説明

サポータの製造方法及びサポータ

【課題】関節の屈伸の補助、あるいはサポータのずれ防止を目的としてサポータに付加される支持体は、支持体をサポータに直接縫着したり、サポータ内側に伸縮性生地を縫着して支持体を挿入する収納箇所を形成しているが、支持体の縫着、被覆作業は煩雑且つ、面倒である。一方、カットボス手法がサポータ支持体収納ポケット作成のために使用されることはなかった。丸編み機を使用して、弾性支持体を備えた筒状サポータを簡易かつ迅速に製作する。
【解決手段】筒状サポータ1の製作工程にカットボス手法を採用して、サポータにライン柄7,8を形成し、サポータに渡り糸が連なったポケット部9を形成する。すなわち、サポータ本体3の編成と同時に支持体収納ポケットを編成し、当該収納ポケットに、弾性支持体11を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝や肘などの屈曲等に支障をきたす患者が使用するサポータに関する。より詳しくは、弾性支持部材を備えた関節安定用サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
サポーターの長手方向に屈曲可能な棒体を取り付けた、略筒状に編成された特許文献1記載のサポータがあるが、当該棒体は、サポーターに直接縫い付けられたり、接着されたりしている。
【0003】
また、屈伸の際の支持を強化するために取り付ける、弾性骨部材を収容固定するための袋部が形成されている構成のサポータがある(特許文献2)。
【0004】
さらに、緊縮力に変化をつけてテーピング機能を持たせるためにカットボス手法が採用されている運動用スパッツの発明がある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−170204号公報
【特許文献2】特開2000−197654号公報
【特許文献3】特開2001-214303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
丸編み機によって編成される、被覆弾性糸を使用した筒状サポータは、肌に柔らかくフィットし装着感に優れているが、反面、関節へ適用すると屈曲動作によって徐々に関節中心部側へのずれやサポータの撚れを生じる。ずれや撚れが生じて適正なサポータの装着が維持できなければサポータ本来の効果は発揮することができない。
【0007】
そこで、ずれ等を防止するためにサポータの両側面にスプリングステー、サイドボーン等と称される弾性を有するサポータ支持体を配設することが多い。これらのサポータ支持体にはその弾性復元力によるサポータのずれ防止だけでなく、関節の屈曲を補助する補助部材としての機能も期待される。
【0008】
関節の屈伸の補助、あるいはサポータのずれ防止を目的としてサポータに付加される支持体は、支持体をサポータに直接縫着、接着、貼付するほか(特許文献1)、支持体を収容した袋を別途、サポータに縫着したり(特許文献2)、また、サポータ内側に伸縮性生地を縫い着けて支持体を挿入する収納箇所を形成している。
【0009】
このように支持体の固定態様は様々であるが、縫着、被覆作業は煩雑且つ、面倒である。また、作業工程が増えるのでコストアップにもつながる。
【0010】
支持体は、サポータのずれ防止等のため必要不可欠ではあるが一方で、支持体取り付け工程の簡素化、迅速化を図る必要がある。
【0011】
ところで、カットボス手法は、靴下等の表側に柄を形成し、また、サポータ等にテーピング機能を付与するために利用されているが、サポータ支持体収納ポケット作成のために使用されることはなかった。
【0012】
そこで、本発明では丸編み機を使用して、弾性支持体を備えた筒状サポータを簡易かつ迅速に製作することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明では筒状サポータの製作工程にカットボス手法を採用して丸編み機でサポータ本体の編成と同時に支持体収納ポケットを編成し、当該収納ポケットに、弾性支持体を挿入するのである。
【発明の効果】
【0014】
弾性支持体収納ポケットはサポータと同時に一体編成されるため、製造工程を減らすことができる。
【0015】
すなわち、弾性支持体を備えたサポータを短時間に効率よく製造できるため、製造コストを低減できる。
【0016】
関節サポータに弾性支持体を備えたため、関節部等の動きを自由に保持しながら関節側面を確実に保護すると共に屈伸の際の支持を強化し、さらにサポータ本体のずれや撚れを抑制する。
【0017】
筒状サポータでありながらずれが生じないため、装着感に優れ長時間の着用が可能となる。すなわち、適正な着用によるサポータの効果を確実に奏することができるのである。
【0018】
弾性支持体収納ポケットがサポータと一体編成されるため、着用者の肌に直接密着するサポータ内側に形成した場合でも異物感を生じず優れた装着性を有する。
【0019】
弾性支持体は、収納袋に挿入されたうえで収納ポケットに収納されさらに、収納袋の両端部のみをサポータに縫着するため弾性支持体は膝の屈伸等に追随してある程度自由に動きながらもサポータに確実に装着することができ、弾性支持体自体が大きくずれることはない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明にかかるサポータの正面図。
【図2】本願発明にかかるサポータの内側と支持体収納ポケットに支持体を収納する様子を示す説明図。
【図3】サポータ内側の一部拡大説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明にかかるサポータの最良の実施形態について図面を参照しながら詳説する。
【0022】
サポータは本体の内径寸法を適宜変更することで、手首、足首、肘等の関節部位に適用することができるが、ここでは膝関節の保護、保温を目的として膝に着用される膝用サポータの実施例を掲げている。
【0023】
図1には膝用サポータ1の全体像が示されている。
【0024】
サポータ1は丸編み機で一つの筒状体として一体に編成され、膝部を覆う幅及び長さを有し、長手方向の上端から下端に向かってサポータ本体1の筒状の径は次第に細くなっている。さらに、膝装着状態における膝の内外側面に相当する位置に配設される弾性支持部
材12を有する構造である。
【0025】
サポータ本体部3は被覆弾性糸と、弾性を有しない通常の編み糸とを交編みした丸編地からなり、サポータの上下両端部2、4は靴下のダブルウエルトと同様に平編み組織の袋状に形成する。このように二重構造の縁部として形成されるため、サポータの上下両端部2、4は伸縮性に優れ、膝の上下に程よくフィットするのである。
【0026】
また、本願発明では丸編み機でサポータ1を編成する際に、サポータの長尺縦方向に二本のライン7、8から成る柄を形成するようにカットボス編成手法を取り入れるのである。
【0027】
サポータ本体3とライン7、8の編成に使用される糸は同色であってもかまわないし、また、糸色を変えて編成すると着用時にサポータの装着方向が一目でわかって便利である。
【0028】
サポータ内側の拡大図2を参照すると、サポータ内側にはサポータの上端部2と本体部3との境目5の下に、ボス糸の始端9aと終端9bがコースごとに発生している。
【0029】
これがウェール方向に、サポータ本体部3とほぼ同一寸法つながってライン状のふくらみ9となる。カットボスの両端の糸端はシリンダに同期して回転するサーキュラカッタによって切断され、エアシュータから吸収される。
【0030】
カットボス編成によって生じた渡り糸によってサポータの縦方向に形成されたふくらみが弾性支持体を収納するポケット9となるのである。
【0031】
この弾性支持体収納ポケットは、サポータ1の内側に形成しているが場合によってはサポータ外面側に形成することも可能である。
【0032】
使用する弾性支持体は可撓性及び復元性を有し、サポータの本体部3の筒軸方向略全体とほぼ同一の寸法を有する。
【0033】
すなわち、当該弾性支持体は、前後左右に容易に屈曲可能でありながら縦方向には一定形状を保つため、膝の屈曲動作を妨げることがない一方で、サポータのずれや撚れを抑制する機能、また関節を保持する補強機能を併有する。
【0034】
弾性支持体としては、扁平に押しつぶしたコイルばねや板状のアルミ製支柱ステー、可撓自在な合成樹脂製棒状芯体が適している。本願の実施形態では、コイルばね状のコイル材を帯状に押し潰して変形させ、その両端に端金具12−12を加締め固定したばね体を使用している。
【0035】
弾性支持体を扁平形状、板状、楕円棒状に形成するのは、装着部位に異物感を生じさせないためである。
【0036】
次に、図3に示すように長尺の細筒状に形成した布製の収納袋10に弾性支持体11を収納後、支持体収納ポケット9を形成する渡り糸の下に収納袋を差し込み装填し、最後に収納袋10の上下端10a、10bをサポータ本体部3とサポータの上下端との境目、5、6付近に縫着固定するのである。
【0037】
弾性支持部材11は、収納袋10に収納されたうえ、サポータ1と一体形成された弾性支持部材収納ポケット9に挿入されるため、弾性支持部材が確実にサポータに装着される

【0038】
収納ポケット9がサポータ内面に一体編成されるため、着用者の肌に直接触れる箇所でありながら、異物感がなく装着性にすぐれる。
【0039】
この弾性支持部材収納ポケット9はカットボス編成により形成されるため、縦方向のライン数を変更することで複数形成することもでき、収納ポケットの幅や長さ及び位置の変更も自在である。またサポータ本体に対して角度をつけて形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は肘、膝、足首、手首等の関節に適用するサポータに応用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1、サポータ
2、上端部
3、サポータ本体部
4、下端部
5、上端部とサポータ本体部の境目
6、下端部とサポータ本体部の境目
7、8、ライン柄
9、支持体収納ポケット
10、支持体収納袋
11、弾性支持体
12、端金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円周方向及び長手方向に伸縮可能なサポータ本体を略筒状に編成するときカットボス手法によりサポータ本体に弾性支持体収納ポケットを編成するサポータの編成方法。
【請求項2】
略筒状に編成され、円周方向及び長手方向に伸縮可能なサポータ本体にカットボス手法を採用してサポータ本体の編成と同時に弾性支持体収納ポケットを編成し、
弾性支持体収納ポケットに、弾性支持体を装填したことを特徴とする関節用サポータ。
【請求項3】
細筒状袋体に弾性支持体を挿入後、袋体の両端部をサポータへ取り付けた請求項2記載の関節用サポータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−212372(P2011−212372A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85229(P2010−85229)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(593099768)株式会社ハヤシ・ニット (5)
【Fターム(参考)】