すると、一度に多くの空気が燃料ポンプ内部に流入することとなり、燃料ポンプのロックや息継ぎの程度が大きくなる。
【0019】
これに対して、請求項6に記載の発明は、第一通路部および第二通路部の入口側開口部の周縁部には、R形状部または面取り部が形成されていることを特徴としている。
【0020】
この構成によれば、第一通路部または第二通路部の入口側開口部の周縁部には、R形状部または面取り部が形成されているため、この部分の角度がほぼ直角となっている場合に比べ、滞留する領域が小さくなる。このため、気泡がフィルタ本体部の空間内に長時間滞留し、気泡が成長する前に流入した気泡を燃料ポンプに極力早く流入させることができる。気泡が成長する前に気泡を燃料ポンプに流入させれば、燃料ポンプのロックや息継ぎの程度を低く抑えることができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、フィルタ本体部は、フィルタエレメント部のみから構成されており、フィルタエレメント部は、樹脂製の不織布からなっており、
フィルタ本体部は、フィルタエレメント部を重ね合わせ、外周部を溶着して袋状にすることによってなり、区画部は、向かい合うフィルタエレメント部を溶着することにより形成されることを特徴としている。
【0022】
この構成によれば、フィルタ本体部は、樹脂製の不織布からなるフィルタエレメント部のみから構成され、フィルタエレメント部を重ね合わせ、外周部を溶着して袋状にすることによって形成されているため、部品点数を極力少なくすることができる。また、区画部は、向かい合うフィルタエレメント部を溶着することにより形成されているため、別途区画部となる部材を設ける必要がない。このため、サクションフィルタを簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるサクションフィルタを適用した燃料供給装置を図1に示す。図1は、燃料供給装置10の概略図である。燃料供給装置10は、例えば、車両に搭載された燃料消費装置としての内燃機関(以下、エンジンと言う)11が消費する燃料を蓄える燃料タンク12に設置されている。燃料供給装置10は、燃料タンク12の内部に収容されている。燃料供給装置10は、燃料タンク12内部の燃料を吸い上げて燃料タンク12外部に設けられるエンジン11に向けて吐出する。
【0025】
燃料供給装置10は、サブタンク13、第一燃料ポンプ20、第二燃料ポンプ30、サクションフィルタ40、燃料フィルタ14、プレッシャレギュレータ15およびジェットポンプ16などから構成されている。
【0026】
サブタンク13は、燃料タンク12の天壁部12a側が開口している有底筒状に形成された容器であり、燃料タンク12内に収容されている。サブタンク13は、第一燃料ポンプ20、第二燃料ポンプ30、サクションフィルタ40、燃料フィルタ14、プレッシャレギュレータ15およびジェットポンプ16などの機能部品を収容する。
【0027】
第一燃料ポンプ20および第二燃料ポンプ30は、図1に示すように、エンジン11に並列に接続されている。第一燃料ポンプ20および第二燃料ポンプ30は、底壁部12b側のそれぞれの端部に吸入口21、31を有し、燃料タンク12の天壁部12a側のそれぞれの端部に吐出口22、32を有している。第一燃料ポンプ20の吐出量は毎時200Lであり、第二燃料ポンプ30の吐出量は毎時140Lとなっている。
【0028】
第一燃料ポンプ20、第二燃料ポンプ30は、それぞれ内部に図示しない電動モータ部、および電動モータ部にて駆動されるポンプ部23、33を有している。ポンプ部23、33は、電動モータ部よりも吸入口21、31側に配置されている。
【0029】
次に、第一燃料ポンプ20のポンプ部23について説明する。なお、第二燃料ポンプ30のポンプ部33の構造は、第一燃料ポンプ20のポンプ部23とほぼ同じ構造であるため、ここでは、第一燃料ポンプ20の構造のみを説明する。
【0030】
ポンプ部23は、ハウジング24およびインペラ25を有している。インペラ25は、円板状に形成されており、その外周部には、全周に亘って羽根が形成されている。インペラ25は、ハウジング24に回転可能に収容されている。インペラ25は、電動モータ部の図示しないローターによって回転駆動される。
【0031】
ハウジング24には、インペラ25の羽根を覆い、かつ羽根に沿って延びる円弧状のポンプ室26を有している。この円弧状のポンプ室26の一方の端部は、吸入口21と連通しており、他方の端部は、電動モータ部の内部を介して吐出口22と連通している。
【0032】
インペラ25が電動モータ部にて回転駆動されると、ポンプ室に吸引力が発生する。このため、燃料タンク12の内部の燃料が、吸入口21からポンプ室26に流入する。そして、ポンプ室26内の燃料が加圧される。その後、加圧された燃料は、吐出口22から吐出される。
【0033】
ハウジング24には、ポンプ室の途中にベーパ排出口27が形成されている。ベーパ排出口27は、ハウジング24を貫通し、ハウジング24の吸入口21側の側面とポンプ室26とを連通するように形成されている。ベーパ排出口27は、インペラ25が回転する際、ポンプ室26に発生する燃料蒸気としてのベーパを含む気泡をポンプ室26から燃料タンク12に排出するものである。
【0034】
サクションフィルタ40は、第一燃料ポンプ20および第二燃料ポンプ30の吸入口21、31側に設置されている。サクションフィルタ40は、吸入口21、31から第一燃料ポンプ20および第二燃料ポンプ30に吸入される燃料に含まれる比較的大きな異物を除去する。
【0035】
サブタンク13内の燃料は、サクションフィルタ40により比較的大きな異物が除去された後、吸入口21、31から燃料ポンプ20、30の内部に吸入される。燃料ポンプ20、30の内部に吸入された燃料は、ポンプ部23、33にて加圧され、吐出口22、32から燃料フィルタ14に向けて吐出される。各吐出口22、32から吐出された燃料は、途中で合流し、燃料フィルタ14に流入する。
【0036】
燃料フィルタ14は、燃料に含まれるサクションフィルタ40では除去することができなかった微小な異物を除去する。燃料フィルタ14を通過した燃料は、サブタンク13内に収容されているプレッシャレギュレータ15にて燃料圧力が調整され、燃料タンク12外に設けられているエンジン11に供給される。
【0037】
図1に示すように、吐出口22、32から吐出された燃料の一部は、サブタンク13の底部に設けられているジェットポンプ16に送られる。ジェットポンプ16は、サブタンク13の外部からサブタンク13に形成されている開口部13aを介して、内部に向けて燃料ポンプ20、30から送られた燃料を噴出する噴出口16aを有している。サブタンク13の外部の燃料は、この噴出口16aから噴出される燃料の流れに引きずられて、開口部13aからサブタンク13の内部に流入する。このようにして、サブタンク13に燃料を汲み上げている。これにより、サブタンク13の内部に燃料を満たしておくことができる。
【0038】
次に、燃料ポンプ20、30の作動について説明する。上述したように本実施形態における燃料供給装置10は、第一燃料ポンプ20および第二燃料ポンプ30の二つの燃料ポンプを有しており、これらの燃料ポンプ20、30は、エンジン11に対して並列接続されている。第一燃料ポンプ20、第二燃料ポンプ30は、図示しない制御装置にて適宜駆動制御される。
【0039】
例えば、エンジン11の始動時または加速運転時ではエンジン11は大量の燃料を必要とする。このとき、制御装置は大量の燃料をエンジン11に供給すべく、第一燃料ポンプ20および第二燃料ポンプ30を駆動させる。エンジン11のアイドル運転時、低速運転時または定速運転時ではエンジン11は大量の燃料を必要としない。このとき、制御装置は適量の燃料をエンジン11に供給すべく、第一燃料ポンプ20のみを駆動させる。
【0040】
このようにして、第一燃料ポンプ20、第二燃料ポンプ30は、エンジン11が必要としている燃料量に応じて駆動される。本実施形態では、第一燃料ポンプ20は、常時駆動する燃料ポンプとして使用され、第二燃料ポンプ30は、必要に応じて断続的に駆動する燃料ポンプとして使用されている。
【0041】
必ずしも、いずれか一方の燃料ポンプ20、30を常時駆動する燃料ポンプとして使用する必要はない。必要に応じて、第一燃料ポンプ20、第二燃料ポンプ30を交互に駆動させるようにしても良い。
【0042】
次に、サクションフィルタ40を、図2および図3を用いて詳細に説明する。サクションフィルタ40は、フィルタ本体部41、空間形成部材60、60、および通路部材70、80を有している。
【0043】
図2は、図3中のII−II線の断面を示している。図2に示すように、フィルタ本体部41は、例えばPET樹脂(ポリエチレンテレフタラート)や、ポリアミド樹脂などの耐油性の樹脂からなる繊維から形成された樹脂製の不織布42からなっている。フィルタ本体部41は、内部に空間50を有する袋状に形成されている。本実施形態では、フィルタ本体部41は、一枚の不織布42を二つ折りにし、二つ折りにされた不織布42の外周部43を溶着(例えば、超音波溶着)することにより袋状に形成される。フィルタ本体部41は、二枚の不織布42を重ね合わせ、不織布42の外周部43を溶着することによって袋状に形成しても良い。
【0044】
燃料ポンプ20、30が作動すると、フィルタ本体部41の外側から不織布42を介して内部に形成されている空間50へ燃料が流入する。不織布42を燃料が通過する際、燃料に含まれる比較的大きな異物が除去される。フィルタ本体部41は、不織布42にて袋状に形成されているため、濾過面積を袋状に形成されていない場合と比較して大きくすることができる。本実施形態では、フィルタ本体部41全体が不織布42にて形成されている。この不織布42は、請求項に記載のフィルタエレメント部に相当する。
【0045】
フィルタ本体部41の燃料ポンプ側には、二つの開口部45、45が形成されている。その二つの開口部45、45には、第一燃料ポンプ20の吸入口21とフィルタ本体部41の空間50とを接続する第一通路部材70、および第二燃料ポンプ30の吸入口31とフィルタ本体部41の空間50とを接続する第二通路部材80が設けられている。第一通路部材70、第二通路部材80が、それぞれ請求項に記載の第一通路部、第二通路部に相当する。
【0046】
図3は、サクションフィルタ40を燃料ポンプ20、30側から見た平面図を示している。図2および図3に示すように、フィルタ本体部41は、フィルタ本体部41の空間50を二つの空間(第一空間51および第二空間52)に区画する区画部44を有している。区画部44は、第一通路部材70が第一空間51に通じ、第二通路部材80が第二空間52に通じるように設けられている。
【0047】
区画部44は、フィルタ本体部41の燃料ポンプ側の不織布42とその不織布42に対向する底壁部側の不織布42とを溶着(例えば、超音波溶着)することにより形成されている。図3では、不織布42同士を溶着する部位を斜線にて示している。
【0048】
区画部44は、その両端がフィルタ本体部41の外周部43に接続するように形成されている。これにより、第一空間51と第二空間52とが完全に区切られる。なお。区画部44は、不織布42を溶着することによって形成するのではなく、例えば樹脂からなる不織布42とは別体の区画部材であっても良い。
【0049】
図2に示すように、空間形成部材60は、袋状に形成されている第一空間51および第二空間52に一つずつ収容され、袋状を維持すべく不織布42を内側から支持している。空間形成部材60は、基部61および骨部62を有する。基部61は、第一通路部材70、第二通路部材80の入口側に取り付けられ、骨部62を支持している。図2に示すように、骨部62は、複数本の線状の骨部材63から形成され、一端部が基部61に接続され、他端部が基部61から底壁部側の不織布42に向かって放射状に延びている。
【0050】
このように、フィルタ本体部41が構成されていると、例えば、エンジン11が必要とする燃料量が少なく、第一燃料ポンプ20のみが駆動している状態であるとき、第一燃料ポンプ20の吸引力は、第二燃料ポンプ30の吸入口31と連通する第二空間52に及ばない。
【0051】
第二空間52に第一燃料ポンプ20の吸引力が及ばないため、第二空間52内の圧力は、燃料タンク12の内部の圧力とほぼ同じとなり、燃料タンク12の気泡を含んだ燃料が第二燃料ポンプ30のベーパ排出口37から第二燃料ポンプ30の吸入口31を介して第二空間52に流入されるといったことがない。このため、第一燃料ポンプ20の内部に気泡が流入するおそれがなくなり、燃料ポンプのロックや息継ぎなどの作動不良の発生を抑制することができる。
【0052】
たとえ、燃料タンク12が傾き第二空間52側のフィルタ本体部41が燃料液面から突出するなどして何らかの理由により第二空間52に気泡が流入したとしても、区画部44により、気泡の第一空間51への移動が妨げられる。こういった場合であっても、第一燃料ポンプ20の内部に気泡が流入するおそれがなくなり、燃料ポンプのロックや息継ぎなどの作動不良の発生を抑制することができる。
【0053】
区画部44は、第二空間52よりも第一空間51の方が大きくなる位置に形成されている。これにより、第一空間51側の濾過面積が第二空間52側の濾過面積よりも広くなる。このため、第一空間51への濾過燃料流量を、第二空間52への濾過燃料流路よりも多くすることができる。その結果、吐出量の多い第一燃料ポンプ20への燃料を容易に確保することができる。
【0054】
また、上述したように第一燃料ポンプ20は、常時駆動する燃料ポンプであり、第二燃料ポンプ30は、必要に応じて断続的に駆動する燃料ポンプである。つまり、燃料ポンプの使用頻度は、第二燃料ポンプ30よりも第一燃料ポンプ20の方が高い。第一空間51側、第二空間52側の濾過面積が同じ場合、使用頻度の高い第一空間51側の不織布42の寿命時期は、第二空間52側の不織布42の寿命時期よりも早く訪れる。
【0055】
本実施形態では、常時駆動する第一燃料ポンプ20と連通する第一空間51は、第二空間52よりも大きいため、第一空間51側の不織布42と第二空間52側の不織布42の寿命時期をほぼ同時期とすることができ、サクションフィルタ40を無駄なく使用することができる。
【0056】
図4(a)は、本実施形態の第一通路部材70の断面を示し、図4(b)は、第一通路部材70に相当する比較例における通路部材90の断面を示している。まず、図4(a)に図示している本実施形態の第一通路部材70を説明する。
【0057】
図4(a)に示すように、第一通路部材70は、樹脂材料にて略円筒状に形成されている。第一通路部材70の両端は、開口している。第一通路部材70は、入口部71側の側壁に径方向に延びるフランジ部73を有している。フランジ部73は、軸方向に近接して二つ形成されている。第一通路部材70は、これらフランジ部73にて不織布42の開口部45の周縁部を挟み込んで、不織布42に接続される。
【0058】
第一通路部材70の入口部71における周縁部72には、R形状部75が形成されている。R形状部75は、周縁部72の全周に亘って形成されている。第一通路部材70の出口部74は、第一燃料ポンプ20の吸入口21に接続される。なお、ここでは、第一通路部材70のみの構造を説明したが、第二通路部材80も第一通路部材70とほぼ同じ構造となっている。
【0059】
一方、図4(b)に示す通路部材90は、第一通路部材70と同様、樹脂材料にて略円筒状に形成されている。通路部材90の両端は、開口している。通路部材90は、入口部91側の側壁に径方向に延びるフランジ部93を有している。フランジ部93は、軸方向に近接して二つ形成されている。通路部材90は、これらフランジ部93にて不織布42の開口部45の周縁部を挟み込んで、不織布42に接続されている。通路部材90の入口部91における周縁部92は、第一通路部材70とは異なり、断面がほぼ直角となっている。
【0060】
次に、両通路部材70、90の入口部71、91周辺の燃料の流れについて説明する。まず、図4(b)に示す比較例から説明する。通路部材90に接続されている燃料ポンプが駆動すると、通路部材90の入口部91側の燃料が、入口部91に向かって流れてくる(図4(b)の矢印参照)。ところが、入口部91の周縁部92は、断面がほぼ直角となっているため、入口部91の周囲に燃料流れのよどみが発生しやすくなる(図4(b)の二点鎖線で示す範囲)。
【0061】
ここで、気泡には、気泡同士が接近すると結合するという性質がある。この比較例における通路部材90では、入口部91の周囲に燃料流れのよどみが発生しやくすなるため、このよどみ部分に気泡が流入すると、気泡がフィルタ本体部41の内部に長時間滞留し、その間に気泡同士が結合し成長してしまう。
【0062】
成長した気泡が、通路部材90を介して燃料ポンプに流入すると、一度に多くの空気がポンプ内部に流入することとなり、燃料ポンプのロックや息継ぎの程度が小さい気泡が流入した場合に比べ大きくなる。
【0063】
これに対し、図4(a)に示す第一通路部材70の入口部71における周縁部72には、R形状部75が形成されているため、入口部71の周囲の燃料をスムースに第一通路部材70に導くことができる。図4(a)に示すように、燃料流れのよどみの発生する範囲を図4(b)に示すよどみの範囲よりも小さくすることができる。
【0064】
これにより、気泡同士が結合、成長する前に極力早く気泡を第一燃料ポンプ20に流入させることができる。気泡が成長する前に気泡を第一燃料ポンプ20に流入させれば、燃料ポンプのロックや息継ぎの程度を低く抑えることができる。また、気泡が小さい状態であれば、ベーパ排出口27から流入した気泡を第一燃料ポンプ20から排出することが可能である。
【0065】
また、図5に示すように、周縁部72の形状をR形状ではなく、面取り部76としても良い。これによっても、図4(b)に示す比較例と比べ、燃料流れのよどみの範囲を小さくすることができるため、気泡を極力早く燃料ポンプに流入させることができる。
【0066】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態を図6に示す。第1実施形態と実質的に同一構成部分に同一符号を付し、説明を省略する。
【0067】
図6に示す第2実施形態では、サクションフィルタ40に形成されている区画部44aに第一空間51と第二空間52とを連通する連通部44bを有している点が第1実施形態のサクションフィルタ40と異なっている。
【0068】
具体的には、連通部44bは、袋状にしたフィルタ本体部41の向かい合う不織布42を溶着して区画部44aを形成する際、端部がフィルタ本体部41の外周部43と接続されないようにして形成される。
【0069】
このように、区画部44に第一空間51と第二空間52とを連通する連通部44bを形成することにより、例えば、第一燃料ポンプ20が駆動し、第二燃料ポンプ30が停止している場合、第一燃料ポンプ20の吸引力によって第二空間52内の燃料を第一空間51に移動させることができる。なお、第一空間51と第二空間52とは大半が区画部44aにて区切られているため、何らかの理由により第二空間52に気泡が流入したとしても、気泡の第一空間51への移動を抑制することができる。この構成によれば、第二空間52から第一空間51への気泡の移動を抑制しつつ、燃料の移動をある程度許容することができる。
【0070】
この実施形態によれば、第1実施形態のように区画部44によって第一空間51と第二空間52とを完全に区切った場合に比べ、濾過面積を大きくすることができる。その結果、駆動している燃料ポンプ(この場合では、第一燃料ポンプ20)への燃料を確実に確保することができる。
【0071】
連通部44bは、第一通路部材70の中心と第二通路部材80の中心とを結ぶ線(図5において、一点鎖線で示す線)上を避けて形成するのが好ましい。この考え方に基づいて連通部44bを形成すると、例えば、第一燃料ポンプ20を駆動し、第二燃料ポンプ30を停止している状態であって、第一燃料ポンプ20の吸引力が第二燃料ポンプ30におよび、第二燃料ポンプ30の吸入口31から気泡が第二空間52に流入した場合、連通部44bが上記線上に形成されているものと比べ、気泡が第一空間51に流入する可能性を低くすることができる。気泡が第二空間52から第一空間51に移動するためには、上記線上に存在する区画部44を回り込まなければならないからである。
【0072】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態を図7に示す。第1、第2実施形態と実質的に同一構成部分に同一符号を付し、説明を省略する。
【0073】
図7に示すように、本実施形態におけるサクションフィルタ40に形成されている区画部44cには、複数の連通部44dがほぼ等間隔に形成されている。連通部44dの隙間は、一方の空間(例えば、第二空間52)に流入した気泡が他方の空間(例えば、第一空間51)へ移動することが妨げられる程度のもの、若しくは、比較的大きな気泡が連通部44dを通過する際に分離させることができる程度のものとなっている。このように、区画部44cに連通部44dを形成しても、上述した第2実施形態とほぼ同じ効果を得ることができる。
【0074】
また、連通部44dは、第2実施形態のものと同様、第一通路部材70の中心と第二通路部材80の中心とを結ぶ線(図6において、一点鎖線で示す線)上を避けて形成するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1実施形態によるサクションフィルタを適用した燃料ポンプを有する燃料供給装置の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるサクションフィルタの断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるサクションフィルタの平面図である。
【図4】(a)は図1中の第一通路部材の断面図であり、(b)は比較例における通路部材の断面図である。
【図5】図4における第一通路部材の変形例を示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態によるサクションフィルタの平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態によるサクションフィルタの平面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 燃料供給装置、11 内燃機関(エンジン)、12 燃料タンク、13 サブタンク、14 燃料フィルタ、15 プレッシャレギュレータ、16 ジェットポンプ、20 第一燃料ポンプ、21 吸入口、22 吐出口、23 ポンプ部、24 ハウジング、25 インペラ、26 ポンプ室、27 ベーパ排出口、30 第二燃料ポンプ、31 吸入口、32 吐出口、33 ポンプ部、37 ベーパ排出口、40 サクションフィルタ、41 フィルタ本体部、42 不織布(フィルタエレメント部)、43 外周部、44 区画部、45 開口部、50 空間、51 第一空間、52 第二空間、60 空間形成部材、70 第一通路部材(第一通路部)、71 入口部、72 周縁部、73 フランジ部、74 出口部、75 R形状部、80 第二通路部材(第二通路部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクの外部に設けられる燃料消費装置に対して並列接続され、前記燃料消費装置が必要とする燃料量に応じて少なくとも一つが断続的に駆動して、前記燃料消費装置へ前記燃料タンクの内部の燃料を供給する第一燃料ポンプおよび第二燃料ポンプのそれぞれの吸入側に設けられる一つのサクションフィルタにおいて、
外表面にフィルタエレメント部を備えるとともに内部に空間が形成されているフィルタ本体部と、
前記フィルタ本体部に設けられ、前記第一燃料ポンプの吸入口に接続される第一通路部と、
前記フィルタ本体部に設けられ、前記第二燃料ポンプの吸入口に接続される第二通路部と、を備え、
前記フィルタ本体部は、前記空間を前記第一通路部に通じる第一空間と、前記第二通路部に通じる第二空間とに区画する区画部を有していることを特徴とするサクションフィルタ。
【請求項2】
前記第一燃料ポンプの吐出量は、前記第二燃料ポンプの吐出量よりも多く、
前記区画部は、前記第二空間よりも前記第一空間の方が大きくなるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のサクションフィルタ。
【請求項3】
前記第一燃料ポンプは、常時駆動して前記燃料消費装置へ燃料を供給する燃料ポンプであり、前記第二燃料ポンプは、断続的に駆動して前記燃料消費装置へ燃料を供給する燃料ポンプであって、
前記区画部は、前記第二空間よりも前記第一空間の方が大きくなるように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のサクションフィルタ。
【請求項4】
前記区画部は、前記第一空間と前記第二空間とを完全に区切っていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のサクションフィルタ。
【請求項5】
前記区画部は、前記第一空間と前記第二空間とを連通する連通部を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のサクションフィルタ。
【請求項6】
前記第一通路部および前記第二通路部の入口側開口部の周縁部には、R形状部または面取り部が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のサクションフィルタ。
【請求項7】
前記フィルタ本体部は、前記フィルタエレメント部のみから構成されており、
前記フィルタエレメント部は、樹脂製の不織布からなっており、
前記フィルタ本体部は、前記フィルタエレメント部を重ね合わせ、外周部を溶着して袋状にすることによってなり、
前記区画部は、向かい合う前記フィルタエレメント部を溶着することにより形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のサクションフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−216011(P2009−216011A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61739(P2008−61739)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000161840)京三電機株式会社 (99)
【Fターム(参考)】