説明

サンプルからの核酸を増幅、検出および定量するための方法および組成物

核酸の増幅、検出およびその後の定量分析は、疾患または障害の診断および予後を含む分子生物学において中心的役割を果たしている。本発明は、サンプルからの核酸を増幅、検出および定量するための方法およびキットに関する。本発明の方法は、母体血漿からの胎児核酸の検出および定量、新生物(悪性または非悪性)からの循環核酸の検出および定量、低頻度対立遺伝子に対する正確なプール分析、または核酸の高感度定量分析を必要とするあらゆるその他の適用を含むがそれに限定されない広範囲の適用に用いられてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する特許出願
2006年6月16日に出願された、発明者がMin Seob Leeであって、「サンプルからの核酸を増幅、検出および定量するための方法および組成物」と題し、代理人の登録書番号SEQ−6002−PVを有す、米国仮特許出願第60/805,073号の利益を、本願は主張する。全ての文章と図を含む米国仮特許出願第60/805,073号の全体が、本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、サンプルからの核酸を増幅、検出および/または定量するための方法およびキットに関する。本発明の方法は、母体血漿からの胎児核酸の検出および定量、新生物(悪性または非悪性)からの循環核酸の検出および定量、低頻度対立遺伝子に対する正確なプール分析、または核酸の高感度定量分析を必要とするあらゆるその他の適用を含むがそれに限定されない広範囲の適用に用いられてもよい。
【背景技術】
【0003】
核酸の増幅、検出およびその後の定量分析は、疾患または障害の診断および予後を含む分子生物学において中心的役割を果たしている。核酸の検出のための公知の方法は多数存在し、その中には異なる種間の核酸配列の差異に基づく核酸の検出方法も含まれる。公知の方法のレビューとして、たとえば非特許文献1を参照されたい。しかし、核酸、特に低コピー数核酸を他の高コピー数核酸種の存在下で検出し正確に定量化することは困難であることが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Nelson、Crit Rev Clin Lab Sci.1998年9月;35(5):369−414
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
核酸検出の分野においては、低コピー数核酸の高感度検出および定量を可能にする検出方法の有用性が不足している。低コピー数核酸は、非侵襲性の出生前検査、癌の診断および低頻度突然変異の検出を含むがそれに限定されない広範囲の適用において高度の情報を与え得る。そこで本発明は、従来は検出不可能であったか、検出が非常に困難および/または検出の信頼性がなかった低コピー数核酸を、たとえば臨床的環境下で、信頼性ある態様で情報を与えるために十分なレベルで増幅した後に検出および分析するための改善された方法を提供する。この改善された技術の適用において、本発明は、たとえば出生前検査における胎児核酸の検出および定量化のためのより高感度かつより侵襲性の低い方法に対する可能性を導き出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
よって、1つの局面において、本発明は低コピー数核酸種の偏向対立遺伝子特異的(biased allele−specific:BAS)増幅のための方法およびキットに関し、この増幅は好ましくはその種の配列特異的な特性に基づくものであり、ここでは低コピー数種に特異的なプライマーが高コピー数種に対するプライマーに対して増加された濃度で導入されることによって、その種を正確な検出および定量に適したレベルまで選択的に増幅する。したがって本発明は、低コピー数核酸種を高コピー数核酸種よりも優先的に増幅してこれら2種の相対的濃度を定量化するための方法を提供する。いくつかの実施形態においては2つまたはそれ以上のプライマーが同時に加えられてもよく、別の実施形態においては異なる時間に加えられてもよい(例、第2のプライマーの前に第1のプライマー、または第1のプライマーの前に第2のプライマー)。いくつかの実施形態においては複数のプライマーが同じ容器に加えられてもよく、特定の実施形態においては異なる容器に加えられてもよい。
【0007】
より特定的には、本発明は部分的に、サンプル中の核酸を増幅するための方法を提供し、このサンプルは少なくとも第1の核酸種および第2の核酸種を含有し、第1の種は第2の種よりも高コピー数であり、この方法はa)反応容器中で第1の核酸種に実質的に特異的な第1の増幅プライマーを第1の核酸種にアニーリングするステップを含み、第1のプライマー対は第1の濃度を有し、この方法はさらにb)反応容器中で第2の核酸種に実質的に特異的な第2の増幅プライマーを第2の核酸種にアニーリングするステップを含み、第2のプライマーは第2の濃度を有し、第2の増幅プライマーの第2の濃度は第1の増幅プライマーの第1の濃度よりも高く、この方法はさらにc)反応容器中で第1および第2の核酸種に共通となり得る第1および第2の核酸種に実質的に特異的な別の増幅プライマーを第1および第2の核酸種にアニーリングするステップと、d)反応容器中で核酸増幅反応を行なうことによって、第2の核酸種の増幅産物の量を第1の核酸種の増幅産物の量に対して増加させるステップとを含む。ステップ(c)の「別の増幅プライマー」は1つまたはそれ以上のプライマーであってもよい。たとえば1つの付加的プライマーを用いる実施形態においては、そのプライマーは第1の核酸および第2の核酸の両方に共通するヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズしてもよい。たとえば2つの付加的プライマーを用いる実施形態においては、1つの付加的プライマーが第1の核酸に特異的にハイブリダイズし、第2の付加的プライマーが第2の核酸に特異的にハイブリダイズしてもよい。
【0008】
本発明の実施形態の1つにおいて、増幅の方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)、自己持続型(self−sustained)シーケンス反応、リガーゼ連鎖反応、cDNA末端の急速増幅(rapid amplification of cDNA ends)、ポリメラーゼ連鎖反応およびリガーゼ連鎖反応、Q−ベータファージ増幅、鎖置換型増幅(strand displacement amplification)、またはスプライス重複伸長型(splice overlap extension)ポリメラーゼ連鎖反応を含んでもよいが、それを含むことに限定されない。好ましい実施形態において、増幅の方法はPCRである。本発明の別の実施形態において、増幅方法は、ここに引用により援用される米国特許出願公開第20050287592号に記載されるような鋳型依存性ポリメラーゼを利用する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、第1の核酸種の増幅産物のみ、または第2の種の増幅産物のみ、または第1および第2の種の増幅産物をともに検出するステップをさらに含む、本明細書に記載の増幅方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、a)第1の核酸種の増幅産物を検出するステップと、b)第2の核酸種の増幅産物を検出するステップと、c)第1の核酸種のアイデンティティを第2の核酸種のアイデンティティと比較するステップとをさらに含む、本明細書に記載の増幅方法を提供する。関連する実施形態において、検出は質量分析法によって行なわれる。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、a)第1の核酸種の増幅産物を定量化するステップと、b)第2の核酸種の増幅産物を定量化するステップと、c)第1の核酸種の増幅産物の量を第2の核酸種の増幅産物の量と比較するステップとをさらに含む、本明細書に記載の増幅方法を提供する。関連する実施形態において、定量は質量分析法によって行なわれる。好ましい実施形態において、第1の核酸種は母体由来であり、第2の核酸種は胎児由来である。
【0011】
別の局面においては、少なくとも第1の種および第2の種を含有するサンプル中の低コピー数核酸種を同定するための方法が提供され、これらの種は2つの別個の反応容器中で増幅される。より特定的には、本発明はサンプル中の核酸を増幅するための方法を提供し、このサンプルは少なくとも第1の核酸種および第2の核酸種を含有し、一方の種は他方の種よりも高コピー数であり、この方法はa)第1の反応容器中で第1の核酸種に実質的に特異的な第1の増幅プライマーを第1の核酸種にアニーリングするステップを含み、第1のプライマーは第1の濃度を有し、この方法はさらにb)第1の反応容器中で第2の核酸種に実質的に特異的な第2の増幅プライマーを第2の核酸種にアニーリングするステップを含み、第2のプライマーは第2の濃度を有し、第2の増幅プライマーの第2の濃度は第1の増幅プライマーの第1の濃度よりも高く、この方法はさらにc)第1の反応容器中で第1および第2の核酸種に共通となり得る第1および第2の核酸種に実質的に特異的な別の増幅プライマーを第1および第2の核酸種にアニーリングし、核酸増幅反応を行ない、これによって、第1の種の方が高コピー数であるときには第2の核酸種の増幅産物が第1の核酸種の増幅産物に対して増加するステップと、d)第2の反応容器中で第1の増幅プライマーを第1の核酸種にアニーリングするステップとを含み、第1の増幅プライマーはステップbの第2の濃度と同じ濃度で存在し、この方法はさらにe)第2の反応容器中で第2の増幅プライマーを第2の核酸種にアニーリングするステップを含み、第2の増幅プライマーはステップaの第1の濃度と同じ濃度で存在し、よって第1の増幅プライマーの濃度は第2の増幅プライマーの濃度よりも高く、この方法はさらにf)第2の反応容器中で第1および第2の核酸種に共通となり得る別の増幅プライマーを第1および第2の核酸種にアニーリングし、核酸増幅反応を行ない、これによって、第2の種の方が高コピー数であるときには第1の核酸種の増幅産物が第2の核酸種の増幅産物に対して増加するステップを含む。
【0012】
本発明の実施形態の1つにおいては、この2容器の増幅方法は、第1の核酸種の増幅産物を検出するステップをさらに含む。別の実施形態においては、この方法は第2の核酸種の増幅産物を検出するステップをさらに含む。さらに別の実施形態においては、この方法は第1の核酸種および第2の核酸種をともに検出し、第1および第2の核酸種のアイデンティティを比較するステップをさらに含む。別の実施形態においては、この方法は第1の核酸種の増幅産物を定量化し、第2の核酸種の増幅産物を定量化し、第1の核酸種の増幅産物の量を第2の核酸種の増幅産物の量と比較するステップをさらに含む。
【0013】
別の局面において、本発明は、低コピー数プライマーに対する高コピー数プライマーの好適または最適な比率を定めるための方法を提供する。下記の実施例1を参照されたい。
【0014】
関連する実施形態において、本発明は、実施例1に記載されるように低コピー数核酸種を優先的に増幅するために十分な第1のPCRプライマーの濃度を定めるための方法を提供する。本発明の方法は、種間の核酸に基づく差異(または対立遺伝子)に基づいて、異なる核酸種を優先的に増幅し、検出および定量化するために用いられてもよい。いくつかの実施形態において、本発明は、突然変異、ならびに転座、トランスバージョン、モノソミー、トリソミーおよびその他の異数性、欠失、付加、増幅、断片、転座、および転位を含むがそれに限定されない染色体異常を検出するために用いられる。多数の異常を同時に検出できる。本発明は、妊婦のサンプルから胎児DNAの配列を決定するための非侵襲性の方法も提供する。本発明は、点突然変異、リーディングフレームシフト、トランジション、トランスバージョン、付加、挿入、欠失、付加欠失、フレームシフト、ミスセンス、逆突然変異、およびマイクロサテライト変化を含むがそれに限定されない、野生型配列と比べたときの遺伝子配列中のあらゆる変化を検出するために用いられ得る。好ましい実施形態において、核酸に基づく差異とは1塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)である。特定の好ましい実施形態において、核酸に基づく差異とは特徴的なメチル化状態である。たとえば、第1の核酸種は第1の核酸に基づくメチル化パターンを有し、第2の核酸種は第2の核酸に基づくメチル化パターンを有し、第1の核酸に基づくメチル化パターンは第2の核酸に基づくメチル化パターンとは異なる。いくつかの実施形態においては、第1および第2のプライマーはメチル化特異的な増幅プライマーである。
【0015】
好ましい実施形態においては、単一の多重化された反応において2つ以上の核酸に基づく差異が同時に検出される。特定の実施形態においては、対象となる複数の座の対立遺伝子がシーケンシングされ、それらの相対量が定量化されて比較される。実施形態の1つにおいては、鋳型DNAの単一の染色体上の対象となる1から数十、数百、数千の座の対立遺伝子の配列が決定される。別の実施形態においては、複数の染色体上の対象となる1から数十、数百、数千の座の対立遺伝子の配列が検出され定量化される。たとえば、単一の反応で複数のSNP(例、2から約100のSNP)が検出されてもよい。
【0016】
別の実施形態においては、第1および第2の核酸種は異なる対立遺伝子を含む。たとえば、母体由来の核酸種と胎児由来の核酸種との場合に、母体核酸は所与の対立遺伝子に対してホモ接合であり、胎児核酸は同じ対立遺伝子に対してヘテロ接合である。よって本発明は、対象となるヘテロ接合の座における対立遺伝子を増幅し、検出した後にその相対量を定量化するための方法を提供し、対象となるヘテロ接合の座は、鋳型DNAから対象となる座における対立遺伝子の配列を決定することによって予め同定されている。
【0017】
本発明の方法は、高コピー数核酸種に対して低コピー数核酸種を増幅、検出または定量化するために用いられてもよい。好ましい実施形態において、サンプル中の高コピー数核酸種に対する低コピー数核酸種の出発相対パーセンテージは0.5%から49%である。関連する実施形態において、高コピー数核酸種に対する低コピー数核酸種の最終相対パーセンテージは5.0%から80%またはそれ以上である。
【0018】
本発明の方法は、約20塩基またはそれ以上の短い断片化された核酸を増幅、検出または定量化するために用いられてもよい。約50塩基またはそれ以上であることがより好ましい。
【0019】
本発明は部分的に、たとえばDNA、RNA、mRNA、オリゴヌクレオソームのもの、ミトコンドリアのもの、後生的に修飾されたもの、1本鎖のもの、2本鎖のもの、環状のもの、プラスミド、コスミド、酵母人工染色体、人工または合成DNA、一意のDNA配列を含むもの、およびcDNAなどRNAサンプルから逆転写されたDNA、ならびにそれらの組合せなどの核酸を増幅、検出または定量化することに関する。好ましい実施形態において、核酸は無細胞核酸である。別の実施形態において、核酸はアポトーシス細胞に由来する。別の実施形態において、核酸の一方の種は胎児由来であり、核酸の他方の種は母体由来である。
【0020】
本発明は、たとえば全血、血清、血漿、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、脳脊髄液、髄液、洗浄液(例、気管支肺胞、胃、腹膜、管、耳、関節鏡のもの)、生検サンプル、尿、便、痰、唾液、鼻粘液、前立腺液、精液、リンパ液、胆汁、涙、汗、母乳、胸液、胚細胞および胎児細胞などのサンプルから核酸を増幅、検出または定量化することに関する。好ましい実施形態において、生物サンプルは血漿である。別の好ましい実施形態において、サンプルは無細胞または実質的に無細胞である。関連する実施形態において、サンプルは予め抽出された核酸のサンプルである。別の実施形態において、サンプルはプールされた核酸のサンプルである。
【0021】
本発明は、母体血漿から胎児核酸を増幅、検出または定量化するために特に有用である。好ましい実施形態において、サンプルは動物、最も好ましくはヒトからのものである。別の好ましい実施形態において、サンプルは妊娠中のヒト(妊婦)からのものである。関連する実施形態において、サンプルは妊娠5週目より後の妊婦から回収される。別の実施形態においては、その妊婦の血液、血漿または羊水における遊離胎児核酸の濃度が上昇している。
【0022】
本明細書において提供される方法は、核酸の検出および定量のためのあらゆる公知の方法とともに用いられてもよく、その公知の方法とはプライマー伸長法(例、iPLEX(商標)、Sequenom Inc.)、DNAシーケンシング、リアルタイムPCR(real−time PCR:RT−PCR)、制限断片長多型(restriction fragment length polymorphism:RFLP分析)、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(allele specific oligonucleotide:ASO)分析、メチル化特異的PCR(methylation−specific PCR:MSPCR)、パイロシーケンシング分析、アシクロプライム(acycloprime)分析、リバースドットブロット、GeneChipマイクロアレイ、動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(Dynamic allele−specific hybridization:DASH)、ペプチド核酸(Peptide nucleic acid:PNA)およびロックド核酸(locked nucleic acids:LNA)プローブ、TaqMan、モレキュラービーコン(Molecular Beacons)、挿入染料(Intercalating dye)、FRETプライマー、AlphaScreen、SNPstream、ジェネティックビット分析(genetic bit analysis:GBA)、マルチプレックスミニシーケンシング(Multiplex minisequencing)、SNaPshot、GOODアッセイ、マイクロアレイミニシーケンシング(Microarray miniseq)、アレイドプライマー伸長法(arrayed primer extension:APEX)、マイクロアレイプライマー伸長法、Tagアレイ、コード化ミクロスフェア(Coded microspheres)、鋳型指示による組込み(Template−directed incorporation:TDI)、蛍光偏光、比色定量オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(oligonucleotide ligation assay:OLA)、シーケンスコード化(Sequence−coded)OLA、マイクロアレイライゲーション、リガーゼ連鎖反応、パドロック(Padlock)プローブ、およびインベーダーアッセイ、またはそれらの組合せを含む。ここにすべて引用により援用される米国特許第6,258,538号、第6,277,673号、第6,221,601号、第6,300,076号、第6,268,144号、第6,221,605号、第6,602,662号、および第6,500,621号も参照されたい。
【0023】
本明細書において提供される方法は、付加的なステップを導入するよう変更されることによって、たとえば核酸の増幅または検出が改善されたり、増幅後の標的核酸の分析が改善されたりしてもよい。たとえば、当該技術分野において公知の方法によって、高コピー数核酸種の増幅を付加的に抑制してもよい。たとえば、NasisらのClinical Chemistry、50:694−701(2004年)を参照されたい。本明細書において提供される方法は、たとえば自動化を改善するためにステップを組合せるように変更されてもよい。
【0024】
別の実施形態において、本明細書において提供される方法は、たとえば電気泳動、液体クロマトグラフィ、サイズ排除、ろ過、マイクロ透析、電気透析、遠心膜排除、有機または無機抽出、アフィニティクロマトグラフィ、PCR、ゲノムワイド(genome−wide)PCR、配列特異的PCR、メチル化特異的PCR、シリカ膜または分子ふるいの導入、および断片選択的増幅などの、核酸を抽出するための別の方法の前または後に行なわれても、またはそれと同時に行なわれてもよい。
【0025】
本発明はさらに、本明細書に記載される方法を行なうための試薬を含むキットにも関する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】高コピー数核酸に比べて低コピー数核酸を検出および定量化するための識別力が非常に低い、標準的な対立遺伝子特異的PCR増幅方法を示す図である。高コピー数プライマー濃度に対して低コピー数プライマー濃度を選択的に増加させることによって、本発明の偏向対立遺伝子特異的(BAS)増幅は、高コピー数分子の増幅および検出を抑制する一方で低コピー数分子の増幅および検出を高めることによって、識別力を著しく増加させることができる。
【図2】MassArray(登録商標)系を用いて単一ヌクレオチドまたは挿入/欠失多型を検出および測定するための偏向対立遺伝子特異的(BAS)増幅に対するアッセイ設計戦略の例を示す図である。対立遺伝子特異的プライマーは、プライマーの3’末端またはその付近が特定の対立遺伝子と相補的であるように設計される。本発明の実施形態の1つにおいて、対立遺伝子特異的プライマーは、プライマーの3’末端の約5またはそれ以下のヌクレオチド位置5’のヌクレオチドにおいて特定の対立遺伝子と相補的である。特定の実施形態において、対立遺伝子特異的プライマーは、プライマーの3’末端の4、3、2または1ヌクレオチド位置5’のヌクレオチドにおいて特定の対立遺伝子と相補的である。別の実施形態において、対立遺伝子特異的プライマーは、プライマーの3’末端において特定の対立遺伝子と相補的である。共通プライマーは、両方の鋳型に対して同一の核酸種の配列と実質的に相補的である。検出伸長プローブは、多型部位の反対側に位置しても(a)、2つの対立遺伝子を識別できるアンプリコン上の別の配列差異に位置しても(b)よい。さらに、図面において、+記号はプライマーおよび鋳型の相対濃度を示し、+++は+よりも高濃度であることを示す。
【図3】2つの検出シナリオ(事例1および事例2)の例を示す図である。標準PCRで得られる識別は乏しいのに対し、BAS増幅では第2ピークの50%減少が得られる。BAS戦略は胎児特異的対立遺伝子(T)を信頼性高く検出するのみならず、母体対立遺伝子に対する異なる比率をも正確に測定する。
【0027】
図3の事例2に用いられたプライマーを以下の表Aに示す。
【0028】
【化1】

【図4A】スペクトログラムを示す図であって、ここでBASプライマーは可変(たとえば図4Dにおいては1:10の比率)であり、標的DNAは98:2(女性:男性)の比率に固定される。
【図4B】スペクトログラムを示す図であって、ここでBASプライマーは可変(たとえば図4Dにおいては1:10の比率)であり、標的DNAは98:2(女性:男性)の比率に固定される。
【図4C】スペクトログラムを示す図であって、ここでBASプライマーは可変(たとえば図4Dにおいては1:10の比率)であり、標的DNAは98:2(女性:男性)の比率に固定される。
【図4D】スペクトログラムを示す図であって、ここでBASプライマーは可変(たとえば図4Dにおいては1:10の比率)であり、標的DNAは98:2(女性:男性)の比率に固定される。
【図4E】スペクトログラムを示す図であって、ここでBASプライマーは可変(たとえば図4Dにおいては1:10の比率)であり、標的DNAは98:2(女性:男性)の比率に固定される。
【図4F】スペクトログラムを示す図であって、ここでBASプライマーは可変(たとえば図4Dにおいては1:10の比率)であり、標的DNAは98:2(女性:男性)の比率に固定される。
【図5】2回行なわれた同じ実験の結果を示すグラフであって、ここでBASプライマーは可変(たとえば図4Dにおいては1:10の比率)であり、標的DNAは98:2(女性:男性)の比率に固定される。
【図6A】スペクトログラムを示す図であって、ここでBASプライマーは(1:5の比率に)固定され、標的DNAは可変(たとえば図6Bにおいては女性:男性が99:1)である。
【図6B】スペクトログラムを示す図であって、ここでBASプライマーは(1:5の比率に)固定され、標的DNAは可変(たとえば図6Bにおいては女性:男性が99:1)である。
【図6C】スペクトログラムを示す図であって、ここでBASプライマーは(1:5の比率に)固定され、標的DNAは可変(たとえば図6Bにおいては女性:男性が99:1)である。
【図6D】スペクトログラムを示す図であって、ここでBASプライマーは(1:5の比率に)固定され、標的DNAは可変(たとえば図6Bにおいては女性:男性が99:1)である。
【図6E】スペクトログラムを示す図であって、ここでBASプライマーは(1:5の比率に)固定され、標的DNAは可変(たとえば図6Bにおいては女性:男性が99:1)である。
【図6F】スペクトログラムを示す図であって、ここでBASプライマーは(1:5の比率に)固定され、標的DNAは可変(たとえば図6Bにおいては女性:男性が99:1)である。
【図7】2回行なわれた同じ実験の結果を示すグラフであって、ここでBASプライマーは(1:5の比率に)固定され、標的DNAは可変である。
【図8A】異数性検出アッセイ設計を示す図であって、ここで母はCC遺伝子型を有し、胎児はCTTまたはCCTトリソミー遺伝子型を有する。これらの遺伝子型は次の比率で存在する: CT 97.5:2.5 CTT 96.7:3.4 CCT 98.4:1.7
【図8B】BAS増幅が高コピー種の増幅の抑制を可能にする一方で、低コピー種の増幅を増加させて検出可能なレベルにする様子を示す図である。
【図9】母および胎児の異なる遺伝子型の組合せを有する別のシナリオを示す図である。「スワブ」は母体のみに由来する核酸を示し、「血漿」は母体および胎児両方の核酸を含有する。ここで用いられる「スワブ」とは、胎児核酸を含まないあらゆる核酸サンプル供給源、たとえばそうした母体細胞などを示す。
【図10】母および胎児の異なる遺伝子型の組合せを有する別のシナリオを示す図である。「スワブ」は母体のみに由来する核酸を示し、「血漿」は母体および胎児両方の核酸を含む。ここで用いられる「スワブ」とは、胎児核酸を含まないあらゆる核酸サンプル供給源、たとえばそうした母体細胞などを示す。
【図11】母および胎児の異なる遺伝子型の組合せを有する別のシナリオを示す図である。「スワブ」は母体のみに由来する核酸を示し、「血漿」は母体および胎児両方の核酸を含む。ここで用いられる「スワブ」とは、胎児核酸を含まないあらゆる核酸サンプル供給源、たとえばそうした母体細胞などを示す。
【図12】母および胎児の異なる遺伝子型の組合せを有する別のシナリオを示す図である。「スワブ」は母体のみに由来する核酸を示し、「血漿」は母体および胎児両方の核酸を含む。ここで用いられる「スワブ」とは、胎児核酸を含まないあらゆる核酸サンプル供給源、たとえばそうした母体細胞などを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、核酸を増幅、検出および/または分析する方法を含み、無細胞の低コピー数核酸を高コピー数核酸(例、宿主または母体の核酸)の存在下で増幅、検出および定量するために特に有用である。特にいくつかの実施形態において、本発明の方法は細胞外の供給源から得られた核酸に対して行なわれてもよい。末梢血に無細胞核酸が存在することはよく確認された現象である。無細胞核酸はいくつかの供給源に由来し得るが、循環する細胞外核酸の供給源の1つはアポトーシスとしても知られるプログラム細胞死からのものであることが示されている。アポトーシスの結果生じる核酸の供給源は多くの体液において見出すことができ、宿主における通常のプログラム細胞死、自己免疫疾患の場合の誘導されたプログラム細胞死、敗血性ショック、新生物(悪性または非悪性)、または同種移植片(移植された組織)などの非宿主供給源、または妊婦の胎児もしくは胎盤を含むがそれに限定されないいくつかの供給源に由来し得る。末梢血またはその他の体液からの細胞外核酸の増幅、検出および分析に対する適用は広範にわたり、とりわけ非侵襲性の出生前診断、癌診断、病原体検出、自己免疫応答および同種移植片拒絶反応を含み得る。
【0030】
本明細書において用いられる「低コピー数」核酸またはプライマーという用語は、別の核酸種よりも少量存在する核酸種を意味する。より少量とは、好ましくはより低濃度であることを意味するが、より少数の分子、または重量ベースでより軽量であることなどを意味してもよい。低コピー数核酸は、たとえば高コピー数核酸に対する低コピー数核酸の比率、または合計核酸に対する低コピー数核酸の比率などの比率によって定量化されてもよい。低コピー数核酸は、たとえばコピー数(例、約1、約2、約3、約4、約5、約10コピー)、またはグラム、モル、もしくは濃度(例、約0.001ngから約1ng、または約0.001ngから約0.1ng、約0.001ngから約0.01ng)などによる量として定量化されてもよい。
【0031】
本明細書において用いられる「高コピー数」核酸またはプライマーという用語は、別の核酸種よりも多量存在する核酸種を意味する。より多量とは、好ましくはより高濃度であることを意味するが、より多数の分子、または重量ベースでより大きい重量であることなどを意味してもよい。
【0032】
低コピー数および高コピー数核酸またはプライマーという用語は、互いに関して一方の方が低濃度であることを意味してもよいが、他方よりも少数の分子、または重量ベースでより軽量であることなどを意味してもよい。
【0033】
本明細書において用いられる「宿主細胞」という用語は、中に外因性核酸を導入して、宿主細胞核酸に加えて外因性核酸を含有する宿主細胞を生産できるようなあらゆる細胞を示す。本明細書において用いられる「宿主細胞核酸」および「内因性核酸」という用語は、宿主細胞が得られたときに細胞中に存在する核酸種(例、ゲノムまたは染色体の核酸)を示す。本明細書において用いられる「外因性」という用語は、宿主細胞核酸以外の核酸を示す;外因性核酸は、宿主細胞に導入されたか、または宿主細胞の祖先に導入された結果として宿主細胞中に存在できる。よって、たとえば特定の宿主細胞に対して外因性の核酸種とは、非内因性の(得られたときの宿主細胞、または宿主細胞の祖先には存在しない)核酸種である。適切な宿主細胞は、バクテリア細胞、酵母細胞、植物細胞および哺乳動物細胞を含むがそれに限定されない。
【0034】
「核酸」および「核酸分子」という用語は、この開示を通して互いに交換可能に用いられ得る。この用語はデオキシリボヌクレオチド(DNA)、リボヌクレオチドポリマー(RNA)、RNA/DNA混成物、およびポリアミド核酸(polyamide nucleic acids:PNAs)の1本鎖または2本鎖のいずれかの形を示し、他に限定されない限り、自然発生するヌクレオチドと類似の態様で機能できる天然ヌクレオチドの公知の類似体を含む。
【0035】
本明細書において用いられる「核酸種」という用語は、サンプル中の興味の対象となる核酸を示す。ある核酸種は、核酸の差異に基づいて別の核酸種と異なっていてもよく、その差異は突然変異、挿入、欠失、異なる生物からの一意のヌクレオチド配列、または胎児対母体供給源を含むがそれに限定されない。関連する実施形態において、核酸種はアポトーシスDNA、胎児DNA、腫瘍形成DNA、またはあらゆる非宿主DNAからのものである。別の関連する実施形態において、核酸種は無細胞核酸である。別の関連する実施形態において、核酸種はプログラム細胞死の際に生成されたオリゴヌクレオソーム核酸である。異なる核酸種は異なる対立遺伝子であってもよく、各対立遺伝子は1つまたはそれ以上の座において異なる配列を有する(「対立遺伝子」という用語については以下により詳細に説明する)。
【0036】
本明細書において用いられる「座(locus)」、「座(loci)」および「対象となる座」という用語は、より大きな核酸領域内にある選択された核酸領域を示す。対象となる座は、1〜100、1〜50、1〜20、または1〜10ヌクレオチド、時には1〜6、1〜5、14、1〜3、1〜2または1ヌクレオチド(類)を含み得るがそれに限定されない。
【0037】
本明細書において用いられる「対立遺伝子」という用語は、染色体上の同じ位置を占めるDNAの遺伝子または非コード領域のいくつかの代替形の1つを示す。対立遺伝子という用語は、バクテリア、ウイルス、菌類、原生動物、カビ、酵母、植物、ヒト、ヒト以外のもの(non−humans)、動物、および古細菌を含むがそれに限定されないあらゆる生物からのDNAを説明するために用いられてもよい。
【0038】
複数の対立遺伝子は同一の配列を有してもよいし、単一ヌクレオチドまたは2つ以上のヌクレオチドが変化していてもよい。各染色体の2つのコピーを有する生物に関しては、両方の染色体が同じ対立遺伝子を有しているとき、その状態はホモ接合と呼ばれる。2つの染色体における対立遺伝子が異なるとき、その状態はヘテロ接合と呼ばれる。たとえば、対象となる座が染色体1上のSNP Xであって、母性染色体はSNP Xにアデニンを含有し(A対立遺伝子)、父性染色体はSNP Xにグアニンを含有する(G対立遺伝子)とき、その個体はSNP Xにおいてヘテロ接合である。
【0039】
「定量する」および「定量化する」という用語ならびにそれらの文法的変形は、本明細書において互いに交換可能に用いられる。
【0040】
本明細書において用いられる「アイデンティティ(identity)」という用語は、ポリヌクレオチド中の1つのヌクレオチドまたは2つ以上の連続するヌクレオチドの配列を意味する。たとえばSNPなどの単一ヌクレオチドの場合、「配列」および「アイデンティティ」は本明細書において互いに交換可能に用いられる。特徴的なメチル化状態の場合、アイデンティティとは特定のCpGアイランドのメチル化状態を示す。たとえば、ここに引用により援用される米国出願第20050272070号を参照されたい。
【0041】
本明細書において用いられる「鋳型」という用語は、本発明における増幅のために用いられ得るあらゆる核酸分子を示す。鋳型核酸はあらゆる生物供給源または非生物供給源から得ることができる。
【0042】
本明細書において用いられる「プライマー」とは、ハイブリダイゼーション、鎖伸長反応、増幅およびシーケンシングに好適なオリゴヌクレオチドを示す。同様に、プローブとはハイブリダイゼーションに用いられるプライマーである。プライマーとは、典型的には約5から200ヌクレオチド、一般的には約70ヌクレオチドまたは70未満という十分に低質量であって、かつ本明細書において提供される増幅方法および検出方法およびシーケンシングにおいて便利に用いられるために十分なサイズの核酸を示す。これらのプライマーは、安定な2本鎖を形成するために十分な数のヌクレオチド、典型的には約6〜30ヌクレオチド、約10〜25ヌクレオチド、および/または約12〜20ヌクレオチドを必要とするような、核酸の検出およびシーケンシングのためのプライマーを含むがそれに限定されない。よって本明細書の目的に対しては、プライマーはあらゆる好適な長さを含むヌクレオチドの配列であり、プライマーの配列および適用に依存して、典型的には約6〜70ヌクレオチド、12〜70ヌクレオチド、または約14より大きく上限の約70ヌクレオチドまでを含有する。
【0043】
本明細書において用いられる「メチル化特異的プライマー」という用語は、別のメチル化状態を越えた特定のメチル化状態を有する配列に特異的にハイブリダイズするプライマーを示す。ヌクレオチド配列はメチル化が可能であり、特定のヌクレオチド配列は複数の異なるメチル化状態を有し得る。メチル化特異的プライマーは、通常の当業者によって公知であり、選択されることができる(例、2003年11月13日に出願公開第20030211522号として公開された米国特許出願第10/346,514号)。
【0044】
本明細書において用いられる「特異的にハイブリダイズする」とは、プローブまたはプライマーが標的配列に非標的配列よりも優先的にハイブリダイズすることを示す。当業者は、たとえば温度、プローブまたはプライマーの長さおよび組成、緩衝液組成および塩濃度など、ハイブリダイゼーションに影響するパラメータを熟知しており、これらのパラメータを容易に調整して標的配列への核酸の特異的ハイブリダイゼーションを達成できる。標的配列への優先的ハイブリダイゼーションは、たとえば非標的配列への検出可能なハイブリダイゼーションをほとんどまたはまったく含まない。
【0045】
本発明の特定の実施形態においては、サンプルは全血、血清、血漿、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、脳脊髄液、髄液、洗浄液(例、気管支肺胞、胃、腹膜、管、耳、関節鏡のもの)、生検サンプル、組織、尿、便、痰、唾液、鼻粘液、前立腺液、精液、リンパ液、胆汁、涙、膣分泌液、汗、母乳、胸液、胚細胞および胎児細胞を含んでもよいがそれに限定されない。本明細書において用いられる「血液」という用語は、全血、またはたとえば従来定義される血清および血漿などの血液のあらゆる画分を含む。血漿とは、抗凝血薬で処理した血液の遠心分離によって得られる全血の画分を示す。血清とは、血液サンプルが凝固した後に残る流体の水分の多い部分を示す。好ましい実施形態において、サンプルは血液、血清または血漿である。よって、特定の実施形態においては鋳型DNAは血清から単離され、他の実施形態においては鋳型DNAは血漿から単離される。特定の好ましい実施形態において、サンプルは無細胞または実質的に無細胞である。関連する実施形態において、サンプルは予め抽出、単離または精製された核酸を含有するサンプルである。核酸種を標的にするやり方の1つは、生物サンプルの非細胞画分を用いることである;すなわち、サンプルに混入する完全な細胞材料(例、長鎖ゲノムDNA)の量を制限する。本発明の実施形態の1つにおいては、予め澄ませた血漿および尿などの無細胞サンプルに、酵素、カオトロピック物質、界面活性剤、またはそれらいずれかの組合せを加えることによって、細胞内ヌクレアーゼを不活性化する処理が最初に行なわれる。いくつかの実施形態においては、サンプルには最初に、たとえば遠心分離、ろ過、アフィニティクロマトグラフィなどの当該技術分野において公知の方法のいずれかによって、サンプルから実質的にすべての細胞を除去するための処理が行なわれる。
【0046】
胎児核酸は、第1トリメスタ以降から母体血漿中に存在し、妊娠期間の進行に伴って濃度が増加する(Loら、Am J Hum Genet(1998)62:768−775)。出産後、胎児核酸は非常に迅速に母体血漿から取除かれる(Loら、Am J Hum Genet(1999)64:218−224)。母体血漿中の胎児核酸は、母体血液の細胞画分中の胎児核酸よりもかなり高い画分濃度で存在する(Loら、Am J Hum Genet(1998)62:768−775)。よって別の実施形態においては、ある核酸種は胎児由来のものであり、他方の核酸種は母体由来のものである。
【0047】
いくつかの実施形態において、サンプルは遊離母体鋳型DNAおよび遊離胎児鋳型DNAを含有する。特定の実施形態において、鋳型DNAは母体DNAと胎児DNAとの混合物を含んでもよく、実施形態の1つにおいては、鋳型DNAから対象となる座の対立遺伝子の配列を決定する前に、母体DNAをシーケンシングして対象となるホモ接合の座を同定し、この対象となるホモ接合の座とは鋳型DNA中で分析される対象の座である。いくつかの実施形態においては、母体DNAをシーケンシングして対象となるヘテロ接合の座を同定し、この対象となるヘテロ接合の座とは鋳型DNA中で分析される対象の座である。特定の実施形態においては、配列を決定する前に鋳型DNAが単離された。いくつかの実施形態においては、胎児DNAにおける対象の座の配列を決定する前に、母体鋳型DNAにおける対象の座の配列が決定された。いくつかの実施形態においては、胎児DNAにおける対象の座の配列を決定する前に、父性鋳型DNAにおける対象の座の配列が決定される。いくつかの実施形態において、対象となる座は単一ヌクレオチド多型である。他の実施形態において、対象となる座は突然変異である。いくつかの実施形態においては、対象となる複数の座の配列が決定される。これらの実施形態のいくつかにおいては、対象となる複数の座は複数の染色体上にある。
【0048】
本発明のサンプルは、細胞溶解、細胞ヌクレアーゼの不活性化、および細胞デブリからの所望の核酸の分離を伴ってもよい。通常の溶解手順は、機械的破壊(例、粉砕、低張溶解)、化学処理(例、界面活性剤溶解、カオトロピック薬剤、チオール還元)、および酵素分解(例、プロテイナーゼK)を含む。本発明において、生物サンプルはまず溶解緩衝液、カオトロピック薬剤(例、塩)、およびプロテイナーゼまたはプロテアーゼの存在下で溶解されてもよい。細胞膜破壊および細胞内ヌクレアーゼの不活性化が組合されてもよい。たとえば、単一の溶液が細胞膜を可溶化するための界面活性剤と、細胞内酵素を不活性化するための強いカオトロピック塩とを含有してもよい。細胞溶解およびヌクレアーゼ不活性化の後、ろ過または沈殿によって細胞デブリが容易に除去され得る。
【0049】
別の実施形態においては、溶解が妨げられてもよい。これらの実施形態においては、サンプルを細胞溶解を阻害する薬剤と混合することによって、細胞が存在するときには細胞の溶解を阻害してもよく、その薬剤は膜安定剤、架橋剤、または細胞溶解阻害剤である。これらの実施形態のいくつかにおいては、その薬剤は細胞溶解阻害剤であり、グルタルアルデヒド、グルタルアルデヒドの誘導体、ホルムアルデヒド、ホルマリン、またはホルムアルデヒドの誘導体であってもよい。ここに引用により援用される米国特許出願第20040137470号を参照されたい。
【0050】
本発明の方法は、核酸種の配列を検出するステップを含んでもよい。当該技術分野において公知のあらゆる検出方法が用いられてもよく、その方法はゲル電気泳動、キャピラリ電気泳動、マイクロチャンネル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、蛍光検出、蛍光偏光、DNAシーケンシング、サンガージデオキシシーケンシング、ELISA、質量分析法、飛行時間型質量分析法、4重極質量分析法、扇形磁場型(magnetic sector)質量分析法、扇形電場型(electric sector)質量分析法、蛍光測定法、赤外線分光測定法、紫外線分光測定法、palentiostatic電流測定法、DNAハイブリダイゼーション、DNAマイクロアレイ、GeneChipアレイ、HuSNPアレイ、BeadArrays、MassExtend、SNP−IT、TaqManアッセイ、インベーダーアッセイ、MassCleave、サザンブロット、スロットブロット、またはドットブロットを含むがそれに限定されない。
【0051】
本発明の方法は、高コピー数核酸種に対して低コピー数核酸種を増幅、検出または定量化するために用いられてもよい。好ましい実施形態において、サンプル中の高コピー数核酸種に対する低コピー数核酸種の出発相対パーセンテージは0.5%から49%である。関連する実施形態において、サンプル中の高コピー数核酸種に対する低コピー数核酸種の出発相対パーセンテージは、0.5〜1.0%の低コピー数核酸種、約1.0〜2.0%の低コピー数核酸種、約2.0〜3.0%の低コピー数核酸種、約3.0〜4.0%の低コピー数核酸種、約4.0〜5.0%の低コピー数核酸種、約5.0〜6.0%の低コピー数核酸種、約7.0〜8.0%の低コピー数核酸種、約8.0〜9.0%の低コピー数核酸種、約9.0〜10%の低コピー数核酸種、約10〜12%の低コピー数核酸種、約12〜15%の低コピー数核酸種、約15〜20%の低コピー数核酸種、約20〜25%の低コピー数核酸種、約25〜30%の低コピー数核酸種、約30〜35%の低コピー数核酸種、または約35〜45%の低コピー数核酸種である。
【0052】
関連する実施形態において、高コピー数核酸種に対する低コピー数核酸種の最終相対パーセンテージは5%から80%である。関連する実施形態において、サンプル中の高コピー数核酸種に対する低コピー数核酸種の最終相対パーセンテージは、5.0〜6.0%の低コピー数核酸種、約6.0〜7.0%の低コピー数核酸種、約7.0〜8.0%の低コピー数核酸種、約8.0〜9.0%の低コピー数核酸種、約9.0〜10%の低コピー数核酸種、約10〜15%の低コピー数核酸種、約15〜20%の低コピー数核酸種、約20〜25%の低コピー数核酸種、約25〜30%の低コピー数核酸種、約30〜35%の低コピー数核酸種、約35〜40%の低コピー数核酸種、約40〜45%の低コピー数核酸種、約45〜50%の低コピー数核酸種、約50〜55%の低コピー数核酸種、約55〜60%の低コピー数核酸種、約60〜65%の低コピー数核酸種、約65〜70%の低コピー数核酸種、約70〜75%の低コピー数核酸種、約75〜80%の低コピー数核酸種、または約80%より大きい低コピー数核酸種である。
【0053】
別の実施例において、本発明の方法は、核酸の抽出、単離または精製に対して好適な当該技術分野におけるあらゆる技術と共に用いられてもよく、その技術は、塩化セシウム勾配、勾配、スクロース勾配、グルコース勾配、遠心分離プロトコル、煮沸、Chemagen viral DNA/RNA 1kキット、Chemagen bloodキット、Qiagen精製システム、QIA DNA blood精製キット、HiSpeed Plasmid Maxiキット、QIAfilter plasmidキット、Promega DNA精製システム、MangeSil Paramagnetic Particleに基づくシステム、Wizard SV技術、Wizard Genomic DNA精製キット、Amersham精製システム、GFX Genomic Blood DNA精製キット、Invitrogen Life Technologies精製システム、CONCERT精製システム、Mo Bio Laboratories精製システム、UltraClean BloodSpinキット、UlraClean Blood DNAキット、およびMicrocon 100フィルタ(Amicon、MA)によるろ過を含むがそれに限定されない。
【0054】
別の実施形態においては、核酸を抽出、精製、単離または濃縮することは必須ではない;核酸は増幅可能な形で提供される必要があるだけである。増幅前にプライマーによって核酸鋳型をハイブリダイズする必要はない。たとえば、当該技術分野において周知の標準プロトコルを用いて、細胞またはサンプル溶解物中で増幅を行なうことができる。固体支持上、固定された生物調製物中、または別様で非DNA物質を含有する組成物中にあるDNAであって、最初にその固体支持または固定された調製物または組成物内の非DNA物質から抽出することなく増幅可能なDNAは、そのDNAを適切なプライマーとアニーリングさせてコピー、特に増幅させることができて、かつそのコピーまたは増幅された産物を回収して本明細書に記載されるとおりに利用できる限り、さらなる精製なしに直接用いることができる。
【0055】
別の実施形態において、記載される方法は、すべてその全体がここに引用により援用される公開された米国特許出願第20030027135号、第20030082539号、第20030124556号、第20030175696号、第20030175695号、第20030175697号、および第20030190605号、ならびに米国特許出願第10/326,047号、第10/660,997号、第10/660,122号、および第10/660,996号に開示およびクレームされるような、核酸増幅と分子量分析による情報提供アンプリコンの主成分組成の決定との組合せを用いて未知の生物薬剤(bioagents)を迅速に同定するための方法と組合せて用いられてもよい。
【0056】
本発明はさらに、本発明の方法を実行するためのキットにも関する。キットは、本明細書に記載される組成物および/または成分の1つまたはそれ以上を含有する1つまたはそれ以上のコンテナを含んでもよい。キットは成分の1つまたはそれ以上をあらゆる数の別個のコンテナ、小包、管、ガラス瓶、マイクロタイタプレートなどの中に含んでもよく、または複数の成分がこうしたコンテナ中でさまざまな組合せで組合されてもよい。キットは本明細書に記載される方法と共に利用でき、時には本明細書に記載される1つもしくはそれ以上の方法を行なうための指示書、および/または本明細書に記載される1つもしくはそれ以上の組成物もしくは試薬の説明書を含む。指示書および/または説明書は、印刷された形であってもよく、キット挿入物に含まれてもよい。キットは、こうした指示書または説明書を提供するインターネット上の場所の記載を含んでもよい。
【0057】
アポトーシス核酸の検出および定量分析
本明細書において提供される方法は、サンプル中のアポトーシス核酸の増幅、検出および定量に特に有用である。プログラム細胞死すなわちアポトーシスは、すべての多細胞生物における形態形成、発達、分化、およびホメオスタシスにおいて必須の機構である。典型的にアポトーシスは、DNA断片化、クロマチン凝縮、細胞質および核の分解、ならびにアポトーシス体の形成を含む特有の形態的特徴をもたらす特定の経路の活性化によって、壊死と区別される。
【0058】
カスパーゼ活性化DNアーゼ(Caspase−activated DNase:CAD)は、代替的にDNA断片化因子(DNA fragmentation factor:DFFまたはDFF40)とも呼ばれ、クロマチンのヌクレオソーム内リンカ領域における2本鎖DNA破壊を生じて、およそ180塩基対またはその倍数のDNAオリゴマーからなるヌクレオソームラダーをもたらすことが示されている。ラダー断片の大多数(最大70%)は、180bpのヌクレオソームモノマーとして生じる。すべての断片は5’−リン酸化末端を有し、その大多数は平滑末端である(ここに引用により援用されるWidlakらのJ Biol Chem.2000年3月17日;275(11):8226−32)。
【0059】
よって、高バックグラウンドの野生型DNAの存在下で、特定の細胞または組織由来の、または生物流体中に細胞外断片として存在する特定のDNA断片の既知の突然変異およびエピ変異(epimutation)を標的特異的な態様で特徴付ける必要性が高まっている(例、薬物処理の生体異物に応答する細胞からの;炎症を起こした、悪性または別様で疾患を有する組織からの;移植、または妊娠中の胎児および母体DNAの差異からのDNAの体細胞突然変異)。
【0060】
したがって本発明は、サンプル中に低濃度存在する短く断片化した核酸種を選択的に増幅、検出および定量化するための方法を提供する。この方法は、オリゴヌクレオソームを検出するために特に有用である。オリゴヌクレオソームはクロマチンの反復する構造単位であり、その各々は、インビトロおよびインビボにおいてDNAをヌクレアーゼ分解から部分的に保護するヒストンコアの周囲に巻かれたおよそ200塩基対のDNAからなる。これらの単位はモノマーまたはマルチマーとして見出されることができ、一般にアポトーシスDNAラダーと呼ばれるものを生成する。この単位はヒストンに結合されていないフランキングDNAのヌクレアーゼ分解によって形成されるため、大多数のオリゴヌクレオソームは平滑末端であり、かつ5’−リン酸化されている。アポトーシス細胞のパーセンテージが低い生物系、またはアポトーシスが非同時的に起こっている生物系においては、オリゴヌクレオソームの検出は困難であり、単離はもっと困難である;しかし、オリゴヌクレオソームは疾患およびその他の状態を予測するものとなり得る(ここに引用により援用される米国特許出願第20040009518号を参照されたい)。よって本明細書に記載される方法は、約1000塩基対またはそれ以下、約750塩基対またはそれ以下、約500塩基対またはそれ以下、および約300塩基対またはそれ以下のサイズを有する核酸(例、胎児核酸)を検出するために利用できる。
【0061】
診断上の適用
患者の血漿および血清中の循環核酸は、特定の疾患および状態に関連している(Lo YMDら、N Eng J Med 1998;339:1734−8;Chen XQら、Nat Med 1996;2:1033−5、Nawroz Hら、Nat Med 1996;2:1035−7;Lo YMDら、Lancet 1998;351:1329−30;Lo YMDら、Clin Chem 2000;46:319−23を参照されたい)。さらに、血中で循環するこれらの疾患に関連する低コピー数核酸を検出および正確に定量化できることは、疾患の診断および予後に非常に有益であることが判明するだろう(Wangら、Clin Chem.2004年1月;50(1):211−3)。
【0062】
循環核酸の特徴および生物学的出所は完全には理解されていない。しかし、アポトーシスを含む細胞死が1つの主要な要素であるようだ(Fournieら、Gerontology 1993;39:215−21; Fournieら、Cancer Lett 1995;91:221−7)。理論に縛られることなく、アポトーシスを受ける細胞は核酸をアポトーシス体内に処理するため、ヒト対象の血漿または血清中の循環核酸の少なくとも一部は、微粒子関連ヌクレオソームの形を取る短い断片化DNAであり得る。本発明は、血漿または血清中に存在する他の高コピー数種よりも低濃度で対象の血漿または血清中に存在する短い断片化循環核酸種を増幅、検出および定量化するための方法を提供する。
【0063】
本発明は、ある疾患状態の疑いがあるか、またはある疾患状態であることが知られる患者におけるその疾患状態を評価する方法を提供する。本発明の実施形態の1つにおいて、本発明は、ある疾患状態の疑いがあるか、またはある疾患状態であることが知られる患者から生物サンプルを得て、本明細書において提供される方法を用いて低コピー数核酸種を優先的に増幅、検出または定量化し、その核酸種の量または濃度または特徴を定めてその核酸種の量または濃度または特徴を対照(例、生物サンプルからのバックグラウンドゲノムDNA、高コピー数種、高頻度対立遺伝子など)と比較することによって疾患状態を評価することを含む。
【0064】
「疾患状態を評価する」という表現は、患者の疾患状態を評定することを示す。たとえば、患者の状態の評価とは、患者における疾患の有無の検出を含んでもよい。一旦患者における疾患の存在が検出されると、患者の疾患状態の評価は、患者における疾患の深刻度の判定を含んでもよい。その判定を用いて疾患の予後、たとえば予後または処置計画などを作成することがさらに含まれてもよい。患者の状態の評価は、患者が疾患を有するか、または過去に疾患状態だったことがあるかを定めることを含んでもよい。その時の疾患状態の評価は、患者におけるその疾患状態の再発の可能性の判定または再発のモニタリングを含んでもよい。疾患状態の評価は、疾患の徴候についての患者のモニタリングを含んでもよい。したがって疾患状態の評価は、患者の疾患状態の検出、診断またはモニタリング、および患者の予後または処置計画の判定を含む。疾患状態を評価する方法はリスク層別化を助ける。
【0065】

本明細書において提供される方法は腫瘍形成核酸を増幅、検出および定量化するために用いられてもよく、さらに癌に関係する障害の診断または予後のために用いられてもよい。癌患者からの血漿には、DNAおよびRNAを含む核酸が存在することが知られている(Lo KWら、Clin Chem(1999)45,1292−1294)。これらの分子はおそらくアポトーシス体に収められており、したがって「遊離RNA」に比べてより安定化している(Anker PおよびStroun M、Clin Chem(2002)48、1210−1211;Ng EKら、Proc Natl Acad Sci USA(2003)100、4748−4753)。
【0066】
1980年代後半および1990年代にはいくつかのグループが、癌患者由来の血漿DNAが鎖安定性の低下、Rasおよびp53の突然変異、マイクロサテライトの変化、選択された遺伝子の異常なプロモータの高度メチル化(hypermethylation)、ミトコンドリアDNA突然変異および腫瘍に関係するウイルスDNAを含む、腫瘍に特異的な特徴を示すことを証明した(Stroun Mら、Oncology(1989)46,318−322;Chen XQら、Nat Med(1996)2,1033−1035;Anker Pら、Cancer Metastasis Rev(1999)18,65−73;Chan KCおよびLo YM、Histol Histopathol(2002)17,937−943)。広範囲の悪性腫瘍に対する腫瘍特異的DNAが見出された:血液、結腸直腸、膵臓、皮膚、頭部および頸部(head−and−neck)、肺、胸、腎臓、卵巣、鼻咽頭、肝臓、嚢、胃、前立腺および頸部(cervix)のものである。まとめると、上述のデータから、血漿中の腫瘍由来DNAは罹患患者に遍在しており、それはアポトーシスなどの通常の生物プロセスの結果らしいことが示される。癌患者からのこれらの血漿DNA断片のサイズを調べたところ、その大多数がアポトーシスDNA断片化の特徴であるヌクレオソームDNAの倍数の長さを示すことが明らかになった(Jahr Sら、Cancer Res(2001)61,1659−1665)。
【0067】
癌が特異的なウイルスDNA配列または腫瘍サプレッサおよび/または腫瘍遺伝子突然変異配列を示すとき、この方法。しかし、ほとんどの癌(およびほとんどのメンデル障害)に対して、臨床的適用は、腫瘍特異的DNAを血漿中に存在する患者の正常DNAと比較して単離、定量化および特徴付けする方法の最適化を待っている。したがって、当該技術分野におけるさらなる進歩を達成するには、正常な個体の血漿中のDNAの分子構造および動力学を理解する必要がある。
【0068】
よって本発明は、新生物疾患、悪性になる前の疾患、または増殖性疾患に関連するヒトまたは動物の血液の血漿または血清画分における特定の細胞外核酸の検出に関する。特定的に本発明は、突然変異腫瘍遺伝子またはその他の腫瘍関連DNAに由来する核酸の検出と、本明細書において提供されるような突然変異DNAの濃縮を伴うDNA抽出を用いることによって血液の血漿または血清画分に見出される細胞外突然変異腫瘍遺伝子または腫瘍関連DNAを検出およびモニタリングする方法とに関する。特に本発明は、本明細書において提供されるサイズ選択的濃縮方法を通じて新生物に関連する突然変異を含有するヒトまたはその他の動物における良性新生物、悪性になる前の新生物、または悪性新生物の存在、進行または臨床的状態の検出、同定またはモニタリング、およびその後の濃縮DNAにおける新生物の突然変異核酸の検出に関する。
【0069】
本発明は、生物サンプルにおける腫瘍に由来するDNAを同定するための方法を特徴とする。これらの方法は、生物サンプルにおいてアポトーシス体またはヌクレオソームの形をとる腫瘍由来DNAを区別または検出するために用いられてもよい。好ましい実施形態において、非癌DNAと腫瘍由来DNAとは核酸サイズの差を観察することによって区別され、ここでは低塩基対DNAが癌に関連している。
【0070】
出生前診断
1997年以降、妊婦の血液循環において遊離胎児DNAを検出できることが公知である。妊娠関連の合併症がないとき、循環DNAの合計濃度は10〜100ngまたは1,000から10,000ゲノム当量/ml血漿の範囲であり(Bischoffら、Hum Reprod Update.2005年1月−2月;11(1):59−67およびそこに引用される参考文献)、胎児DNA画分の濃度は第1トリメスタにおける約20コピー/mlから第3トリメスタにおける>250コピー/mlまで増加する。電子顕微鏡による調査および限外ろ過濃縮実験によって、胎盤由来の断片化ヌクレオソームDNAを有するアポトーシス体が母体血漿における胎児DNAの供給源であると著者らは結論付ける。
【0071】
妊婦における循環DNA分子のサイズは非妊婦よりも顕著に大きいことが立証されており、妊婦および非妊婦に対する>201bpの合計血漿DNAの中央パーセンテージはそれぞれ57%および14%であり、サイズが>193bpおよび>313bpの胎児由来DNAの中央パーセンテージはそれぞれたった20%および0%である(Chanら、Clin Chem.2004年1月;50(1):88−92)。
【0072】
以下の発見が独立して確認された(Liら、Clin Chem.2004年6月;50(6):1002−11);ここに引用により援用される米国特許出願第200516424号は、概念の証拠として、予備アガロースゲル電気泳動および<300bpサイズ画分の溶出を介したサイズ排除クロマトグラフィによって、合計循環血漿DNAの約5%から>28%まで、胎児DNAの>5倍相対濃縮が可能であることを示した。残念ながら、この方法は自動化が困難であり、DNA材料が損失し得ること、および関連アガロースゲル部分から回収されるDNA濃度が低いことから、信頼性あるルーチン的使用に対してあまり実用的ではない。
【0073】
よって本発明は、生物サンプル中の異なる個体に由来するDNA種を区別するための方法を特徴とする。これらの方法は、母体サンプル中の胎児DNAを区別、検出および定量化するために用いられてもよい。
【0074】
超音波検査、羊水穿刺、絨毛生検(chorionic villi sampling:CVS)、母体血液中の胎児血液細胞、母体血清アルファフェトプロテイン、母体血清ベータ−HCG、および母体血清エストリオールを含むさまざまな非侵襲性および侵襲性の技術が出生前診断のために利用可能である。しかし、非侵襲性の技術は特異性が低く、高い特異性および高感度を有する技術は侵襲性が高い。さらに、ほとんどの技術は最大有用性のために妊娠中の特定の期間にしか適用できない。
【0075】
母体血漿における胎児DNA検出のために開発された最初のマーカは、男の胎児に存在するY染色体だった(Loら、Am J Hum Genet(1998)62:768−775)。Y染色体マーカの堅牢性は、当該技術分野における多くの研究者によって再現された(Costa JMら、Prenat Diagn 21:1070−1074)。このアプローチは胎児の性別を判定するための高度に正確な方法を構成し、この方法は性別に関係する疾患の出生前調査に有用である(Costa JM、Ernault P(2002)Clin Chem 48:679−680)。
【0076】
母体血漿DNA分析は、RhD陰性の妊婦における胎児のRhD血液型状態の非侵襲性出生前判定にも有用である(Loら(1998)N Engl J Med 339:1734−1738)。このアプローチは正確であることが多くのグループによって示され、2001年からBritish National Blood Serviceによるルーチンサービスとして導入されている(Finning KMら(2002)Transfusion 42:1079−1085)。
【0077】
より近年には、母体血漿DNA分析は胎児のβ−サラセミアメジャーの非侵襲性出生前排除に有用であることが示された(Chiu RWKら(2002)Lancet 360:998−1000)。HbE遺伝子の出生前検出にも類似のアプローチが用いられる(Fucharoen Gら(2003)Prenat Diagn 23:393−396)。
【0078】
母体血漿における胎児DNAのその他の遺伝子的適用は、軟骨発育不全症(Saito Hら(2000)Lancet 356:1170)、筋緊張性ジストロフィー症(Amicucci Pら(2000)Clin Chem 46:301−302)、嚢胞性繊維症(Gonzalez−Gonzalez MCら(2002)Prenat Diagn 22:946−948)、ハンチントン病(Gonzalez−Gonzalez MCら(2003)Prenat Diagn 23:232−234)、および先天性副腎皮質過形成(Rijnders RJら(2001)Obstet Gynecol 98:374−378)の検出を含む。こうした適用の範囲は今後数年間のうちに増加することが期待される。
【0079】
本発明の別の局面においては、患者は妊娠しており、患者またはその胎児における疾患または生理的状態を評価する方法は、患者またはその胎児の検出、モニタリング、予後または処置を助ける。より特定的には、本発明は、母から得られた生物サンプル中の胎児DNAを検出することによって胎児の異常を検出する方法を特徴とする。本発明に従う方法は、DNAの特徴(例、サイズ、重量、5’リン酸化、平滑末端)に基づいて胎児DNAを母体DNAと区別することによって母体サンプル中の胎児DNAを検出することを提供する。Chanら、Clin Chem.2004年1月;50(1):88−92;およびLiら、Clin Chem.2004年6月;50(6):1002−11を参照されたい。こうした方法を用いて、遺伝子の異常または遺伝子に基づく疾患を予測する胎児DNAを同定できることによって、出生前診断のための方法を提供できる。これらの方法は、核酸の変化、突然変異またはその他の特徴(例、メチル化状態)が疾患状態に関連するような、妊娠に関連するあらゆるすべての状態に適用可能である。本発明の方法およびキットは、染色体の異常(例、異数性またはダウン症候群に関連する染色体の異常)または遺伝的なメンデル遺伝子障害、およびそれぞれに関連する遺伝子マーカ(例、嚢胞性繊維症または異常ヘモグロビン症などの単一遺伝子障害)に伴う形質を含む胎児遺伝子形質の分析を可能にする。付加的な診断可能な疾患は、たとえば子癇前症、早産、妊娠悪阻、子宮外妊娠、胎児染色体異数性(トリソミー18、21または13など)、および子宮内成長遅滞などを含む。
【0080】
別の実施形態においては、対象となる複数の座の対立遺伝子がシーケンシングされ、それらの相対量が定量化および比較される。実施形態の1つにおいては、鋳型DNA上の単一染色体の1から数十から数百から数千の対象となる座の対立遺伝子の配列が決定される。別の実施形態においては、複数の染色体の1から数十から数百から数千の対象となる座の対立遺伝子の配列が検出および定量化される。
【0081】
分析可能な染色体に関する制限はない。あらゆる染色体上の対象となるヘテロ接合の座における対立遺伝子の比率を、あらゆる他の染色体上の対象となるヘテロ接合の座における対立遺伝子の比率と比較できる。別の実施形態においては、1つの染色体上の対象となるヘテロ接合の座における対立遺伝子の比率が、2、3、4または5以上の染色体上の対象となるヘテロ接合の座における対立遺伝子の比率と比較される。別の実施形態においては、1つの染色体上の対象となる複数の座における対立遺伝子の比率が、2、3、4または5以上の染色体上の対象となる複数の座における対立遺伝子の比率と比較される。これらの実施形態のいくつかにおいては、比較される染色体は、染色体1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、X、またはYなどのヒト染色体である。関連する実施形態においては、染色体13、18および21の対象となるヘテロ接合の座における対立遺伝子の比率が比較される。別の実施形態においては、妊婦のサンプルから得られた鋳型DNA上の1から数十から数百から数千の対象となる座の配列が決定される。実施形態の1つにおいては、対象となる座は1つの染色体上にある。別の実施形態においては、対象となる座は複数の染色体上にある。
【0082】
「染色体の異常」という用語は、対象染色体と正常な相同染色体との構造の偏差を示す。「正常」という用語は、特定の種の健康な個体において見出される優勢な核型またはバンディングパターンを示す。染色体の異常は数的なものまたは構造的なものであってもよく、異数性、倍数性、逆位、トリソミー、モノソミー、重複、欠失、染色体の一部の欠失、付加、染色体の一部の付加、挿入、染色体の断片、染色体の領域、染色体の転位、および転座を含むがそれに限定されない。染色体の異常は、病理的状態の存在または病理的状態になる傾向と相関関係であり得る。
【0083】
その他の疾患
多くの疾患、障害および状態(例、組織または器官の拒絶反応)は、本明細書において提供される方法によって検出できるアポトーシスDNAまたはヌクレオソームDNAを生成する。アポトーシスDNAを生成すると考えられる疾患および障害は、糖尿病、心疾患、卒中、外傷および慢性関節リウマチを含む。紅斑性狼瘡(Lupus erythematosus:SLE)(RumoreおよびSteinman、J Clin Invest.1990年7月;86(1):69−74)。Rumoreらは、SLE血漿から精製したDNAが、オリゴヌクレオソームDNAにみられる特徴的な200bp「ラダー」によく似た約150〜200、400、600、および800bpのサイズに対応する別個のバンドを形成することを示した。
【0084】
本発明は、外傷を有する疑いのある患者、または外傷を有することが知られている患者の疾患状態を評価する方法も提供する。この方法は、外傷を有する疑いのある患者、または外傷を有することが知られている患者から血漿または血清のサンプルを得るステップと、サンプル中のミトコンドリア核酸の量または濃度を検出するステップとを含む。
【実施例】
【0085】
下記の実施例は例示的なものであって制限的なものではない。以下に記載される偏向対立遺伝子特異的(BAS)増幅方法は、低コピー数の核酸を検出および測定するために利用でき、たとえば個体の遺伝子型を決定するために適合できる。この実施例において、こうした遺伝子型は単一ヌクレオチド多型である。たとえば質量分析法に基づく系を用いてこうした遺伝子型を決定するために用いられ得るステップの一例は次のとおりである。実施例1および実施例2におけるステップなど、いくつかのステップはデータを生成するために1回だけ行なわれる必要があり、そのデータはその後SNP(またはその他の)アッセイの実行において用いられる(または提供されるか、または試験キットもしくはアルゴリズムに組込まれる)。
【0086】
実施例1:プライマー比率の最適化
特定のSNPの同定(SNPアッセイ)のために、低コピー数プライマーに対する高コピー数プライマーの最適な比率が決定される。こうした決定を行ない得る実験構成の例を表1および表2に示す。表3−5および関連する本文中に特定の増幅条件を示す。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

男性および女性サンプルの異なる混合比率を有する8ngのゲノムDNAが、表に示されるように変動する比率の対立遺伝子特異的オリゴとともにPCR増幅にかけられる。
【0089】
【表3】

PCRサイクリングは45サイクル用であり、各サイクルは94℃で15分間、94℃で20秒間、56℃で30秒間、72℃で1分間、72℃で3分間であり、その後産物は4℃で維持される。
【0090】
【表4】

5マイクロリットルPCR反応の各々に2マイクロリットルのSAP混合物を加える。SAP処理PCR反応をインキュベートし、次いで以下の温度で維持する:37℃で20分間、85℃で5分間、それ以降は4℃。
【0091】
【表5A】

【0092】
【表5B】

iPLEX伸長に対しては、200の短サイクルが行なわれ、各サイクルは94℃で30秒間、94℃で5秒間、52℃で5秒間、80℃で5秒間、および72℃で3分間を含み、その後産物は4℃で維持される。さらなる処理および分析は、6mgの樹脂による脱塩(deslating)、SpectroChip Bioarraysへの供与およびMALDI−TOF MS分析を含む。
【0093】
この実施例においては、男性および女性からの既知の核酸濃度の核酸サンプルがある割合で混合されることによって、Y軸に示される特定のY染色体対立遺伝子の比率(Y DNAの比率)が与えられる。この実施例においては、Y染色体のみに存在する(または少なくともX染色体には存在しない)ことが知られる特定のSNPが選択されて使用され、X染色体のみに存在する(または少なくともY染色体には存在しない)ことが知られる別の特定のSNPが選択されて使用される。たとえば0.00%の比率は男性核酸を有さず、よってY対立遺伝子を有さない。50%のY DNAの比率は、混合されることによって女性サンプルよりも男性サンプルの量が多くなって、50%のY対立遺伝子が与えられ、これは女性のXX染色体構成と男性のXY染色体構成とを考慮に入れたものである。表1のX軸は、示されるXオリゴの割合を与えるために混合されたXおよびY特異的オリゴ溶液の体積の割合を示す。表1に明示される96の反応条件(結果を生成する増幅反応の付加的な詳細がここに提供される)の各々からの核酸サンプルは、この場合には次いで質量分析法によって分析される。表2も参照されたい。
【0094】
図4A−Fに示されるとおり、さまざまな質量スペクトログラムが得られる。2つのピークの各々は特異的なものであり、一方はX染色体SNPに対するもの、他方はY染色体SNPに対するものである。たとえば、図4A−Fのスペクトログラムは((標的DNA F:M 98:2)と示されるとおり)C行に対応し、これは男性またはY対立遺伝子が2%存在することを意味する。しかし、図4Aはプライマーの1:10のX:Y比率を例示し、これは列6に示される条件にほぼ対応する。例示されるとおり、(この場合はY染色体SNPに対する)低コピー数プライマーの割合が増加するにつれて、右手のピークのサイズが増加する。図4Aでは、Y特異的プライマーの存在が0であり、このとき男性特異的(右手側)ピークは検出できない。図4Fでは、Y特異的プライマーが50倍過剰であり、このとき男性ピークは非常に大きい。大多数でなくても、多くの適用(すなわち検出方法)に対する最適なプライマー比率は、約1:1のピークサイズ比率が得られるものである。図4C−Dに例示されるとおり、1:5のプライマー比率は小さすぎ、1:10のプライマー比率は大きすぎ、約1:7の比率であれば1:1の面積のピークが得られることが期待される(図示せず)。これらの特徴は図5にも例示される。SNPが検出および定量化される、これらのプライマーを用いるこの特定のアッセイに対して、高コピー数プライマーの低コピー数プライマーに対するプライマー比率1:10を用いることによって、低コピー数種を含む核酸(血漿または血清における母体核酸中の胎児核酸など)が核酸の約1%から約15%であるようなあらゆるその他のサンプルを分析できる。同様の考察およびステップを利用して、たとえばリアルタイムPCRおよび蛍光に基づく検出系など、他の検出スキームにこのアッセイを適合させてもよい。最適な1:1のピーク比率が得られるこの1:10のプライマー比率はアッセイによって変動する可能性があり、低コピー数核酸対高コピー数核酸のパーセンテージに基づいて変動し得る。こうした変動は、たとえば1:2から約1:20であってもよい。
【0095】
実施例2:低コピー数核酸の増幅
図6A−図6Fに例示されるとおり、一旦最適なプライマー比率が分かると、このプライマーの比率を用いて、変動する割合の低コピー数核酸および高コピー数核酸が増幅される。高コピー数(女性)核酸の低コピー数(男性)核酸に対する割合は、たとえば図4Aにおける100:0から図4Fにおける50:50まで変動し得る。両ピークの合計に対する一方のピークの面積は、図7に示されるようにプロットできる。
【0096】
実施例3:遺伝子型情報の決定
個体の遺伝子型を決定することが可能であり、特に当該技術の特定の適用において、胎児と母とのRhD適合性または不適合性を決定できる。こうした実施形態においては、母と胎児との間に4つの遺伝子型の組合せが可能であり、それが図9−図12に例示される。母のみのサンプルを得て、その母体サンプルに対する3つの別個の反応を行ない、それらを母体プラス胎児サンプルに対して得られた3つの別個の反応と比較することによって、母および胎児の遺伝子型を決定できる。3つの別個の反応とは、高コピー数C対立遺伝子プライマー、高コピー数T対立遺伝子プライマー、ならびに同濃度のC対立遺伝子およびT対立遺伝子プライマーの反応である。両方のサンプル型に対して、これらの同じ3つの反応が行なわれる。
【0097】
実施例4:遺伝子型情報の定量評価
染色体の異数性の判定など、当該技術の特定の適用に対しては、定量的判定が必要とされる。図7に示されるようなプロットを得て、低コピー数核酸の高コピー数核酸に対するパーセンテージが未知であるサンプルに対するスペクトログラムを得るとき、サンプル中に生じたピークの面積を比較することによってスペクトログラムが分析されてもよい。特定的には、X軸に示されるような(0から1の)比率が得られてから、対応するY軸上の高:低コピー数の比率を決定できる。たとえば面積の比率が0.6であれば、図7に示されるとおりF:M比率は98:2である。異数性の結果を定めるためには、各々が異なる低コピー数:高コピー数の比率を与える少なくとも2つのSNPアッセイを用いることが好ましい。このアプローチの一例は次のとおりである。母体バックグラウンドに対する胎児の遺伝子型(しばしば1%〜5%胎児対99%〜95%母体;図8A−図8B)を決定する。母体の遺伝子型はホモ接合(野生型または突然変異/優性または劣性)であり、胎児の遺伝子型はヘテロ接合である。母は1つの対立遺伝子においてCCであり、胎児はCCTであると仮定する。母および胎児の両方がホモ接合であれば、このアッセイは情報を与えない。この可能性は、たとえば5より多い、またはより好ましくは約10より多い複数のSNPアッセイを用いることによって、すべてのアッセイが情報を与えない可能性を非常に低くすることによって克服できる。したがってこの実施例においては、別のSNP遺伝子型が定められ、母はCCであり胎児はCTTである。上記に示したとおりに算出された比率を用いて、各SNPに対する偏向対立遺伝子増幅反応が行なわれる。得られたスペクトログラムピークの比率を比較することによって、トリソミーの検出およびそのトリソミーがCCTかCTTかの決定の両方が可能である。
【0098】
本明細書において参照した特許、特許出願、公開公報および文献の各々の全体がここに引用により援用される。上記の特許、特許出願、公開公報および文献の引用は、前述のいずれかが関係先行技術であることを承認するものでも、これらの公開公報または文献の内容または日付に関するいかなる承認を構成するものでもない。
【0099】
本発明の基本的局面から逸脱することなく、上述に修正が加えられてもよい。1つまたはそれ以上の特定の実施形態を参照して本発明をかなり詳細に説明したが、この出願において特定的に開示される実施形態に変更が加えられてもよく、これらの修正および改善は本発明の範囲および意図のうちであることが通常の当業者に認識されるであろう。
【0100】
本明細書に例示的に記載された本発明は、好適には本明細書に特定的に開示されないあらゆる構成要素(単数または複数)の不在下で実行されてもよい。たとえば、本明細書における各々の場合に、「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」という用語はいずれも他方の2つの用語のいずれかに置換えられてもよい。用いられた用語および表現は説明の用語として用いられたものであって限定の用語ではなく、こうした用語および表現の使用は提示および記載された特徴のあらゆる同等物またはその部分を排除するものではなく、クレームされる本発明の範囲内でさまざまな修正が可能である。「a」または「an」という用語は、構成要素の1つまたは構成要素の2つ以上のいずれが記載されているのかが文脈上明らかでない限り、その用語が修飾する構成要素の1つまたは複数個を示すことができる(例、「デバイス(a device)」は1つまたはそれ以上のデバイスを意味し得る)。本明細書において用いられる「約」という用語は、時にはその下にあるパラメータの10%以内の値(すなわちプラスまたはマイナス10%)を、時にはその下にあるパラメータの5%以内の値(すなわちプラスまたはマイナス5%)を、時にはその下にあるパラメータの2.5%以内の値(すなわちプラスまたはマイナス2.5%)を、時にはその下にあるパラメータの1%以内の値(すなわちプラスまたはマイナス1%)を、時には変動しないパラメータを示す。たとえば、「約100グラム」という重量は、90グラムから110グラムの重量を含み得る。よって、本発明は代表的な実施形態および任意の特徴によって特定的に開示されているが、本明細書に開示される概念の修正形および変更形が当業者によって用いられてもよく、こうした修正形および変更形は本発明の範囲内にあると考えられることが理解されるべきである。
【0101】
本発明の実施形態は、添付の請求項に示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の核酸を増幅するための方法であって、前記サンプルは少なくとも第1の核酸種および第2の核酸種を含有し、前記第1の種は前記第2の種よりも高コピー数であり、前記方法は、
a)反応容器中で前記第1の核酸種に実質的に特異的な第1の増幅プライマーを前記第1の核酸種にアニーリングするステップを含み、第1のプライマーは第1の濃度を有し、前記方法はさらに
b)前記反応容器中で前記第2の核酸種に実質的に特異的な第2の増幅プライマーを前記第2の核酸種にアニーリングするステップを含み、第2のプライマーは第2の濃度を有し、前記第2の増幅プライマーの前記第2の濃度は前記第1の増幅プライマーの前記第1の濃度よりも高く、この方法はさらに
c)前記反応容器中で、前記第1および第2の核酸種に共通となり得かつ前記第1および第2の核酸種に実質的に特異的である別の増幅プライマーを前記第1および第2の核酸種にアニーリングするステップと、
d)前記反応容器中で核酸増幅反応を行ない、これによって、前記第2の核酸種の増幅産物の量が前記第1の核酸種の増幅産物の量に対して増加するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の核酸種の前記増幅産物を検出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の核酸種の前記増幅産物を検出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
a)前記第1の核酸種の前記増幅産物を検出するステップと、
b)前記第2の核酸種の前記増幅産物を検出するステップと、
c)前記第1の核酸種のアイデンティティを前記第2の核酸種のアイデンティティと比較するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記検出は質量分析法によって行なわれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
a)前記第1の核酸種の前記増幅産物を定量化するステップと、
b)前記第2の核酸種の前記増幅産物を定量化するステップと、
c)前記第1の核酸種の前記増幅産物の量を前記第2の核酸種の前記増幅産物の量と比較するステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記定量化は質量分析法によって行なわれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の核酸種は母体由来であり、前記第2の核酸種は胎児由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の核酸種は第1の核酸に基づくメチル化パターンを有し、前記第2の核酸種は第2の核酸に基づくメチル化パターンを有し、前記第1の核酸に基づくメチル化パターンは前記第2の核酸に基づくメチル化パターンとは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2のプライマーはメチル化特異的増幅プライマーである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
サンプル中の核酸を増幅するための方法であって、前記サンプルは少なくとも第1の核酸種および第2の核酸種を含有し、一方の種は他方の種よりも高コピー数であり、前記方法は
a)第1の反応容器中で前記第1の核酸種に実質的に特異的な第1の増幅プライマーを前記第1の核酸種にアニーリングするステップを含み、前記第1のプライマーは第1の濃度を有し、前記方法はさらに
b)前記第1の反応容器中で前記第2の核酸種に実質的に特異的な第2の増幅プライマーを前記第2の核酸種にアニーリングするステップを含み、前記第2のプライマーは第2の濃度を有し、前記第2の増幅プライマーの前記第2の濃度は前記第1の増幅プライマーの前記第1の濃度よりも高く、前記方法はさらに
c)前記第1の反応容器中で、前記第1および第2の核酸種に共通となり得かつ前記第1および第2の核酸種に実質的に特異的である別の増幅プライマーを前記第1および第2の核酸種にアニーリングし、核酸増幅反応を行ない、これによって、前記第1の種の方が前記高コピー数であるときには前記第2の核酸種の増幅産物が前記第1の核酸種の増幅産物に対して増加するステップと、
d)第2の反応容器中で前記第1の増幅プライマーを前記第1の核酸種にアニーリングするステップとを含み、前記第1の増幅プライマーはステップbの前記第2の濃度と同じ濃度で存在し、前記方法はさらに
e)前記第2の反応容器中で前記第2の増幅プライマーを前記第2の核酸種にアニーリングするステップを含み、前記第2の増幅プライマーはステップaの前記第1の濃度と同じ濃度で存在し、よって前記第1の増幅プライマーの濃度は前記第2の増幅プライマーの濃度よりも高く、前記方法はさらに
f)前記第2の反応容器中で、前記第1および第2の核酸種に共通となり得る別の増幅プライマーを前記第1および第2の核酸種にアニーリングし、核酸増幅反応を行ない、これによって、前記第2の種の方が前記高コピー数であるときには前記第1の核酸種の増幅産物が前記第2の核酸種の増幅産物に対して増加するステップを含む、方法。
【請求項12】
前記第1の核酸種の前記増幅産物を検出するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の核酸種の前記増幅産物を検出するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
a)請求項11のステップaの前記第1の核酸種の増幅産物を検出するステップと、
b)請求項11のステップbの前記第2の核酸種の増幅産物を検出するステップと、
c)請求項11のステップaの前記第1の核酸種のアイデンティティを請求項11のステップbの前記第2の核酸種のアイデンティティと比較するステップと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記検出は質量分析法によって行なわれる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
a)請求項11のステップdの前記第1の核酸種の増幅産物を検出するステップと、
b)請求項11のステップeの前記第2の核酸種の増幅産物を検出するステップと、
c)請求項11のステップdの前記第1の核酸種のアイデンティティを請求項11のステップeの前記第2の核酸種のアイデンティティと比較するステップと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記検出は質量分析法によって行なわれる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
a)請求項11のステップaの前記第1の核酸種の増幅産物を検出するステップと、
b)請求項11のステップbの前記第2の核酸種の増幅産物を検出するステップと、
c)請求項11のステップdの前記第1の核酸種の増幅産物を検出するステップと、
d)請求項11のステップeの前記第2の核酸種の増幅産物を検出するステップと、
e)請求項11のステップaおよびbの前記第1および第2の核酸種のアイデンティティを請求項11のステップdおよびeの前記第1および第2の核酸種のアイデンティティと比較するステップと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
a)請求項11のステップaの前記第1の核酸種の増幅産物を定量化するステップと、
b)請求項11のステップbの前記第2の核酸種の増幅産物を定量化するステップと、
c)請求項11のステップaの前記第1の核酸種の前記増幅産物の量を請求項11のステップbの前記第2の核酸種の前記増幅産物の量と比較するステップと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
a)請求項11のステップdの前記第1の核酸種の増幅産物を定量化するステップと、
b)請求項11のステップeの前記第2の核酸種の増幅産物を定量化するステップと、
c)請求項11のステップdの前記第1の核酸種の前記増幅産物の量を請求項11のステップeの前記第2の核酸種の前記増幅産物の量と比較するステップと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
a)請求項11のステップaの前記第1の核酸種の増幅産物を定量化するステップと、
b)請求項11のステップbの前記第2の核酸種の増幅産物を定量化するステップと、
c)請求項11のステップdの前記第1の核酸種の増幅産物を定量化するステップと、
d)請求項11のステップeの前記第2の核酸種の増幅産物を定量化するステップと、
e)請求項11のステップaおよびbの前記第1および第2の核酸種の前記増幅産物の量を請求項11のステップdおよびeの前記第1および第2の核酸種の前記増幅産物の量と比較するステップと
をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記第1の核酸種は母体由来であり、前記第2の核酸種は胎児由来である、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の核酸種は第1の核酸に基づくメチル化パターンを有し、前記第2の核酸種は第2の核酸に基づくメチル化パターンを有し、前記第1の核酸に基づくメチル化パターンは前記第2の核酸に基づくメチル化パターンとは異なる、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
前記第1および第2のプライマーはメチル化特異的な増幅プライマーである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
非標的核酸をも含有するサンプル中に存在する標的核酸のアイデンティティを検出するための方法であって、前記標的核酸および非標的核酸は大きい方のコピー数および小さい方のコピー数を有し、前記方法は、
a)核酸のサンプルと、前記標的核酸に実質的に特異的な標的増幅プライマーと、前記非標的核酸に実質的に特異的な非標的増幅プライマーと、標的核酸および非標的核酸の両方に実質的に特異的な第3の増幅プライマーとを含む第1の反応混合物を調製するステップを含み、前記標的増幅プライマーは前記非標的増幅プライマーに対して低濃度であり、前記方法はさらに
b)核酸のサンプルと、前記標的核酸に実質的に特異的な標的増幅プライマーと、前記非標的核酸に実質的に特異的な非標的増幅プライマーと、標的核酸および非標的核酸の両方に実質的に特異的な第3の増幅プライマーとを含む第2の反応混合物を調製するステップを含み、前記標的増幅プライマーは前記非標的増幅プライマーに対して高濃度であり、前記方法はさらに
c)前記第1および第2の反応混合物を増幅して第1の組の増幅産物と第2の組の増幅産物とを得るステップを含み、前記第1の組の増幅産物は前記第2の組の増幅産物と区別可能である、方法。
【請求項26】
前記第1の組の増幅産物を前記第2の組の増幅産物と比較し、これによって、前記小さい方のコピー数が前記標的核酸または非標的核酸のいずれかに割当てられ得るステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の組の増幅産物を前記第2の組の増幅産物と比較し、これによって、前記標的核酸の遺伝子型が決定されるステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記サンプルは少なくとも第3の核酸種および第4の核酸種を含有し、前記第3の種は前記第4の種よりも高コピー数であり、前記方法はさらに
e)ステップa)−d)と同じ反応容器中で前記第3の核酸種に実質的に特異的な第3の核酸種増幅プライマーを前記第3の核酸種にアニーリングするステップを含み、前記第3のプライマーは第3の濃度を有し、前記方法はさらに
f)ステップa)−d)と同じ反応容器中で前記第4の核酸種に実質的に特異的な第4の増幅プライマーを前記第4の核酸種にアニーリングするステップを含み、前記第4のプライマーは第4の濃度を有し、前記第4の増幅プライマーの前記第4の濃度は前記第3の増幅プライマーの前記第3の濃度よりも高く、前記方法はさらに
g)ステップa)−d)と同じ反応容器中で、前記第3および第4の核酸種の各々に共通となり得かつ前記第3および第4の核酸種に実質的に特異的である別の増幅プライマーを前記第3および第4の核酸種にアニーリングするステップと、
d)ステップa)−d)と同じ反応容器中で核酸増幅反応を行ない、これによって、前記第3の核酸種の増幅産物の量が前記第4の核酸種の増幅産物の量に対して増加するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記サンプルは少なくとも第3の核酸種および第4の核酸種を含有し、前記第3の種は前記第4の種よりも高コピー数であり、前記方法はさらに
g)ステップa)−c)と同じ第1の反応容器中で前記第3の核酸種に実質的に特異的な第3の核酸種増幅プライマーを前記第3の核酸種にアニーリングするステップを含み、前記第3のプライマーは第3の濃度を有し、前記方法はさらに
h)ステップa)−c)と同じ第1の反応容器中で前記第4の核酸種に実質的に特異的な第4の増幅プライマーを前記第4の核酸種にアニーリングするステップを含み、前記第4のプライマーは第4の濃度を有し、前記第4の増幅プライマーの前記第4の濃度は前記第3の増幅プライマーの前記第3の濃度よりも高く、前記方法はさらに
i)ステップa)−c)と同じ第1の反応容器中で、前記第3および第4の核酸種の各々に共通となり得かつ前記第3および第4の核酸種に実質的に特異的である別の増幅プライマーを前記第3および第4の核酸種にアニーリングし、核酸増幅反応を行ない、これによって、前記第3の種の方が前記高コピー数であるときには前記第4の核酸種の増幅産物が前記第3の核酸種の増幅産物に対して増加するステップと、
j)ステップd)−f)と同じ第2の反応容器中で前記第3の増幅プライマーを前記第3の核酸種にアニーリングするステップとを含み、前記第3の増幅プライマーはステップhの前記第4の濃度と同じ濃度で存在し、前記方法はさらに
k)ステップd)−f)と同じ第2の反応容器中で前記第4の増幅プライマーを前記第4の核酸種にアニーリングするステップを含み、前記第4の増幅プライマーはステップgの前記第3の濃度と同じ濃度で存在し、よって前記第3の増幅プライマーの濃度は前記第4の増幅プライマーの濃度よりも高く、前記方法はさらに
l)ステップd)−f)と同じ第2の反応容器中で前記第3および第4の核酸種に共通となり得る別の増幅プライマーを前記第3および第4の核酸種にアニーリングし、核酸増幅反応を行ない、これによって、前記第4の種の方が前記高コピー数であるときには前記第3の核酸種の増幅産物が前記第4の核酸種の増幅産物に対して増加するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項30】
e)第2の反応容器中で前記第1の核酸種に実質的に特異的な第1の増幅プライマーを前記第1の核酸種にアニーリングするステップをさらに含み、第1のプライマーは第1の濃度を有し、前記方法はさらに
f)前記第2の反応容器中で前記第2の核酸種に実質的に特異的な第2の増幅プライマーを前記第2の核酸種にアニーリングするステップを含み、前記第2のプライマーは第2の濃度を有し、前記第2の増幅プライマーの前記第2の濃度は前記第1の増幅プライマーの前記第1の濃度と等しく、前記方法はさらに
g)前記第2の反応容器中で、前記第1および第2の核酸種に共通となり得かつ前記第1および第2の核酸種に実質的に特異的である別の増幅プライマーを前記第1および第2の核酸種にアニーリングするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
g)第3の反応容器中で前記第1の核酸種に実質的に特異的な第1の増幅プライマーを前記第1の核酸種にアニーリングするステップをさらに含み、前記第1のプライマーは第1の濃度を有し、前記方法はさらに
h)前記第3の反応容器中で前記第2の核酸種に実質的に特異的な第2の増幅プライマーを前記第2の核酸種にアニーリングするステップを含み、前記第2のプライマーは第2の濃度を有し、前記第2の増幅プライマーの前記第2の濃度は前記第1の増幅プライマーの前記第1の濃度と等しく、前記方法はさらに
i)前記第3の反応容器中で、前記第1および第2の核酸種に共通となり得かつ前記第1および第2の核酸種に実質的に特異的である別の増幅プライマーを前記第1および第2の核酸種にアニーリングするステップを含む、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−540802(P2009−540802A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515648(P2009−515648)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2007/071232
【国際公開番号】WO2007/147063
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(504159534)セクエノム, インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】