説明

サンプル中の因子VIIa(FVIIa)の濃度を測定する方法及びこの方法を実施するために用いるキット、そして因子を欠失した血漿を用いてサンプル中の因子VII(FVIIa)の濃度を測定する方法

【課題】本発明は、サンプル中の因子VIIa(FVIIa)の濃度をex―vivo(体外)で測定するための方法を実現することを目的としている。
【解決手段】このため、上記の方法は、a)サンプルをFVIIとFVIII、FIX及びFXIで構成される群から選択される少なくとも他の1つの因子を欠失したヒト血漿とを混合するステップと、b)カルシウム・イオン源、リン脂質剤、及び組織因子で構成されるトロンビン発生反応の開始成分を付加するステップと、C)反応液でトロンビン発生テストを行ってトロンボグラム付与パラメータを得るステップと、d)トロンボグラムのパラメータを標準的なトロンボグラムのパラメータと比較し、各標準トロンボグラムが反応液内の1pMから5nMの範囲の固定較正済み濃度で得られるステップと、e)ステップd)からFVIIa濃度を推定するステップと、により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はFVII(FVII)と因子VIII (FVIII)、因子IX(FIX)及び因子XI(FXI)で構成される群から選択される少なくとも他の1つの因子を欠失した血漿を用いて、サンプル内の活性化された因子VII(FVIIa)の濃度を測定するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液凝固は、身体が血管を損傷した場合に出血を制御して、大量の出血を防ぐことを可能にするメカニズムである。
【0003】
血液凝固は、血液内に存在して、蛋白質分解性酵素を介してその活性化された状態に変えられる種々の酵素前駆体及び共同因子前駆体が関与する一連のステップを通じて行われる。
この血液凝固の一連のステップにおいて、外因性凝集経路及び内因性凝集経路と名づけられた2つの経路を認めることができる。
両方の経路ともプロトロンビナーゼと呼ばれる複合体の形成に導き、この複合体は活性化された因子X(FXa)、活性化された因子V(FVa)、リン脂質、及びカルシウムで構成されている。
これは、プロトロンビンをトロンビンに活性化して、可溶性フィブリノゲンの血餅を形成する不溶性フィブリノゲンへの転換を可能にするトロンビン前駆体である。
【0004】
この外因性経路は血漿内に存在するFVIIの作用を伴っている。
しかしながら、凝集連鎖を開始させるためには、予めFVIIaに活性化しておかなければならない。
FVIIa(複合化されていない)だけでは、蛋白質分解性が低い。
FVIIaが血管損傷の際に放出されるリン脂質と結合した蛋白質である組織因子(TF)と複合化されると、この活性が増強される。
FVIIa‐TF複合体はカルシウム・イオンの存在下で因子Xを因子Xaに転化させる。
このFVIIa‐TF複合体はFIXもFIXaに転化させて、凝集の内因性経路を触媒する。
その代わりに、因子IXaとXaはFVIIをFVIIaに活性化させる。
因子Va及びリン脂質(プロトロンビナーゼ)と複合化された因子Xaは、プロトロンビンをトロンビンに転化させる。
トロンビンはフィブリノゲンに作用してそれをフィブリンに転化させ、また因子Vを因子Vaに活性化させFVIIIをFVIIIaに活性化させる他の活性をも有している。
またトロンビンはカルシウムの存在下で因子XIIIを因子XIIIに活性化させ、これによりフィブリン塊の膠着を可能にする。
【0005】
凝固の外因性経路においてFVIIa/TF複合体によってFIXがFIXaに活性化される際、内因性凝集経路においてFXIaによってFIXからFIXaが生成され、そしてそれ自体が内皮下層などの電気的陰性の表面で血液と接触することにより活性化された因子XIIによって活性化される。
【0006】
従ってビタミンK依存性糖蛋白質であるFVIIaは血餅の形成につながる凝固メカニズムにおいて重要な役割を果たす。
またFVIIaは、因子VIII又はIXが存在しない場合でも、大量出血を生じさせる組織損傷の後に放出される組織因子の存在下で局所的に作用するといった利点を有する。
このためFVIIaは、出血に伴うある凝固性疾患の治療のために長年にわたって使用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,472,850号
【特許文献2】米国特許第5,741,658号
【特許文献3】国際特許WO1992/018870号
【特許文献4】米国特許第5,750,358号
【特許文献5】米国特許第5,741,658号
【特許文献6】米国特許第5,472,850号
【特許文献7】欧州特許第0 641 443号
【特許文献8】国際特許WO 03/004694
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最初のアプローチは血漿からFVIIaを得ることであった。
しかしこの血漿からのFVIIaの産生には供給源の有効性による制限があり、そしてこの血漿の使用には、例えばプリオンなどの病原体やウイルスを伝染させるリスクも伴う。
これらの問題は、Novo Nordisk Pharmaceuticals社による、血漿FVIIaに構造的に類似した糖蛋白質である遺伝子組み換えFVIIa(rFVIIa)の開発によって解決された。
【0009】
rFVIIaの主な治療の適応(米国、ヨーロッパ及び日本における)は、抗因子VIII抗体を発現した血友病Aの個体及び抗因子IX抗体を発現した血友病Bの個体における自発的または外科的誘導による出血の治療である。
またヨーロッパにおいては、先天的にFVIIが欠乏している患者やグランツマン血小板無力症に悩む患者への使用にも適応されている。
【0010】
さらに血液凝固因子が欠乏しているのでも血小板無力症でもない患者の外科手術においても大量出血を抑制するのにrFVIIaが有効であることについて多くの報告がなされている。
【0011】
このようにFVIIaがますます広く用いられることにより、FVIIaの活性を測定する方法、そしてまたFVIIaの濃度を判定する方法、例えば潜在的にFVIIaを含有するサンプルの濃度を測定するあるいは患者におけるFVIIaの血漿濃度を測定してFVIIaの投与量が治療対象となる止血障害の治療に十分に適合しているかどうか、また治療患者が低凝固または過凝固の状態にないかどうかを確認する方法が開発されるに至った。
【0012】
FVIIa活性を検出するための最も知られた方法は、凝固時間、PTT(部分トロンボプラスチン時間)、aPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)の測定、そしてTEG(トロンボエラストグラフィー)及びTGT(トロンビン発生テスト)である。
これらの方法によってFVIIaの活性を測定することが可能になるが、FVIIaの正確な濃度を直接測定することは不可能である。
【0013】
FVIIaによって生成されるFXaの色素原アッセイまたは蛍光原アッセイのようなFVIIa濃度を直接測定する方法は、FVllaの影響とFVIIの影響との間に区別をつけることが不可能であるため、不適切であることが判明している。
【0014】
FVIIa免疫アッセイキット(IMUBIND Factor VII ELISA kit)が市場に出ているが、この技術を実行するための実験条件はその制御が困難である。
【0015】
FVIIa濃度を測定するためのその他の方法は、組換え短縮型TFを用いた蛋白質分解活性の測定(Staclot VIIa−rTF、Stago)(米国特許第5,472,850号、米国特許第5,741,658号、国際特許WO1992/018870号、米国特許第5,750,358号、米国特許第5,741,658号、米国特許第5,472,850号、欧州特許第0 641 443号)あるいはFVIIa−抗トロンビン複合体(WO 03/004694)の濃度の測定などについて記した文献に記載されている。
しかしこれらの方法はあまり正確ではなく、またその実行が困難でもある。
【0016】
現在、FVIIaを用いた治療の効力を評価するために生物学者及び医療関係者によってしばしば用いられる1つの方法はトロンボエラストグラフィーの利用に基づいている。
この方法は、血餅形成を時間との関連で機械的に分析することによって全血液の物理的性質を測定するステップにより構成されている。
トロンボエラストグラフ(登録商標)により生成されたグラフから抽出されるパラメータ(トロンボグラムまたはトロンボエラストグラム(登録商標))に基づいて医療関係者は患者の凝固能を評価することができる。
この方法は正確ではあるのだが単調であり、反復的なルーチン分析にはほとんど適合せず、また血液サンプル採取の後1時間以内に行う必要があることもあり、複数のサンプリングを行う場合には適用が困難である。
さらにこの方法ではFVIIa濃度の測定も行うことができない。
【0017】
従って、実行が容易であり、且つFVIIa濃度の測定、例えばFVIIaを潜在的に含有するサンプルの濃度を測定する、あるいは上に述べたように患者のFVIIaの血漿濃度を測定して投与されるFVIIaの薬用量が治療対象となる止血障害に対して十分に適合しているか、また治療患者が低凝固または過凝固の状態にないかどうかを確認するために有効な方法が真に必要とされている。
【0018】
この発明の目的は、実行が容易であり、且つFVIIa濃度の測定、例えばFVIIaを潜在的に含有するサンプルの濃度を測定する、あるいは上に述べたように患者のFVIIaの血漿濃度を測定して投与されるFVIIaの薬用量が治療対象となる止血障害に対して十分に適合しているか、また治療患者が低凝固または過凝固の状態にないかどうかを確認するために有効な方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明はサンプル中のFVIIa濃度をin vitro又はex‐vivoで測定する方法に関するものであり、この方法は:
a)前記サンプルをFVIIとFVIII、FIX及びFXIで構成される群から選択される少なくとも他の1つの因子を欠失したヒト血漿と混合するステップと、
b)カルシウム・イオン源、リン脂質剤、及び組織因子で構成されるトロンビン発生反応の開始成分を付加するステップと、
c)このようにして得られた反応液でトロンビン発生テスト(TGT)を行ってトロンボグラム付与パラメータを得るステップと、
d)前記トロンボグラムのパラメータの少なくとも1つを標準的なトロンボグラムの類似のパラメータと比較するステップで、各標準トロンボグラムが前記反応液内の1pMから5nMの範囲の固定較正済み濃度で得られることを特徴とするステップと、
e)ステップd)から前記サンプルの上に述べた範囲内のFVIIa濃度を推定するステップと
により構成されている。
【0020】
本出願人は、驚くべきことに、FVIIとFVIII、FIX及びFXIで構成される群から選択される少なくとも他の1つの因子を欠失した血漿(二重欠損血漿)を使用することによって、サンプルのFVIIa濃度を測定する方法において使用が可能であり、また信頼性が高く、再生可能で、その使用が容易である試薬を得ることができるのを発見した。
【0021】
本発明のこの方法を用いることによって、サンプルのFVIIa濃度とトロンビン発生テストの特定のパラメータとの間に相関を確立することが可能となる。
【0022】
標準的なトロンボグラムを用いて判定された、即ち反応液中のFVIIaの可変の、較正済み濃度を用いて得られたこの相関を利用することによって、標準的なトロンボグラムにより得られたデータと測定の対象となるサンプルのトロンボグラムにより得られたデータとを比較することで、サンプル中の未知のFVIIa濃度を判定することが可能となる。
【0023】
当業者には周知の、ステップc)のトロンビン発生テスト(TGT)は、トロンビン発生反応の開始成分‐この場合はカルシウム・イオン源、リン脂質剤及び組織因子(TF)がFVIIとFVIII、FIX及びFXIで構成される群から選択される少なくとも他の1つの因子を欠失したヒト血漿と混合されたFVIIaを含んでいるサンプルと接触する際の、生成されるトロンビンの量とこのトロンビンの生成に必要となる時間とを測定する連続測定に基づいている。
【0024】
このように反応液を形成し、また所定の分量であるこれら全ての成分が接触した状態に置かれると同時に、トロンビン発生反応が開始され、これによってこのテスト(t)の開始時間を判定することが可能となる。
これらの各成分の分量はこの反応が確実に発生可能となるように選択される。
このテストは、好適には生成されたトロンビンを発現させる物質を用いて行われる。
前記物質は、トロンビンにより分解されて蛍光発生化合物を生成する蛍光原物質、あるいは色素原物質である。
【0025】
蛍光は、トロンボグラムを得るために使用可能なデータを収集することができるソフトウェアにより構成される従来の蛍光定量器などの、反応液中のトロンビン形成を測定するための装置によって検出される。
このトロンボグラムは、実験時間に渡って描かれ、生成されるトロンビンの最大量に相当する最大値を有した曲線を示す。
サンプル中のFVIIaの量が増加すればするほど、反応液におけるトロンビンの生成時間はますます短縮され、その限界値へと近づく。
【0026】
このトロンボグラムは、以下のように定義されるトロンボグラムの少なくとも1つのパラメータを表すデータを提供する(ステップd)。
【0027】
第1のパラメータは、上に述べたような生成される最大のトロンビンに相当するピーク高さである。
第2のパラメータは、TGTテスト(t)の開始からトロンビンの発生開始までの間に経過した時間に相当するラグ・タイムである。
第3のパラメータは、TGTテスト(t)の開始からトロンビンの生成量が最大に達するまでの間に経過した時間に相当するピークまでの時間である。
第4のパラメータは、トロンビンの形成速度をnM/分で表した値で、前記ピーク高さを前記ピークに至るまでの時間と前記ラグ・タイムとの差で割った値に相当する。
これらのパラメータはトロンビン形成を測定する装置によって直接提供される。
【0028】
従ってステップd)において、本発明の方法によって得られるトロンボグラムの少なくとも1つのパラメータは、ピーク高さ、速度、ラグ・タイム及びピークに至るまでの時間の中から選択される。
【0029】
本発明によれば、標準的なトロンボグラムのパラメータは、同じ反応液から成る較正済みサンプルを用いた一連のTGTテストを行うことによって判定されるが、各サンプルは、ピーク高さ及び速度から選択されるパラメータに対して1pMから5nM、好ましくは1pMから1nMの範囲の、また4つのパラメータに対して好ましくは1pMから5nMの範囲の最終、固定較正済み濃度のFVIIaを含む。
従って作業条件は反応液の量を同一に保つために同一の条件が適用されるが、FVIIaサンプルの追加を通じての若干量の変動は許容される。
従ってトロンボグラムはそのFVIIa含量が較正済みの各反応液に対して得られる。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、実行が容易であり、且つFVIIa濃度の測定、例えばFVIIaを潜在的に含有するサンプルの濃度を測定する、あるいは上に述べたように患者のFVIIaの血漿濃度を測定して投与されるFVIIaの薬用量が治療対象となる止血障害に対して十分に適合しているか、また治療患者が低凝固または過凝固の状態にないかどうかを確認するために有効な方法を実現することができる。
【0031】
本発明の1つの実施の形態において、標準的なトロンボグラムのパラメータを確立するために用いられるFVIIaは英国の国立生物学的製剤研究所(NIBSC)による国際FVIIa標準品(IS−FVIIa)である。
【0032】
各標準的トロンボグラムから、反応液中のFVIIaの最終濃度に関する上述の各パラメータの較正変化曲線が判定される。
【0033】
次にそのFVIIa濃度が未知であるサンプルに対して得られる上述のパラメータがステップdにおいて得られた類似のパラメータと比較される。
この方法において、測定されるサンプルのFVIIa濃度は較正済みの標準濃度曲線との比較によって、即ち標準的なトロンボグラムを用いて判定されるため、このFVIIa濃度は用いられるパラメータに関わりなく、直接推測することが可能である。
【0034】
本発明によれば、FVIIaサンプル、FVIIとFVIII、FIX及びFXIで構成される群から選択される少なくとも他の1つの因子を欠失した血漿、トロンビン発生反応を開始させる成分は、液体であるか又は凍結乾燥した形態であってもよく、またこの反応液は注射用水(WFI)などの適切な水性溶媒に溶解させることによって調製される。
【0035】
本発明の特定の一実施の形態によれば、このFVIIaサンプルは液体の形態である。
標準的なトロンボグラムを得るために必要なのは、反応液の所望の最終濃度を得るために、考察している前記二重欠損血漿と混合するのに適切な量をサンプリングすることだけである。
これは一定量の、しかし異なる濃度のFVIIaサンプルを前記血漿に追加する方法によっても行うことができる。
【0036】
判定対象となるFVIIa含量を有する1つのサンプルについて、反応液の液量は一定に保ちつつ連続的に希釈し考察している二重欠損血漿に一定量を追加する方法によって、複数のトロンボグラムを得ることも可能である。
このようにして得られたパラメータの結果と標準的トロンボグラムのパラメータ及び希釈率の知見とを比較することによって、FVIIa含量を正確に判定することが可能となる。
【0037】
リン脂質剤は本発明に適している。
これは濃縮物あるいは凍結乾燥物の形態であってよい。
またこれはホスファチジルコリン及びホスファチジルセリンを主に含む、あるいはそれらのみで構成される混合物の形態であるのが好ましい。
【0038】
同様に、天然、血漿、遺伝子組み換え又は形質転換TFなどの任意のTF(組織因子)も適している。
またさらに、因子VIIを因子VIIaに転化させる機能は失うが因子VIIaの酵素活性の補因子として作用する能力は維持している任意の短縮型TFなどの改変型TFも適している。
具体的に言うと、このTFは経膜ドメインを欠失しており、この欠失によってそのTF機能において所望の選択的欠損を得ることが可能になる(この組織因子は市販され容易に入手できる)。
本発明の一実施の形態において、この改変型TFは、FVIIを含有するサンプルのFVIIa濃度のin vitro又はex−vivo測定のためにも使用することができる。
【0039】
本発明の一実施の形態によれば、このFVIIaを含有するサンプルは、液体又は凍結乾燥した形態の血漿FVIIa(pFVIIa)、遺伝子組み換えFVIIa(rFVIIa)あるいは形質転換FVIIa(TgFVIIa)を含有する、又は含有していない治療サンプルである。
【0040】
本発明の特定の一実施の形態において、このFVIIaを含んでいるサンプルは、哺乳動物の母乳のサンプル、具体的にはその内にFVII又はFVIIaを産生する形質転換された哺乳動物の母乳のサンプルである。
【0041】
形質転換動物の母乳中に遺伝子組み換え蛋白質を産生する方法は以下のステップを含む:所望のタンパク質をコードし、母乳中に天然に分泌される蛋白質のプロモータで制御される遺伝子を含む合成DNA分子を非ヒト哺乳動物の胚に導入する。
次にこの胚を同一種の哺乳動物の雌に導入し、この雌が形質転換動物を出生する。
ここまでの手順が十分に完了した後、この哺乳動物から母乳を分泌させ、この母乳を回収する。
この母乳には所望の遺伝子組み換え蛋白質が含まれている。
【0042】
ヒト以外の哺乳動物の雌の母乳中に蛋白質をつくりだすプロセスの一例が欧州特許第0527063号明細書において述べられており、この教示は本発明による所望の蛋白質の調製に適用することができる。
【0043】
WAPプロモータを含むプラスミドは、WAP遺伝子のプロモータを含む配列を導入することにより作成される。
またこのプラスミドはWAPプロモータに依存することになる外来遺伝子を受け入れることができるように作成される。
この所望の蛋白質をコードする遺伝子はWAPプロモータに組み込まれ、それに依存する状態になる。
このプロモータを含むプラスミド及び所望の蛋白質をコードする遺伝子は、ウサギなどの形質転換動物を得るためにウサギ胚の雄性前核の中にマイクロインジェクションすることによって用いられる。
続いてこの胚は体液的に準備された雌の卵管に導入される。
導入遺伝子の存在はサザンブロット法によって出生された若体形質転換ウサギから抽出されたDNAを用いて検出される。
この動物の母乳中の濃度は特定の放射免疫アッセイによって評価される。
【0044】
その他の文献において、ヒト以外の哺乳動物の雌の母乳中で蛋白質をつくりだす方法が述べられている(米国特許第7,045,676号及び欧州特許第1 739 170号−形質転換哺乳動物中でのフォンビルブラント因子(vWF)の産生)。
【0045】
もう1つの特定の実施の形態において、このサンプルは、液体又は凍結乾燥した形態の精製されたFVIIaを含んだサンプルである。
例えばこうしたFVIIaの純度は少なくとも80%、好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは99%である。
具体的に言うとこのサンプルは、液体又は凍結乾燥した形態の、精製されたFVIIaを含んだ治療サンプルである。
【0046】
本発明の方法によって血漿FVIIa(pFVIIa)、遺伝子組み換えFVIIa(rFVIIa)又は形質転換FVIIa(TgFVIIa)の濃度を測定することが可能となる。
【0047】
従って本発明の特定の一実施の形態によれば、本発明は形質転換された哺乳動物の母乳のサンプルのFVIIa濃度をin vitro又はex‐vivo測定するための方法に関するものであって、この方法は:
a)前記サンプルをFVIIとFVIII、FIX及びFXIで構成される群から選択される少なくとも他の1つの因子を欠失したヒト血漿と混合するステップと、
b)カルシウム・イオン源、リン脂質剤、及び組織因子で構成されるトロンビン発生反応の開始成分を付加するステップと、
c)このようにして得られた反応液でトロンビン発生テスト(TGT)を行ってトロンボグラム付与パラメータを得るステップと、
d)前記トロンボグラムのパラメータの少なくとも1つを標準的なトロンボグラムの類似のパラメータと比較するステップで、各標準トロンボグラムが前記反応液内の1pMから5nMの範囲の固定較正済み濃度で得られることを特徴とするステップと、
e)ステップd)から前記サンプルの上に述べた範囲内のFVIIa濃度を推定するステップと
により構成されている。
【0048】
本発明のもう1つの特定の実施の形態によれば、本発明は精製されたFVIIaを含んだサンプルのFVIIa濃度をin vitro又はex−vivo測定するための方法に関するものであって、この方法は:
a)前記サンプルをFVIIとFVIII、FIX及びFXIで構成される群から選択される少なくとも他の1つの因子を欠失したヒト血漿と混合するステップと、
b)カルシウム・イオン源、リン脂質剤、及び組織因子で構成されるトロンビン発生反応の開始成分を付加するステップと、
c)このようにして得られた反応液でトロンビン発生テスト(TGT)を行ってトロンボグラム付与パラメータを得るステップと、
d)前記トロンボグラムのパラメータの少なくとも1つを標準的なトロンボグラムの類似のパラメータと比較するステップで、各標準トロンボグラムが前記反応液内の1pMから5nMの範囲の固定較正済み濃度で得られることを特徴とするステップと、
e)ステップd)から前記サンプルの上に述べた範囲内のFVIIa濃度を推定するステップと
により構成されている。
【0049】
ここで『欠失した』という用語は、FVII、FVIII、FIX及び/又はFXIの濃度が、当業者には周知の従来のアッセイで測定した際にこれらの因子の検出の閾値を下回るということを意味する。
従来の免疫アッセイを行うためには、例えば市販のキット又は試薬を用いることができる。
【0050】
本発明の方法によれば、血漿 FVIIa、遺伝子組み換えFVIIa及び/又は形質転換FVIIaの濃度を測定することが可能となる。
【0051】
本発明の好ましい一実施の形態によれば、本発明の方法において用いられる血漿は、FVIIとFVIII、FIX及びFXIで構成される群から選択される少なくとも他の1つの因子を欠失している。
【0052】
このFVIIとFVIII、FIX及びFXIで構成される群から選択される少なくとも他の1つの因子を欠失したヒト血漿は種々の形態で得ることができる。
本発明の方法においては、例えば(FVIIIの欠失した)FVIIの欠乏した血友病Aの個体の血漿、(FIXの欠失した)FVIIの欠乏した血友病Bの個体の血漿あるいは完全に因子XIが欠失し、またFVIIの欠乏した患者の血漿を使用することができる。
【0053】
本発明の特定の一実施の形態において、本発明の方法では、FVIIとFVIII、FIX及びFXIで構成される群から選択される少なくとも他の1つの因子を欠失したヒト血漿である免疫枯渇ヒト血漿を用いる。
【0054】
この免疫枯渇は種々の形態で得ることができる。
例えば、
−FVII及びFVIIIを欠失した血漿は、例えば抗FVII、抗FVIII、抗ウィルブランド因子などの、FVII、FVIII又はこれらの因子の内の1つに結合した蛋白質の特定の抗体を用いて欠失させることによって得られる。
ここでこのウィルブランド因子とはFVIIIを血液中に導入する血漿蛋白質である。
−FVII及びFIXを欠失した血漿は、例えばFVII、FIXの特定の抗体を用いて欠失させることによって得られる。
−FVII及びFXIを欠失した血漿は、例えば抗FVII及び抗FXIなどの、FVII、FXI又はこれらの因子の内の1つに結合した蛋白質の特定の抗体を用いて欠失させることによって得られる。
【0055】
本発明の特定の一実施の形態によれば、FVIIとFVIII、FIX及びFXIで構成される群から選択される少なくとも他の1つの因子を欠失したヒト血漿は化学的に枯渇されたヒト血漿である。
このヒト血漿は、EDTAを用いてCa2+依存性因子であるFVIIIを枯渇させることができる。
一旦この血漿からFVIIIが枯渇されると、EDTAは当業者には周知の方法により、具体的には透析法によって除去される。
【0056】
これらの枯渇方法を組み合わせ、前記因子の枯渇した血漿を得ることもできる。
【0057】
ステップb)において反応液中のカルシウム・イオンの最終濃度は14〜18mM、特に16.7mMであるのが好ましい。このカルシウム・イオン源とはCaClなどの生物適合性源を表している。
反応液中のリン脂質剤の最終濃度は1〜20μM、好ましくは3〜5μM、また組織因子(TF)の最終濃度は0.1〜10pM、好ましくは0.1〜6pMの範囲内である。
【0058】
本発明の特定の一実施の形態において、精製されたFVIIaのサンプルのFVIIa濃度のin vitro又はex‐vivo測定の方法を実施するためのTF濃度は、0.1〜10pM、好ましくは1〜5pMの範囲内にある。
【0059】
本発明のさらにもう1つの主題は、サンプル中の因子VIIa濃度のin vitro又はex−vivo測定のための、因子VIIと因子VIII、因子IX及び因子XIで構成される群から選択される少なくとも他の1つの因子を欠失したヒト血漿の使用に関する。
【0060】
上述のように、血漿は因子FVIIのみならず前記因子の内の少なくとも1つをも欠失しており、これによってこれまで未知であったサンプル中のFVIIaの量と特定のTGTパラメータとの相関を判定することが可能となる。
【0061】
本発明の好ましい一実施の形態によれば、FVIIa濃度が測定対象となるサンプルは、血漿サンプル、治療サンプル、あるいは上に述べたような遺伝子組み換え又は形質転換FVIIaを含む治療サンプルである。
【0062】
本発明のさらにもう1つの主題は、本発明の方法を実施するために用ることができるキットであって、このキットは:
−FVIIと、FVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1つの他の因子を欠失したリン脂質血漿と、
−リン脂質剤及び組織因子を含む凍結乾燥物と、
−カルシウム・イオン源、及び
−標準トロンボグラムのパラメータの少なくとも1つを判定するための、凍結乾燥されたFVIIaのサンプルと
で構成される。
【0063】
故にこのキットは、本発明によるサンプル中のFVIIa濃度を測定する方法を実施するために好適に利用される。
であるがこの目的のためには、TGTテストを行うための装置を備えることも必要である。
【0064】
このトロンビン発生テストを行うための装置には、市販のトロンビン較正物質、生成されたトロンビンのための、例えば適切な蛍光発生試薬などの発現剤、例えばトロンボグラムを得るために用いることのできるデータを収集するのに適合したソフトウェアを備えた蛍光定量器などの測定装置、及びマイクロプレートが含まれる。
【0065】
好適には、このキットには種々の凍結乾燥物を含むよう意図された受容器が含まれる。
この受容器の内容物は注射用水(WFI)などの水性溶媒に溶解され、この関心対象の成分のTGTテストを行うための有効濃度が得られる。
この受容器はマイクロプレートのウェルであってもよい。
反応液中のこの関心対象の成分の最終濃度は上に述べた範囲の濃度であるのが好ましい。
【0066】
またこのキットには、ピペットやマイクロピペットなどのサンプリング装置が含まれるのが好ましい。
【0067】
上述のように、好ましい一実施の形態による方法を実施するために、FVIIとFVIII、FIX及びFXIで構成される群から選択される少なくとも他の1つの因子を欠失したリン脂質血漿と、リン脂質剤、組織因子及びカルシウム・イオン源を含む凍結乾燥物とを、得られた反応液中のFVIIaの最終濃度が1pM〜5nMの範囲となるよう種々の量の凍結乾燥FVIIaを加えた注射用水WIF中に溶解させる。
【0068】
特定の一実施の形態において、本発明は形質転換された哺乳動物の母乳のサンプル中のFVIIa濃度をin vitro又はex−vivo測定する方法を実施するために用いることのできるキットに関するものであって、このキットは:
−FVIIと、FVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1つの他の因子を欠失したリン脂質血漿と、
−リン脂質剤及び組織因子を含む凍結乾燥物と、
−カルシウム・イオン源、及び
−標準トロンボグラムのパラメータの少なくとも1つを判定するための、凍結乾燥されたFVIIaのサンプルと
で構成される。
【0069】
特定の一実施の形態において、本発明は精製されたFVIIaを含んだサンプル中のFVIIa濃度をin vitro又はex−vivo測定する方法を実施するために用いることのできるキットに関するものであって、このキットは:
−FVIIと、FVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1つの他の因子を欠失したリン脂質血漿と、
−リン脂質剤及び組織因子を含む凍結乾燥物と、
−カルシウム・イオン源、及び
−標準トロンボグラムのパラメータの少なくとも1つを判定するための、凍結乾燥されたFVIIaのサンプルと
で構成される。
【0070】
本発明のさらにもう1つの主題は、サンプル中のFVIIa濃度をin vivo 、in vitro又はex−vivo測定するための上述のキットの使用に関する。
【0071】
このキットは使用が容易であり、4℃の温度下で少なくとも1年間保管することが可能である。
必要となる備品は、TGTテストを行ってサンプルの未知のFVIIa濃度を正確に判定するための、生成されたトロンビン用の、例えば適切な蛍光発生試薬などの発現剤、例えばトロンボグラムを得るために用いることのできるソフトウェアを備えた蛍光定量器などの測定装置、及びマイクロプレートのみである。
【0072】
これは標準的なトロンボグラムとそのFVIIa濃度が判定対象となるサンプルのトロンボグラムとを得ることを前提にしたものである。
【0073】
特定の一実施の形態によれば、このキットは、上述の血漿、遺伝子組み換え又は形質転換FVIIaを含有する、又は含有していない治療サンプルのFVIIa濃度を測定するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1はFVII決失血漿内のrFVIIa(0.02nMから10nM)のトロンボグラム。(実施例2)
【図2】図2はFVIII決失血漿内のrFVIIa(0.01nMから100nM)のトロンボグラム。(実施例2)
【図3】図3はFIX決失血漿内のrFVIIa(0.01nMから100nM)のトロンボグラム。(実施例2)
【図4】図4はFVII及びFVIII決失血漿内のrFVIIa(1pM−5nM)のトロンボグラム。(実施例4)
【図5】図5はFVII及びFVIII決失血漿内のFVIIaに対するピーク高さ。(実施例4)
【図6】図6はFVII及びFVIII決失血漿内のFVIIa濃度に対するピークに至る時間。(実施例4)
【図7】図7はFVII及びFVIII決失血漿内のrFVIIa濃度に対する速度。(実施例4)
【図7b】図7bisはFVII及びFVIII決失血漿内のrFVIIa濃度に対するラグ・タイム。(実施例4)
【図8】図8はFVII及びFVIII決失血漿内のrFVIIa濃度(5pM−1nM)のトロンボグラム。(実施例5)
【図9】図9はFVII及びFIX枯渇血漿内のrFVIIa濃度に対するピーク高さ。(実施例5)
【図10】図10はFVII及びFIX枯渇血漿内のrFVIIa濃度に対するラグ・タイプ。(実施例5)
【図11】図11はFVII及びFIX枯渇血漿内のrFVIIa濃度に対するピークに至るまでの時間。(実施例5)
【図12】図12はFVII及びFIX枯渇血漿内のrFVIIa濃度に対する速度。(実施例5)
【図13】図13はFVII及びFXI枯渇血漿内のrFVIIa濃度(5pM−1nM)のトロンボグラム。(実施例6)
【図14】図14はFVII及びFXI決失血漿内のrFVIIa濃度に対するピーク高さ。(実施例6)
【図15】図15はFVII及びFXI決失血漿内のrFVIIa濃度に対するラグ・タイム。(実施例6)
【図16】図16はFVII及びFXI決失血漿内のrFVIIa濃度に対するピークに至る時間。(実施例6)
【図17】図17はFVII及びFXI 決失血漿内のrFVIIa濃度に対する速度。(実施例6)
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下に実施例を示すが、これらの実施例は本発明の範囲の制限を意図するものではなく、例示として示されるものである。
【実施例1】
【0076】
実施例1:FVII決失血漿の獲得
【0077】
精製されたヒト血漿FVIIに向けられてウサギの体内でつくられたポリクローナル抗体をrCNB活性化セファロース(Pharmachia社)と結合させて、次に、得られたゲルの2mLをカラム内に入れた。このカラムを25mL均衡緩衝液(0.15M NaCl、10mMクエン酸塩、pH7.4)で均衡化させた。
次に、ヒト血漿6mLをこのカラムを通過させた。
これらの条件下で、FVIIはカラムに固定されたままで、溶出液が回収された。そのカラムを20mLの再生緩衝液(50mM Nacl、0.1Mグリシン、pH2.4)で再生して、固定されたFVIIを溶出させ、次に、そのカラムを20mLの均衡緩衝液(10mMクエン酸塩、0.15M Nacl、pH7.4)で再均衡化させた。
【0078】
これらのステップを7−8回繰り返して、6mLのFVII決失血漿を得た。
【実施例2】
【0079】
実施例2:標準トロンボグラムを作成するための反応培養液の調製
【0080】
十分な亮のrFVIIaサンプル(NovoSeven(登録商標)−Novonordisk)を用いて、これを、各反応混合物の最終較正濃度が0.02から10nMの範囲となるように、実施例1で得たFVII欠損血漿80μlに加えた。
【0081】
この反応混合物は、Ca2+,リン脂質及びTFで構成され、その成分の最終濃度が5pM TF、4μMリン脂質(Biodis TS 30.00試薬−Biodis)及び16.7mM Ca2+であるようなトロンBinn発生反応の開始因子20μlとトロンビン固有蛍光発生剤(Fluca試薬キット Biodis TS 50.00)20μlを上に述べたrFVIIaを含む血漿と混合することによって得られた。
【0082】
TGT曲線をeFVIIaの最終濃度が0.02nMと10nMの間の範囲に対して作成し、図1に示されているトロンボグラムを得た。
これらの図は、トロンボグラムを作成するためのソフトウエア(Thronbinoscope BV)を備えたトロンビン形成時間を測定するための蛍光光度計(Fluoroskan−Thermo Electron)を用いて、励起波長390nm、放出波長460nmで検出を行って作成された。
【0083】
この図は、FVIIのみを決失している血漿に関して判定されトロンボグラムでは、rFVIIa濃度とそのピークで測定されたトロンビン形成時間との間の相関性を得ることが不可能であることを示している。
実際、ピークにに至までの時間とrFVIIaの量との間に差異は認められず、その量でのピーク高さに有意な差も認められない。
【0084】
図2と図3は0.1nMから100nMのrFVIIaをダイアグノスチカ スタゴ(Diagnostica Stago)社からあるいはA型血友病患者から得たFVIIIのみを決失している血漿と、ダイアグノスチカ スタゴ(Diagnostica Stago)社から得たFIXのみを決失している血漿にそれぞれ加えることで作成された。
【0085】
これらの図は、それぞれFVIIIかFIXのいずれかのみを決失した血漿に関して得られた異なったトロンボグラムでは、FVIIa濃度とピーク・トロンビン形成時間との間の相関性を得ることはできないことを示している。
このピークに至るまでの時間においては変差は認められず、実際的には加えられたFVIIaの量に対してはほぼ一定である。
【実施例3】
【0086】
実施例3:FVIIを決失しており、同時にFVIII、FIXあるいはFXIのいずれかを決失している血漿の獲得
【0087】
精製されたヒト血漿FVIIに向けられてウサギの体内でつくられたポリクローナル抗体をrCNB活性化セファロース(Pharmachia社)と結合させて、次に、得られたゲルの2mLをカラム内に入れた。
このカラムを25mL均衡緩衝液(0.15M NaCl、10mMクエン酸塩、pH7.4)で均衡化させた。
次に、それぞれダイアグノスチカ スタゴ(Diagnostica Stago)社から得られたFVIII、FIXあるいはFXIを枯渇させた市販の血漿6mLを上記カラムを通過させた。
これらの条件下で、FVIIはカラムに固定されたままで、溶出液が回収された。
そのカラムを20mLの再生緩衝液(50mM Nacl、0.1Mグリシン、pH2.4)で再生して、固定されたFVIIを溶出させ、次に、そのカラムを20mLの均衡緩衝液(10mMクエン酸塩、0.15M Nacl、pH7.4)で再均衡化させた。
【0088】
これらのステップを7−8回繰り返して、FVIII、FIXあるいはFXIとFVIIを決失した二重枯渇血漿6mLを得た。
【実施例4】
【0089】
実施例4:標準トロンボグラムを作成するための反応培養液の調製
【0090】
十分な量のrFVIIaサンプルを用いて、ダイアグノスチカ スタゴ(Diagnostica Stago)社あるいはA型血友病患者から得たFVIII決失血漿80μlに加えて、実施例1及び3の手順を従ってFVIIを枯渇させ、各反応混合物のrFVIIaの最終較正濃度が1pMから5nMの範囲となるようにした。
【0091】
この反応混合物は、Ca2+,リン脂質及びTFで構成され、その成分の最終濃度が5pM TF、4μMリン脂質(Biodis TS 30.00試薬−Biodis)及び16.7mM Ca2+であるようなトロンBinn発生反応の開始因子20μlとトロンビン固有蛍光発生剤(Fluca試薬キット Biodis TS 50.00)20μlを上に述べたrFVIIaを含む血漿と混合することによって得られた。
1pMから5nMの範囲のrFVIIaの最終濃度に関してTGT曲線を作成し、その種々のパラメータ(ラグ・タイム、ピーク高さ、ピークまでの時間、及び速度)はFVIIaの含量に対応して容量に基づく方式で徐々に修正した。
これらの図は実施例2と同じ蛍光高度計を用い、同じ条件で測定した。
【0092】
図4はFVIIとFVIIIが決失した血漿における1pMから5nMの範囲の存在下で得られたトロンボグラムを示している。
ピーク・トロンビン形成時間の減少がサンプル中に存在するrFVIIの量の関連して観察される。
この時間はrFVII濃度が1nMの時に3分と推定される限界に近づく。
FVIIとFVIIIを決失している血漿はトロンビン形成を示されないことも観察される。
【0093】
図5、6、7及び7bは、それぞれ、サンプル内、この例では反応培養液内に存在するrFVIIaの量に関連するピーク高さ、ピークまでの時間、速度、及びラグ・タイムの変化を示している。
【0094】
これらの結果は、得られた結果は、FVIIa濃度と1pMから5nMまでのトロンボグラムから得られる種々のパラメータの間での相関関係を求めることが可能であることを示唆している。
【0095】
TF濃度が1pMの場合についても同様に実験を行った(結果は図示せず)。
【実施例5】
【0096】
実施例5:
【0097】
実施例4の実験を繰り返し行ったが、実験対象はダイアグノスチカ スタゴ(Diagnostica Stago)社から入手したFIXを決失した反応性血漿で、実施例1と3の手順に従ってFVIIを枯渇させたものである。
【0098】
図8はFVIIとFIXを決失した血漿内で5pMから1nMの範囲でrFVIIaが存在している場合に得られたトロンボグラムを示している。
サンプル内に存在しているFVIIaの量に関連したピーク・トロンビン形成時間の減少が認められる。
この時間もrFVIIa濃度が1nMの場合に3分と推定される限度に近づいていく。
なお、FVIIaを付加しないFVIIあるいはFIXを決失している血漿ではトロンビン形成が認められない。
【0099】
図9、10、11及び12はサンプル内、つまりこの例では反応培養液内に存在しているrFVIIaの量に関連したピーク高さ、ラグ・タイム、ピークに至るまでの時間、そして速度の変化をそれぞれ示している。
【0100】
得られた結果はFVIIa濃度と上記トロンボグラムから推定される種々のパラメータの間の相関関係を確定することが可能であることを示している。
【実施例6】
【0101】
実施例6:
【0102】
実施例4の実験を繰り返し行ったが、実験対象はダイアグノスチカ スタゴ(Diagnostica Stago)社から入手したFXIを決失した反応性血漿で、実施例1と3の手順に従ってFVIIを枯渇させたものである。
【0103】
図13はFVIIとFXIを決失した血漿内に5pMから1nMの範囲でrFVIIaが存在している場合に得られたトロンボグラムを示している。
サンプル内に存在するFVIIaの量に関連してのピーク・トロンビン形成時間の減少が見られる。
なお、FVIIとFXIを決失した血漿はトロンビン形成を発生させない。
【0104】
図14、15、16及び17はサンプル内、つまりこの例では反応培養液内に存在しているrFVIIaの量に関連したピーク高さ、ラグ・タイム、ピークに至るまでの時間、そして速度の変化をそれぞれ示している。
【0105】
得られた結果はFVIIa濃度と上記トロンボグラムから推定される種々のパラメータの間の相関関係を確定することが可能であることを示している。
【実施例7】
【0106】
実施例7:濃度でのサンプル内でのFVIIa濃度の測定例
【0107】
rFVIIa濃度が分からないサンプル4μlを、上に述べたようにFVIIとFVIIIを枯渇させた血漿76μlと混合させた。
トロンビン発生反応を開始させる成分(Ca2+、リン脂質、及びTF)を最終濃度が5pM TF、4μMリン脂質(Biodis試薬 TS 30.00)、16.7mM Ca2+となるように加え、合わせて、トロンビン固有蛍光発生剤(FLucaキット Biodis TS 50.00)も加えた。
【0108】
濃度未知のrFVIIaサンプルの異なった希釈液をつくり(表1参照)、これらの希釈されたサンプルの一定量(4μl)をFVIIとFVIIIを枯渇させた血漿76μlとトロンビン発生反応を開始させる成分20μl、及びトロンビン固有蛍光発生剤20μlに加えて、総体積120μlの反応培養液を得た。
【0109】
そのサンプルの種々の希釈液(表1参照)に対してTGTテストを実施して、トロンボグラムと対応する種々のパラメータ、つまり、ラグ・タイム、ピーク高さ、ピークに至る時間、そして速度を得た。
【0110】
それと平行して、rFVIIaの較正濃度が分かっている種々のサンプルを4μlづつ用意して、それをFVIIとFVIIIを枯渇させた血漿76μlと混合して、総体積80μl中のrFVIIaの最終濃度を1pMから5nMの範囲となるようにした。
トロンビン発生反応の開始因子(Ca2+、リン脂質、及びTF)を最終濃度が5pM TF、4μMリン脂質(Biodis試薬 TS 30.00)、16.7mM Ca2+となるように加え、合わせて、トロンビン固有蛍光発生剤(FLucaキット Biodis TS 50.00)20μlも加えた。
標準トロンボグラムのパラメータを測定して、それぞれのパラメータ値と最終rFVIIa濃度のログ逆数との関係を示す較正曲線を得た (図5、6,7及び7bisを参照)。
【0111】
rFVIIaの濃度が分からないサンプルの種々の希釈液に関して得られたパラメータ値を種々の標準較正曲線上にプロットした。
【0112】
1/200から1/5000の希釈液が0.25nMから0.01nMまでの較正曲線上のそれぞれの濃度と対応している。
希釈度を考慮に入れて、このサンプルのrFVIIa濃度は50nMと判定される。
【0113】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の因子VIIa(FVIIa)の濃度をex―vivo(体外)で測定するための方法において、
a)前記サンプルをFVIIと因子VIII (FVIII),因子IX(FIX)及び因子XI(FXI)で構成される群から選択される少なくとも他の1つの因子を欠失したヒト血漿とを混合するステップと、
b)カルシウム・イオン源、リン脂質剤、及び組織因子で構成されるトロンビン発生反応の開始成分を付加するステップと、
c)このようにして得られた反応液でトロンビン発生テスト(TGT)を行ってトロンボグラム付与パラメータを得るステップと、
d)前記トロンボグラムのパラメータの少なくとも1つを標準的なトロンボグラムの類似のパラメータと比較するステップで、各標準トロンボグラムが前記反応液内の1pMから5nMの範囲の固定較正済み濃度で得られることを特徴とするステップと、
e)ステップd)から前記サンプルの上に述べた範囲内のFVIIa濃度を推定するステップ
で構成される
ことを特徴とするサンプル中の因子VIIa(FVIIa)の濃度を測定する方法。
【請求項2】
前記標準トロンボグラムのパラメータが同じ反応液を含む標準的なサンプルを用いた一連のトロンビン発生テストTGTによって判定され、前記サンプルのそれぞれが1pMから5nMの範囲の固定最終較正済みFVIIa濃度を含んでいることを特徴とする、請求項1記載のサンプル中の因子VIIa(FVIIa)の濃度を測定する方法。
【請求項3】
前記ステップd)で、前記トロンボグラムの少なくとも1つのパラメータがピーク高さ、速度、ラグ・タイム、そしてピークに至るまでの時間から選択されることを特徴する、請求項1又は2記載のサンプル中の因子VIIa(FVIIa)の濃度を測定する方法。
【請求項4】
FVIIaを含んでいるサンプルが形質転換された哺乳動物の母乳のサンプルか、あるいは精製されたFVIIaを含んだサンプルであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項によるサンプル中の因子VIIa(FVIIa)の濃度を測定する方法。
【請求項5】
前記FVIIaが血漿FVIIa(pFVIIa)、遺伝子組み換えFVIIa(rFVIIa)、あるいは形質転換FVIIa(TgFVIIa)であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項によるサンプル中の因子VIIa(FVIIa)の濃度を測定する方法。
【請求項6】
前記FVIIと、FIVII、FIC及びFXIから選択される少なくとも1つの他の因子を欠失したヒト血漿が免疫枯渇ヒト血漿であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のサンプル中の因子VIIa(FVIIa)の濃度を測定する方法。
【請求項7】
前記FVIIと、FVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1つの他の因子を欠失したヒト血漿が化学的に枯渇されたヒト血漿であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項記載のサンプル中の因子VIIa(FVIIa)の濃度を測定する方法。
【請求項8】
前記因子VIIIを欠失したヒト血漿がEDTAで化学的に枯渇されていることを特徴とする、請求項7記載のサンプル中の因子VIIa(FVIIa)の濃度を測定する方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項記載の方法を実施するために用いることができるキットにおいて、
−FVIIと、FVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1つの他の因子を欠失したリン脂質血漿と、
−リン脂質剤及び繊維因子を含む凍結乾燥物と、
−カルシウム・イオン源、及び
−標準トロンボグラムのパラメータの少なくとも1つを判定するための、濃度が分かっている凍結されたFVIIaのサンプル
で構成された
ことを特徴とするサンプル中の因子VIIa(FVIIa)の濃度を測定する方法を実施するために用いるキット。
【請求項10】
前記サンプルのFVIIa濃度をイン・ビトロ(in vitro)あるいは体外(ex−vivo)測定するための請求項9記載のサンプル中の因子VIIa(FVIIa)の濃度を測定する方法を実施するために用いるキット。
【請求項11】
前記サンプルが形質転換された哺乳動物の母乳あるいは精製されたFVIIaを含むサンプルであることを特徴とする、請求項10記載のサンプル中の因子VIIa(FVIIa)の濃度を測定する方法を実施するために用いるキット。
【請求項12】
FVIIaが血漿FVIIa(pFVIIa)、遺伝子組み換えFVIIIa(eFVIIa)、あるいは形質転換FVIIa(TgFVIIa)であることを特徴とする、請求項10または11記載のサンプル中の因子VIIa(FVIIa)の濃度を測定する方法を実施するために用いるキット。
【請求項13】
サンプル中のFVIIa濃度をin vitroあるいはex―vivoで測定するための方法において、FVIIと、FVIII、FIX及びFXIから選択される少なくとも1つの他の因子を欠失したヒト血漿を使用することを特徴とする因子を欠失した血漿を用いてサンプル中の因子VII(FVIIa)の濃度を測定する方法。
【請求項14】
前記サンプルが形質転換された哺乳動物の母乳あるいは精製されたFVIIaを含んでいるサンプルであることを特徴とする、請求項13記載の因子を欠失した血漿を用いてサンプル中の因子VII(FVIIa)の濃度を測定する方法。
【請求項15】
前記FVIIaが血漿FVIIa(pHVIIa)、遺伝子組み換えFVIIa(rFVIIa)、あるいは形質転換FVIIa(TgFVIIa)であることを特徴とする、請求項13あるいは14記載の因子を欠失した血漿を用いてサンプル中の因子VII(FVIIa)の濃度を測定する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図7b】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公表番号】特表2010−515045(P2010−515045A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543505(P2009−543505)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国際出願番号】PCT/FR2007/002188
【国際公開番号】WO2008/096082
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(309040446)エルエフビー バイオテクノロジーズ ソサイエテ パー アクションズ シンプリフィー ユニパーソンネリー (3)
【Fターム(参考)】