説明

サスペンションアームと該アーム間に取り付けられたクロスビームとを備える形式の自動車両車軸の組立て方法ならびに対応する車軸

車輪支持部を支えるサスペンションアーム(3)と該サスペンションアーム間に取り付けられたクロスビーム(9)とを備える形式の自動車両車軸の組立て方法は、連続する諸ステップを含み、それらのステップ中で、クロスビームの少なくとも一部分に接着要素を塗布し、該部分をサスペンションアームの内径部の内部に該サスペンションアームと接着要素の間に遊び(12)が残るように取り付け、クロスビームとサスペンションアームによって構成されるアセンブリの要素の1つを径方向に変形させることによって、接着要素とサスペンションアームの内径部の間の接触を得る。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、車輪支持部を支えるサスペンションアームと該サスペンションアーム間に取り付けられたクロスビームとを備える形式の自動車両車軸の組立て方法に関する。
【0002】
一般に自動車両車軸は2つの揺動式サスペンションアームを備えており、そのそれぞれが一方の端部で車輪を支え、他方の端部で車両の車体に関節連結されている。サスペンションアームで支承される弾性緩衝手段が車体を支える。
【0003】
自動車両のリアサスペンションの場合、車軸は、その他に、それぞれの端部で2つのリアサスペンションアームに剛体的に連結された弾性ねじれ変形可能な横方向バーを備える。
【0004】
このクロスビームとサスペンションアームの組立ては、車両の後輪が受ける力を効率的に車体に伝えるために特に優れた強度を有していなければならないだけでなく、車軸の上下動時に車軸の基本線が保たれるように精確に行われなければならない。
【0005】
この組立てを行うには、一般に、クロスビームをサスペンションアームの内径部の内部にはめ込み、次いでこの2つの部材を相互に溶接する。さらに詳しくは、FR−A3−2 840 854、WO−A1−02/081239、US−A1−2002/0005622、DE−A1−199 28 537およびEP−A1−0 774 369の各文書を参照することができる。
【0006】
このような組立ては、高い応力の発生に耐えられず、そのため、とりわけ自動車両の総重量の軽量化を目的として異なる材料で製造されたクロスビームとサスペンションアームを備える車軸を得ることがきわめて困難になるという欠点がある。
【0007】
それぞれが嵌合のみによって組み立てるのに適した設計の形材として製造されたねじれ変形可能なクロスビームとサスペンションアームとを備える自動車両車軸が文献EP−A2−0 861 744によって知られている。
【0008】
サスペンションアームとクロスビームは、その設計上、製造コストが相当にかさむ上に、大きな振動があった場合、車軸が示す動作の確実性が比較的低いものとなり得る。
【0009】
また、文献US−B1−6 389 697により、第1の形材を、表面に環状溝が設けられた第2の形材の径方向衝合面に押し付けて取り付け、次いで電磁パルスによって第1の形材を径方向に変形させて、その端部が前記溝の内部に収まるようにし、形材同士を溶接する、形材の組立て方法が知られている。
【0010】
成形ステップと電磁溶接ステップを含むこのような組立て方法は、エネルギー的に高くつくという欠点をもつ。
【0011】
そこで、本発明はこれらの欠点を改善することを目的とする。
【0012】
そのために、本発明は、車輪支持部を支えるサスペンションアームと該サスペンションアームの間に取り付けられたクロスビームとを備える形式の自動車両車軸の組立て方法であって、連続する諸ステップを含み、それらのステップ中で、クロスビームの少なくとも一部分に接着要素を塗布し、該部分をサスペンションアームのうちの1つの内径部の内部に、該サスペンションアームと接着要素の間に遊びが残るように取り付け、クロスビームとサスペンションアームによって構成されるアセンブリの要素の1つを径方向に変形させて、接着要素とサスペンションアームの内径部の間の接触を得る、組立て方法を対象とする。
【0013】
このような組立て方法を用いることにより、サスペンションアームへのクロスビームの固定をきわめて効率的に得ることができるようになる。実際、クロスビームとサスペンションアームによって構成されるアセンブリの要素の1つを径方向に変形させることで接着要素による締結を得ることができ、それによって車軸の動作の高い確実性が保障される。
【0014】
また、サスペンションアームの内径部の内部にクロスビームをあらかじめ遊びを伴って取り付けることで、接着要素の破損リスクを顕著に抑えることができる。
【0015】
つまり、接着要素とサスペンションアームの間に遊びを設けることが、該接着要素に径方向の応力を及ぼすこととあいまって、強度的にも経済的にもとりわけ優れた車軸を得ることができる。
【0016】
また、本発明による組立て方法は、サスペンションアームとクロスビームを特別な機械加工を加えない素の状態で使用することを可能にするとともに、車軸の総重量を軽くできるように異なる材料からなる車軸を得ることを可能にする。
【0017】
本方法の好ましい実施形態では、前記要素の1つを電磁パルス発生器を介して変形させる。
【0018】
有利には、クロスビームをサスペンションアームの方向に変形させ、サスペンションアームを剛体的に保持する。
【0019】
好ましくは、接着要素はサスペンションアームの横方向寸法を明らかに超える長さにわたって塗布する。
【0020】
また、接着要素はサスペンションアームの内径部の直径の2倍にほぼ等しい長さにわたって塗布することもできる。
【0021】
好ましくは、前記諸ステップはクロスビームのそれぞれの端部において実施する。
【0022】
本発明による方法の一実施形態では、接着要素は接着剤を含む。
【0023】
また、本発明は、一般に、自動車両の第1の部品を第2の部品に組み付ける方法であって、連続する諸ステップを含み、それらのステップ中で、第1の部品の少なくとも一部分に接着要素を塗布し、該部分を第2の部品の内部に該第2の部品と接着要素の間に遊びが残るように取り付け、2つの部品のうちの1つを径方向に変形させることによって、接着要素と第2の部品の間の接触を得る方法も対象とする。
【0024】
最後に、本発明は、車輪支持部を支えるサスペンションアームと該サスペンションアーム間に取り付けられたクロスビームとを備える形式の自動車両車軸であって、一方のサスペンションアームの内径部に接触するクロスビーム端部の一部分に取り付けられた少なくとも1つの接着要素をさらに備える車軸を対象とする。該部分はとりわけ電磁パルスなどによって径方向に変形させることができる。
【0025】
有利には、サスペンションアームの内径部には段が付けられており、それによって、例えば接着要素に不具合が生じた場合に、車軸の組立ての確実性を高めることができる。
【0026】
有利には、クロスビームは、非磁性体金属、特に鋼、アルミニウムまたはチタンで製造される。サスペンションアームはアルミニウムで製造することができる。
【0027】
本発明およびその利点については、非限定的な実施形態についての添付図に則した説明を検討すれば、よりよく理解されよう。
【0028】
図1には、本発明による組立て方法によって得られる車軸がその全体の参照符号を1として示されている。
【0029】
車軸1は、車両の長手方向中心線4にほぼ沿って延びる2つのサスペンションアーム2、3を備える。それぞれのサスペンションアーム2、3は、車両の後方に向かう端部5、6によって車輪支持部(図示せず)にそれぞれ連結される。
【0030】
ここで、「後方」とは、車軸1を自動車両に取り付けたときにそれが配置される位置をいう。車両の前方に向かうサスペンションアーム2、3の他方の端部7、8は、車両の車体に関節連結される。
【0031】
それぞれのサスペンションアーム2、3は、端部5、6の近傍に、車両の車体を支えることができる弾性手段(図示せず)、例えばばねを受けるために車軸の内側に取り付けられた平らな支持部2a、3aを備える。
【0032】
それぞれのサスペンションアーム2、3は、ここでは、単一部品として、例えばアルミニウム鋳造によって製造されている。こうした措置によって、支持部2a、3aおよび端部5、6の該アームへの取付け作業をなくすことができる。
【0033】
筒状のクロスビーム9は、それぞれの端部によって2つのサスペンションアーム2、3に連結される。クロスビーム9は、その直断面において様々な種類の形状をなすことができる。クロスビーム9は弾性ねじれ変形可能であり、有利には、非磁性体金属、例えばオーステナイト鋼、高強度アルミニウム、さらにはチタンで製造する。
【0034】
次に図2および3を参照しながら、サスペンションアーム2、3をクロスビーム9に剛体的に連結するために用いる組立て方法の主なステップを説明する。
【0035】
まず最初に、クロスビーム9の端部の一部分に、サスペンションアーム3の横方向寸法を明らかに上回る長さにわたって接着要素10を塗布する。したがって、接着要素10はクロスビーム9の円筒形外面に接触する。接着要素10は、例えば合成接着剤とすることができる。
【0036】
次いで、クロスビーム9をサスペンションアーム3の段付きの内径部11の内部に、クロスビーム9の軸線(図示せず)を考慮しながら、該内径部11と接着要素10の間に径方向の遊び12が残るように取り付ける。サスペンションアーム2および3は、そのために用意した治具(図示せず)上にあらかじめしっかりと固定されている。
【0037】
内径部11は、その長さの大部分にわたる第1の段11aと、第1の段11aの両側に軸方向に延びる第2および第3の段11b、11cとを備える。第2および第3の段11b、11cは、第1の段11aよりも直径が小さくなっている。遊び12は、例えば、第2および第3の段11b、11cと接着要素10の間で1mm程度、第1の段11aと該接着要素の間で5mm程度とすることができる。
【0038】
クロスビーム9は、ここでは、接着要素10がサスペンションアーム3の相対する径方向正面13、14に対して軸方向にはみ出すように内径部11の内部に取り付けられている。
【0039】
次いで、クロスビーム9の内側に電磁パルス発生器15を挿入する。発生器15は、例えばコイルとすることができる。ここでは、発生器15は内径部11の第1の段11aのところにほぼ位置している。
【0040】
次いで、接着要素10を取り付けたクロスビーム9の端部がサスペンションアーム3の方向に径方向に変形できるようにするのに適した電磁場が作り出されるように発生器15に給電する。
【0041】
参考のために例を挙げると、発生器15に出力50kJで約10秒間給電し、直径80mm、厚さ2mmのクロスビーム9を、該クロスビーム9の直径の約2倍の、サスペンションアーム3内部への挿入長さにわたって変形させる。もちろん、クロスビーム9を機械的に変形させることも考えられる。
【0042】
成形作業後、クロスビーム9は、サスペンションアーム3の内径部11とほぼ形状が一致する段付き端部をもつ。これにより、接着要素10は該クロスビーム9とサスペンションアーム3の間で径方向に圧縮され、それによって、とりわけ該接着要素が接着剤を含むとき、接着要素の均質な分布が図られる。
【0043】
このように、接着要素10とクロスビーム9およびサスペンションアーム3との接触が、該クロスビーム9の径方向の変形とあいまって、内径部11の内部における該クロスビーム9の軸方向の固定をとりわけ効率的に行うことが可能となる。
【0044】
内径部11の内部におけるクロスビーム9の接線方向の固定の確実性を高めるために、内径部11に縦溝を設けることも考えられる。
【0045】
図2および3には、車軸の揺動アーム3のみを図示したが、クロスビーム9をサスペンションアーム2に固定する場合にも上述のステップがそのまま繰り返されることは容易に理解されるところである。
【0046】
このように、本発明による自動車両車軸の組立て方法は、とりわけ車軸全体の重量を減らしながらサスペンションアームのレベルにサスペンション機能を集約させるなどの目的のために、異なる材料で製造することが可能なサスペンションアームにクロスビームを剛体的に、しかもきわめて簡単かつ経済的に結合することを可能にするものである。
【0047】
もちろん、例えば、第1の形材の内部に、あからじめ表面に接着要素を塗布した第2の形材を、第1の形材と接着要素の間に遊びが残るように取り付け、その後に2つの形材の一方を変形させて、接着要素と第1の形材の間の接触を得ることにより、例えば車両の車体構造を形成するための形材の固定を行うなど、自動車両の他の部品の組立てを行うためにこの方法を利用することも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明による車軸の概略斜視図である。
【図2】図1の車軸の主な組立てステップを図示した概略断面図である。
【図3】図1の車軸の主な組立てステップを図示した概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪支持部を支えるサスペンションアーム(2、3)と前記サスペンションアーム間に取り付けられたクロスビーム(9)とを備える形式の自動車両車軸の組立て方法であって、前記クロスビーム(9)の一部分を前記サスペンションアームのうちの1つの内径部の内部に、前記サスペンションアームと前記クロスビーム(9)の間に遊び(12)が残るように取り付け、前記クロスビームと前記サスペンションアームによって構成されるアセンブリの要素の1つを径方向に変形させることによって、前記クロスビーム(9)の前記部分に塗布された接着要素(10)と前記サスペンションアームの前記内径部との間の接触を得る方法において、前記接着要素(10)が、前記サスペンションアームの前記内径部の内部に取り付けられる前の前記クロスビーム(9)に塗布されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記要素の1つを電磁パルス発生器を介して変形させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記クロスビームを前記サスペンションアームの方向に変形させ、前記サスペンションアームを剛体的に保持する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記接着要素を、前記サスペンションアームの横方向寸法を明らかに超える長さにわたって塗布する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記接着要素を、前記サスペンションアームの内径部の直径の2倍にほぼ等しい長さにわたって塗布する請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記諸ステップを前記クロスビームのそれぞれの端部において実施する請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記接着要素が接着剤を含む請求項の1ないし6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
自動車両の第1の部品を第2の部品に組み付ける方法であって、前記第1の部品の一部分を前記第2の部品の内部に前記第2の部品と前記第1の部品の間に遊び(12)が残るように取り付け、2つの部品のうちの1つを径方向に変形させることによって、前記第1の部品に塗布された接着要素(10)と前記第2の部品との間の接触を得る方法において、前記接着要素(10)が、前記第2の部品の内部に取り付けられる前の前記第1の部品に塗布されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−501112(P2009−501112A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520924(P2008−520924)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050687
【国際公開番号】WO2007/010156
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】