サブフレーム構造体
【課題】車体の軽量化を図るとともに、剛性を確保することができるサブフレーム構造体を提供する。
【解決手段】フロントサブフレーム構造体15は、後横メンバ24にステアリングギヤボックス17の左右の後ギヤボックス取付部54,55を設け、左右の縦フレーム21,22に左右の取付ブラケット81,82を設けている。左右の取付ブラケットを補強ブラケット83で一体に連結し、補強ブラケット83を後横メンバ24に沿わせて設ける。補強ブラケット83および後横メンバ24間に左右の後ギヤボックス取付部54,55を挟持し、ステアリングギヤボックス17を後横メンバ24に対して車体前方または車体後方に配置するとともに後横メンバ24に沿わせて設ける。
【解決手段】フロントサブフレーム構造体15は、後横メンバ24にステアリングギヤボックス17の左右の後ギヤボックス取付部54,55を設け、左右の縦フレーム21,22に左右の取付ブラケット81,82を設けている。左右の取付ブラケットを補強ブラケット83で一体に連結し、補強ブラケット83を後横メンバ24に沿わせて設ける。補強ブラケット83および後横メンバ24間に左右の後ギヤボックス取付部54,55を挟持し、ステアリングギヤボックス17を後横メンバ24に対して車体前方または車体後方に配置するとともに後横メンバ24に沿わせて設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブフレームの横メンバにステアリングギヤボックスを取り付けることでステアリングギヤボックスを横メンバに沿わせて配置したサブフレーム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車体フレームとして、パワープラント(動力源)を搭載するとともにステアリングギヤボックスを設けたサブフレーム構造体を備えたものが知られている。
このサブフレーム構造体は、左右の縦フレームが車幅方向に所定間隔をおいて設けられ、左右の縦フレームの各前端部に前横メンバが架け渡され、左右の縦フレームの各後端部に後横メンバが架け渡されている。
そして、この後横メンバに、通常、ステアリングギヤボックスが設けられている。
【0003】
ここで、ステアリングギヤボックスを設ける位置は、パワープラントのレイアウト(配置状態)やサスペンションの性能などの条件により決定される。
例えば、これらの条件に応じて、ステアリングギヤボックスが後横メンバの車体前方や車体後方に設けられることがある。
【0004】
一例として、サブフレーム構造体のなかには、パワープラントを車体前後方向に向けた状態(いわゆる、縦置き状態)に搭載するものがある。縦置き状態にパワープラントを搭載する場合、パワープラントの前下部が後横メンバの近傍に位置する。
このパワープラントの前下部を配置する空間を確保するために、後横メンバを下側に下げている。しかし、後横メンバの上方にステアリングギヤボックスを設ける空間は確保できない。
このため、後横メンバの下端部から左右の取付ブラケットを車体前方や車体後方に向けて突出させ、左右の取付ブラケットにステアリングギヤボックスを設けている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
あるいは、ステアリングギヤボックスを設ける他の例として、後横メンバの下方にステアリングギヤボックス取付部材を取り付け、この取付部材にステアリングギヤボックスを載置固定することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平3−43077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ステアリングギヤボックス内にはステアリングラックが同軸上に設けられ、ステアリングラックにピニオンが噛み合わされている。このピニオンにステアリングロッドを介してステアリングホイールが連結されている。
ステアリングホイールを操作することで、ステアリングラックが車体幅方向に移動して左右の前輪を操舵する。
【0008】
ステアリングホイールで左右の前輪を操舵する際に、ステアリングラックに作用した操舵力が左右の取付ブラケットを介して後横メンバに伝わる。
このため、操舵力を支持可能に後横メンバの剛性を確保することが要求される。このように、後横メンバの剛性を確保する際に、重量の増加を抑えた状態で後横メンバの剛性を確保することが望ましい。
【0009】
本発明は、車体の軽量化を図る(重量の増加を抑え)とともに、剛性を確保することができるサブフレーム構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に延びる左右の縦フレームに横メンバが架け渡されたサブフレームを備え、前記横メンバにステアリングギヤボックスのギヤボックス取付部が設けられ、前記左右の縦フレームのうち前記横メンバが交差する左右の部位に動力源を支える左右の取付ブラケットがそれぞれ設けられたサブフレーム構造体において、前記左右の取付ブラケットを一体に連結するとともに前記横メンバに沿って設けられた補強ブラケットを備え、前記補強ブラケットおよび前記横メンバ間に前記ギヤボックス取付部が挟持され、前記ステアリングギヤボックスが前記横メンバに対して車体前方または車体後方に配置されるとともに、前記横メンバに沿って設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項2は、前記左右の取付ブラケットの一方と前記横メンバとの間に、前記ステアリングギヤボックスからステアリングホイールへ延びるステアリングロッドが貫通するロッド貫通空間を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3は、前記横メンバは、前記左右の縦フレームから車体中央に向けて下り勾配に傾斜された左右の端部と、前記左右の端部間に設けられて前記左右の縦フレームの下方に配置された中央部と、を有し、前記中央部に前記ギヤボックス取付部が支持されることにより前記ステアリングギヤボックスが前記左右の縦フレームより下方に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、左右の取付ブラケットを一体に連結する補強ブラケットを備え、補強ブラケットを横メンバに沿って設けた。
左右の取付ブラケットをサブフレームに取り付けることで、左右の取付ブラケットで補強ブラケットを強固に支えることができる。
よって、補強ブラケットの剛性を高め、剛性を高めた補強ブラケットで横メンバを補強することができる。
【0014】
加えて、補強ブラケットを左右の取付ブラケットに一体に連結した。
これにより、補強ブラケットを横メンバに取り付けるために必要とされていた取付部材(ボルトなど)を不要にでき、部品点数の削減を図ることができる。
【0015】
さらに、補強ブラケットおよび横メンバ間にステアリングギヤボックスのギヤボックス取付部を挟持するとともに、ステアリングギヤボックスを横メンバに沿って設けた。
よって、ステアリングギヤボックスで横メンバを補強することができる。
このように、補強ブラケットやステアリングギヤボックスで横メンバを補強することで横メンバの剛性を確保することができる。
【0016】
また、補強ブラケットおよび横メンバ間にギヤボックス取付部を挟持することで、ステアリングギヤボックスを横メンバに沿わせた状態で車体前方や車体後方に設けることができる。
よって、ステアリングギヤボックスにおいて操舵力が作用する部位を、補強ブラケットおよび横メンバの断面中心(以下、「支持断面中心」という)に近づけることができる。
よって、支持断面中心に作用する操舵力のモーメントを小さく抑えることができる。
これにより、補強ブラケットおよび横メンバの支持断面中心に効率よく操舵力を伝えることができる。
【0017】
したがって、補強ブラケットおよび横メンバの断面積(すなわち、重量)を同等に保った状態で、操舵力のモーメントを確実に支持可能に剛性を確保することができる。
すなわち、補強ブラケットおよび横メンバ間にギヤボックス取付部を挟持することで、補強ブラケットおよび横メンバの軽量化の確保および剛性の確保を両立させることができる。
【0018】
加えて、左右の取付ブラケットに補強ブラケットを一体に設けたので、補強ブラケットを左右の取付ブラケットで保持することができる。
ここで、例えば、補強ブラケットがステアリングギヤボックスにボルトで取り付けられている場合、このボルトを緩めてステアリングギヤボックスを取り外す際に、補強ブラケットを左右の取付ブラケットで保持できる。
これにより、補強ブラケットを外さないでステアリングギヤボックスを取り外すことができるので、ステアリングギヤボックスを手間をかけないで簡単に取り外すことができる。
【0019】
一方、ステアリングギヤボックスを取り付ける際には、ギヤボックス取付部を補強ブラケットおよび横メンバ間に差し込んだ後、ボルトを締め付けることでステアリングギヤボックスを取り付けることができる。
ここで、補強ブラケットを左右の取付ブラケットで保持しているので、補強ブラケットの位置合わせが不要になり、ステアリングギヤボックスを手間をかけないで簡単に取り付けることができる。
【0020】
請求項2に係る発明では、左右の取付ブラケットの一方と横メンバとの間にロッド貫通空間を形成し、このロッド貫通空間にステアリングロッドを貫通させた。
このように、ロッド貫通空間を利用してステアリングロッドを貫通させることで、ステアリングロッドを一方の取付ブラケットや横メンバに近づけた(近接させた)状態に配置できる。
これにより、横メンバ、左右の取付ブラケットおよびステアリングロッドをコンパクトにまとめて配置することができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、請求項1と同様の効果を得ることができる。
加えて、請求項3に係る発明では、横メンバの中央部を左右の縦フレームの下方に配置することでステアリングギヤボックスを左右の縦フレームより下方に設けた。
よって、例えば、パワープラントを車体前後方向に向けた状態(いわゆる、縦置き状態)に搭載する場合に、パワープラントを搭載する空間や、ステアリングギヤボックスを設ける空間を確保できる。
これにより、パワープラントを縦置き状態に搭載する車体に、サブフレーム構造体を適用することができるので用途の拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るサブフレーム構造体(実施例1)を備えた車体を示す斜視図である。
【図2】図1のサブフレーム構造体を示す平面図である。
【図3】図1のサブフレーム構造体を示す分解斜視図である。
【図4】図4(a)は図1の4a−4a線断面図、図4(b)は図4(a)の4b−4b線断面図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】図3のベースブラケットを示す斜視図である。
【図7】実施例1のサブフレーム構造体の左取付ブラケットおよび後横メンバを示す斜視図である。
【図8】実施例1のステアリングギヤボックスの取付ボルトを外す例を説明する図である。
【図9】実施例1のステアリングギヤボックスを取り外す例を説明する図である。
【図10】本発明に係るサブフレーム構造体(実施例2)示す断面図である。
【図11】本発明に係るサブフレーム構造体(実施例3)示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例1】
【0024】
実施例1に係るサブフレーム構造体15について説明する。
図1、図2に示すように、車体10は、車体前後方向に向けて配置された左右のサイドフレーム11,12と、左右のサイドフレーム11,12の下方に取り付けられたフロントサブフレーム構造体(サブフレーム構造体)15とを備えている。
【0025】
フロントサブフレーム構造体15は、左右のサイドフレーム11,12の下部に設けられたフロントサブフレーム(サブフレーム)16と、フロントサブフレーム16に設けられたステアリングギヤボックス17と、ステアリングギヤボックス17に沿って設けられたベースブラケット18とを備えている。
【0026】
図2、図3に示すように、フロントサブフレーム16は、車体前後方向に延びる左右の縦フレーム21,22と、左右の縦フレーム21,22の前端部21a,22aに架け渡された前横メンバ23と、左右の縦フレーム21,22の後端部21b,22bに架け渡された後横メンバ(横メンバ)24とを備えている。
【0027】
後横メンバ24は、車体中央に向けて下り勾配に傾斜させた左右の傾斜端部(左右の端部)31,32と、左右の傾斜端部31,32に連結されて左右の縦フレーム21,22の下方に配置された中央部33とを有する。
【0028】
図3〜図5に示すように、中央部33は、左右の傾斜端部31,32を一体に連結する直線状の部材である。
この中央部33は、車幅方向に延出された頂部34と、頂部34の前辺34aから下方に張り出された前壁部35と、頂部34の後辺34bから下方に張り出された後壁部36と、頂部34から下方に張り出された補強リブ37とを有する。
【0029】
中央部33の左端部33aに左ボス部41が設けられ、左ボス部41に左後取付孔41aが形成されている。
中央部33の右端部33bに右ボス部42が設けられ、右ボス部42に右後取付孔42aが形成されている。
【0030】
図3に示すように、フロントサブフレーム16は、左縦フレーム21の後端部21bに後横メンバ24の左傾斜端部31が交差する左交差部位(左部位)45と、右縦フレーム22の後端部22bに後横メンバ24の右傾斜端部32が交差する右交差部位(右部位)46とを有している。
【0031】
ステアリングギヤボックス17は、後横メンバ24の中央部33に沿って設けられ(図1も参照)、ステアリングギヤ48(ラック・ピニオン)などを収容する円筒状のケースである。
ステアリングギヤボックス17は、ステアリングギヤボックス17の後部に車幅方向に所定間隔をおいて設けられた左右の後ギヤボックス取付部(ギヤボックス取付部)54,55とを有する。
【0032】
左後ギヤボックス取付部54に左後貫通孔54aが形成され、右後ギヤボックス取付部55に右後貫通孔55aが形成されている。
左後ギヤボックス取付部54の左後貫通孔54aは、中央部33の左後取付孔41aに対して同軸上に配置されている。左後貫通孔54aおよび左後取付孔41aはボルト60を挿通可能な孔である。
【0033】
右後ギヤボックス取付部55の右後貫通孔55aは、中央部33の右後取付孔42aに対して同軸上に配置されている。
右後貫通孔55aおよび右後取付孔42aはボルト62を挿通可能な孔である。
【0034】
中央部33の左後取付孔41aにボルト60・ナット61で左後ギヤボックス取付部54が取り付けられ(支持され)ている。
中央部33の右後取付孔42aにボルト62・ナット63で右後ギヤボックス取付部55が取り付けられている(支持されている)。
これにより、ステアリングギヤボックス17が、後横メンバ24の中央部33の前方に設けられるとともに中央部33に沿って設けられる(図1、図4も参照)。
【0035】
図1、図3に示すように、ステアリングギヤボックス17は、左右の縦フレーム21,22より下方に設けられている。
ステアリングギヤ48のピニオンから車体後方に向けてステアリングロッドケース64が上り勾配に延出され、ステアリングロッドケース64からステアリングロッド65が車体後方に向けて上り勾配に延出され、ステアリングロッド65の上端部にステアリングホイール66が取り付けられている。
【0036】
ステアリングギヤボックス17内にはラックシャフト49が同軸上に設けられ、ラックシャフト49のラックがステアリングロッド65のピニオンに噛み合っている。
ラックシャフト49の左端部に左連結ロッド71を介して左タイロッド72が設けられている。ラックシャフト49の右端部に右連結ロッド73を介して右タイロッド74が設けられている。
【0037】
ステアリングホイール66を回転することにより左右のタイロッド72,74が車幅方向に移動する。
左右のタイロッド72,74を車幅方向に移動することで、左右のナックル(図示せず)が回動して左右の前輪(図示せず)の向きを変える。
【0038】
ベースブラケット18は、左交差部位45に設けられた左取付ブラケット(左右の取付ブラケットの一方)81と、右交差部位46に設けられた右取付ブラケット82と、左右の取付ブラケット81,82を一体に連結する補強ブラケット83とを備えている。
【0039】
図6に示すように、左取付ブラケット81は、左上部85の外端部85aが左交差部位45(図3も参照)に設けられ、左上部85に円形状の左開口部86が設けられ、左上部85の内端部85bに左内傾斜側部87が設けられている。
【0040】
左内傾斜側部87は、左上部85の内端部85bから補強ブラケット83の左端部83aに向けて下り勾配で延出されている。
具体的には、左内傾斜側部87は、後横メンバ24の左傾斜端部31(図3も参照)に対して車幅方向に所定間隔L1をおいて配置されるとともに、左傾斜端部31に沿って設けられている。
左開口部86に、図示しない左ラバー支持部(いわゆる、ラバーマウント)が嵌入された状態で取り付けられている。
【0041】
右取付ブラケット82は、左取付ブラケット81と左右対称の部材であり、右上部91の外端部91aが右交差部位46(図3も参照)に設けられ、右上部91に円形状の右開口部92aが設けられ、右上部91の内端部91bに右内傾斜側部93が設けられている。
【0042】
右内傾斜側部93は、右上部91の内端部91bから補強ブラケット83の右端部83bに向けて下り勾配で延出されている。
具体的には、右内傾斜側部93は、後横メンバ24の右傾斜端部32に対して車幅方向に所定間隔L1をおいて配置されるとともに、右傾斜端部32に沿って設けられている。
右開口部92aに、図示しない右ラバー支持部(いわゆる、ラバーマウント)が嵌入された状態で取り付けられている。
【0043】
図示しない左右のラバー支持部でパワープラント(動力源)94(図2参照)が支えられている。
よって、パワープラント94が左右のラバー支持部および左右の取付ブラケット81,82を介してフロントサブフレーム16(図2参照)に支えられている。
【0044】
ここで、後横メンバ24の中央部33を左右の縦フレーム21,22の下方に配置することでステアリングギヤボックス17が左右の縦フレーム21,22より下方に設けられている。
よって、例えば、パワープラント94を車体前後方向に向けた状態(いわゆる、縦置き状態)に搭載する場合に、パワープラント94を搭載する空間や、ステアリングギヤボックス17を設ける空間を確保できる。
これにより、パワープラント94を縦置き状態に搭載する車体10に、サブフレーム構造体15を適用することができるので用途の拡大を図ることができる。
【0045】
ベースブラケット18によれば、左右の取付ブラケット81,82が補強ブラケット83で一体に連結されている。よって、左右の取付ブラケット81,82をフロントサブフレーム16に取り付けた状態において、左右の取付ブラケット81,82で補強ブラケット83を強固に支えることができる。
これにより、左右の取付ブラケット81,82で補強ブラケット83の剛性を高めることができ、剛性を高めた補強ブラケット83でフロントサブフレーム16の後横メンバ24(図3参照)を補強することができる。
【0046】
加えて、補強ブラケット83を左右の取付ブラケット81,82に一体に連結した。
これにより、補強ブラケット83を後横メンバ24に取り付けるために必要とされていた取付部材(ボルトなど)を不要にでき、部品点数の削減を図ることができる。
【0047】
図4〜図6に示すように、補強ブラケット83は、左右の取付ブラケット81,82を一体に連結する直線状の部材である。
この補強ブラケット83は、車幅方向に延出された平坦な頂部96と、頂部96の後辺96aから下方に張り出された後壁部97と、後辺96a近傍から後壁部97に沿って下方に張り出された補強リブ98とを有する。
【0048】
頂部96の左端部83aに左ボス部101が設けられ、左ボス部101に左差込孔101aが形成されている。
左差込孔101aは、左後ギヤボックス取付部54の左後貫通孔54aおよび左ボス部41の左後取付孔41aに対して同軸上に配置されている。
【0049】
頂部96の右端部83bに右ボス部102が設けられ、右ボス部102に右差込孔102aが形成されている。
右差込孔102aは、右後ギヤボックス取付部55の右後貫通孔55a(図3参照)および右ボス部42の右後取付孔42a(図3参照)に対して同軸上に配置されている。
【0050】
前述したように、左取付ブラケット81の外端部85aが左交差部位45に設けられ、かつ、右取付ブラケット82の外端部91aが右交差部位46に設けられている。
この状態で、補強ブラケット83が後横メンバ24の中央部33に沿って配置されるとともに、中央部33に対して上方に所定間隔L2をおいて保持されている。
【0051】
左後取付孔41a、左後貫通孔54aおよび左差込孔101aにボルト60が差し込まれ、左差込孔101aから突出したねじ部60aにナット61がねじ結合されている。
また、図3に示すように、右後取付孔42a、右後貫通孔55aおよび右差込孔102aにボルト62が差し込まれ、左差込孔102aから突出したねじ部62aにナット63がねじ結合されている。
【0052】
この状態において、図4に示すように、補強ブラケット83の左ボス部101および中央部33の左ボス部41間に左後ギヤボックス取付部54が挟持されている。
この左後ギヤボックス取付部54の取付構造は、右後ギヤボックス取付部55の取付構造と左右対称に構成されている。よって、右後ギヤボックス取付部55の取付構造の詳説は省略するが、右後ギヤボックス取付部55は、左後ギヤボックス取付部54と同様に、補強ブラケット83の右ボス部102および中央部の右ボス部42間に挟持されている。
【0053】
このように、左後ギヤボックス取付部54が上下の左ボス部101,41で挟持され、かつ右後ギヤボックス取付部55が上下の右ボス部102,42で挟持されることで、ステアリングギヤボックス17が後横メンバ24の車体前方に配置されるとともに、後横メンバ24に沿って設けられている(図1、図5も参照)。
さらに、後横メンバ24に沿って補強ブラケット83が設けられている(図1、図5も参照)。
【0054】
よって、補強ブラケット83やステアリングギヤボックス17で後横メンバ24を補強することができる。
このように、補強ブラケット83やステアリングギヤボックス17で後横メンバ24を補強することで、後横メンバ24の剛性を効率よく確保し、かつ軽量化を図る(重量の増加を抑える)ことができる。
【0055】
ここで、左後ギヤボックス取付部54を左ボス部101,41で挟持し、かつ右後ギヤボックス取付部55を右ボス部102,42(図3参照)で挟持した状態で、補強ブラケット83および後横メンバ24がボルト60・ナット61およびボルト62・ナット63(図3参照)で一体に連結されている。
一体に連結された補強ブラケット83および後横メンバ24は、補強ブラケット83および後横メンバ24間において上下方向の略中央に断面中心(以下、「支持断面中心」という)105が位置する。
【0056】
また、後横メンバの下方にステアリングギヤボックスを取り付ける場合に比べて、サブフレーム構造体15は、左右の取付ブラケット81,82に加えてステアリングギヤボックス17を後横メンバ24に直接締結する必要がない。
よって、ステアリングギヤボックス17の締結箇所を少なくでき、後横メンバ24の中央部33が下方に位置する場合にも、左右2箇所(54,55)のステアリングギヤボックス17取付箇所の間隔を広くとることができる(図3参照)。
【0057】
一方、左後ギヤボックス取付部54を左ボス部101,41で挟持し、かつ右後ギヤボックス取付部55を右ボス部102,42(図3参照)で挟持することで、ステアリングギヤボックス17を上下方向において支持断面中心105に近づけることができる。
さらに、左右の取付ブラケット81,82はラバーマウントを介してパワープラント94(図2参照)の荷重を受ける。これにより、左右の取付ブラケット81,82を一体に連結する補強ブラケット83によりステアリングギヤボックス17を挟持することができ、ステアリングギヤボックス17をより安定して支持することができる。
【0058】
ここで、ステアリングホイール66(図1参照)で左右の前輪(図示せず)を操舵する際に、ステアリングギヤボックス17内のラックシャフト49に操舵力Fが作用する。
すなわち、ラックシャフト49は操舵力Fが作用する部位である。
操舵力Fはラックシャフト49の軸線方向に作用するが、図4(a)では理解を容易にするために操舵力Fの矢印を便宜上軸線方向に対して僅かに傾斜させた。
【0059】
ラックシャフト49はステアリングギヤボックス17内に同軸上に設けられている。
よって、ステアリングギヤボックス17を支持断面中心105に近づけることで、ステアリングギヤボックス17内のラックシャフト49を上下方向において支持断面中心105に近づけることができる。
【0060】
これにより、ラックシャフト49に作用する操舵力Fを上下方向において支持断面中心105に近づけることができる。
具体的には、操舵力Fが作用するラックシャフト49を、支持断面中心105に対して上下方向において距離L3に近づけて配置できる。
【0061】
操舵力Fが作用するラックシャフト49を支持断面中心105に近づけることで、支持断面中心105に作用する操舵力FのモーメントM(M=F×L3)を小さく抑えることができる。
よって、補強ブラケット83および後横メンバ24に作用する荷重を小さくできる。
これにより、補強ブラケット83および後横メンバ24の断面積(すなわち、重量)を同等に保った状態で、操舵力のモーメントによる荷重を確実に支持可能に剛性を確保することができる。
【0062】
すなわち、左後ギヤボックス取付部54を左ボス部101,41で挟持し、かつ右後ギヤボックス取付部55を右ボス部102,42(図3参照)で挟持することで、補強ブラケット83および後横メンバ24の軽量化の確保および剛性の確保を両立することができる。
【0063】
さらに、図7に示すように、左取付ブラケット81の外端部85aが左交差部位45に取り付けられている。
この状態で、左取付ブラケット81および後横メンバ24(左傾斜端部31および中央部33の左端部33a)との間にロッド貫通空間108が車体前後方向に貫通するように形成されている。
【0064】
このロッド貫通空間108にステアリングロッドケース64(ステアリングロッド65)が貫通されている。
ステアリングロッド65は、前述したように、ステアリングギヤボックス17からステアリングホイール66(図1参照)へ延びるロッドである。
【0065】
このように、ロッド貫通空間108を利用してステアリングロッドケース64(ステアリングロッド65)を貫通させることで、ステアリングロッド65を左取付ブラケット81や後横メンバ24に近づけた(近接させた)状態に配置できる。
これにより、後横メンバ24、左取付ブラケット81およびステアリングロッドケース64(ステアリングロッド65)をコンパクトにまとめて配置することができる。
【0066】
つぎに、後横メンバ24からステアリングギヤボックス17を取り外す例を図8〜図9に基づいて説明する。
ここで、左後ギヤボックス取付部54の取付構造および右後ギヤボックス取付部55の取付構造は左右対称の構造なので、以下左後ギヤボックス取付部54の取付構造について説明して、右後ギヤボックス取付部55の取付構造の説明を省略する。
【0067】
図8(a)に示すように、ボルト60を緩めることでねじ部60aからナット61を外し、ボルト60を下方に下げる。
図8(b)に示すように、ボルト60のねじ部60aが左ボス部41の左後取付孔41aに位置するまでボルト60を下方に下げる。
これにより、ボルト60のねじ部60aを左後ギヤボックス取付部54の左後貫通孔54aから外す。
【0068】
図9に示すように、左後ギヤボックス取付部54を左ボス部101,41間から車体前方に矢印Aの如く取り出す。
左後ギヤボックス取付部54と同様に、右後ギヤボックス取付部55(図3参照)を右ボス部102,42間から前方に取り出す。
【0069】
ここで、左右の取付ブラケット81,82に補強ブラケット83が一体に設けられている(図6参照)。
よって、左右の後ギヤボックス取付部54,55を取り外した状態で、補強ブラケット83を左右の取付ブラケット81,82で保持することができる。
これにより、補強ブラケット83を外さないでステアリングギヤボックス17を取り外すことができるので、ステアリングギヤボックス17を手間をかけないで簡単に取り外すことができる。
【0070】
一方、ステアリングギヤボックス17を取り付ける際には、左後ギヤボックス取付部54を左ボス部101,41間に差し込むとともに、右後ギヤボックス取付部55を右ボス部102,42間に差し込む。
左右の後ギヤボックス取付部54,55を差し込んだ後、左右の後ギヤボックス取付部54,55をボルト60,62・ナット61,63で締め付けることによりステアリングギヤボックス17を取り付けることができる。
【0071】
ここで、補強ブラケット83を左右の取付ブラケット81,82で保持しているので、ステアリングギヤボックス17を取り付ける際に、補強ブラケット83の位置合わせを不要にできる。
これにより、ステアリングギヤボックス17を手間をかけないで簡単に取り付けることができる。
【0072】
つぎに、実施例2、3に係るサブフレーム構造体120,130を図10、図11に基づいて説明する。
なお、実施例2、3に係るサブフレーム構造体120,130において実施例1のサブフレーム構造体15と同一・類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0073】
図10に示すように、サブフレーム構造体120は、ステアリングギヤボックス17を後横メンバ24の中央部33の後方(車体後方)に設けられるとともに中央部33に沿って設けたもので、その他の構成は実施例1のサブフレーム構造体15と同様である。
【0074】
実施例2のサブフレーム構造体120によれば、実施例1のサブフレーム構造体15と同様に、操舵力Fが作用するラックシャフト49を、支持断面中心105に対して上下方向において距離L3に近づけて配置できる。
【0075】
操舵力Fが作用するラックシャフト49を支持断面中心105に近づけることで、支持断面中心105に作用する操舵力FのモーメントM(M=F×L3)を小さく抑えることができる。
よって、補強ブラケット83および後横メンバ24に作用する荷重を小さくできる。
これにより、補強ブラケット83および後横メンバ24の断面積(すなわち、重量)を同等に保った状態で、操舵力のモーメントによる荷重を確実に支持可能に剛性を確保することができる。
【0076】
すなわち、実施例2のサブフレーム構造体120によれば、実施例1のサブフレーム構造体15と同様に、補強ブラケット83および後横メンバ24の軽量化の確保および剛性の確保を両立することができる。
さらに、実施例2のサブフレーム構造体120によれば、実施例1のサブフレーム構造体15と同様の効果を得ることができる。
【0077】
加えて、実施例2のサブフレーム構造体120を用意することで、パワープラント94のレイアウト(配置状態)やサスペンションの性能などの条件に応じて、実施例1,2のサブフレーム構造体15,120を適宜選択することが可能になる。
これにより、本発明のサブフレーム構造体の適用範囲の拡大を図ることができる。
【実施例3】
【0078】
図11に示すように、サブフレーム構造体130は、実施例1の後横メンバ24を後横メンバ(横メンバ)132に代え、実施例1のベースブラケット18をベースブラケット134に代えたもので、その他の構成は実施例1のサブフレーム構造体15と同様である。
【0079】
後横メンバ132は、左右の縦フレーム21,22の後端部21b,22bに略直線上(上下方向に対して略直線上)に架け渡された梁部材である。
ベースブラケット134は、左取付ブラケット81、右取付ブラケット82および補強ブラケット83が略直線上(上下方向に対して略直線上)に一体に連結された部材である。
よって、補強ブラケット83は、実施例1のサブフレーム構造体15と同様に後横メンバ132の上側に沿って設けられている。
【0080】
ここで、後横メンバ132およびベースブラケット134間に左右の後ギヤボックス取付部54,55が挟持されることで、ステアリングギヤボックス17が左右の縦フレーム21,22の上部に設けられている。
【0081】
実施例3のサブフレーム構造体130によれば、実施例1のサブフレーム構造体15と同様に、ステアリングギヤボックス17が後横メンバ132およびベースブラケット134に設けられている。
よって、サブフレーム構造体130によれば、図4に示すように、操舵力Fが作用するラックシャフト49を、支持断面中心105に対して上下方向において距離L3に近づけて配置できる。
【0082】
操舵力Fが作用するラックシャフト49を支持断面中心105に近づけることで、支持断面中心105に作用する操舵力FのモーメントM(M=F×L3)を小さく抑えることができる。
よって、補強ブラケット83および後横メンバ24に作用する荷重を小さくできる。
これにより、補強ブラケット83および後横メンバ24の断面積(すなわち、重量)を同等に保った状態で、操舵力のモーメントによる荷重を確実に支持可能に剛性を確保することができる。
【0083】
すなわち、実施例3のサブフレーム構造体130によれば、実施例1のサブフレーム構造体15と同様に、補強ブラケット83および後横メンバ24の軽量化の確保および剛性の確保を両立することができる。
さらに、実施例3のサブフレーム構造体130によれば、実施例1のサブフレーム構造体15と同様の効果を得ることができる。
【0084】
加えて、実施例3のサブフレーム構造体120を用意することで、パワープラント94のレイアウト(配置状態)やサスペンションの性能などの条件に応じて、実施例1〜3のサブフレーム構造体15,120,130を適宜選択することが可能になる。
これにより、本発明のサブフレーム構造体の適用範囲の拡大をさらに図ることができる。
【0085】
なお、本発明に係るフロントサブフレーム構造体15,120,130は、前述した実施例1〜3に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例1〜3では、サブフレーム構造体としてフロントサブフレーム構造体15,120,130を例示したが、これに限らないで、本発明をリヤサブフレーム構造体などに適用することも可能である。
【0086】
また、前記実施例1〜3では、フロントサブフレーム16として左右の縦フレーム21,22および前後の横メンバ23,24(132)で略矩形枠体状(いわゆる、井桁状)に組み付けられたものを例示したが、これに限らないで、略矩形枠体状に組み付けられていない他の形状のサブフレームに適用することも可能である。
例えば、左右の縦フレーム21,22に一本の横メンバのみを架け渡した略I型のサブフレームの場合は、一本の横メンバに本発明を適用することも可能である。
【0087】
さらに、前記実施例1〜3では、ステアリングホイール66を車体左側に取り付けた車体を例示したが、これに限らないで、ステアリングホイール66を車体右側に取り付けた車体に本発明を適用することも可能である。
【0088】
また、前記実施例1〜3では、横メンバとして後横メンバ24,132を例示したが、これに限らないで、前横メンバなどの他の横メンバに本発明を適用することも可能である。
【0089】
さらに、前記実施例1〜3で示した車体10,120,130、フロントサブフレーム構造体15、フロントサブフレーム16、ステアリングギヤボックス17、左右の縦フレーム21,22、後横メンバ24,132、左右の傾斜端部31,32、中央部33、左交差部位45、右交差部位46、左右の後ギヤボックス取付部54,55、ステアリングロッドケース64、ステアリングロッド65、ステアリングホイール66、左右の取付ブラケット81,82、補強ブラケット83、パワープラント94およびロッド貫通空間108などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、サブフレームの横メンバに沿わせてステアリングギヤボックスを取り付けたサブフレーム構造体が備えられた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0091】
10…車体、15,120,130…サブフレーム構造体、16…フロントサブフレーム(サブフレーム)、17…ステアリングギヤボックス、21,22…左右の縦フレーム、24,132…後横メンバ(横メンバ)、31,32…左右の傾斜端部(左右の端部)、33…中央部、45…左交差部位(左部位)、46…右交差部位(右部位)、54,55…左右の後ギヤボックス取付部(ギヤボックス取付部)、64…ステアリングロッドケース、65…ステアリングロッド、66…ステアリングホイール、81,82…左右の取付ブラケット、83…補強ブラケット、94…パワープラント(動力源)、108…ロッド貫通空間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブフレームの横メンバにステアリングギヤボックスを取り付けることでステアリングギヤボックスを横メンバに沿わせて配置したサブフレーム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車体フレームとして、パワープラント(動力源)を搭載するとともにステアリングギヤボックスを設けたサブフレーム構造体を備えたものが知られている。
このサブフレーム構造体は、左右の縦フレームが車幅方向に所定間隔をおいて設けられ、左右の縦フレームの各前端部に前横メンバが架け渡され、左右の縦フレームの各後端部に後横メンバが架け渡されている。
そして、この後横メンバに、通常、ステアリングギヤボックスが設けられている。
【0003】
ここで、ステアリングギヤボックスを設ける位置は、パワープラントのレイアウト(配置状態)やサスペンションの性能などの条件により決定される。
例えば、これらの条件に応じて、ステアリングギヤボックスが後横メンバの車体前方や車体後方に設けられることがある。
【0004】
一例として、サブフレーム構造体のなかには、パワープラントを車体前後方向に向けた状態(いわゆる、縦置き状態)に搭載するものがある。縦置き状態にパワープラントを搭載する場合、パワープラントの前下部が後横メンバの近傍に位置する。
このパワープラントの前下部を配置する空間を確保するために、後横メンバを下側に下げている。しかし、後横メンバの上方にステアリングギヤボックスを設ける空間は確保できない。
このため、後横メンバの下端部から左右の取付ブラケットを車体前方や車体後方に向けて突出させ、左右の取付ブラケットにステアリングギヤボックスを設けている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
あるいは、ステアリングギヤボックスを設ける他の例として、後横メンバの下方にステアリングギヤボックス取付部材を取り付け、この取付部材にステアリングギヤボックスを載置固定することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平3−43077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ステアリングギヤボックス内にはステアリングラックが同軸上に設けられ、ステアリングラックにピニオンが噛み合わされている。このピニオンにステアリングロッドを介してステアリングホイールが連結されている。
ステアリングホイールを操作することで、ステアリングラックが車体幅方向に移動して左右の前輪を操舵する。
【0008】
ステアリングホイールで左右の前輪を操舵する際に、ステアリングラックに作用した操舵力が左右の取付ブラケットを介して後横メンバに伝わる。
このため、操舵力を支持可能に後横メンバの剛性を確保することが要求される。このように、後横メンバの剛性を確保する際に、重量の増加を抑えた状態で後横メンバの剛性を確保することが望ましい。
【0009】
本発明は、車体の軽量化を図る(重量の増加を抑え)とともに、剛性を確保することができるサブフレーム構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、車体前後方向に延びる左右の縦フレームに横メンバが架け渡されたサブフレームを備え、前記横メンバにステアリングギヤボックスのギヤボックス取付部が設けられ、前記左右の縦フレームのうち前記横メンバが交差する左右の部位に動力源を支える左右の取付ブラケットがそれぞれ設けられたサブフレーム構造体において、前記左右の取付ブラケットを一体に連結するとともに前記横メンバに沿って設けられた補強ブラケットを備え、前記補強ブラケットおよび前記横メンバ間に前記ギヤボックス取付部が挟持され、前記ステアリングギヤボックスが前記横メンバに対して車体前方または車体後方に配置されるとともに、前記横メンバに沿って設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項2は、前記左右の取付ブラケットの一方と前記横メンバとの間に、前記ステアリングギヤボックスからステアリングホイールへ延びるステアリングロッドが貫通するロッド貫通空間を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3は、前記横メンバは、前記左右の縦フレームから車体中央に向けて下り勾配に傾斜された左右の端部と、前記左右の端部間に設けられて前記左右の縦フレームの下方に配置された中央部と、を有し、前記中央部に前記ギヤボックス取付部が支持されることにより前記ステアリングギヤボックスが前記左右の縦フレームより下方に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、左右の取付ブラケットを一体に連結する補強ブラケットを備え、補強ブラケットを横メンバに沿って設けた。
左右の取付ブラケットをサブフレームに取り付けることで、左右の取付ブラケットで補強ブラケットを強固に支えることができる。
よって、補強ブラケットの剛性を高め、剛性を高めた補強ブラケットで横メンバを補強することができる。
【0014】
加えて、補強ブラケットを左右の取付ブラケットに一体に連結した。
これにより、補強ブラケットを横メンバに取り付けるために必要とされていた取付部材(ボルトなど)を不要にでき、部品点数の削減を図ることができる。
【0015】
さらに、補強ブラケットおよび横メンバ間にステアリングギヤボックスのギヤボックス取付部を挟持するとともに、ステアリングギヤボックスを横メンバに沿って設けた。
よって、ステアリングギヤボックスで横メンバを補強することができる。
このように、補強ブラケットやステアリングギヤボックスで横メンバを補強することで横メンバの剛性を確保することができる。
【0016】
また、補強ブラケットおよび横メンバ間にギヤボックス取付部を挟持することで、ステアリングギヤボックスを横メンバに沿わせた状態で車体前方や車体後方に設けることができる。
よって、ステアリングギヤボックスにおいて操舵力が作用する部位を、補強ブラケットおよび横メンバの断面中心(以下、「支持断面中心」という)に近づけることができる。
よって、支持断面中心に作用する操舵力のモーメントを小さく抑えることができる。
これにより、補強ブラケットおよび横メンバの支持断面中心に効率よく操舵力を伝えることができる。
【0017】
したがって、補強ブラケットおよび横メンバの断面積(すなわち、重量)を同等に保った状態で、操舵力のモーメントを確実に支持可能に剛性を確保することができる。
すなわち、補強ブラケットおよび横メンバ間にギヤボックス取付部を挟持することで、補強ブラケットおよび横メンバの軽量化の確保および剛性の確保を両立させることができる。
【0018】
加えて、左右の取付ブラケットに補強ブラケットを一体に設けたので、補強ブラケットを左右の取付ブラケットで保持することができる。
ここで、例えば、補強ブラケットがステアリングギヤボックスにボルトで取り付けられている場合、このボルトを緩めてステアリングギヤボックスを取り外す際に、補強ブラケットを左右の取付ブラケットで保持できる。
これにより、補強ブラケットを外さないでステアリングギヤボックスを取り外すことができるので、ステアリングギヤボックスを手間をかけないで簡単に取り外すことができる。
【0019】
一方、ステアリングギヤボックスを取り付ける際には、ギヤボックス取付部を補強ブラケットおよび横メンバ間に差し込んだ後、ボルトを締め付けることでステアリングギヤボックスを取り付けることができる。
ここで、補強ブラケットを左右の取付ブラケットで保持しているので、補強ブラケットの位置合わせが不要になり、ステアリングギヤボックスを手間をかけないで簡単に取り付けることができる。
【0020】
請求項2に係る発明では、左右の取付ブラケットの一方と横メンバとの間にロッド貫通空間を形成し、このロッド貫通空間にステアリングロッドを貫通させた。
このように、ロッド貫通空間を利用してステアリングロッドを貫通させることで、ステアリングロッドを一方の取付ブラケットや横メンバに近づけた(近接させた)状態に配置できる。
これにより、横メンバ、左右の取付ブラケットおよびステアリングロッドをコンパクトにまとめて配置することができる。
【0021】
請求項3に係る発明では、請求項1と同様の効果を得ることができる。
加えて、請求項3に係る発明では、横メンバの中央部を左右の縦フレームの下方に配置することでステアリングギヤボックスを左右の縦フレームより下方に設けた。
よって、例えば、パワープラントを車体前後方向に向けた状態(いわゆる、縦置き状態)に搭載する場合に、パワープラントを搭載する空間や、ステアリングギヤボックスを設ける空間を確保できる。
これにより、パワープラントを縦置き状態に搭載する車体に、サブフレーム構造体を適用することができるので用途の拡大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るサブフレーム構造体(実施例1)を備えた車体を示す斜視図である。
【図2】図1のサブフレーム構造体を示す平面図である。
【図3】図1のサブフレーム構造体を示す分解斜視図である。
【図4】図4(a)は図1の4a−4a線断面図、図4(b)は図4(a)の4b−4b線断面図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】図3のベースブラケットを示す斜視図である。
【図7】実施例1のサブフレーム構造体の左取付ブラケットおよび後横メンバを示す斜視図である。
【図8】実施例1のステアリングギヤボックスの取付ボルトを外す例を説明する図である。
【図9】実施例1のステアリングギヤボックスを取り外す例を説明する図である。
【図10】本発明に係るサブフレーム構造体(実施例2)示す断面図である。
【図11】本発明に係るサブフレーム構造体(実施例3)示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例1】
【0024】
実施例1に係るサブフレーム構造体15について説明する。
図1、図2に示すように、車体10は、車体前後方向に向けて配置された左右のサイドフレーム11,12と、左右のサイドフレーム11,12の下方に取り付けられたフロントサブフレーム構造体(サブフレーム構造体)15とを備えている。
【0025】
フロントサブフレーム構造体15は、左右のサイドフレーム11,12の下部に設けられたフロントサブフレーム(サブフレーム)16と、フロントサブフレーム16に設けられたステアリングギヤボックス17と、ステアリングギヤボックス17に沿って設けられたベースブラケット18とを備えている。
【0026】
図2、図3に示すように、フロントサブフレーム16は、車体前後方向に延びる左右の縦フレーム21,22と、左右の縦フレーム21,22の前端部21a,22aに架け渡された前横メンバ23と、左右の縦フレーム21,22の後端部21b,22bに架け渡された後横メンバ(横メンバ)24とを備えている。
【0027】
後横メンバ24は、車体中央に向けて下り勾配に傾斜させた左右の傾斜端部(左右の端部)31,32と、左右の傾斜端部31,32に連結されて左右の縦フレーム21,22の下方に配置された中央部33とを有する。
【0028】
図3〜図5に示すように、中央部33は、左右の傾斜端部31,32を一体に連結する直線状の部材である。
この中央部33は、車幅方向に延出された頂部34と、頂部34の前辺34aから下方に張り出された前壁部35と、頂部34の後辺34bから下方に張り出された後壁部36と、頂部34から下方に張り出された補強リブ37とを有する。
【0029】
中央部33の左端部33aに左ボス部41が設けられ、左ボス部41に左後取付孔41aが形成されている。
中央部33の右端部33bに右ボス部42が設けられ、右ボス部42に右後取付孔42aが形成されている。
【0030】
図3に示すように、フロントサブフレーム16は、左縦フレーム21の後端部21bに後横メンバ24の左傾斜端部31が交差する左交差部位(左部位)45と、右縦フレーム22の後端部22bに後横メンバ24の右傾斜端部32が交差する右交差部位(右部位)46とを有している。
【0031】
ステアリングギヤボックス17は、後横メンバ24の中央部33に沿って設けられ(図1も参照)、ステアリングギヤ48(ラック・ピニオン)などを収容する円筒状のケースである。
ステアリングギヤボックス17は、ステアリングギヤボックス17の後部に車幅方向に所定間隔をおいて設けられた左右の後ギヤボックス取付部(ギヤボックス取付部)54,55とを有する。
【0032】
左後ギヤボックス取付部54に左後貫通孔54aが形成され、右後ギヤボックス取付部55に右後貫通孔55aが形成されている。
左後ギヤボックス取付部54の左後貫通孔54aは、中央部33の左後取付孔41aに対して同軸上に配置されている。左後貫通孔54aおよび左後取付孔41aはボルト60を挿通可能な孔である。
【0033】
右後ギヤボックス取付部55の右後貫通孔55aは、中央部33の右後取付孔42aに対して同軸上に配置されている。
右後貫通孔55aおよび右後取付孔42aはボルト62を挿通可能な孔である。
【0034】
中央部33の左後取付孔41aにボルト60・ナット61で左後ギヤボックス取付部54が取り付けられ(支持され)ている。
中央部33の右後取付孔42aにボルト62・ナット63で右後ギヤボックス取付部55が取り付けられている(支持されている)。
これにより、ステアリングギヤボックス17が、後横メンバ24の中央部33の前方に設けられるとともに中央部33に沿って設けられる(図1、図4も参照)。
【0035】
図1、図3に示すように、ステアリングギヤボックス17は、左右の縦フレーム21,22より下方に設けられている。
ステアリングギヤ48のピニオンから車体後方に向けてステアリングロッドケース64が上り勾配に延出され、ステアリングロッドケース64からステアリングロッド65が車体後方に向けて上り勾配に延出され、ステアリングロッド65の上端部にステアリングホイール66が取り付けられている。
【0036】
ステアリングギヤボックス17内にはラックシャフト49が同軸上に設けられ、ラックシャフト49のラックがステアリングロッド65のピニオンに噛み合っている。
ラックシャフト49の左端部に左連結ロッド71を介して左タイロッド72が設けられている。ラックシャフト49の右端部に右連結ロッド73を介して右タイロッド74が設けられている。
【0037】
ステアリングホイール66を回転することにより左右のタイロッド72,74が車幅方向に移動する。
左右のタイロッド72,74を車幅方向に移動することで、左右のナックル(図示せず)が回動して左右の前輪(図示せず)の向きを変える。
【0038】
ベースブラケット18は、左交差部位45に設けられた左取付ブラケット(左右の取付ブラケットの一方)81と、右交差部位46に設けられた右取付ブラケット82と、左右の取付ブラケット81,82を一体に連結する補強ブラケット83とを備えている。
【0039】
図6に示すように、左取付ブラケット81は、左上部85の外端部85aが左交差部位45(図3も参照)に設けられ、左上部85に円形状の左開口部86が設けられ、左上部85の内端部85bに左内傾斜側部87が設けられている。
【0040】
左内傾斜側部87は、左上部85の内端部85bから補強ブラケット83の左端部83aに向けて下り勾配で延出されている。
具体的には、左内傾斜側部87は、後横メンバ24の左傾斜端部31(図3も参照)に対して車幅方向に所定間隔L1をおいて配置されるとともに、左傾斜端部31に沿って設けられている。
左開口部86に、図示しない左ラバー支持部(いわゆる、ラバーマウント)が嵌入された状態で取り付けられている。
【0041】
右取付ブラケット82は、左取付ブラケット81と左右対称の部材であり、右上部91の外端部91aが右交差部位46(図3も参照)に設けられ、右上部91に円形状の右開口部92aが設けられ、右上部91の内端部91bに右内傾斜側部93が設けられている。
【0042】
右内傾斜側部93は、右上部91の内端部91bから補強ブラケット83の右端部83bに向けて下り勾配で延出されている。
具体的には、右内傾斜側部93は、後横メンバ24の右傾斜端部32に対して車幅方向に所定間隔L1をおいて配置されるとともに、右傾斜端部32に沿って設けられている。
右開口部92aに、図示しない右ラバー支持部(いわゆる、ラバーマウント)が嵌入された状態で取り付けられている。
【0043】
図示しない左右のラバー支持部でパワープラント(動力源)94(図2参照)が支えられている。
よって、パワープラント94が左右のラバー支持部および左右の取付ブラケット81,82を介してフロントサブフレーム16(図2参照)に支えられている。
【0044】
ここで、後横メンバ24の中央部33を左右の縦フレーム21,22の下方に配置することでステアリングギヤボックス17が左右の縦フレーム21,22より下方に設けられている。
よって、例えば、パワープラント94を車体前後方向に向けた状態(いわゆる、縦置き状態)に搭載する場合に、パワープラント94を搭載する空間や、ステアリングギヤボックス17を設ける空間を確保できる。
これにより、パワープラント94を縦置き状態に搭載する車体10に、サブフレーム構造体15を適用することができるので用途の拡大を図ることができる。
【0045】
ベースブラケット18によれば、左右の取付ブラケット81,82が補強ブラケット83で一体に連結されている。よって、左右の取付ブラケット81,82をフロントサブフレーム16に取り付けた状態において、左右の取付ブラケット81,82で補強ブラケット83を強固に支えることができる。
これにより、左右の取付ブラケット81,82で補強ブラケット83の剛性を高めることができ、剛性を高めた補強ブラケット83でフロントサブフレーム16の後横メンバ24(図3参照)を補強することができる。
【0046】
加えて、補強ブラケット83を左右の取付ブラケット81,82に一体に連結した。
これにより、補強ブラケット83を後横メンバ24に取り付けるために必要とされていた取付部材(ボルトなど)を不要にでき、部品点数の削減を図ることができる。
【0047】
図4〜図6に示すように、補強ブラケット83は、左右の取付ブラケット81,82を一体に連結する直線状の部材である。
この補強ブラケット83は、車幅方向に延出された平坦な頂部96と、頂部96の後辺96aから下方に張り出された後壁部97と、後辺96a近傍から後壁部97に沿って下方に張り出された補強リブ98とを有する。
【0048】
頂部96の左端部83aに左ボス部101が設けられ、左ボス部101に左差込孔101aが形成されている。
左差込孔101aは、左後ギヤボックス取付部54の左後貫通孔54aおよび左ボス部41の左後取付孔41aに対して同軸上に配置されている。
【0049】
頂部96の右端部83bに右ボス部102が設けられ、右ボス部102に右差込孔102aが形成されている。
右差込孔102aは、右後ギヤボックス取付部55の右後貫通孔55a(図3参照)および右ボス部42の右後取付孔42a(図3参照)に対して同軸上に配置されている。
【0050】
前述したように、左取付ブラケット81の外端部85aが左交差部位45に設けられ、かつ、右取付ブラケット82の外端部91aが右交差部位46に設けられている。
この状態で、補強ブラケット83が後横メンバ24の中央部33に沿って配置されるとともに、中央部33に対して上方に所定間隔L2をおいて保持されている。
【0051】
左後取付孔41a、左後貫通孔54aおよび左差込孔101aにボルト60が差し込まれ、左差込孔101aから突出したねじ部60aにナット61がねじ結合されている。
また、図3に示すように、右後取付孔42a、右後貫通孔55aおよび右差込孔102aにボルト62が差し込まれ、左差込孔102aから突出したねじ部62aにナット63がねじ結合されている。
【0052】
この状態において、図4に示すように、補強ブラケット83の左ボス部101および中央部33の左ボス部41間に左後ギヤボックス取付部54が挟持されている。
この左後ギヤボックス取付部54の取付構造は、右後ギヤボックス取付部55の取付構造と左右対称に構成されている。よって、右後ギヤボックス取付部55の取付構造の詳説は省略するが、右後ギヤボックス取付部55は、左後ギヤボックス取付部54と同様に、補強ブラケット83の右ボス部102および中央部の右ボス部42間に挟持されている。
【0053】
このように、左後ギヤボックス取付部54が上下の左ボス部101,41で挟持され、かつ右後ギヤボックス取付部55が上下の右ボス部102,42で挟持されることで、ステアリングギヤボックス17が後横メンバ24の車体前方に配置されるとともに、後横メンバ24に沿って設けられている(図1、図5も参照)。
さらに、後横メンバ24に沿って補強ブラケット83が設けられている(図1、図5も参照)。
【0054】
よって、補強ブラケット83やステアリングギヤボックス17で後横メンバ24を補強することができる。
このように、補強ブラケット83やステアリングギヤボックス17で後横メンバ24を補強することで、後横メンバ24の剛性を効率よく確保し、かつ軽量化を図る(重量の増加を抑える)ことができる。
【0055】
ここで、左後ギヤボックス取付部54を左ボス部101,41で挟持し、かつ右後ギヤボックス取付部55を右ボス部102,42(図3参照)で挟持した状態で、補強ブラケット83および後横メンバ24がボルト60・ナット61およびボルト62・ナット63(図3参照)で一体に連結されている。
一体に連結された補強ブラケット83および後横メンバ24は、補強ブラケット83および後横メンバ24間において上下方向の略中央に断面中心(以下、「支持断面中心」という)105が位置する。
【0056】
また、後横メンバの下方にステアリングギヤボックスを取り付ける場合に比べて、サブフレーム構造体15は、左右の取付ブラケット81,82に加えてステアリングギヤボックス17を後横メンバ24に直接締結する必要がない。
よって、ステアリングギヤボックス17の締結箇所を少なくでき、後横メンバ24の中央部33が下方に位置する場合にも、左右2箇所(54,55)のステアリングギヤボックス17取付箇所の間隔を広くとることができる(図3参照)。
【0057】
一方、左後ギヤボックス取付部54を左ボス部101,41で挟持し、かつ右後ギヤボックス取付部55を右ボス部102,42(図3参照)で挟持することで、ステアリングギヤボックス17を上下方向において支持断面中心105に近づけることができる。
さらに、左右の取付ブラケット81,82はラバーマウントを介してパワープラント94(図2参照)の荷重を受ける。これにより、左右の取付ブラケット81,82を一体に連結する補強ブラケット83によりステアリングギヤボックス17を挟持することができ、ステアリングギヤボックス17をより安定して支持することができる。
【0058】
ここで、ステアリングホイール66(図1参照)で左右の前輪(図示せず)を操舵する際に、ステアリングギヤボックス17内のラックシャフト49に操舵力Fが作用する。
すなわち、ラックシャフト49は操舵力Fが作用する部位である。
操舵力Fはラックシャフト49の軸線方向に作用するが、図4(a)では理解を容易にするために操舵力Fの矢印を便宜上軸線方向に対して僅かに傾斜させた。
【0059】
ラックシャフト49はステアリングギヤボックス17内に同軸上に設けられている。
よって、ステアリングギヤボックス17を支持断面中心105に近づけることで、ステアリングギヤボックス17内のラックシャフト49を上下方向において支持断面中心105に近づけることができる。
【0060】
これにより、ラックシャフト49に作用する操舵力Fを上下方向において支持断面中心105に近づけることができる。
具体的には、操舵力Fが作用するラックシャフト49を、支持断面中心105に対して上下方向において距離L3に近づけて配置できる。
【0061】
操舵力Fが作用するラックシャフト49を支持断面中心105に近づけることで、支持断面中心105に作用する操舵力FのモーメントM(M=F×L3)を小さく抑えることができる。
よって、補強ブラケット83および後横メンバ24に作用する荷重を小さくできる。
これにより、補強ブラケット83および後横メンバ24の断面積(すなわち、重量)を同等に保った状態で、操舵力のモーメントによる荷重を確実に支持可能に剛性を確保することができる。
【0062】
すなわち、左後ギヤボックス取付部54を左ボス部101,41で挟持し、かつ右後ギヤボックス取付部55を右ボス部102,42(図3参照)で挟持することで、補強ブラケット83および後横メンバ24の軽量化の確保および剛性の確保を両立することができる。
【0063】
さらに、図7に示すように、左取付ブラケット81の外端部85aが左交差部位45に取り付けられている。
この状態で、左取付ブラケット81および後横メンバ24(左傾斜端部31および中央部33の左端部33a)との間にロッド貫通空間108が車体前後方向に貫通するように形成されている。
【0064】
このロッド貫通空間108にステアリングロッドケース64(ステアリングロッド65)が貫通されている。
ステアリングロッド65は、前述したように、ステアリングギヤボックス17からステアリングホイール66(図1参照)へ延びるロッドである。
【0065】
このように、ロッド貫通空間108を利用してステアリングロッドケース64(ステアリングロッド65)を貫通させることで、ステアリングロッド65を左取付ブラケット81や後横メンバ24に近づけた(近接させた)状態に配置できる。
これにより、後横メンバ24、左取付ブラケット81およびステアリングロッドケース64(ステアリングロッド65)をコンパクトにまとめて配置することができる。
【0066】
つぎに、後横メンバ24からステアリングギヤボックス17を取り外す例を図8〜図9に基づいて説明する。
ここで、左後ギヤボックス取付部54の取付構造および右後ギヤボックス取付部55の取付構造は左右対称の構造なので、以下左後ギヤボックス取付部54の取付構造について説明して、右後ギヤボックス取付部55の取付構造の説明を省略する。
【0067】
図8(a)に示すように、ボルト60を緩めることでねじ部60aからナット61を外し、ボルト60を下方に下げる。
図8(b)に示すように、ボルト60のねじ部60aが左ボス部41の左後取付孔41aに位置するまでボルト60を下方に下げる。
これにより、ボルト60のねじ部60aを左後ギヤボックス取付部54の左後貫通孔54aから外す。
【0068】
図9に示すように、左後ギヤボックス取付部54を左ボス部101,41間から車体前方に矢印Aの如く取り出す。
左後ギヤボックス取付部54と同様に、右後ギヤボックス取付部55(図3参照)を右ボス部102,42間から前方に取り出す。
【0069】
ここで、左右の取付ブラケット81,82に補強ブラケット83が一体に設けられている(図6参照)。
よって、左右の後ギヤボックス取付部54,55を取り外した状態で、補強ブラケット83を左右の取付ブラケット81,82で保持することができる。
これにより、補強ブラケット83を外さないでステアリングギヤボックス17を取り外すことができるので、ステアリングギヤボックス17を手間をかけないで簡単に取り外すことができる。
【0070】
一方、ステアリングギヤボックス17を取り付ける際には、左後ギヤボックス取付部54を左ボス部101,41間に差し込むとともに、右後ギヤボックス取付部55を右ボス部102,42間に差し込む。
左右の後ギヤボックス取付部54,55を差し込んだ後、左右の後ギヤボックス取付部54,55をボルト60,62・ナット61,63で締め付けることによりステアリングギヤボックス17を取り付けることができる。
【0071】
ここで、補強ブラケット83を左右の取付ブラケット81,82で保持しているので、ステアリングギヤボックス17を取り付ける際に、補強ブラケット83の位置合わせを不要にできる。
これにより、ステアリングギヤボックス17を手間をかけないで簡単に取り付けることができる。
【0072】
つぎに、実施例2、3に係るサブフレーム構造体120,130を図10、図11に基づいて説明する。
なお、実施例2、3に係るサブフレーム構造体120,130において実施例1のサブフレーム構造体15と同一・類似部材については同じ符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0073】
図10に示すように、サブフレーム構造体120は、ステアリングギヤボックス17を後横メンバ24の中央部33の後方(車体後方)に設けられるとともに中央部33に沿って設けたもので、その他の構成は実施例1のサブフレーム構造体15と同様である。
【0074】
実施例2のサブフレーム構造体120によれば、実施例1のサブフレーム構造体15と同様に、操舵力Fが作用するラックシャフト49を、支持断面中心105に対して上下方向において距離L3に近づけて配置できる。
【0075】
操舵力Fが作用するラックシャフト49を支持断面中心105に近づけることで、支持断面中心105に作用する操舵力FのモーメントM(M=F×L3)を小さく抑えることができる。
よって、補強ブラケット83および後横メンバ24に作用する荷重を小さくできる。
これにより、補強ブラケット83および後横メンバ24の断面積(すなわち、重量)を同等に保った状態で、操舵力のモーメントによる荷重を確実に支持可能に剛性を確保することができる。
【0076】
すなわち、実施例2のサブフレーム構造体120によれば、実施例1のサブフレーム構造体15と同様に、補強ブラケット83および後横メンバ24の軽量化の確保および剛性の確保を両立することができる。
さらに、実施例2のサブフレーム構造体120によれば、実施例1のサブフレーム構造体15と同様の効果を得ることができる。
【0077】
加えて、実施例2のサブフレーム構造体120を用意することで、パワープラント94のレイアウト(配置状態)やサスペンションの性能などの条件に応じて、実施例1,2のサブフレーム構造体15,120を適宜選択することが可能になる。
これにより、本発明のサブフレーム構造体の適用範囲の拡大を図ることができる。
【実施例3】
【0078】
図11に示すように、サブフレーム構造体130は、実施例1の後横メンバ24を後横メンバ(横メンバ)132に代え、実施例1のベースブラケット18をベースブラケット134に代えたもので、その他の構成は実施例1のサブフレーム構造体15と同様である。
【0079】
後横メンバ132は、左右の縦フレーム21,22の後端部21b,22bに略直線上(上下方向に対して略直線上)に架け渡された梁部材である。
ベースブラケット134は、左取付ブラケット81、右取付ブラケット82および補強ブラケット83が略直線上(上下方向に対して略直線上)に一体に連結された部材である。
よって、補強ブラケット83は、実施例1のサブフレーム構造体15と同様に後横メンバ132の上側に沿って設けられている。
【0080】
ここで、後横メンバ132およびベースブラケット134間に左右の後ギヤボックス取付部54,55が挟持されることで、ステアリングギヤボックス17が左右の縦フレーム21,22の上部に設けられている。
【0081】
実施例3のサブフレーム構造体130によれば、実施例1のサブフレーム構造体15と同様に、ステアリングギヤボックス17が後横メンバ132およびベースブラケット134に設けられている。
よって、サブフレーム構造体130によれば、図4に示すように、操舵力Fが作用するラックシャフト49を、支持断面中心105に対して上下方向において距離L3に近づけて配置できる。
【0082】
操舵力Fが作用するラックシャフト49を支持断面中心105に近づけることで、支持断面中心105に作用する操舵力FのモーメントM(M=F×L3)を小さく抑えることができる。
よって、補強ブラケット83および後横メンバ24に作用する荷重を小さくできる。
これにより、補強ブラケット83および後横メンバ24の断面積(すなわち、重量)を同等に保った状態で、操舵力のモーメントによる荷重を確実に支持可能に剛性を確保することができる。
【0083】
すなわち、実施例3のサブフレーム構造体130によれば、実施例1のサブフレーム構造体15と同様に、補強ブラケット83および後横メンバ24の軽量化の確保および剛性の確保を両立することができる。
さらに、実施例3のサブフレーム構造体130によれば、実施例1のサブフレーム構造体15と同様の効果を得ることができる。
【0084】
加えて、実施例3のサブフレーム構造体120を用意することで、パワープラント94のレイアウト(配置状態)やサスペンションの性能などの条件に応じて、実施例1〜3のサブフレーム構造体15,120,130を適宜選択することが可能になる。
これにより、本発明のサブフレーム構造体の適用範囲の拡大をさらに図ることができる。
【0085】
なお、本発明に係るフロントサブフレーム構造体15,120,130は、前述した実施例1〜3に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例1〜3では、サブフレーム構造体としてフロントサブフレーム構造体15,120,130を例示したが、これに限らないで、本発明をリヤサブフレーム構造体などに適用することも可能である。
【0086】
また、前記実施例1〜3では、フロントサブフレーム16として左右の縦フレーム21,22および前後の横メンバ23,24(132)で略矩形枠体状(いわゆる、井桁状)に組み付けられたものを例示したが、これに限らないで、略矩形枠体状に組み付けられていない他の形状のサブフレームに適用することも可能である。
例えば、左右の縦フレーム21,22に一本の横メンバのみを架け渡した略I型のサブフレームの場合は、一本の横メンバに本発明を適用することも可能である。
【0087】
さらに、前記実施例1〜3では、ステアリングホイール66を車体左側に取り付けた車体を例示したが、これに限らないで、ステアリングホイール66を車体右側に取り付けた車体に本発明を適用することも可能である。
【0088】
また、前記実施例1〜3では、横メンバとして後横メンバ24,132を例示したが、これに限らないで、前横メンバなどの他の横メンバに本発明を適用することも可能である。
【0089】
さらに、前記実施例1〜3で示した車体10,120,130、フロントサブフレーム構造体15、フロントサブフレーム16、ステアリングギヤボックス17、左右の縦フレーム21,22、後横メンバ24,132、左右の傾斜端部31,32、中央部33、左交差部位45、右交差部位46、左右の後ギヤボックス取付部54,55、ステアリングロッドケース64、ステアリングロッド65、ステアリングホイール66、左右の取付ブラケット81,82、補強ブラケット83、パワープラント94およびロッド貫通空間108などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、サブフレームの横メンバに沿わせてステアリングギヤボックスを取り付けたサブフレーム構造体が備えられた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0091】
10…車体、15,120,130…サブフレーム構造体、16…フロントサブフレーム(サブフレーム)、17…ステアリングギヤボックス、21,22…左右の縦フレーム、24,132…後横メンバ(横メンバ)、31,32…左右の傾斜端部(左右の端部)、33…中央部、45…左交差部位(左部位)、46…右交差部位(右部位)、54,55…左右の後ギヤボックス取付部(ギヤボックス取付部)、64…ステアリングロッドケース、65…ステアリングロッド、66…ステアリングホイール、81,82…左右の取付ブラケット、83…補強ブラケット、94…パワープラント(動力源)、108…ロッド貫通空間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延びる左右の縦フレームに横メンバが架け渡されたサブフレームを備え、前記横メンバにステアリングギヤボックスのギヤボックス取付部が設けられ、前記左右の縦フレームのうち前記横メンバが交差する左右の部位に動力源を支える左右の取付ブラケットがそれぞれ設けられたサブフレーム構造体において、
前記左右の取付ブラケットを一体に連結するとともに前記横メンバに沿って設けられた補強ブラケットを備え、
前記補強ブラケットおよび前記横メンバ間に前記ギヤボックス取付部が挟持され、
前記ステアリングギヤボックスが前記横メンバに対して車体前方または車体後方に配置されるとともに、前記横メンバに沿って設けられたことを特徴とするサブフレーム構造体。
【請求項2】
前記左右の取付ブラケットの一方と前記横メンバとの間に、前記ステアリングギヤボックスからステアリングホイールへ延びるステアリングロッドが貫通するロッド貫通空間を備えたことを特徴とする請求項1記載のサブフレーム構造体。
【請求項3】
前記横メンバは、
前記左右の縦フレームから車体中央に向けて下り勾配に傾斜された左右の端部と、
前記左右の端部間に設けられて前記左右の縦フレームの下方に配置された中央部と、を有し、
前記中央部に前記ギヤボックス取付部が支持されることにより前記ステアリングギヤボックスが前記左右の縦フレームより下方に設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のサブフレーム構造体。
【請求項1】
車体前後方向に延びる左右の縦フレームに横メンバが架け渡されたサブフレームを備え、前記横メンバにステアリングギヤボックスのギヤボックス取付部が設けられ、前記左右の縦フレームのうち前記横メンバが交差する左右の部位に動力源を支える左右の取付ブラケットがそれぞれ設けられたサブフレーム構造体において、
前記左右の取付ブラケットを一体に連結するとともに前記横メンバに沿って設けられた補強ブラケットを備え、
前記補強ブラケットおよび前記横メンバ間に前記ギヤボックス取付部が挟持され、
前記ステアリングギヤボックスが前記横メンバに対して車体前方または車体後方に配置されるとともに、前記横メンバに沿って設けられたことを特徴とするサブフレーム構造体。
【請求項2】
前記左右の取付ブラケットの一方と前記横メンバとの間に、前記ステアリングギヤボックスからステアリングホイールへ延びるステアリングロッドが貫通するロッド貫通空間を備えたことを特徴とする請求項1記載のサブフレーム構造体。
【請求項3】
前記横メンバは、
前記左右の縦フレームから車体中央に向けて下り勾配に傾斜された左右の端部と、
前記左右の端部間に設けられて前記左右の縦フレームの下方に配置された中央部と、を有し、
前記中央部に前記ギヤボックス取付部が支持されることにより前記ステアリングギヤボックスが前記左右の縦フレームより下方に設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のサブフレーム構造体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−240787(P2011−240787A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113528(P2010−113528)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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