説明

サルメテロール及びシクレソニドの組合せ物

本発明は、サルメテロールとシクレソニドを含有する医薬品組成物並びに、医学における、特に呼吸器系疾病の予防及び治療におけるかかる医薬品組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、サルメテロール及びシクレソニドの組合せ物を含有する医薬品組成物、並びにかかる医薬品組成物の医学における、特に呼吸器疾病の予防及び治療における使用に関する。
【0002】
背景技術
4−ヒドロキシ−a−[[[6−(4−フェニルブトキシ)ヘキシル]アミノ]−メチル]−1,3−ベンゼンジメタノールという化合物であるサルメテロールはGB2140800号に開示されている。サルメテロールは、β−アドレナリン受容体に刺激活性を有することが知られており、そしてβ2−アドレナリン受容体で選択的な刺激作用を有する化合物による回復が可能な状態、特に可逆的気道閉塞に関連する疾病、例えば喘息及び慢性気管支炎の治療又は予防において使用できる。
【0003】
GB247680号は、プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン−16−17−アセタール−21エステル及び炎症状態の治療におけるそれらの使用を開示している。該化合物は一般構造:
【0004】
【化1】

[式中、R1は2−プロピル、1−ブチル、2−ブチル、シクロヘキシル又はフェニルであり、かつR2はアセチル又はイソブタノイルである]を有する。シクレソニドは、式Iで示され、その式中で、R1がシクロヘキシルであり、かつR2がイソブタノイルである化合物についてのINNであり、その化学名は[11β,16α(R)]−16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンである。
【0005】
この化合物は抗喘息薬として評価され、そして薬動力学的研究は、その化合物が吸入製剤に有用であることを示している。シクレソニドは経口投与後に控えめに吸収されるにすぎず、低い全身活性を有する。肺中の薬剤濃度が高く、肝臓のオキシダーゼによる代謝が非常に高いので、その薬剤は低い血漿内半減期を示す。シクレソニドの全身活性はブデゾニドのそれより3倍低いが、抗炎症活性はより高い。
【0006】
DE19541689号は、気道の疾患の治療のための、シクレソニドとβ2−交感神経興奮薬との組合せの使用に関する。EP0416951号B1はサルメテロールとフルチカゾンの組合せ物に関する。つまり、本発明は、今までに知られた組合せ物よりも明らかに高い気管支拡張作用の効果及び期間を有し、そして一日二回(一日二回−b.i.d.)の用法を確立でき、結果として、例えば喘息、特に夜間喘息に事実上有用な新規の組合せ療法の概念を基礎とするものである。
【0007】
WO03/013547号は、サルメテロール、ブデゾニド及び吸入用担体を含有する組成物に関するものである。
【0008】
発明の要旨
驚くべきことに、シクレソニドとサルメテロールとを組み合わせて投与することによって、予想されない大きな治療作用、特に相乗的治療作用を炎症性気道疾病又は閉塞性気道疾病の治療において得ることができると判明した。特に、シクレソニドとサルメテロールを含有する組成物はシクレソニド及びサルメテロールの単独によって誘発されるものより極めて高い抗炎症活性を誘発し、かつサルメテロールと混合して使用することで所定の抗炎症効果に必要なシクレソニドの量を減らすことができ、それにより閉塞性気道疾病の炎症の治療に付随するステロイドに繰り返し晒すことによる不所望な副作用の危険性が減ることが判明した。更に、本発明の組成物を使用すると、作用の迅速な開始及び作用の長期持続を有する医薬品組成物を製造できる。特に、本発明による組合せ療法は、一日二回、特に一日一回の用法を確立でき、結果として、例えば閉塞性気道疾病又は炎症性気道疾病の治療において事実上有用である(例えばより高い患者コンプライアンス、殆ど副作用なし)。
【0009】
従って、一態様では、本発明は、シクレソニド、製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又はその生理学的に機能的な誘導体及びサルメテロール、製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又はその生理学的に機能的な誘導体、及び製剤学的に認容性の担体及び/又は1種以上の賦形剤、及び場合により1種以上の他の治療成分を含有する医薬品組成物に関する。
【0010】
シクレソニド(以下に有効成分とも呼ぶ)は化学名[11β,16α(R)]−16,17−[(シクロヘキシルメチレン)ビス(オキシ)]−11−ヒドロキシ−21−(2−メチル−1−オキソプロポキシ)プレグナ−1,4−ジエン3,20−ジオンを有する化合物についてのINNである。シクレソニド及びその製造はDE4129535号に開示されている。本願で使用されるシクレソニドには、シクレソニドの製剤学的に認容性の塩、シクレソニドの溶媒和物、シクレソニドの生理学的に機能的な誘導体又はそれらの溶媒和物が含まれる。“生理学的に機能的な誘導体”という用語は、シクレソニドと同じ生理学的機能を有するシクレソニドの化学的誘導体を意味し、例えば生体内でシクレソニドに変換可能であるか、又はシクレソニドの活性代謝産物である。本発明の関連で挙げることができるシクレソニドの生理学的に機能的な誘導体は、例えば化学名16α,17−(22R,S)−シクロヘキシルメチレンジオキシ−11β,21−ジヒドロキシプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンを有するシクレソニドの21−ヒドロキシ誘導体、特に16α,17−(22R)−シクロヘキシルメチレンジオキシ−11β,21−ジヒドロキシプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンである。この化合物及びその製造はWO9422899号に開示されている。
【0011】
サルメテロール(以下に有効成分とも呼ぶ)は、4−ヒドロキシ−a−[[[6−(4−フェニルブトキシ)ヘキシル]アミノ]−メチル]−1,3−ベンゼンジメタノールという化合物であり、GB2140800号に開示されている。本願で使用されるサルメテロールには、サルメテロールの製剤学的に認容性の塩、サルメテロールの溶媒和物、サルメテロールの生理学的に機能的な誘導体又はそれらの溶媒和物をも含む。当業者に十分知られるように、サルメテロールは不斉中心を含む。本発明は、サルメテロールの(S)エナンチオマーと(R)エナンチオマーの両方を実質的に純粋な形又は任意の割合で混合された形で含む。サルメテロールのエナンチオマーは従来から、例えばEP0422889号及びWO99/13867号に記載されている。この関連で特に有利なものは、光学的に純粋な(S)−エナンチオマー、すなわち(S)−サルメテロールである。用語“生理学的に機能的な誘導体”とは、遊離化合物と同じ生理学的機能を有するサルメテロールの化学誘導体を意味し、例えば生体内でサルメテロールに変換可能である。本発明によれば、生理学的に機能的な誘導体の例にはエステルが含まれる。本発明による好適な塩は、有機酸と無機酸の両方と形成される塩を含む。製剤学的に認容性の酸付加塩は、これらに制限されないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、乳酸、ピルビン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、コハク酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、オキサロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、イセチオン酸及びナフタレンカルボン酸、例えば1−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸(ヒドロキシナフトエ酸塩;INNではキシナホ酸塩)から形成される塩を含む。
【0012】
組合せ物の化合物は、同時に、同じ医薬品製剤中でも(以下に、固定組合せ物と呼ぶ)、又は異なる医薬品製剤中でも(以下に、自由組合せ物と呼ぶ)、又は任意の順序で連続的にでも投与してよいことが分かる。連続投与の場合には、後続の化合物の遅れは、例えば組合せ物の有用な治療効果を逃さない程度にするべきである。
【0013】
前記のように、シクレソニドとサルメテロールの両者、及びそれらの製剤学的に認容性の塩、溶媒和物及び生理学的に機能的な誘導体は呼吸器疾病の治療での使用について記載されている。従って、シクレソニド及びサルメテロール、それらの製剤学的に認容性の塩、溶媒和物及び生理学的に機能的な誘導体は、選択的なβ2−アドレナリン受容体アゴニスト及び/又はグルココルチコイドが指示される臨床的状態の予防及び治療において使用される。かかる状態は、可逆的な気道閉塞に関連する疾病、例えば喘息、夜間喘息、運動に誘発される喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(例えば慢性でゼーゼーと音が出る気管支炎、肺気腫)、気道感染症及び上部気道疾病(例えば鼻炎、例えばアレルギー性鼻炎及び季節性鼻炎)を含む。
【0014】
従って、本発明は、哺乳動物、例えばヒトにおける臨床的状態であって、そのために選択的なβ2−アドレナリン受容体アゴニスト及び/又はグルココルチコステロイドが指示される状態の予防又は治療のための方法において、サルメテロール又はその製剤学的に認容性の塩、溶媒和物、又は生理学的に機能的な誘導体及びシクレソニド又はその製剤学的に認容性の塩、溶媒和物、又は生理学的に機能的な誘導体及び製剤学的に認容性の担体及び/又は1種以上の賦形剤を含有する医薬品製剤の治療学的有効量を投与することを含む方法を提供する。有利な態様では、かかる方法において、サルメテロールキシナホ酸塩及びシクレソニド、及び製剤学的に認容性の担体及び/又は1種以上の賦形剤を含有する医薬品製剤の治療学的有効量を投与することを含む方法を提供する。特に本発明は、可逆的な気道閉塞に関連する疾病、例えば喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道感染症又は上部気道疾病の予防又は治療のための方法を提供する。
【0015】
治療効果の達成に必要なサルメテロール及びシクレソニド、又はそれらの製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又は生理学的に機能的な誘導体の量は当然のように、特定の化合物、投与経路、治療される被験者、及び治療される特定の疾患又は疾病により変化する。単独療法としては、サルメテロールキシナホ酸塩は、一般に成人にエーロゾル吸入によって50μg又は100μgの用量で一日二回投与される。単独療法としては、シクレソニドは、一般に成人に吸入によって0.05〜1.6mg、有利には0.05〜1mgの日用量で投与され、これは1回の投薬又は複数回の投薬で投与してよい。本発明の関連では、一日二回の用法、特に有利には一日一回の用法を有することが好ましい。
【0016】
適切には、本発明による吸入に適した医薬品製剤は、有効成分を、吸入器から吸入することによって投与する場合に、各動作が治療学的有効量、例えば10μg〜150μg、有利には50μgのサルメテロールの用量及び10μg〜800μg、25μg〜500μg、40μg〜400μg、有利には50μg〜200μg、より有利には50μg〜100μgのシクレソニドの用量を提供する。各動作が一日二回の用法のために治療学的のために有効な用量又は殊に有利には一日一回の用法のために治療学的に有効な用量を提供することが特に好ましい。本発明による医薬品製剤は、更に他の治療剤、例えば抗コリン作動薬、例えばイプトロピウム及びチオトロピウム、それらの製剤学的に認容性の塩又は溶媒和物を含んでよい。挙げられる例は、臭化イプトロピウム及び臭化チオトロピウム及びそれらの溶媒和物である。
【0017】
適切には、本発明による吸入に適した医薬品製剤は、一日二回(一日二回−b.i.d.)の用法、特に一日一回の用法の確立を可能にする治療学的有効量を提供する。
【0018】
該製剤は、経口、非経口(皮下、皮内、筋内、静脈内及び動脈内、鼻内、吸入(例えば、種々の型の加圧式定量エーロゾル、噴霧器又は注入器によって生成できる微粒子ダスト又はミスト)、直腸及び局所(例えば、皮膚、頬、舌下及び眼内の投与)のために適した製剤を含むが、最も好適な経路は、例えば被検者の状態及び疾患に依存しうる。該製剤は、適宜、単位剤形で存在してよく、薬学分野でよく知られた任意の方法によって製造できる。全ての方法は、有効成分を、1種以上の補助成分/賦形剤を構成している担体と組み合わせる工程を含む。一般に該製剤は、有効成分と液状担体又は微細な固体担体又はその両者とを一様にかつ密接に組合せ、次いで必要であれば、該生成物を所望の製剤に成形することによって製造される。吸入用製剤は、有利にはラクトースを含有する粉末組成物と、例えば加圧包装から好適な噴射剤、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン、二酸化炭素又は他の好適なガスを用いて送達される水溶液又は水性懸濁液又はエーロゾルとして配合されてよい噴霧組成物とを含む。慣用のクロロフルオロカーボンと比較して最小限のオゾン減少効果を有すると考えられる噴射剤の種類はヒドロフルオロカーボンを含み、かつかかる噴射剤系を用いた幾つかの医学的エーロゾル製剤は、例えばEP0372777号、WO91/04011号、WO91/11173号、WO91/11495号、WO91/14422号、WO93/11743号及びEP−0553298号に開示されている。これらの用途は、全て、医薬品の投与のために加圧式エーロゾルを製造することを関連しており、そして新規の噴射剤のクラスの使用と関連する問題、特に製造される医薬品製剤に付随する安定性の問題を克服すると考えられる。その用途には、例えば1種以上の賦形剤、例えば極性の補助溶剤又は湿潤剤(例えばエタノールのようなアルコール)、アルカン、ジメチルエーテル、界面活性剤(例えば、フッ素化及び非フッ素化の界面活性剤、カルボン酸、例えばオレイン酸、ポリエトキシレートなど)又は増量剤、例えば糖類(例えばWO02/30394号を参照)及び治療学的にかつ予防学的に有効でない濃度で含まれるビヒクル、例えばクロモグリク酸及び/又はネドクロミル(WO00/07567号を参照)の添加が推奨される。懸濁液エーロゾルに関しては、有効成分を微細化して、エーロゾル製剤の投与後に肺中に有効成分の事実上全てが吸入されるべきであり、従って、有効成分は100ミクロン未満、所望には20ミクロン未満、有利には1〜10ミクロンの範囲、例えば1〜5ミクロンの範囲の粒度を有する。
【0019】
しかしながら、エーロゾル吸入に使用するための薬剤を配合するにあたり用いられた種々の試みにも拘わらず、依然として、多くの重大な困難性が存在し、かつ有利な粒度範囲を有する薬剤の正確な用量を確実に送達する物理的かつ化学的に安定なCFC不含の製剤を開発することを試みるにあたってしばしば不確定性に直面する。特に、シクレソニドとサルメテロールとを組み合わせて含有し、化学的かつ物理的に安定で、患者の呼吸器系に送達するのに適したCFC不含の医学的エーロゾル製品が所望されている。
【0020】
WO98/52542号は、治療学的有効量のシクレソニド又は関連化合物及びヒドロフルオロカーボン噴射剤、有利には1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択される噴射剤、及び補助溶剤、有利にはエタノールをシクレソニドを溶解するのに有効な量で含有し、そして場合により界面活性剤を含有する医薬品組成物に関する。
【0021】
一態様では、本発明は、サルメテロールを粒子形で、かつシクレソニドを担体に溶解された形で含有するエーロゾル医薬品組成物に関する。従って、本発明は、サルメテロールの粒子を製剤学的有効量で含有し、かつ製剤学的有効量のシクレソニド及びヒドロフルオロカーボン噴射剤、有利には1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択される噴射剤を含有し、かつ補助溶剤、有利にはエタノールをシクレソニドを溶解させるのに有効な量で含有し、そして場合により界面活性剤を含有するエーロゾル医薬品組成物に関する。
【0022】
シクレソニドは一般に該製剤中に、1〜8mg/ml、有利には1〜5mg/mlの濃度で存在する。かかる製剤は、一般にエタノールをシクレソニドを溶解するのに有効であるが、サルメテロールを溶解するのに有効でない量で含有する。噴射剤には、有利にはヒドロフルオロアルカン、特に噴射剤134a、噴射剤227又は、一般に約50:50(質量/質量)のそれらの混合物が含まれる。噴射剤134aからなる噴射剤がより好ましい。該製剤は、界面活性剤、例えばオレイン酸を含有してよいが、界面活性剤不含であってもよい。該製剤は、有利には他の賦形剤を含まない。該製剤は、一方又は両方の有効成分とエタノールとの薬剤濃縮物を製造し、そしてこの濃縮物を計量容器中で、予冷された噴射剤に添加することによって製造できる。有利には、補助溶剤中のシクレソニドの溶液を計量容器中で、予冷された噴射剤に添加し、引き続きサルメテロールを添加して、懸濁液を形成する。得られた製剤をバイアルに充填する。選択的に、該製剤は、所望量の有効成分をエーロゾルバイアル中に添加し、バイアルの弁を締め、そして予備混合された噴射剤とエタノールとの配合物を弁を介して導入することによって製造できる。そのバイアルを超音波浴中に置いて、シクレソニドの溶解を確実なものとする。
【0023】
本発明のもう一つの実施態様では、サルメテロールを製剤学的有効量で含有し、かつ製剤学的有効量のシクレソニド及びヒドロフルオロカーボン噴射剤、有利には1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択される噴射剤を含有し、かつ補助溶剤、有利にはエタノールをシクレソニド及びサルメテロールを溶解させるのに有効な量で含有し、そして場合により界面活性剤を含有するエーロゾル医薬品組成物が提供される。シクレソニドは一般に該製剤中に、1〜8mg/ml、有利には1〜5mg/mlの濃度で存在する。かかる製剤は、一般に、3〜25質量%、有利には5〜25質量%、より有利には5〜20質量%、最も有利には7〜12質量%のエタノールを含有する。噴射剤には、有利にはヒドロフルオロアルカン、特に噴射剤134a、噴射剤227又は、一般に約50:50(質量/質量)のそれらの混合物が含まれる。噴射剤134aからなる噴射剤がより好ましい。該製剤は、界面活性剤、例えばオレイン酸を含有してよいが、界面活性剤不含であってもよい。該製剤は、有利には他の賦形剤を含まない。
【0024】
該製剤は、両方の有効成分のエタノール中の薬剤濃縮物を製造し、そしてこの濃縮物を計量容器中で、予冷された噴射剤に添加することによって製造できる。得られた製剤をバイアルに充填する。選択的に、該製剤は、所望量の有効成分をエーロゾルバイアル中に添加し、バイアルの弁を締め、そして予備混合された噴射剤とエタノールとの配合物を弁を介して導入することによって製造できる。そのバイアルを超音波浴中に置いて、有効成分の溶解を確実なものとする。
【0025】
もう一つの実施態様では、エーロゾル送達に有利な組成物は、両方の有効成分を粒子形で、かつ1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン又はそれらの混合物を噴射剤として含有する。かかる製剤は、一般に0.01〜5%(全製剤質量に対しての質量/質量)の極性補助溶剤、例えばエタノールを含有する。有利な実施態様では、極性補助溶剤、特にエタノールは含まれないか、又は3%(質量/質量)未満で含まれる。エーロゾル送達のために特に有利な組成物は、粒子状の有効成分、及び1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン又はそれらの混合物を噴射剤として、かつ場合により界面活性剤(有利にはオレイン酸)からなる。
【0026】
該製剤は、所望量の有効成分をエーロゾルバイアル中に添加し、バイアルの弁を締め、そして噴射剤又は場合により噴射剤と場合により補助溶剤と界面活性剤との予備混合された配合物を弁を介して導入することによって製造できる。
【0027】
キャニスターは、一般に、噴射剤の蒸気圧に耐えうる容器、例えばプラスチックボトル又はプラスチック被覆されたガラスボトル、又は有利には金属缶、例えば場合によりアノード被覆、塗料被覆及び/又はプラスチック被覆されたアルミニウム缶を含み、この容器は計量弁で閉じられている。キャニスターを、WO96/32150号に記載されるフルオロカーボンポリマー、例えばポリエーテルスルホン(PES)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のコポリマーで被覆することが好ましいことがある。考慮できる被覆用の別のポリマーはFEP(フッ素化エチレンプロピレン)である。
【0028】
計量弁は、1動作につき定量の製剤量を送達し、ガスケットを装着して、弁を通る噴射剤の漏洩を防ぐように設計される。そのガスケットは、任意の好適なエラストマー材料、例えば低密度ポリエチレン、クロロブチル、ブタジエン−アクリロニトリルの黒ゴムと白ゴム、ブチルゴム及びネオプレンからなってよい。WO92/11190号に記載される熱可塑性エラストマー弁及びWO95/02650号に記載されるEPDMゴムを含有する弁が特に好適である。好適な弁はエーロゾル工業においてよく知られた製造元、例えばValois、フランス(例えばDF10、DF30、DF60)、Bespak pic、英国(例えばBK300、BD356、BK357)及び3M−Neotechnic Ltd、英国(例えばSpraymiser)から商業的に入手できる。弁シール、特にガスケットシール及び計量チャンバ周りのシールは、有利には、特に内容物がエタノールを含む場合に製剤の内容物への抽出に耐性である材料から製造される。
【0029】
弁材料、特に計量チャンバの製造用材料は、有利には、不活性で、特に内容物がエタノールを含む場合に製剤の内容物による分解に耐性な材料から製造される。計量チャンバの製造にあたり使用するのに特に好適な材料には、ポリエステル、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)及びアセタール、特にPBTが含まれる。
【0030】
計量チャンバ及び/又は弁軸の製造用材料は、所望には、フッ素化、部分的にフッ素化させるか、又はフッ素含有物質で含浸して、薬剤の堆積に耐久性を付与してよい。
【0031】
完全に又は実質的に金属成分からなる弁(例えばSpraymiser、3M−Neotechnic社)は本発明による使用のために特に有利である。
【0032】
鼻内スプレーは、水性又は非水性のビヒクルを用いて、増粘剤、緩衝塩又はpH調整用の酸又はアルカリ、等張性調整剤、保存剤又は酸化防止剤を添加するか又は添加せずに配合することができる。粘膜への適用のための好適な水性製剤は、例えばWO01/28562号及びWO01/28563号に開示されている。
【0033】
本発明のもう一つの実施態様では、シクレソニドとサルメテロールとを組み合わせて含有する医薬品製剤は乾燥粉末である、すなわちサルメテロールとシクレソニドは微粉砕されたシクレソニド及びサルメテロールと一緒に、場合により微粉砕された製剤学的に認容性の担体(これは存在することが好ましく、乾燥粉末吸入組成物中の担体として公知の1種以上の材料、例えばサッカライド、例えばモノサッカライド、ジサッカライド、ポリサッカライド及び糖アルコール、例えばアラビノース、グルコース、フルクトース、リボース、マンノース、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、デンプン、デキストラン又はマンニトールであってよい)を含有する乾燥粉末である。特に有利な担体はラクトース、特に一水和物の形のラクトースである。乾燥粉末はゼラチン又はプラスチックのカプセル中、又はブリスター中で、乾燥粉末吸入装置中で使用するために、有利にはシクレソニドとサルメテロールとの混合物と一緒に、各カプセル中の粉末の全質量を5mg〜50mgにする量で担体を含有する剤形であってよい。選択的に、乾燥粉末は多用量型乾燥粉末吸入装置の貯蔵容器中に含まれていてよい。カプセル及びカートリッジ又は、例えばゼラチン、又は例えば積層アルミ箔のブリスターは吸入器又は注入器で使用するために、有効成分と好適な粉末基材、例えばラクトース又はデンプン、有利にはラクトースの粉末混合物を含めて配合してよい。この態様では、有効成分は好適には、乾燥粉末製剤の投与後に有効成分の事実上全てが肺に吸入されうるように微細化されるため、有効成分は100μm未満の粒度、所望には20μmの粒度、有利には1〜10μmの粒度を有する。固体担体は、存在するのであれば、一般に、300μm、有利には200μmの最大粒径を有し、適切には、40〜100μm、有利には50〜75μmの平均粒径を有する。有効成分の粒度及び、乾燥粉末組成物中に存在するのであれば固体担体の粒度は、慣用の方法によって、例えば、気流粉砕機、ボールミル又は振動粉砕機中での粉砕、微量沈降、噴霧乾燥、凍結乾燥又は超臨界媒体からの再結晶によって所望の程度にまで下げることがでる。
【0034】
本発明の組成物の吸入形は微粉砕粒子形であるが、一方で吸入装置は、例えば乾燥粉末の単位用量を含有するカプセル又はブリスターから乾燥粉末を搬送するよう適合された乾燥粉末吸入装置又は多用量乾燥粉末吸入装置であってよい。かかる乾燥粉末吸入装置はこの分野で知られている。挙げられる例は、Cyclohaler(R)、Diskhaler(R)、Rotadisk(R)、Turbohaler(R)又はEP0505321号、EP407028号、EP650410号、EP691865号又はEP725725号に開示される乾燥粉末吸入装置(Ultrahaler(R))である。
【0035】
噴霧化による吸入用の液体は水性ビヒクルと一緒に、酸又はアルカリ、緩衝塩、等張性調整剤又は抗生物質のような薬剤を添加して配合することができる。これらは、濾過又はオートクレーブ中での加熱によって滅菌するか、又は非滅菌製品として提供してもよい。この種の投与のために好適な技術はこの分野で知られている。例としてはMystic(R)技術が挙げられる(例えばUS6397838号、US6454193号及びUS6302331号を参照)。
【0036】
有利な単位投与製剤は、有効成分の前記のような製剤学的に有効な用量又はその適切な小部分を含有する製剤である。このように、加圧式定量エーロゾルによる送達用に設計された製剤の場合に、エーロゾルの1回の動作で治療学的有効量の半分が送達されれば、治療学的に有効な用量を送達するのに2回の動作が必要である。
【0037】
特に前記した成分の他に、本発明の製剤は、この分野に慣例で、当該製剤の種類に関連する他の薬剤を含んでよい。更に、本発明による製剤は、米国食品医薬品局によって定義される生物学的同等性を含む。
【0038】
本発明を以下の実施例によって説明するが、本発明を制限するものではない。
【0039】
実施例1:定量吸入器
227gの1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(TG227)を約−50℃の温度にまで冷却することによって液化する。1.7gのシクレソニドと10mgのオレイン酸とを20gのエタノール(無水)中に溶かした溶液を添加する。引き続き1.22gの微細化されたサルメテロールキシナホ酸塩を添加し、そして形成した懸濁液を激しく均質化させる。該懸濁液に、組成物の全質量が1000gになるまで冷却及び撹拌をしながらTG227を添加する。冷却した懸濁液をアルミ缶中に充填し、そして計量弁(25μl)を定置に圧着する。1回の動作ごとに、50μgのシクレソニドと36.3μgのサルメテロールキシナホ酸塩(25μgのサルメテロールに相当する)に相当する25μlの懸濁液が放出される。
【0040】
実施例2:定量吸入器
4.52gのシクレソニドと0.82gのサルメテロールキシナホ酸塩を、400gのエタノールを含有する容器に添加し、そして該混合物を撹拌して溶液を得る。1595gの1,1,1,2−テトラフルオロエタン(TG134a)を秤量して圧力容器中に入れる。有効成分を含有するエタノール性溶液を前記の噴射剤に引き続き撹拌しながら添加する。次いで圧縮された溶液を計量弁(75μl)を有するアルミ缶中に標準的な圧力充填手法を用いて充填する。1回の動作ごとに、200μgのシクレソニドと36.3μgのサルメテロールキシナホ酸塩(25μgのサルメテロールに相当する)に相当する75μlの溶液が放出される。
【0041】
実施例3:粉末吸入器(吸入カプセルを基礎とする単一用量系)
800mgの微粉砕されたシクレソニド、290mgの微粉砕されたサルメテロールキシナホ酸塩及び28.9gのラクトース一水和物(Ph.Eur.4)を乱流混合機中で2段階で混合する。その配合物を篩別(0.71mmの篩)し、そして遊星型ミキサーのコンテナ中に移す。付加的な70.0gのラクトース一水和物の添加と混合後に、25mgのその配合物を、粉末吸入器で投与可能なサイズ3のカプセル中に充填する。1つのカプセルは200μgのシクレソニドと72.5μgのサルメテロールキシナホ酸塩(50μgのサルメテロールに相当する)を含有する。
【0042】
実施例4:粉末吸入器(多用量系)
1000gのラクトース一水和物(Ph.Eur.4)を篩別粉砕機によって篩別する。3.625gの微粉砕されたサルメテロールキシナホ酸塩(0.5mmのメッシュで篩別した)及び146.4gの解凝集されたラクトース一水和物を乱流混合機中で配合する。195gの解凝集されたラクトース一水和物を高剪断ミキサ中に装填し、そして5.0gの微粉砕されたシクレソニド(0.5mmのメッシュで篩別した)を添加して配合物を形成する。予備配合されたサルメテロール−ラクトースを篩別し(0.5mmの篩)、高剪断ミキサのコンテナに添加し、そしてシクレソニド−ラクトース配合物と混合する。引き続き650gの解凝集されたラクトース一水和物を添加し、混合する。1.5gの配合物を多用量粉末吸入器の貯蔵容器中に充填する。完全に組み立てた後に、粉末吸入器を保護箔にくるみ、湿気から保護する。かかる粉末吸入器は60回の単一用量(20mgの粉末)を含有し、それぞれ100μgのシクレソニドと72.5μgのサルメテロールキシナホ酸塩(50μgのサルメテロールに相当する)を含有する。
【0043】
実施例5:粉末吸入器(多用量系)
1.93gの微粉砕されたサルメテロールキシナホ酸塩及び18.1gのラクトース一水和物(Ph.Eur.4)を篩別し(0.5mmの篩)、そして乱流混合機中で混合する。得られた配合物を篩別(0.5mmの篩)し、そして10.67gの微粉砕されたシクレソニド(0.5mmのメッシュで篩別した)及び196.3gのラクトース一水和物(Ph.Eur.4)と一緒に、鋼製計量容器中に充填し、そして乱流混合機中で配合する。こうして得られた1.2gの配合物を粉末吸入器の粉末貯蔵容器中に充填する。完全に組み立てた後に、粉末吸入器を保護箔にくるみ、湿気から保護する。かかる粉末吸入器は少なくとも120回の単一用量(7.5mg粉末)を含有し、それぞれは400μgのシクレソニド及び72.5μgのサルメテロールキシナホ酸塩(50μgのサルメテロールに相当する)を含有する。
【0044】
実施例6:噴霧化用の溶液
適切量のシクレソニドとサルメテロールを10%の水を含有するエタノール中に溶解させる。2.5mlの溶液を、Respimat(R)装置で使用できるコンテナ中に充填する。
【0045】
本発明は有利な製剤及び成分に関して説明しているが、これらは限定を意図するものではないと理解すべきである。それに対して、当業者は、矯味剤、保存剤、付加的な有効成分などのような種々の随意の成分が含まれることを理解しており、一方でそれもまた本発明の実施態様である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクレソニド、その製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又は生理学的に機能的な誘導体並びにサルメテロール、その製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又は生理学的に機能的な誘導体、及び製剤学的に認容性の担体及び/又は1種以上の賦形剤、及び場合により1種以上の他の治療成分を含有する医薬品組成物。
【請求項2】
シクレソニドとサルメテロールとが同じ医薬品製剤中に含まれる(固定組合せ物)、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
サルメテロールがサルメテロールキシナホ酸塩である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
サルメテロールが光学的に純粋な(S)−サルメテロールである、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
シクレソニドとサルメテロールとを、選択的なβ2−アドレナリン受容体アゴニスト及び/又はグルココルチコステロイドが指示される哺乳動物、例えばヒトの臨床状態の一日二回又は一日一回の治療のために有効な量及び比で含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
付加的に、臭化チオトロピウム又はその溶媒和物を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
吸入による投与のために適している、請求項1記載の医薬品組成物。
【請求項8】
サルメテロールの粒子を治療学的有効量で含有し、かつ治療学的有効量のシクレソニド及びヒドロフルオロカーボン噴射剤、有利には1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択される噴射剤を含有し、かつ補助溶剤をシクレソニドを溶解させるのに有効な量で含有し、かつ場合により界面活性剤を含有する、エーロゾル医薬品組成物。
【請求項9】
補助溶剤がエタノールである、請求項8記載の医薬品組成物。
【請求項10】
サルメテロールの粒子を治療学的有効量で含有し、かつシクレソニドの粒子を治療学的有効量で含有し、かつフルオロカーボン噴射剤、有利には1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン及びそれらの混合物から選択される噴射剤を含有し、かつ噴射剤に対して0.01〜5%(質量/質量)の極性補助溶剤及び、場合により界面活性剤を含有する、エーロゾル医薬品組成物。
【請求項11】
乾燥粉末であり、担体がラクトース一水和物である、請求項7記載の医薬品組成物。
【請求項12】
選択的なβ2−アドレナリン受容体アゴニスト及び/又はグルココルチコステロイドが指示される哺乳動物、例えばヒトにおける臨床的状態の予防又は治療のための方法において、サルメテロール又は、その製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又は生理学的に機能的な誘導体並びにシクレソニド、又はその製剤学的に認容性の塩、溶媒和物又は生理学的に機能的な誘導体、及び製剤学的に認容性の担体及び/又は1種以上の賦形剤を含有する医薬品製剤の治療学的有効量を投与することを含む方法。
【請求項13】
臨床的状態が、喘息、夜間喘息、運動誘発性喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性でゼーゼーと音が出る気管支炎、肺気腫、気道感染症及び上部気道疾病、鼻炎、アレルギー性鼻炎及び季節性鼻炎の群から選択される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
一日二回の用法を含む、請求項12記載の方法。
【請求項15】
一日一回の用法を含む、請求項12記載の方法。
【請求項16】
シクレソニドとサルメテロールとを同じ投与形において吸入器からの吸入によって投与することを含み、かつ各動作が、一日二回の用法又は一日一回の用法のために治療学的に有効な用量を提供する、請求項12記載の方法。
【請求項17】
請求項7記載の医薬品組成物を含有する乾燥粉末吸入製品。
【請求項18】
請求項8から10までのいずれか1項記載のエーロゾル医薬品組成物を含有する経口又は経鼻の吸入に適したエーロゾル製剤を含有し、計量弁を備えたエーロゾルバイアルを含有するエーロゾル医薬製品。

【公表番号】特表2006−528228(P2006−528228A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530205(P2006−530205)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/050846
【国際公開番号】WO2004/103379
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(390019574)アルタナ ファルマ アクチエンゲゼルシャフト (69)
【氏名又は名称原語表記】ALTANA Pharma AG
【住所又は居所原語表記】Byk−Gulden−Str. 2、 D−78467 Konstanz、 Germany
【Fターム(参考)】