説明

サブユニットワクチン中の構成成分として有用なローソニアタンパク並びにその製造方法及び使用方法

本発明は、ローソニアイントラセルラリス感染に関連する臨床症状の重症度を軽減するために又は当該感染の影響を受けやすい動物へ防御免疫を与えるために有効なワクチン若しくは免疫原性組成物の免疫原性部分として有用な塩基配列及びアミノ酸配列を提供する。好ましいアミノ酸配列は、配列番号:1(IDFKAKGVWDFNNFE)、配列番号:3(IDFKAKGVWDFNNFEWQQSSFMKG)又は配列番号:7(MICLG YKIS AGF AIGMIMVVLM)の少なくとも9個の連続するアミノ酸を含む。従って、当該タンパクをコードする塩基配列又は当該タンパク自身は、獣医学的に許容されるキャリアと共にワクチン組成物中に含まれ、それを必要とする動物へ投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ローソニアイントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)に関係する。よりとりわけ、本出願は、宿主動物における免疫応答を発動する能力のある免疫学的に関連するタンパク及びそれらのタンパクをコードする塩基配列に関係する。さらによりとりわけ、本出願は、当該タンパク及びそれらの免疫原性組成物への組み入れ及びそれに続く宿主動物への投与に関係する。当該タンパクはワクチン中の構成成分として使用することができ、当該ワクチンは ローソニアイントラセルラリスによる感染に対する防御免疫の地位(degree)及び/又は ローソニアイントラセルラリスによる感染に関連する臨床症状の軽減を提供するために使用することができる。本出願はまた、当該塩基配列若しくはそれによってコードされる当該タンパクを含むワクチンの製造方法及び投与方法にも関係する。最後に、本出願は、ワクチン組み入れ物(vaccine incorporating)の製造方法及び投与方法だけでなく ローソニアイントラセルラリスの検出のための診断試験に関係する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願)
本出願は、2005年4月18日に出願された仮出願シリアル番号:60/672,455 の利益を主張し、その教示及び内容は参照によって本明細書に取り込まれる。
(配列表)
本出願は、紙ベースのフォーマット及びコンピュータ可読のフォーマットの配列表を含み、その教示及び内容は参照によって本明細書に取り込まれる。
(従来技術の説明)
ローソニアイントラセルラリスはブタの増殖性腸疾患(interopathy)(“PPE”)の病原因子であり、ヒト、ウサギ、フェレット、ハムスター、キツネ、ウマ及びダチョウとエミュー位に多様性のある他の動物を含む実質的に全ての動物に作用する。PPEは、死亡、血の気がない動物、貧血の動物、水性の暗赤色若しくは明赤色の下痢、鬱状態、食欲不振、動きたがらないこと、遅れた成長及び上昇したFCRを含む非常に多岐にわたる慢性状態及び急性状態のグループである。当該細菌はそれ自身、必須の細胞内細菌である。
【0003】
PPEに関連する当該細菌は、“カンピロバクター様生物体”として言及されてきた(S. McOrist et al., Vet. Pathol., Vol. 26, 260-264 (1989))。その後、当該病原細菌は、俗名イレアルシムビオント(Illeal symbiont)(IS)イントラセルラリス(intracellularis)と称される新たな分類学的な属及び種として、同定された(C. Gebhart et al., Int'l. J. of Systemic Bacteriology, Vol. 43, No.3, 533-538 (1993) )。つい最近、これらの新たな細菌は、ローソニア(L.)イントラセルラリスという分類学的名称を与えられた(S. McOrist et al., Int'l. J. of Systemic Bacteriology, Vol. 45, No.4, 820-825 (1995) )。これらの3つの名称は、さらに同定されるとおり及び本明細書に記載されるとおり、同一の生物体について言及するために互換的に用いられてきた。コッホの仮説は、従来法で飼育されたブタへの Lイントラセルラリスの純粋培養物の接種によって満たされた;当該疾患の典型的な病変を引き起こし、Lイントラセルラリスを当該病変から再単離した。当該疾患のより一般的な非出血型は、多くの場合 18 kg 〜 36 kg のブタに影響を及ぼし、突然の下痢の発症を特徴とする。当該糞便は、水性から粥状で、茶色がかっている又はかすかに血液染色されている。〜2日後に、ブタは、回腸で形成された黄色の繊維素壊死性(fibrinonecrotic)の円柱(casts)を経過するかもしれない。ほとんどの影響されたブタは自然に回復するが、かなりの数が進行性の衰弱を伴う慢性的な壊死性腸炎を進展させる。出血型は、皮膚蒼白、脱力及び出血性若しくは黒色のタール状糞便の経過を特徴とする。妊娠中のメスブタは、流産するかもしれない。病変は、小腸、盲腸若しくは血漿の下側半分のどこにでも起こり得るが、回腸において最も頻発しかつ明らかである。腸壁は厚くなり、腸間膜は水腫状になるかもしれない。腸間膜リンパ節は、拡張される。腸粘膜は、厚くしわが多いように見え、茶色がかった若しくは黄色の繊維素壊死性膜で覆われているのかもしれず、時々点状出血を有する。黄色の壊死性円柱が、回腸中又は結腸の全体を通して発見されるかもしれない。慢性的な症例における広範性の完全な壊死は、小腸をガーデンホースに似た硬い状態にする。増殖性粘膜病変は、多くの場合結腸中にあるが、死体解剖時の入念な検査によってのみ検出される。過度の出血性型においては、結腸中に赤色若しくは黒色のタール状糞便が存在し、回腸中に血餅が存在する。つまるところ、L. イントラセルラリスは、アメリカ合衆国におけるのと同様にヨーロッパにおけるブタの群れの損失のとりわけ重大な原因である。
【0004】
L. イントラセルラリスは、従来の無細胞培地上で標準的な細菌学的方法によって培養することができない必須の細胞内細菌であり、増殖のために細胞を必要とすると考えられてきた。S. McOrist et al., Infection and Immunity, Vol. 61, No. 19, 4286-4292(1993) 及び G. Lawson et al., J. of Clinical Microbiology, Vol. 31, No.5, 1136-1142 (1993) は、従来の組織培養フラスコ中でIEC−18ラット腸上皮細胞の単層を用いる L. イントラセルラリスの培養を明らかにする。その両方が参照によって完全に本明細書に取り込まれる米国特許Nos. 5,714,375 及び 5,885,823 では、浮遊させた宿主細胞での L. イントラセルラリスの培養が記載された。
【0005】
L. イントラセルラリスの病原性細菌株及び非病原性の弱毒化した細菌株は、最新技術においてよく知られる。例えば、WO96/39629 及び WO05/011731 は、L. イントラセルラリスの非病原性の弱毒化株を記載する。L. イントラセルラリスのさらに弱毒化した細菌株は、WO02/26250 及び WO03/00665 から知られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当業界で必要とされるものは、ローソニアイントラセルラリス感染に対して有効なワクチンであり、当該ワクチンは、動物に防御免疫を提供する若しくは与える及び/又はローソニアイントラセルラリス感染に関連する臨床症状の重症度を軽減する。さらに必要とされることは、当該ワクチンの製造方法及び投与方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要約)
本発明は、従来技術に内在する課題を克服し、最新技術における注目すべき進歩を提供する。概して、本発明は、ブタでの感染の標準的な経過の間に体液性免疫応答を誘発するローソニアイントラセルラリス(今後は、ローソニア)のタンパク又はアミノ酸配列の同定を記載する。これらのタンパクは、両方共単独で及び組み合わせて、免疫応答を引き起こしローソニアイントラセルラリス感染に対する防御免疫又はローソニアイントラセルラリス感染に関連する臨床症状の軽減を提供するタンパクサブユニットワクチン中の構成成分として有用である。当該タンパクを、回復期ブタ血清を用いて陰イオン交換分離に引き続くウェスタンブロットの従来法によって同定した。3つのタンパクを同定し、N末端を配列決定した。これらの結果を次に、BLAST解析を用いて既知配列と比較した。言うまでもなく、これらの同じタンパクは、想定される膜タンパクに関するデータベース検索、タンパクのクロマトグラフ分離及び当業者によって決定されるグラジエント条件を用いる他の陰イオン交換法であってもよい他の方法で当業者が同定することができる。当該同定されたタンパクはその後、いかなる従来法によっても生成することができ、ワクチン中で用いることができる。
【0008】
本明細書で用いられるとおり、“L. イントラセルラリス”という用語は、その各々が参照によって本明細書に完全に取り込まれる C. Gebhart et al., Int'l. J. of Systemic Bacteriology, Vol. 43, No. 3, 533-538 (1993) 及び S. McOrist et al., Int'l J. of Systemic Bacteriology, Vol. 45, No. 4, 820-825 (1995) に詳細に記載される細胞内の湾曲した細菌を意味し、例としては、WO96/39629 及び WO05/011731 に記載される分離株が挙げられるが、これらに限定されない。とりわけ、“L. イントラセルラリス”という用語はまた、ブタペスト条約の下にアメリカンタイプカルチャーコレクション, 10801 University Boulevard, Manassas, Virginia 20110-2209 に寄託され、ATCC受入番号:PTA4926 又はATCC受入番号:55783 を割り当てられた分離株をも意味するが、これらに限定されない。両方の分離株はそれぞれ、WO96/39629 及び WO05/011731 に記載される。“L. イントラセルラリス”という用語はまた、いずれの他の L. イントラセルラリス菌株又は好ましくは WO96/39629 及び WO05/011731 に記載される L. イントラセルラリス菌株の少なくとも1つの免疫原性特性を有する分離株、とりわけ、ブタペスト条約の下にアメリカンタイプカルチャーコレクション, 10801 University Boulevard, Manassas, Virginia 20110-2209 に寄託され、ATCC受入番号:PTA4926 又はATCC受入番号:55783 を割り当てられた分離株の少なくとも1つの免疫原性特性を有する分離株をも意味するが、これらに限定されない。
【0009】
菌株又は分離株は、WO96/39629 及び WO05/011731 に記載される L. イントラセルラリス株の少なくとも1つの“免疫原性特性”、とりわけ、ATCC受入番号:PTA4926 又はATCC受入番号:55783 として寄託された分離株の“免疫原性特性”を有し、WO06/01294 に記載される抗L. イントラセルラリス特異的抗体の少なくとも1つでやはり WO06/01294 に記載される検出アッセイにおいて検出可能である。好ましくは、それらの抗体は、参照番号 301:39、287:6、268:29、110:9、113:2 及び 268:18 を有する抗体から選択される。好ましくは、当該検出アッセイは、WO06/12949 の実施例2及び実施例3に記載されるとおりのサンドウィッチELISAであり、他方では、抗体 110:9 は捕捉抗体として用いられ、抗体 268:29 は抱合型抗体として用いられる。WO06/129449 に開示される全ての抗体は、ブタペスト条約に従う特許寄託物として Center for Applied Microbiology and Research(CAMR)及びEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC), Salisbury, Wilshire SP4 0JG, UK に寄託されるハイブリドーマ細胞によって産生される。寄託年月日は、2004年5月11日であった。ハイブリドーマ細胞株 110:9 は、ECACC Acc. No. 04092204 の下に首尾良く寄託される。ハイブリドーマ細胞株 113:2 は、ECACC Acc. No. 04092201 の下に首尾良く寄託される。ハイブリドーマ細胞株 268:18 は、ECACC Acc. No. 04092202 の下に首尾良く寄託される。ハイブリドーマ細胞株 268:29 は、ECACC Acc. No. 04092206 の下に首尾良く寄託される。ハイブリドーマ細胞株 287:6 は、ECACC Acc. No. 04092203 の下に首尾良く寄託される。ハイブリドーマ細胞株 301:39 は、ECACC Acc. No. 04092205 の下に首尾良く寄託される。
【0010】
さらに、“L. イントラセルラリス”という用語はまた、いずれの L. イントラセルラリス抗原をも意味する。“L. イントラセルラリス抗原”という用語は、本明細書で用いられるとおり、ブタへ投与される際に L. イントラセルラリスが引き起こす感染に対する免疫応答を誘導する、刺激する又は増強することができる少なくとも1つの抗原を含む物質のいずれの組成物をも意味するが、これらに限定されない。好ましくは、前記 L. イントラセルラリス抗原は、完全な L. イントラセルラリス細菌、とりわけ、不活性型(いわゆる、死菌)の完全な L. イントラセルラリス細菌、生存修飾した(modified live)若しくは弱毒化した L. イントラセルラリス細菌(いわゆる、MLB)、L. イントラセルラリスの少なくとも1つの免疫原性アミノ酸配列を含むキメラベクター又は L. イントラセルラリスの少なくとも1つの免疫原性アミノ酸配列を含むいずれの他のポリペプチド若しくは構成成分である。“免疫原性タンパク”、免疫原性ポリペプチド”又は“免疫原性アミノ酸配列”という用語は、本明細書で用いられるとおり、前記の免疫原性タンパク、免疫原性ポリペプチド又は免疫原性アミノ酸配列を含む病原体に対する宿主における免疫応答を誘発するいずれのアミノ酸配列について言及する。とりわけ、L. イントラセルラリスの“免疫原性タンパク”、“免疫原性ポリペプチド”又は“免疫原性アミノ酸配列”は、前記の“免疫原性タンパク”、“免疫原性ポリペプチド”又は“免疫原性アミノ酸配列”が投与される宿主における L. イントラセルラリスに対する免疫学的応答を誘発する抗原をコードするいずれのアミノ酸配列をも意味する。
【0011】
“免疫原性タンパク”、“免疫原性ポリペプチド”又は“免疫原性アミノ酸配列”は、本明細書で用いられるとおり、いずれのタンパクの全長配列、そのアナログ又はその免疫原性フラグメントであってもよいが、これらに限定されない。“免疫原性フラグメント”という用語は、1つ以上のエピトープを含みそれによって関連する病原体に対する免疫学的応答を誘発するタンパクのフラグメントを意味する。当該フラグメントは、当業界でよく知られるいずれの数のエピトープマッピング技術を用いて同定することができる。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66 (Glenn E. Morris, Ed., 1996) Human Press, Totowa, New Jersey を参照(その教示及び内容は、参照によって本明細書に取り込まれる)。例えば、直線状のエピトープを、例えば、固体支持体(supports)上で当該タンパク分子の一部に相当するペプチドを多数同時に合成し、当該ペプチドがまだ当該支持体に付属される間に当該ペプチドを抗体と反応させることによって同定してもよい。当該技術は当業界で知られ、例えば、米国特許No. 4,708,871;Geysen et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998-4002;Geysen et al. (1986) Molec. Immunol. 23:709-715 に記載される(その教示及び内容は、参照によって本明細書に取り込まれる)。同様に、立体構造エピトープは、アミノ酸の空間的な立体構造を例えば、X線結晶構造解析及び2次元NMRによって決定することによって容易に同定される。例えば、Epitope Mapping Protocols, supra. を参照。合成抗原もまた、当該定義の範囲内に包含され、例えば、ポリエピトープ、フランキングエピトープ(flanking epitopes)及び他の組み換え型若しくは合成的に生成される抗原が挙げられる。例えば、Bergmann et al. (1993) Eur. J. Immunol. 23:2777-2781; Bergmann et al. (1996), J. Immunol. 157:3242-3249; Suhrbier, A. (1997), Immunol. 及び Cell Biol. 75:402-408; Gardner et al., (1998) 12th World AIDS Conference, Geneva, Switzerland, June 28-July 3, 1998 を参照(それらの教示及び内容は、参照によって本明細書に取り込まれる)。
【0012】
組成物又はワクチンに対する“免疫学的応答又は免疫応答”は、当該組成物又はワクチンに対する細胞介在性免疫応答及び/又は抗体介在性免疫応答の宿主における発生である。通常、“免疫応答”は、以下の効果の1つ以上であってもよいが、これらに限定されない:当該組成物中又はワクチン中に含まれる抗原又は抗原群に特に向けられる抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞及び/又は細胞障害性T細胞及び/又はydT細胞(yd T cells)の産生又は活性化。好ましくは、当該宿主は、新たな感染に対する抵抗力が強化され及び/又は当該疾患の臨床的な重症度が軽減されるように治療的な免疫学的応答又は保護的な免疫学的応答のどちらかを示す。当該保護は、上記で記載されるとおり、宿主感染に関連する症状の軽減又は欠如のどちらかによって明らかにされる。
【0013】
さらに、本発明の免疫原性組成物及びワクチン組成物は、1つ以上の獣医学的に許容されるキャリアを含んでいてもよい。本明細書で用いられるとおり、“獣医学的に許容されるキャリア”には、いずれの及び全ての、溶媒、分散媒(dispersion media)、コーティング、アジュバント、安定化剤、希釈剤、防腐剤、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸着遅延剤(adsorption delaying agents)などが含まれる。
【0014】
“希釈剤”には例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、エタノール、グリセロールなどが含まれる。等張剤には例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール及びラクトースが含まれる。安定化剤には例えば、アルブミンやエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩が含まれる。
【0015】
“アジュバント”は、本明細書で用いられるとおり、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム、例えば、Quil A、QS-21(Cambridge Biotech Inc., Cambridge MA)、GPI-0100(Galenica Pharmaceuticals, Inc., Birmingham, AL)、ウォーターインオイルエマルション(water-in-oil emulsion)、オイルインウォーターエマルション(oil-in-water emulsion)、ウォーターインオイルインウォーターエマルション(water-in-oil-in-water emulsion)などのサポニンであってもよい。当該エマルションはとりわけ、軽質流動パラフィンオイル(欧州薬局方型);スクアラン若しくはスクアレンのようなイソプレノイドオイル;アルケン、とりわけイソブテン若しくはデセンのオリゴマー形成から結果として得られるオイル;直鎖アルキル基を含む酸のエステル若しくはアルコールのエステル、よりとりわけ、植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ-(カプリラート/カプラート)、グリセリルトリ-(カプリラート/カプラート)又はプロピレングリコールジオレアート;分鎖の脂肪酸若しくはアルコールのエステル、とりわけ、イソステアリン酸エステルを基盤とすることができる。当該オイルを乳化剤と組み合わせて用いてエマルションを形成する。当該乳化剤は好ましくは、非イオン性界面活性剤、とりわけ、ソルビタンのエステル、マンニドのエステル(例えば、無水マンニトールオレアート)、グリコールのエステル、ポリグリセリンのエステル、プロピレングリコールのエステル及びオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸又はヒドロキシステアリン酸のエステル(これらは、エトキシレート化されていてもよい)及びポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロック共重合体、とりわけ、プルロニック製品、特に、L121 である。Hunter et al.m The theory and Practical Application of Adjuvants (Ed. Stewart-Tull, D. E. S.), John Wiley and Sons, NY, pp51-94 (1995) 及び Todd et al., Vaccine 15:564-570 (1997) を参照。例えば、M. Powell and M. Newman, Plenum Press, 1995 によって編集された"Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach" の147頁に記載されるSPTエマルション及びこれと同じ本の183頁に記載されるエマルションMF59を用いることが可能である。
【0016】
アジュバントのさらなる例は、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー及び無水マレイン酸とアルケニル誘導体の共重合体から選択される化合物である。好都合なアジュバント化合物は、架橋されるアクリル酸又はメタクリル酸のポリマー、とりわけ、糖のポリアルケニルエーテル又はポリアルコールで架橋されるアクリル酸又はメタクリル酸のポリマーである。これらの化合物は、カルボマーという用語で知られる(Pharmeuropa Vol. 8, No. 2, June 1996)。当業者はまた、少なくとも3個の、好ましくは8個以下のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化された化合物であって、当該少なくとも3個のヒドロキシルの水素原子が少なくとも2個の炭素原子を有する不飽和脂肪族のラジカルで置換される当該化合物で架橋される当該アクリルポリマーを記載する米国特許No. 2,909,462 を参照することもできる。好ましいラジカルは、2個〜4個の炭素原子を含むもの、例えば、ビニル基、アリル基及び他のエチレン的に不飽和な基である。当該不飽和ラジカルは、それら自身がメチルのような他の置換基を含んでいてもよい。Carbopol(BF Goodrich, Ohio, USA)の名称で販売される製品が、とりわけ適切である。それらは、アリルスクロース又はアリルペンタエリスリトールで架橋される。それらの中でも、Carbopol 974P、934P及び971Pが言及されてもよい。最も好ましいのは、Carbopol 971P の使用である。無水マレイン酸とアルケニル誘導体の共重合体の中でも、無水マレイン酸とエチレンの共重合体である共重合体EMA(Monsanto)である。これらのポリマーの水中への溶解は結果として、免疫原性組成物、免疫学的組成物又はワクチン組成物それ自身が取り込まれるアジュバント溶液を与えるために中和することのできる、好ましくは、生理的pHまで中和することのできる酸性溶液をもたらす。
【0017】
さらなる適切なアジュバントとしては他の多くの中で、RIBIアジュバントシステム(Ribi Inc.)、ブロック共重合体(CytRx, Atlanta GA)、SAF-M(Chiron, Emryville CA)、モノホスホリル脂質A、アブリジン(Avridine)脂質-アミンアジュバント、E. Coli(組み換え型又は別のやり方)の熱不安定性エンテロトキシン、コレラトキシン、IMS1314又はムラミルジペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
好ましくは、当該アジュバントは、投与量あたり、約 100 μg 〜 約 10 mg の量で加えられる。さらにより好ましくは、当該アジュバントは、投与量あたり、約 100 μg 〜 約 10 mg の量で加えられる。さらにより好ましくは、当該アジュバントは、投与量あたり、約 500 μg 〜 約 5 mg の量で加えられる。さらにより好ましくは、当該アジュバントは、投与量あたり、約 750 μg 〜 約 2.5 mg の量で加えられる。最も好ましくは、当該アジュバントは、投与量あたり約1mgの量で加えられる。
【0019】
当該ワクチン組成物は、例えば、インターロイキン、インターフェロン又は他のサイトカインのような1つ以上の他の免疫調節剤をさらに含むことができる。当該ワクチン組成物はまた、ゲンタマイシン及びメルチオレートを含むこともできる。本発明との関連で有用なアジュバント及び添加剤の量及び濃度が当業者によって容易に決定することができる一方で、本発明は、約 50 μg 〜 約 2000 μg のアジュバント、好ましくは、当該ワクチン組成物の投与量 1 mL あたり約 250 μg のアジュバントを含む組成物を熟慮する。他の好ましい実施態様において、本発明は、約1μg/mL 〜 約 60 μg/mL の抗生物質及び/又は免疫調節剤、さらにより好ましくは、約 30 μg/mL 未満の抗生物質及び/又は免疫調節剤を含むワクチン組成物を熟慮する。
【0020】
さらなる実施態様に従って、当該ワクチンは、第1に脱水される。当該組成物が第1に他の方法によって凍結乾燥される又は脱水される場合には、次に、ワクチン接種前に、前記組成物は水溶液(例えば、生理食塩水、PBS(リン酸緩衝食塩水))中又は非水溶液(例えば、オイルエマルション(ミネラルオイル、又は植物性の/代謝可能なオイルを基盤とする/シングル若しくはダブルのエマルションを基盤とする)、アルミニウムを基盤とするアジュバント、カルボマーを基盤とするアジュバント)中で再水和される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
さらに詳細に、本発明のある側面は、配列番号:1、配列番号:3又は配列番号:7のいずれかの少なくとも9個の連続するアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む免疫原性組成物又はワクチン組成物を提供する。好ましくは、少なくとも9個の連続するアミノ酸を有する当該配列は、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。さらにより好ましくは、当該免疫原性組成物又はワクチン組成物は、配列番号:1、配列番号:3又は配列番号:7を含む。さらにより好ましくは、当該免疫原性組成物又はワクチン組成物の抗原性構成成分は、配列番号:1〜7及びそれらの組み合わせのいずれか1つを基本的に含む。さらにより好ましくは、必須の連続するアミノ酸を含む当該アミノ酸配列は、長さで9個までのアミノ酸であり、より好ましくは、長さで14個までのアミノ酸であり、さらにより好ましくは、長さで23個までのアミノ酸であり、さらにより好ましくは、長さで40個までのアミノ酸であり、さらにより好ましくは、少なくとも長さで70個までのアミノ酸であり、さらにより好ましくは、長さで100個までのアミノ酸であり、さらにより好ましくは、長さで200個までのアミノ酸である。好ましい形態において、本発明の免疫原性組成物又はワクチン組成物は、上記で説明されるとおり、獣医学的に許容されるキャリアをさらに含む。
【0022】
本発明の他の側面は、配列番号:1、配列番号:3又は配列番号:7の少なくとも9個の連続するアミノ酸をコードする塩基配列を含む免疫原性組成物又はワクチン組成物を提供する。好ましくは、少なくとも9個の連続するアミノ酸を有する当該配列は、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。さらにより好ましくは、当該免疫原性組成物又はワクチン組成物は、配列番号:1、配列番号:3又は配列番号:7をコードする塩基配列を含む。さらにより好ましくは、当該免疫原性組成物又はワクチン組成物の抗原性構成成分は、配列番号:1〜7及びそれらの組み合わせのいずれか1つをコードする塩基配列を基本的に含む。好ましい形態において、本発明の免疫原性組成物又はワクチン組成物は、上記で説明されるとおり、獣医学的に許容されるキャリアをさらに含む。遺伝暗号の縮重が原因で、核酸の種々のバリエーションが同一のタンパクをコードすることが知られる。アミノ酸及び遺伝暗号のコード化の両方が当業界においてよく知られているので、結果として同一のアミノ酸をもたらす塩基配列における当該バリエーションの全ては、本発明によってカバーされる。
【0023】
本発明の他の側面は、本発明に従うタンパクを利用する診断アッセイを提供する。好ましくは、当該タンパクは、配列番号:1〜7及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。当該タンパクは、ELISAを基盤とする試験で用いることができる。当該タンパクはまた、動物(例えば、ウサギ)へ注射して抗体又は抗原を検出するために有用な抗血清を作成することができる。当該アッセイは、ローソニア感染を確認する又は除外するのに有用である。
【0024】
本発明の他の側面は、本発明の目的のために有用なタンパクを発現するための発現系を提供する。当業者は、当該発現系に精通している。この関連で好ましい発現系は、E. Coliを利用して組み換え型タンパクを発現する又は生成する。好ましくは、当該E. Coliは、上記に記載されるとおりのタンパクをコードするE. Coliの中に挿入される塩基配列を有する。
【0025】
本発明の他の側面において、融合タンパク及びキメラが提供される。好ましくは、存在するタンパク又は発現されるタンパクは、配列番号:1〜7のいずれか1つを含む。
本発明に従うワクチン組成物又は免疫原性組成物は、筋肉内に、鼻腔内に、経口的に、皮内に、気管内に又は膣内に投与されてもよい。好ましくは、当該組成物は、筋肉内に、経口的に又は鼻腔内に投与される。動物の体内において、上記で記載されるとおりの当該組成物を静脈内注射によって又は標的組織中への直接的な注射によって適用することが有利になり得る。全身適用に関しては、静脈内経路、血管内経路、筋肉内経路、鼻腔内経路、動脈内経路、腹腔内経路、経口経路又は髄腔内経路が好ましい。より局所的な適用は、皮下に、皮内に、皮膚内に、心臓内に、局所内に(intralobally)、随内に(intramedullarly)、肺内に(intrapulmonarily)又は処理される組織(結合性組織、骨組織、筋肉組織、神経組織、上皮組織)の中又は近くで直接的にもたらされ得る。当該処理の好ましい持続時間及び有効性に応じて、本発明に従う当該組成物は、1回又は数回投与されてもよく、さらに断続的に投与されてもよく、例えば、数日、数週間又は数ヶ月の間に毎日基盤で投与されてもよく、さらに種々の投与量で投与されてもよい。
【0026】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
以下の実施例は、本発明に従う好ましい材料及び方法を説明する。しかしながら、これらの実施例が例証のみを目的として提供され、その中のいずれも本発明の全体の範囲を限定するものとみなされるべきではないことが理解されるべきである。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
当該実施例は、本発明のタンパクの単離及び配列決定を記載する。
陰イオン交換分離
ローソニアイントラセルラリス(“ローソニア”)からタンパクを分離するために、ローソニアを初めに、McCoy細胞を用いて1Lの容積を有する容器中で標準的な条件下で増殖させた。当該細胞外ローソニア細胞を、初めに、McCoy細胞及び他の細胞片を除去するために5ミクロンのフィルターを通して当該培養物を濾過することによって回収した。次に、当該細菌をペレットにするのに十分な遠心分離を行った。上清を捨て、当該ペレットを次に、PBSで洗浄して残りの培地成分を除去した。洗浄した後、当該ペレットは、主にローソニア細胞を含んでいた。細胞の当該最終調製物を次に、50 mM Trisバッファー(pH 8.0)、5mM 2−メルカプトエタノール(“2−ME”)及び 8M 尿素バッファーの2mL溶液中に溶解した。約30分間の抽出後、当該混合物を、尿素不溶性物質を除去するために、20,000×gで10分間遠心分離した。結果として得られた尿素可溶性物質を次に、1mL のQセファロース陰イオン交換カラム上に充填し、20カラム容積を超える0M 〜 0.6Mのグラジエントで分離した。次に、1mLのフラクションを収集し、ピークフラクションを標準的なSDS-PAGE法(MOPSバッファー中の 4 % 〜 12 % Bis/Tris)に従って2次元で分離した。結果として生じたゲルは、図1として見ることができる。
【0028】
回復期ブタ血清を用いるフラクションのウェスタンブロット
SDS-PAGEの後に、当該タンパクを次にPVDF膜へ転写し、ブタ抗ローソニア回復期血清を用いてブロットした。当該血清は、2 % ブロッキング試薬(粉ミルク)を含有するTTBSバッファーで 1:100 に希釈した。当該膜を、Novexブロットモジュール(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いて1時間を超えて30Vの一定電圧で維持した。次に、第2ブロットを、1:50 に希釈したVPM53 Mabで行った。次に、当該膜をTTBSで3回洗浄した。各々の洗浄を、2分間続けた。当該膜を次に、2次抗体と共に少なくとも1時間インキュベートした。当該2次抗体は、TTBS+2% 粉ミルクで 1:1000 に希釈したヤギ抗ブタHRP(goat anti-swine-HRP)(KPL、Gaithersburg、MD)であった。当該膜を次に、TTBSで2分間2回洗浄し、次に、PBSで2分間1回洗浄した。当該タンパクの検出を、OPTI-4CN基質(Bio-Rad、Hercules、CA)で達成し、約30分間現像し、次に、水ですすいで停止させた。当該ブロットの結果は、図2及び図3で見ることができる。明らかにされた当該タンパクは、当該回復期血清によって検出された 52 kDa のタンパクである。
【0029】
N末端配列決定のためのタンパクの単離
上述のタンパクを含むフラクションを次に、TCA/アセトン沈降によって濃縮し、次に、10 mM 2-MEを含有する1×SDS-PAGEバッファー中に懸濁させた。当該タンパクを次に、標準的なSDS-PAGE法(MOPSバッファー中の 4 % 〜 12 % Bis/Tris)を用いて分離した。当該タンパクを次に、ゲルからPVDF膜へ転写した。当該膜を、Novexブロットモジュールを用いて少なくとも1時間、30Vの一定電圧で維持し、その後、完全に乾燥し、水性のクーマシーブルー染色液(Invitrogen、Carlsbad、CA)で染色した。ウェスタンブロットによって検出されたものに相当する約 52 kDa のタンパクを次に、無菌のカミソリの刃を用いて当該ブロット物から切り取った。当該切り取ったタンパクを次に、N末端配列決定のためにアイオワ州立大学のProtein Facilityへ送った。結果として得られた配列:IDFKAKGVWDFNFE(配列番号:1)は、指定された配列番号:1である。
【0030】
(考察)
当該N末端配列を利用して、相同配列のために種々のデータベースを検索した。トップヒットタンパクは、ローソニアの近縁種であるデスルフォビブリオspp.(Desulfovibrio spp.)のものであった。当該タンパクはシグナル配列及び外膜タンパクの特徴を有しており、それによって当該タンパクをブタでの免疫応答を誘発するために使用可能な免疫原性組成物又はワクチンへ組み入れるための優れた候補物にならしめる。当該免疫応答は、ローソニア感染に対する防御免疫の地位を提供する。
【0031】
(実施例2)
当該実施例は、本発明の3つの他のタンパクの単離及び配列決定を記載する。細胞外ローソニア細胞を、5μm のフィルターを通して当該培養物を濾過し、当該細菌をペレットにするのに十分な条件下で遠心分離することによって調製した。50 mM リン酸ナトリウム、0.5 M NaCl及び5mM 2−MEの 2.5 mL からなるバッファーA(pH 7.4)中に懸濁した。当該細胞を超音波処理により破壊した後、3つの凍結/解凍の3サイクルにさらし、その各々は0.5秒間の負荷サイクル(duty cycles)を伴う1分間の複数パルスを含む10分間の総時間であった。当該超音波処理ステップをもう一度5分間繰り返し、結果として生じた混合物(全細胞可溶化液)を凍結して、使用するために移動するまで -85 ℃ で保管した。当該全細胞可溶化液から当該タンパクをフラクション化するために、当該可溶化液を解凍し、次に、2つのeppeチューブへ移し、4℃において、20,000×gで5分間遠心分離した。これにより第1の上清及び第1のペレットを調製した。当該第1の上清を、4℃において、100,000×gで1.5時間遠心分離して第2の上清及び第2のペレットを調製した。当該第2の上清を図4において上清(サイトゾル)1とラベルし、当該ペレットを図4においてペレット2とラベルした。解凍した全細胞可溶化液の初めの遠心分離からの当該第1のペレットを、バッファーA+1 % オクチルグルコシドで抽出した。これを、4℃において、20,000×gで5分間遠心分離して第3のペレット及び上清を調製した。当該第3の上清を次に、第1の上清と同様に遠心分離して、図4において上清(オクチル可溶性)3とラベルした第4の上清調製物及び図4においてペレット4とラベルした第4のペレットを調製した。当該第3のペレットを再び、今回は1% サルコシルを含有するバッファーAで抽出した後、4℃において、20,000×gで5分間遠心分離した。これにより、第5のペレット及び第5の上清を調製した。当該第5のペレットを、図4においてペレット5とラベルした。当該第5の上清を、前の上清と同じように遠心分離して、図4において上清(サルコシル可溶性)6とラベルした第6の上清及び図4においてペレット7とラベルした第6のペレットを調製した。当該実施例で得られた各々のサンプルを次にクーマシーブルー染色し、その結果を図5に示した。この図において、レーン3〜9は、図4に示されるとおりのフラクション化されたタンパク1〜7に対応する。フラクション化されたタンパク3、タンパク5及びタンパク6(上清3、ペレット5及び上清6)を次に、回復期ブタ血清を用いてウェスタンブロット解析した。3、5及び6とラベルした当該タンパクを、ゲルからPVDF膜へ転写し、これを次に、Novexブロットモジュールを用いて少なくとも1時間、30Vの一定電圧にさらした。これを、約 50 mL のTTBS+2% 粉ミルク(w/v)で少なくとも1時間ブロックした。当該TTBSは、200 mL のpH8の1M Tris と 299.2 g のNaClの濾過滅菌した混合物であってpHをHClで7.4まで調節し1Lになるまで調節した混合物を含む 1L の10×TBS溶液へ 0.05 % の新たに調製したTween20を加えることによって調製した。当該膜を次に、TTBS+2% 粉ミルクで 1:100 に希釈した1次抗体(ブタ抗ローソニアイントラセルラリス)と共に、少なくとも1時間インキュベートした。これを次に、TTBSで1回につき2分間で3回洗浄した。当該膜を次に、TTBS+2% 粉ミルクで 1:1000 に希釈した2次抗体(ヤギ抗ブタHRP(goat anti-swine-HRP)、KPL、lot#XD047)と共に、少なくとも1時間インキュベートした。これを次に、TTBSで1回につき2分間で2回洗浄した後、10×PBSで2分間で1回洗浄した。1L の10×PBS溶液は、0.96 g の無水NaH2PO4(一塩基性)、13.1 g の無水Na2HPO4(二塩基性)、87.7 g のNaClを加え、それらの全てを水に溶解して、pHを7.4まで調節し、1Lになるまで調節した後、フィルター滅菌することによって調製した。最後に、10 mL のOpti-4 CN lot#99051を基質として加え、30分間まで現像した後、水ですすいで停止させた。
【0032】
図6は、ローソニアタンパクフラクション3、5及び6のそれぞれのウェスタンブロットの結果を提示する。各々のウェスタンブロットは、4% 〜 12 % のBis-Tris/MOPSゲルで行った。サンプル調製のために、20 μL の各々のフラクションを、5μL の4×LDS-PAGEバッファーと混合した。レーン1〜6は、その後に抱合体(1:1000)が続く完全なネガティブコントロール血清(1:100)を含んでいた。レーン7〜11は、その後に抱合体(1:1000)が続く抗ローソニアイントラセルラリス血清(1:100)を含んでいた。レーン1は 10 kDa マーカー(5μL)を含み、レーン2は着色マーカー(5μL)を含み、レーン3はタンパクフラクション6(上清6)を含み、レーン4はタンパクフラクション5(ペレット5)を含み、レーン5はタンパクフラクション3(上清3)を含み、レーン6は空であり、レーン7は 10 kDa マーカー(5μL)を含み、レーン8は着色マーカー(5μL)を含み、レーン9はタンパクフラクション6(上清6)を含み、レーン10はタンパクフラクション5(ペレット5)を含み、さらにレーン11はタンパクフラクション3(上清3)を含んでいた。フラクション3及びフラクション6の再現物を、4% 〜 12 % のNuPAGEゲルにおいてMOPSバッファーで10回ランさせて、PVDF膜へ転写した。これらの結果を、図7及び図8に示す。図7では、抗ローソニアイントラセルラリス血清(1:50)の後に抱合体(1:1000)を続けさせ、レーン3〜9は図4のフラクション1〜7に対応していた。クーマシー染色タンパクフラクションを図8に提供し、その中のレーン3〜9は図4のフラクション1〜7に対応する。
【0033】
当該フラクション化法は結果として、各々のタンパクフラクションに関してかなり特徴的なプロファイルをもたらした。図6において、LI1及びLI2は、上清6由来であった。これらのタンパクフラクションは、オクチルグルコシド不溶性かつサルコシル可溶性であり、細胞壁フラクション由来であると思われる。LI3及びLI4は、ペレット5由来であった。これらのタンパクフラクションは、オクチル不溶性かつサルコシル不溶性であり、膜タンパクであると思われる。LI5は、上清3由来であり、オクチル可溶性であった。当該タンパクフラクションは、細胞壁由来であると思われる。
【0034】
当該フラクション化したタンパクのうち、LI1及びLI6を、図6及び図7の膜から切り取り、それらのN末端を配列決定した。上清3からのLI6由来のN末端配列を配列番号:3と表し、上清6からのLI1由来のN末端配列を配列番号:7と表す。
【0035】
(実施例3)
当該実施例は、免疫学的に関連性がありローソニアイントラセルラリスに対する免疫応答を誘発するために用いることのできる配列番号:1及び配列番号:3のサブシーケンスを提供し、それによって、ローソニアイントラセルラリス感染の影響を受けやすい動物に、ローソニアイントラセルラリスによって起きる感染と関連する臨床症状の軽減だけでなく、防御免疫をも提供する。
【0036】
配列番号:1及び配列番号:3を、それらの教示及び内容が参照により本明細書に取り込まれる Vaccine, 2004 Aug 13; 22 (23-24): 3195-204, Prediction of CTL Epitopes using QM, SVM, and ANN Techniques, Bhasin M, and Raghava GP, Institute of Microbial Technology, Sector 39A, Chandigarh, India に記載されるとおりのSVMを基盤とする及びANNを基盤とするCTLエピトープ予測ツールを用いて見込まれるエピトープに関して解析した。配列番号:1は、1つのエピトープを含んでおり、このエピトープは、0.82/-0.063950275 のスコア(ANN/SVM)を有していた。当該配列を、本明細書において配列番号:2として提供する。配列番号:3は、4つのエピトープ、つまり、0.91/0.68874217 のスコアを有する配列番号:4、0.73/0.55686949 のスコアを有する配列番号:5、0.83/0.17021055 のスコアを有する配列番号:6及び配列番号:2を含んでいた。
【0037】
(実施例4)
当該実施例は、ワクチンの配合物を記載する。概して、配列番号:1〜7のいずれか1つ又はこれらの組み合わせがワクチンの抗原性部分としての使用のために提供される。アジュバント、希釈剤などのような獣医学的に許容されるキャリアを当該ワクチンに加えることができ、さらに当該ワクチンをいずれの従来様式で投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、AIEXフラクションのクーマシーブルー染色ゲルの写真である。
【図2】図2は、抗LI血清の次に抱合体が続くAIEXフラクションのウェスタンブロットの写真である。
【図3】図3は、VPM53 Mabを用いたウェスタンブロットである。
【図4】図4は、ローソニアタンパクのフラクション化を説明するフローチャートである。
【図5】図5は、図4からのフラクション化したタンパクのクーマシーブルー染色ゲルの写真である。
【図6】図6は、各々のローソニアタンパクフラクションのウェスタンブロットの写真である。
【図7】図7は、2つの選択されたローソニアタンパクのNuPAGEゲル上のウェスタンブロットである。
【図8】図8は、NuPAGEゲル上の図4からのクーマシー染色されたタンパクフラクションの写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
200個未満のアミノ酸を有し、その中に配列番号:1、配列番号:3及び配列番号:7からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも9個の連続するアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む組成物。
【請求項2】
前記アミノ酸配列が70個未満のアミノ酸を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記少なくとも9個の連続するアミノ酸が配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
獣医学的に許容されるキャリアをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が筋肉内投与、経口投与又は経鼻投与に関して許容される配合物中に存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物がローソニアイントラセルラリス感染に対する防御免疫を与えるために又はローソニアイントラセルラリス感染に関連する臨床症状の重症度を軽減するために有効である、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
200個未満のアミノ酸を有し、その中に配列番号:1、配列番号:3及び配列番号:7からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも9個の連続するアミノ酸を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列。
【請求項8】
前記塩基配列が70個未満のアミノ酸を有するアミノ酸配列をコードする、請求項7記載の塩基配列。
【請求項9】
前記少なくとも9個の連続するアミノ酸が配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項7記載の塩基配列。
【請求項10】
獣医学的に許容されるキャリアをさらに含む、請求項7記載の塩基配列。
【請求項11】
前記塩基配列が筋肉内投与、経口投与又は経鼻投与に関して許容される配合物中に存在する、請求項7記載の塩基配列。
【請求項12】
前記配列が、ローソニアイントラセルラリス感染の影響を受けやすい動物に投与される際に、ローソニアイントラセルラリス感染に対する防御免疫を与えるために又はローソニアイントラセルラリス感染に関連する臨床症状の重症度を軽減するために有効である、請求項7記載の塩基配列。
【請求項13】
その中に配列番号:1、配列番号:3及び配列番号:7からなる群より選択されるアミノ酸配列の少なくとも9個の連続するアミノ酸を有する融合タンパク。
【請求項14】
前記アミノ酸配列が70個未満のアミノ酸を有する、請求項13記載の融合タンパク。
【請求項15】
前記少なくとも9個の連続するアミノ酸が配列番号:2、配列番号:4、配列番号:5、配列番号:6及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項13記載の融合タンパク。
【請求項16】
獣医学的に許容されるキャリアをさらに含む、請求項13記載の融合タンパク。
【請求項17】
前記融合タンパクが筋肉内投与、経口投与又は経鼻投与に関して許容される配合物中に存在する、請求項13記載の融合タンパク。
【請求項18】
前記融合タンパクが、ローソニアイントラセルラリス感染の影響を受けやすい動物に投与される際に、ローソニアイントラセルラリス感染に対する防御免疫を与えるために又はローソニアイントラセルラリス感染に関連する臨床症状の重症度を軽減するために有効である、請求項13記載の融合タンパク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−538502(P2008−538502A)
【公表日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507830(P2008−507830)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/014705
【国際公開番号】WO2006/113782
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(503345374)ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】