説明

サンプル検出装置とそれを含む検体分析装置

【課題】光学的オートフォーカス動作を必要とせず、容易に精度よくサンプルを光学的に検出可能なサンプル検出装置と、それを含む検体分析装置を提供する。
【解決手段】基板上のサンプルを光学的に検出するサンプル検出装置が、基板33に光を照射する光学系34〜40と、予め求められている基板33に関する情報に基づいて、基板33上のサンプルを検出する領域外の3点を、それぞれ個別に光軸方向あるいは光軸方向を基準線としたチルト方向に沿って移動させ、基板上に合焦させるためのチルト動作を行う手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中の細胞、微生物、染色体、核酸等のサンプルを、抗原抗体反応や核酸ハイブリダイゼーション反応等の生化学反応を利用して検出するサンプル検出装置と、それを含む検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液等の検体を分析する検体分析装置には、抗原抗体反応を利用した免疫学的な方法、例えば、被検出物質と特異的に結合する抗体または抗原等のタンパク質をプローブとして用い、微粒子、ビーズ、またはガラス板等の固相表面に固定して、検体中の被検出物質との抗原抗体反応を行わせるものや、核酸ハイブリダイゼーションを利用した方法、例えば、一本鎖の核酸をプローブとして用い、微粒子、ビーズ、ガラス板等の固相表面に固定して、検体中の被検出物質と核酸ハイブリダイゼーションを行わせるものがある。これらは、酵素、蛍光性物質、または発光性物質等の、検知感度の高い標識物質を担持した特異的な相互作用を有する標識化物質である標識化抗体、標識化抗原、または標識化核酸等を用いて、抗原抗体化合物またはハイブリダイズされた二本鎖の核酸を検出して、被検出物質(サンプル)の有無の検出やその定量を行うものである。
【0003】
これらの技術を発展させたものとして、例えば特許文献1には、互いに異なる塩基配列を有する多数のDNA(デオキシリボ核酸)プローブを、基板上にアレイ状に並べた、いわゆるDNAアレイが開示されている。
【0004】
また、非特許文献1には、多種類のタンパク質をメンブレンフィルタ上に並べ、DNAアレイと同様な構成のタンパク質アレイを作製する方法が開示されている。このように、DNAアレイやタンパク質アレイ等を用いることによって、極めて多数の項目の検査を一度に行うことが可能になってきている。
【0005】
また、様々な検体分析における、検体による汚染の軽減、反応の効率化、装置の小型化、作業の簡便化等の目的で、内部で生化学反応を行わせる使い捨て可能な生化学反応カートリッジが提案されている。例えば、特許文献2においては、DNAアレイを含む生化学反応カートリッジ内に複数のチャンバを配設し、圧力差を利用して溶液を各チャンバへ移動させることにより検体中のDNAの抽出、増幅、またはハイブリダイゼーション等の反応を内部で行わせることが可能な生化学反応カートリッジが開示されている。
【0006】
そして、このような生化学反応カートリッジ内に外部から溶液を注入する方法としては、外部の電動シリンジポンプや真空ポンプを利用する方法がある。また、生化学反応カートリッジ内部で溶液を移動する方法としては、圧力差以外にも、重力や毛細管現象や電気泳動を利用する方法が知られている。さらに、生化学反応カートリッジの内部に配設できる小型のマイクロポンプとして、特許文献2にはダイアフラムポンプ、特許文献3には発熱素子を利用したポンプ、特許文献4には圧電素子を利用したポンプがそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,445,934号明細書
【特許文献2】特表平11−509094号公報
【特許文献3】特許第2832117号明細書
【特許文献4】特開2000−274375号公報
【非特許文献1】アンジェリカ ロイキング(Angelika Lueking)他5名、「プロテイン マイクロアレイズ フォー ジーン エクスプレッション アンド アンチボディ スクリーニング(Protein Microarrays for Gene Expression and Antibody Screening)」、アナリティカル バイオケミストリー(Analytical Biochemistry) Vol.270(1)、アカデミック プレス(Academic Press)、1999年5月15日、p.103〜111
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した種類の生化学反応カートリッジを含む検体分析装置においてプローブ検出を行なう際に、被検出物質(サンプル)が生化学反応カートリッジのチャンバの内部に存在するため、生化学反応カートリッジを構成する基板の外側から、この基板を介して被検出物質の検出を行なわなければならない場合がある。例えば、励起レーザー光等の光を被検出物質に照射して光学的な検出を行う場合には、基板の厚さのばらつき(公差)によって、被検出物質に照射される励起レーザー光の合焦位置や、検出器(ディテクター)である光電子倍増管における蛍光の合焦位置がずれることがある。したがって、被検出物質と光学系(特に対物レンズ)の相対位置を、例えば光学的オートフォーカス機構によって適宜に調整する必要がある。
【0009】
ところが、被検出物質が蛍光物質を含む場合には、オートフォーカス動作において照射される励起レーザー光によってこの蛍光物質が褪色してしまい、正確な輝度測定の障害となる。また、オートフォーカス動作、具体的には読み取り、演算、フィードバック等の動作に時間を要するという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、光学的オートフォーカス動作を必要とせず、容易に精度よくサンプルを光学的に検出可能なサンプル検出装置と、それを含む検体分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基板上のサンプルを光学的に検出するサンプル検出装置において、基板に光を照射する光学系と、予め求められている基板に関する情報に基づいて、基板上のサンプルを検出する領域外の3点を、それぞれ個別に光軸方向あるいは光軸方向を基準線としたチルト方向に沿って移動させ、基板上に合焦させるためのチルト動作を行う手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光学的オートフォーカス動作が不要であるため、オートフォーカス動作時のレーザー照射によるサンプル中の蛍光物質の褪色を防止でき、それによって光学的なサンプル検出の精度が向上する。また、光学的オートフォーカス動作のための読み取り、演算、フィードバックの各処理を省略できるため、動作時間を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の生化学反応カートリッジ内で反応を生じさせるための実験装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の生化学反応カートリッジの斜視図である。
【図3】図2に示す生化学反応カートリッジの平面断面図である。
【図4】図1に示す実験装置における処理工程を示すフローチャートである。
【図5】図2,3に示す生化学反応カートリッジのチャンバの一部を通る縦断面図である。
【図6】図2,3に示す生化学反応カートリッジの他のチャンバを通る縦断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態のサンプル検出装置を示す概略図である。
【図8】図7に示すサンプル検出装置の要部の平面図である。
【図9】図7に示すサンプル検出装置のロッドおよびその駆動系を示す正面図である。
【図10】図7に示すサンプル検出装置における検出工程を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第2の実施形態のサンプル検出装置を示す概略図である。
【図12】本発明の第3の実施形態のサンプル検出装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態における検体分析装置のうち、検体の生化学反応を行わせるための実験装置を概略的に示している。この実験装置は、本実施形態において反応場となる生化学反応カートリッジ1が載置されるテーブル13を有している。このテーブル13上には、生化学反応カートリッジ1内に電磁力を作用させるための電磁石14と、生化学反応カートリッジ1の温度を制御するためのペルチェ素子15,16が配置されており、これらは実験装置全体を制御する制御部17に接続されている。
【0016】
テーブル13の両側には、電動シリンジポンプ18,19と、これらのポンプ18,19によって空気を排出または吸引するための出入口であり、それぞれ10個ずつのポンプノズル20,21を有するポンプブロック22,23とが配置されている。電動シリンジポンプ18,19とポンプノズル20,21の間には、図示しない複数の電動切換バルブが配置されている。図示しない電動切換バルブとポンプ18,19は制御部17に接続されている。
【0017】
制御部17は検査者が入力を行う入力部24に接続されている。この制御部17は、ポンプノズル20,21を1個ずつ独立して開閉して電動シリンジポンプ18,19に対する接続および遮断を制御したり、全てのポンプノズル20,21を同時に開閉するなどの制御を行うことができる。また、制御部17は、電磁石14およびペルチェ素子15,16を適宜に作動させることによって、生化学反応カートリッジ1内での生化学反応を実行させる。
【0018】
次に、この実験装置における反応場となる生化学反応カートリッジ1について詳細に説明する。
【0019】
生化学反応カートリッジ1の本体(筐体)はポリメタクリル酸メチル(PMMA)、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等の透明または半透明の合成樹脂から構成されている。なお、生化学反応カートリッジ1内の反応物について、光学的な測定を必要としない場合には、本体の材質は透明でなくてもよい。
【0020】
図2に示すように、生化学反応カートリッジ1の上部には、注射器等を用いて血液等の検体を注入するための検体入口2aが設けられ、ゴムキャップ2により封止されている。また、生化学反応カートリッジ1の側面には、内部の溶液を移動させるためにノズルを挿入して加圧または減圧を行うための複数のノズル入口3a〜3jが設けられ、ゴムキャップ3により封止されている。カートリッジ1の両面とも同様の構成になっている。
【0021】
図3は生化学反応カートリッジ1の平面断面図を示している。前記したように片側の側面には10個のノズル入口3a〜3jが設けられ、反対側の側面にも10個のノズル入口3k〜3tが設けられている。各ノズル入口3a〜3tのほとんどは、それぞれの空気が流れる空気流路4a〜4tを介して、溶液を貯蔵する場所または反応を起こす場所であるチャンバ5a〜5tに連通している。つまり、ノズル入口3a〜3jは流路4a〜4jを介してチャンバ5a〜5jに連通し、反対側のノズル入口3k,3l,3m,3o,3r,3tは、それぞれ流路4k,4l,4m,4o,4r,4tを介してチャンバ5k,5l,5m,5o,5r,5tに連通している。ただし、本実施形態では、ノズル入口3n,3p,3q,3sはチャンバに連通しておらず予備になっており、使用されない。
【0022】
検体入口2はチャンバ7に連通し、チャンバ7は流路6a,6b,6c,6kを介してチャンバ5a,5b,5c,5kに連通しているとともに、流路10を介してチャンバ8に連通している。チャンバ8は流路6g,6oを介してチャンバ5g,5oに連通しているとともに、流路11を介してチャンバ9に連通している。チャンバ9は流路6h,6i,6j,6r,6tを介してチャンバ5h,5i,5j,5r,5tに連通している。また、流路10は流路6d,6e,6f,6l,6mを介してチャンバ5d,5e,5f,5l,5mに連通している。
【0023】
また、チャンバ9の底面には角孔が開けられ、この角孔にDNAマイクロアレイ12が、プローブ面を上にしてに貼り付けられている。DNAマイクロアレイ12は、1平方インチ(約645mm2)程度の大きさを持つガラス板(図7に示す基板33)の固相表面に、数十〜数十万種類の異なるDNAプローブ(図8参照)が高密度に並べられたものである。本実施形態では、このDNAマイクロアレイ12を用いて、検体中のDNAとハイブリダイゼーション反応を行わせることによって、一度に数多くの遺伝子を検査できるものである。これらのDNAプローブはマトリックス状に規則正しく並べられており、それぞれのDNAプローブのアドレス(何行・何列と示される位置)を、情報として容易に取り出すことができる。なお、検査の対象となる遺伝子としては、感染症ウィルス、細菌、疾患関連遺伝子、各個人の遺伝子多型等がある。
【0024】
ここで、本実施形態において検体の処理を行うための、各チャンバ5a〜5tのセッティングの一例を示す。チャンバ5aには、細胞壁を破壊するEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含む第1の溶血剤が、チャンバ5bには、界面活性剤等のタンパク質変性剤を含む第2の溶血剤がそれぞれ収容されている。チャンバ5cには、DNAが吸着するシリカコーティングされた磁性体粒子が収容されている。チャンバ5l、チャンバ5mには、DNAの抽出の際にDNAの精製を行うために用いられる第1、第2の抽出洗浄剤が収容されている。
【0025】
チャンバ5dには、DNAを磁性体粒子から溶出する低濃度塩のバッファからなる溶出液が収容されている。チャンバ5gには、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)に必要な薬剤、すなわち、プライマ、ポリメラーゼ、dNTP溶液、バッファ、蛍光剤を含むCy3−dUTP(アマシャム バイオサイエンス株式会社製の蛍光標識)等の混合液が収容されている。チャンバ5h,5jには、ハイブリダイゼーションしなかった蛍光標識付きの検体DNAと蛍光標識とを洗浄するための界面活性剤を含む洗浄剤が、チャンバ5iには、DNAマイクロアレイ12を含むチャンバ9内を乾燥させるためのアルコールがそれぞれ収容されている。
【0026】
なお、チャンバ5eは血液のDNA以外の塵埃を溜めるためのチャンバである。チャンバ5fは、チャンバ5l,5mからの第1、第2の抽出洗浄剤の廃液を溜めるためのチャンバである。チャンバ5rは第1、第2の洗浄剤の廃液を溜めるためのチャンバである。チャンバ5k,5o,5tは、溶液がノズル入口に流れ込まないようにするために設けられたブランクのチャンバである。
【0027】
本実施形態では、この生化学反応カートリッジ1に血液等の液体状の検体を注入して、前記した実験装置(図1参照)にセットすることによって、生化学反応カートリッジ1の内部で、DNA等の抽出および増幅を行わせ、増幅された検体DNAと生化学反応カートリッジ1の内部にあるDNAマイクロアレイ12のDNAプローブとの間でハイブリダイゼーションを行わせ、さらに、ハイブリダイゼーションしなかった蛍光標識付きの検体DNAと蛍光標識の洗浄とを行うことができる。
【0028】
このような実験装置および生化学反応カートリッジ1を用いて、本実施形態において検体の生化学反応を生化学反応カートリッジ1内にて生じさせる方法について具体的に説明する。
【0029】
まず、検査者が、検体である血液を収容した注射器の針(図示せず)を、生化学反応カートリッジ1の検体入口2を塞いでいるゴムキャップを貫通させて、注射器内の血液を検体入口2からチャンバ7に注入する。その後に、検査者は生化学反応カートリッジ1をテーブル13上に置く。そして、検査者が、図示しないレバーを操作することにより、ポンプブロック22,23を図1の矢印の方向に移動させると、ポンプノズル20,21が、生化学反応カートリッジ1の両側部のノズル入口3a〜3tに、ゴムキャップ3を貫通して挿入される。
【0030】
検査者が、入力部24から実験開始の命令を入力すると処理が始まる。図4は生化学反応およびその後処理の手順を説明するフローチャートである。まず、ステップS1で、制御部17が、ポンプノズル20,21を制御してノズル入口3a,3kのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引することによって、チャンバ5a内の第1の溶血剤を血液の入ったチャンバ7に流し込む。このように、ノズル入口3aにポンプノズル20を挿入して空気を噴出して加圧し、ノズル入口3kにポンプノズル21を挿入して空気を吸引して減圧することによって、チャンバ5a内の第1の溶血剤が、血液の入ったチャンバ7内に流れ込む様子が、チャンバ5a,7,5kを通る断面図である図5に示されている。
【0031】
本実施形態では、空気の供給および吸引のタイミングをずらすことによって、各チャンバへの加圧および減圧を制御してカートリッジ1内を溶液を円滑に流すことができる。さらに、電動シリンジポンプ19による空気の吸引を、ポンプ18からの空気の開始時からリニアに増加させるなどの細かな制御を行って、溶液をより円滑に流すことも可能である。例えば、溶血剤の粘性や流路の抵抗にもよるが、ステップS1において、電動シリンジポンプ19からの空気の吸引を、電動シリンジポンプ18からの空気の噴出を開始してから10〜200ミリ秒後に開始するように制御すると、流れる溶液の先頭で溶液が飛び出すことがなく、溶液が円滑に流れる。これは、以下の各工程における溶液の移動についても同様である。
【0032】
また、電動シリンジポンプ18,19を用いて空気の供給を容易に制御しつつ、ノズル入口3a,3oのみを開にして、電動シリンジポンプ18,19によって空気の噴出および吸引を交互に繰り返して、チャンバ7の溶液を流路10に流し、その後に戻す動作を繰り返して攪拌を行う。あるいは、電動シリンジポンプ19から空気を連続して噴出することによって、気泡を発生させながら攪拌を行う。
【0033】
次に、ステップS2において、ノズル入口3b,3kのみを開にして、ステップS1と同様の原理でチャンバ5b内の第2の溶血剤をチャンバ7に流し込む。さらに、ステップS3において、ノズル入口3c,3kのみを開にして、ステップS1,S2と同様の原理でチャンバ5c内の磁性体粒子をチャンバ7に流し込む。ステップS2,S3のいずれにおいても、ステップS1と同様の攪拌を行う。ステップS3によって、ステップS1,S2において細胞が溶解して得られたDNAが磁性体粒子に付着する。
【0034】
そして、ステップS4で電磁石14をオンにし、ノズル入口3e,3kのみを開にし、電動シリンジポンプ19から空気を噴出し、電動シリンジポンプ18から空気を吸引して、チャンバ7内の溶液をチャンバ5eに移動させる。この移動の際に、磁性体粒子およびDNAを、流路10の電磁石14の上方位置で捕捉する。なお、電動シリンジポンプ18,19による空気の吸引および噴出を交互に繰り返して、溶液をチャンバ7と5eの間を2回往復させることにより、DNAの捕捉効率を向上させている。さらに往復回数を増やせば、捕捉効率を一層高めることができる。ただし、処理時間が余分に掛かることになる。
【0035】
このように、ステップS1〜S4にて、幅1〜2mm程度で高さ0.2〜1mm程度の小さい流路10上で、流動状態のDNAを、磁性体粒子を利用して極めて効率良く捕捉する。なお、仮に、捕捉ターゲット物質がDNAではなく、RNAまたはタンパク質の場合にも同様に効率の良い捕捉が行える。
【0036】
次に、ステップS5において電磁石14をオフにし、ノズル入口3f,3lのみを開とし、電動シリンジポンプ19から空気を噴出し、電動シリンジポンプ18から空気を吸引して、チャンバ5l内の第1の抽出洗浄液をチャンバ5fに移動させる。この際に、ステップS4で捕捉された磁性体粒子およびDNAが、抽出洗浄液と共に移動して洗浄が行われる。電磁石14をオンにして、ステップS4と同様の原理で磁性体粒子およびDNAと抽出洗浄液とをチャンバ5l内とチャンバ5fの間を2回往復させることによって、洗浄された磁性体粒子およびDNAを流路10の電磁石14の上方位置に回収し、第1の抽出洗浄液をチャンバ5lに戻す。
【0037】
ステップS6において、ノズル入口3f,3mのみを開いてステップS5と同様の工程を行い、チャンバ5m内の第2の抽出洗浄液と、磁性体粒子およびDNAとを移動させて、磁性体粒子およびDNAをさらに洗浄してから電磁石14の上方位置に回収し、第2の抽出洗浄液をチャンバ5mに戻す。
【0038】
続いて、ステップS7において電磁石14をオンにしたまま、ノズル入口3d,3oのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引することにより、チャンバ5d内の溶出液をチャンバ8に移動させる。この溶出液の作用によって、磁性体粒子とDNAが分離し、DNAのみが溶出液とともにチャンバ8に移動し、磁性体粒子は流路10内に残る。このようにして、DNAの抽出および精製が行われる。本実施形態では、抽出洗浄液を収容するチャンバ5l,5mと、洗浄後の廃液を溜めるためのチャンバ5fが用意されているので、カートリッジ1内でDNAの抽出および精製を行うことが可能である。
【0039】
次に、ステップS8において、ノズル入口3g,3oのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引して、チャンバ5g内のPCR用薬剤(例えば、プライマ、ポリメラーゼ、dNTP溶液、バッファ、蛍光標識等の混合液)をチャンバ8に流し込む。さらに、ノズル入口3g,3tのみを開にし、電動シリンジポンプ18,19による空気の噴出および吸引を交互に繰り返し、チャンバ8の溶液を流路11に流して、その後に戻す動作を繰り返して攪拌を行う。そして、ペルチェ素子15を制御して、チャンバ8内の溶液を96℃の温度に10分保持した後に、96℃・10秒、55℃・10秒、72℃・1分のサイクルを30回繰り返してPCRを行い、溶出されたDNAを増幅する。
【0040】
ステップS9でノズル入口3g,3tのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引して、チャンバ8内の溶液をチャンバ9に移動させる。さらに、ペルチェ素子16を制御して、チャンバ9内の溶液を45℃で2時間保持し、ハイブリダイゼーションを行わせる。この時、電動シリンジポンプ18,19による空気の噴出および吸引を交互に繰り返して、チャンバ9内の溶液を流路6tに移動し、その後に戻す動作を繰り返して攪拌を行いながら、ハイブリダイゼーションを進める。
【0041】
次にステップS10において、同じく45℃に保持したまま、今度はノズル入口3h、3rのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引して、チャンバ9内の溶液をチャンバ5rに移動させるとともに、チャンバ5h内の第1の洗浄液を、チャンバ9を通してチャンバ5rに流し込む。このように、ノズル入口3hにポンプノズル20を挿入して空気を噴出して加圧し、ノズル入口3rにポンプノズル21を挿入して空気を吸引して減圧することによって、チャンバ5h内の第1の洗浄液が、チャンバ9を通してチャンバ5r内に流れ込む様子が、チャンバ5h,9,5rを通る断面図である図6に示されている。電動シリンジポンプ18,19の吸引および噴出を交互に繰り返して、この溶液をチャンバ5h,9,5rの間を2回往復させ、最後にチャンバ5hに戻す。このようにして、ハイブリダイゼーションしなかった蛍光標識付きの検体DNAと蛍光標識とが洗浄される。
【0042】
さらに、ステップS11において、同じく45℃に保持したまま、ノズル入口3j、3rのみを開いて、ステップS10と同様の工程を行い、チャンバ5j内の第2の洗浄液をチャンバ9を通してチャンバ5rに流し込んでDNAの洗浄をさらに行い、最後に溶液をチャンバ5jに戻す。このように本実施形態では、第1、第2の洗浄液を収容するチャンバ5h,5jと、洗浄後の廃液を溜めるためのチャンバ5rが用意されているので、生化学反応カートリッジ1内でDNAマイクロアレイ12の洗浄を行うことが可能である。
【0043】
ステップS12で、ノズル入口3i,3rのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引して、チャンバ5i内のアルコールを、チャンバ9を通してチャンバ5rに移動させる。その後に、ノズル入口3i,3tのみを開にし、電動シリンジポンプ18から空気を噴出し、電動シリンジポンプ19から空気を吸引してチャンバ9内を乾燥させる。
【0044】
以上述べたステップS1〜S12によって、検体の生化学反応(例えばDNAのハイブリダイゼーション)を生化学反応カートリッジ1内で行わせることができる。
【0045】
なお、本実施形態では、ノズル入口3a〜3tがカートリッジ1の2つの面、つまり両側部に集中して設けられているため、電動シリンジポンプ18,19、電動切換バルブ、ポンプノズルを内蔵したポンプブロック22,23等の形状や配置を単純化することができる。さらに、必要なチャンバや流路を確保しながら、ポンプブロック22,23により生化学反応カートリッジ1を同時に挟み込むという単純な動作だけで、ポンプノズル20,21を挿入することができ、ポンプブロック22,23の構成も簡単にすることができる。また、ノズル入口3a〜3tを全て同じ高さに直線的に並ぶように配置することによって、ノズル入口3a〜3tに接続される流路4a〜4tの高さは全て同じになり、流路4a〜4tの作製が容易になる。
【0046】
また、図1に示す実験装置において、n個の生化学反応カートリッジ1を同時に使用できるようにポンプブロック22,23をn倍に長くした構成にすれば、n個の生化学反応カートリッジ1を直列に並べて、n個の生化学反応カートリッジ1のそれぞれに対して必要な工程を同時に行うことができる。したがって、構成は極めて簡単でありながら多数の生化学反応カートリッジにおいて同時に生化学反応を行わせることが可能である。
【0047】
以上述べたステップS1〜S12を行って、生化学反応カートリッジ1内で生化学反応を生じさせた後に、検査者が図示しないレバーを操作して、ポンプブロック22,23を生化学反応カートリッジ1から離れる方向に移動させ、ポンプノズル20,21を生化学反応カートリッジ1のノズル入口3a〜3tから外す。そして、検査者はこの生化学反応カートリッジ1を、図7に示すサンプル検出装置にセットして、生化学反応の測定および解析を行う。
【0048】
図7は本実施形態のサンプル検出装置の概略図を表したものである。ここでは、図1に示す実験装置と、図7に示すサンプル検出装置を含めて、検体分析装置と総称する。
【0049】
このサンプル検出装置のカートリッジ設置部30にはばね31が設けられており、生化学反応カートリッジ1を図7の矢印A方向に付勢している。なお、図7においては、ばね31は、生化学反応カートリッジ1の基板(DNAマイクロアレイ12の基板)33に直接接しているが、生化学反応カートリッジ1内のどこに接していても構わない。そして、矢印A,A’方向に移動可能なロッド32a〜32cの先端が基板33に接触し、ばね31からの力と相まって生化学反応カートリッジ1(基板33)を矢印A,A’方向に移動可能にしている。3本のロッド32a〜32cが存在するため、生化学反応カートリッジ1(基板33)の姿勢は一義的に決定する。ロッド32の先端は表面粗さが小さく、かつ半球状であり、基板33を点支持し、基板33に傷を付け難いようになっている。なお、図7の矢印B方向に生化学反応カートリッジ1を見た図である図8に示されているように、ロッド32が基板33を加圧できるように、生化学反応カートリッジ1には、DNAマイクロアレイ12の領域外かつ基板33の領域内に、ロッド32が挿入されるための穴42が設けられている。
【0050】
図9にロッド32の駆動系の詳細を示す。カートリッジ設置部30またはその近傍に駆動モータ45が設けられている。後述するようにロッド32を正確に位置決めするために、駆動モータ45はサーボモータあるいはエンコーダを伴ったステッピングモータであり、駆動モータ制御部47(図7参照)に接続されている。一方、ロッド32にはギア46に噛み合うためのギアが形成されており、駆動モータ45の駆動力は、ギア46を介してロッド32に伝えられる。また、ロッド32には雄ネジが切ってあり、カートリッジ設置部30にはロッド32が回転しながら矢印A,A’方向に移動するための雌ネジが切ってある。そして、駆動モータ45およびギア46は3本のロッド32のそれぞれに対して独立して存在しており、生化学反応カートリッジ1(基板33)のチルト動作および矢印A、A’方向への移動を可能にしている。
【0051】
図7に示すように、駆動モータ制御部47が接続されているCPU48にバーコードリーダ44が接続されている。このバーコードリーダ44は、生化学反応カートリッジ1に記載されているバーコード43からの情報を読取りCPU48に伝達する。CPU(処理装置)48は、バーコードリーダ44からの情報をもとに駆動モータ45の回転量を決定し、それを駆動モータ制御部47に伝えて駆動モータ45を制御させている。
【0052】
このサンプル検出装置には、基板33に対向する対物レンズ37と、生化学反応カートリッジ1内のサンプル(検体)中の蛍光物質を励起するためのレーザー光源34と、レーザー光源34からのレーザー光およびサンプルからの蛍光を透過および反射するハーフミラー35と、レーザー光を対物レンズに導く反射鏡36と、レーザー光によって励起され、ハーフミラー35にて反射された蛍光のうちの特定の周波数帯のみを透過させるフィルター38と、フィルター38を透過した光を集光するレンズ39と、レンズ39により集光された光が入射され、その入射光を検出する光電子倍増管40が設けられている。光電子倍増管40はCPU48に接続されている。
【0053】
カートリッジ設置部30には、基板33上にマトリックス状に配列されたDNAプローブ(DNAマイクロアレイ12)と同じかそれよりも大きい検出窓41が設けられており、反射鏡36および対物レンズ37は、この基板33上のDNAマイクロアレイ12全体をスキャンできるように、不図示の駆動機構によって駆動可能である。
【0054】
このような構成であるため、レーザー光源34からハーフミラー35および反射鏡36を介して対物レンズ37に入射した平行光(レーザー光)が、対物レンズによって基板33上に合焦する。そして、レーザー光によって励起された蛍光物質から発せられる蛍光が、対物レンズ37によって平行光にされた後、反射鏡36およびハーフミラー35を介してフィルター38に入射し、フィルター38を透過して光電子倍増管40に入射した特定の周波数帯の光が、光電子倍増管40によって検出される。
【0055】
ここで、バーコード43に記録される情報について詳説する。本実施形態のように、ロッド32がガラス基板33に直接接する構成の場合には、以下のいずれかの情報をバーコード43に記録することが考えられる。
【0056】
1.基板33の厚さ(サンプル検出装置にセットされる生化学反応カートリッジ1の基板33の材質が常に一定の場合)
2.基板33の厚さと基板33の材質の屈折率(サンプル検出装置にセットされる生化学反応カートリッジ1の基板33の材質が一定でない場合)
3.レーザー光が基板33上のDNAマイクロアレイ12に合焦するために必要な、3本のロッド32a〜32cの矢印A,A’方向への移動量
レーザー光が基板33上のマトリックス状のDNAマイクロアレイ12に合焦するために必要な、3本のロッド32a〜32cの矢印A,A’方向への移動量は、基板33の厚さと基板33の材質の屈折率とから計算される。例えば、基板33の厚さの称呼寸法(予備寸法)が1.000(mm)で、その実測値が1.015(mm)であり、基板33の材質の屈折率が1.46である場合には、ロッド32a〜32cの位置は、称呼寸法の場合よりも(1.015−1.000)/1.46=約0.01(mm)だけA’方向に移動させる必要がある。なお、この計算例は対物レンズ37が平凸レンズの場合であるが、平凸レンズに限定するものではない。基板33の光学系に対する相対移動は、対物レンズ37から基板33へ照射されるレーザー光の光軸方向に沿って行われても、この光軸方向を基準線として所定角度だけ傾いたチルト方向に沿って行われてもよい。
【0057】
本実施形態では、前記した情報のいずれかがバーコード43に記録されている。バーコード43に、基板33の厚さ、または基板33の厚さと基板33の材質の屈折率が記録されている場合には、前記した移動量の計算はCPU48において行なわれる。もちろん、この計算を予め行って求めた移動量をバーコード43に記録しておいても構わない。
【0058】
このような本実施形態のサンプル検出装置を用いた検出工程について、図10のフローチャートを参照して説明する。生化学反応カートリッジ1をカートリッジ設置部30に設置し、不図示の入力部から動作開始命令を入力すると、ステップS13において、バーコードリーダ44がバーコード43を読み取り、そのバーコード43に記録されている情報をCPU48に伝える。そして、ステップS14において、バーコード43に記録されている情報に基づいてCPU48が駆動モータ45の回転量を決定する。前記したように、バーコード43に基板33の厚さ、または基板33の厚さと基板33の材質の屈折率が記録されている場合には、CPU48がロッド32a〜32cの移動量を計算して、それに基づいて駆動モータ45の回転量を決定する。また、バーコード43にロッド32a〜32cの移動量が記録されている場合には、それに基づいてCPU48が駆動モータ45の回転量を決定する。そして、ステップS15において、駆動モータ45を駆動させる。それにより、基板33上のDNAマイクロアレイ12が、対物レンズ37によるレーザー光の合焦位置に移動する。そこで、S16において、反射鏡36および対物レンズ37がDNAマイクロアレイ12を網羅する領域においてスキャンを行いながら、前記した通りレーザー光源34からのレーザー光の照射と、それに基づく蛍光の、光電子倍増管40による検出とを行うことによって、蛍光物質が付着しているDNAプローブの検出が完了する。
【0059】
光電子倍増管40が、DNAマイクロアレイ12を構成する、マトリックス状に並んだ様々なDNAプローブのうちのいずれかに蛍光標識が付着していることを検出すると、その検出データがCPU48に送られる。CPU48は、光電子倍増管40からの検出データに基づいて、ステップS1〜S12の処理工程で行われた生化学反応の結果を推定し、その結果を分析することによって、検体中の感染症ウィルス、細菌、疾患関連遺伝子、遺伝子多型等を検出することができる。すなわち、本実施形態では、CPU48が、合焦動作のための基板33と光学系34〜40(特に対物レンズ37)の相対位置の調整のための演算処理を行うのみならず、サンプル検出結果に基づいて検体の分析を行う処理装置としても機能する。ただし、合焦動作のための基板33と光学系34〜40(特に対物レンズ37)の相対位置の調整のための演算処理を行うCPUと、サンプル検出結果に基づく検体分析を行う処理装置とを別々に設けてもよい。
【0060】
本実施形態によれば、予め求められている基板に関する情報(例えば、基板の厚さ、基板の材質の屈折率、ロッドの移動量)にしたがって対物レンズ37と基板33との相対位置を調節することによって、合焦動作が行える。このことは、従来の光学的なオートフォーカス動作が不要であることを意味する。それによって、オートフォーカス動作のためのレーザー光照射によって、DNAプローブに付着した蛍光物質の褪色を防止できる。また、オートフォーカス動作のための読み取り、演算、フィードバックの各処理を省略でき、動作時間を削減できる。さらに、基板33の、DNAマイクロアレイ12の反対側において蛍光を検出する構成の場合にも、基板の厚さの公差による輝度のばらつきを無くすことができる。
【0061】
なお、本実施形態では、前記した情報のいずれかをバーコード43に記録し、それをバーコードリーダ44によって読み取る構成であるが、バーコード43およびバーコードリーダ44は2次元バーコードおよびそのリーダでもよい。また、バーコード43およびバーコードリーダ44の代わりにICタグとその読取装置を設けても構わない。さらに、このような情報を、検査者が不図示の入力部から分析の都度入力する構成にしても構わない。
【0062】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態を詳細に説明する。
【0063】
本実施形態は、図11に示すように、ロッド32a〜32cが生化学反応カートリッジ1の基板33以外の部位に接する点が、第1の実施形態と異なる。それ以外の点については第1の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0064】
本実施形態は、例えば生化学反応カートリッジ1に穴が空いており、内部のチャンバや流路を構成できない場合に有効である。
【0065】
本実施形態においては、以下の情報のいずれかがバーコード33に記録される。
【0066】
1.基板33の厚さと、基板33の表面または裏面を基準平面とした時の、生化学反応カートリッジ1におけるロッド32が接する3点のZ座標(サンプル検出装置にセットされる生化学反応カートリッジ1の基板33の材質が常に一定の場合)
2.基板33の厚さと、基板33の材質の屈折率と、基板33の表面または裏面を基準平面とした時の、生化学反応カートリッジ1におけるロッド32が接する3点のZ座標(サンプル検出装置にセットされる生化学反応カートリッジ1の基板33の材質が一定でない場合)
3.レーザー光が基板33上のDNAマイクロアレイ12に合焦するために必要な、3本のロッド32a〜32cの矢印A,A’方向への移動量
レーザー光が基板33上のDNAマイクロアレイ12に合焦するために必要な、3本のロッド32a〜32cの矢印A,A’方向への移動量は、基板33の厚さと、基板33の材質の屈折率と、基板33の表面または裏面を基準平面とした時の、生化学反応カートリッジ1におけるロッド32が接する3点のZ座標とから計算される。例えば、基板33の厚さの称呼寸法(予備寸法)が1.000(mm)で、その実測値が1.015(mm)であり、基板33の材質の屈折率が1.46であり、基準平面のZ座標を4.000mmとした時のロッド32aが接する点のZ座標を4.152mm、ロッド32bが接する点のZ座標を3.983mm、ロッド32cが接する点のZ座標を4.021mmとすると、ロッド32aを(4.152−4.000)−(1.015−1.000)/1.46=0.094(mm)だけA方向に移動させ、ロッド32bを(3.983−4.000)−(1.015−1.000)/1.46=−0.022(mm)だけA方向に、すなわち0.022(mm)だけA’方向に移動させ、ロッド32cを(4.021−4.000)−(1.015−1.000)/1.46=0.004(mm)だけA方向に移動させる必要がある。
【0067】
説明を繰り返さないが、本実施形態では、第1の実施形態(図10参照)と全く同様の工程を行うことによって、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0068】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態を詳細に説明する。
【0069】
本実施形態は、光学系34〜40と基板33上のDNAマイクロアレイ12との相対位置関係が第1,2の実施形態とは異なる。すなわち、第1,2の実施形態では基板33のDNAマイクロアレイ12と反対側の面からレーザー光(励起光)を照射する構成であるが、本実施形態では、図12に示すように基板33のDNAマイクロアレイ12と対向する位置に配置されている光学系34〜40からレーザー光を照射する構成であり、検出窓41の位置が第1,2の実施形態とは異なる。また、生化学反応カートリッジ1のDNAマイクロアレイ12側の筐体は、少なくともDNAプローブが配列されている範囲において入射光をある程度透過可能な材質、例えばアクリルや石英ガラスによって構成されている。本実施形態は、装置構成の都合上光学系(特に対物レンズ37)をDNAマイクロアレイ12と同じ側に配置することが好ましい場合に有効である。前記した以外の点については第1,2の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0070】
本実施形態においては、以下の情報のいずれかがバーコード33に記録される。
【0071】
1.チャンバ49内の媒質の厚さと、生化学反応カートリッジ1のDNAプローブが配列された領域の筐体の厚さと、基板33の表面または裏面を基準平面とした時の、生化学反応カートリッジ1におけるロッド32が接する3点のZ座標(サンプル検出装置にセットされる生化学反応カートリッジ1の基板33の材質、チャンバ49内の媒質、生化学反応カートリッジ1のDNAプローブが配列された領域の筐体の材質が常に一定である場合)
2.チャンバ49内の媒質の屈折率および厚さと、基板33の材質の屈折率と、生化学反応カートリッジ1のDNAプローブが配列された領域の筐体の屈折率および厚さと、基板33の表面または裏面を基準平面とした時の、生化学反応カートリッジ1におけるロッド32が接する3点のZ座標(サンプル検出装置にセットされる生化学反応カートリッジ1の基板33の材質、チャンバ49内の媒質、生化学反応カートリッジ1のDNAプローブが配列された領域の筐体の材質が一定でない場合)
3.レーザー光が基板33上のDNAマイクロアレイ12に合焦するために必要な、3本のロッド32a〜32cの矢印A,A’方向への移動量
レーザー光が基板33上のDNAマイクロアレイ12に合焦するために必要な、3本のロッド32a〜32cの矢印A,A’方向への移動量は、基板33の厚さと、基板33の材質の屈折率と、基板33の表面または裏面を基準平面とした時の、生化学反応カートリッジ1におけるロッド32が接する3点のZ座標とから計算される。例えば、チャンバ49内の媒質の厚さの称呼寸法(予備寸法)が1.000(mm)で、その実測値が1.050(mm)で、その屈折率が1.33であり、生化学反応カートリッジ1のDNAプローブが配列された領域の筐体の称呼寸法(予備寸法)が3.000(mm)で、その実測値が2.998(mm)で、その屈折率が1.49であり、基準平面のZ座標を4.000mmとした時のロッド32aが接する点のZ座標を4.152mm、ロッド32bが接する点のZ座標を3.983mm、ロッド32cが接する点のZ座標を4.021mmとすると、ロッド32aを(4.152−4.000)+(1.050−1.000)/1.33+(2.998−3.000)/1.49=0.188(mm)だけA方向に移動させ、ロッド32bを(3.983−4.000)+(1.050−1.000)/1.33+(2.998−3.000)/1.49=0.019(mm)だけA方向に移動させ、ロッド32cを(4.021−4.000)+(1.050−1.000)/1.33+(2.998−3.000)/1.49=0.057(mm)だけA方向に移動させる必要がある。
【0072】
説明を繰り返さないが、本実施形態では、第1、2の実施形態(図10,11参照)と全く同様の工程を行うことによって、装置構成上の都合により基板33のDNAマイクロアレイ12と対向する位置に光学系(特に対物レンズ37)が構成されている場合においても、第1,2の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 生化学反応カートリッジ
12 DNAマイクロアレイ
31 バネ(移動手段)
32 ロッド(移動手段)
33 基板
34 レーザー光源(光学系)
35 ハーフミラー(光学系)
36 反射鏡(光学系)
37 対物レンズ(光学系)
38 フィルター(光学系)
39 レンズ(光学系)
40 光電子倍増管(光学系)
43 バーコード(記録部)
44 バーコードリーダ(読み取り部)
45 駆動モータ(移動手段)
46 ギア(移動手段)
47 駆動モータ制御部(移動手段)
48 CPU(処理装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上のサンプルを光学的に検出するサンプル検出装置において、
前記基板に光を照射する光学系と、
予め求められている前記基板に関する情報に基づいて、前記基板上の前記サンプルを検出する領域外の3点を、それぞれ個別に光軸方向あるいは光軸方向を基準線としたチルト方向に沿って移動させ、前記基板上に合焦させるためのチルト動作を行う手段と、を有することを特徴とするサンプル検出装置。
【請求項2】
前記チルト動作を行う手段は、前記基板上の前記3点にそれぞれ当接し、前記光軸方向にそれぞれ移動させる3本のロッドを有する請求項1に記載のサンプル検出装置。
【請求項3】
前記基板は透光性を有するものであり、
前記光学系は、前記基板の、サンプルが存在する可能性のある面と反対側の面に対向するように配置されている、請求項1または2に記載のサンプル検出装置。
【請求項4】
前記基板に関する情報を入力するための入力部を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のサンプル検出装置。
【請求項5】
前記基板に関する情報が記録された記録部を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のサンプル検出装置。
【請求項6】
前記記録部はバーコードである、請求項5に記載のサンプル検出装置。
【請求項7】
前記記録部はICタグである、請求項5に記載のサンプル検出装置。
【請求項8】
前記記録部に記録されている前記基板に関する情報を読み取るための読み取り部を有する、請求項5〜7のいずれか1項に記載のサンプル検出装置。
【請求項9】
前記基板に関する情報は該基板の厚さを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のサンプル検出装置。
【請求項10】
前記基板を含む生化学反応カートリッジを有し、
前記基板に関する情報は、該基板の基準平面から、前記生化学反応カートリッジと前記移動手段との接点までの距離を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のサンプル検出装置。
【請求項11】
前記基板には複数のDNAプローブが設けられており、該DNAプローブに捕捉された前記サンプルを光学的に検出する、請求項1〜10のいずれか1項に記載のサンプル検出装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のサンプル検出装置と、
前記サンプル検出装置による前記サンプルの検出結果に基づいて、前記サンプル検出装置に供給される検体の生化学反応の有無および/または生化学反応状態を知ることによって、前記検体を分析する処理装置と
を含む、検体分析装置
【請求項13】
前記サンプル検出装置の、前記検体が供給される生化学反応カートリッジをセットして、前記検体の生化学反応を行わせるための実験装置をさらに含む、請求項12に記載の検体分析装置。
【請求項14】
前記チルト動作を行う手段と対向して前記基板を付勢するための設置部をさらに有する請求項1〜11のいずれか1項に記載のサンプル検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−237439(P2011−237439A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139302(P2011−139302)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【分割の表示】特願2005−192087(P2005−192087)の分割
【原出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】