説明

サーマルプリンタ

【課題】小型化が可能なサーマルプリンタを提供すること。
【解決手段】本発明のサーマルプリンタ1は、巻回されたインクリボン3を回転自在に保持し、正回転によりインクリボンを所定の経路に送り出す原反ホルダ111と、所定の経路を経由したインクリボンを正回転により巻き取ることが可能であると共に、逆回転によりインクリボン3を所定の経路に送り戻すことが可能に回転自在に保持する巻取ホルダ121と、インクリボン3が掛け渡され、所定の経路の長さを変更可能に移動する移動ローラ144,145と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品の製造番号、製造日、賞味期限等の各種情報をその製品を封入する外装部材に表示することが広く求められている。このような場合、例えば、製品を封入する外装部が包装フィルムにより形成されている場合には、一般に、サーマルプリンタにより各種情報の印字が行われる。
【0003】
サーマルプリンタは、通常、サーマルヘッドと、インクリボンと、プラテンローラとを備えて構成されている。サーマルヘッドは、その端部に複数の発熱素子を備え、通電により所望の発熱素子が発熱する構成となっている。インクリボンは、原反ホルダに巻回されており、包装機等から連続的に繰り出される包装フィルムと同期して原反ホルダから繰り出されると共に、印字後は巻取ホルダにより巻き取られるように構成されている。プラテンローラは、その外周面が包装機等から連続的に繰り出される包装フィルムと接触するように配設されており、サーマルヘッド及びインクリボンに対する印字受け部を構成している。
【0004】
サーマルプリンタは、プラテンローラの外周面において、発熱した所望の発熱素子と接触したインクリボンとを包装フィルムに接触させることにより、インクリボンに塗布されたインクを包装フィルムに接着させ、印字を行う(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−123863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、サーマルプリンタには、小型化への要求が強くなっている。しかしながら、サーマルプリンタは、通常、サーマルヘッドを駆動させるための駆動モータや原反ホルダ及び巻取ホルダを回転させるための回転モータ、プラテンローラを回転させるための駆動モータ等、多くの駆動源を必要とする。
【0007】
そしてこれらのうち、サーマルヘッドを駆動させるための駆動モータや原反ホルダ及び巻取ホルダを回転させるための回転モータは、サーマルヘッド、原反ホルダ及び巻取ホルダと共に、サーマルヘッド、原反ホルダ及び巻取ホルダが支持されるプリントユニットに配設されている。つまり、従来のサーマルプリンタは、上述の各モータをプリントユニットに配設し、サーマルヘッド、原反ホルダ及び巻取ホルダを、各モータにより直接駆動させていた。これにより、従来のサーマルプリンタは、必然的にプリントユニットが大型化し、これがサーマルプリンタを小型化させるための障害の1つとなっていた。
【0008】
また、プリントユニットが大きいと、例えば、プリントユニットを被印字物の幅方向に複数配設して、幅方向における複数箇所に同時に印刷させる多連式を構成しようとすると、従来のサーマルプリンタは、幅方向に必要以上に大型化してしまい、被印字物の幅方向に対して好適な間隔の印字ができないという問題があった。これにより、プリントユニットを被印字物の幅方向に対して小型化したサーマルプリンタが求められていた。
【0009】
本発明は、小型化が可能なサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、巻回されたインクリボンを回転自在に保持し、正回転により前記インクリボンを所定の経路に送り出す原反ホルダと、前記経路を経由した前記インクリボンを正回転により巻き取ることが可能であると共に、逆回転により前記インクリボンを前記経路に送り戻すことが可能に回転自在に保持する巻取ホルダと、前記インクリボンが掛け渡され、前記経路の長さを変更可能に移動する移動ローラと、を備えることを特徴とするサーマルプリンタに関する。
【0011】
また、本発明のサーマルプリンタは、前記経路の長さを変更可能に前記移動ローラを移動させるローラ移動部と、前記原反ホルダと当接することにより前記原反ホルダの回転を停止させる原反ストッパと、前記ローラ移動部に押圧される被押圧部と、を有する原反ストッパ移動部と、を更に備え、前記原反ストッパ移動部は、前記経路の長さが長くなるように前記移動ローラが移動したときに前記原反ストッパ部を前記原反ホルダに当接させると共に、前記経路の長さが短くなるように前記移動ローラが移動したときに前記被押圧部が前記ローラ移動部に押圧されて原反ストッパ部を前記原反ホルダから離反させることが好ましい。
【0012】
また、前記ローラ移動部は、第1回動軸を中心に回動自在に設けられる回動アームからなり、前記移動ローラは、前記ローラ移動部に設けられることが好ましい。
【0013】
また、前記移動ローラは、前記第1回動軸を挟むように複数設けられることが好ましい。
【0014】
また、前記原反ストッパ移動部は、第2回動軸を中心に回動自在なブレーキアームを更に有し、前記原反ストッパ部と前記被押圧部とは、前記第2回動軸を挟むように前記ブレーキアームに設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型化が可能なサーマルプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係るサーマルプリンタを前面側から見た外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係るサーマルプリンタを背面側から見た外観斜視図である。
【図3】本実施形態に係るサーマルプリンタにおけるフレームへのプリントユニットの装着過程を説明する図である。
【図4】図1のA−A断面図に相当し、フレームにプリントユニットが装着された状態における本実施形態に係るサーマルプリンタの断面図である。
【図5】プリントユニットの構成を詳細に示す側面図である。
【図6】印字時におけるプリントユニットの側面図である。
【図7】巻取機構における巻取側リボンホルダが逆回転してインクリボンがリボン経路案内機構側に戻された状態におけるプリントユニットの側面図である。
【図8】接触期間になってインクリボンの送りが開始された状態におけるプリントユニットの側面図である。
【図9】巻取機構によるインクリボンの送り駆動を説明する図であって、巻取ロールへのインクリボンを巻き取り量が少ない状態における印字時のプリントユニットの側面図である。
【図10】巻取機構によるインクリボンの送り駆動を説明する図であって、巻取ロールへのインクリボンの巻き取り量が多い状態におけるプリントユニットの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るサーマルプリンタ1を前面側から見た外観斜視図である。図2は、本実施形態に係るサーマルプリンタ1を背面側から見た外観斜視図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、サーマルプリンタ1は、複数(本実施形態においては3組)のプリントユニット100と、複数のプリントユニット100を並列に装着させるユニット支持部20と、を備えて構成されている。プリントユニット100は、ユニット支持部20の幅方向(サーマルプリンタ1を前面側から見た左右方向。以下、サーマルプリンタ1を前面側から見た左右方向を「幅方向」という。)にそれぞれ並列に装着される。
【0019】
プリントユニット100は、巻回されたインクリボン3を回転自在に保持する原反ホルダとしての原反側リボンホルダ111と、インクリボン3を巻き取る巻取ホルダとしての巻取側リボンホルダ121と、移動ローラとしての第1移動ローラ144及び第2移動ローラ145と、インクリボン3に熱転写による印字を行うヘッドユニット160と、を備えて構成されている。
【0020】
ユニット支持部20は、フレーム10と、帯状の被印刷物としての被印字物2を所定の被印字経路PRに沿って案内する被印字物案内機構50と、ヘッドユニット160に被印字物2を圧接させる圧接機構40と、プリントユニット100に保持されたインクリボン3を送り出すリボン駆動機構30と、被印字物案内機構50、圧接機構40及び複数のプリントユニット100の制御を行う全体制御部(図示せず)と、を備えて構成されている。
【0021】
サーマルプリンタ1は、被印字物案内機構50によって被印字経路PRを移動する被印字物2に対して、リボン駆動機構30が被印字物2と同期した速度で複数のプリントユニット100それぞれに保持されたインクリボン3を送り出し、各ヘッドユニット160と圧接機構40とで被印字物の被印字面(ヘッドユニット160と対向する面)に印字を行うことにより、被印字物2に対して、多数列(プリントユニット100の設置に応じた数)の印字を同時に行うことができるように構成されている。
【0022】
以下、図1及び図2に加え、図3〜図5を参照して、サーマルプリンタ1における各部を詳細に説明する。図3は、フレーム10へのプリントユニット100の装着過程を説明する図である。図4は、図1のA−A断面図に相当し、フレーム10にプリントユニット100が装着された状態を示すサーマルプリンタ1の断面図である。図5は、プリントユニット100の構成を詳細に示す側面図である。
なお、以下の説明においては、ユニット支持部20における前面側(すなわち図3、図4及び図5に示す左側)を「前方側」、ユニット支持部20における背面側(図3、図4及び図5に示す右側)を「後方側」として説明する。
【0023】
まず、ユニット支持部20について説明する。
フレーム10は、矩形状のベース板11と、矩形状のベース板11の幅方向における両端に立設される側板12L,12Rと、側板12L,12Rの間にそれぞれ架設された下部支持バー21及び上部支持バー23と、下部支持バー21に固定された下部ガイドレール22と、上部支持バー23に固定された上部ガイドレール24と、を備えて構成されている。
【0024】
下部支持バー21は、断面形状が長方形の角柱状で、長軸を幅方向とすると共に上面を水平として側板12L,12Rの間に架設されている。
上部支持バー23は、断面形状が略正方形の角柱状で、長軸を幅方向とすると共に上面を水平として側板12L,12Rの間に架設されている。
【0025】
下部ガイドレール22は、所定長さを有する角柱状で、下部支持バー21の上面に固定されている。下部ガイドレール22は、長軸が下部支持バー21の長軸と直交するように配設されている。つまり、下部ガイドレール22は、長軸がユニット支持部20の前後方向に配置されるように下部支持バー21に固定されている。
【0026】
また、下部ガイドレール22には、断面形状が角溝状の嵌挿溝22Aが下部ガイドレール22の長軸に沿って形成されている。嵌挿溝22Aは、後述するプリントユニット100のユニットベース101が嵌合可能な幅で上方側に開放している。なお、下部ガイドレール22の所定位置には、プリントユニット100を固定するためにロックピン25が設けられている。
【0027】
上部ガイドレール24は、所定長さを有する角柱状で、上部支持バー23の上面に固定されている。また、上部ガイドレール24は、下部ガイドレール22と対向した状態で下部ガイドレール22と平行に配設されている。上部ガイドレール24には、断面形状が角溝状の嵌挿溝24Aが上部ガイドレール24の長軸に沿って、嵌挿溝22Aと対向するように形成されている。嵌挿溝24Aは、プリントユニット100のユニットベース101が嵌合可能な幅で下方側に開放している。
【0028】
図3及び図4に示すように、ユニット支持部20は、後述のユニットベース101の上下2辺にそれぞれ設けられたガイドロッド(下部ガイドロッド102,上部ガイドロッド103)を、下部ガイドレール22の嵌挿溝22A及び上部ガイドレール24の嵌挿溝24Aに嵌入させることにより、プリントユニット100を支持する。そして、ユニット支持部20は、プリントユニット100を嵌挿溝22A,24Aに沿って後方側に移動させ、下部ガイドレール22に設けられたロックピン25を下部ガイドロッド102に係合させることにより、プリントユニット100を脱落不能に固定する。
【0029】
上記のように構成されたユニット支持部20によれば、下部支持バー21と上部支持バー23における任意の位置に下部ガイドレール22及び上部ガイドレール24を固定し、プリントユニット100を装着することができる。これにより、例えば、ユニット支持部20の幅方向における任意の位置にプリントユニット100を配置することが可能となると共に、ユニット支持部20にプリントユニット100を隙間無く多数並設することができる。これにより、被印字物2の幅方向における任意の位置に印字するようにプリントユニット100の位置を設定することができると共に、印字列数も任意に設定することが可能となる。つまり、高い自由度で印字位置を設定することが可能になる。
【0030】
被印字物案内機構50は、フレーム10の下部に設けられた下部ガイドローラ51と、フレーム10の背面側上部に設けられた上部ガイドローラ52とを備えて構成されている。下部ガイドローラ51及び上部ガイドローラ52は、フレーム10の左右の側板12L,12Rに軸受を介して回転自在に支持されている。また、下部ガイドローラ51及び上部ガイドローラ52は、中心軸が水平となるように側板12L,12Rに支持されている。
【0031】
帯状の被印字物2は、下部ガイドローラ51の下側から後方側に巻回されると共に、上部ガイドローラ52の前方側から上側に巻回されるようにして被印字物案内機構50に掛け渡される。このようにして被印字物案内機構50は、ユニット支持部20の前方側から後方側に、被印字物2が移動する被印字経路PRを構成する。
【0032】
なお、被印字物2は、図示しないが、下部ガイドローラ51の上流側でロール状に巻かれた状態で繰り出し装置に装着され、上部ガイドローラ52の下流側で巻き取り装置に巻き取られるように構成されている。つまり、被印字物2は、巻き取り装置の巻き取り駆動によって、被印字経路PR(図4に示す下側から上側)を所定の速度で移動するように構成されている。
【0033】
圧接機構40は、印字受け回転体としてのプラテンローラ41と、偏芯軸としての偏芯支持軸41Eと、プラテン移動モータ42とを備えて構成されている。
プラテンローラ41は、所定径の金属製芯金の周面にシリコーンゴム等の所定の弾性を有する素材による弾性層が形成され、所定外径に形成されたローラである。プラテンローラ41の長さは、ユニット支持部20の幅方向全域に亘っている。プラテンローラ41の配設位置は、ユニット支持部20に装着されたプリントユニット100が備えるヘッドユニット160に対して、被印字物2の被印字経路PRを挟む後方側に設定されている。
【0034】
偏芯支持軸41Eは、プラテンローラ41の中心軸から所定量偏心した位置において、プラテンローラ41の両端に設けられている。偏芯支持軸41Eは、フレーム10の左右の側板12L,12Rに軸受を介して回転自在に支持されている。また、偏芯支持軸41Eは、中心軸方向を幅方向として、水平に取り付けられている。
【0035】
プラテン移動モータ42は、フレーム10における一方(図1における左側)の側板12Lの内面に設けられている。プラテン移動モータ42は、タイミングベルト43を介して偏芯支持軸41Eと連結されている。具体的には、プラテンローラ41の偏芯支持軸41Eに固定されたタイミングプーリ41Pと、プラテン移動モータ42の回転軸に固定されたタイミングプーリ42Pとの間に、タイミングベルト43が掛け回されている。これにより、偏芯支持軸41Eは、プラテン移動モータ42によって回転駆動される。なお、プラテン移動モータ42は、前述した図示しない全体制御装置によって制御される。
【0036】
プラテンローラ41は、偏芯支持軸41Eの回転によって前後方向に移動する。例えば、偏芯支持軸41Eの回転によりプラテンローラ41が後方側に位置した状態では、プラテンローラ41の外周面(その最も前方側)は被印字物2の被印字経路PRよりも後方側となる。一方、プラテンローラ41が前方に位置した状態では、プラテンローラ41の外周面が被印字物2の被印字経路PRよりも前方側になる。すなわち、プラテンローラ41が前方に位置した状態では、被印字経路PRの被印字物2を所定量前方側に押し出して、被印字経路PRを前方側に屈曲させた状態になる。
【0037】
ここで、前述したように、プラテンローラ41は、プリントユニット100が備えるヘッドユニット160に対して、被印字物2の被印字経路PRを挟む後方側に位置している。そのため、プラテンローラ41が前方側に位置した状態では、プラテンローラ41の外周面が、被印字経路PRにある被印字物2をヘッドユニット160の後述する印字部161A(図5参照)に押圧する。
【0038】
一方、プラテンローラ41が後方に位置した状態では、プラテンローラ41の外周面が被印字物2の被印字経路PRよりも後方となるため、ヘッドユニット160(印字部161A)への押圧は解除される。
【0039】
このように、プラテンローラ41は、その偏芯支持軸41Eの回転によって前後方向に移動し、被印字経路PRの被印字物2をヘッドユニット160(印字部161A)に押圧する状態(以下、「押圧状態」という)と、被印字物2をヘッドユニット160に押圧しない状態(以下、「非押圧状態」という)と、を交互に繰り返す。そして、被印字物2とヘッドユニット160との間にインクリボン3が介在した状態で、ヘッドユニット160(印字部161A)に被印字物2を押圧することにより、印字が行われる。
【0040】
また、圧接機構40は、ユニット支持部20の幅方向全域に亘る長さのプラテンローラ41を偏芯支持軸41Eにより前後方向に移動させることによって、押圧状態及び非押圧状態を構成する。これにより、例えば、ユニット支持部20の幅方向に並列に装着された複数のプリントユニット100に対して、1つのプラテンローラ41によって同時に印刷させることが可能となる。
【0041】
また、各プリントユニット100は、プラテンローラ41がヘッドユニット160(印字部161A)に近接及び離反するように構成されているため、ヘッドユニット160(印字部161A)をプラテンローラ41側に移動させる機構が不要となる。
【0042】
その結果、各プリントユニット100にヘッドユニット160を移動させるためのモータ等の駆動源が不要となり、例えば、プリントユニット100の構成の簡略化、幅方向における小型化、低コスト化が可能となる。また、プリントユニット100の幅方向における寸法を小さくすることができることより、例えば、印字の幅方向における間隔の設定の自由度を向上させることが可能なる。
【0043】
リボン駆動機構30は、巻取ホルダ回転体としてのリボン駆動ローラ31と、リボン駆動モータ32とを備えて構成されている。
リボン駆動ローラ31は、所定径の金属製芯金の周面に、シリコーンゴム等の所定の弾性を有する素材による所定厚さの弾性層を備えて、所定外径に形成されたローラである。リボン駆動ローラ31は、詳細は示さないが、両端の支持軸がフレーム10の左右の側板12L,12Rに軸受を介して回転自在に支持されている。また、リボン駆動ローラ31は、中心軸方向を幅方向として水平に配置されている。リボン駆動ローラ31の長さは、ユニット支持部20の幅方向全域に亘っている。リボン駆動ローラ31の前後方向における位置は、被印字物2の被印字経路より前方側に設定されている。
【0044】
リボン駆動モータ32は、フレーム10における一方(図1に示す左側)の側板12Lの外面に設けられており、側板12Lの外面に装着された駆動制御ボックス13の内部に収容されている。また、リボン駆動モータ32は、サーマルプリンタ1を統括制御する全体制御装置(図示せず)によって制御されている。なお、全体制御装置は、図示しないが、駆動制御ボックス13の内部に配置されている。
【0045】
リボン駆動ローラ31とリボン駆動モータ32とは、タイミングベルト33を介して連結されている。具体的には、リボン駆動ローラ31の支持軸に固定されたタイミングプーリ31Pと、リボン駆動モータ32の回転軸に固定されたタイミングプーリ32Pとの間にタイミングベルト33を掛け回すことにより、リボン駆動ローラ31とリボン駆動モータ32とは連結される。リボン駆動ローラ31は、タイミングベルト33によりリボン駆動モータ32からの回転駆動力が伝達されることによって、正回転及び逆回転の両方向に回転駆動することが可能になる。
【0046】
リボン駆動ローラ31は、詳しくは後述するが、巻取側リボンホルダ121に巻き取られたインクリボン3の外周面に圧接する。そして、リボン駆動ローラ31は、巻取側リボンホルダ121に巻き取られたインクリボン3の外周面に圧接した状態で回転することにより、巻取側リボンホルダ121を回転駆動させ、巻取側リボンホルダ121にインクリボン3を巻き取らせるように作用する。
【0047】
なお、本実施形態に係るサーマルプリンタ1は、巻取側リボンホルダ121のインクリボン3の巻き取りによって、インクリボン3が所定の速度で送り駆動されるように構成されている。
【0048】
このように、リボン駆動機構30は、ユニット支持部20の幅方向全域に亘る長さのリボン駆動ローラ31によって、複数のプリントユニット100それぞれの巻取側リボンホルダ121のインクリボン3の巻き取り(インクリボン3の送り駆動)を行うように構成されている。これにより、ユニット支持部20に装着された複数のプリントユニット100に対して、1つのリボン駆動ローラ31によって各インクリボン3の送り駆動を行うことが可能になる。
【0049】
その結果、各プリントユニット100は、各インクリボン3を送り駆動するためのモータ等の駆動機構を備える必要が無く、プリントユニット100の構成の簡略化、小型化、低コスト化が可能となる。また、プリントユニット100の幅方向における寸法を小さくできることから、印字の幅方向における間隔の設定の自由度を向上できる。
【0050】
次に、プリントユニット100について説明する。
プリントユニット100は、全体の外形が幅方向に薄い直方体状を呈し、前述したように、フレーム10のユニット支持部20に着脱可能に構成されている。
【0051】
プリントユニット100は、矩形板状に形成されたユニットベース101と、インクリボン3を保持して繰り出す繰出機構110と、インクリボン3を巻き取ってインクリボン3を搬送する巻取機構120と、繰出機構110から巻取機構120に至るインクリボン3の移動経路を形成するリボン経路案内機構130と、インクリボン3の弛みを防ぐ張力調整機構140と、繰出機構110からのインクリボン3の繰り出しを規制するブレーキ機構150と、ヘッドユニット160と、制御ボックス170と、を備えて構成されている。
【0052】
ユニットベース101の一方の面には、繰出機構110と、巻取機構120と、リボン経路案内機構130と、張力調整機構140と、ブレーキ機構150と、ヘッドユニット160と、が配設されている。つまり、ユニットベース101は、プリントユニット100の基部を構成する。
【0053】
また、ユニットベース101の下辺には下部ガイドロッド102が設けられ、上辺には上部ガイドロッド103が設けられている。
下部ガイドロッド102及び上部ガイドロッド103は、それぞれ所定長さの丸棒状に形成されており、下部ガイドレール22の嵌挿溝22A及び上部ガイドレール24の嵌挿溝24Aに嵌入可能に形成されている。
下部ガイドロッド102の所定位置の下側には、下部ガイドレール22が備えるロックピン25と係合可能な固定凹部102Aが形成されている。
【0054】
ユニットベース101の後方側上部には、所定半径の円弧状に切り欠かれて成るローラ逃げ部101Aが形成されている。ローラ逃げ部101Aは、図4及び図5に示すように、プリントユニット100がユニット支持部20に装着された状態において、リボン駆動ローラ31と対応する(リボン駆動ローラ31がこのローラ逃げ部101Aに入り込む)ように形成されている。
【0055】
ローラ逃げ部101Aの上側には、巻取ストッパ部としての巻取側リボンホルダストッパ101Bが設けられている。巻取側リボンホルダストッパ101Bは、ユニットベース101の一方の面から所定高さに突設しており、巻取側リボンホルダ121に装着された巻取ロール125に巻き取られたインクリボン3の外周面に当接するように形成されている。
【0056】
ユニットベース101の後方側上部の角部には、装着検知スイッチ104が設けられている。装着検知スイッチ104は、レバー操作によってON/OFFするリミットスイッチによって構成されている。装着検知スイッチ104は、プリントユニット100がユニット支持部20に装着された状態において、そのレバーがユニット支持部20の上部支持バー23に当接して操作されるように配設されている。この装着検知スイッチ104によって、プリントユニット100がユニット支持部20に正常に装着されたことが検知される。その検知情報は、図示しない全体制御装置に制御情報として入力される。
【0057】
繰出機構110は、ユニットベース101の前方側上部に配置されており、原反側リボンホルダ111を備えて構成されている。
原反側リボンホルダ111は、ユニットベース101の一方の面に対して直角な回転軸で回転可能に取り付けられている。原反側リボンホルダ111には、インクリボン3が巻かれたインクリボンロール112が装着される。
【0058】
巻取機構120は、巻取側リボンホルダ121と、巻取側リボンホルダ121を揺動可能に支持する付勢アーム(巻取ホルダ移動部)としての支持アーム122と、支持アーム122を揺動付勢する巻取機構スプリング123と、を備えて構成されている。
【0059】
支持アーム122は、所定厚さの板状であって所定の幅で所定長さに形成されている。支持アーム122の一方の端部である基端部は、ユニットベース101の後方側上下方向略中央に、枢支ピン124によって枢着されている。支持アーム122は、基端部が枢着されることにより、他方の端部である先端部が、自由端としてユニットベース101の一方の面と平行な面内で揺動可能となる。支持アーム122の先端部には、巻取側リボンホルダ121が取り付けられている。
【0060】
巻取側リボンホルダ121は、支持アーム122の先端部に、ユニットベース101の一方の面に対して直角な回転軸で回転可能に取り付けられている。巻取側リボンホルダ121には、インクリボン3を巻き取る巻取ロール125が装着される。
【0061】
巻取機構スプリング123は、支持アーム122の基端部近傍とユニットベース101の後方側との間に張設されている。巻取機構スプリング123は、その弾性復帰力によって、支持アーム122の基端部を中心に先端部を右回りに揺動させる。
【0062】
巻取機構スプリング123に付勢されることによる支持アーム122の揺動は、巻取側リボンホルダ121に装着された巻取ロール125に巻き取られたインクリボン3の外周面が、ユニットベース101に突設された巻取側リボンホルダストッパ101Bに当接することで規制される(図3参照)。
ここで、図3は、巻取側リボンホルダ121に装着された巻取ロール125に図中二点鎖線で示すインクリボン3が巻き取られた状態を示しており、巻き取られたインクリボン3の外周面が巻取側リボンホルダストッパ101Bに当接して揺動が規制されている状態を示している。
【0063】
このように、サーマルプリンタ1は、ユニットベース101に突設された巻取側リボンホルダストッパ101Bに巻取側リボンホルダ121に巻き取られたインクリボン3の外周面を当接させることにより、巻取ロール125に巻き取られたインクリボン3の緩みを防ぐように構成されている。
【0064】
一方、支持アーム122は、巻取機構スプリング123の付勢力以上の力が付勢力と反対側に作用すると、基端部を中心に先端部が左回り(図3から図5に示す左回り方向をいい、以下、この方向を「左回り」という。)に揺動する。支持アーム122の先端部が左回りに揺動すると、巻取側リボンホルダストッパ101Bと巻取ロール125に巻き取られたインクリボン3の外周面との当接が解除され、巻取側リボンホルダストッパ101Bによる巻取ロール125に巻き取られたインクリボン3の弛み規制が解除される。
【0065】
リボン経路案内機構130は、インクリボン3が掛け回される複数のガイドローラ(131〜137)によって構成され、繰出機構110から巻取機構120に至るインクリボン3の移動経路を規定する。また、そのインクリボン3の移動経路中には、張力調整機構140が介設されている。
【0066】
各ガイドローラ(131〜137)は、それぞれ所定直径及び所定長さの円柱状で、ユニットベース101の一方の面から直立する姿勢でベアリング(図示せず)を介して回転自在に装着されている。
【0067】
各ガイドローラ(131〜137)は、繰出機構110から繰り出されたインクリボン3を、ユニットベース101の下辺と後方側の辺に略沿った経路で、巻取機構120に導くように配置されている。すなわち、第1ローラ131及び第2ローラ132が繰出機構110の下側に略鉛直に並んで配置され、第2ローラ132の後方側やや下側に第3ローラ133が配置されている。第4ローラ134は、第3ローラ133の下側わずかに後方側に配置されている。第5ローラ135及び第6ローラ136は、ユニットベース101の下辺に沿って配置され、第6ローラ136は、ユニットベース101の後方側の下端部に配置されている。第7ローラ137は、巻取機構120における巻取側リボンホルダ121の後方斜め下側に配置されている。
【0068】
張力調整機構140は、回動アーム(ローラ移動部)としての張力調整アーム141と、張力調整アーム141を揺動付勢する張力調整スプリング142と、を備えて構成されている。
【0069】
張力調整アーム141は、所定厚さの板状で、所定幅で所定長さに形成されている。張力調整アーム141は、その長手方向略中央において第1回動軸としての揺動軸143によってユニットベース101に枢支され、長手方向を前後方向として設けられている。張力調整アーム141は、揺動軸143を中心として、ユニットベース101の一方の面と平行な面内で揺動可能に構成されている。揺動軸143は、リボン経路案内機構130における第4ローラの上側やや後方寄りに配置されている。
【0070】
張力調整アーム141の両端部には、第1移動ローラ144及び第2移動ローラ145が回転自在に装着されている。前方側に位置する第1移動ローラ144は、リボン経路案内機構130における第2ローラ132の下側に位置するように設定されている。後方側に位置する第2移動ローラ145は、第5ローラ135の上側やや前方に位置するように設定されている。
【0071】
また、張力調整アーム141の前方側端部の上側角部には、所定半径の円弧状に面取された係合部としてのカム部141Cが形成されている。このカム部141Cは、詳しくは後述するが、ブレーキ機構150を操作するためのものである。
【0072】
張力調整スプリング142は、張力調整アーム141の揺動軸143より後方側と、張力調整アーム141より上側のユニットベース101部位との間に張設されている。張力調整スプリング142は、その弾性復帰力によって、張力調整アーム141の揺動軸143を中心に張力調整アーム141を左回りに揺動させる。
【0073】
上記のように構成されたリボン経路案内機構130と張力調整機構140とは、繰出機構110から巻取機構120に至るインクリボン3が、下記のように葛折り状に蛇行して掛け回される。
繰出機構110の原反側リボンホルダ111には、右回りにインクリボンロール112が回転して、インクリボン3が後方側下方に繰り出されるようにインクリボンロール112が装着されている。
【0074】
繰出機構110に設けられたインクリボンロール112から繰り出されたインクリボン3は、第1ローラ131及び第2ローラ132の後方側で経路を規定され、張力調整機構140における第1移動ローラ144の下側を前方側から巻回し、第3ローラ133の上側を前方側から巻回し、第4ローラ134の下側を前方側から巻回して後方側斜め上方に向かい、張力調整機構140における第2移動ローラ145の上側を前方側から巻回し、第5ローラ135の下側を前方側から巻回し、第6ローラ136を下側から後方側に巻回し、ユニットベース101の後方側下部に配置された後述するヘッドユニット160におけるサーマルヘッド161(印字部161A)に当接して経路を規定され、第7ローラ137の上側を後方側から巻回し、巻取側リボンホルダ121に装着された巻取ロール125に至るように掛け回されている。
【0075】
インクリボン3は、巻取機構120に設けられた巻取ロール125が右回りに回転することで、巻取ロール125に巻き付く。
【0076】
上記のようなリボン経路案内機構130と張力調整機構140とによるインクリボン3の掛け回し経路では、リボン経路案内機構130によるインクリボン3の掛け回し経路が、張力調整機構140によって遠回り(長くなる方向)に屈曲されている。すなわち、リボン経路案内機構130の第2ローラ132と第3ローラ133との間におけるインクリボン3の掛け回し経路が、張力調整機構140の第1移動ローラ144によって下側に大きく屈曲(第1屈曲部V1)されている。
【0077】
また、リボン経路案内機構130の第4ローラ134と第5ローラ135との間におけるインクリボン3の掛け回し経路が、張力調整機構140の第2移動ローラ145によって上側に大きく屈曲(第2屈曲部V2)されている。
【0078】
このようなインクリボン3の掛け回し経路構成では、張力調整機構140の第1移動ローラ144及び第2移動ローラ145の位置によってインクリボン3の掛け回し経路の長さが変化する。
第1移動ローラ144及び第2移動ローラ145の位置は、張力調整機構140における張力調整アーム141が揺動軸143を中心に揺動することで変化する。すなわち、張力調整アーム141が右回りに揺動することにより、第1屈曲部V1及び第2屈曲部V2の屈曲量が小さくなって、インクリボン3の掛け回し経路長が短くなる。
逆に張力調整アーム141が左回りに揺動すると、第1屈曲部V1及び第2屈曲部V2の屈曲量が大きくなって、インクリボン3の掛け回し経路長が長くなる。
【0079】
ここで、張力調整機構140における張力調整アーム141は、前述したように張力調整スプリング142によって左回りに付勢されている。これにより、例えば、リボン経路案内機構130に掛け回されたインクリボン3が弛む(インクリボン3の掛け回し経路長が長くなる)と、張力調整アーム141が張力調整スプリング142の付勢力で左回り方向に揺動し、弛みを吸収してインクリボン3に所定の張力を付与するように作用する。
【0080】
すなわち、例えば、巻取機構120の逆回転によってインクリボン3に弛みが生ずれば、張力調整機構140はインクリボン3を送り方向下流側(巻取機構120側)からインクリボン3を引き戻して弛みを吸収する。
【0081】
一方、リボン経路案内機構130に掛け回されたインクリボン3が巻取機構120側に引っ張られてインクリボン3の張力が大きくなると、インクリボン3によって張力調整アーム141が張力調整スプリング142の付勢力に抗して右回りに揺動操作される。これにより、インクリボン3の掛け回し経路長が短くなり、インクリボン3に過剰な張力が作用することを抑制する。つまり、張力調整機構140は、インクリボン3を常に所定の張力が作用した状態に保ち、繰出機構110から巻取機構120に至るインクリボン3に弛みを生じさせないように作用する。
【0082】
更に、張力調整アーム141は、右回りに所定角度以上揺動する(インクリボン3の掛け回し経路長が最短になる)と、その前方側端部のカム部141Cが、後述するブレーキ機構150におけるブレーキアーム151の下端に設けられた係合部としてのカムフォロア155を押圧し、ブレーキアーム151を揺動操作するように構成されている。つまり、張力調整アーム141は、ブレーキ機構150の一部をも兼ねているものである。これについては、後に詳述する。
【0083】
ブレーキ機構150は、ブレーキアーム151と、ブレーキアーム151を付勢するブレーキスプリング152とを備えて構成されている。
ブレーキアーム151は、所定厚さの板状であって所定幅で所定長さに形成されている。ブレーキアーム151は、長手方向略中央において第2回動軸としての揺動軸153によってユニットベース101に枢支され、長手方向を上下方向として設けられている。ブレーキアーム151は、揺動軸153を中心として、ユニットベース101の一方の面と平行な面内で揺動可能に構成されている。
【0084】
ブレーキアーム151の上端部は、繰出機構110における原反側リボンホルダ111の後方側斜め下側に位置している。このブレーキアーム151の上端部は、繰出機構110における原反側リボンホルダ111と対向するように斜めに形成され、ここに摩擦係数が大きく耐摩耗性の高い素材によって形成された板状の原反ストッパ部としてのブレーキパッド154が装着されている。
【0085】
また、ブレーキアーム151の下端部は、張力調整機構140における張力調整アーム141の前方側端部の上方に位置している。このブレーキアーム151の下端部には、所定形状のカムフォロア155が設けられている。
【0086】
ブレーキスプリング152は、ブレーキアーム151における揺動軸153による枢支部位より上側と、その後方側となるユニットベース101の部位に固定された支持ブロック105との間に配設されている。これにより、ブレーキスプリング152は、その弾性復帰力で、ブレーキアーム151を左回りに付勢する。
【0087】
ブレーキスプリング152の付勢によるブレーキアーム151の揺動は、上端に設けられたブレーキパッド154が繰出機構110における原反側リボンホルダ111の基部円板111Aの周面を押圧することで規制される。その結果、ブレーキスプリング152の付勢力でブレーキパッド154が原反側リボンホルダ111の基部円板111Aの周面に押圧され、原反側リボンホルダ111の回転を規制する(原反側リボンホルダ111にブレーキをかける)ように作用する。
【0088】
上記構成のブレーキ機構150は、ブレーキアーム151に外力が作用しない状態では、前述したようにブレーキスプリング152の付勢力で原反側リボンホルダ111の回転を規制する。そして、ブレーキスプリング152の付勢力に抗してブレーキアーム151が右回りに揺動操作されると、ブレーキパッド154と基部円板111Aの周面との当接が解除され、原反側リボンホルダ111の回転規制が解除(ブレーキ解除)される。
【0089】
ここで、ブレーキアーム151に外力が作用しない状態においてブレーキ作用しているブレーキ機構150に対するブレーキ解除操作は、張力調整機構140における張力調整アーム141によって行われる。
【0090】
すなわち、張力調整機構140の張力調整アーム141は、前述したように、リボン経路案内機構130に掛け回されたインクリボン3が巻取機構120側に引っ張られてインクリボン3の張力が大きくなると、インクリボン3によって右回りに揺動操作される。この張力調整アーム141の揺動角度が所定角度以上に達する(掛け回し経路長が最短になる)と、その前方側端部に形成されたカム部141Cがブレーキ機構150におけるブレーキアーム151のカムフォロア155に当接し、ブレーキアーム151を右回りに揺動操作する。
【0091】
上記のような張力調整機構140及びブレーキ機構150の構成により、ブレーキ機構150のブレーキ操作によって繰出機構110からのインクリボン3の繰り出しが規制された状態で、インクリボン3が巻取機構120側に引っ張られると、インクリボン3によって張力調整アーム141が右回りに揺動操作され、揺動する張力調整アーム141によってブレーキ解除操作が行われる。つまり、インクリボン3が巻取機構120側に引っ張られて掛け回し経路長が最短になると、ブレーキ解除操作が行われるように構成されている。
【0092】
ヘッドユニット160は、サーマルヘッド161と、サーマルヘッド161を支持するホルダ162と、サーマルヘッド161とホルダ162とを連結する弾性支持部としてのヘッドスプリング163と、を備えて構成されている。ヘッドユニット160は、ユニットベース101の後方側下部に配置されている。
【0093】
サーマルヘッド161は、詳細は示さないが、先端角部の印字部161Aに、多数の発熱素子が幅方向(図5に示す紙面と直交する方向)に並んで配設されている。各発熱素子は、図示しない制御装置による制御下で選択的な通電によって発熱し、これによって印字部161Aに接触したインクリボン3のインクを溶解又は昇華させ、インクリボン3に圧接された被印字物2に印字を行う。
【0094】
図5に示すように、印字部161Aは、側面側から見て略直角に形成されている。そして、サーマルヘッド161は、その印字部161Aが、被印字物2の移動経路(被印字経路PR)に対して、後方側に突出するように設けられている。
ホルダ162は、ヘッドスプリング163を介してサーマルヘッド161を支持すると共に、ユニットベース101に固定されている。
【0095】
ヘッドスプリング163は、中心軸が略水平方向となるように配設されている。これにより、例えば、サーマルヘッド161が後方側から前方側に向けて押圧されると、ヘッドスプリング163が弾性変形することでサーマルヘッド161の前方側への移動を許容する。同時に、ヘッドスプリング163の弾性復帰力で、サーマルヘッド161を後方側に向けて付勢する。
【0096】
制御ボックス170は、その内部に、ヘッドユニット160を制御して印字させるユニット制御装置(図示せず)を構成する制御基板等を収容している。ユニット制御装置は、前述した全体制御装置によって制御される。
【0097】
次に、サーマルプリンタ1及びプリントユニット100の作用を、前述の図3から図5に加え、図6から図10を参照しながら説明する。
【0098】
図6は、印字時におけるプリントユニット100の側面図である。図7は、巻取機構120における巻取側リボンホルダ121が逆回転してインクリボン3がリボン経路案内機構130側に戻された状態におけるプリントユニット100の側面図である。図8は、接触期間になってインクリボン3の送りが開始された状態におけるプリントユニット100の側面図である。図9は、巻取機構120によるインクリボン3の送り駆動を説明する図であって、巻取ロール125へのインクリボン3の巻き取り量が少ない状態における印字時のプリントユニット100の側面図である。図10は、巻取ロール125へのインクリボン3の巻き取り量が多い状態におけるプリントユニット100の側面図である。
【0099】
上記のように構成されたプリントユニット100は、前述したように、ユニット支持部20に着脱自在に装着される。具体的には、プリントユニット100のユニット支持部20への装着(図3参照)は、ユニットベース101の上下2辺に設けられた下部ガイドロッド102と上部ガイドロッド103とを、下部ガイドレール22及び上部ガイドレール24に嵌入させて、その延設方向に押し込むことにより行われる。
そして、プリントユニット100は、下部ガイドレールが備えるロックピン25によって、ユニット支持部20に脱落不能に固定される(図4参照)。
【0100】
ユニット支持部20にプリントユニット100が正常に装着されると、プリントユニット100が備える装着検知スイッチ104がフレーム10の上部支持バー23によって操作され、検知情報が全体制御装置に発信される。この装着検知スイッチ104からの検知情報により、各プリントユニット100の装着が全体制御装置に認知され、認知されたプリントユニット100が起動可能になる。
【0101】
このようにしてプリントユニット100がフレーム10のユニット支持部20に装着された状態では、巻取側リボンホルダ121に装着された巻取ロール125に巻き取られたインクリボン3の外周面が、リボン駆動ローラ31の外周面に押圧されている。
【0102】
また、張力調整アーム141は、ブレーキアーム151を揺動操作しておらず、ブレーキ機構150が作用している。すなわち、張力調整アーム141は略水平の姿勢で、その前端のカム部141Cはブレーキ機構150におけるブレーキアーム151の下端のカムフォロア155とは離間した状態にある。ブレーキ機構150は、繰出機構110における原反側リボンホルダ111の回転を規制して(原反側リボンホルダ111にブレーキをかけて)いる(以下、このプリントユニット100の状態を「スタンバイ状態」という)。
【0103】
プリントユニット100は、プラテンローラ41の移動による押圧状態の間、インクリボン3をリボン駆動機構30によって被印字物2の移動速度と同期した速度で送り駆動する。
インクリボン3の送り駆動の際には、リボン駆動ローラ31を左回りに回転させる。これにより、リボン駆動ローラ31に周面が押圧している巻取側リボンホルダ121に装着された巻取ロール125が、右回りに回転される。その結果、巻取ロール125にインクリボン3が巻き取られる。
【0104】
この時、リボン経路案内機構130に掛け回されたインクリボン3が巻取機構120側に引っ張られる。これにより、張力調整アーム141が右回りに揺動して、インクリボン3の掛け回し経路長が短くなる。そして、張力調整アーム141の揺動角度が所定角度以上になる(インクリボン3の掛け回し経路長が最短になる)と、前述したように、張力調整アーム141がブレーキ機構150を操作して、繰出機構110に対するブレーキ作用を解除する。
【0105】
図6に示すように、ブレーキ機構150による繰出機構110に対するブレーキ作用が解除されると、繰出機構110の原反側リボンホルダ111が回転可能となる。これにより、原反側リボンホルダ111に装着されたインクリボンロール112からのインクリボン3の繰り出しが可能となる。
【0106】
インクリボンロール112から繰り出されたインクリボン3は、リボン経路案内機構130及び張力調整機構140に案内され、巻取機構120における巻取側リボンホルダ121に装着された巻取ロール125に巻き取られる。その結果、インクリボン3は、ヘッドユニット160におけるサーマルヘッド161の印字部161Aと、被印字経路PRの被印字物2の間を、被印字物2の移動速度と同期した速度で送られる。
【0107】
そして、プラテンローラ41の移動により押圧状態が構成され、サーマルヘッド161の作用によって被印字物2に印字が行われる。なお、巻取側リボンホルダ121及び原反側リボンホルダ111において、インクリボン3が送り駆動される方向の回転を「正回転」、これとは逆方向の回転を「逆回転」とする。
【0108】
プラテンローラ41が後方側に移動して印字が終了すると、リボン駆動機構30(リボン駆動ローラ31)によるインクリボン3の送りは停止される。この状態においても被印字物2の移動は継続されるが、図7に示すように、インクリボン3と被印字物2とは接触状態にはなく、被印字物2がインクリボン3と擦れて不具合を生ずることはない。その後、リボン駆動モータ32によってリボン駆動ローラ31が右回りに回転駆動され、巻取側リボンホルダ121が所定量逆回転駆動される。
【0109】
巻取側リボンホルダ121が逆回転されると、一旦巻取ロール125に巻き取られたインクリボン3がリボン経路案内機構130側に繰り出されることとなり、リボン経路案内機構130と張力調整機構140とに掛け回されたインクリボン3の経路内における長さが長くなる。このため、インクリボン3に作用する張力が低下することとなり、張力調整機構140が作用する。すなわち、張力調整機構140における張力調整アーム141が左回りに揺動し、インクリボン3の弛みを吸収してインクリボン3に所定の張力を付与する。
【0110】
これにより、ヘッドユニット160を通過してリボン駆動機構30(リボン駆動ローラ31)側に移動したインクリボン3の部位が、リボン経路案内機構130側に戻る。すなわち、一度巻取機構120側に移動したインクリボン3がリボン経路案内機構130側に所定長さ引き戻される。また、張力調整アーム141によるブレーキアーム151の揺動操作が解除され、ブレーキ機構150が作用する。つまり、ブレーキ機構150が繰出機構110における原反側リボンホルダ111の回転を規制する。
【0111】
このように、印字終了後に、一旦繰出機構110側に移動したインクリボン3をリボン経路案内機構130側に所定長さ戻すことで、インクリボン3を無駄なく有効に利用することが可能となる。すなわち、押圧状態より長く行われるインクリボン3の送り駆動によって印字に必要な量以上に巻取機構120側に送られたインクリボン3を、ヘッドユニット160と対応する位置まで戻すことで、インクリボン3の無駄を抑制することができる。
【0112】
また、本構成によれば、張力調整機構140における張力調整アーム141の揺動によってインクリボン3を巻き戻す。このため、インクリボン3を巻き戻すために繰出機構110を逆回転駆動する駆動機構(モータ等)を設ける必要が無く、また、その制御も不要となる。その結果、プリントユニット100の構成の簡略化、小型化、低コスト化が可能となる。更に、プリントユニット100の幅方向における寸法を小さくできることから、印字の幅方向における間隔の設定の自由度を向上できる。
【0113】
巻取機構120の巻取側リボンホルダ121が所定量逆回転駆動された後、巻取側リボンホルダ121の逆回転駆動は停止され、スタンバイ状態に戻る。このスタンバイ状態から、偏芯支持軸41Eが回転すると、プラテンローラ41が前後方向に移動して押圧状態が断続的に開始される。押圧状態が断続的に開始されると、これに同期して再びインクリボン3の送り駆動が開始される。
【0114】
図8に示すように、押圧状態の開始と同期してインクリボン3の送り駆動が開始されると、繰出機構110に対するブレーキ作用が解除される。そして、被印字物2に印字が行われ、以後、非押圧状態を挟んで印字を繰り返す。
【0115】
以上のような構成を有する本実施形態に係るサーマルプリンタ1によれば、以下のような効果が奏される。
例えば、本実施形態に係るサーマルプリンタ1は、巻回されたインクリボン3を回転自在に保持しインクリボン3をリボン経路案内機構130に送り出す原反側リボンホルダ111と、リボン経路案内機構130を経由したインクリボン3を巻き取ることが可能であると共に、逆回転によりインクリボン3をリボン経路案内機構130に送り戻すことが可能に回転自在に保持する巻取側リボンホルダ121と、張力調整アーム141の揺動によって移動してリボン経路案内機構130に掛け回されたインクリボン3の経路長さが長くなる第1移動ローラ144及び第2移動ローラ145と、を備える。
【0116】
これにより、インクリボン3の送りを停止させた後、第1移動ローラ144及び第2移動ローラ145の移動によってインクリボン3を好適にリボン経路案内機構130に戻すことができる。その結果、印字に用いられることなく送られたインクリボン3をリボン経路案内機構130側に戻すことができ、インクリボンの無駄を抑制することが可能となる。また、原反側リボンホルダ111を逆回転させてインクリボン3を巻き戻す機構等を備える必要が無く、構成の簡略化によって小型化が可能となると共にコストダウンが可能となる。
【0117】
また、サーマルプリンタ1によれば、第1移動ローラ144と第2移動ローラ145とは、揺動軸143回りに揺動する張力調整アーム141の両端に揺動軸143を挟むように設けられ、張力調整アーム141の揺動軸143回りの揺動によってリボン経路案内機構130に掛け回されたインクリボン3の経路長(経路の長さ)を変更可能に移動する。これにより、簡単な構成、かつ、少ない動作量でインクリボン3の経路長の大きな調整量を得ることが可能となる。
【0118】
また、サーマルプリンタ1によれば、両端にブレーキパッド154とカムフォロア155とを備えるブレーキアーム151が揺動軸153回りに揺動可能に設けられ、ブレーキパッド154が繰出機構110における原反側リボンホルダ111の基部円板111Aの周面に当接することで原反側リボンホルダ111の回転を規制すると共に、その回動規制状態において揺動する張力調整アーム141のカム部141Cによってブレーキパッド154が基部円板111Aから離間して原反側リボンホルダ111の回転規制を解除する。
【0119】
これにより、リボン経路案内機構130に掛け回されたインクリボン3の経路長によって揺動する張力調整アーム141によって、ブレーキパッド154による原反側リボンホルダ111の回転規制を解除することができる。その結果、第1移動ローラ144と第2移動ローラ145とが、張力調整アーム141の揺動軸143回りの揺動によってリボン経路案内機構130に掛け回されたインクリボン3の経路長さが長くなるように移動する際において、原反側リボンホルダ111からのインクリボン3が不要に引き出されることを防ぐことが可能となる。
【0120】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
例えば、本実施形態においては、両端に第1移動ローラ144と第2移動ローラ145とを備えた張力調整アーム141を揺動させることでリボン経路案内機構130に掛け回されたインクリボン3の経路の長さが変わるように構成したが、本発明においてはこれに限定されない。例えば、移動ローラは、少なくとも1以上あればよい。また移動ローラは、二個に限らず一個又は三個以上であってもよい。移動ローラの移動態様も、揺動する回動アームに限らず、適宜変更してもよい。例えば、シリンダ等を用いて移動させる構成であってもよい。
【0121】
また、本実施形態においては、プラテンローラ41を偏芯支持軸41Eにより前後方向に移動させることで、その外周面が被印字物2をサーマルヘッド161に断続的に圧接させる構成としたが、本発明においてはこれに限定されない。例えば、プラテンローラ41は、中心軸を移動させて被印字物2をヘッドユニット160に圧接させる構成としてもよい。また、被印刷物をサーマルヘッドに圧接させる構成は、ローラに限らず無限軌道ベルト等であってもよい。
【0122】
また、本実施形態においては、巻取側リボンホルダ121に押圧するリボン駆動ローラ31の回転によって巻取側リボンホルダ121が回転され、巻取側リボンホルダ121にインクリボン3を巻き取られるように構成したが、本発明においてはこれに限定されない。例えば、リボン駆動ローラ31としての巻取ホルダ回転体は、ローラに限らず無限軌道ベルト等であってもよい。
【0123】
また、本実施形態においては、巻取側リボンホルダ121は、支持アーム122の揺動によってリボン駆動ローラ31に押圧させる構成としたが本発明においてはこれに限定されない。巻取側リボンホルダ121の移動構造は、適宜変更してもよい。例えば、巻取側リボンホルダ121は、シリンダ等により移動させる構成であってもよい。
【0124】
また、本実施形態においては、被印字物に文字を印刷するものとして説明したが、本発明においてはこれに限定されない。サーマルプリンタ1は、文字以外の絵柄等を印刷するものであってもよい。
【符号の説明】
【0125】
1 サーマルプリンタ
2 被印字物(被印刷物)
3 インクリボン
20 ユニット支持部
30 リボン駆動機構
31 リボン駆動ローラ(巻取ホルダ回転体)
40 圧接機構
41 プラテンローラ(印刷受け回転体)
41E 偏芯支持軸(偏芯軸)
50 被印字物案内機構
100 プリントユニット
101B 巻取側リボンホルダストッパ(巻取ストッパ部)
110 繰出機構
111 原反側リボンホルダ(原反ホルダ)
120 巻取機構
121 巻取側リボンホルダ(巻取ホルダ)
122 支持アーム(付勢アーム、巻取ホルダ移動部)
130 リボン経路案内機構
140 張力調整機構
141 張力調整アーム(回動アーム)
141C カム部(係合部)
143 揺動軸(第1回動軸)
144 第1移動ローラ(移動ローラ)
145 第2移動ローラ(移動ローラ)
150 ブレーキ機構
151 ブレーキアーム
153 揺動軸(第2回動軸)
154 ブレーキパッド(原反ストッパ部)
160 ヘッドユニット
161 サーマルヘッド
163 ヘッドスプリング(弾性支持部)
PR 被印字経路
V1 第1屈曲部
V2 第2屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回されたインクリボンを回転自在に保持し、正回転により前記インクリボンを所定の経路に送り出す原反ホルダと、
前記経路を経由した前記インクリボンを正回転により巻き取ることが可能であると共に、逆回転により前記インクリボンを前記経路に送り戻すことが可能に回転自在に保持する巻取ホルダと、
前記インクリボンが掛け渡され、前記経路の長さを変更可能に移動する移動ローラと、を備えることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記経路の長さを変更可能に前記移動ローラを移動させるローラ移動部と、
前記原反ホルダと当接することにより前記原反ホルダの回転を停止させる原反ストッパ部と、前記ローラ移動部に押圧される被押圧部と、を有する原反ストッパ移動部と、
を更に備え、
前記原反ストッパ移動部は、前記経路の長さが長くなるように前記移動ローラが移動したときに前記原反ストッパ部を前記原反ホルダに当接させると共に、前記経路の長さが短くなるように前記移動ローラが移動したときに前記被押圧部が前記ローラ移動部に押圧されて原反ストッパ部を前記原反ホルダから離反させることを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記ローラ移動部は、第1回動軸を中心に回動自在に設けられる回動アームからなり、
前記移動ローラは、前記ローラ移動部に設けられることを特徴とする請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記移動ローラは、前記第1回動軸を挟むように複数設けられることを特徴とする請求項3に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記原反ストッパ移動部は、第2回動軸を中心に回動自在なブレーキアームを更に有し、
前記原反ストッパ部と前記被押圧部とは、前記第2回動軸を挟むように前記ブレーキアームに設けられることを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−253906(P2010−253906A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110043(P2009−110043)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(390034223)イーデーエム株式会社 (23)
【Fターム(参考)】